説明

マイクロカプセル化された組成物

【課題】特定のマイクロカプセル化された組成物であって、農薬組成物、特に樹立した植物への適用(すなわち、葉への適用)に有用な組成物の提供。
【解決手段】(a)カプセル化されるべき非水混和性物質、芳香族ジイソシアネートなどを含む有機相を調製する工程であって、芳香族ポリイソシアネート対芳香族ジイソシアネートの重量比が約1:1.5までである、工程;(b)上記有機相を、水、保護コロイドなどを含む水相に導入する工程;(c)高せん断下で上記分散物を混合し、水中油型エマルジョンを形成する工程であって、その中で油滴が約1〜約5ミクロンの平均サイズを有する、工程;および(d)必要に応じて、水中油型エマルジョンの温度および/またはpHを調整し、それにより、界面重合反応が起こり、上記有機相を含むポリ尿素マイクロカプセルを形成する工程を包含する、マイクロカプセルを調製するプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のマイクロカプセル化された組成物に関し、詳細には、農薬組成物、特に樹立した植物への適用(すなわち、葉への適用)に有用な組成物に関する。
【0002】
農薬および他の農業用化学物質のマイクロカプセル化は、種々のマイクロカプセル化プロセスまたは技術を用い、そして多くの異なる活性成分と共に用いて、長年にわたって実施されている。一般的に、このような組成物の製造目的は、活性成分の制御放出を提供することであり、そして特に、それがある期間にわたって放出され、有効期間を通じて利用可能であるように、長期間の効力の放出を提供する。これは、比較的短い期間または特定の環境条件下で品質が低下するかまたは分解する農薬または他の成分にとって特に重要である。マイクロカプセル化された組成物の使用により、長期間にわたる活性成分の有効活性が得られる。なぜなら、(非カプセル化または非制御放出処方物(例えば、溶液、エマルジョン、顆粒など)を用いる場合のような)1回の初期用量ではなく、環境へ連続的に放出されるからである。
【0003】
マイクロカプセル化された農薬は、主に出芽前の農薬として使用される。すなわち、それらは植物の出芽または昆虫の出現の前に土壌に付与されて、その結果、新しく出芽した雑草または幼生期の昆虫を死滅させるか調節するために利用可能である。このような用途において、農薬がある期間(通常、少なくとも数週間)にわたって環境に放出されるように、比較的遅い放出速度が所望される。
【0004】
一般的に、マイクロカプセル化された形態の農業用化学物質は、3つの一般的方法(物理的方法、相分離方法、および界面重合)のうちの1つにより製造される。これらの方法のうちの第3番目(すなわち、界面重合)では、マイクロカプセル壁は、重合反応(好ましくは、二相の界面(通常、水相および非水混和性の有機相)で起こる)により製造されるポリマー性物質から形成される。通常、二相は、水中油型エマルジョンの形態であるか;あるいは、それらは、油中水型エマルジョンの形態でもあり得る。
【0005】
米国特許第4,285,720号は、界面重合法による、マイクロカプセル化された非水混和性物質(非水混和性物質としては、農薬および他の農業用化学物質を含む)の製造プロセスを開示する。一般的に、このプロセスは、水、1種以上の界面活性剤、および保護コロイドを含む水相、およびカプセル化されるべき物質、必要に応じて、1種以上の溶媒、および1種以上の有機ポリイソシアネートを含む有機相の製造に関する。カプセル化されるべき物質または溶媒のいずれもまた、ポリイソシアネートのための溶媒として働き得る。
【0006】
次いで、二相は、水相中に有機相が物理的に分散するように混合される。これは、通常、有機相を、攪拌しながら水相に添加することにより行われる。攪拌および他の条件は、有機相が、(所望のサイズの液滴の形態で)水相中に分散された水中油型エマルジョンを製造するために調整される。得られた混合物のpHおよび温度を調整することにより、ポリイソシアネートの縮合反応が、有機相液滴と水相との間の界面で起こり、マイクロカプセルのポリマーまたは殻壁が形成され、有機相が封入される。
【0007】
米国特許第4,285,720号に記載されるプロセスは、1種以上のポリイソシアネートを用いることを意図し、約0.5〜約4,000ミクロン(好ましくは、約1〜約100ミクロン)の液滴サイズを有するマイクロカプセルを製造し得る。この特許の実施例およびその一般的方法に従って製造されるマイクロカプセルは、制御され、かつ比較的長期間(数週間にわたる)の種々の農薬の放出を提供するのに非常に有用であることが証明された。
【0008】
しかし、葉への適用に使用されるマイクロカプセル化された物質の異なる特性が必要とされる。比較的長期間の制御された放出とは対照的に、葉に適用されるマイクロカプセルは、迅速な農薬活性を提供するために全ての物質が比較的迅速に放出されることを必要とする。
【0009】
昆虫に対する植物の保護に使用される農薬の中で注目すべきものは、ピレスロイドである。現在の農業実施において、植物の葉に適用するためのピレスロイド含有組成物は、非カプセル化形態(代表的には、組成物を形成するために水と混合され、次いで植物にスプレーされる湿潤可能な粉末および乳化可能な濃縮物)で提供される。
【0010】
しかし、ピレスロイドの取り扱いは、いくつかの場合において有害な皮膚反応を引き起こすことが知られる。この反応は、ほてり感、ひりひりとした痛み(tingling)、しびれ感、ちくちくとした痛み(prickling)として記載され、取り扱い者の顔の領域に最も際だっている。感覚異常として知られるこの反応は、一般的に、汚れた手でうっかり触れることにより痕跡量のピレスロイドが取り扱い者の顔に移ることに関連する。この問題は、粉塵および顆粒のような固形処方物において特にひどいものであり得る。
【0011】
農薬のマイクロカプセル化により、マイクロカプセルのポリマー壁が取り扱い者と活性農薬との接触を最小にする程度に、農薬取り扱いの安全性の増加がしばしば得られ得る。農薬のマイクロカプセル化はまた、対応する乳化可能な濃縮物、湿潤可能な粉末または粉塵より相対的に濃縮された形態で物質を提供することが可能であり、それに応じて、使用されて環境に放出される不活性物質(例えば、溶媒、界面活性剤、分散剤、支持体など)の量が低減するなどの利点も提供し得る。しかし、これまで農薬の土壌付与に使用されてきた典型的な遅延制御放出マイクロカプセルは、比較的に迅速でかつ完全な放出が必要とされる用途には不十分である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明によって以下が提供される:
(1)農業用活性物質を含むマイクロカプセルを調製するプロセスであって、以下の工程を包含する、プロセス:(a)カプセル化されるべき非水混和性物質、芳香族ジイソシアネート、および必要に応じて、3つ以上のイソシアネート基を含む芳香族ポリイソシアネートを含む有機相を調製する工程であって、該有機相が芳香族ジイソシアネートおよび芳香族ポリイソシアネートを含む場合、ポリイソシアネート対ジイソシアネートの重量比が約1:100〜約1:1.5である、工程;(b)該有機相を、水、保護コロイド、および必要に応じて界面活性剤を含む水相に導入し、該水相中の該有機相の分散物を形成する工程;(c)高せん断下で該分散物を混合し、水中油型エマルジョンを形成する工程であって、その中で油滴が約1〜約5ミクロンの平均サイズを有する、工程;(d)必要に応じて、水中油型エマルジョンの温度および/またはpHを調整し、それにより、重合反応が起こり、該有機相を含むポリ尿素マイクロカプセルを形成する工程。
(2)前記有機相が、3つ以上のイソシアネート基を有する芳香族ポリイソシアネートを含まない、項目1に記載のプロセス。
(3)前記有機相が、芳香族ジイソシアネートおよび3つ以上のイソシアネート基を有する芳香族ポリイソシアネートを含む、項目1に記載のプロセス。
(4)前記芳香族ジイソシアネート対芳香族ポリイソシアネートの重量比が、約1:50〜約1:10である、項目3に記載のプロセス。
(5)前記油滴が約2〜約4.5ミクロンの平均サイズを有する、項目1〜4のいずれかに記載のプロセス。
(6)前記芳香族ジイソシアネートがトルエンジイソシアネート(tolyene diisocyanate)である、項目1〜5のいずれかに記載のプロセス。
(7)前記芳香族ポリイソシアネートがポリメチレンポリフェニルイソシアネートである、項目1または3〜6のいずれかに記載のプロセス。
(8)前記芳香族ジイソシアネートがトルエンジイソシアネート(tolyene diisocyanate)である、項目7に記載のプロセス。
(9)前記カプセル化された物質がピレスロイド殺虫剤を含む、項目1〜8のいずれかに記載のプロセス。
(10)前記カプセル化された物質がλ-サイハロトリン(lambda-cyhalothrin)を含む、項目1〜9のいずれかに記載のプロセス。
(11)前記カプセル化された物質がフルアジフォプ-P-ブチル(fluazifop-P-butyl)を含む、項目1〜8のいずれかに記載のプロセス。
(12)項目1に記載のプロセスにより製造されるマイクロカプセル。
(13)項目3に記載のプロセスにより製造されるマイクロカプセル。
(14)項目1〜11のいずれかに記載のプロセスにより製造されるマイクロカプセル。
【0013】
発明の要旨
本発明は、マイクロカプセルを調製するプロセスを含み、このプロセスは以下の工程を包含する:(a)カプセル化されるべき非水混和性物質、芳香族ジイソシアネート、および必要に応じて、3つ以上のイソシアネート基を含む芳香族ポリイソシアネートを含む有機相を調製する工程であって、芳香族ポリイソシアネート対芳香族ジイソシアネートの重量比が約1:1.5までである、工程;(b)上記有機相を、水、保護コロイド、および必要に応じて界面活性剤を含む水相に導入する工程;(c)高せん断下で上記分散物を混合し、水中油型エマルジョンを形成する工程であって、その中で油滴が約1〜約5ミクロンの平均サイズを有する、工程;および(d)必要に応じて、水中油型エマルジョンの温度および/またはpHを調整し、それにより、界面重合反応が起こり、上記有機相を含むポリ尿素マイクロカプセルを形成する工程。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
発明の詳細な説明
比較的迅速な放出を有し、葉への適用に適切なマイクロカプセル化された農業用化学物質が、米国特許第4,285,720号に記載される一般的プロセスを用い、2つの本質的な変形および改変を用いて調製され得ることが見い出されている。これらは、本明細書に記載されるような、モノマーまたはモノマー混合物(モノマーまたはモノマー混合物が、架橋が壁に存在しないかまたは壁に比較的低度の架橋を有するマイクロカプセルを製造する)の使用、油相が約1〜約5ミクロン(好ましくは、約2〜約4.5ミクロン)の平均粒子サイズを有する比較的小さい液滴を含む水中油型エマルジョンの形成に関する。さらに、比較的小さなサイズのために、本発明のカプセルは、比較的薄い壁を有するものが製造される。米国特許第4,285,720号の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0015】
簡単にいえば、本プロセスは、非水混和性物質(本場合では、好ましくはピレスロイド農薬を含む有機相)を、ポリ尿素の個別のカプセル内にカプセル化することを含む。本プロセスにおいて、イソシアネートモノマーの加水分解によりアミンを生じ、続いて別のイソシアネートモノマーと反応してポリ尿素を形成する。一般的には、本プロセスは2工程(two-stage)を包含する。
【0016】
第1の工程では、水相中における非水混和性相の物理的分散物が調製される。この水非混和性相は、以下に記載されるような他の物質と共に、カプセル化されるべき農薬を含む。当該分野で公知のように、分散物は、高せん断デバイスにより作られ、この工程は所望の液滴サイズ(以下にて議論する)が得られるまで行われる。残りのプロセスにおいて、穏やかな攪拌のみが必要とされる。
【0017】
第2の工程では、分散物は、反応が、有機ジイソシアネートおよび有機ポリイソシアネートを伴って起こり、有機相の液滴と水相との間の界面でポリ尿素を形成する間、高せん断下で攪拌され、そして約20℃〜約90℃の温度範囲に維持される。第2の工程の間、得られた混合物のpHおよび温度範囲の調整により、この縮合反応を進行する。
【0018】
水相は、水、保護コロイド、および界面活性剤(好ましくは)から調製される。一般的に、この相における1種以上の界面活性剤は、約12〜約16のHLB範囲を有する、アニオン性界面活性剤でも非イオン性界面活性剤でもよい。1種より多い界面活性剤が使用されるのであれば、個々の界面活性剤は、配合される界面活性剤の総HLB値が約12〜16の範囲内であれば、HBL値は12未満であっても16を越えてもよい。適切な界面活性剤は、直鎖アルコールのポリエチレングリコールエーテル、エトキシル化ノニルフェノール、ナフタレンスルホネート、長鎖アルキルベンゼンスルホン酸の塩、プロピレンおよびポリエチレンオキシドのブロックコポリマー、アニオン性/非イオン性ブレンドなどを含む。好ましくは、界面活性剤の疎水性部分は、非水混和性相と類似の化学的性質を有する。従って、後者が芳香族性溶媒を含む場合、適切な界面活性剤の1つは、エトキシル化ノニルフェノールである。特に好ましい界面活性剤は、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドのブロックコポリマー、およびアニオン性/非イオン性ブレンドを含む。
【0019】
水相(または連続相)に存在する保護コロイドは、油滴の表面に強固に吸収されなければならず、そして広範囲のこのような物質(ポリアクリレート、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)、ポリビニルアルコールおよびメチルビニルエーテル/マレイン酸のグラフトコポリマー[加水分解メチルビニルエーテル/無水マレイン酸(米国特許第4,448,929号を参照のこと、これは本明細書中に参考として援用される)];およびリグノスルホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含む)から選択され得る。しかし、好ましくは、保護コロイドは、リグノスルホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩から選択され、最も好ましくは、リグノスルホン酸ナトリウムである。
【0020】
本プロセスにおける界面活性剤濃度の範囲(界面活性剤が使用された場合)は、水相に基づいて約0.01〜約3.0重量%であるが、より高濃度の界面活性剤もまた使用され得る。保護コロイドは、一般的に、約0.1〜約5.0重量%の量で水相に存在する。使用される保護コロイドの量は、全ての油滴表面を完全に被覆するのに十分な量で存在する限り、分子量、相溶性などのような種々のファクターに依存する。保護コロイドは、有機相の添加の前に水相に添加され得るか、あるいは、油相の添加またはその分散の後に、系全体に添加され得る。界面活性剤は、液滴表面から保護コロイドが移動しないように選択されるべきである。
【0021】
有機相は、カプセル化されるべき非水混和性の農薬および/または他の農業用化学物質、必要に応じて、1種以上の溶媒、芳香族ジイソシアネートを含み、好ましくは、芳香族ポリイソシアネートもまた含む。適切な溶媒は、以下を含む:芳香族炭化水素(例えば、キシレン、ナフタレン、または芳香族類の混合物;脂肪族または脂環族炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン、およびシクロヘキサン);アルキルエステル(酢酸アルキルおよびフタル酸アルキルを含む)、ケトン(例えば、シクロヘキサノンまたはアセトフェノン)、塩素化された炭化水素、植物油、またはこのような溶媒の2種以上の混合物。
【0022】
本発明者らは、米国特許第4,285,720号のプロセスを改変することによって、農業環境において適用されたときに、カプセル化された内容物の比較的迅速な放出を提供するマイクロカプセルが得られ得る。
【0023】
迅速な放出特性は、存在しないかまたは比較的小さい架橋をポリマー壁に有し、かつ(以下で議論するような)比較的小さな平均粒子サイズを有するマイクロカプセルを提供することにより達成される。壁は、芳香族ジイソシアネートのみ、または1種以上の芳香族ジイソシアネートと3つ以上のイソシアネート基を有する芳香族ポリイソシアネートとの混合物(ポリイソシアネート対ジイソシアネートの重量比は、約1:100〜約1:1.5、好ましくは、約1:50〜約1:10である)のいずれかから形成される。
【0024】
本発明で使用され得るジイソシアネートおよびポリイソシアネートは、米国特許第4,285,720号に記載されるものである。本発明のプロセスに有用なジイソシアネートは、以下を含む:m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート;1-クロロ-2,4-フェニレンジイソシアネート;4,4'-メチレンビス(フェニルイソシアネート);3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニレンジイソシアネート;4,4'-メチレンビス(2-メチルフェニルイソシアネート);3,3'-ジメトキシ-4,4'-ビフェニレンジイソシアネート;2,4-トルエンジイソシアネート(2,4-tolylene diisocyanate)、2,6-トルエンジイソシアネート(2,6-tolylene diisocyanate)、2,4-および2,6-トルエンジイソシアネートの異性体混合物、および2,2',5,5'-テトラメチル-4,4'-ビフェニレンジイソシアネート。
【0025】
本発明で有用な芳香族ポリイソシアネートは、3つ以上のイソシアネート基を含み、以下のものを含む:ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(ICIまたはBayerから入手可能)、トリフェニルメタントリイソシアネート(「Desmodur R」)、および1モルのトリメチロールプロパンと3モルのトルエンジイソシアネート(「Desmodure TH」)(Bayer A.G.から入手可能なDesmodur製品)との間で形成される付加物。
【0026】
ポリイソシアネートが必要かどうか、もしそうならば、必要な壁特性(wall property)を得るためのその相対量は、組成物中の活性成分(単数または複数)、および組成物がされるであろう用途に依存する。例えば、本発明者らは、除草剤フルアジフォプ-P-ブチル(fluazifop-P-butyl)を含む、葉への適用のためのマイクロカプセル化された組成物について、満足いくカプセルが、ポリイソシアネートなしでトルエンジイソシアネートの異性体混合物のみを使用して調製され得ること、および混合物中におけるポリイソシアネート対ジイソシアネートの重量比が約1:1.5ほどの高さであり得る。しかし、殺虫剤のλ-サイハロトリン(lambda-cyhalothrin)を含む組成物について、カプセル壁の架橋を作るためにいくらかのポリシアネートを必要とする。ポリイソシアネート:ジイソシアネートの重量比は、約1:100〜約1:3、好ましくは、約1:50〜約1:10であるべきである。
【0027】
米国特許第4,285,720号は、これら2種類のイソシアネート(具体的には、トルエンジイソシアネート(TDI)(種々の異性体)およびポリメチレンポリフェニルイソシアネート(PPI))の混合物を開示し、そして実施例は、約2:1〜約1:1のPPI:TDI重量比を有するこれらの2種のイソシアネートを記載するが、この特許において、このような混合物に関する他の情報は提供されない。
【0028】
本プロセスで使用される有機イソシアネートの総量は、形成されるマイクロカプセルの壁の含量を決定する。一般的に、イソシアネート(および、それにより、それらから形成されたマイクロカプセル壁)は、マイクロカプセルの約2.0〜約15重量%(最も好ましくは、約5〜約10重量%)を構成する。
【0029】
カプセル化される物質は、農業用化学物質、好ましくは、農薬であり、そして好ましくは、葉への適用に適切な物質である。本発明が適用可能な農薬は、殺虫剤(特に、ピレスロイド)、除草剤、および抗真菌剤を含む。あるいは、他の農業用化学物質(例えば、植物生長調節剤および昆虫成長調節剤)もまた含まれ得る。カプセル化された物質は、2種以上のこのような成分の組合せであってもよい。
【0030】
米国特許第4,285,720に対する第2の重要な変形は、製造されたマイクロカプセルのサイズにすることであり、これは、水中油型エマルジョン中の有機相の液滴サイズに対応する。この特許は、所望の液滴サイズが約0.5〜約4,000ミクロンの範囲にあり、大部分の農薬用途に好ましい範囲が約1〜約100ミクロンであったことを開示する。しかし、本発明のプロセスを行う際に、平均粒子サイズはより小さく、すなわち、約1〜約5ミクロン(好ましくは、約2〜約4.5ミクロン)あるべきである。液滴サイズは、当該分野で一般的に知られるように、攪拌速度および時間により、ならびに使用される界面活性活性剤のタイプおよび量により調節し得る。
【0031】
適切なエマルジョンを得るために、攪拌しながら、有機相が水相に添加される。水相中に有機相分散させるために、適切な分散手段が用いられる。この手段は、任意の高せん断デバイスであり得、所望の液滴(および対応するマイクロカプセル粒子)サイズ(約1〜約5ミクロン、好ましくは、約2〜約4.5ミクロンの範囲内)を得るために作動される、一旦適切な液滴が得られると、分散手段は中断され、本プロセスの残りでは穏やかな攪拌のみが必要とされる。
【0032】
マイクロカプセルを形成するために、二相混合物の温度は、次いで、周囲温度から、約20℃〜約90℃の値(好ましくは、約40℃〜約90℃)まで上げられる。米国特許第4,285,720号に記載されるように、系に依存して、pH値は適切なレベルに調整され得る。
【0033】
PCT公開公報WO95/13698に記載されるように、液体農薬または他の農業用化学物質に加えて、有機相は、懸濁された生物学的に活性な固形物もまた含み得る;例えば、それは、液体農薬中に懸濁された第2の固形農薬を含み得る。あるいは、本発明者らの同時係属中の特許出願(表題「Microcapsules Containing Suspensions of Biologically Active Compounds and Ultraviolet Protectant」,シリアル番号08/430,030(1995年4月27日出願)、PCT公開公報WO96/33611)に記載のように、カプセル化された農薬が、紫外線または化学線に敏感であり、これらにより分解される場合、マイクロカプセルは、懸濁された固形紫外線防止剤(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、および二酸化チタンと酸化亜鉛との混合物から選択される)も含み得る。
【0034】
本発明の改善の使用により、取り扱い中に、マイクロカプセルの安全性の利点を有し、かつ適用時にこれらの農薬の乳化可能な濃縮物のような液体処方物と等価に機能する、マイクロカプセル化された農薬が製造される。さらに、本発明のマイクロカプセルの使用により、従来使用された乳化可能な濃縮物を、等価に有効なマイクロカプセル化された処方物(これは、より高濃度の農薬、およびそれに応じた、より低濃度の溶媒、界面活性剤などを含み得るので、環境に放出される後者の量は低減する)と置き換えることが可能になる。この後者の改善は、マイクロカプセルが、有機溶媒中に農薬の高度に飽和された溶液または懸濁液で調製されるので可能であるが、同じ濃度は、乳化可能な濃縮物において使用するには適切であり得なかった。なぜなら、保存、取り扱いおよび他の状況の間に農薬が組成物から結晶化され得る可能性があるからである。さらに、マイクロカプセルは水ベースの処方物に作製され得(すなわち、カプセルの水性懸濁液として)、これは、処方物中の相対溶媒量をさらに低減するので、乳化可能な濃縮物と比べて、必然的に環境に適合される(introduce)。
【0035】
本発明のカプセルは、乳化可能な濃縮物とほぼ等しい生物活性を提供することが示された。従って、これらは、一般的な乳化可能な濃縮物に代えて使用するのに適切である−−植物の葉への用途だけでなく、同様に他の用途(例えば、土壌または建物の中もしくは周辺)。
【0036】
本発明は、以下の実施例により例示される。
【0037】
マイクロカプセル化されたλ-サイハロトリン生成物の調製の一般的手順は、以下の通りである:
有機相を、技術グレード(純度88%)のλ-サイハロトリンを溶媒に溶解することにより調製した。実施例3のように二酸化チタニウムを含んだのであれば、分散剤はまず溶液に添加され、次いで二酸化チタンが添加された。最後に、有機イソシアネートが添加された。
【0038】
水相を、特定の成分を水に溶解することにより調製した。次いで、有機相および水相を、高速スターラーにより行われる攪拌により合わせ、水中油型エマルジョンを形成した。油滴の平均サイズが3.0±1ミクロンとなるまで、攪拌を続けた。次いで、穏やかな攪拌を維持しながら、エマルジョンの温度を30分間にわたって50℃まで上げ、そして、マイクロカプセル殻が形成される3時間の間、そのレベルを維持した。
【0039】
得られた懸濁液を室温まで冷却した。次いで、追加の成分を添加し、硫酸でpHを5.0に調整しながら、より安定な懸濁液を製造した。カプセルのサイズは、元来の油滴サイズに対応した。顕微鏡下での観察は、十分に形成され分散された粒子を示した。
【0040】
以下の実施例で使用した成分は以下の通りであった:
・λ-サイハロトリン、技術グレード(純度88%)
・Solvesso 200芳香族溶媒(Exxonから入手可能)
・二酸化チタン−USP328−粒子サイズ0.3ミクロン(Whittaker, Clark & Daniels Ltd.より)
・Hypermer LP1、Hypermer LP5およびAtlox4912分散剤(ICIから入手可能)
・Reax 100M保護コロイド(リグノスルホン酸のナトリウム塩、40重量%、水溶液、Westvaco Chemicalsから入手可能)
・Tergitol NP7およびXD界面活性剤(Union Carbideから入手可能)
・Witconate 90界面活性剤(Witcoから入手可能)
・Kelzan(キサンタンガム、Monsantoから入手可能)
・Proxel GXL(殺生剤、ICIから入手可能)
成分の量は実施例中に示される。
【0041】
【数1】

【0042】
【数2】

【0043】
【数3】

【0044】
実施例4A−4F−フルアジフォプ−P−ブチル(fluazifop-P-butyl)
マイクロカプセルの一般的な調製方法は、以下の通りである:
示したように、技術グレードのフルアジフォプ-P-ブチル(純度90.7%)148gをトルエンジイソシアネート(TDI、80% 2,4-異性体および20% 2,6-異性体の混合物)およびポリメチレンポリフェニルイソシアネート(PPI)を混合することによって、有機相を調製した。
【0045】
Reax 100M(40重量%水溶液)3.72gおよびTergitol XD(20重量%水溶液)を水に溶解することによって、水相を調製した。有機相を撹拌しながら水相に注ぎ、そして油滴の平均サイズが4.1と4.7ミクロンとの間になるまで、撹拌を続けた。次いで、緩やかな撹拌を続けながら、エマルジョンの温度を50℃に上げ、3時間そのレベルで維持した。
【0046】
得られたマイクロカプセルの懸濁液を室温まで冷却した。以下の表Iはカプセルを説明する。
【0047】
【表1】

【0048】
生物学的効力の評価
フィールドテストにおいて、実施例1-3の生成物の生物学的活性を、標準的な乳化可能な濃度(EC)のλ-サイハロトリンの生物学的活性に対して比較した。以下に示すように、これらの試験において、適用された日に、本発明の生成物を用いて達成された昆虫の調節レベルを、カプセル化されない生成物を用いるものと比較し得た。
【0049】
綿におけるボールゾウムシ(ANTHONOMUS GRANDI)の調節
生成物を、ランダム化した完全ブロックにおいて4つの複製で適用した。各生成物を、λ-シハロトリンの3つの割合(0.01、0.02および0.03Ib./エーカー)で適用した。活性を、ゾウムシにより損傷された平方(weevil damaged square)のレベル(開花していない花の芽)(%)を各試験プロットにおいて決定することによって評価し、そしてこれを処理の3および7日後で各試験プロットからの50消去サイズ平方(fifty eraser sized square)を採取し、ゾウムシによる損傷に関してそれらを評価することによって達成した。データを要因分析に供した。すべての結果を表Iに示す。
【0050】
大豆におけるダーリングカズラ毛虫(anticarsica jemmatalis)の調節
製品を、4つの複製を用いてランダム化した完全ブロックに適用した。各処方物を、3つの比(1エーカーあたり0.01、0.02および0.03lb.のλ−サイハロトリン(cyhalothrin))で適用した。活性を、適用3日後および7日後、12列フィートあたりの幼虫の数により決定した。データを、要因分析に供した。結果を図2に示す。
【0051】
綿におけるタバコ毛虫(heliothis vivescens)の調節
この試験における活性を、野生綿に対する実験室葉バイオアッセイにより決定した。各処方物を、3つの比(1エーカーあたり0.0025、0.005および0.01lb.のλ−サイハロトリン)で適用した。処理した葉を野外で収集し、実験室に運び、そして1〜3齢の毛虫幼虫と共にペトリ皿に置いた(1枚の葉あたり5幼虫)。結果を図3および4に示す。図3および4は、それぞれ、処理0日後および1日後での評価を表す。
【0052】
3つ全ての試験において、比較し得る割合で適用した処方物間に統計的差は示されなかった。
【0053】
実施例4a〜4fの製品の生物学的効力を、温室試験において、殺虫剤の標準乳濁可能濃縮物(EC)の効力と比較した。
【0054】
試験物質の噴霧可能エマルジョンを、発生後1エーカーあたり0.016、0.031、0.063および0.125lb.の適用率で適用し、フルアジフォプ-P-ブチル(fluazifop-P-butyl)を、発生後4つの雑草種(グリーンフォックステール(Setaria viridis)、ブロードリーフシグナルグラス(Bracharia platyphylla)、メヒシバ(Digitaria sanguiralis)およびジャイアントフォックステール(Setaria faberi))を含む平地に適用した。
【0055】
雑草調節のための評点を、処理14日後および21日後に取った(「DAT」)。図5は、4つ全ての適用率に対して平均した、試験物質の評点を示す。この図から分かり得るように、PPIのみを使用して調製した組成物(実施例4a)または1:1より大きいPPI:TDI比で調製した組成物(実施例4bおよび4c)は、乳濁可能濃縮物と比較して性能が劣り、一方、本発明の組成物(実施例4d〜4f)は、ECに匹敵し得る雑草(week)調節を示した。
【0056】
哺乳動物毒物学的評価
実施例2および3の製品を、哺乳動物の皮膚刺激および目刺激について試験した。比較のために、12.5重量%のλ−サイハロトリンを含む乳濁可能濃縮物(「EC」)および徐放マイクロカプセル化λ−サイハロトリン(10wt.%)(「SR」)のサンプルを含んだ。試験手順は以下の通りであった:
目刺激
試験を、6匹のNew Zealand Whiteウサギの1群に対して行った。体重は、投薬の日に測定した。全てのウサギの体重は、2kgを超えていた。製品を、完全な強度で適用した。しかし、完全な強度での乳濁可能濃縮物は、これらの試験において完全な評価を妨げた感覚異常(parasthesia)を生じた。従って、ECの希釈水性スプレー(0.5% w/v)もまた適用した。
【0057】
各試験物質の約0.1mlを、各ウサギの左目の結膜嚢に注入し、そしてまぶたを1〜2秒間穏やかに合わせた。右目はコントロールとして用いた。試験目およびコントロール目は、適用約1時間後ならびに1日後、2日後および3日後に試験した。眼科反応のグレードを、ドレーズスケールを用いて記録した。3日目に刺激の徴候が観察されたら、観察期間を、いずれにしても起こればすぐに、4日目および7日目まで、ならびにその後21日目までの少なくとも毎週まで、あるいは目が正常に見えるまで延ばした。
【0058】
皮膚刺激
皮膚刺激を、以下のようにモルモット横腹試験により測定した:
試験を、体重250〜350gの6匹の雌モルモットの1群について行った。各横腹の約6cm×5cmの領域をクリップで留めた。100μl容積の試験物質を、各動物の一方の横腹および他方のコントロール(ベヒクルのみまたは処方物ブランク)に適用した。適用約15分後、各モルモットを、5分間観察し、そして動物が適用部位でいずれかの横腹に頭を全力で曲げてつけようと試みた回数を記録した。観察を、適用約30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後および6時間後に、5分間繰り返した。観察を、上記回数を記録するように設定されたタイミング装置を備えるビデオカメラを用いて行った。応答を、試験横腹とコントロール横腹との間の頭を曲げた回数の差として計算した。潜在的感覚異常応答を、以下の指針に従って認定した:
頭を曲げた平均回数/時間点 分類
<5 実質的に応答なし
5〜12 低い
13〜20 中程度
21〜39 高い
>40 非常に高い
毒物学的評価の結果を表Iに示す。
表I
組成物 目刺激 皮膚刺激
EC 中程度/重大 重大
(希釈) (なし) (実質的になし)
実施例2 −− 穏やか
実施例3 なし/中程度 穏やか
SR 中程度 穏やか
前述の結果は、一方で、本発明のマイクロカプセル化組成物が、同一の活性成分を含む非カプセル化組成物に匹敵する生物学的効力を有することを示す。これらの結果は、組成物は、カプセル化されているが、活性成分の比較的迅速な放出およびアベイラビリティーを提供することを示す。一方、目および皮膚刺激に関する特性は、非カプセル化製品と類似していない。この特性の組み合わせは、驚くべきであり、かつ驚くべきであった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1〜5は、本発明の組成物の殺虫性および除草性の評価の結果のグラフ表示である。
【図2】図1〜5は、本発明の組成物の殺虫性および除草性の評価の結果のグラフ表示である。
【図3】図1〜5は、本発明の組成物の殺虫性および除草性の評価の結果のグラフ表示である。
【図4】図1〜5は、本発明の組成物の殺虫性および除草性の評価の結果のグラフ表示である。
【図5】図1〜5は、本発明の組成物の殺虫性および除草性の評価の結果のグラフ表示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載されるような、マイクロカプセル化された組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−320965(P2007−320965A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208671(P2007−208671)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【分割の表示】特願平9−541797の分割
【原出願日】平成9年5月19日(1997.5.19)
【出願人】(500371307)シンジェンタ リミテッド (141)
【Fターム(参考)】