説明

マイクロシステムに使用するための、二つの効果を有する火薬式(pyrotechnic)マイクロアクチュエーター、及び、これを使用したマイクロシステム

本発明は、チップ等の超小型電子技術に適用するための、マイクロシステムにおける機械的、化学的、電気的若しくは熱的機能のために使用する、又は、マイクロ流体工学を組み込んだカード等のバイオ医学的機能のために使用する、マイクロアクチュエーターの技術分野に関する。
本発明は、いわゆる主要火薬(6、721)を含む、いわゆる主要チャンバー(2、63、720)を固体の土台(3)中に含むマイクロアクチュエーター(1、60、7)であって、
上記主要チャンバー(2、63、720)は、土台の固体の壁及び変形可能な膜(4、62、710)で密閉されかつ囲まれているために、主要火薬(6、721)の燃焼により放出されたガスによって上記膜(4、62、710)が変形して、主要チャンバー(2、63、720)の固体の壁の形状は変化しないまま上記チャンバー(2、63、720)の体積が増大するマイクロアクチュエーター(1、60、7)に関する。
本発明は、主要チャンバー(720)からガスを排出するための手段を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、チップ等の超小型電子技術に適用するための、又は、マイクロ流体工学若しくはマイクロリアクター等の化学合成を組み込んだ解析用カード等のバイオ医学に適用するための、マイクロシステムにおける機械的、化学的、電気的、熱的又は流体的機能を満たすことを意図したマイクロアクチュエーターの分野である。
【背景技術】
【0002】
マイクロアクチュエーターは小型の物体であって固体の土台中に形成されていて、半導体又は絶縁体であってよく、例えば、流体超小型回路中のマイクロバルブ若しくはマイクロポンプ、又は、超小型電子回路中のマイクロスイッチ等のマイクロシステムを形成することを目的としたものである。
【0003】
静電効果、圧電効果、電磁効果及び二種の金属による効果を使用するマイクロアクチュエーターは以前から既に存在しているが、新型のマイクロアクチュエーター、すなわち花火効果を使用したマイクロアクチュエーターが出てきた。これについては、特許文献1において、経皮投与装置の貯蔵器を塞ぐための小型のバルブが開示されている。このバルブの操作原理は、空の状態の貯蔵器と貯蔵流体とを最初隔てていた基板を、火薬(pyrotechnic charge)からの燃焼ガスによって分割することを基本としたものである。別の実施形態によれば、このマイクロバルブは、膨張可能な覆いを外側につけて使用することができる。燃焼ガスによってまず基板が破壊された後、覆いが膨張して、その結果、流体が押されて排出される。しかし、これらのマイクロバルブは、基板の断片が超小型回路の中に放出されること、及び、燃焼ガスとこの燃焼ガスが放出するであろう流体とが混ざってしまうことという二つの欠点を有する。
【0004】
特許文献2は、共同に作用している三本の管の間の流体の流れを一回だけ遮断するための、小型ではないバルブについて開示している。このバルブ機構においては、袋を膨ませるためのガス発生器が上記三本の管が交わる部分に挿入されていて、流体回路を完全に閉じることができる。また、上記文献中には、特にピストンを使用して、ガスの作用で袋を変形させるという様々な実施形態についても記載されている。
【0005】
一般的に、超小型回路中に使用するマイクロアクチュエーターに必要とされることは、産出する力の点で高機能であること、小型であること、及び、マイクロアクチュエーターを組み込む超小型回路の中に粒子が入り込まないように、かつ、燃焼ガスが混ざることによって上記超小型回路が汚染される恐れがないように、操作中に分割しないでばらばらになる恐れもなく、独立した状態を維持していることである。流体超小型回路の場合には、花火技術を使用することによって、マイクロアクチュエーターが産生する圧力を、圧電気源又は静電気源に基づいて作動するマイクロアクチュエーターが産生する圧力より100〜1000倍高くすることができる。また、火薬の燃焼によって放出されるガスによれば、流体又はマイクロシステムの一部をこのガスと混合させずに加熱することができる可能性もある。
【0006】
いくつかの用途においては、例えばマイクロバルブの場合には、流体回路を開いた後又は閉じた後で、この流体回路をそれぞれ再び開く又は閉じるために、逆方向に再び作動させることができるマイクロアクチュエーターを得ることが結果として有益である可能性もある。
【特許文献1】国際公開WO98/22719号パンフレット
【特許文献2】アメリカ合衆国特許第4,111,221号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は、小型で、操作中に分割しないで独立した状態を維持していて、かつ、逆方向に作動させることができる高機能マイクロアクチュエーターを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、
主要火薬と呼ばれる火薬を含む、主要チャンバーと呼ばれるチャンバーを固体の土台中に含むマイクロアクチュエーターであって、
上記主要チャンバーは、一方では上記土台の固体の壁で、他方では変形可能な膜で密閉かつ密封されているために、主要火薬の燃焼により放出されたガスによって上記膜が変形して、上記主要チャンバーの固体の壁の形状は変化しないまま上記主要チャンバーの体積が増大し、
上記マイクロアクチュエーターは、上記主要チャンバーからのガス排出手段を含む
ことを特徴とするマイクロアクチュエーター
によって達成される。
【0009】
言いかえれば、上記火薬の燃焼により放出されたガスは上記チャンバーの固体部分の外形に影響を及ぼさず、その壁を変形又は分割しない。
【0010】
ある特徴によれば、上記火薬の燃焼により放出されたガスの排出手段は、上記膜が変形する際に作動する。多量のガスが排出されることにより上記膜の変形が復元し、これによって本発明のマイクロアクチュエーターを使用したマイクロシステムを逆方向に作動させることができるであろう。
【0011】
上記排出手段は、命令によって、又は、ある変形形態においては、例えば上記主要チャンバー内の圧力が閾値に到達した場合に作動させることができる。
【0012】
ある実施形態によれば、上記ガス排出手段は、一方の末端が上記主要チャンバー内へ達していて、かつ、別の末端が上記土台の外部へ達している排出管を含み、上記管は上記膜が変形している間は最初塞がれているが、上記排出手段は上記管を開くための手段を更に含んでいて、この更なる手段を作動させると、上記管を通して上記主要チャンバーから上記土台の外へガスを排出でき、これに伴って、上記膜が弾力性を有する場合にはこれを最初の位置に戻すことができる。
【0013】
第二の実施形態によれば、上記ガス排出手段は、一方の末端が上記主要チャンバー内へ達していて、かつ、別の末端が第二チャンバーと呼ばれる密閉された別のチャンバー内へ達している少なくとも一つの排出管を含み、上記排出管は上記膜が変形している間は最初塞がれているが、上記排出手段は上記管を開くための手段を更に含んでいて、この更なる手段を作動させると、上記管を通して上記主要チャンバーから第二チャンバー内へガスを排出でき、これに伴って上記膜の変形が復元して、本発明のマイクロアクチュエーターを使用したマイクロシステムを逆方向に作動させることができる。
【0014】
例えば流体超小型回路についての上記二つの実施形態のマイクロアクチュエーターを操作することによって、上記流体超小型回路を閉じて又は開いて、その後、この流体超小型回路をそれぞれ開く又は閉じることができる。
【0015】
上記二つの実施形態のある特徴によれば、上記ガスの排出管は上記土台中に形成されている。
【0016】
第二の実施形態のある特徴によれば、第二チャンバーは上記土台中に形成されている。
【0017】
上記二つの実施形態の別の特徴によれば、上記排出管は栓で塞がれている。
【0018】
ある特徴によれば、上記栓は火薬からなる。
【0019】
改善された実施形態によれば、第二火薬と呼ばれる別の火薬が上記二つのチャンバーのうちの一つに収容されていて、第二チャンバー内のガスが排出されたために上記膜の変形が復元した後、この第二火薬が発火することによって上記膜を再び変形させることができる。従って、この第二火薬によれば、上記アクチュエーターを再び作動させることができる。
【0020】
第二の特徴を有する上述のマイクロアクチュエーターを操作することによって、例えば流体超小型回路を閉じた後に開いてから再び閉じることができる。また、上記装置を調節すれば、逆サイクル(開/閉/開)でも実施できる。
【0021】
第一の実施形態によれば、上記火薬のそれぞれ、すなわち主要火薬、第二火薬、及び、上記栓を構成する火薬はそれぞれ加熱用導線上に堆積していて、その厚さは例えば200μm未満である。
【0022】
本発明の第二の実施形態によれば、主要火薬又は第二火薬の上記各火薬は、そのそれぞれが位置するチャンバー内を通る加熱用導電性ワイヤーを包み込んでいて、このワイヤーの直径は10μm〜100μmである。
【0023】
上記二つの形態で発火させることによって、多くの場合に当該火薬を発火させることができるが、ある形態においては伝導熱損失に関する問題が観察される。この問題は上記伝導性の発熱体が上記土台と接していることに起因する問題であり、このような損失が生じると、上記火薬を良好に発火させるために更にエネルギーが必要となり、このため、一般的に、マイクロアクチュエーターの深刻で系統的に望ましくない加熱を伴うというものである。従って、本発明の第三の実施形態によれば、例えば導電性のペンキ又はインクをスクリーン印刷又はインクジェットによって堆積させる技術等の、超小型回路の分野において広く証明されている技術を使用して、加熱用導線を火薬の上に置くことによって、上記加熱用導線と上記基板とが直接接触することを完全に防ぐことができる。
【0024】
ある特徴によれば、主要火薬又は第二火薬の上記各火薬は、上記土台中に陥没している穴を覆うようなフィルム状であってもよい。
【0025】
従って、上記火薬と任意の熱伝導性の固体の土台とを隔てることによって、伝導熱損失を低減することができる、又は、除去することさえできる。この形態については、例えばコロジオン等の、フィルムを形成できる効果的な物質を使用してもよい。
【0026】
従って、上記の伝導熱損失に関する問題を最も良好に解決するための形態は、上記土台の穴の上に上記火薬をフィルム状で堆積させること、及び、上記火薬の上に置いた加熱用導線によって上記火薬を発火させることを含む。この方法によれば、上記加熱用導線と上記土台とは直接接触せず、また、上記火薬と上記土台とも事実上接触しない。
【0027】
上記火薬を小型化することに伴って、その発火機構自身も小型でなければならず、かつ、高い信頼性を保っていなければならない。より一般的には、小型化及び信頼性という二つの必要条件を満たす他の手段によって、特に圧電性結晶若しくはストライカーピン(striker pin)のいずれかを含む手段によって、又は、導波管若しくは光ファイバーにより光エネルギーを圧電性の火薬に伝達できるレーザー光線によって、火薬を発火させることもできる。
【0028】
有利には、上記火薬、すなわち主要火薬、第二火薬、及び、上記栓を構成する火薬は、ニトロセルロース系組成物から構成されている。
【0029】
使用する火薬の大きさが非常に小さく、質量が数μg以下であるため、組成を均一にすることが特に好ましい。
【0030】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、上記火薬はグリシジルポリアジドから構成されている。
【0031】
主要チャンバーの体積は1cm未満であることが好ましい。有利には、火薬密度、すなわちチャンバーの体積に対する火薬の質量の割合は0.01μg/mm〜0.1mg/mmである。チャンバーの体積が決まっていれば、所定のエネルギーを産生できるように火薬(質量、外形及び組成)について決定することが事実上可能である。
【0032】
上記膜は、可撓性であること、及び、上記火薬によって放出されたガスの影響下で膨張できることが好ましい。上記膜の伸長特性は、上記アクチュエーターの使用に関して必要とされる条件に応じて変わるであろう。
【0033】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、上記膜は可撓性で、上記チャンバー内で折り畳まれていて、上記火薬によって放出されたガスの影響下で広がることができる。上記膜は、その形態に応じて、それ自身が折り畳まれていてもよいし、又は、上記チャンバーの中に折り畳まれていてもよい。有利には、上記ガスの影響下で上記膜が広がると、上記チャンバーの最終的な体積はその初期の体積より大きくなる。
【0034】
好ましくは、上記膜は、プラスチック及び/又は弾性物質で、例えばテフロン(R)又はラテックスで作られたものである。有利には、超小型電子技術に適用するために、上記膜は完全に又は部分的に導電材料で覆われていてもよい。
【0035】
例えば流体に圧力をかけてその移動又は排出を補助する機能等の機能は、上記マイクロアクチュエーター自身が超小型回路内に全て備えていてもよいが、より一般的には、これらの機能はマイクロシステムの中に含まれていることが意図される。
【0036】
マイクロシステムは多機能を有する小型の装置であり、その寸法は最大でも数mm以下である。流体超小型回路の場合には、マイクロシステムは例えばマイクロバルブ又はマイクロポンプであってもよく、電子超小型回路の場合にはマイクロスイッチであってもよい。上記マイクロアクチュエーターは、超小型電子技術に適用するために、例えばシリコン等で構成される半導体の土台の中に形成されている。これらは、上記以外の用途、特にバイオ医学の分野に適用するために、ポリカーボネート等の上記以外の物質を使用して設計されたものであってもよい。上記チャンバーの構造は、上記火薬の燃焼により放出されたガスの影響下で、その体積が増大するような構造である。上記チャンバーは、上記火薬を同時に発火させて上記チャンバー内の圧力を増大させるためではなく、圧力を経時的にほぼ一定に維持して(特にマイクロポンプの場合に)上記チャンバーが早く弛緩し過ぎるのを軽減する目的で、数個の火薬を含んでいてもよい。この場合、上記火薬は、一定の時間間隔で連続して発火する。また、上記チャンバーが膨張する際に、密閉された空間ができることが好ましい。言いかえれば、燃焼が完了した後、上記チャンバーの形態は最も広がった状態を維持している。
【0037】
従って、本発明はまた、本発明のマイクロアクチュエーターを含むマイクロシステムにも関するものであり、このマイクロシステムは固体部分を含み、上記膜が変形することによって上記固体部分が変位することを特徴とする。このことは、上記火薬の燃焼により放出されたガスによって上記チャンバー内に過剰な圧力がかかり、これによって上記膜が変形するために膨張する傾向がある可能性があるということに起因する。その後、上記膜が上記マイクロアクチュエーターに近接する部分と接触し、圧縮力が閾値に達した際に、上記部分が変位する。
【0038】
本発明のマイクロシステムの第一の好ましい実施形態によれば、上記固体部分は、上記燃焼ガスの影響下で動いて、その結果として流体管を塞ぐことができる。流体超小型回路において上記マイクロアクチュエーターを使用するというこの形態について、上記マイクロシステムは遮断マイクロバルブに例えることができる。
【0039】
本発明のマイクロシステムの第二の好ましい実施形態によれば、上記固体部分は最初は流体管を塞いでいるが、動いて変位すると上記管が開く。この形態については、上記マイクロシステムは開放マイクロバルブに例えることができる。
【0040】
本発明によれば、上記マイクロアクチュエーターは、上記膜の変形を復元させるためのガス排出手段を含む。上記排出管の開口部は、上記土台の外又は第二チャンバーへガスを排出することができることが好ましい。上記膜の変形が復元すると、第一の実施形態によれば流体超小型回路を再び開くことができる、又は、第二の実施形態によれば流体超小型回路を再び閉じることができる。
【0041】
本発明によれば、上記チャンバーのうちの一つは別の火薬を含んでいてもよい。この第二火薬は、上記膜の変形が復元された後で、すなわち、第一の実施形態においては流体超小型回路が再び開いた後で、又は、第二の実施形態においては流体超小型回路が再び閉じた後で発火することを意図したものである。この第二火薬が発火することにより上記二つのチャンバー内にガスで過剰な圧力がかかると、上記栓が破壊され、上記二つのチャンバーをつなげている排出管が開く。この過剰な圧力によって上記膜が更に変形して再び上記固体部分を変位させることにより、第一の実施形態においては上記流体超小型回路が再び閉じる、又は、第二の実施形態においては上記超小型回路が再び開く。
【0042】
有利には、上記流体管を塞いでいる上記固体部分の上には可撓性の突起が載っていて、上記管の閉鎖箇所を適切かつ確実に封じており、上記突起は栓に例えられる。
【0043】
本発明のマイクロシステムの第三の好ましい実施形態によれば、
i)可撓性の膜が、溝に例えることができる環状空間中に設置されていて、かつ、主要チャンバーを構成している;
ii)火薬が、上記可撓性の膜が設置されている環状空間よりも寸法が小さく、かつ、この空間に対して同心円状に配置された、溝に例えることができる環状空間中に設置されていて、上記二つの溝は少なくとも一つの開口部で互いにつながっている;かつ、
iii)平坦な固体部分が、上記可撓性の膜が設置されている環状空間を覆うことによって上記土台の上に載っていて、上記部分自身が弾性膜によって覆われかつ流体管を塞いでいて、このことによって、上記火薬の燃焼により放出されたガスによって上記環状空間中の上記可撓性の膜が広がって上記平坦な部分が変位し、その結果として、上記弾性膜が上記土台から離れることによってできた上記弾性膜の空間の中に流体が引っ張り込まれる。
【0044】
この形態については、上記マイクロシステムは真空マイクロポンプに例えることができ、また、圧力を最低閾値で一定時間維持し、こうすることによって流体の自然な逆流が早く生じ過ぎるのを完全に防ぐためには、火薬をいくつか連続して発火させて使用することは特に適切であるようである可能性がある。
【0045】
本発明によれば、ガスを第二チャンバーへ排出するための手段を使用することによって、上記膜の変形を復元できる可能性がある。こうして上記膜の変形を復元した後、上記二つのチャンバーのうちの一つに設置されている第二火薬が発火することによって、上記排出管でつながっている上記二つのチャンバー内に過剰な圧力を生じさせることができる。この過剰な圧力によって上記膜が更に変形し、従って、上記膜が上記土台から離れることによってできた上記膜の空間の中に流体が更に取り入れられる。
【0046】
本発明のマイクロアクチュエーターは、マイクロスイッチ等のマイクロシステムの製造に使用することによって、電子超小型回路の中で使用してもよい。このことは、上記チャンバーの一部を上記膜が囲んでいて、かつ、上記膜が導電材料で完全に又は部分的に覆われていてかつ膨張する又は広がることができるために、電気的超小型回路を閉じる又は開くことができるということに起因する。同様に、非導電性で可撓性の膜を有する本発明のマイクロアクチュエーターは導電性の固体部分が変位できるため、電気的超小型回路を閉じる若しくは開くことができる、又は、第一に電気的超小型回路の開放、及び、第二にこれに続いての別の電気的超小型回路の閉鎖という二つの機能を与えることができる。
【0047】
本発明の火薬式マイクロアクチュエーターは、汚染されずに、高い機能を有し、かつ、信頼性があるために有利である。本発明の火薬式マイクロアクチュエーターは二つの点で汚染されない:第一には、全操作過程にわたって分割する危険が全くなく完全形を維持していて、寄生的な固体粒子が超小型回路中に放出されるのが妨げられるという点、第二には、上記火薬によって放出されたガスを密閉空間である上記チャンバー内に閉じ込めるため、このガスが上記超小型回路の中に進入する可能性が全くないという点である。また、本発明の火薬式マイクロアクチュエーターは単純なものである。その構成要素は、膜を有するチャンバー、火薬及び発火機構のみであり、これらによって生じる物理化学的効果は基本的なものでしかない。
【0048】
最後に、決まったチャンバーの体積について、本発明のマイクロアクチュエーターの中に組み込むことができる花火組成物は非常に多様であるため、非常に広範囲の圧力を得ることできる。このことにより、本発明のマイクロアクチュエーターを非常に多くの形態において使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明のマイクロアクチュエーターの好ましい実施形態及び本発明のマイクロアクチュエーターを使用するマイクロシステムの三つの好ましい実施形態について、図1〜10を参照して以下に詳細に記載する。
【0050】
図1は、本発明のマイクロアクチュエーターの長さ方向の軸に沿った断面図である。
【0051】
図2は、閉/開/閉サイクルを実施するための、本発明の改善されたマイクロアクチュエーターによって作動するマイクロバルブの長さ方向の軸に沿った断面図である。
【0052】
図3は、図1中に示す火薬式マイクロアクチュエーターによって作動する遮断マイクロバルブの長さ方向の軸に沿った断面図である。
【0053】
図4は、図3のマイクロバルブの閉鎖フラップの上面図である。
【0054】
図5は、図1中に示す火薬式マイクロアクチュエーターによって作動する開放マイクロバルブの長さ方向の軸に沿った断面図である。
【0055】
図6は、図5の開放マイクロバルブをVI−VI面で切断した断面図である。
【0056】
図7は、図1中に示す火薬式マイクロアクチュエーターを使用したマイクロポンプの、マイクロアクチュエーター非作動時における長さ方向の軸に沿った断面図である。
【0057】
図8は、図7中に示すマイクロポンプに含まれる、変位可能な平坦な固体部分の上面図である。
【0058】
図9は、図7のマイクロポンプの、マイクロアクチュエーター作動時における長さ方向の軸に沿った断面図である。
【0059】
図10は、本発明のマイクロアクチュエーターを使用したマイクロポンプの第二の実施形態の、マイクロアクチュエーター作動時における長さ方向の軸に沿った断面図である。
【0060】
図1について、本発明のマイクロアクチュエーター1は、ポリカーボネート製の土台3の中に円筒状のチャンバー2を含む。土台3は、ポリカーボネートシートを積み重ねて接着したものである。以下に示す全ての実施形態において、この積み重ね技術を使用することができるであろう。図2について以下に示す記載は、より具体的にこの技術を表すであろう。上記チャンバー2は、その周囲をこうして土台3に囲まれ、かつ、その円形の面は例えばラテックス又はテフロン(R)で構成される可撓性の膜4で封鎖されていて、この膜は土台3の中に、例えば接着によって固定されている。上記チャンバー2の中を加熱用ワイヤー5が通っていて、このワイヤーはニトロセルロース系花火組成物6の層で覆われている。上記加熱用ワイヤーの直径は、例えば10μm〜100μmであってよい。
【0061】
このアクチュエーター1の作動工程は以下の通りである。加熱用ワイヤー5の中に電流が伝達され、その温度が上昇して花火組成物6の発火温度に達する。上記組成物6が燃焼してガスが発生し、チャンバー2内に過剰な圧力がかかる。こうして、圧力のかかった膜4は、膨張することによって反発する。
【0062】
上述するように、言うまでもなく、上記以外の発火の形態を構想してもよい。実際には、上記火薬を、上記加熱用導線上に厚さ200μm未満で堆積させてもよい。
【0063】
本明細書の導入部で記載したように、伝導性の発熱体が上記土台と接触していることによって、いくらかの熱損失が生じる可能性がある。この場合、上記加熱用導線を上記火薬の上に載せて、上記火薬が堆積している上記基板と上記加熱用導線とが直接接触することを完全に防いでもよい。また、上記伝導熱損失は、例えば上記土台中に陥没している穴を上記火薬で覆うことによって低減してもよい。従って、上記火薬は例えばフィルム状であってよく、また、上記導線は上記火薬の上に直接堆積していてもよい。この形態において、上記加熱用導線と上記土台とが直接接触していないこと、及び、穴が存在しているために上記火薬と上記土台とは事実上直接接触していないことに着目するべきである。
【0064】
図2は、図1に記載されるように上記膜を変形させるために、かつ、この変形を復元させるために改善されたマイクロアクチュエーター7を示す。図2において、このマイクロアクチュエーター7は、流体超小型回路においてマイクロバルブとして働く。本発明のマイクロアクチュエーター7は四層(71、72、73及び74)が重なったものからなっていて、それぞれの層を第一層、第二層、第三層及び第四層と呼ぶ。第二、第三及び第四層(72、73及び74)は上記土台を構成していて、例えばポリカーボネート製である。第一層71は、プラスチック及び/又は弾性物質、例えばテフロン(R)又はラテックスでできている。上記流体超小型回路を構成する第五層75は、マイクロアクチュエーター7の第一層71の上に位置する。上記流体超小型回路によって構成されるこの第五層75を、二本の管750及び751が横断している。二本の管750及び751の一方の末端は、この第五層75の面753の中に形成された、マイクロアクチュエーター7の第一層71に面した、凹面と呼ばれる凹部752の中に達している。従って、二本の管750及び751は、凹部752でつながっている。第一の管750は、例えば流体が凹部752に入るための入り口を構成していて、第二の管751は、流体が凹部752から出るための出口を構成している。
【0065】
上記マイクロアクチュエーターの第一層71は、図1中に4で示すもの等の変形可能な膜710を構成している。膜710が第五層75の凹面753に例えば接着によって固定されているため、膜710は、第五層75の凹部752の中にのみ変形できる。この変形は、例えば膨張によるものであってよい。
【0066】
第二層72は、二つの穴が横向きにあいた、厚さが例えば0.5mmのシートからなる。図1に記載するように、第一の穴の側壁、その上の第一層71及びその下の第三層73が、マイクロアクチュエーターの主要燃焼チャンバー720を囲んでいる。そして、この主要チャンバー720は、主要火薬と呼ばれる火薬721を含んでいて、膜710を変形させることができる。この主要火薬721は、上述の方法のうちの一つによって、すなわち、加熱用ワイヤー又は導線(いずれも図2中には示していない)によって発火させることができる。主要チャンバー720の直径は、例えば0.8mmであってよい。第二の穴の側壁、その上の第一層71及びその下の第三層73が、第二チャンバー又は貯蔵器722を囲んでいるが、その役割を以下に説明することとする。この第二チャンバー722の直径は、例えば2mmであってよい。
【0067】
第三層73はシートからなっていて、その中をU字型の管730が通っており、上記管の各末端は、第二層72のチャンバー720又は722のいずれか一つの中につながっている。この管730は溝部733からなっていて、この溝部は第四層74とは逆側の第三層73の表面に陥没しており、かつ、マイクロアクチュエーター7の第四層74で覆われている。溝部733の末端はそれぞれ導管731及び732となっていて垂直に伸びており、導管731及び732はそれぞれ、上記マイクロアクチュエーターの第二層72のチャンバー720及び722の中に達している。この第四層74は、管730を覆う密閉フィルムから形成されている。
【0068】
主要チャンバー720の中に達している管730の導管731は、例えば栓723によって、最初は密封状態で封鎖されている。従って、二つのチャンバー720と722とがつながることは不可能である。
【0069】
図2中に示すマイクロバルブは以下のように作動する。上記加熱用ワイヤー又は上記導線の中に電流が伝達されてその温度が上昇し、主要チャンバー720内に含まれる主要火薬721を発火させるのに十分な温度に達する。主要火薬721が燃焼することによって主要チャンバー720内にガスが発生し、これによってこのチャンバー720内に過剰な圧力がかかる。この過剰な圧力によって膜710が変形する。膜710は、ガス圧に応じて、第五層75中の凹部752の方向にのみ変形できる。こうして上記膜が膨張して凹部752の底を圧迫することにより、二本の管750と751との間に挿入される。これによって上記流体超小型回路が閉じ、この閉鎖状態は、主要チャンバー720内に含まれるガスが変形可能な膜710を圧迫する圧力によって維持される。主要チャンバー720内に含まれるガスの圧力は膜710が凹部752の底を圧迫するのに十分であり、かつ、上記超小型回路中に含まれる流体が膜710に及ぼす背圧よりも大きいため、膜710が凹部752の底を圧迫している状態を維持することができる。
【0070】
栓723は、二つのチャンバー720と722とをつなぐ管730を依然として封鎖している。この栓723は例えば火薬からなっていて、この火薬は第三層73の上で、排出管730の導管731の入り口の上に堆積している。この火薬は上述の様々な方法によって発火させることができる。この火薬が発火することによって、二つのチャンバー720と722とをつなぐ管730の入り口が開くことができる。栓723で構成される火薬の燃焼によって生成したガスが加わるために、主要火薬721の燃焼によって既に存在していたガスが増大する。第二チャンバー722内の圧力が主要チャンバー720内の圧力より低いため、主要チャンバー720内に含まれるガス、すなわち、主要火薬721の燃焼によって生成したガス及び栓723で構成される火薬によって生成したガスは、管730から排出されて第二チャンバーの中に流入することができる。第二チャンバー722の体積が十分に大きいために、二つのチャンバー720と722との間のガス圧は、上記超小型回路中に含まれる流体が膜710に及ぼす背圧よりも小さくなる。このようにガス圧が減少するために膜710が変形し、上記流体超小型回路の管750、751が構成する開口部が開放される。このように膜710が凹部752の外へ変形することによってバルブが開き、その結果、上記流体超小型回路の二本の管750と751とがつながる。
【0071】
別の実施形態によれば、主要チャンバー720を外気と連結させることによって、主要チャンバー720内に含まれるガスを上記装置の外に排出することもできる。この実施形態によれば、膜710は、弾性を有していれば、その初期の位置に戻る。
【0072】
本発明によれば、栓723を構成している火薬は、運転者の命令によって、及び/又は、主要チャンバー720内における圧力が閾値に達した時点で発火してもよい。
【0073】
本発明によれば、第二火薬と呼ばれる別の火薬724は、主要チャンバー720又は第二チャンバー722のいずれか一つのチャンバー内にあってよい。図2においては、第二火薬724は第二チャンバー722内にある。この火薬724は上述の形態のうちの一つにおいて、すなわち加熱用ワイヤー又は導線によって発火させてもよい。
【0074】
本発明によれば、二つのチャンバー720と722とがつながった後でこの更なる火薬724が発火すると、つながっている二つのチャンバー720及び722内部のガス圧が過剰になるであろう。このような二つのチャンバー720及び722内部のガス圧が過剰になることによって、膜710は更に変形する。膜710は、第五層75中の凹部752の中にのみ変形できる。その結果、上記膜はガス圧により上記凹部の中に膨張して、凹部752の底を圧迫し、凹部752の中に伸びている管750及び751の末端を封鎖する。ここでも、二つのチャンバー720、722内部のガス圧は、膜710を変形するのに十分であり、かつ、上記超小型回路中に含まれる流体が膜710に及ぼす背圧より大きい。
【0075】
本発明によれば、使用する主要火薬及び第二火薬(721及び724)の上記チャンバー内における量は、上記膜を変形させ、かつ、上記物質の劣化を完全に防ぐのに十分な量であろう。上記火薬は、例えば、第三層(73)上で、上述の形態のうちの一つによって発火するであろう。
【0076】
主要火薬721の質量は、この火薬が位置している主要チャンバー720の体積、膜710を変形するのに必要なガスの体積、及び、上記超小型回路中に含まれる流体が膜710に及ぼす背圧に応じて異なるであろう。同様に、第二火薬724の質量は、二つのチャンバー720及び722の体積、主要火薬721の質量、並びに、栓723を構成している火薬の質量に応じて異なるであろう。上記二つの火薬、及び、栓723を構成している火薬は、第三層の上で、例えばそれぞれ異なる穴の上に堆積しているため、伝導熱損失を回避することができる。
【0077】
また、本発明によれば、第二チャンバー722と同型の多数の別のチャンバーを、火薬で最初は封鎖されている管を介して主要チャンバー720とつなげた状態で提供することもでき、この数は、実施が望まれる閉/開サイクル数に応じて異なる。これらのチャンバーの体積については、そのうちの一つを開いた際に、つながった全てのチャンバー内のガス圧が、上記超小型回路中に含まれる流体が膜710に及ぼす背圧よりも常に小さくなる程十分に大きくなければならない。また、上記超小型回路の開放後に膜710を更に変形できるような上記チャンバー内の上記火薬の質量については、上記つながっているチャンバー内の圧力を、膜710を更に変形させる程高く、かつ、上記超小型回路中に含まれる流体が膜710に及ぼす背圧より大きくするのに必要な量のガスを常に生成できる程十分に多くなければならない。
【0078】
図3は、図1に示すものと類似するマイクロアクチュエーター1を流体超小型回路11の近くに含む、ポリカーボネート土台中における遮断マイクロバルブ10を示す。この流体超小型回路11はまっすぐな管12を有していて、この管は、マイクロアクチュエーター1の円筒状チャンバー2の延長部にあって直径がほぼ等しい円筒状チャンバー14を通っていて、二つのチャンバー2、14はマイクロアクチュエーター1の膜4で隔たれている。管12が通っているチャンバー14は流体で満たされていて、閉鎖フラップ15を含んでいる。図4中に示すように、フラップ15は、丸穴が横向きにあいた平坦な固体部分によって形成される。上記固体部分に直交して付いている二本の枝状部18の直径は、上記穴の二つの直径に従う。これらの二本の枝状部18が交差する位置に球状部16がある。流体は、球状部16を形成している固体部分の枝状部の間を通って、膜4と管12との間を流れることができる。上記球状部16はゴム等の可撓性材料で構成されていて、このため、膜4と直接には接触していない。チャンバー2の体積は0.3mmであり、火薬6の質量は0.5μgである。
【0079】
この遮断マイクロバルブ10の操作形態は以下の通りである。火薬6が発火することによってチャンバー2内が過圧状態となり、そのため、流体で満たされたチャンバー14内にフラップ15が変位する。こうして変位を続けて可撓性部分16が管12の中に埋まり込み、流体の流れを遮断する。上記管は可撓性部分16が入るように意図された部分が漏斗型にわずかに広がっていて、上記管を確実に密封して閉鎖できるようになっている。火薬6の燃焼が終了しても、チャンバー2が密閉空間になっているために、フラップ15はその初期の位置に戻らない。
【0080】
本発明によれば、外部への、又は、図2に示す型の第二チャンバーへのガスの排出についてもまた、この実施形態において構想してもよい。この場合、図2中に示すマイクロバルブと同様に、上記土台の外部へガスが排出されることにより、又は、主要チャンバー2が第二チャンバーとつながることによってガス圧が減少することにより、上記超小型回路中に含まれる流体の圧力の影響を受けて膜4の変形が十分に復元されて、管12が再び開く。ガスが第二チャンバー内に排出される場合、図2に示す実施形態におけるのと同様に、第二火薬が上記チャンバーのうちの一つの内部にあってもよく、これによって発火後に膜4は更に変形できる。この第二火薬が発火することによって、つながっている上記二つのチャンバー内に新たに過剰な圧力がかかり、その結果、膜4が再び変形する。この新たな変形は、球状部16が管12の漏斗型に広がった部分の中に埋め込まれるまで継続して、この管を再び閉じるであろう。これらの修正を加えて、マイクロバルブ10は管12に対して閉/開/閉サイクルを実施できるであろう。
【0081】
また、上述するように、このマイクロバルブ10について、第二チャンバー722と同型の多数の別のチャンバーを提供することもでき、この数は、実施が望まれる閉/開サイクル数に応じて異なる。
【0082】
図5中に示すように、開放マイクロバルブ20は、ポリカーボネート土台中に形成されていて、かつ、図1の断面図に示すものと類似するマイクロアクチュエーター1を流体超小型回路の近くに含んでいる。上記土台と一体化していてこれと同じ材料でできた可撓性のポリカーボネートの翼21は、上記マイクロアクチュエーター1、より具体的にはその膜4の非常に近くに設置されている。図6は、可撓性の翼21が、厚さが一定で平坦であり、丸い胴部22を有していて、幅が狭くて細長い部分23がこの胴部から伸びていて、この部分の末端が円形であることを示す。翼21は、厚さがより薄い凸縁24によって上記土台に取り付けられている。より正確には、この凸縁24によって、上記土台と翼21の丸い胴部22の末端、すなわち、幅の狭い部分23の、上記円形の末端から長さ方向に最も離れた末端とがつながっている。上記幅の狭い部分23の円形の末端にはほぼ半球形で可撓性の突起25がついていて、この突起25によって管26が封鎖されている。管26中の流体によって背圧がかかっている場合でも、翼21が最初に屈曲することによって、密閉状態を維持するのに必要な力が得られる。
【0083】
この開放マイクロバルブ20の操作形態は以下の通りである。火薬6が発火することによってチャンバー2内が過圧状態になり、その後、膜4が膨張して可撓性の翼21を圧迫する。膨張した膜4は、図5中に点線で示す。上記翼21に圧縮力がかかることにより、上記土台とつながっている凸縁24を中心として上記翼が動いて、上記翼21の突起25で最初は封鎖されていた管26が開くことができる。翼21はこのように変位する間も固いままで変形しないため、可動式フラップとして働く。
【0084】
本発明によれば、外部への、又は、図2に示す型の第二チャンバーへのガスの排出についてもまた、この実施形態において構想してもよい。この場合、図2中に示すマイクロバルブと同様に、ガスの排出又はガス圧の減少により膜4の変形が復元された結果、この場合は図3に示すマイクロバルブとは異なり、管12が再び閉じるであろう。図2及び図3中に示す実施形態におけるのと同様に、上記土台中の第二チャンバー内にある第二火薬が発火してもよく、その結果、膜4は更に変形できる。このように上記膜が更に変形することによって、管26が再び開く。これらの修正を加えて、マイクロバルブ20は管26に対して開/閉/開サイクルを実施できるであろう。
【0085】
また、上述するように、このマイクロバルブ20について、第二チャンバー722と同型の多数の別のチャンバーを提供することもでき、この数は、実施が望まれる開/閉サイクル数に応じて異なる。
【0086】
図7は、本発明のマイクロアクチュエーター60をポリカーボネートの土台61中に、例えばシートを積み重ねて接着することによって含み、かつ、溝に例えることができる環状空間63中に可撓性の膜62を含む、真空マイクロポンプ40を示す。より正確には、膜62は溝63の底を覆っていて、その上部で溝63に取り付けられている。膜62が設置されている63より寸法が小さく、溝63に対して同心円状にあって、かつ、溝に例えることができる環状の空間内に火薬が設置されていて、上記二つの溝は、この二つの溝を隔てる環状の壁に等間隔であいている四つの開口部で互いにつながっている。上記火薬を含む溝は土台61中に埋め込まれていて、可撓性の膜62で覆われた溝63の上部は開いている。ポリカーボネートの土台61のシート64は、溝63を覆っている。土台61中においてシート64の向こう側には円筒状の開放空間65があり、上記空間65は、その径がシート64の径より大きく、かつ、二つの穴66を有している。シート64は弾性膜67で覆われていて、この弾性膜は、環状であり、かつ、その径はシート64の向こう側にある開放空間64の径よりも大きい。弾性膜67は開放空間65中のシート64に最も近い部分で固定されている。流体管68は、土台61中に、上記火薬を含む溝の中央部に陥没していて、土台61中の開放空間65の中に達している。
【0087】
図8中に示すように、外側の平坦で環状のバンド80と中央の平坦な円盤81との間がS形の変形可能な四つのらせん構造82によってつながるように、シート64が切り取られている。中央の円盤81は環状の溝63を完全に覆っている。上記中央の平坦な円盤81と外側の環状のバンド80との間に空洞状の環状空間83がある。
【0088】
この種の真空マイクロポンプの操作形態は以下の通りである。図7、8及び9について、上記火薬が燃焼することによってガスが生成し、このガスが、上記四つの開口部を通って、可撓性の膜62で覆われた外側の溝63の中に入ると、直ちに膜が裏返しの状態になり始め、この膜が設置されている溝63の中から一端を上にした状態で、図9中に示すようにタイヤビード69として現れることができる。このようにビード69が形成されることによって、シート64の円盤81が変位する。このような円盤81の変位は、S形の変形可能な四つのらせん構造82が環状のバンド80とつながったままで破壊されずに伸びることによって実現できる。このように変位することによって、弾性膜67が土台61から離れることによってできた上記弾性膜の空間の中に流体が取り入れられる。流体が引っ張り込まれる空間は、弾性膜67によって確実に密閉される。弾性膜67の後ろの空間の中の空気は、開放空間65の二つの穴66から放出されるために体積が減少し続ける。
【0089】
図10中に示すように、本発明のマイクロアクチュエーターを使用するマイクロポンプ100の第二の実施形態と上述のマイクロポンプとは、シート102及びそれを覆っている膜101のみが異なる。正確には、シート102の形状は広がった平坦な円盤103であり、その径は、図7中に65で示す空間に相当するシート102の向こう側の円筒状の開放空間の径と本質的に等しい。円盤103は、S形の変形可能な四つのらせん構造105によって土台104とつながっている。このように、シート102を覆っている膜101は上記円筒状の開放空間の中に固定されていて、この空間の底面及び内部側壁を完全に覆っている。膜101は、シート102から最も離れた部分が、上記空間の内部側壁に固定されている。このようなマイクロポンプ100の操作原理は、第一の実施形態中に記載した原理と類似している。このような形態によって得られる技術的な利点は、マイクロアクチュエーターを操作する前には流体が引っ張り込まれる空間が本質的にシート102の向こう側にあるため、この空間の体積が増大することである。
【0090】
本発明によれば、外部への、又は、図2に示す型の第二チャンバーへのガスの排出についてもまた、マイクロポンプ40及び100の上記二つの実施形態において構想してもよい。この場合、環状のチャンバー63と第二チャンバーとは管でつながっている。流体を吸い込むこの管は、膜62が最初に変形する間は封鎖されている。本発明によれば、外部へガスが排出されることにより、又は、上記環状のチャンバーが第二チャンバーとつながってガス圧が減少することにより、膜62内のガスが減少してその変形が復元するであろう。図2に示す実施形態におけるのと同様に、ガスがいくらか第二チャンバーに排出される場合、第二火薬を上記チャンバーのうちの一つの内部に設置して、この火薬の発火によって膜62を更に変形させてもよい。この第二火薬が発火すると、上記つながっている二つのチャンバー内に更に過剰な圧力がかかって、膜62が再び膨張するであろう。膜62が膨張すると、弾性膜67が土台61から離れることによってできた弾性膜の空間の中に流体が更に取り入れられる。これらの修正を加えて、マイクロポンプ40及び100は、液体を二回連続して取り入れることができるであろう。
【0091】
上述するように、マイクロポンプ40及び100の上記の両方の実施形態について、第二チャンバー722と同型の多数の別のチャンバーを提供することもでき、この数は、何回取り入れたいかに応じて変わる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明のマイクロアクチュエーターの長さ方向の軸に沿った断面図である。
【図2】閉/開/閉サイクルを実施するための、本発明の改善されたマイクロアクチュエーターによって作動するマイクロバルブの長さ方向の軸に沿った断面図である。
【図3】図1中に示す火薬式マイクロアクチュエーターによって作動する遮断マイクロバルブの長さ方向の軸に沿った断面図である。
【図4】図3のマイクロバルブの閉鎖フラップの上面図である。
【図5】図1中に示す火薬式マイクロアクチュエーターによって作動する開放マイクロバルブの長さ方向の軸に沿った断面図である。
【図6】図5の開放マイクロバルブをVI−VI面で切断した断面図である。
【図7】図1中に示す火薬式マイクロアクチュエーターを使用したマイクロポンプの、マイクロアクチュエーター非作動時における長さ方向の軸に沿った断面図である。
【図8】図7中に示すマイクロポンプに含まれる、変位可能な平坦な固体部分の上面図である。
【図9】図7のマイクロポンプの、マイクロアクチュエーター作動時における長さ方向の軸に沿った断面図である。
【図10】本発明のマイクロアクチュエーターを使用したマイクロポンプの第二の実施形態の、マイクロアクチュエーター作動時における長さ方向の軸に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0093】
1、マイクロアクチュエーター
2、チャンバー
3、土台
4、膜
5、加熱用ワイヤー
6、火薬
7、マイクロアクチュエーター
10、マイクロバルブ
11、流体超小型回路
12、管
14、円筒状チャンバー
15、フラップ
16、球状部
18、枝状部
20、マイクロバルブ
21、翼
22、翼の丸い胴部
23、翼の幅が狭くて細長い部分
24、凸縁
25、突起
26、管
40、真空マイクロポンプ
60、マイクロアクチュエーター
61、土台
62、膜
63、環状空間
64、シート
65、円筒状の開放空間
66、穴
67、弾性膜
68、流体管
69、タイヤビード
71、第一層
72、第二層
73、第三層
74、第四層
75、第五層
80、外側の平坦で環状のバンド
81、中央の平坦な円盤
82、S形の変形可能ならせん構造
83、環状空間
100、マイクロポンプ
101、膜
102、シート
103、平坦な円盤
104、土台
105、S形の変形可能ならせん構造
710、膜
720、主要チャンバー
721、主要火薬
722、第二チャンバー
723、栓
724、第二火薬
730、U字型の管
731、導管
732、導管
733、溝部
750、第一の管
751、第二の管
752、凹部
753、面
VI−VI、切断線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要火薬と呼ばれる火薬(6、721)を含む、主要チャンバーと呼ばれるチャンバー(2、63、720)を固体の土台(3)中に含むマイクロアクチュエーター(1、60、7)であって、
主要チャンバー(2、63、720)は、一方では前記土台の固体の壁で、他方では変形可能な膜(4、62、710)で密閉かつ密封されているために、主要火薬(6、721)の燃焼により放出されたガスによって膜(4、62、710)が変形して、主要チャンバー(2、63、720)の固体の壁の形状は変化しないまま主要チャンバー(2、63、720)の体積が増大し、
前記マイクロアクチュエーターは、前記主要チャンバー(720)からのガス排出手段を含む
ことを特徴とするマイクロアクチュエーター(1、60、7)。
【請求項2】
前記ガス排出手段は、命令によって作動させることができる
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロアクチュエーター(1、60、7)。
【請求項3】
前記ガス排出手段は、一方の末端が主要チャンバー(720)内へ達していて、かつ、別の末端が前記土台の外部へ達している排出管(730)を含み、管(730)は膜(710)が変形している間は最初塞がれているが、前記排出手段は管(730)を開くための手段を更に含んでいて、この更なる手段を作動させると、管(730)を通して主要チャンバー(720)から前記土台の外へガスを排出できる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロアクチュエーター(7)。
【請求項4】
前記ガス排出手段は、一方の末端が主要チャンバー(720)内へ達していて、かつ、別の末端が第二チャンバーと呼ばれる密閉された別のチャンバー(722)内へ達している少なくとも一つの排出管(730)を含み、管(730)は膜(710)が変形している間は最初塞がれているが、前記排出手段は管(730)を開くための手段を更に含んでいて、この更なる手段を作動させると、管(730)を通して主要チャンバー(720)から第二チャンバー(722)内へガスを排出できる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロアクチュエーター(7)。
【請求項5】
排出管(730)は栓(723)で塞がれている
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のマイクロアクチュエーター(7)。
【請求項6】
栓(723)は火薬からなる
ことを特徴とする請求項5に記載のマイクロアクチュエーター(7)。
【請求項7】
第二火薬(724)と呼ばれる別の火薬が二つのチャンバー(720、722)のうちの一つに収容されている
ことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項8】
火薬のそれぞれ(6、721、723、724)は加熱用導線上に堆積していて、その厚さは200μm未満である
ことを特徴とする請求項7に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項9】
主要火薬又は第二火薬の各火薬(721、724)は、土台(3)中に陥没している穴を覆うようなフィルム状であってもよい
ことを特徴とする請求項7又は8に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項10】
前記土台はいくつかの層(71、72、73、74)が重なったものからなる
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項11】
火薬(6、721、723、724)は、ニトロセルロース系組成物から構成されている
ことを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項12】
主要チャンバー(2、63、720)の体積は1cm未満である
ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項13】
火薬密度、すなわち主要チャンバー(2、63、720)の体積に対する主要火薬(6、721)の質量の割合は0.01μg/mm〜0.1mg/mmである
ことを特徴とする請求項12に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項14】
膜(62)は可撓性で、前記チャンバー(63)内で折り畳まれていて、前記膜(63)は、火薬(6)によって放出されたガスの影響下で広がることができる
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項15】
膜(4、62、710)は、テフロンで作られたものである
ことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のマイクロアクチュエーター。
【請求項16】
請求項1〜18のいずれか1項に記載のマイクロアクチュエーター(1、60)を含むマイクロシステムであって、
固体部分を含み、膜(4、62)が変形することによって前記固体部分(15、21、64)が変位する
ことを特徴とするマイクロシステム。
【請求項17】
固体部分(15)は、前記燃焼ガスの影響下で動いて流体管(12)を塞ぐ
ことを特徴とする請求項16に記載のマイクロシステム。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のマイクロアクチュエーター(60)を含むマイクロシステムであって、
i)可撓性の膜(62)が、溝に例えることができる環状空間(63)中に設置されていて、かつ、前記主要チャンバーを構成している;
ii)火薬が、可撓性の膜(62)が設置されている環状空間よりも寸法が小さく、かつ、この空間に対して同心円状に配置された、溝に例えることができる環状空間中に設置されていて、前記二つの溝は少なくとも一つの開口部で互いにつながっている;かつ、
iii)平坦な固体部分(64)が、可撓性の膜(62)が設置されている環状空間(63)を覆うことによって土台(61)の上に載っていて、前記部分(64)自身が弾性膜(67)によって覆われかつ流体管(68)を塞いでいて、このことによって、前記火薬の燃焼により放出されたガスによって環状空間(63)中の可撓性の膜(62)が広がって平坦な部分(64)が変位し、その結果として、弾性膜(67)が土台(61)から離れることによってできた前記弾性膜の空間の中に流体が引っ張り込まれる
ことを特徴とするマイクロシステム。
【請求項19】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のマイクロアクチュエーターを含むマイクロシステムであって、
膜(4)は、前記燃焼ガスの影響下で動いて、その結果として流体管を塞ぐ
ことを特徴とするマイクロシステム。
【請求項20】
請求項3又は4に記載のマイクロアクチュエーターを使用して、流体超小型回路を閉じて又は開いて、その後、この流体超小型回路をそれぞれ開く又は閉じるための方法。
【請求項21】
請求項3又は4に記載のマイクロアクチュエーターを使用して、流体超小型回路を閉じて又は開いて、その後、この流体超小型回路をそれぞれ開き又は閉じ、更にその後この流体超小型回路を閉じる又は開くための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−510854(P2006−510854A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554601(P2004−554601)
【出願日】平成15年11月18日(2003.11.18)
【国際出願番号】PCT/FR2003/003404
【国際公開番号】WO2004/048787
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(504238301)ビオメリュー (74)
【Fターム(参考)】