説明

マイクロアクチュエータ及びこれを用いたヘッドジンバルアッセンブリ並びにハードディスクドライブ、マイクロアクチュエータの製造方法

【課題】 磁気ヘッドスライダを装着する際における位置決め精度の向上、及び、信頼性の向上を図ることができるマイクロアクチュエータを提供すること。
【解決手段】 フレキシャと接合されるベース部11と、このベース部と接合された一対のアーム部12,13と、このアーム部の各アームに取り付けられ印加される駆動信号に基づいて伸縮変形するPZT素子12a,13aと、を備え、一対のアーム部にて磁気ヘッドスライダを狭持するマイクロアクチュエータ10であって、アーム部に、磁気ヘッドスライダにおけるABS形成面の反対面を支持する支持手段12b、13bを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロアクチュエータにかかり、特に、磁気ヘッドスライダを搭載してその微小位置決めを行うアクチュエータに関する。また、このアクチュエータを用いたヘッドジンバルアッセンブリ及びその製造方法、並びに、ハードディスクドライブに関する。さらには、マイクロアクチュエータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報記憶装置であるハードディスクドライブは、記憶媒体である磁気ディスクに対してデータの記録再生を行う磁気ヘッドスライダを装着したヘッドジンバルアッセンブリを搭載している。従来例におけるヘッドジンバルアッセンブリの一例を、以下に説明する。
【0003】
ヘッドジンバルアッセンブリ(図示せず)は、磁気ヘッドスライダ101と、この磁気ヘッドスライダ101を先端部に装着するばね性を有するフレキシャと、このフレキシャ上に形成され磁気ヘッドスライダに対する信号の伝達を行うFPC(フレキシブルプリント回路)と、上記フレキシャを支持するロードビームと、を備えている。そして、このロードビームが、ベースプレートを介してヘッドアームに装着される。さらに、複数のヘッドジンバルアッセンブリが、各ヘッドアームを介してキャリッジにて積層固定され、ボイスコイルモータにて回転駆動されるよう軸支されることで、ヘッドスタックアッセンブリが構成される。
【0004】
そして、ヘッドジンバルアッセンブリは、ボイスコイルモータによって回転駆動されることで、その先端部に装着された磁気ヘッドスライダの位置決めを行う。しかし、近年では、磁気ディスクの高記録密度化により、かかる制御制御では磁気ヘッドの位置決め精度が不十分である。
【0005】
そこで、さらに微小位置決めを行うための技術が検討されており、その一例が特許文献1に開示されている。以下、図14を参照して、従来においてヘッドジンバルアッセンブリに搭載される磁気ヘッド用アクチュエータの構成について説明する。
【0006】
磁気ヘッド用アクチュエータ110は、特許文献1に示すように、フレキシャのタング面に装着されている。そして、略コ字状に形成されており、その開口端側に記録再生素子部が位置するよう、磁気ヘッドスライダ101を保持している。さらに詳述すると、磁気ヘッド用アクチュエータ110は、フレキシャに装着されるベース部111と、その両端から同一方向に延びるよう接合された一対のアーム部112,113と、を備えて略コ字状に形成されており、当該一対のアーム部112,113間に空間部が形成している。そして、後述するように、この空間部に磁気ヘッドスライダ101を収容して保持する。なお、ベース部111と一対のアーム部112,113とは、弾性を有するセラミック焼結体にて一体的に形成されている。
【0007】
そして、上記構成のアクチュエータ110により、各アーム部112,113の先端部付近の内側に備えられたエポキシ樹脂などの接着剤114にて、磁気ヘッドスライダ101はその先端付近の各側面が固着されて保持される。つまり、磁気ヘッドスライダ101は、側方から各アーム部112,113にて狭持された状態になっている。
【0008】
また、各アーム部112,113の外側の側面には、それぞれPZTなどの圧電素子112a,113b(図14(b)には図示せず)が装着されている。これら圧電素子112a,113bは、電圧が印加されることによって伸縮する素子である。これにより、弾性を有するアーム部112,113はほぼ磁気ディスク面に沿って曲折変形することとなる。従って、一対のアーム部112,113の先端部に装着されている磁気ヘッドスライダ101の記録再生素子部を、ほぼ磁気ディスク面に沿って遥動駆動させることができ、微小位置決め制御を行うことができる。
【0009】
ここで、図14(b)に示す例では、磁気ヘッドスライダ101の上方に対向して磁気ディスクが位置することとなっている。従って、磁気ヘッドスライダ1の先端側の磁気ディスク対向面(上面)には記録再生素子部(図示せず)が形成されていると共に、その先端側の端面(左側端面)には記録再生素子側端子が形成されている(図示せず)。そして、この図においては、磁気ヘッドスライダ101の記録再生素子部がより磁気ディスクに近接するよう、アーム部112,113の上面よりもさらに上方に位置するよう、配置されて狭持されている。換言すると、磁気ヘッドスライダ101の下面が、アーム部112,113の下面よりも浮いた位置に配置されて保持されている。
【0010】
【特許文献1】特開2002−74870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した従来例における磁気ヘッド用アクチュエータ110は、各アーム112,113の間に収容される磁気ヘッドスライダ101の側面を接着剤114にて固着して保持しているだけであるため、その保持の安定性に関しては問題があった。例えば、アーム112,113の高さ方向に対する衝撃が加えられた場合には、アクチュエータ110による保持の強度が弱く、磁気ヘッドスライダ101の位置ずれや脱落の可能性があった。
【0012】
また、磁気ヘッドスライダ101は、上述したように、磁気ヘッド素子部をディスクに近接させるためや、そのサイズの関係上、アーム112,113の底面に対して浮かせて装着する場合があり、上述のように磁気ヘッドスライダの側面のみを保持する場合には、装着時の位置決めを適切に行うことが困難である、という問題があった。
【0013】
このため、本発明では、上記従来例の有する不都合を改善し、特に、磁気ヘッドスライダを装着する際における位置決め精度の向上、及び、信頼性の向上を図ることができるマイクロアクチュエータを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明の一形態であるマイクロアクチュエータは、
フレキシャと接合されるベース部と、このベース部と接合された一対のアーム部と、このアーム部の各アームに取り付けられ印加される駆動信号に基づいて伸縮変形するPZT素子と、を備え、一対のアーム部にて磁気ヘッドスライダを狭持するマイクロアクチュエータであって、
アーム部に、磁気ヘッドスライダにおけるABS形成面の反対面を支持する支持手段を設けた、ことを特徴としている。
【0015】
上記発明によると、磁気ヘッドスライダは、マイクロアクチュエータに側面が狭持されると共に、厚み方向に垂直な平面、具体的には、ABS形成面の反対面が支持手段にて支持される。従って、磁気ヘッドスライダのマイクロアクチュエータに対する装着時における位置決めが容易となり、これに伴い、高精度な磁気ヘッドスライダの位置決め動作を実現することができる。また、磁気ヘッドスライダをマイクロアクチュエータにて保持する際の強度及び安定性の向上を図ることができる。
【0016】
そして、支持手段を、各アーム部からそれぞれ突出する突起にて形成した、ことを特徴としている。これにより、簡易な構成にて磁気ヘッドスライダを支持することができる。
【0017】
また、支持手段は、磁気ヘッドスライダを支持する平面部を有する、ことを特徴としている。これにより、突起の平面に磁気ヘッドスライダを載置することができ、より安定して支持することができる。
【0018】
また、支持手段を、ベース部とは反対側に位置するアーム部の先端部付近に備えた、ことを特徴としている。これにより、アクチュエータの支持手段にて磁気ヘッドスライダの記録再生素子部側を支持することができるため、さらなる支持の安定化を図ることができ、記録再生精度の向上を図ることができる。
【0019】
また、本発明の他の形態であるヘッドジンバルアッセンブリは、
フレキシャを備えたサスペンションと、
フレキシャと接合される上述したマイクロアクチュエータと、
このマイクロアクチュエータの支持手段にて支持されると共に一対のアーム部にて狭持された磁気ヘッドスライダと、を備えた、
ことを特徴としている。
【0020】
そして、支持手段に、磁気ヘッドスライダを固着する接着剤を設けた、ことを特徴としている。これにより、アクチュエータと磁気ヘッドスライダとの結合強度が増し、さらなる支持の安定性の向上を図ることができる。
【0021】
また、上記ヘッドジンバルアッセンブリは、磁気ヘッドスライダをマイクロアクチュエータのアーム部の先端部から突出させて装備した、ことを特徴としている。
【0022】
また、本発明では、マイクロアクチュエータの支持手段に磁気ヘッドスライダを載置して位置決めを行い、当該磁気ヘッドスライダを一対のアーム部にて狭持する、ことを特徴とするヘッドジンバルアッセンブリの製造方法を提供している。
【0023】
さらに、本発明では、上記ヘッドジンバルアッセンブリを搭載したハードディスクドライブをも提供している。
【0024】
これにより、上述したように、アクチュエータに磁気ヘッドスライダを組み付けるときの位置決めが容易となり、組み付け精度の向上を図ることができると共に、また、耐衝撃性に優れたヘッドジンバルアッセンブリを構成することができる。そして、かかるヘッドジンバルアッセンブリを搭載したハードディスクドライブの信頼性の向上を図ることができる。特に、磁気ヘッドスライダをアクチュエータのアーム部から突出させて装備することで、遥動範囲を拡大することができると共に、上述した支持手段にて磁気ヘッドスライダの中央部付近を支持できるため、安定性の向上を図ることができる。
【0025】
また、本発明の他の形態であるマイクロアクチュエータの製造方法は、
フレキシャと接合されるベース部を形成する1又は2以上のベース部プレートを、ベース部と接合された一対のアーム部を形成する一対のアーム部プレートにて挟んで積層する積層工程と、
この積層工程に前後して、アーム部の各アームに取り付けられ印加される駆動信号に基づいて伸縮変形するPZT素子を形成するPZT素子を一対のアーム部プレートの外面にそれぞれ形成するPZT素子形成工程と、
積層工程にて積層された積層部材を、積層方向に沿って切断することにより、一対のアーム部にて磁気ヘッドスライダの側面を狭持するマイクロアクチュエータを切り出す切り出し工程と、
を有するマイクロアクチュエータの製造方法であって、
積層工程にて、アーム部プレートと当該アーム部プレートに接するベース部プレートとの間に、磁気ヘッドスライダの厚み方向に垂直な平面を支持する支持手段を形成する支持手段プレートを介挿して積層した、
ことを特徴としている。
【0026】
そして、切り出し工程は、アーム部の高さ方向に沿った支持手段の高さを設定して切り出す、ことを特徴としている。
【0027】
特に、上記マイクロアクチュエータの製造方法は、上述したマイクロアクチュエータを製造することが望ましい。
【0028】
これにより、複数のプレートを積層した積層部材から切り出すことで、磁気ヘッドスライダを支持する支持手段(突起)が形成されたマイクロアクチュエータを容易に製造することができ、製造工程の簡略化、製造コストの低下を図ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、以上のように構成され機能するので、これによると、磁気ヘッドスライダのマイクロアクチュエータに対する装着時における位置決めが容易となり、これに伴い、高精度な磁気ヘッドスライダの位置決め動作を実現することができる。従って、製造工程の簡略化を図ると共に、これを用いたハードディスクドライブの記録再生精度の向上を図ることができる。さらに、磁気ヘッドスライダをマイクロアクチュエータにて保持する際の強度の向上を図ることができ、これを装備したハードディスクドライブの耐衝撃性が向上し、信頼性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明のマイクロアクチュエータは、磁気ヘッドスライダの側面以外を支持する支持手段をアーム部に設けたことを特徴としている。以下、マイクロアクチュエータの具体的な構成及び作用、さらには、その製造方法を実施例にて説明する。
【実施例1】
【0031】
本発明の実施例を、図1乃至図6を参照して説明する。図1はハードディスクドライブの構成を示す図であり、図2はヘッドジンバルアッセンブリの構成を示す図である。図3乃至図4は磁気ヘッド用のマイクロアクチュエータの構成を示す図である。図5乃至図6は、マイクロアクチュエータをフレキシャに装着したときの構成を示す図である。
【0032】
[構成]
図1に示すハードディスクドライブ50は、記憶媒体である磁気ディスク30に対してデータの記録再生を行う磁気ヘッドスライダ1を搭載したヘッドジンバルアッセンブリ20を、筐体40に収容して備えている。なお、磁気ディスク30は複数枚備えられており、各磁気ディスク30に対応して複数のヘッドジンバルアッセンブリ20がキャリッジにて積層されて設けられており、ヘッドスタックアッセンブリを構成している。
【0033】
そして、ヘッドスタックアッセンブリは、ボイスコイルモータにて回転駆動されるよう軸支されている。このボイスコイルモータにて回転駆動されることで、各ヘッドジンバルアッセンブリ20の先端部に装着された磁気ヘッドスライダ1の位置決め制御を行う。そして、さらに、本発明では、各ヘッドジンバルアッセンブリ20ごとに、磁気ヘッドスライダ1を先端部にて保持する磁気ヘッド用のマイクロアクチュエータ10(以下、アクチュエータと呼ぶ)を備え、磁気ヘッドスライダ1の記録再生素子部分の微小位置決め制御を行う。以下、特に、ヘッドジンバルアッセンブリ20、及び、アクチュエータ10について詳述する。
【0034】
図2に、本発明におけるヘッドジンバルアッセンブリ20の構成を示す。ヘッドジンバルアッセンブリ20は、磁気ヘッドスライダ1と、この磁気ヘッドスライダ1を先端部に装着するばね性を有するフレキシャ2と、このフレキシャ2上に形成され磁気ヘッドスライダ1に対する信号の伝達を行うFPC3(フレキシブルプリント回路)と、上記フレキシャ2を支持するロードビーム4と、を備えている。そして、このロードビーム4が、図示しないベースプレートを介してヘッドアームに装着される。
【0035】
そして、磁気ヘッドスライダ1は、上述したように微小位置決め行うアクチュエータ10を介してフレキシャ2に備えられているため、当該フレキシャ2は、これに対応した形状にて形成されている。その構成を、図5乃至図6を参照して説明する。この図は、フレキシャ2とアクチュエータ10のみを図示した図である。なお、フレキシャ2にはFPC3が形成されているが、この図においては省略する。
【0036】
フレキシャ2は、ロードビーム4に装備され、ばね性を有するタング面2aaが形成されたフレキシャ本体2aと、フレキシャ本体部2aから分離されており磁気ヘッドスライダ1の先端部(図4の左側端部)に形成された記録再生素子側端子(図示せず)に半田接合される分離部2bと、により構成されている。なお、フレキシャ2の基本的な構成は従来例と同様である。
【0037】
次に、本発明の特徴となる磁気ヘッド用のマイクロアクチュエータ10の構成を、図3乃至図4を参照して説明する。図3は、マイクロアクチュエータの構成を示し、図3(a)は斜視図を、図3(b)は正面から見た図を示す。また、図4には、磁気ヘッドスライダを搭載したマイクロアクチュエータ10を示し、図4(a)は斜視図を、図4(b)は裏側から見た斜視図を示す。
【0038】
まず、アクチュエータ10は、後述するようにフレキシャ2のアクチュエータ固定部2bに装着されるベース部11と、その両端に接合され同一方向に延びる一対のアーム部12,13と、を備えて略コ字状に形成されている。このアクチュエータ10のベース部11と一対のアーム部12,13とは、後述するように、弾性を有するセラミック焼結体にて一体的に形成されている。
【0039】
また、各アーム部12,13の側面には、それぞれPZTなどの圧電素子12a,13aが装着されている。これら圧電素子12a,13aは、電圧が印加されることによって伸縮する素子である。これにより、弾性を有するアーム部12,13はほぼ磁気ディスク面に沿って曲折変形することとなる。このような構成にすることにより、後述するように一対のアーム部12,13が曲折変形し、その先端部に装着されている磁気ヘッドスライダ1の記録再生素子部を、ほぼ磁気ディスク30面に沿って遥動駆動させることができ、微小位置決めを行うことができる。
【0040】
また、各アーム部12,13には、その底面の先端部付近に、各アーム部12,13にて挟まれて形成された空間部に向かって、互いに対向して突出する突起12b,13b(支持手段)が設けられている。例えば、アーム部12,13の高さが0.25mmであるのに対して、この突起12b、13bの厚みは、0.055mmである。そして、突起12b,13bの上面には平面部12ba,13baが形成されている。さらに、この平面部12ba,13baには接着剤が設けられる。また、この突起12b,13bが設けられた箇所付近におけるアーム部12,13の内側の側面には、従来例と同様に、接着剤14が設けられている。
【0041】
そして、上記構成の略コ字状のアクチュエータ10の開口部、つまり、一対のアーム部12,13間によって形成された空間には、磁気ヘッドスライダ1が収容され、当該アーム部12,13によって保持される。具体的には、図4に示すように、突起12b,13bの平面部分に磁気ヘッドスライダ1の底面(ABS面とは反対側の面)が載置されて支持されつつ接着剤にて固着され、さらに、アーム部12,13にて磁気ヘッドスライダ1の両側面が狭持されつつ側面側の接着剤14にて固着される。これにより、磁気ヘッドスライダ1は、図3において底面が突起12b,13bに支持されると共に、その側面がアーム部12,13にて狭持されており、安定して保持されることとなる。
【0042】
ここで、上述した突起12b,13bの形状や形成位置は一例であり、これに限定されない。例えば、突起12b,13bの位置はアーム部12,13の最先端付近に形成されていなくてもよく、最先端から離れた位置に形成されていてもよい。特に、突起12b,13bの位置は、磁気ヘッドスライダ1の装着位置に応じて適切に設定することが望ましい。例えば、磁気ヘッドスライダ1がアーム部12,13のアーム長内、つまり、アーム部12,13にて囲まれた空間部内に収まる場合には、磁気ヘッドスライダ1の中心より前方側(記録再生素子形成側)を支持するような位置に突起12b,13bを設けるとよい。また、後述するように、磁気ヘッドスライダ1がアーム部12,13から突出する場合は、アーム長やそれによって得られるストローク、耐衝撃性を考慮に入れ、突起12b,13bの形成位置を設定する。但し、製造上、又はストロークの観点から、アーム部12,13の最先端部に突起12b,13bを形成することが望ましい。
【0043】
また、アーム高さ方向に沿った突起12b,13bの厚みは、磁気ヘッドスライダ1の高さに応じて設定するとよい。これは、磁気ヘッドスライダ1にはピコスライダやペムトスライダなどの大きさの異なる種類があり、その厚さの違いによっては、アクチュエータ10に装着したときの磁気ヘッドスライダ1の記録再生素子部と磁気ディスク面との距離が変化するためである。従って、磁気ヘッドスライダ1と磁気ディスク面との距離を適切に設定するためにも、磁気ヘッドスライダ1のABS面とは反対側の面を支持する突起12b,13bの高さ(アーム部12,13の高さ方向に沿った長さ)を調整して、設けることが望ましい。
【0044】
また、突起12b,13bの磁気ヘッドスライダ1が当接する箇所は、平面形状でなくてもよい。さらに、上記では、突起12b,13bの平面部12ba,13baに接着剤を設けると説明したが、これを設けず、固着せずに磁気ヘッドスライダ1と接する状態にするだけでもよい。
【0045】
[取り付け方法]
次に、上述したアクチュエータ10に磁気ヘッドスライダ1を取り付ける方法を説明すると共に、これにより、ヘッドジンバルアッセンブリ20を製造する方法を説明する。なお、本発明は、アクチュエータ10に磁気ヘッドスライダ1を搭載する手順に特徴を有しているため、アクチュエータ10をフレキシャに取り付ける工程は、いかなる順序にて行われてもよい。
【0046】
まず、アクチュエータ10のアーム部12,13間に磁気ヘッドスライダ1を収容し、突起12b,13bの平面部12ba,13ba上に載置する。このとき、磁気ヘッドスライダ1の左右位置や前後位置を調整し、装着する際の位置決めを行う。本実施例においては、図4,5,6に示すように、磁気ヘッドスライダ1の記録再生素子側端面(先端部)をアーム部12,13の先端側(一端側)に突出させて配置する。その後、一対のアーム部12,13にて狭持しつつ、突起12b,13b上の接着剤、及び、アーム部12,13の内側面の接着剤14を硬化させる。これにより、アクチュエータ10に磁気ヘッドスライダが装着される。
【0047】
続いて、図5に示すように、アクチュエータのベース部11を、フレキシャ2のタング面2aaの後端部に載置して接着剤などで固着する。さらに、図6に示すように、フレキシャ2の分離部2bの位置設定も行う。このとき、アクチュエータ10に保持された磁気ヘッドスライダ1の記録再生素子側端子と分離部2bのトレース側端子とが半田にて接合できる距離となるよう、その位置の調整を行う。なお、フレキシャ2上にはFPC3(3a,3b)が形成されているため(図5,6では図示せず、図2を参照)、フレキシャ本体2aと分離部2bとは一体的に構成されている。そして、FPC3は弾性を有するため、上述した分離部2bの位置の調整に対しては柔軟に対応することができる。
【0048】
続いて、アクチュエータ10のアーム部12,13の側面に形成された圧電素子側端子(図示せず)とタング面2aaに形成されたトレース側端子とを金ボンディングなどで接続する。これにより、FPC3bにより圧電素子12a,13aに駆動電圧が印加され、伸縮される。これに伴い、アーム部12,13が曲折変形することとなる。また、磁気ヘッドスライダ1の記録再生素子側端子と分離部2bの端子とを、半田などにより接続する。
【0049】
なお、上記では、アクチュエータ10に磁気ヘッドスライダ1を装着してからフレキシャ2に装着する場合を例示したが、先にアクチュエータ10のみをフレキシャ2に装着してから、上述した手順にて、アクチュエータ10に磁気ヘッドスライダ1を装着してもよい。
【0050】
このようにすることにより、磁気ヘッドスライダ1のマイクロアクチュエータ10に対する装着時における位置決めが容易となり、製造工程の簡略化を図ることができる。また、装着時の組み付け寸法精度が高くなることから、記録再生時においても高精度な磁気ヘッドスライダの位置決め動作を実現することができる。さらに、磁気ヘッドスライダ1に対する厚み方向において耐衝撃性が向上するため、信頼性が向上しうる。そして、アクチュエータ10には、アーム部12,13に突起12ba,13baを設けるという簡易な改良を加えるだけであるので、製造コストの低コスト化を図ることができる。
【0051】
そして、特に、本実施例では、アーム部12,13の先端側に突起12b,13bを設けているため、磁気ヘッドスライダ1の磁気ヘッド素子部側を支持することができるため、より安定した支持を実現でき、記録再生精度の向上を図ることができる。
【0052】
さらに、上述したように、磁気ヘッドスライダ1をアーム部12,13の先端から突出させることで、磁気ヘッドスライダ1のより重心に近い部分を支持することができるため、さらに支持が安定すると共に、アーム部12,13の曲折変形によるスライダ1の先端に位置する記録再生素子部の遥動範囲を広く設定することができる。但し、本発明では、磁気ヘッドスライダ1を、アクチュエータ10のアーム部12,13先端から突出させて装備することに限定されない。そして、これに対応して、上記突起12b,13bの形成位置を上述したように変更してもよい。
【実施例2】
【0053】
次に、本発明の第2の実施例を説明する。本実施例では、上述したアクチュエータ10の製造方法を、図7乃至図13を参照して説明する。図7乃至図12は、アクチュエータ10の各製造工程の内容を説明する図であり、図13は、製造手順を説明するフローチャートである。
【0054】
まず、図7に示すように、上述したアクチュエータ10の各部を構成する所定の厚みを有する板状の各プレートを用意する。具体的には、一対のアーム部12,13を形成する一対(2枚)のアーム部用プレート61と、ベース部11を形成する4枚のベース部用プレート63と、突起12b,13bを形成する2枚の突起用プレート62(支持手段プレート)と、を用意する。そして、図7に示すように、上から、アーム部用プレート61、突起用プレート62、4枚のベース部用プレート63、突起用プレート62、アーム部用プレート61、の順に積層し、積層部材60を形成する(積層工程、図13のステップS1)。換言すると、4枚のベース部用プレート63は、一対のアーム部用プレート61に挟まれており、上側と下側にそれぞれ位置するアーム部用プレート61とベース部用プレート63との間には、それぞれ突起用プレート62が介挿され積層されている。
【0055】
ここで、突起用プレート62とベース部用プレート63には、それぞれ異なった形状の切り抜きが形成されている。つまり、突起用プレート62には、図8(a)に示すように、長方形の一長辺の中央が突出している「凸」字状の切抜き62aが形成されており、ベース部用プレート63には、図8(b)に示すように長方形状の切抜き63aが形成されている。なお、両プレート62,63の切り抜き62a,63aは、高さと幅がほぼ同一に形成されているため、突起用プレート62の切り抜き62aの方が、突出した部分の左右に位置する部分の面積だけ狭く形成されている。そして、積層される際には、各切抜き62a,63aの位置が一致するよう配置されるが、そのときの様子を図8(c)に示す。この図は、最上層に位置するアーム部用プレート61を除いて上方から見た図であり、この図に示すように、各切抜き62a,63aは、各一長辺を揃えて配置されているため、その位置がほぼ一致して配置される。なお、上記各プレート61,62,63は、セラミック部材にて形成されている。このときの積層部材60の構成を図9に示す。
【0056】
続いて、積層部材60を仮乾燥させ、最上層と最下層に位置するアーム部用プレート61の外面に、圧電素子64と電極を印刷工法にて形成する(PZT素子形成工程、図13のステップS2)。なお、図9には図示していないが、圧電素子64は、後述するようにバー状(バー部材65)に切断したときの形状に対応させて帯状に形成される。
【0057】
続いて、積層部材60は圧縮積層された状態で焼き固められ、1つのウエハーに形成される(図13のステップS3)。その後、この積層部材60を、図9のA−A線にて切断して、バー部材65を切り出す(図13のステップS4)。このときのバー部材65の構成を図10に示す。なお、圧電素子64及び電極は、バー部材65に切り出された後にアーム部用プレート61上に形成されていてもよく、あるいは、積層される前のアーム部用プレート61上に形成されていてもよい。
【0058】
ここで、バー部材65を切り出す際には、図8(c)に示すように、符号C1に示す切断線にて切断する。具体的に、この切断線C1は、突起用プレート62の切り抜き62aの突出部分を横断するよう設定される。これにより、切り出されたバー部材65の切り口付近には、突出部分の左右部分が帯状に残った状態となる。なお、図11(a)に、バー部材65の切り口の拡大図を示す。
【0059】
続いて、このバー部材65からマイクロアクチュエータ10を切り出すための切断線を設定する(図13のステップS5)。そして、図11(b)に示す切断線C2にて切断して、マイクロアクチュエータ10を切り出す(切り出し工程、図13のステップS6)。ここで、切断線C2について説明する。切断線C2は、積層部材60の積層方向に沿っており、換言すると、各プレート61〜63のプレート面に対して垂直である。そして、切り出すアクチュエータ10に突起用プレート62の端部が含まれるよう、切断位置を設定する。これにより、アクチュエータ10には、アーム部12,13の先端部付近に、上述した突起12b,13bを形成することができる。
【0060】
ここで、切り出されたアクチュエータ10の突起12b,13bの突出量は、突起用プレート62の厚み部分に対応している。従って、この突出量を希望する長さに設定したい場合には、適切な厚さの突起用プレート62を用いればよい。また、突起12b,13bの高さ、つまり、アーム部12,13の高さ方向に沿った高さは、突起用プレート62部分の切り出し量に対応している。従って、この高さを希望する高さに設定したい場合には、切断線C2の位置を適切に設定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明であるマイクロアクチュエータは、ハードディスクドライブに搭載される磁気ヘッドスライダを位置決め駆動するアクチュエータとして利用することができ、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】ハードディスクドライブの構成を示す図である。
【図2】ヘッドジンバルアッセンブリの構成を示す図である。
【図3】磁気ヘッドスライダを保持するアクチュエータの構成を示す図であり、図3(a)は斜視図を、図3(b)は正面図を示す。
【図4】磁気ヘッドスライダをアクチュエータに搭載した時の構成を示す図であり、図4(a)は斜視図を、図4(b)は裏側から見た斜視図を示す。
【図5】アクチュエータをフレキシャに搭載したときの様子を示す上面図である。
【図6】図5の側面図である。
【図7】積層部材の構成を示す図である。
【図8】図8(a)、(b)は、図7に開示した積層されるプレートの部分拡大図である。図8(c)は、図7に開示した積層部材の切断箇所を説明する図である。
【図9】積層部材の構成を示す図である。
【図10】図9の積層部材から切り出したバー部材の構成を示す図である。
【図11】図11(a)は、図10に開示したバー部材の部分拡大図である。図11(b)は、バー部材からアクチュエータを切り出す際の切断箇所を説明する図である。
【図12】バー部材からアクチュエータを切り出したときの様子を示す図である。
【図13】アクチュエータの製造手順を示すフローチャートである。
【図14】従来例におけるアクチュエータの構成を示す図であり、図14(a)は上面図を、図14(b)は側面図を示す。
【符号の説明】
【0063】
1 磁気ヘッドスライダ
2 フレキシャ
2a フレキシャ本体
2b 分離部
2aa タング面
3 FPC
4 ロードビーム
10 磁気ヘッド用マイクロアクチュエータ(アクチュエータ)
11 ベース部
12,13 アーム部
12a,13a 圧電素子
12b,13b 突起(支持手段)
12ba,13ba 平面部
20 ヘッドジンバルアッセンブリ
30 磁気ディスク
50 ハードディスク
60 積層部材
61 アーム部用プレート
62 突起用プレート
63 ベース部用プレート
64 圧電素子
65 バー部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシャと接合されるベース部と、このベース部と接合された一対のアーム部と、このアーム部の各アームに取り付けられ印加される駆動信号に基づいて伸縮変形するPZT素子と、を備え、前記一対のアーム部にて磁気ヘッドスライダを狭持するマイクロアクチュエータであって、
前記アーム部に、磁気ヘッドスライダにおけるABS形成面の反対面を支持する支持手段を設けた、ことを特徴とするマイクロアクチュエータ。
【請求項2】
前記支持手段を、前記各アーム部からそれぞれ突出する突起にて形成した、ことを特徴とする請求項1記載のマイクロアクチュエータ。
【請求項3】
前記支持手段は、磁気ヘッドスライダを支持する平面部を有する、ことを特徴とする請求項1又は2記載のマイクロアクチュエータ。
【請求項4】
前記支持手段を、前記ベース部とは反対側に位置する前記アーム部の先端部付近に備えた、ことを特徴とする請求項1,2又は3記載のマイクロアクチュエータ。
【請求項5】
フレキシャを備えたサスペンションと、
前記フレキシャと接合される請求項1乃至5記載のマイクロアクチュエータと、
このマイクロアクチュエータの前記支持手段にて支持されると共に前記一対のアーム部にて狭持された磁気ヘッドスライダと、を備えた、
ことを特徴とするヘッドジンバルアッセンブリ。
【請求項6】
前記マイクロアクチュエータの支持手段に、磁気ヘッドスライダを固着する接着剤を設けた、ことを特徴とする請求項5記載のヘッドジンバルアッセンブリ。
【請求項7】
前記磁気ヘッドスライダを前記マイクロアクチュエータのアーム部の先端部から突出させて装備した、ことを特徴とする請求項5又は6記載のヘッドジンバルアッセンブリ。
【請求項8】
請求項5,6又は7記載のヘッドジンバルアッセンブリを搭載したハードディスクドライブ。
【請求項9】
請求項5乃至8記載のヘッドジンバルアッセンブリの製造方法であって、
前記マイクロアクチュエータの前記支持手段に磁気ヘッドスライダを載置して位置決めを行い、当該磁気ヘッドスライダを前記一対のアーム部にて狭持する、
ことを特徴とするヘッドジンバルアッセンブリの製造方法。
【請求項10】
フレキシャと接合されるベース部を形成する1又は2以上のベース部プレートを、前記ベース部と接合された一対のアーム部を形成する一対のアーム部プレートにて挟んで積層する積層工程と、
この積層工程に前後して、前記アーム部の各アームに取り付けられ印加される駆動信号に基づいて伸縮変形するPZT素子を形成するPZT素子を前記一対のアーム部プレートの外面にそれぞれ形成するPZT素子形成工程と、
前記積層工程にて積層された積層部材を、積層方向に沿って切断することにより、前記一対のアーム部にて磁気ヘッドスライダの側面を狭持するマイクロアクチュエータを切り出す切り出し工程と、
を有するマイクロアクチュエータの製造方法であって、
前記積層工程にて、前記アーム部プレートと当該アーム部プレートに接する前記ベース部プレートとの間に、前記磁気ヘッドスライダの厚み方向に垂直な平面を支持する支持手段を形成する支持手段プレートを介挿して積層した、
ことを特徴とするマイクロアクチュエータの製造方法。
【請求項11】
前記切り出し工程は、前記アーム部の高さ方向に沿った前記支持手段の高さを設定して切り出す、ことを特徴とする請求項10記載のマイクロアクチュエータの製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至5記載のマイクロアクチュエータを製造する、ことを特徴とする請求項10又は11記載のマイクロアクチュエータの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−87527(P2007−87527A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276602(P2005−276602)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】