説明

マイクロカプセルの製造方法

【課題】液体を含む芯物質を用いて微小なマイクロカプセルを得る方法を提供する。
【解決手段】カチオン性高分子と、アニオン性高分子と、揮発性物質を含む疎水性物質と、水と、を少なくとも含有する乳濁液を準備する工程と、前記乳濁液に含まれる揮発性物質を揮発する工程と、前記乳濁液を相分離して前記疎水性物質を覆うコアセルベート皮膜を形成する工程と、前記コアセルベート皮膜をゲル化する工程と、少なくとも有するマイクロカプセルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、診断用試薬、化粧品、食品、健康食品、表示材料、接着剤、農薬などの分野において用いられるマイクロカプセルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカチオンコロイドの一つであるゼラチンを皮膜素材としたカプセル、すなわちゼラチンカプセルは、医薬品のみならず、近年の健康志向の高まりから栄養補助食品、機能性食品などの健康食品の分野においても数多く用いられている。ゼラチンカプセルは、医薬や食品に含まれる成分や香料の保護、安定化、味・臭いのマスキング等を目的に用いられている。また、電子ペーパーなどの表示媒体としても用いられている。
【0003】
ゼラチン等を使用したポリカチオンコロイドと、アラビアガム、ペクチン、アルギネート類、CMC等のアニオン性多糖類を用いたポリアニオンコロイドとを混合した系のpHを調製して相分離を起こさせ、コアとなる物質(芯物質)の周囲にカプセル皮膜を形成する複合コアセルベーション法によるマイクロカプセルの製法はよく知られ既に実用に供されている(たとえば、特許文献1乃至5参照。)。特許文献1乃至5に記載の方法で実際に得られるカプセルの粒径は2μmより大きいものであり、複合コアセルベーション法により粒径が2μm未満のカプセルを得ることは困難である。
【0004】
また、平均粒径が0.1〜0.6μmのマイクロカプセルを得る方法が開示されているが(例えば、特許文献6参照。)、特許文献6の実施例では芯物質が固体微粒子に限られており、液体を含む芯物質を使用してマイクロカプセルを得る方法は開示されていない。
【特許文献1】特許第2639816号公報
【特許文献2】特許第3179877号公報
【特許文献3】特許第3168627号公報
【特許文献4】特開平9−248137号公報
【特許文献5】特開平11−216354号公報
【特許文献6】特開平2005−152797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、液体を含む芯物質を用いて微小なマイクロカプセルを得る方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を進めたところ、カチオン性高分子と、アニオン性高分子と、揮発性物質を含む疎水性物質と、水と、を少なくとも含有する乳濁液を準備する工程と、前記乳濁液に含まれる揮発性物質を揮発する工程と、前記乳濁液を相分離して前記疎水性物質を覆うコアセルベート皮膜を形成する工程と、前記コアセルベート皮膜をゲル化する工程と、を少なくとも有するマイクロカプセルの製造方法により微小なマイクロカプセルを容易に得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、
<1> カチオン性高分子と、アニオン性高分子と、揮発性物質を含む疎水性物質と、水と、を少なくとも含有する乳濁液を準備する工程と、前記乳濁液に含まれる揮発性物質を揮発する工程と、前記乳濁液を相分離して前記疎水性物質を覆うコアセルベート皮膜を形成する工程と、前記コアセルベート皮膜をゲル化する工程と、を少なくとも有するマイクロカプセルの製造方法である。
【0008】
<2> 前記マイクロカプセルの一次粒子の体積標準でのメジアン径が0.05〜1.0μmである<1>に記載のマイクロカプセルの製造方法である。
【0009】
<3> 前記乳濁液中における、前記カチオン性高分子の含有量Aと前記アニオン性高分子の含有量Bとの質量比(B/A)が、3以上である<1>又は<2>に記載のマイクロカプセルの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液体を含む芯物質を用いて微小なマイクロカプセルを得る方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のマイクロカプセルの製造方法について説明する。
本発明のマイクロカプセルの製造方法は、カチオン性高分子と、アニオン性高分子と、揮発性物質を含む疎水性物質と、水と、を少なくとも含有する乳濁液を準備する工程(以下、乳濁液準備工程と称することがある。)と、前記乳濁液に含まれる揮発性物質を揮発する工程(以下、揮発工程と称することがある。)と、前記乳濁液を相分離して前記疎水性物質を覆うコアセルベート皮膜を形成する工程(以下、皮膜形成工程と称することがある。)と、前記コアセルベート皮膜をゲル化する工程(以下、ゲル化工程と称することがある。)と、を少なくとも有するものである。
【0012】
本発明のマイクロカプセルの製造方法は、いわゆる複合コアセルベーション法に分類される方法である。コアセルベーション法では、芯物質の形状、寸法をそのまま反映したマイクロカプセルが調製される。
【0013】
本発明のマイクロカプセルの製造方法では、乳濁液準備工程において揮発性物質を含む疎水性物質が水中に液体の小滴として分散した乳濁液が準備される。この液体の小滴がコアセルベーション法における芯物質として機能する。この液体の小滴(芯物質)に含まれる揮発性物質の少なくとも一部が、揮発工程において揮発する。揮発性物質の少なくとも一部が揮発することにより、乳濁液中の芯物質の粒径が小さくなる。その結果として、微小なマイクロカプセルを得ることが可能となる。
【0014】
以下、本発明に係る各工程について説明する。
<乳濁液準備工程>
乳濁液準備工程で用いられるカチオン性高分子としては、等電点を有し、ゲル化し得る親水性コロイドが使用され、一般の水溶性タンパク質を用いることができる。
より具体的にはゼラチン、カゼイン、大豆タンパク、トウモロコシタンパク、コラーゲン、アルブミンなどを例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、複数のカチオン性高分子を組み合わせて用いても良い。中でも酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン等のゼラチンが好ましく、酸処理ゼラチンを用いることが最も好ましい。
【0015】
乳濁液準備工程で用いられるアニオン性高分子としては、具体的には、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カラジーナン、ペクチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天などの多糖類、ポリビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルメチルエーテル・無水マレイン酸共重合体等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、複数のアニオン性高分子を組み合わせて用いても良い。これらのうち、アラビアゴムやカルボキシメチルセルロースナトリウムがより好ましい。
【0016】
本発明においては、揮発性物質を含む疎水性物質が乳濁液中に液体の小滴として存在する必要があることから、揮発性物質を含む疎水性物質が液体である必要がある。液体として存在するのであれば、揮発性物質を含む疎水性物質は均一な液体であっても分散液等の不均一な液体であってもよい。
【0017】
コアセルベーション法における芯物質となる疎水性物質は、目的とするマイクロカプセルに応じて任意に選択される。例えば粘着剤、接着剤、色材、加熱により変色する感熱記録材料などが挙げられ、さらにこれらを溶解又は分散する補助溶媒を使用しても良い。また、表示媒体の素子(例えば磁気表示媒体の微小磁性粒子など)等を分散物として含む油性物質を用いることもできる。また、動植物油、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、高級脂肪酸、高級アルコール、ワックス、ビタミンおよびビタミン様作用物質、その他食品、医薬品、医薬部外品、香料、洗浄剤等、水に不混和なものを用いることができ、これらを複数組み合わせても良い。また、これらの疎水性物質には、カーボンブラック、金、白金、Feなどの無機微粒子や、ポリスチレン、ポリエチレンなどの有機微粒子が分散されていてもよい。
【0018】
芯物質となる疎水性物質に含まれる揮発性物質としては、カチオン性高分子を含む水溶液およびアニオン性高分子を含む水溶液との混和性が貧なるもの、すなわち全く混和しないものから10%程度しか混和しない有機溶媒が好ましい。
なお、本発明において「10%混和する」とは、乳化を行う温度における、水への溶解度が10質量%であることを意味する。
【0019】
揮発性物質として用いられる有機溶媒の誘電率は、10以下が好ましく、9以下がさらに好ましい。揮発性物質として用いられる有機溶媒の沸点は、100℃以下が好ましく、40〜80℃がさらに好ましい。揮発性物質として用いられる有機溶媒は、乳化を阻害しないものであることが好ましい。無機微粒子や有機微粒子を分散した芯物質を用いる場合には、揮発性物質として用いられる有機溶媒はこれらの微粒子の分散安定性を阻害しないものが好ましい。
【0020】
揮発性物質として用いられる有機溶媒としては、具体的には、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、酢酸メチル、酢酸エチル等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。また複数の有機溶媒を組み合わせて用いても良い。
【0021】
本発明に係る乳濁液を得る方法は特に限定されるものではなく、例えば、カチオン性高分子を含む水溶液と、揮発性物質を含む疎水性物質と、を含む混合液を調製し、この混合液を乳化して乳濁液とした後にアニオン性高分子を含む水溶液をこの乳濁液に添加する方法や、カチオン性高分子及びアニオン性高分子を含む水溶液と、揮発性物質を含む疎水性物質と、を含む混合液を調製し、この混合液を乳化して乳濁液とする方法等が挙げられる。乳濁液とした後に、この乳濁液に水を添加して濃度調節してもよい。
【0022】
混合液の乳化方法としては既知の任意の方法を用いることができる。例えば、ホモミキサー、回転円盤式ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波照射などの方法を用いることができる。
【0023】
また、揮発性物質を含む疎水性物質を、ミクロ多孔質ガラスチューブ又はマイクロチャネルを通してカチオン性高分子を含む水溶液又はカチオン性高分子及びアニオン性高分子を含む水溶液中に押し出して乳濁液を得ることもできる。
【0024】
なお、アニオン性高分子は、乳濁液を得た後に添加してもよく、また、乳濁液を得る前にカチオン性高分子とともにカチオン性高分子等を含む乳化前の混合液中に添加しておいてもよいが、後者の方がより安定で、より微粒子のマイクロカプセルを得ることができるため好ましい。
【0025】
本発明において、乳濁液中におけるカチオン性高分子の含有量Aとアニオン性高分子の含有量Bとの質量比(B/A)は、3以上であることが好ましく、3.5以上であることがさらに好ましい。質量比(B/A)を3以上とすることにより、マイクロカプセルの凝集を防ぐことができる。
【0026】
なお、本発明における質量比(B/A)とは、後述するゲル化工程を実施する際に乳濁液中に含まれているカチオン性高分子とアニオン性高分子との質量比をいう。質量比(B/A)を3以上とする方法は特に限定されるものではなく、例えば、以下の方法が挙げられる。なお、下記方法を組み合わせても良い。
【0027】
(1)乳濁液を調製する際に用いられるカチオン性高分子及びアニオン性高分子を含む水溶液中における、カチオン性高分子とアニオン性高分子との含有量を質量比(B/A)で3以上としておく方法。
(2)カチオン性高分子と揮発性物質を含む疎水性物質と水とを含有する乳濁液と、アニオン性高分子を含む水溶液と、を混合して乳濁液中のカチオン性高分子とアニオン性高分子との含有量を質量比(B/A)で3以上に調製する方法。
(3)アニオン性高分子と揮発性物質を含む疎水性物質と水とを含有する乳濁液と、カチオン性高分子を含む水溶液と、を混合して乳濁液中のカチオン性高分子とアニオン性高分子との含有量を質量比(B/A)で3以上に調製する方法。
(4)カチオン性高分子とアニオン性高分子と揮発性物質を含む疎水性物質と水とを含有する乳濁液と、アニオン性高分子を含む水溶液及び/又はカチオン性高分子を含む水溶液と、を混合して乳濁液中のカチオン性高分子とアニオン性高分子との含有量を質量比(B/A)で3以上に調製する方法。
(5)pHを3〜6に調整したアニオン性高分子を含む水溶液に、揮発工程を経た乳濁液を添加して乳濁液中のカチオン性高分子とアニオン性高分子との含有量を質量比(B/A)で3以上に調製する方法。
【0028】
乳濁液中に含まれるカチオン性高分子の好ましい濃度は0.01〜20質量%である。
また、乳濁液中に含まれるアニオン性高分子の好ましい濃度は0.01〜80質量%である。
さらにまた、乳濁液中に含まれる疎水性物質の好ましい濃度は0.001〜75質量%である。
さらにまた、疎水性物質中に含まれる揮発性物質の好ましい含有量は1〜100質量%である。
【0029】
<揮発工程>
揮発工程では、乳濁液中に含まれる揮発性物質を揮発させる。揮発性物質を揮発させるには、既知の任意の方法を用いることができる。例えば、加温、送風、減圧、長時間放置等が挙げられ、これらを適宜併用してもよい。これらの方法の中でも加温、送風が乳濁液の安定性を損なわないことから好ましい。
【0030】
なお、揮発工程は、乳濁液準備工程の開始後、後述するゲル化工程の開始前までの間に実施すればよい。つまり、乳濁液準備工程を実施しながら揮発工程を実施するようにしてもよいし、乳濁液準備工程完了後(皮膜形成工程の際)に揮発工程を実施してもよい。
【0031】
<皮膜形成工程>
皮膜形成工程においては、乳濁液の濃度、pHおよび温度のうちの少なくとも一要素を調節することにより相分離(コアセルベーション)が生じ、芯物質の表面にコアセルベート皮膜が形成される。乳濁液の濃度、pHおよび温度の調節の順序は問わない。すなわち、例えば、乳濁液の濃度と温度とをあらかじめ濃度5質量%、温度40℃に調節しておき、乳濁液のpHを6.0から4.0に調節することにより相分離を生じさせても良いし、乳濁液の温度とpHとをあらかじめ温度40℃、pH4.0に調節しておき、乳濁液の濃度を20質量%から5質量%に調節することにより相分離を生じさせても良いが、これらの例に限定されるものではない。
【0032】
皮膜形成工程においては、例えば、アニオン性高分子を含む水溶液のpHを調製しておき、この水溶液に乳濁液準備工程において得られた乳濁液を添加することにより皮膜を形成することもできる。
【0033】
乳濁液は、好ましくはpHが3〜6に、さらに好ましくはpHが3.5〜4.5、に調節される。このときに用いられるpH調節剤は、芯物質や皮膜材料の性質を損なわないものであることが好ましい。具体的には、酢酸、クエン酸、コハク酸、シュウ酸、乳酸、サリチル酸等の有機酸、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸を例示することができるが、これらに限定されるものではない。また複数のpH調節剤を組み合わせて用いても良い。
【0034】
<ゲル化工程>
芯物質の表面にコアセルベート皮膜を形成した後、該コアセルベート皮膜をゲル化するために乳濁液を冷却する。乳濁液の冷却温度は、通常5〜25℃であり、好ましくは5〜20℃である。
【0035】
乳濁液中には、必要に応じてさらに硬膜剤を添加し、ゲル化したコアセルベート皮膜を硬化(架橋及び/又は変性)させることもできる。硬膜剤としては、従来知られている任意の硬膜剤を用いることができる。例えば、トランスグルタミナーゼ、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキザール、グルタルアルデヒド、尿素、メラミン、ミョウバン、没食子酸、タンニン酸などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。また複数の硬膜剤を組み合わせて用いても良い。
【0036】
コアセルベート皮膜をゲル化(必要に応じて硬化)した後、乳濁液に対して必要に応じて濾過やデカンテーション、遠心分離等の操作を施すことにより目的のマイクロカプセルを得ることができる。
【0037】
ゲル化工程を経て得られるマイクロカプセルの一次粒子の体積標準でのメジアン径は0.05〜1.0μmが好ましく、0.05〜0.8μmがさらに好ましい。本発明のマイクロカプセルの製造方法は揮発工程を有するために、乳濁液中の芯物質の粒径を小さくすることができる。そのため、複合コアセルべーション法により得ることが困難なメジアン系0.05〜1.0μmのマイクロカプセルを容易に得ることが可能となる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。
【0039】
[実施例1]
40℃に維持した10質量%酸処理ゼラチン(カチオン性高分子)水溶液(株式会社ニッピ製 PSKゼラチン)15質量部、10質量%アラビアゴム(アニオン性高分子)水溶液(五協産業)15質量部の混合液を撹拌しながら、この混合液に40℃に維持した流動パラフィン(和光純薬工業株式会社製 試薬)2質量部とヘキサン20質量部とを含む混合液(揮発性物質を含む疎水性物質)を添加した後、ホモジナイザーを用いて15000rpmで10分間乳化処理を行い、乳濁液を得た。
40℃に維持した2.5質量%アラビアゴム水溶液(五協産業)120質量部を攪拌しながら、この水溶液に上述のようにして得られた乳濁液を添加した。40℃で30分間攪拌し揮発性物質を揮発させた後、酢酸(和光純薬工業株式会社製 試薬)を添加して乳濁液のpHを4.0に調節し、コアセルベート皮膜を形成させた。この乳濁液を撹拌しながら18℃まで徐々に冷却してコアセルベート皮膜をゲル化させ、1時間18℃に保ち安定化させ、実施例1のマイクロカプセル液を得た。
【0040】
[実施例2]
40℃に維持した10質量%酸処理ゼラチン水溶液(株式会社ニッピ製 PSKゼラチン)15質量部、10質量%アラビアゴム水溶液(五協産業)15質量部の混合液を攪拌しながら、この混合液に40℃に維持した流動パラフィン(和光純薬工業株式会社製 試薬)2質量部とヘキサン20質量部の混合液を添加した後、ホモジナイザーを用いて15000rpmで10分間乳化処理を行い、乳濁液を得た。このようにして得られた乳濁液を40℃で30分間攪拌し揮発性物質を揮発させた。別途、40℃に維持した2.5質量%アラビアゴム水溶液(五協産業)120質量部に酢酸(和光純薬工業株式会社製 試薬)を添加しpHを4.0に調整した。このpH調整したアラビアゴム水溶液に上述のようにして得られた乳濁液を添加し、コアセルベート皮膜を形成させた。この懸濁液を撹拌しながら18℃まで徐々に冷却して皮膜をゲル化させ、1時間18℃に保ち安定化させ、実施例2のマイクロカプセル液を得た。
【0041】
[実施例3]
10質量%酸処理ゼラチン水溶液(株式会社ニッピ製 PSKゼラチン)15質量部を5質量部とし、10質量%アラビアゴム水溶液(五協産業)15質量部を30質量部とし、2.5質量%アラビアゴム水溶液(五協産業)120質量部の代わりに水120質量部を使用したこと以外は実施例1と同様にして実施例3のマイクロカプセル液を得た。
【0042】
[実施例4]
2.5質量%アラビアゴム水溶液(五協産業)120質量部の代わりに、水120質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4のマイクロカプセル液を得た。
【0043】
[実施例5]
10質量%アラビアゴム水溶液(五協産業)30質量部の代わりに5質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液60質量部を使用したこと以外は実施例3と同様にして実施例5のマイクロカプセル液を得た。
【0044】
[実施例6]
40℃に維持した10質量%酸処理ゼラチン水溶液(株式会社ニッピ製 PSKゼラチン)30質量部を攪拌しながら、この溶液に40℃に維持した流動パラフィン(和光純薬工業株式会社製 試薬)2質量部とヘキサン20質量部の混合液を添加した後、ホモジナイザーを用いて13000rpmで10分間乳化処理を行い、乳濁液を得た。
40℃に維持した4質量%アラビアゴム水溶液(五協産業)225質量部を攪拌しながら、この水溶液に上述のようにして得られた乳濁液を添加した。このようにして得られた乳濁液を40℃で30分間攪拌し揮発性物質を揮発させた。酢酸(和光純薬工業株式会社製 試薬)を添加して乳濁液のpHを4.0に調節し、コアセルベート皮膜を形成させた。この乳濁液を撹拌しながら18℃まで徐々に冷却してコアセルベート皮膜をゲル化させ、1時間18℃に保ち安定化させ、実施例6のマイクロカプセル液を得た。
【0045】
[実施例7]
流動パラフィン(和光純薬工業株式会社製 試薬)2質量部とヘキサン20質量部の混合液の代わりに、1.0質量%のフェライトを分散したクロロホルム20質量部を使用したこと以外は実施例1と同様にして実施例7のマイクロカプセル液を得た。
【0046】
[実施例8]
ホモジナイザーを用いて15000rpmで10分間乳化処理する代わりに、15分間超音波照射処理(SONIFIER250 BRANSON社製)を行ったこと以外は実施例1と同様にして実施例8のマイクロカプセル液を得た。
【0047】
[実施例9]
ホモジナイザーを用いて15000rpmで10分間乳化処理する代わりに、15分間超音波照射処理(SONIFIER250 BRANSON社製)を行ったこと以外は実施例4と同様にして、実施例9のマイクロカプセル液を得た。
【0048】
[実施例10]
10質量%酸処理ゼラチン水溶液(株式会社ニッピ製 PSKゼラチン)15質量部の代わりに、2質量%酸処理ゼラチン水溶液(株式会社ニッピ製 PSKゼラチン)15質量部を用い、10質量%アラビアゴム水溶液(五協産業)15質量部の代わりに、2質量%アラビアゴム水溶液(五協産業)15質量部を用い、ホモジナイザーを用いて15000rpmで10分間乳化処理する代わりに、ナノマイザー(吉田機械工業製)を用いて100MPaで3回処理して乳化を行い、2.5質量%アラビアゴム水溶液(五協産業)120質量部の代わりに24質量部をもちいたこと以外は実施例1と同様にして実施例10のマイクロカプセル液を得た。
【0049】
[比較例1]
流動パラフィン(和光純薬工業株式会社製 試薬)2質量部とヘキサン20質量部の混合液の代わりに、流動パラフィン(和光純薬工業株式会社製 試薬)22質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1のマイクロカプセル液を得た。
【0050】
<粒径の測定>
実施例1乃至10及び比較例1において得られたマイクロカプセルについて下記のようにして粒子径を求めた。
(1) 一次粒子
SEM(電子顕微鏡)の写真から1000個のマイクロカプセルの粒子径を計測し、体積標準でのメジアン径を算出し、一次粒子径とした。
(2) 二次粒子
マイクロカプセル液に超音波処理(処理条件:42KHz、100W、25℃、10分)を行った後、マイクロトラックUPA(日機装株式会社製)を用いて測定された体積標準でのメジアン径を二次粒子径とした。なお、下記基準により二次粒子の有無を判断した。
すなわち、マイクロトラックUPAの測定で得られたメジアン径の値が、SEMの写真から算出したメジアン径の値の2倍以上あるときに、二次粒子があると判断した。また、マイクロトラックUPAの測定で得られたメジアン径の値が、SEMの写真から算出したメジアン径の値の2倍未満であるときに、二次粒子がないと判断した。
【0051】
【表1】

【0052】
表1から、以下のことがわかる。
実施例1〜10のように、カチオン性高分子と、アニオン性高分子と、揮発性物質を含む疎水性物質と、水と、を少なくとも含有する乳濁液を準備する工程と、前記乳濁液に含まれる揮発性物質を揮発する工程と、前記乳濁液を相分離して前記疎水性物質を覆うコアセルベート皮膜を形成する工程と、前記コアセルベート皮膜をゲル化する工程と、を少なくとも有するマイクロカプセルの製造方法により、乳化方法によらず、一次粒子が1.0μm以下のマイクロカプセルを得られることがわかる。実施例4及び実施例9と他の実施例とを比較して明らかなように、(B)/(A)質量比を3以上とすることにより二次粒子の生成を防止することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性高分子と、アニオン性高分子と、揮発性物質を含む疎水性物質と、水と、を少なくとも含有する乳濁液を準備する工程と、
前記乳濁液に含まれる揮発性物質を揮発する工程と、
前記乳濁液を相分離して前記疎水性物質を覆うコアセルベート皮膜を形成する工程と、
前記コアセルベート皮膜をゲル化する工程と、
を少なくとも有するマイクロカプセルの製造方法。
【請求項2】
前記マイクロカプセルの一次粒子の体積標準でのメジアン径が0.05〜1.0μmである請求項1に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項3】
前記乳濁液中における、前記カチオン性高分子の含有量Aと前記アニオン性高分子の含有量Bとの質量比(B/A)が、3以上である請求項1又は2に記載のマイクロカプセルの製造方法。

【公開番号】特開2008−200641(P2008−200641A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41680(P2007−41680)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】