説明

マイクロカプセル組成物

本発明は、液体疎水性物質中に取り込まれた被覆水溶性色素粒子を含有するマイクロカプセルを含む口腔ケア組成物からなる。好適には、水溶性色素を含有するマイクロカプセルは、透明ゲル歯磨き製剤の一部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロカプセル系、および口腔ケア組成物におけるマイクロカプセルの使用に関する。具体的には、本発明は、疎水性の液状担体媒体中に導入されもしくはその媒体によって覆われた処理済み水溶性色素(親水性)粒子を含むマイクロカプセル系に関する。このマイクロカプセルは次に、水性透明ゲル組成物内に懸濁される。上記組成物は、カプセルから透明ゲル組成物中への色移りが最小限であり、優れたマイクロカプセルの色品位を示す。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセルは、さまざまな理由から口腔ケア組成物用として望ましいものである。それらは、例えば香料物質やエッセンシャルオイルなど、口腔に対して美容的、感覚的、もしくは保護的なメリットをもたらし得る送達物質のための送達用デバイスとして特に有用である。マイクロカプセルが香料を含有している場合、マイクロカプセルは、その香料物質を可溶化する疎水性もしくは油状物質を含有し得る。
【0003】
マイクロカプセルはまた、口腔ケア組成物の見た目を改善することもできる。口腔ケア組成物は、一般的に多量の水または水性相を含有するので、そのような組成物におけるマイクロカプセル中に水溶性色素を用いる場合、その色素が周囲の相に移行して水と混じってしまうのを防止するために、色素を物理的に隔離することが必要である。もし色素が隔離されていないと、組成物の全体もしくは大部分でにじみ、あるいは着色を引き起こし得る。この問題は、色素含有カプセルが透明ゲル組成物の一部である場合に、特に明白に現れる。そのような組成物は、製造業者の製品にさらなる独自性を与え得るため、近年ますますポピュラーになっている。
【0004】
しかしながら、疎水性物質中に親水性物質を取り込むことはできず、それらは混合しないので、液状の油を水溶性色素とともに含有する疎水性マイクロカプセルを調製し、透明ゲル組成物にすることはできない。
【0005】
したがって本発明は、液状の油と、さらに水溶性色素とを含有する疎水性カプセルを含む透明ゲル組成物を調製することを目指している。
【0006】
カプセル系は、特許文献1などの従来技術において提案されている。特許文献1では、外側のカプセル膜とその中に位置する内側カプセルとからなるカプセル−イン−カプセル系が開示されている。内側カプセルが、固体状であり得る媒体中もしくは液体媒体中にあり、香料、エッセンシャルオイル、着色剤あるいは抗菌剤などの活性成分を完全に取り囲むカプセル膜を有している。
【0007】
特許文献2には、口臭を消すのに効果的な多層ソフトカプセルが開示されている。多層ソフトカプセルは、口腔内で可溶性である第一ソフトカプセル層と、胃中で可溶性である第二ソフトカプセル層とから構成されている。両ソフトカプセル中の内容物はソフト層によって完全に封入され、いずれも口臭を消すのに効果的である。
【0008】
我々はその後、従来技術に示されるように、マイクロカプセル内に存在する例えば水溶性色素などの成分は、完全に取り囲みあるいは完全に保護する必要はないことを見出した。浸出、にじみ、または色移りのない望ましい効果を得るためには、該成分を部分的に被覆するだけで良いことが示された。これにより、以下に記載するような種類の、視覚的に魅力のあるマイクロカプセルが創出されるであろう。
【特許文献1】国際公開第02/060573号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第1020177号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、透明ゲル状歯磨き製剤中において視覚上も美容上も許容され得る、着色されたマイクロカプセルを提供することを目的とする。このマイクロカプセルにより、水溶性色素を口腔ケア組成物中、特に透明ゲル組成物中で用いた場合に直面するような、上記のいずれの問題も無い、優れた色品位が得られる組成物が提供される。また、活性物質を送達するための優れた系も提供される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって本発明は、液体疎水性物質中に取り込まれた被覆水溶性色素粒子を含有するマイクロカプセルを含む口腔ケア組成物からなる。
【0011】
マイクロカプセルの外壁は、以下のような特性を持つ任意の物質から形成することができる。典型的には歯磨き製剤中に存在する成分と適合しなければならず、市販の歯磨き剤の製造および充填プロセスに十分耐えるような強度であるが、ブラッシングによって破裂する程度に軟らかくなくてはならず、そして貯蔵安定性を有していなければならない。また、水溶性色素の色が透けて見えるように十分透明でなくてはならない。好適には、外側のカプセル壁は、ガム、寒天タイプの物質、アルギン酸塩、またはゼラチン−ガムアラビックコアセルベートか形成される。ゼラチン−ガムアラビックコアセルベートが好ましい物質である。
【0012】
マイクロカプセルは、好ましくは全組成物中0.1〜10%w/wの量で存在する。
【0013】
色素粒子は、疎水性物質で取り囲むのに先立って処理される。用語「処理される」には、粒子を保護および被覆し、そして耐水性にするさまざまな方法が含まれ得る。好ましい処理は、担体とともに色素のマトリクス粒子を形成し、混合物を噴霧凝固する処理である。これにより、担体のマトリクス中にある色素の超微細粒子からなる微細粒子が形成されるであろう。噴霧凝固法は、簡易であり、効果的かつ迅速な方法である。米国特許第6,037,000号明細書には、そのような、噴霧凝固により色素粒子を処理する方法が開示されており、その特許の内容は参照により本出願中に組み込まれる。しかしながら、米国特許第6,037,000号明細書においては「噴霧凝固法は100%効果的ではない」ことが十分評価されている。すなわち、粒子は完全には被覆されない。噴霧凝固により、色素粒子が周囲の媒体から完全に仕切られることはないであろう。粒子の処理されていない小さな領域または隙間が、必然的に露出されたままになるであろう。噴霧凝固粒子が疎水性液体物質を含有するマイクロカプセル中に一旦取り込まれたならば、驚くべきことに粒子内の色素の色移りは生じない。
【0014】
被覆色素粒子を取り込む疎水性物質は、油もしくはワックス、またはその混合物である。好ましくは、疎水性物質は油であるが、マイクロカプセルの製造過程で液状であることを条件としてワックスであっても良い。そのような油としては、植物油、鉱油またはシリコーン油が挙げられ、好ましくは食用の植物油である。また、パーム油、ヒマワリ油、サフラワー油、ゴマ油、ナタネ油、グレープシード油、シアバター、ミント、クローブ、アニシードなどのフレーバー油、およびそれらの混合物が挙げられる。ヒマワリ油は、水中で透明なエマルジョンを形成し、残渣が残らないため好ましい。適切な食品グレードのヒマワリ油は市販されている。
【0015】
好適には、油は、カプセル中に70〜99%w/wの範囲、好ましくは80〜98%w/w、より好ましくは85〜95%w/wの範囲の量で存在する。
【0016】
マイクロカプセルの直径は約1μm〜約10mm、好ましくは10μm〜5mm、より好ましくは150μm〜2.5mmである。
【0017】
口腔ケア組成物中で用い得る多くの水溶性色素がある。それらは当業者に良く知られているであろう。本発明は、全ての水溶性色素に関係するものである。好ましい色素には、FD&C Blue No.1、Blue No.2、Green No.3、Green No.6、Red No.3、Red No.10、Yellow No.5、Yellow No.6、Yellow No.7、Yellow No.8およびYellow No.10がある。好ましい色素はFD&C Blue No.1である。
【0018】
マイクロカプセルに加えて、本歯磨き剤は、フッ化物源などの、口腔ケア製品の分野で標準的な他の添加剤もしくは賦形剤も含有することができる。自然歯を洗浄するのに使用するための組成物では、フッ化物イオン源を含むことはその虫歯保護活性のため望ましくもあるが、人工義歯を洗浄するのに使用するための組成物では、そのような活性は必要でない。フッ化物イオン源は、アルカリ金属フッ化物、好ましくはフッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸アルカリ金属塩、フッ化スズ、アミンフッ化物などによって供給され得る。しかしながら、好ましいフッ化物イオン源はアルカリ金属フッ化物であり、より好ましくはフッ化ナトリウムである。フッ化物イオン源は、虫歯保護に対して公知の様式で機能する。好ましくは、フッ化物イオン源は、約25ppm〜約3500ppm、好ましくは約1100ppmのフッ化物イオンを与えるのに十分な量など、効果的な量を与えるような量で使用されるであろう。例えば本製剤は、フッ化ナトリウムなどのアルカリ金属フッ化物を0.1〜0.5wt%含有することができる。
【0019】
好ましくは、組成物のpHは4〜10.5であり、より好ましくは5.5〜9.5である。典型的には、組成物は適切なpHにするため最大0.5wt%の水酸化ナトリウムを含有することができる。
【0020】
歯ブラシ上に押し出され得るような本発明の組成物においては、口腔内で許容可能なビヒクルは、一般的に、従来の組成物におけるビヒクルとすることができる。例えば、ビヒクルは増粘剤、結合剤および保湿剤を含む。好ましい結合剤としては、例えばキサンタンガム、カラゲニン、アルギン酸塩、セルロースエーテルおよびエステルのような天然および合成ゴムが挙げられる。好ましい保湿剤としては、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールが挙げられる。好ましい保湿剤系は、グリセリン、ソルビトールおよびポリエチレングリコールからなる。組成物が透明ゲルである場合、保湿剤の量および種類は、製剤中に含有される研磨用粒子および任意の増粘用粒子の屈折率と適合するように慎重に選択しなければならない。
【0021】
さらに、口腔内で許容可能なビヒクルは、場合により一種以上の界面活性剤、甘味剤、香味剤、虫歯予防剤(フッ化物イオン源に加えて)、アンチプラーク剤、トリコサンもしくは塩化セチルピリジニウムなどの抗菌剤、歯の脱感作剤、着色剤および顔料を含むことができる。有用な界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどの、アルキル部分に10〜18個の炭素原子を有するアルキル硫酸塩の水溶性塩が挙げられるが、その他の陰イオン界面活性剤の他、非イオン、両性イオン性、陽イオン、および両性界面活性剤も用いることができる。
【0022】
増粘剤として、増粘シリカを用いることが好ましい。いわゆる「増粘シリカ」とは、Zeodent113(商標)などの公知の研磨用シリカと比べると研磨効果が比較的小さいが、組成物に対して増粘効果をもたらすような公知のシリカである。好適な増粘シリカは公知であり、HuberからZeodentの商品名で市販されているもの(例えばZeodent167、Zeofree153B)、Degussa AGから SIDENT(登録商標)の商品名で市販されているもの(例えばSIDENT22S(登録商標))、およびGrace−Davison Chemical DivisionからSYLOBLANC(登録商標)の商品名で市販されているもの(例えばSYLOBLANC15(登録商標))がそれぞれ挙げられる。例えば、本組成物は、最大約20wt%、典型的には2〜15wt%の増粘シリカを含有することができる。
【0023】
本発明の組成物は、研磨剤、例えば歯磨き組成物において一般的に使用される公知の種類の「研磨用シリカ」(例えば上述のZeodent113(商標))を含有することができる。
【0024】
任意の所定の組成物中で使用される添加剤または賦形剤は、活性成分の性能を損なうような相互作用を起こさないように、互いに適合するものであり、また組成物の必須成分とも適合するものであろう。無論、添加剤または賦形剤は全て低毒性であり、人間が使用するのに適切となるよう十分な純度を有していなければならない。
【0025】
マイクロカプセルの調製は、公知の封入プロセス、好ましくはコアセルベーション(液滴形成法)に従って行うことができる。そのようなプロセスは、広く知られており、多くの文献、例えばNational Cash Register Co.のカタログである「NCR Microencapsulation Applications」(1966年)に記載されている。
【0026】
本発明の口腔ケア組成物はゲルである。本組成物は疎水性マイクロカプセルを含む透明ゲルである。マイクロカプセルは、少なくとも一種の、噴霧凝固法によって被覆された色素粒子を含有するであろう。好ましくは、疎水性マイクロカプセルは、それぞれ0.01〜20%の、全て個々に噴霧凝固された色素粒子を含有するであろう。より好ましくは、疎水性マイクロカプセルは、それぞれ0.1〜10%、最も好ましくは0.5〜6%の色素粒子を含有するであろう。最終的な組成物は、口腔への用途に適した任意の形態で存在し得る。好適には、本組成物は、従来の従来の歯磨き剤タイプの組成物の形態であり、押し出しチューブから絞り出すことができるものである。
【0027】
本発明の透明ゲル組成物は、最初に、ミキサーを備えたステンレス製のタンクなどの適切な容器中で、組成物の成分を従来の手法に従って混合することによって調製する。着色した疎水性マイクロカプセルを次に透明ゲル組成物と混合し、そして好適には必要に応じて包装され貯蔵される。これにより、歯磨き剤として有用な、貯蔵安定性の良い半固体状の押し出し可能な物質が製造されるであろう。
【0028】
本発明を以下の実施例により説明するが、これにより限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
1.カプセルを含有する透明ゲル製剤
【表1】

【0030】
最終工程として、ヒマワリ油中に取り込ませた噴霧凝固FD&C Blue No.1色素粒子を含有するマイクロカプセルを、混合によって透明ゲル組成物へ慎重に加えた。
【0031】
2.カプセルを含有する透明ゲル製剤
【表2】

【0032】
最終工程として、ヒマワリ油中に取り込ませた噴霧凝固FD&C Blue No.1色素粒子を含有するマイクロカプセルを、混合によって透明ゲル組成物へ慎重に加えた。
【0033】
疎水性マイクロカプセル中に導入する前に噴霧凝固を行わない色素粒子は、色素の色移りを示し、すなわち製造する何日かの間に透明ゲル組成物中への視覚的に明らかな色の浸出を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性液体物質中に取り込まれた被覆水溶性色素粒子を含有するマイクロカプセルを含む口腔ケア組成物。
【請求項2】
水溶性色素粒子が噴霧凝固法によって被覆される、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項3】
疎水性物質が油である、請求項2に記載の口腔ケア組成物。
【請求項4】
疎水性油が食用の植物油であり、パーム油、ヒマワリ油、サフラワー油、ゴマ油、ナタネ油、グレープシード油、シアバター、ミント、クローブ、アニシードなどのフレーバー油、およびそれらの混合物を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の口腔ケア組成物。
【請求項5】
疎水性油が、カプセル中に70〜99%w/wの範囲の量で存在する、請求項4に記載の口腔ケア組成物。
【請求項6】
疎水性油が、カプセル中に80〜98%w/wの範囲の量で存在する、請求項5に記載の口腔ケア組成物。
【請求項7】
マイクロカプセルが、全組成物の0.1〜10%w/wの量で存在する、請求項1〜6のいずれかに記載の口腔ケア組成物。
【請求項8】
少なくとも一種の被覆色素粒子を含有するマイクロカプセルを含む透明ゲル組成物である、請求項7に記載の口腔ケア組成物。

【公表番号】特表2008−542228(P2008−542228A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512776(P2008−512776)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005048
【国際公開番号】WO2006/125661
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】