説明

マイクロチャネルプレートの拡散接合方法

マイクロチャネルプレート(MCP)(50)と誘電絶縁体(80)は、最適な拡散のために選択された適当な金属を使って薄膜蒸着される。その後、金属化されたMCP(50)及び誘電絶縁体(80)は位置合わせされて、拡散接合を開始するのに必要な力を与える接合固定具(36)内に配置される。その後、接合固定具(36)は、MCP(50)と誘電絶縁体(80)との間の拡散接合処理を加速させるために真空熱チャンバ内に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2003年3月30日出願の米国仮特許出願第60/320,067号“DIFFUSION BONDING METHOD FOR MICROCHANNEL PLATES”に基づくものである。
【0002】
本発明は、マイクロチャネルプレート(MCP)を有する電子デバイスに関し、特に、マイクロチャネルプレートを他のコンポーネントに接合させるための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
典型的に、既知のMCPは導体材料で両面が被覆された抵抗ガラスで作られている。電子増幅を促進するために、電極に高電圧が印加される。
【0004】
しばしば従来のMCPは、セラミック製シムにより分離された2つの電極(入力及び出力)の間にサンドイッチされている。この既知の設計は、MCPの入力面を隠し、スペーサとのインターフェースを許さない。
【0005】
本発明は絶縁体から成るスペーサとMCPとのインターフェースをもたらす。
【0006】
上記参考文献は従来技術の多くの利点及び技術的改良を紹介し開示しているが、本発明により達成される特定の目的を完全に満足するものは存在しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、リテーナまたははんだ/蝋付け材料を使用することなく、MCPを誘電絶縁体へ接合することである。接合方法は低せん断力を有する脆性材料に関する。MCPと誘電絶縁体との接合は、少なくとも400℃かつ500Gの衝撃の熱機械応力の下で変化してはならない。
【0008】
本発明の他の目的、利点及び特徴は、発明の好適実施例として示される図面を参照した以下の詳細な説明から明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従い、イメージ増強管のような電子デバイスで使用するために、電子増幅に適したマイクロチャネルプレート(MCP)を絶縁体に接合する方法が説明される。応用可能な絶縁材料は、これに限定されないが、サファイア及び窒化シリコンを含む。機械的締め具またはリテーナは所望されない。接合は低せん断力を有する脆性材料に関連する。接合方法ははんだまたは蝋付け材料を必要としない。
【0010】
MCP及び誘電絶縁体は、最適に拡散するように選択された適当な金属材料を使って薄膜蒸着される。適当な金属材料は、これらに限定されないが、金、銀、及び銅を含む。金薄膜蒸着はMCPと誘電絶縁体との間の接合を形成するのに好適である。
【0011】
金属化されたMCP及び誘電絶縁体は、位置合わせされて、接合固定具内に配置される。接合固定具は拡散接合を開始するためにコンポーネントに印加される必要な力を与える。その後、接合固定具はMCPと誘電絶縁体との間での拡散接合処理を加速するために、真空熱チャンバ内に配置される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の上記特徴、利点及び目的が達成されるところの方法が理解できるように、発明のより詳細な説明が図面に示された実施例を参照して為される。すべての図面において、同じ部品は同一符号で示される。
【0013】
マイクロチャネルプレート(MCP)50及び誘電絶縁体80は、対向するコンパチブルな外面または表面へ、最適に拡散するように選択されたひとつまたはそれ以上の適当な金属または合金を使って薄膜蒸着される。適当な金属は、これらに限定されないが、金、銀、及び銅を含む。金の薄膜蒸着は、MCP50と誘電絶縁体80との間の接合を形成するのに好適に使用される。
【0014】
金属化されたMCP50及び誘電絶縁体80は、接合固定具F内に位置合わせされて配置される。接合固定具Fは、拡散接合を開始するために、コンポーネントに印加すべき必要な力26を与える。その後、接合固定具Fは、所望の真空または温度を通じて、MCP50と誘電絶縁体80との間の拡散接合処理を加速させるために、既知の真空加熱チャンバV内に配置される。
【0015】
拡散接合処理は、MCP50と誘電絶縁体80との間の十分な接合を与える。
【0016】
MCP50及び誘電絶縁体80は、最適な拡散のために選択された適当な金属または合金を使って薄膜蒸着される。適当な金属は、これらに限定されないが、金、銀及び銅を含む。
【0017】
熱機械サイクルの終点において、接合は安定し、各部品は図5に略示されるようなイメージ増強管Iのような既知の装置内で使用準備が完了する。付加的なアニールまたは加圧サイクルは必要ない。
【0018】
図3を参照して、サファイアリングのような誘電絶縁体80は薄膜被覆84を有する金属化接合面82を有する。
【0019】
図4を参照して、MCP50は薄膜金属被覆54で金属化された面52を有する。好適には、MCP50の両対向面は同様の金属被覆が施される。また、誘電絶縁体80の接合面82はMCP50の金属化面52とコンパチブルである。
【0020】
金または他の選択金属のトレース56が見える。製造に使用されるクロムまたは他の金属の模様58がMCP50上に形成される。
【0021】
図5において、多層セラミックボディであるMCPボディ部材60は、金のような選択された金属のバンプが接合されて形成されている。これは標準的な固体状態処理であり、好適には対向する入出力面64の両方へ適用される。付加的なバイアスマーク66が製造処理中のアライメントを容易にするために適用されても良い。
【0022】
概して、誘電絶縁体80、MCP50及びMCPボディユニット60は以下に説明されるように組み立てられ、真空オーブンV内に配置される。好適には、コンポーネントは、固定具Fを除去するためにオーブン温度がゆっくりと室温まで戻るまでの所定の時間間隔の間、真空オーブンV内に放置される。
【0023】
本発明は以下のような利点を有する。
a.MCPを誘電絶縁体へ接合するための既知の方法は存在しない。
b.MCPを誘電絶縁体へ接合するための接合方法を与える。
c.接合用のフットプリントが小さい。
d.接合またはコンポーネントを劣化させることなく拡散接合を強化するために、約400℃の熱サイクルが使用される。
e.MCPの開口入力面は空洞の深さを減少させることにより陰極入力窓の改良型デザインを与える。
f.誘電絶縁体はフォトカソードとMCPとの間の適当な入力間隔ギャップの改良型デザインを与える。
【0024】
さらに、MCP50と誘電絶縁体80との接合の要件は、既知の方法と同じではない。本発明はMCP50を誘電絶縁体80へ接合するための新規な接合方法を与える。本発明の接合技術は、イメージ増強管のような装置内で、フォトカソードとMCP50との間隔を制御する改良型デザインを与える。
【0025】
特に図1及び2を参照して、組み立てシーケンスは以下の工程を含む。
a.加圧接合固定ベース10と加圧接合固定リング/ベースユニット12とが組み立てられる。
b.サファイアワッシャー14のような誘電絶縁体80が、金の金属化面14aを有する加圧接合固定リング/ベースユニット12の頂部へ配置される。
c.金のような金属で金属化された両面を有するMCP16は、MCP16と誘電絶縁体14との間で最大量の金が接触するように、金の接合トレース56と一致するよう位置合わせして、サファイアワッシャ−14の頂部に配置される。
d.金または他の選択された金属バンプ18が接合されたMCPボディ20が、MCP16及びMCPボディ20の両方のアライメント用のバイアスマークを使ってMCP16の頂部に配置される。
e.上部加圧接合ディスクユニット22がMCPボディ20の頂部に配置される。
f.加圧接合固定具36の上部またはトッププレートユニット24が、この点で作られる接触または力無しで、固定具の下半分またはベース10と組み立てられる。
g.その後、所望のわずかな力26が固定用のディスクユニット22へ印加される。
h.下側の止めネジ28が外され、アライメントリングユニット32が落下し、もはやMCP20との接触はなくなる(この工程はコンポーネントの除去の間に必ずしも必要ではない)。
i.予め選択された力が、加圧接合固定具36の上部止めネジ30を使って加圧ユニット34へ印加される。
【0026】
分解は、始める前に力を解放するべく止めネジ28をゆっくり使って逆の順序で実行される。
【0027】
概して、ひとつまたはそれ以上の硬いポスト38が下部ベース10及び上部プレートユニット24の分離を維持する。接合圧力を設定しかつ解放するためのハンドルアセンブリHは、ハンドルシリンダ41、軸42、バネ44、及びボールベアリング48を束縛するピストンまたはカップユニット46へ結合された上部止めネジ30を有するハンドルまたはノブ40を含む。付加的に、ロックナット49が所望の圧力レベルで固定具36をロックするべくハンドルアセンブリHと協働する。
【0028】
本発明の上記開示及び説明は例示に過ぎず、発明の思想から離れることなくさまざまな変更または修正が可能であることは当業者の知るところである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明で使用される固定アセンブリの正面図である。
【図1A】図1Aは、図1の固定具の平面図である。
【図1B】図1Bは、図1の固定具の底面図である。
【図2】図2は、図1の固定アセンブリの分解図である。
【図3】図3は、誘電絶縁体の平面図である。
【図4】図4は、マイクロチャネルプレートの平面図である。
【図5】図5は、マイクロチャネルプレートと誘電スペーサが挿入されたボディユニットの平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロチャネルプレート(MCP)を誘電絶縁体へ接合する方法であって、
MCP及び誘電絶縁体のコンパチブルな外面にわたって、上昇した温度及び圧力で最適に拡散するよう選択された適当な金属から成る薄膜を蒸着する工程と、
金属化したMCP及び誘電絶縁体を位置合わせして接合固定具に配置し、選択した温度で拡散接合処理を開始するために、MCP及び誘電絶縁体のコンパチブルな外面に対して十分な圧力を印加する工程と、
MCPと誘電絶縁体との間の拡散接合を加速させるために、加圧された金属化MCP及び誘電絶縁体を固定する接合固定具を真空熱チャンバ内に配置する工程と、
から成る方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、薄膜蒸着に適した金属は、金、銀及び銅から成る集合から選択される、ところの方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、誘電絶縁体はサファイアリングである、ところの方法。
【請求項4】
電子増幅に適したマイクロチャネルプレート(MCP)を含むタイプのマイクロチャネルプレートボディのアセンブリであって、
接合面を有するMCPと、
MCPの接合面とコンパチブルな接合面を有する誘電絶縁体ユニットと、
から成り、
MCPの接合面は誘電絶縁体のコンパチブルな拡散接合面へ拡散接合される、ところのアセンブリ。
【請求項5】
請求項4に記載のアセンブリであって、誘電絶縁体はサファイアリングである、ところのアセンブリ。
【請求項6】
請求項4に記載のアセンブリであって、MCPのコンパチブルな表面には、MCPと誘電絶縁体の接合前に、金属薄膜が蒸着される、ところのアセンブリ。
【請求項7】
請求項4に記載のアセンブリであって、誘電絶縁体のコンパチブルな表面には、MCPと誘電絶縁体の接合前に、金属薄膜が蒸着される、ところのアセンブリ。
【請求項8】
請求項6に記載のアセンブリであって、薄膜は、金、銀及び銅から成る集合から選択された金属を含む、ところのアセンブリ。
【請求項9】
請求項7に記載のアセンブリであって、薄膜は、金、銀及び銅から成る集合から選択された金属を含む、ところのアセンブリ。
【請求項10】
請求項4に記載のアセンブリであって、マイクロチャネルプレートボディのアセンブリは、イメージ増強管内で使用するよう適応される、ところのアセンブリ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロチャネルプレート(MCP)を誘電絶縁体へ接合する方法であって、
MCP及び誘電絶縁体のコンパチブルな外面にわたって、上昇した温度及び圧力で最適に拡散するよう選択された適当な金属から成る薄膜を蒸着する工程と、
金属化したMCP及び誘電絶縁体を、MCPの周辺付近に配置された誘電絶縁体と位置合わせして接合固定具内に配置し、選択した温度で拡散接合処理を開始するために、MCP及び誘電絶縁体のコンパチブルな外面に対して十分な圧力を印加する工程と、
MCPと誘電絶縁体との間の拡散接合を加速させるために、加圧された金属化MCP及び誘電絶縁体を固定する接合固定具を真空熱チャンバ内に配置する工程と、
から成る方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、薄膜蒸着に適した金属は、金、銀及び銅から成る集合から選択される、ところの方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、誘電絶縁体はサファイアリングである、ところの方法。
【請求項4】
電子増幅に適したマイクロチャネルプレート(MCP)を含むタイプのマイクロチャネルプレートボディアセンブリであって、
接合面を有するMCPと、
MCPの接合面とコンパチブルな接合面を有し、前記MCPの周辺付近に配置されている誘電絶縁体と、
から成り、
MCPの接合面は誘電絶縁体のコンパチブルな拡散接合面へ拡散接合される、ところのアセンブリ。
【請求項5】
請求項4に記載のアセンブリであって、誘電絶縁体はサファイアリングである、ところのアセンブリ。
【請求項6】
請求項4に記載のアセンブリであって、MCPのコンパチブルな表面には、MCPと誘電絶縁体との接合前に、金属薄膜が蒸着される、ところのアセンブリ。
【請求項7】
請求項4に記載のアセンブリであって、誘電絶縁体のコンパチブルな表面には、MCPと誘電絶縁体との接合前に、金属薄膜が蒸着される、ところのアセンブリ。
【請求項8】
請求項6に記載のアセンブリであって、薄膜は、金、銀及び銅から成る集合から選択される金属を含む、ところのアセンブリ。
【請求項9】
請求項7に記載のアセンブリであって、薄膜は、金、銀及び銅から成る集合から選択される金属を含む、ところのアセンブリ。
【請求項10】
請求項4に記載のアセンブリであって、マイクロチャネルプレートボディのアセンブリは、イメージ増強管内での使用に適応される、ところのアセンブリ。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、誘電絶縁体はサファイア及び窒化シリコンから成る集合から選択される材料から形成される、ところの方法。
【請求項12】
請求項4に記載のアセンブリであって、誘電絶縁体はサファイア及び窒化シリコンから成る集合から選択される材料から形成される、ところのアセンブリ。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−522454(P2006−522454A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509452(P2006−509452)
【出願日】平成16年3月30日(2004.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/009635
【国際公開番号】WO2004/093157
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(596007212)リットン・システムズ・インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】