説明

マイクロコンピュータ故障解析システム

【課題】初期の故障解析において、機能不具合を内在する半導体装置に対して確実な不具合の再現を可能とし、半導体装置に内蔵された回路のどの部分に問題があるかを解析するマイクロコンピュータ故障解析システムを提供する。
【解決手段】顧客実機の基板1とベースボード3を接続しベースボード3とユーティリティボード4と、ホストPC5とを備えたマイクロコンピュータ故障解析システムにおいて、顧客実機の基板1から取り外した故障品71と、良品72をそれぞれベースボード3に搭載して各クロック数での入・出力信号レベルをホストPC5に蓄積し、故障品71と良品72の各クロック数での入・出力信号レベルの比較から故障時のクロック数を推定し、ICE73をベースボード3に搭載して故障時のクロック数を供給してデバッグ機能により故障原因を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロコンピュータの故障解析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は厳格な品質管理と製造過程毎の厳しい検査を経て出荷されるが、稀に検査をパスし市場に出てから隠れていた不具合が顕在化するものがある。これを市場クレーム品と呼び、製造メーカは市場から原因解明と再発防止を求められ、その対応に苦慮している。
【0003】
市場クレーム品は、製造メーカに差し戻され故障解析が実施される。故障解析は、JIS(日本工業規格)により「アイテムの潜在的または顕在的な故障のメカニズム・発生率及び故障の影響を検討し、是正処置を決定するための系統的な調査研究」と定義されており、その領域は広範囲に亘る。本発明が寄与するのは、初期の非破壊解析に属する部分である。
【0004】
非破壊解析で得られる情報は、後の物理解析で欠陥位置の特定と原因の究明の手がかりとなり最終的に設計、プロセス、製造工程、検査工程へ再発防止策が反映されることでメーカは市場の要求に対する責任を果たし、より信頼性の高い製品の提供が可能になる。
【0005】
製造メーカに差し戻された市場クレーム品は、LSI(Large Scale Integrated Circuit:大規模集積回路)テスタを用いた故障解析が実施される。初期の故障解析ではLSIテスタ上での不具合再現が不可欠だが、多数の条件の組み合わせや複雑な通信プロトコルなどを与えないと再現しない不具合が多く、LSIテスタを用いて不具合を再現させることが極めて難しい場合がある。
【0006】
例えば、LSIテスタは半導体装置の外部ピンからテストベクタを与え、内部回路を経て外部ピンに現れる挙動を期待値と照合することで良否を判定する。LSIテスタが半導体装置に与えることのできるテストベクタは有限であり、半導体装置の内部で発生した動作不具合がLSIテスタで観測する外部端子に現れる前にテストベクタが尽きてしまえば不具合の再現はできない。
【0007】
従来、前記の様にLSIテスタで再現できない不具合に対しては、実機による不良解析が試みられてきた。ここで言う実機とは、市場クレーム品が組み込まれた最終製品自体、またはそれを構成するプリント基板を指し、半導体装置を購入した顧客から提供される。
【0008】
実機は、組み込まれた半導体装置が不具合を引き起こす要因を含む環境そのものであり、実機と半導体装置間の入出力を解析することで、半導体装置が不具合を発症する条件を明らかにできる。また、様々な条件を変化させて不具合の発生要因を追い込んでゆくことも可能である。ただし、これら実機が示す挙動から半導体装置の回路内部のどの部位に欠陥があるかを類推し、後の物理解析の手がかりを得るには、知識と経験と洞察が必要であり熟練を要する。
【0009】
実機による解析は従来から行われているが、実機を解析装置の一部として利用する例は見当たらない。良品との挙動比較により故障品を選別する方法は、下記の特許文献1〜4に記載がある。
【0010】
半導体装置の検査や選別のために、良品との挙動比較により不具合品を篩い分ける装置は様々な方法と構成が考案されている。
【0011】
また、特許文献5には、解析対象のマイコンの端子信号情報を、対象システム(本発明では顧客実機に相当)を用いて動作させてワークステーションに一旦記憶し、その後は、ワークステーション内にてマイコンに与える端子信号情報を再生して、正常なマイコンやエミュレータに入力信号として与えるロジックLSIの不良解析システム及び不良解析方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平2−95280号公報
【特許文献2】特開2002−365342号公報
【特許文献3】特許3569154号公報
【特許文献4】特開平4−12490号公報
【特許文献5】特開2004−101203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
旧来のLSIテスタを用いた不具合解析では、不具合の再現性に課題がある。また、実機と測定器を用いた解析は作業者のスキルに依存し、解析に時間を要すると言う問題がある。さらに、前記先行特許文献に記載の技術は、半導体装置の良否判定を目的としており、半導体装置に内在する不具合がどの様な条件で発生するかを特定するまでの情報を得ることはできないという課題が残っている。
【0014】
また、特許文献5記載の発明では、「マイコンに与える端子信号情報を再生する」仕組み(例えば、図12の端子デジタルIO(Input Output:入出力)ボードなど)が必要になり、システム構成が複雑でコストが高くなり、また、アナログ入力信号も時間軸とアナログ値を記憶する仕組み(例えば図36の記録アナログトレースデータやアナログIOボードなど)が必要になり、システム構成が複雑でコストが高くなるという問題点があった。
【0015】
本発明の目的は、マイクロコンピュータの故障解析において、機能不具合を内在する半導体装置に対して、故障・不具合の確実な再現を可能とし、半導体装置に内蔵された回路のどの部分に問題があるかを解析することができるマイクロコンピュータ故障解析システムをシステム構成が安価で迅速な構築が可能なシステムとして提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のマイクロコンピュータ故障解析システムは、マイクロコンピュータが実装され、前記マイクロコンピュータに入力信号を与える信号出力手段及び前記マイクロコンピュータからの出力信号に基づき所定の動作を行う回路手段を備えた基板と、実装された前記マイクロコンピュータを取り外した前記基板上のフットパターンから前記入力信号及び前記出力信号を前記基板の外部に取り出す信号取り出し手段と、前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段と接続する前記マイクロコンピュータの故障品又は前記マイクロコンピュータの良品又は前記マイクロコンピュータのインサーキットエミュレータと、前記マイクロコンピュータを動作させるために、ホストコンピュータの指示により所定数のクロックを前記マイクロコンピュータに供給するクロック制御手段と、前記クロックに同期して前記入力信号及び前記出力信号のレベルを記憶する信号記憶手段と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明のマイクロコンピュータ故障解析システムは、更に、前記故障品と、前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段とを接続して、前記クロック制御手段は、前記所定数のクロックを供給し、前記信号記憶手段は、前記入力信号及び前記出力信号を記憶し、前記ホストコンピュータは、前記信号記憶手段の記憶内容をダンプして前記ホストコンピュータ内に蓄積し、次に、前記良品と、前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段とを接続した状態で、前記クロック制御手段は、前記所定数のクロックを供給し、前記信号記憶手段は、前記入力信号及び前記出力信号を記憶し、前記ホストコンピュータは、前記信号記憶手段の記憶内容をダンプして前記ホストコンピュータ内に蓄積することを特徴とする。
【0018】
本発明のマイクロコンピュータ故障解析システムは、更に、前記ホストコンピュータは、前記ホストコンピュータ内に蓄積された前記故障品及び前記良品の前記出力信号のレベルをクロック毎に比較することにより前記故障品が動作異常となるクロック数を検出し、前記インサーキットエミュレータと、前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段とを接続して、前記ホストコンピュータの指示により、前記クロック制御手段は、前記故障品が動作異常となるクロック数までクロックを供給して、前記インサーキットエミュレータが有するデバッグ機能によって前記動作異常の発生に対応したプログラム箇所を検出するようにしたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明のマイクロコンピュータ故障解析システムは、マイクロコンピュータが実装され、前記マイクロコンピュータに入力信号を与える信号出力手段及び前記マイクロコンピュータからの出力信号に基づき所定の動作を行う回路手段を備えた基板と、実装された前記マイクロコンピュータを取り外した前記基板上のフットパターンから前記入力信号及び前記出力信号を前記基板の外部に取り出す信号取り出し手段と、前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段と接続する前記マイクロコンピュータの故障品又は前記マイクロコンピュータの良品又は前記マイクロコンピュータのインサーキットエミュレータと、前記マイクロコンピュータを動作させるために、ホストコンピュータの指示により所定数のクロックを前記マイクロコンピュータに供給するクロック制御手段と、
前記クロックに同期して前記入力信号及び前記出力信号のレベルを記憶する信号記憶手段と、前記クロックに同期して前記マイクロコンピュータの電流値を測定する電流測定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明のマイクロコンピュータ故障解析システムは、更に、前記故障品と、前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段とを接続して、前記クロック制御手段は、前記所定数のクロックを供給し、前記信号記憶手段は、前記入力信号及び前記出力信号を記憶し、前記ホストコンピュータは、前記信号記憶手段の記憶内容と前記クロックに同期した電流値をダンプして前記ホストコンピュータ内に蓄積し、次に、前記良品と、前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段とを接続した状態で、前記クロック制御手段は、前記所定数のクロックを供給し、前記信号記憶手段は、前記入力信号及び前記出力信号を記憶し、前記ホストコンピュータは、前記信号記憶手段の記憶内容と前記クロックに同期した電流値をダンプして前記ホストコンピュータ内に蓄積することを特徴とする。
【0021】
本発明のマイクロコンピュータ故障解析システムは、更に、前記ホストコンピュータは、前記ホストコンピュータ内に蓄積された前記故障品及び前記良品の前記出力信号のレベルをクロック毎に比較することにより前記故障品が動作異常となるクロック数を検出し、前記インサーキットエミュレータと、前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段とを接続して、前記ホストコンピュータの指示により前記クロック制御手段は、前記故障品が動作異常となるクロック数または前記故障品が電流異常となるクロック数までクロックを供給して、前記インサーキットエミュレータが有するデバック機能によって前記動作異常または電流異常の発生に対応したプログラム箇所を検出するようにしたことを特徴とする。
【0022】
また、本発明のマイクロコンピュータ故障解析システムは、マイクロコンピュータが実装され、前記マイクロコンピュータに入力信号を与える信号出力手段及び前記マイクロコンピュータからの出力信号に基づき所定の動作を行う回路手段を備えた基板と、実装された前記マイクロコンピュータを取り外した前記基板上のフットパターンから前記入力信号及び前記出力信号を前記基板の外部に取り出す信号取り出し手段と、前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段と接続する前記マイクロコンピュータの故障品又は前記マイクロコンピュータの良品又は前記マイクロコンピュータのインサーキットエミュレータと、前記マイクロコンピュータを動作させるために、ホストコンピュータの指示により所定数のクロックを前記マイクロコンピュータに供給するクロック制御手段と、
前記クロックに同期して前記マイクロコンピュータの電流値を測定する電流測定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
本発明のマイクロコンピュータ故障解析システムは、更に、前記故障品と、前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段とを接続して、前記クロック制御手段は前記所定数のクロックを供給し、前記ホストコンピュータは前記クロックに同期した電流値を前記ホストコンピュータ内にダンプして蓄積し、次に、前記良品と、前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段とを接続して、前記所定数のクロックを供給し、前記ホストコンピュータは前記クロックに同期した電流値を前記ホストコンピュータ内にダンプして蓄積することを特徴とする。
【0024】
本発明のマイクロコンピュータ故障解析システムは、更に、前記ホストコンピュータは前記ホストコンピュータ内に蓄積された前記故障品及び前記良品の電流値をクロック毎に比較することにより前記故障品が電流異常となるクロック数を検出し、前記インサーキットエミュレータと、前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段とを接続して、前記ホストコンピュータの指示により前記クロック制御手段は、前記故障品が電流異常となるクロック数までクロックを供給して、前記インサーキットエミュレータが有するデバッグ機能によって前記電流異常の発生に対応したプログラム箇所を検出するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、マイクロコンピュータの良品との比較で故障品の不具合の発症が見分けられるため、期待値を用意する必要がなく、故障解析の効率を改善できる。
【0026】
また、本発明によれば、マイクロコンピュータの不具合による動作異常又は電流異常をホストPC上で比較検出できるため、動作クロックをカウントすることで、動作異常又は電流異常を起すタイミングが判り、解析対象の時間的範囲を絞り込むことができる。
【0027】
更に、本発明によれば、ICE(In Circuit Emulater)を用いた場合には、動作異常を検知した時点でICEのデバッグ機能によってマイクロコンピュータ内のプログラムカウンタやレジスタなどの内部情報を読取ることが可能となり異常の原因となっている実行命令の推定などを容易に行うことができる。
【0028】
以上のように、本発明によれば、マイクロコンピュータの故障解析を、LSIテスタなどの大規模設備を用いることなく、低コストで不具合の再現及び故障個所の推定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は本発明の実施例1のマイクロコンピュータ故障解析システムの構成図である。
【図2】図2は本発明の実施例1のマイクロコンピュータ故障解析システムの動作の各段階を示す図である。
【図3】図3は本発明の実施例1のマイクロコンピュータ故障解析システムによる故障解析動作のフローチャートである。
【図4】図4は本発明の実施例2のマイクロコンピュータ故障解析システムの構成図である。
【図5】図5は本発明の実施例2のマイクロコンピュータ故障解析システムの動作の各段階を示す図である。
【図6】図6は本発明の実施例2のマイクロコンピュータ故障解析システムによる故障解析動作のフローチャートである。
【図7】図7は本発明の実施例3のマイクロコンピュータ故障解析システムの構成図である。
【図8】図8は本発明の実施例3のマイクロコンピュータ故障解析システムの動作の各段階を示す図である。
【図9】図9は本発明の実施例3のマイクロコンピュータ故障解析システムによる故障解析動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0031】
図1は、本発明の実施例1のマイクロコンピュータ故障解析システムの全体構成図である。図1において、1は顧客実機の基板、2は信号取り出し手段、3はベースボード、4はユーティリティボード、5はホストPC(Personal Computer)を示している。
【0032】
顧客実機の基板1には実機ソケット11が設けられ、信号取り出し手段2には分配器21とコネクタ22が接続されている。ベースボード3には、故障品、良品、ICE(In Circuit Emulater)コネクタを搭載するDUT(Device Under Test:被検査装置)用のサンプル実装ソケット31と電流測定端子33が搭載され、ユーティリティボード4には、FPGA(Field Programmable Gate Array)41とLog(ログ)保管メモリ42が搭載されている。また、ベースボード3のICE用USB(Universal Serial Bus)端子32とユーティリティボード4のFPGA用USB端子43は、ホストPC5のUSB端子51と接続されている。
【0033】
ユーティリティボード4のFPGA41は、DUTのX1,XT1,Reset端子への入力信号の制御、各端子の端子状態の観測、各端子からの出力のバッファリング(Log保管メモリ42へのデータ記録)等の制御を行うとともに、ホストPC5とのインターフェイス(I/F)制御、クロック数のカウント・制御を行う。
【0034】
また、ホストPC5は、FPGA41とのインターフェイス(I/F)制御、取得したLog(ログ)のグラフ化、ICE制御(デバッガ使用)を行う。
【0035】
図2は本発明の実施例1のマイクロコンピュータ故障解析システムの動作の各段階を示す図である。図2において、顧客実機の基板1に実装されたマイクロコンピュータが故障すると、故障品71が顧客実機の基板1のソケット11から取り外される。顧客実機の基板1のソケット11とベースボード3のサンプル実装ソケット31とが信号取り出し手段2により接続され、顧客実機の基板1の端子状態は、ベースボード3上のDUT及び分配器21とコネクタ22を介してユーティリティボード上のFPGA41に送信可能となる。
【0036】
第一段階の故障品の調査では、顧客実機の基板1のソケット11から取り外された故障品71は、ベースボード3のサンプル実装ソケット31にセットされ、ホストPC5の指示により、ユーティリティボード4のFPGA41が、故障品71に対して、所定のクロック数Nだけ、制御信号を送信し、故障品71からの各端子出力は、FPGA41により端子状態が観測され、Log保管メモリ42に記録される。Log保管メモリ42に記録された故障品71の各クロック数の端子状態のデータはUSB端子43,51を介してホストPC5に蓄積される。
【0037】
次の第二段階の良品の調査では、故障品71がベースボード3のサンプル実装ソケット31から取り外され、良品72がベースボード3のサンプル実装ソケット31にセットされる。第一段階と同様に、ホストPC5の指示により、ユーティリティボード4のFPGA41が、良品72に対して、所定のクロック数Nだけ、制御信号を送信し、良品72からの各端子出力は、FPGA41により端子状態が観測され、Log保管メモリ42に記録される。Log保管メモリ42に記録された良品72の各クロック数の端子状態のデータはUSB端子43,51を介してホストPC5に蓄積される。
【0038】
そして、第三段階の故障品・良品のチェックでは、ホストPC5に蓄積された故障品71と良品72の各クロック数での端子状態のデータを比較する。例えば、クロック数Mで、故障品71と良品72の端子状態のデータが異なる場合には、クロック数Mに対応するステップで、故障品71にエラーが発生していると推測することができる。
【0039】
次いで、第四段階のICE調査では、良品72がベースボード3のサンプル実装ソケット31から取り外され、ICE73のソケットはベースボード3のサンプル実装ソケット31にセットされる。この状態で、ICE73に故障発生のクロック数Mを供給する。ICE73はデバック機能を備えており、クロック数Mに対応したプログラムカウンタ値を読み取ることができ、プログラムカウンタ値から実行命令を解析して故障原因を推定することができる。
【0040】
図3は本発明の実施例1のマイクロコンピュータ故障解析システムによる故障解析動作のフローチャートである。図3のフローチャートでは、まず、ステップS301において、故障品71の調査を開始すると、ステップS302において、故障品71をベースボード3にセットする。ステップS303において、故障品71にNクロックを供給し、ステップS304において、故障品71の入・出力信号レベルをホストPC5に蓄積する。
【0041】
次いで、ステップS305において、良品72の調査を開始すると、ステップS306において、良品72をベースボード3にセットする。ステップS307において、良品72にNクロックを供給し、ステップS308において、良品72の入・出力信号レベルをホストPC5に蓄積する。
【0042】
その後、ステップS309において、ホストPCにて、故障品71,良品72の入・出力信号レベルを比較する。ステップS310において、Mクロック目で故障品71,良品72の入・出力信号レベルに差が発生した(S310:Yes)場合には、ステップS311のICEによる調査に移行する。故障品71,良品72の入・出力信号レベルに差が発生しない(S310:No)場合には、ステップS312において故障品71の調査、ステップ313において良品72の調査をそれぞれ実施する。
【0043】
ステップS311において、ICEによる調査を開始すると、ステップS314において、ICE73をベースボード3にセットする。ステップS315において、ICE73に故障に対応したMクロックを供給する。そして、ステップS316において、ICEにてMクロック目のプログラムカウンタ値を読み、ステップS317において、プログラムカウンタ値から実行命令を解析して故障原因を推定する。
【実施例2】
【0044】
図4は本発明の実施例2のマイクロコンピュータ故障解析システムの構成図である。図4において、1は顧客実機の基板、2は信号取り出し手段、3はベースボード、4はユーティリティボード、5はホストPC(Personal Computer)、6は電流計測装置を示している。
【0045】
顧客実機の基板1には実機ソケット11が設けられ、信号取り出し手段2には分配器21とコネクタ22が接続されている。ベースボード3には、故障品、良品、ICE(In Circuit Emulater)コネクタを搭載するDUT(Device Under Test:被検査装置)用のサンプル実装ソケット31と電流測定端子33が搭載され、ユーティリティボード4には、FPGA(Field Programmable Gate Array)41とLog(ログ)保管メモリ42が搭載されている。また、電流計測装置6はベースボード3の電流測定端子33に接続されている。ベースボード3のICE用USB(Universal Serial Bus)端子32とユーティリティボード4のFPGA用USB端子43は、ホストPC5のUSB端子51と接続され、電流計測装置6は、ホストPC5の電流測定用USB端子52と接続されている。
【0046】
ユーティリティボード4のFPGA41は、DUTのX1,XT1,Reset端子への入力信号の制御、各端子の端子状態の観測、各端子からの出力のバッファリング(Log保管メモリ42へのデータ記録)等の制御を行うとともに、ホストPC5とのインターフェイス(I/F)制御、クロック数のカウント・制御を行う。
【0047】
また、ホストPC5は、FPGA41とのインターフェイス(I/F)制御、取得したLog(ログ)あるいは取得した電流値のグラフ化、ICE制御(デバッガ使用)を行う。
【0048】
図5は本発明の実施例2のマイクロコンピュータ故障解析システムの動作の各段階を示す図である。実施例1と同様に、故障品71と、良品72と、ICE73をベースボード3のサンプル実装ソケット31に搭載して、マイクロコンピュータの故障解析を実行する。
【0049】
実施例1との相違点は、ユーティリティボード4にLog(ログ)保管メモリ42を搭載して、入・出力信号レベルのLogデータを記憶して、入・出力信号レベルの差により故障を推測するのみならず、ベースボード3の電流測定端子33に電流計測装置6を接続し、各クロックでの電流値をもホストPC5に蓄積し、入・出力信号レベルと電流値の双方のデータにより、故障品71の故障解析を行う点である。
【0050】
図6は本発明の実施例2のマイクロコンピュータ故障解析システムによる故障解析動作のフローチャートである。図6のフローチャートでは、まず、ステップS601において、故障品71の調査を開始すると、ステップS602において、故障品71をベースボード3にセットする。ステップS603において、故障品71にNクロックを供給し、ステップS604において、故障品71の入・出力信号レベルとクロック毎の電流値をホストPC5に蓄積する。
【0051】
次いで、ステップS605において、良品72の調査を開始すると、ステップS606において、良品72をベースボード3にセットする。ステップS607において、良品72にNクロックを供給し、ステップS608において、良品72の入・出力信号レベルとクロック毎の電流値をホストPC5に蓄積する。
【0052】
その後、ステップS609において、ホストPCにて、故障品71,良品72の入・出力信号レベルと電流値を比較する。ステップS610において、Mクロック目で故障品71,良品72の入・出力信号レベルに差が発生した(S610:Yes)場合、あるいは故障品71の電流値が良品72より大きくなった(S610:Yes)場合には、ステップS611のICEによる調査に移行する。故障品71,良品72の入・出力信号レベルに差が発生しない(S610:No)場合あるいは電流値に差が発生しない(S610:No)場合には、ステップS612において故障品71の調査、ステップ613において良品72の調査をそれぞれ実施する。
【0053】
ステップS611において、ICEによる調査を開始すると、ステップS614において、ICE73をベースボード3にセットする。ステップS615において、ICE73に故障に対応したMクロックを供給する。そして、ステップS616において、ICEにてMクロック目のプログラムカウンタ値を読み、ステップS617において、プログラムカウンタ値から実行命令を解析して故障原因を推定する。
【実施例3】
【0054】
図7は本発明の実施例3のマイクロコンピュータ故障解析システムの構成図である。図7において、1は顧客実機の基板、2は信号取り出し手段、3はベースボード、4はユーティリティボード、5はホストPC(Personal Computer)、6は電流計測装置を示している。
【0055】
顧客実機の基板1には実機ソケット11が設けられ、信号取り出し手段2には分配器21とコネクタ22が接続されている。ベースボード3には、故障品、良品、ICE(In Circuit Emulater)コネクタを搭載するDUT(Device Under Test:被検査装置)用のサンプル実装ソケット31と電流測定端子33が搭載され、ユーティリティボード4には、FPGA(Field Programmable Gate Array)41が搭載されている。また、電流計測装置6はベースボード3の電流測定端子33に接続されている。ベースボード3のICE用USB(Universal Serial Bus)端子32はとユーティリティボード4のFPGA用USB端子43は、ホストPC5のUSB端子51と接続され、電流計測装置6は、ホストPC5の電流測定用USB端子52と接続されている。
【0056】
ユーティリティボード4のFPGA41は、DUTのX1,XT1,Reset端子への入力信号の制御、各端子の端子状態の観測等の制御を行うとともに、ホストPC5とのインターフェイス(I/F)制御、クロック数のカウント・制御を行う。
【0057】
また、ホストPC5は、FPGA41とのインターフェイス(I/F)制御、取得した電流値のグラフ化、ICE制御(デバッガ使用)を行う。
【0058】
図8は本発明の実施例3のマイクロコンピュータ故障解析システムの動作の各段階を示す図である。実施例1と同様に、故障品71と、良品72と、ICE73をベースボード3のサンプル実装ソケット31に搭載して、マイクロコンピュータの故障解析を実行する。
【0059】
実施例1、2との相違点は、実施例3では、ユーティリティボード4にLog(ログ)保管メモリ42を搭載せず、ベースボード3の電流測定端子33に電流計測装置6を接続し、各クロックでの電流値をホストPC5に蓄積し、電流値のデータにより、故障品71の故障解析を行う点である。
【0060】
図9は本発明の実施例3のマイクロコンピュータ故障解析システムによる故障解析動作のフローチャートである。図9のフローチャートでは、まず、ステップS901において、故障品71の調査を開始すると、ステップS902において、故障品71をベースボード3にセットする。ステップS903において、故障品71にNクロックを供給し、ステップS904において、故障品71のクロック毎の電流値をホストPC5に蓄積する。
【0061】
次いで、ステップS905において、良品72の調査を開始すると、ステップS906において、良品72をベースボード3にセットする。ステップS907において、良品72にNクロックを供給し、ステップS908において、良品72のクロック毎の電流値をホストPC5に蓄積する。
【0062】
その後、ステップS909において、ホストPCにて、故障品71,良品72の電流値を比較する。ステップS910において、Mクロック目で故障品71の電流値が良品72より大きくなった(S910:Yes)場合には、ステップS911のICEによる調査に移行する。故障品71,良品72の電流値に差が発生しない(S910:No)場合には、ステップS912において故障品71の調査、ステップ913において良品72の調査をそれぞれ実施する。
【0063】
ステップS911において、ICEによる調査を開始すると、ステップS914において、ICE73をベースボード3にセットする。ステップS915において、ICE73に故障に対応したMクロックを供給する。そして、ステップS916において、ICEにてMクロック目のプログラムカウンタ値を読み、ステップS917において、プログラムカウンタ値から実行命令を解析して故障原因を推定する。
【符号の説明】
【0064】
1 顧客実機の基板
2 信号取り出し手段
3 ベースボード
4 ユーティリティボード
5 ホストPC
6 電流計測装置
11 実機ソケット
21 分配器
22 コネクタ
31 サンプル実装ソケット
32 ICE用USB端子
33 電流測定端子
41 FPGA
42 Log保管メモリ
43 FPGA用USB端子
51 USB端子
52 電流測定用USB端子
71 故障品
72 良品
73 ICE

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロコンピュータが実装され、前記マイクロコンピュータに入力信号を与える信号出力手段及び前記マイクロコンピュータからの出力信号に基づき所定の動作を行う回路手段を備えた基板と、
実装された前記マイクロコンピュータを取り外した前記基板上のフットパターンから前記入力信号及び前記出力信号を前記基板の外部に取り出す信号取り出し手段と、
前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段と接続する前記マイクロコンピュータの故障品又は前記マイクロコンピュータの良品又は前記マイクロコンピュータのインサーキットエミュレータと、
前記マイクロコンピュータを動作させるために、ホストコンピュータの指示により所定数のクロックを前記マイクロコンピュータに供給するクロック制御手段と、
前記クロックに同期して前記入力信号及び前記出力信号のレベルを記憶する信号記憶手段と、を備えたことを特徴とするマイクロコンピュータ故障解析システム。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロコンピュータ故障解析システムにおいて、
前記故障品と、前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段とを接続して、前記クロック制御手段は、前記所定数のクロックを供給し、前記信号記憶手段は、前記入力信号及び前記出力信号を記憶し、前記ホストコンピュータは、前記信号記憶手段の記憶内容を前記ホストコンピュータ内にダンプして蓄積し、
次に、前記良品と、前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段とを接続した状態で、前記クロック制御手段は、前記所定数のクロックを供給し、前記信号記憶手段は、前記入力信号及び前記出力信号を記憶し、前記ホストコンピュータは、前記信号記憶手段の記憶内容を前記ホストコンピュータ内にダンプして蓄積することを特徴とするマイクロコンピュータ故障解析システム。
【請求項3】
請求項2に記載のマイクロコンピュータ故障解析システムにおいて、
前記ホストコンピュータは、前記ホストコンピュータ内に蓄積された前記故障品及び前記良品の前記出力信号のレベルをクロック毎に比較することにより前記故障品が動作異常となるクロック数を検出し、
前記インサーキットエミュレータと、前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段とを接続して、前記ホストコンピュータの指示により前記クロック制御手段は、前記故障品が動作異常となるクロック数までクロックを供給して、前記インサーキットエミュレータが有するデバッグ機能によって前記動作異常の発生に対応したプログラム箇所を検出するようにしたことを特徴とするマイクロコンピュータ故障解析システム。
【請求項4】
マイクロコンピュータが実装され、前記マイクロコンピュータに入力信号を与える信号出力手段及び前記マイクロコンピュータからの出力信号に基づき所定の動作を行う回路手段を備えた基板と、
実装された前記マイクロコンピュータを取り外した前記基板上のフットパターンから前記入力信号及び前記出力信号を前記基板の外部に取り出す信号取り出し手段と、
前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段と接続する前記マイクロコンピュータの故障品又は前記マイクロコンピュータの良品又は前記マイクロコンピュータのインサーキットエミュレータと、
前記マイクロコンピュータを動作させるために、ホストコンピュータの指示により所定数のクロックを前記マイクロコンピュータに供給するクロック制御手段と、
前記クロックに同期して前記入力信号及び前記出力信号のレベルを記憶する信号記憶手段と、前記クロックに同期して前記マイクロコンピュータの電流値を測定する電流測定手段と、を備えたことを特徴とするマイクロコンピュータ故障解析システム。
【請求項5】
請求項4に記載のマイクロコンピュータ故障解析システムにおいて、
前記故障品と、前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段とを接続して、前記クロック制御手段は、前記所定数のクロックを供給し、前記信号記憶手段は、前記入力信号及び前記出力信号を記憶し、前記ホストコンピュータは、前記信号記憶手段の記憶内容と前記クロックに同期した電流値を前記ホストコンピュータ内にダンプして蓄積し、
次に、前記良品と、前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段とを接続した状態で、前記クロック制御手段は、前記所定数のクロックを供給し、前記信号記憶手段は、前記入力信号及び前記出力信号を記憶し、前記ホストコンピュータは、前記信号記憶手段の記憶内容と前記クロックに同期した電流値を前記ホストコンピュータ内にダンプして蓄積することを特徴とするマイクロコンピュータ故障解析システム。
【請求項6】
請求項5に記載のマイクロコンピュータ故障解析システムにおいて、
前記ホストコンピュータは、前記ホストコンピュータ内に蓄積された前記故障品及び前記良品の前記出力信号のレベルまたは電流値をクロック毎に比較することにより前記故障品が動作異常または電流異常となるクロック数を検出し、
前記インサーキットエミュレータと前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段とを接続して、前記ホストコンピュータの指示により前記クロック制御手段は、前記故障品が動作異常となるクロック数または前記故障品の電流異常となるクロック数までクロックを供給して、前記インサーキットエミュレータが有するデバック機能によって前記動作異常または電流異常の発生に対応したプログラム箇所を検出するようにしたことを特徴とするマイクロコンピュータ故障解析システム。
【請求項7】
マイクロコンピュータが実装され、前記マイクロコンピュータに入力信号を与える信号出力手段及び前記マイクロコンピュータからの出力信号に基づき所定の動作を行う回路手段を備えた基板と、
実装された前記マイクロコンピュータを取り外した前記基板上のフットパターンから前記入力信号及び前記出力信号を前記基板の外部に取り出す信号取り出し手段と、
前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段と接続する前記マイクロコンピュータの故障品又は前記マイクロコンピュータの良品又は前記マイクロコンピュータのインサーキットエミュレータと、
前記マイクロコンピュータを動作させるために、ホストコンピュータの指示により所定数のクロックを前記マイクロコンピュータに供給するクロック制御手段と、
前記クロックに同期して前記マイクロコンピュータの電流値を測定する電流測定手段と、を備えたことを特徴とするマイクロコンピュータ故障解析システム。
【請求項8】
請求項7に記載のマイクロコンピュータ故障解析システムにおいて、
前記故障品と、前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段とを接続して、前記クロック制御手段は前記所定数のクロックを供給し、前記ホストコンピュータは前記クロックに同期した電流値をダンプして蓄積し、
次に、前記良品と前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段とを接続して、前記所定数のクロックを供給し、前記ホストコンピュータは前記クロックに同期した電流値を前記ホストコンピュータ内にダンプして蓄積することを特徴とするマイクロコンピュータ故障解析システム。
【請求項9】
請求項8に記載のマイクロコンピュータ故障解析システムにおいて、
前記ホストコンピュータは前記ホストコンピュータ内に蓄積された前記故障品及び前記良品の電流値をクロック毎に比較することにより前記故障品が電流異常となるクロック数を検出し、
前記インサーキットエミュレータと、前記入力信号及び前記出力信号を取り出す前記信号取り出し手段とを接続して、前記ホストコンピュータの指示により前記クロック制御手段は、前記故障品の電流異常となるクロック数までクロックを供給して、前記インサーキットエミュレータが有するデバッグ機能によって前記電流異常の発生に対応したプログラム箇所を検出するようにしたことを特徴とするマイクロコンピュータ故障解析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−113447(P2011−113447A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271302(P2009−271302)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(501358507)株式会社シスウェーブ (17)
【Fターム(参考)】