説明

マイクロニードルアレイ

【課題】 マイクロニードルを備えたマイクロニードルアレイに係り、特に、マイクロニードルを皮膚に対して斜めに突き刺すことができ、それによって、マイクロニードルによる注射の際、患者に対する痛みの軽減と薬液漏れの防止を両立できるように工夫したマイクロニードルアレイを提供すること。
【解決手段】中空部を有し該中空部と外部とを連絡する貫通孔が設けられたケースと、上記ケースに設置されるマイクロニードルユニットと、を具備し、上記マイクロニードルユニットは、上記ケースの中空部内に設置されるユニット本体と、該ユニット本体の表面に形成され上記貫通孔を貫通し上記ケースの表面に対して傾斜した状態で外部に突出されるマイクロニードルとからなることを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複数のマイクロニードルをケースに取り付けたマイクロニードルアレイに係り、特に、マイクロニードルがケースの表面に対して斜めに傾斜した状態で設置され、マイクロニードルによる注射の際、患者に対する痛みの軽減と薬液漏れの防止を実現できるよう工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のマイクロニードルを備えたマイクロニードルアレイは、例えば、エッチングなどの半導体製造プロセスを応用した手法によって製造される。
なお、この種の半導体製造プロセスを応用した手法は、例えば、特許文献1に開示されている。
上記手法により製造されるマイクロニードルは平面に対して垂直に形成されたものとなる。
【0003】
そのため、図16に示すように、皮膚101の表面に対してマイクロニードル103を突き刺そうとしても、十分に突き刺すことができず、その結果、皮膚101の表面が変形してしまうとともに、皮膚101の表面に薬液が漏れ出してしまう可能性がある。
【0004】
このような場合、マイクロニードル103を皮膚101にさらに強く突き刺せばいいのであるが、それでは患者に対して傷みを与えることになってしまう。
なお、注射時における患者の痛みの軽減と、効果的な薬液の注入を考慮し、マイクロニードルを皮下100〜500ミクロン程度の深さまで突き刺すのが良いとされる。
【0005】
患者に対して痛みを与えず、且つ、薬剤が皮膚表面に漏れ出さないようにするには、マイクロニードルを皮膚表面に対して傾斜させて突き刺せばよい。これにより、マイクロニードルが十分に皮膚内に侵入して薬剤が皮膚表面に漏れ出さないようにでき、且つ、マイクロニードルの先端が皮膚表面から浅いところまでしか到達せず患者に対する痛みも緩和することができるからである。特許文献2には、皮膚表面に対して45度以上の角度で針を突き刺すことのできるミクロ注射器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−296037号公報
【特許文献2】昭56−95058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の構成によると、次のような問題があった。
すなわち、前述したように、皮膚表面への薬剤の漏れ出しの防止と患者への痛みの緩和の両方を両立するためには、マイクロニードルを皮膚に対して傾斜させた状態で突き刺せばいいのであるが、従来のマイクロニードルアレイの構成では、マイクロニードルを皮膚に対し傾斜した状態で突き刺すことができなかった。
【0008】
本願発明は、このような点に基づいてなされたもので、その目的とするところは、マイクロニードルを皮膚に対して斜めに突き刺すことができ、それによって、マイクロニードルによる注射の際、患者に対する痛みの軽減と薬液漏れの防止を両立できるマイクロニードルアレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するべく請求項1に記載されたマイクロニードルアレイは、中空部を有し該中空部と外部とを連絡する貫通孔が設けられたケースと、上記ケースに設置されるマイクロニードルユニットと、を具備し、上記マイクロニードルユニットは、上記ケースの中空部内に設置されるユニット本体と、該ユニット本体の表面に形成され上記貫通孔を貫通し上記ケースの表面に対して傾斜した状態で外部に突出されるマイクロニードルとからなることを特徴とするものである。
又、請求項2に記載されたマイクロニードルアレイは、請求項1記載のマイクロニードルアレイにおいて、上記マイクロニードルは上記ユニット本体の表面に対して垂直に突出・形成されたものであり、上記マイクロニードルユニットは上記ケースに対して斜めに設置されるものであることを特徴とするものである。
又、請求項3に記載されたマイクロニードルアレイは、請求項1記載のマイクロニードルアレイにおいて、上記マイクロニードルは上記ユニット本体の表面に対して傾斜した状態で突出・形成されたものであることを特徴とするものである。
又、請求項4に記載されたマイクロニードルアレイは、請求項1〜請求項3の何れかに記載のマイクロニードルアレイにおいて、上記マイクロニードルユニットは2つ割りの分割要素を貼り合わせたものであることを特徴とするものである。
又、請求項5に記載されたマイクロニードルアレイは、請求項4記載のマイクロニードルアレイにおいて、上記マイクロニードルは、上記ユニット本体における分割面と平行な方向に突出・形成されていることを特徴とするものである。
又、請求項6に記載されたマイクロニードルアレイは、請求項4記載のマイクロニードルアレイにおいて、上記マイクロニードルは上記ユニット本体における分割面と交差する方向に突出・形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
以上述べたように、請求項1記載のマイクロニードルアレイによると、ケース表面に対して傾斜した状態でマイクロニードルが突出されているので、マイクロニードルを容易に皮膚表面に対して斜めに突き刺すことができ、患者に対する痛みの軽減と薬液漏れ防止の両立を図ることができる。
又、請求項2記載のマイクロニードルアレイは、請求項1記載の傾斜針マイクロニードルと同様の効果に加え、マイクロニードル自体を傾斜させた状態でマイクロニードルユニットを製造する必要がないので、マイクロニードルユニット自体の製造が容易となる。
又、請求項3記載のマイクロニードルアレイは、請求項1記載の傾斜針マイクロニードルと同様の効果に加え、ケースの貫通孔の形状を工夫する必要がなくなるので、ケースの製造が容易となる。
又、請求項4記載のマイクロニードルアレイによると、上記マイクロニードルユニットは2つ割りの分割要素を貼り合わせたものであるため、上記マイクロニードルユニット内に流路を設けること等が容易に可能であり、上記マイクロニードルユニットの製造、ひいては、マイクロニードルアレイの製造を容易にすることができる。
又、請求項5記載のマイクロニードルアレイは、請求項4記載の傾斜針マイクロニードルと同様の効果に加え、マイクロニードルとユニット本体の分割面が同じであるため、マイクロニードルユニットの製造が容易である。
又、請求項6記載のマイクロニードルアレイは、上記マイクロニードルは上記ユニット本体における分割面と交差する方向に突出・形成されているものである。よって、上記マイクロニードルはその分割面よりユニット本体側の短い側とその分割面より反ユニット本体側の長い側とに分割されることになる。そのため、上記マイクロニードルの短い側で荷重を受け、上記マイクロニードルの長く細い側は上記マイクロニードル内の流路の蓋としての機能や上記マイクロニードルが皮膚に接触した際の皮膚に対する切り裂きを行う機能を担うという機能を分担させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、本実施の形態によるマイクロニードルアレイを示す斜視図である。
【図2】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、本実施の形態によるマイクロニードルアレイを示す分解斜視図である。
【図3】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、図1におけるIII−III断面図である。
【図4】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、本実施の形態によるマイクロニードルアレイに用いられるマイクロニードルユニットを示した分解斜視図である。
【図5】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、マイクロニードルを皮膚表面に対して傾斜させて突き刺した状態を示す断面図である。
【図6】本願発明の第2の実施の形態を示す図で、本実施の形態によるマイクロニードルアレイを示す斜視図である。
【図7】本願発明の第2の実施の形態を示す図で、本実施の形態によるマイクロニードルアレイを示す分解斜視図である。
【図8】本願発明の第2の実施の形態を示す図で、図8(a)は図6におけるa−a断面図、図8(b)は図6におけるb−b断面図である。
【図9】本願発明の第2の実施の形態を示す図で、本実施の形態によるマイクロニードルアレイに用いられるマイクロニードルユニットの一部を拡大した斜視図である。
【図10】本願発明の第2の実施の形態を示す図で、本実施の形態によるマイクロニードルアレイに用いられるマイクロニードルユニットを構成する分割要素の一部を示す図で、図10(a)は平面図、図10(b)は正面図、図10(c)は側面図である。
【図11】本願発明の第3の実施の形態を示す図で、本実施の形態によるマイクロニードルアレイを示す斜視図である。
【図12】本願発明の第3の実施の形態を示す図で、本実施の形態によるマイクロニードルアレイを示す分解斜視図である。
【図13】本願発明の第3の実施の形態を示す図で、図13(a)は図11におけるa−a断面図、図13(b)は図11におけるb−b断面図である。
【図14】本願発明の第3の実施の形態を示す図で、本実施の形態によるマイクロニードルアレイに用いられるマイクロニードルユニットを示す図であり、図14(a)は側面図、図14(b)はその一部を拡大して示す斜視図である。
【図15】本願発明の第3の実施の形態を示す図で、本実施の形態によるマイクロニードルアレイに用いられるマイクロニードルユニットの分割要素の一部を示す図であり、図15(a)は一方の分割要素の一部平面図、図15(b)は一方の分割要素の一部側面図、図15(c)は他方の分割要素の一部平面図、図15(d)は他方の分割要素の一部側面図である。
【図16】従来例を示す図で、マイクロニードルを皮膚表面に対して垂直に突き刺した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1乃至図5を参照して、本願発明の第1の実施の形態を説明する。
【0013】
本実施の形態によるマイクロニードルアレイ1には、まず、図1に示すように、ケース3がある。上記ケース3は、図1に示すように、略直方体形状を成しており、図2に示すように、上ケース5aと下ケース5bとから構成されている。
上記上ケース5aにはマイクロニードルユニット取付部6、6が形成されている。上記マイクロニードルユニット取付部6は、上記上ケース5aの裏面(図3中下側の面)に設けられたマイクロニードルユニット取付用凹部7aと、上記上ケース5aの表面(図3中上側の面)に設けられたマイクロニードル収納用凹部7bとからなる。上記マイクロニードルユニット取付用凹部7aの図3中左側の面8aは、上記上ケース5aの水平な面に対して30°傾斜している。また、上記マイクロニードルユニット取付用凹部7aの図3中右側の面8bは、上記面8aに対して直交している。
【0014】
上記マイクロニードルユニット取付用凹部7aの図3中右側の面8bには貫通孔9a、9b、9cが穿孔されている。上記貫通孔9a、9b、9cは縦方向(図1中右上から左下に向かう方向)に一列に並んでおり、上記上ケース5aには上記貫通孔9a、9b、9cの組が2組形成されていることになる。
なお、一組の上記貫通孔9a、9b、9cが、後述するマイクロニードルユニットの一つに対応する。
【0015】
又、上記マイクロニードルユニット取付用凹部7a及び上記貫通孔9a、9b、9cには、図3に示すように、後述するマイクロニードルユニットが上記上ケース5aに対して斜めに傾斜した状態で係合・固定されるようになっている。
又、上記上ケース5aの底面(図2中下側の面)の四隅には係合凸部11、11、11、11が形成されている。
【0016】
上記下ケース5bには、図2中上側に開口した中空部13が形成されている。又、上記中空部13の底面には、注入口15が穿孔されている。又、上記下ケース5bの図2中上側の面の四隅には、上記上ケース5aの係合凸部11、11、11、11に対応する係合凹部17、17、17、17が形成されている。
【0017】
上記上ケース5aの個々の係合凸部11と、これらに対応する上記下ケース5bの係合凹部17を係合させて、上記上ケース5aと上記下ケース5bを組み合わせると、上記ケース3となる。このとき、上記下ケース5bの中空部13の開口部は上記上ケース5aによって塞がれる。
【0018】
上記マイクロニードルアレイ1には、マイクロニードルユニット21、21が設置されている。上記マイクロニードルユニット21は、略直方体形状のユニット本体23を備えている。このユニット本体23の一の面上には、略円柱形状の基部25a、25b、25cがそれぞれ設けられている。上記基部25aの先端からは略四角錐形状のマイクロニードル27aが突出・形成されている。同様に、上記基部25bの先端からは略四角錐形状のマイクロニードル27bが突出・形成されており、上記基部25cの先端からは略四角錐形状のマイクロニードル27cが突出・形成されている。上記マイクロニードル27a、27b、27cは、上記ユニット本体23の一の面に対して垂直に突出・形成されている。
【0019】
又、上記マイクロニードル27aの中心軸の位置には、図3に示すように、流路29aが形成されている。同様に、上記マイクロニードル27bの中心軸の位置には、図3に示すように、流路29bが形成されており、上記マイクロニードル27cの中心軸の位置には、図3に示すように、流路29cが形成されている。上記流路29a、29b、29cは上記マイクロニードルユニット21の底面(図3中左下側の面)に開口している。
なお、上記流路29aの上記マイクロニードル27a先端(図3中右上側端)側、上記流路29bの上記マイクロニードル27b先端(図3中右上側端)側、及び、上記流路29cの上記マイクロニードル27c先端(図3中右上側端)側の構成については後述する。
【0020】
又、上記マイクロニードルユニット21は2つ割りの構造になっていて、図4に示すように、樹脂を成形した2つの分割要素31a、31bから構成されている。これらの分割要素31a、31bは、上記マイクロニードルユニット21を長さ方向に沿って均等に分割したような形状となっており、その分割面に対応する上記分割要素31a、31bの面が接合面32a、32bとなっている。これら接合面32a、32bを介して上記一対の分割要素31a、31bを接着・固定することにより、上記マイクロニードルユニット21を得ることができる。
ただし、上記マイクロニードル27a、27b、27cの先端側(図3中右上側)の部分は非接着とする。この部分が流出口28a、28b、28cとなる。例えば、上記流路29aから供給された液体が上記マイクロニードル27aの先端に到達すると、その圧力により、上記流出口28aが開き、液体を放出することができる。
【0021】
又、上記分割要素31a、31bには、貼り合わせる際の位置決めのための貫通孔34、34、34、34が穿孔されている。それぞれ対向する貫通孔34、34に、図示しない位置決めピンを差し込むことにより、上記分割要素31a、31bの位置決めを行う。
【0022】
上記マイクロニードルユニット21は、上記マイクロニードルユニット取付用凹部7a及び上記図1中右上から左下に向かって一列に並んだ上記貫通孔9a、9b、9cに対して係合・固定される。すなわち、上記マイクロニードルユニット21は、図3に示すように、上記ケース3の上ケース5aの貫通孔9aに基部25aを係合され、貫通孔9bに基部25bを係合され、貫通孔9cに基部25cを係合され、上記ユニット本体23を上記マイクロニードルユニット取付用凹部7aに係合されて、上記上ケース5aに固定される。
また、上記貫通孔9a、9b、9cの内周面と上記基部25a、25b、25cの外周面が密着しており、上記ケース3の中空部13内の薬液が上記貫通孔9a、9b、9cから漏れ出さないようになっている。
【0023】
その際、上記マイクロニードルユニット21は上記上ケース5aの表面に対して約30度傾斜した状態で係合・固定されている。よって、上記マイクロニードル27a、27b、27cも上記ケース3の表面(図1中上側の面)に対して約30度傾斜するようになっている。
また、上記マイクロニードル27a、27b、27cは上記マイクロニードル収納用凹部7b内に配置され、その先端が上記上ケース5aの図2中上側に突出されている。また、上記ユニット本体23は上記上ケース5aの図2中下側に配置される。
【0024】
又、図1に示すように、上記下ケース5bの注入口15には、ポンプ91に接続された薬液送り込みチューブ33が接続されている。
【0025】
次に、本実施の形態によるマイクロニードルアレイ1の使用態様や作用について説明する。
まず、マイクロニードルアレイ1のマイクロニードル27a、27b、27cが突出している面を皮膚93(図5に示す)表面に押し付ける。すると、マイクロニードル27a、27b、27cは皮膚に対して、図5に示すように突き刺さる。その際、四角錐形状の上記マイクロニードル27a、27b、27cの先端の頂点及び側面のエッジが、皮膚93を切り裂いて穿孔していく役割を果たす。また、上記マイクロニードル27a、27b、27cは皮膚93表面に対して約30度傾斜しているため、垂直に突き刺す場合(図16に示す)に比べ、皮膚93表面の変形を抑制することができ、皮膚93に対する穿孔が行いやすい。また、上記マイクロニードル27a、27b、27cの多くの部分が皮膚93内に進入し、上記マイクロニードル27a、27b、27cの先端部の流出口28a、28b、28cは完全に皮膚93の中に入り込むことになる。しかし、図5に示すように、上記マイクロニードル27a、27b、27cの先端が到達した皮膚93表面からの垂直深さは、それほど深くはない。
【0026】
次に、ポンプ91を動作させて、薬液送り込みチューブ33を介して、注入口15から、ケース3の中空部13内に薬液を注入する。それによって、上記ケース3の中空部13内は薬液で満たされる。その薬液はマイクロニードルユニット21の流路29a、29b、29cに流入し、上記マイクロニードル27a、27b、27cの先端に到達する。そして、薬液の圧力によって、上記マイクロニードル27a、27b、27cの先端の流出口28a、28b、28cが開き、薬液が体内へと放出される。
【0027】
次に、本実施の形態によるマイクロニードルアレイ1の効果について説明する。
まず、マイクロニードル27a、27b、27cは、皮膚93の表面に対して約30度の角度で突き刺さるため、皮膚93の表面の変形を抑制し、マイクロニードル27a、27b、27cのより多くの部分が皮膚93内に入り込むことができる。そのため、薬液を放出する上記マイクロニードル27a、27b、27cの先端に設けられた流出口28a、28b、28cは完全に皮膚93の中に入り込むことになり、薬液の皮膚93の表面への漏れを防止することができる。
また、図5に示すように、上記マイクロニードル27a、27b、27cの先端が到達した皮膚93の表面からの垂直深さも浅く、患者に対して痛みを与えることがない。
特に、本実施の形態の場合には、傾斜角度を30°に設定しているので、上記薬液の漏れ防止と痛みの軽減の両方を効果的に図ることができる。
又、マイクロニードルユニット21は、樹脂成型による2つの分割要素31a、31bを貼り合わせたものであるため、エッチング等の半導体製造プロセスを応用した手法による場合に比べ、製造が容易である。
又、上記マイクロニードル27a、27b、27cは略四角錘形状であるため、その頂点や側面のエッジにより、効果的に皮膚に対する穿孔を行うことができる。
【0028】
次に、図6乃至図10を使用して、本願発明の第2の実施の形態によるマイクロニードルアレイについて説明する。
本実施の形態によるマイクロニードルアレイ35は、図6に示すように、まず、ケース37を有する。
【0029】
図7に示すように、上記ケース37は、前述の第1の実施の形態によるマイクロニードルアレイ1におけるケース3と同様、上ケース39aと下ケース39bとからなる。
上記上ケース39aには、凹部41a、41b、41c、41a、41b、41cが形成されている。上記凹部41aの底面(図7中下側の面)には貫通孔43aが形成されており、上記凹部41bの底面(図7中下側の面)には貫通孔43bが形成されており、上記凹部41cの底面(図7中下側の面)には貫通孔43cが形成されている。
【0030】
図7に示すように、上記凹部41a、41b、41cが一組となって図7中横方向に一列に並んでおり、この上記凹部41a、41b、41cが2組形成されている。そのため、上記凹部41a、41b、41cの底面に穿孔された貫通孔43a、43b、43cも、図7中横方向に一列に並んだものが一組となり、一つのマイクロニードルユニットに対応する。
図8(a)及び図8(b)に示すように、上記貫通孔43a、43b、43cは、上記上ケース39aの表面(図8(a)中上側の面)に垂直な方向(図8中上下方向)に穿孔されていて、その内周面は略円筒形であり、第1の実施の形態の場合とは異なる形状となっている。
又、上ケース39aの図7中下側の面の四隅には、第1の実施の形態の場合と同様、係合凸部45、45、45、45が形成されている。
【0031】
又、図7に示すように、上記ケース37の下ケース39bは、第1の実施の形態の場合と同様、中空部47、ポンプ91に接続された薬液送り込みチューブ33が接続される注入口49、上記係合凸部45、45、45、45に対応する係合凹部51、51、51、51が設けられている。
又、図7、図8(a)、図8(b)に示すように、上記下ケースの39bの中空部47の底面には、溝54a、54b、54c、54a、54b、54cが形成されている。この溝54a、54b、54cは、上記ケース37の中空部47に注入された薬液を、後述するマイクロニードルユニット内の流路へと供給するためのものであり、図7中横方向に一列に並んだ溝54a、54b、54cが、一個のマイクロニードルユニットに対応するものである。
【0032】
図7に示すように、上記マイクロニードルアレイ35には、マイクロニードルユニット55、55が設置されている。上記マイクロニードルユニット55は、第1の実施の形態におけるマイクロニードルユニット21にように、ユニット本体57、基部59a、59b、59c、マイクロニードル61a、61b、61cから構成されている。又、図8(a)及び図8(b)に示すように、内部に流路63a、63b、63cが形成されている。
上記流路63aは、上記マイクロニードルアレイ35において、上記下ケース39bの溝54aを介して、ケース37の中空部47と連通するものである。又、上記流路63bは、上記下ケース39bの溝54bを介して、ケース37の中空部47と連通するものであり、上記流路63cは、上記下ケース39bの溝54cを介して、ケース37の中空部47と連通するものである。
【0033】
又、上記マイクロニードルユニット55は2つ割りの構造になっており、分割要素65aと分割要素65bを貼りあわせたものである。この分割要素65a、65bは上記マイクロニードルユニット55を長さ方向に沿って均等に分割したような形状となっており、その分割面に対応する上記分割要素65a、65bの面が、それぞれ接合面67a、67bとなっている。又、上記マイクロニードルユニット55の分割要素31a、31bには、上記分割要素65a、65bを貼り合わせる際の位置決めのための貫通孔64、64、64、64が穿孔されている。それぞれ対向する貫通孔64、64に、図示しない位置決めピンを差し込むことにより、上記分割要素65a、65bの位置決めを行う。
【0034】
上記マイクロニードル61a、61b、61cも、第1の実施の形態におけるマイクロニードル27a、27b、27cと同様に、先端部が非接着であり、内部に供給された液体の圧力によって先端が開くものである。この先端部分が流出口62a、62b、62cとなっている。
しかし、上記マイクロニードル61a、61b、61cは、第1の実施の形態の場合のマイクロニードル27a、27b、27cとは異なり、図8(a)、図8(b)及び図9に示すように、上記ユニット本体57の図8中上側の面に対して30°傾斜した状態で突出・形成されているものである。又、図10(a)、図10(b)、図10(c)に示すように、上記マイクロニードル61a、61b、61cは、上記ユニット本体57の図6中上側の面に垂直で、且つ、その長さ方向に平行な面に平行な方向へ突出・形成されているものである。又、上記マイクロニードル61a、61b、61cは、図9に示すように、傾斜した略四角錘形状を成している。
【0035】
図8(a)及び図8(b)に示すように、上記マイクロニードルユニット55は、ユニット本体57が上記上ケース39aに対して垂直になる状態で設置されるものである。
又、図8(a)及び図8(b)に示すように、上記上ケース39aの貫通孔43a、43b、43c内に上記マイクロニードルユニット55の基部59a、59b、59cが挿入されており、上記貫通孔43a、43b、43cの内周面と上記基部59a、59b、59cの外周面が密着している。これにより、上記ケース37の中空部47内の薬液が上記貫通孔43a、43b、43cから漏れ出さないようになっている。
【0036】
本実施の形態によるマイクロニードルアレイ35の使用態様や作用は、第1の実施の形態の場合と略同様であるが、ケース37の中空部47内に注入された薬液は下ケース39bの溝54を通過して、マイクロニードルユニット55内の流路63a、63b、63cに流入していく点において異なっている。
又、本実施の形態によるマイクロニードルアレイ35の効果も、第1の実施の形態の場合と略同様であるが、第1の実施の形態における上ケース5aのマイクロニードル取付部6のような複雑な構成が必要ないため、本実施の形態における上記上ケース39aの製造は第1の実施の形態における上ケース5aの製造よりも容易となる。
【0037】
次に、図11及び図15を使用して、本願発明の第3の実施の形態によるマイクロニードルアレイについて説明する。
本実施の形態によるマイクロニードルアレイ69も、第2の実施の形態におけるマイクロニードルアレイ35と同様、ケースにマイクロニードルユニット71、71が設置されている。
上記ケースは、第2の実施の形態の場合と同じ構成のものであり、第2の実施の形態の場合と同じ符号を付すものとし、説明を省略する。
【0038】
上記マイクロニードルユニット71は、第1の実施の形態や第2の実施の形態の場合と同様、図12に示すように、ユニット本体73、基部75a、75b、75c、マイクロニードル77a、77b、77cから構成されている。又、図13(a)、図13(b)に示すように、内部に流路79a、79b、79cが形成されている。
又、上記マイクロニードル77a、77b、77cは、図13(a)に示すように、上記ユニット本体73の図13(a)中上側の面に対して約30度傾斜して突出・形成されている。しかし、図13(a)、図13(b)に示すように、第2の実施の形態の場合と異なり、上記マイクロニードル77a、77b、77cは、上記ユニット本体73の図11(a)中上側の面に垂直で且つその長さ方向に平行な面に直交する方向へ突出・形成されている。又、上記マイクロニードル77a、77b、77cは、傾斜した略四角錘形状を成している。
【0039】
又、図14(a)及び図14(b)に示すように、上記マイクロニードルユニット71は2つ割りの構造になっていて、樹脂成形による分割要素81aと分割要素81bを貼りあわせたものである。図15(a)、図15(b)、図15(c)、図15(d)に示すように、この分割要素81a、81bは上記マイクロニードルユニット71を長さ方向に沿って分割したような形状となっており、その分割面に対応する上記分割要素81a、81bの面が接合面83a、83bとなっている。しかし、第2の実施の形態の場合と異なり、その上記接合面83a、83bは平面ではなく、図15(b)及び図15(d)に示すように、上記マイクロニードル77a、77b、77cの傾斜にあわせて折れ曲がった形状を成しているものである。すなわち、上記ユニット本体73と上記基部75a、75b、75cの部分においては、上記接合面83a、83bは上記ユニット本体73の図14(a)中上側の面に垂直であるが、上記マイクロニードル77a、77b、77cの部分においては、それらの中心を通るように、上記ユニット本体73の図14(a)中上側の面に対して約30度傾斜しているものである。
よって、上記マイクロニードル77a、77b、77cの上記分割要素81a側の部分と上記分割要素81b側の部分は形状が異なり、上記分割要素81b側の部分は上記分割要素81a側の部分より長くなっている。
又、上記マイクロニードル77a、77b、77cも、第1の実施の形態や第2の実施の形態におけるマイクロニードルと同様に、内部に供給された液体の圧力によって先端が開くものであり、この先端部分が流出口78a、78b、78cとなっている。
又、上記マイクロニードルユニット71の分割要素81a、81bには、上記分割要素81a、81bを貼り合わせる際の位置決めのための貫通孔82、82、82、82が穿孔されている。
【0040】
又、本実施の形態によるマイクロニードルアレイ69の使用態様は、第2の実施の形態の場合と同様である。
【0041】
又、本実施の形態によるマイクロニードルアレイ69による作用・効果は、第1の実施の形態や第2の実施の形態のものに加え、以下のようなものも奏する。すなわち、マイクロニードル77a、77b、77cの上記分割要素81b側の部分は上記分割要素81a側の部分より長くなっているため、上記マイクロニードル77a、77b、77cを皮膚に突き刺す際、相対的に短い上記分割要素81a側の部分が上記マイクロニードル77a、77b、77cに加わる力を受け止めることができる。また、上記分割要素81b側の部分は、上記マイクロニードル77a、77b、77cによって突き刺される皮膚の側に位置するため、流路79a、79b、79cの蓋となって薬液の漏れを防止するとともに、下側(図14(a)中上側)のエッジによって皮膚を切り裂いて効率的に穿孔を行うことができる。
【0042】
なお、本願発明は、上記の実施の形態に限定されない。
例えば、マイクロニードルの数や、これに対応した上ケースの凹部や貫通孔の数は、様々な場合が考えられる。
また、マイクロニードルの形状も、多角錘形状や円錐形状のものなど、さまざまなものが考えられる。
また、マイクロニードルの突出・形成される角度や向きも、様々な場合が考えられる。
また、凹部や貫通孔の形状、寸法は、マイクロニードルの形状などにより、様々な場合が考えられる。
また、マイクロニードルユニットをケースに取り付ける方向、数なども、様々な場合が考えられる。
また、各部分の寸法、形状等は、様々な場合が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、例えば、マイクロニードルを備えたマイクロニードルアレイに係り、特に、マイクロニードルを皮膚に対して斜めに突き刺すことができ、それによって、マイクロニードルによる注射の際、患者に対する痛みの軽減と薬液漏れの防止を両立できるように工夫したものに係り、例えば、インシュリンの経皮投与などに用いられるマイクロニードルアレイに好適である。
【符号の説明】
【0044】
1 マイクロニードルアレイ
3 ケース
9a 貫通孔
9b 貫通孔
9c 貫通孔
13 中空部
21 マイクロニードルユニット
23 ユニット本体
27a マイクロニードル
27b マイクロニードル
27c マイクロニードル
31a 分割要素
31b 分割要素
32a 接合面(分割面)
32b 接合面(分割面)
35 マイクロニードルアレイ
37 ケース
43a 貫通孔
43b 貫通孔
43c 貫通孔
47 中空部
55 マイクロニードルユニット
57 ユニット本体
61a マイクロニードル
61b マイクロニードル
61c マイクロニードル
65a 分割要素
65b 分割要素
67a 接合面(分割面)
67b 接合面(分割面)
69 マイクロニードルアレイ
71 マイクロニードルユニット
73 ユニット本体
77a マイクロニードル
77b マイクロニードル
77c マイクロニードル
81a 分割要素
81b 分割要素
82a 接合面(分割面)
82b 接合面(分割面)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有し該中空部と外部とを連絡する貫通孔が設けられたケースと、上記ケースに設置されるマイクロニードルユニットと、を具備し、
上記マイクロニードルユニットは、上記ケースの中空部内に設置されるユニット本体と、該ユニット本体の表面に形成され上記貫通孔を貫通し上記ケースの表面に対して傾斜した状態で外部に突出されるマイクロニードルとからなることを特徴とするマイクロニードルアレイ。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロニードルアレイにおいて、
上記マイクロニードルは上記ユニット本体の表面に対して垂直に突出・形成されたものであり、上記マイクロニードルユニットは上記ケースに対して斜めに設置されるものであることを特徴とするマイクロニードルアレイ。
【請求項3】
請求項1記載のマイクロニードルアレイにおいて、
上記マイクロニードルは上記ユニット本体の表面に対して傾斜した状態で突出・形成されたものであることを特徴とするマイクロニードルアレイ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載のマイクロニードルアレイにおいて、
上記マイクロニードルユニットは2つ割りの分割要素を貼り合わせたものであることを特徴とするマイクロニードルアレイ。
【請求項5】
請求項4記載のマイクロニードルアレイにおいて、
上記マイクロニードルは、上記ユニット本体における分割面と平行な方向に突出・形成されていることを特徴とするマイクロニードルアレイ。
【請求項6】
請求項4記載のマイクロニードルアレイにおいて、
上記マイクロニードルは上記ユニット本体における分割面と交差する方向に突出・形成されていることを特徴とするマイクロニードルアレイ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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