説明

マイクロニードルアレイへの薬剤担持法

【課題】薬剤が均一に塗布されたマイクロニードルの製造方法を提供すること。
【解決手段】平板上にマイクロニードルアレイを設置し、カメラの焦点とインクジェットの焦点を同一に連動させ、順次、微小針の先端部に薬剤溶液をインクジェットから定量的に吐出させ、マイクロニードルアレイの微小針先端部に塗布する。これにより、マイクロニードルの中央部と周辺部での薬液塗布に偏りがなく、均一に塗布されたマイクロニードルが得られることとなった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロニードルアレイに薬剤を担持する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高分子薬物等の吸収性が低い薬物の投与は現在注射剤に限られている。しかしながら,注射剤は針を刺されたときの痛み,恐怖心,注射針による事故,投与手技に熟練を要する等の問題を含んでいる。
【0003】
そこで,マイクロニードルでの薬剤投与が注目を集めている。痛みがほとんどなく,投与が簡便等,注射剤に比べ優位な特徴を持っている。その中でもマイクロニードルをアレイ状に並べたケンザン状のマイクロニードルアレイはマイクロニードル1本のときの薬剤の投与量不足を補う良好な投与デバイスである。
【0004】
マイクロニードルアレイは各種方法で形状は製造できるが,薬剤の担持方法に問題があった。現在,特許文献1のように、薬剤を溶解した溶液の中に、マイクロニードルを浸漬する方法(ディップ法)が主流となっているが、ぬれ、表面張力の影響が強くうまく針先飲みに薬剤を担持することが困難である。また,薬剤量の制御が難しく,ぬれ,表面張力の制御するため薬物以外の添加剤が必要であったり,薬剤の無駄も大きい。マイクロニードルアレイを薬液に浸すとき,薬液面は表面張力で湾曲し,微小なマイクロニードルの針先のみを浸すことは非常に難しい現状がある。
【0005】
これまでマイクロニードルの製造方法に関して、色々な方法が開発され報告されてきたが、出来上がったマイクロニードルへの薬剤の塗布方法については、あまり報告されておらず、しかも、工業的に量産可能で現実的な塗布方法は未だ報告されていない状況であった。
【0006】
【特許文献1】特表2004−504120
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、マイクロニードルアレイに薬剤を担持させる方法である。特に、正確に針先に担持できかつ定量的に薬剤を担時できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、マイクロニードルアレイの薬剤の担持方法に関して鋭意検討を進めてきたが、コンピュータ制御により、マイクロニードルアレイの針先をカメラで確認し、一定量の微小な薬剤液粒をその針先に向けて飛ばすことによりマイクロニードルアレイに薬剤を担持する方法を見出した。この方法により、正確に、且つ定量的に針先に薬剤を担持できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]以下の工程(1)〜(5)を含むコンピューター制御によるマイクロニードルアレイへの薬剤塗布方法であって、
(1)水平な平板上にマイクロアレイを設置し、
(2)マイクロニードルアレイの各微小針の先端に、順次、カメラの焦点を合わせて行く、
(3)カメラの焦点対象の位置とプリンター用インクジェットの放出・塗布対象の位置が同一になるよう、コンピューター制御を行なう、
(4)薬剤の溶液を該インクジェットを通じて、カメラの焦点位置にある微小針に吹き付ける、
(5)薬剤の溶液で塗布されたマイクロニードルアレイを乾燥させる
ことを特徴とする、マイクロニードルアレイへの薬剤塗布方法。
[2]微小針に対する薬剤溶液の塗布を複数回行い、所定の薬剤量をマイクロニードルアレイに付与することを特徴とする、上記[1]に記載のマイクロニードルアレイへの薬剤塗布方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のマイクロニードルアレイに薬剤を担持する方法により、マイクロニードルアレイの針先に一定量の薬剤を簡便に担持できるようになった。これにより、実際的、工業的なレベルでの、薬剤を担持したマイクロニードルアレイが提供できることになった。その結果、注射剤とは異なり、投与に際して患者に痛みをほとんど与えることなく、投与が簡便な投与デバイスが作製出来ることとなった。これにより、インシュリン等を始めとする、自己注射用製剤に代わり得る有効なDDS製剤を提供することが出来るようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で言うマイクロニードルアレイとは、支持体にマイクロニードルが複数本アレイ状に並んでいる投与デバイスであり、公知の汎用手段で作成することができる。例えば、WO2008/093679に記載の方法に準じて製造することができる。なお、素材としては何ら規定するものではないが.鉄,チタン等の金属,ポリ乳酸,ポリグルタミン酸等の生分解性樹脂等がある。
本発明で言う薬剤はなんら規定するものでもないが,注射剤以外に投与の難しい高分子薬物等の吸収の低い薬物好適である。例えば、インシュリン、hGH、GLP-1等の多くの生理活性蛋白を挙げることができる。
【0012】
本発明で言う一定量の微小な薬剤液粒をその針先に向けて飛ばす装置としてはプリンタ等に使われているインクジェット技術を流用することができる.
【実施例】
【0013】
以下に本発明について実施例により具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例になんら限定されるものではない。
【0014】
(実施例1)
コンピューター制御によるカメラの焦点とインクジェットの放出対象の焦点を同じに設定し、マイクロニードルアレイへの微小針の末端から順次、薬剤を塗布して行く。インクジェットはプリンター用のインクジェットを転用し、薬剤の溶液の粘性をインクジェットのノズル等の性能に合わせて適宜調整する。
薬剤の溶液で塗布されたマイクロニードルアレイは、乾燥工程に移行させ、室温あるいは、適宜薬剤の安定性に対応した加温条件下で乾燥させる。
薬剤の塗布量が少ない場合には、微小針に対する薬剤溶液の塗布を複数回行い、所定の薬剤量をマイクロニードルアレイに付与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明のマイクロニードルアレイの薬剤塗布方法により、均一に薬剤が塗布されたマイクロニードルを容易に大量製造することが出来るようになった。これにより、これまで工業レベルでの製造が困難であった、薬剤塗布されたマイクロニードルアレイの供給が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来法(薬液槽)による微小針の浸漬・塗布方法の課題。
【図2】本発明による微小針への薬剤の塗布方法の概要。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(1)〜(5)を含むコンピューター制御によるマイクロニードルアレイへの薬剤塗布方法であって、
(1)水平な平板上にマイクロアレイを設置し、
(2)マイクロニードルアレイの各微小針の先端に、順次、カメラの焦点を合わせて行く、
(3)カメラの焦点対象の位置とプリンター用インクジェットの放出・塗布対象の位置が同一になるよう、コンピューター制御を行なう、
(4)薬剤の溶液を該インクジェットを通じて、カメラの焦点位置にある微小針に吹き付ける、
(5)薬剤の溶液で塗布されたマイクロニードルアレイを乾燥させる
ことを特徴とする、マイクロニードルアレイへの薬剤塗布方法。
【請求項2】
微小針に対する薬剤溶液の塗布を複数回行い、所定の薬剤量をマイクロニードルアレイに付与することを特徴とする、請求項1に記載のマイクロニードルアレイへの薬剤塗布方法。

【図1】
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【図2】
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