説明

マイクロバブル化装置

【課題】オゾン水や酸素水などを簡易に製造できるマイクロバブル化装置を提供する。
【解決手段】オゾン水を製造するマイクロバブル化装置M1は、酸素ボンベ5からの酸素ガスを流速制御して供給する速度制御弁1と、速度制御弁1により供給された酸素ガスからオゾンガスを発生させるオゾン発生器2と、オゾン発生器2により発生したオゾンガスを移送する移送管3と、移送管3により移送されたオゾンガスを導入してマイクロバブル化した気泡を発生させる気泡発生器4を備えてなる。また、気泡発生器4には、容器内にオゾン吸蔵体8が充填されているとともに、オゾン吸蔵体8に吸着させて貯蔵したオゾンガスを容器外へと通過させ、かつ、容器外の液体11を容器内へと通過させない大きさの微小孔9が間隔を隔てて複数個設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中にオゾンガス等をマイクロバブル化して溶解させるのに好適なマイクロバブル化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンは強力な酸化力を有し、優れた殺菌・脱臭効果を発揮する気体として知られている。このオゾンは、気体中にオゾンガスの状態で存在するよりも、水などの液体中に溶解したオゾン水の状態の方がその殺菌・脱臭能力が高い。また、オゾンガスは一定の濃度を超えると人体に有害であるのに対し、オゾン水は比較的高濃度であっても安全である。このため、近年、医療や製造などの各種分野では、人体や物品の殺菌・脱臭用にオゾン水が広く利用されている。
【0003】
このようなオゾン水を製造する手段として、下記の特許文献に開示されたオゾン水製造装置が知られている。この装置は、外装ケース内にオゾン供給室とオゾン溶解器を備えており、オゾン供給室にはオゾン吸着材にオゾンを吸着させたオゾン蓄積体が収納され、オゾン溶解器には先端に向かって口径が小さくなる給水管と先端に向かって口径が大きくなる受水管とが対向配置されている。そして、小径の給水管から大径の受水管へと水を流すことにより負圧が発生し、その結果、オゾン吸着材に吸着保持されているオゾンが吸引され、給水管から受水管へと流れる水にオゾンを溶解させてオゾン水が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3176358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来のオゾン水製造装置を使用する際には、水道の蛇口に給水管を接続し、蛇口から水を流しながらオゾン水を製造するようになっているため、蛇口がない場所では使用することができず、使用場所が限られてしまうという問題がある。また、オゾン蓄積体内のオゾン量が減少して十分な濃度のオゾン水が得られなくなったら、オゾン蓄積装置を用いてオゾンを再び蓄積させた新しいオゾン蓄積体に交換しなければならないため、簡易に使用することができないという問題もある。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、使用場所を選ばず、どこでも簡易に使用することができるオゾン水製造装置として好適なマイクロバブル化装置を提供することを目的とする。また、本発明は、液体中にガスを効率良く溶解させることにより、オゾン水の他にも、例えば、酸素水、炭酸水、オゾン化オイル吸着シートなどを製造することもでき、広く一般的に使用することが可能な汎用性の高い装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1に係るマイクロバブル化装置は、液体中にマイクロバブル化したガスを溶解させるための装置であって、ガスボンベからのガスを流速制御して供給する速度制御弁と、速度制御弁により供給されたガスを移送する移送管と、移送管により移送されたガスを導入してマイクロバブル化した気泡を発生させる気泡発生器を備えており、気泡発生器には、容器内にガス吸蔵体が充填されているとともに、ガス吸蔵体に吸着させて貯蔵したガスを容器外へと通過させ、かつ、容器外の液体を容器内へと通過させない大きさの微小孔が間隔を隔てて複数個設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
ここで、上記の構成からなるマイクロバブル化装置は、オゾン水を製造する装置として利用することができる。すなわち、本発明の請求項2に係るマイクロバブル化装置は、請求項1に記載のマイクロバブル化装置において、ガスボンベが酸素ボンベであり、速度制御弁により供給された酸素ガスからオゾンガスを発生させるオゾン発生器を更に備え、気泡発生器の容器内に充填したオゾン吸蔵体に吸着させて貯蔵したオゾンガスを液体に溶解させてオゾン水を製造する装置としたことを特徴とするものである。この場合、オゾン発生器を充電池からの出力電圧により作動するものとすれば、全体として携帯可能な装置とすることも可能である。
【0009】
また、上記の構成からなるマイクロバブル化装置は、酸素水を製造する装置として利用することもできる。すなわち、本発明の請求項3に係るマイクロバブル化装置は、請求項1に記載のマイクロバブル化装置において、ガスボンベが酸素ボンベであり、気泡発生器の容器内に充填した酸素吸蔵体に吸着させて貯蔵した酸素ガスを液体に溶解させて酸素水を製造する装置としたことを特徴とするものである。
【0010】
さらに、上記の構成からなるマイクロバブル化装置は、炭酸水を製造する装置として利用することもできる。すなわち、本発明の請求項4に係るマイクロバブル化装置は、請求項1に記載のマイクロバブル化装置において、ガスボンベが炭酸ボンベであり、気泡発生器の容器内に充填した二酸化炭素吸蔵体に吸着させて貯蔵した炭酸ガスを液体に溶解させて炭酸水を製造する装置としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のマイクロバブル化装置は、水道の蛇口に取り付けるタイプの装置ではなく、気泡発生器を容器内の液体に浸し、ガスボンベからの供給されるガスを非常に細かく小さな気泡にして液体に溶解させる装置である。このため、使用場所を選ばず、オゾン水や、酸素水、炭酸水、オゾン化オイル吸着シートなどを簡単かつ手軽に製造することができ、各種用途に幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のマイクロバブル化装置の全体構造を示すブロック図。
【図2】気泡発生器の構造を示す拡大図。
【図3】本発明装置を使用して製造したオゾン水と水槽用エアーストーンを使用して製造したオゾン水についてオゾン濃度を比較したグラフ図。
【図4】本発明装置を使用して製造した等張オゾン水についてオゾンガスの注入時間とオゾン濃度との関係を示すグラフ図。
【図5】本発明装置の気泡発生器に塩化ビニル製パイプを使用して製造した等張オゾン水について、オゾンガスの注入時間とオゾン濃度との関係を示すグラフ図。
【図6】図5の気泡発生器の構造を示す拡大図。
【図7】溶液によるオゾン濃度の経時的変化を比較したグラフ図。
【図8】微小孔の孔数によるオゾン濃度の経時的変化を比較したグラフ図。
【図9】オゾンガスの注入時間によるオゾン濃度の経時的変化を比較したグラフ図。
【図10】本発明のマイクロバブル化装置の別形態を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態のマイクロバブル化装置M1は、水や油などの液体中にマイクロバブル化したオゾンガスを溶解させることにより、オゾン水やオゾン化オイル吸着シートなどを簡易に製造できるようにした携帯型の装置である。このマイクロバブル化装置M1は、速度制御弁1と、オゾン発生器2と、移送管3と、気泡発生器4を備えて構成されている。以下、各部品の構造と機能を詳細に説明する。
【0015】
速度制御弁1は、原料となる酸素ガスの流速を制御してオゾン発生器2へと供給する機能を有するものである。酸素ガスは酸素ボンベ5から供給されるが、本実施形態では携帯用の小型ボンベ(酸素容量18L)を使用し、このボンベを格納するケースにダイヤル式スイッチと酸素残量メータが付いた開閉スイッチ付きの速度制御弁(スピードコントローラ)1が一体に取り付けられている。なお、この格納ケースの代わりに電磁弁(図示略)を取り付けて開閉するようにしても良い。
【0016】
この速度制御弁1は、内部に絞り弁と逆止弁が並列に組み合わされており、酸素ボンベ5から吐出された酸素ガスを絞り弁で流量調節し、その流体圧により逆止弁を開き、圧縮状態のまま流速制御された酸素ガスを供給するようになっている。本実施形態において、速度制御弁1から供給される酸素ガスは、圧力0.04MPa、流量0.25mL/分に設定されている。
【0017】
オゾン発生器2は、速度制御弁1により供給された酸素ガスからオゾンガスを発生させる機能を有するものである。本実施形態のオゾン発生器2は、無声放電を利用してオゾンガスを発生させるオゾナイザーからなり、その吸気口が酸素ガスの供給管6を介して速度制御弁1に接続されている。また、オゾン発生器2の本体には12V出力の充電池7が接続されており、電源スイッチ(図示略)を有する充電池7からの出力電圧でオゾン発生器2を作動させることによって、全体として携帯可能な装置となるように構成されている。
【0018】
また、オゾン発生器2は、内部にガラスやセラミック等の誘電体で被覆した電極が対向配置されており、この電極に交流電圧を印加することにより、酸素ガスに放電を与えてオゾンを発生させる。その発生原理は、電子衝突によって酸素分子[O]が酸素原子[O]に分解され、分解された酸素原子[O]と酸素分子[O]とが結合してオゾン[O]が発生するというものである。
【0019】
なお、本実施形態のオゾン発生器2は放電方式のものを使用したが、これに限らず、ダイヤモンド電極による電気分解方式のオゾン発生器や、紫外線ランプによる紫外線照射方式のオゾン発生器を使用しても良い。
【0020】
移送管3は、オゾン発生器2により発生したオゾンガスを気泡発生器4へと移送する機能を有するものである。移送管3は、その一端がオゾン発生器2の排気口に接続されており、他端が気泡発生器4の吸入口に接続されている。したがって、オゾン発生器2で発生したオゾンガスは、速度制御弁1で制御された一定の流速を維持したまま気泡発生器4へと移送される。なお、移送管3に逆止弁(図示略)を取り付けておき、気泡発生器4へ移送中のオゾンガスがオゾン発生器2に逆流しないように構成されていても良い。
【0021】
気泡発生器4は、移送管3によって移送されてきたオゾンガスを導入し、マイクロバブル化した気泡を発生させて放出する機能を有するものである。気泡発生器4の容器の材質は、孔を開けやすくオゾンガスに強いものであれば特に限定されず、例えばポリテトラフルオロエチレン(フッ素樹脂)、塩化ビニル、SUS316などを使用することができる。また、その形状は、細長い管状のチューブや、厚さが薄い扁平型の容器であれば良い。本実施形態の気泡発生器4は、ビニルチューブ又は塩化ビニル製パイプによって構成されている。
【0022】
図2に拡大して示すように、気泡発生器4の内部には、オゾン吸蔵体8が充填されている。このオゾン吸蔵体8は、オゾンガスを吸着して貯蔵する材料からなり、粒状化もしくは粉砕化したシリカゲルや多孔質ガラス等を使用することができる。その粒径は1〜4mm程度、より好ましくは1.5mm以下とするのが良い。
【0023】
また、気泡発生器4には、オゾン吸蔵体8に吸着し貯蔵したオゾンガスを容器の外部へと放出するために複数の微小孔9,9,…が設けられている。この微小孔9は、オゾンガスを通過させるが、液体を通過させない大きさで貫通形成した孔であり、その孔径が0.1〜0.5mmの範囲内に設定されている。気泡発生器4を構成するチューブには、その長手方向に沿って所定間隔を隔てて複数個の微小孔9,9,…が互い違いに配列されている。なお、微小孔9の間隔や個数は特に限定されないが、少なくとも3mm以上の間隔で10個以上設けられているのが好ましい。
【0024】
実施形態1では、図2に示すように外径(φ1)12mm、内径(φ2)10mm、長さ(L)75mmのビニルチューブを使用し、1列に幅(W)5mmの等間隔で15個、2列で合計30個の微小孔9,9,…を設けてある。また、微小孔9,9,…の孔径(φ3)はそれぞれ0.3mmに設定した。なお、ビニルチューブの内部にはオゾン吸蔵体8として、粒状のシリカゲルが4.5g充填されている。
【0025】
以上が本実施形態のマイクロバブル化装置の構成であるが、次にその使用方法について説明する。
【0026】
図1に示すように、まず魔法瓶10に原液となる液体11を入れる。魔法瓶10はある程度の深さがあって容量が250mL以上のものを使用するのが好ましい。ここで、本発明のマイクロバブル化装置M1を用いて等張オゾン水を製造する場合、魔法瓶10の上部からオゾン臭がするので、上部にオゾン分解触媒器(図示略)を取り付けて使用するのが好ましい。また、液体11としては、2Lのミネラルウォーターに食塩18gを添加し、よくかき混ぜた0.9%食塩水を250mL使用する。単なるオゾン水を製造するのであれば、使用する液体11は250mLのミネラルウォーターで良い。
【0027】
次に、マイクロバブル化装置M1の気泡発生器4を、液体11(0.9%食塩水)の入った魔法瓶10の中に投入する。このとき、気泡発生器4に設けられているすべての微小孔9,9,…が0.9%食塩水に浸るように、気泡発生器4を沈めて使用する。
【0028】
続いて、電源スイッチをONして充電池7の出力電圧でオゾン発生器2を作動させ、酸素ボンベ5のコックを開き、速度制御弁1の開閉スイッチをONにする。これにより、酸素ボンベ5から速度制御弁1を介して酸素ガスが供給され、オゾン発生器5でオゾンガスが生成される。そして生成されたオゾンガスは、移送管3を通じて気泡発生器4へと導入される。
【0029】
気泡発生器4では、導入されたオゾンガスが容器内部のオゾン吸蔵体8に吸着し、次第に貯蔵されていく。オゾン吸蔵体8に一定量のオゾンガスが貯蔵されると、高濃度のオゾンガスが微小孔9,9,…を抜けて容器の外部へと放出される。このとき、微小孔9を抜けたオゾンガスは非常に細かく小さな気泡、いわゆるマイクロバブルとなって放出されるので、魔法瓶10内の0.9%食塩水に効率良く溶け込まれていく。なお、微小孔9の孔径は水を通さない大きさに設定されているため、0.9%食塩水が気泡発生器4の容器内に浸入することはない。
【0030】
このようにマイクロバブル化装置M1の運転を継続し、オゾンガスを注入し続ける。そして数分後、酸素ボンベ5を格納するケースのダイヤル式スイッチをOFFにし、酸素ガスの供給を停止する。これにより魔法瓶10内の0.9%食塩水中にマイクロバブル化したオゾンガスが溶解するため、数分後にはオゾン濃度が約2.5ppm、容量250mLの等張オゾン水を採取することができる。この等張オゾン水は0.9%食塩水の中にオゾンガスがマイクロバブル化した状態で溶け込んでいるので、オゾン濃度の経時的変化が極めて小さいものとなる。このため、等張オゾン水を採取した後、魔法瓶10の蓋を閉めておけば、数時間経過後でも約2.0ppm以上の高いオゾン濃度を維持することが可能である。
【0031】
ここで、本発明のマイクロバブル化装置の効果を実験により検証したので、その結果を図面に基づいて説明する。
【0032】
図3は、本発明のマイクロバブル化装置M1を使用して250mLのミネラルウォーター中にオゾンガスを0.25mL/分で注入し続け、10分間注入した後に採取したオゾン水について、オゾン濃度の経時的変化を表わしたものである。使用した気泡発生器の形状及びサイズは図2に示したとおりである。また、効果を比較するために、水槽用のエアーストーン(長さ100mm×高さ17mm×幅17mm)を使用してオゾンガスを注入し、同じく10分間注入した後に採取したオゾン水のオゾン濃度を測定した。
【0033】
図3から明らかなように、水槽用のエアーストーンを使用した場合、10分間注入直後はオゾン濃度が3ppmよりも高い値を示したが、30分経過後にはオゾン濃度が2ppmを下回り、90分経過後にはオゾン濃度が1ppm未満に低下した。これに対し、本発明のマイクロバブル化装置M1を使用した場合、10分間注入直後はオゾン濃度が3ppm近くの高い値を示し、30分経過後、60分経過後、及び90分経過後であっても、いずれもオゾン濃度は約2ppmを推移した。
【0034】
以上の実験結果から、本発明のマイクロバブル化装置M1によれば、製造されたオゾン水のオゾン濃度の経時的変化が極めて小さく、比較的高いオゾン濃度を長時間にわたって維持できることが判明した。
【0035】
図4は、本発明のマイクロバブル化装置M1を使用して250mLの0.9%食塩水中にオゾンガスを0.25mL/分で注入し、5分間注入後、10分間注入後、及び20分間注入後にそれぞれ採取した等張オゾン水について、オゾン濃度の経時的変化を比較したものである。使用した気泡発生器の形状及びサイズは図3のものと同じである。
【0036】
図4から明らかなように、5分間注入後の等張オゾン水は、注入直後に約1ppmであったオゾン濃度が30分経過後、60分経過後において1ppm付近を推移した。また、10分間注入後の等張オゾン水は、注入直後に約2.5ppmであったオゾン濃度が30〜120分経過後まで約2ppm付近を推移し、180分経過後のオゾン濃度は約1ppmであった。さらに、20分間注入後の等張オゾン水は、注入直後に約4ppmであったオゾン濃度が30〜120分経過後まで緩やかに低下し、180分経過後のオゾン濃度は約1.5ppmであった。
【0037】
以上の実験結果から、本発明のマイクロバブル化装置M1によれば、オゾン濃度が2ppm程度の等張オゾン水を製造するのであれば、オゾンガスの注入時間は少なくとも10分間程度であれば良いことが判明した。
【0038】
図5は、オゾンガスの注入時間の違いによるオゾン濃度の経時的変化を比較したものである。すなわち、本発明のマイクロバブル化装置M1を使用して、250mLの0.9%食塩水中にオゾンガスを0.25mL/分で注入し、1分間注入後、3分間注入後、5分間注入後、及び10分間注入後に、それぞれ採取した等張オゾン水のオゾン濃度を測定した。
【0039】
ここで、今回使用した気泡発生器の構造を図6に示す。図6に示すように、実施形態2の気泡発生器4は、ビニルチューブに代えて塩化ビニル製パイプを使用したものであり、外径(φ1)18mm、内径(φ2)13mm、長さ(L)82mmの塩化ビニル製パイプにおいて、1列に幅(W)5mmの等間隔で15個、2列で合計30個の微小孔9,9,…を設けてある。また、微小孔9,9,…の孔径(φ3)はそれぞれ0.3mmに設定した。なお、塩化ビニル製パイプの内部にはオゾン吸蔵体8として、粒状のシリカゲルが7.0g充填されている。
【0040】
この気泡発生器を使用して等張オゾン水を製造したところ、図5に示すとおり、1分間注入直後のオゾン濃度は1ppm未満であり、満足するオゾン濃度は得られなかったが、3分間注入直後のオゾン濃度は約3ppmであり、120分経過後も1ppmを超えるオゾン濃度が得られた。また、5分間注入直後のオゾン濃度は約4.5ppm、10分間注入直後のオゾン濃度は約5ppmを超える高い値を示し、120分経過後でも約1.5ppmのオゾン濃度が得られた。
【0041】
以上の実験結果から、ビニルチューブに代えて塩化ビニル製パイプを使用し、シリカゲルの充填量を増やすことによって、同じオゾン濃度の等張オゾン水をより短時間で製造できることが判明した。
【0042】
図7は、本発明のマイクロバブル化装置M1を使用して、溶液によるオゾン濃度の経時的変化を比較したものである。使用した溶液は250mLのミネラルウォーターと250mLの生理食塩水であり、それぞれオゾンガスを0.25mL/分で注入し、5分間注入後に採取したオゾン水のオゾン濃度を測定した。使用した気泡発生器の形状及びサイズは図6のものと同じである。
【0043】
図7から明らかなように、5分間注入後、ミネラルウォーターを使用したオゾン水のオゾン濃度は約3ppmであったのに対し、生理食塩水を使用した等張オゾン水のオゾン濃度は約4.5ppmの高い値を示した。また、時間が経過するにつれてオゾン濃度は低下していくが、120分経過した後であっても、ミネラルウォーターを使用したオゾン水と生理食塩水を使用した等張オゾン水のいずれも約2ppmのオゾン濃度を示した。
【0044】
以上の実験結果から、本発明のマイクロバブル化装置M1によれば、溶液の種類に限らず数時間経過した後でも約2ppm程度のオゾン濃度を保つことができ、特に、溶液に生理食塩水を使用した等張オゾン水の場合には、注入直後に高いオゾン濃度が得られることが判明した。
【0045】
図8は、本発明のマイクロバブル化装置M1を使用して、微小孔の孔数の違いによるオゾン濃度の経時的変化を比較したものである。使用した溶液は250mLの生理食塩水であり、オゾンガスを0.25mL/分で注入し、5分間注入した後に採取した等張オゾン水のオゾン濃度を測定した。使用した気泡発生器は塩化ビニル製パイプであり、その形態は図6のものと同じであるが、微小孔の孔数を1列10個、1列15個、2列30個、3列45個と変えて各々のオゾン濃度を測定した。
【0046】
図8から明らかなように、孔数が1列10個、1列15個、2列30個の場合には、注入直後のオゾン濃度が約5ppm、60分経過後のオゾン濃度が約3ppm、120分経過後のオゾン濃度が約2ppmであり、いずれもほぼ同じようなオゾン濃度の推移を示した。これに対し、孔数が3列45個の場合には、注入直後のオゾン濃度が3ppm、60分経過後のオゾン濃度が約2ppmであり、他の孔数の場合に比べて全体的に低いオゾン濃度を示した。
【0047】
以上の実験結果から、本発明のマイクロバブル化装置M1において、微小孔の孔数は1列10〜15個で1〜2列程度が好適であることが判明した。これは、微小孔が3列の場合、1列や2列の場合に比べて孔の数と吸蔵体に使用したシリカゲルの充填量7gによる最適条件が適合しないためであると考えられる。
【0048】
図9は、本発明のマイクロバブル化装置M1を使用して、オゾンガスの注入時間によるオゾン濃度の経時的変化を比較したものである。使用した溶液は250mLの生理食塩水であり、オゾンガスを0.25mL/分で注入し、3分間注入した後、5分間注入した後にそれぞれ採取した等張オゾン水のオゾン濃度を測定した。使用した気泡発生器は塩化ビニル製パイプであり、その形態は図6のものと同じであるが、微小孔の孔数を1列15個で一定にした。
【0049】
図9から明らかなように、3分間注入後の等張オゾン水のオゾン濃度が3.92ppmであったのに対して、5分間注入後の等張オゾン水のオゾン濃度は5.47ppmであった。また、時間の経過とともにオゾン濃度は低下していくが、120分経過後であっても、3分間注入したもののオゾン濃度が2.3ppm、5分間注入したもののオゾン濃度が2.1ppmを示した。
【0050】
以上の実験結果から、本発明のマイクロバブル化装置M1において、図6のような塩化ビニル製パイプからなる気泡発生器を使用した場合、次のような結論が得られた。孔数1列15個で5分間注入したものはオゾン濃度5ppm以上の等張オゾン水になるが、製造時間を短縮することとオゾン濃度を4ppm程度にすることが必要である。そこで、孔数1列15個で3分間注入すると短時間(3分間)でオゾン濃度4ppmの等張オゾン水を製造することが可能であり、しかも、2時間経過後であっても2ppmのオゾン濃度を維持することができる。よって、オゾン濃度が2ppm程度の等張オゾン水を製造するのであれば、オゾンガスの注入時間は少なくとも3分間程度であれば良いことが判明した。なお、パイプの体積(シリカゲルの充填量)と孔数(孔径も関係する)とは密接な関係があると考えられる。
【0051】
以上説明した実施形態では、ビニルチューブや塩化ビニル製パイプに微小孔9を開けて気泡発生器4を作製したが、例えば予め複数の微細な孔が開いた多孔質フッ素樹脂チューブを使用して気泡発生器4を作製しても良い。また、液体11を入れる容器に魔法瓶10を使用したが、それ以外の容器を使用しても良い。例えば、ステンレス容器の下部に本発明のマイクロバブル化装置M1を装着して、容器と装置を一体化することもできる。
【0052】
また、本発明のマイクロバブル化装置M1を利用してオゾン水や等張オゾン水を製造した例について説明したが、この装置を利用すれば、これ以外にも、例えばオゾン化オイル吸着シートを製造することも可能である。その方法は、液体11としてオリーブオイル、ひまわり油などのオレフィン酸を含むオイルをペーパータオルに吸着させた後、オゾンガスの注入時間を長くすれば良い。
【0053】
さらに、上記の構成からなるマイクロバブル化装置M1を変形して、酸素水を製造する装置とすることもできる。この場合、図10に示すように、図1のオゾン発生器2を取り外し、酸素ボンベ5に取り付けた速度制御弁1に移送管3を直接連結すれば良い。酸素水を製造する場合、気泡発生器4の材質については、レジン(水に溶解しないプラスチック)や、金属(水に錆びないもの)を使用する。また、気泡発生器4の容器内に酸素ガスを吸着し貯蔵する酸素吸蔵体を充填するが、この酸素吸蔵体としては、オゾン吸蔵体8と同じく粒状化もしくは粉砕化したシリカゲルや多孔質ガラス等を使用することができる。その他の構成は図1の装置と同様である。
【0054】
本実施形態のマイクロバブル化装置M2を使用して酸素水を製造する際には、まず魔法瓶10に液体11として250mLのミネラルウォーターを入れ、気泡発生器4を魔法瓶10の中に投入する。次に、酸素ボンベ5のコックを開き、速度制御弁1の開閉スイッチをONにすることにより、酸素ボンベ5から速度制御弁1を介して酸素ガスが供給され、移送管3を通じて気泡発生器4へと導入される。
【0055】
そして、気泡発生器4では、酸素ガスが容器内部の酸素吸蔵体に吸着して貯蔵され、一定量の酸素ガスが貯蔵されると、高濃度の酸素ガスが微小孔9,9,…を抜けて容器の外部へと放出される。このとき、微小孔9を抜けた酸素ガスが非常に細かく小さな気泡(マイクロバブル)となって放出され、魔法瓶10内のミネラルウォーターに溶け込まれていく。
【0056】
そして、マイクロバブル化装置M2によって酸素ガスを注入し続け、数分後、酸素ボンベ5のコックを閉じて速度制御弁1の開閉スイッチをOFFにして、酸素ガスの供給を停止する。これにより魔法瓶10内のミネラルウォーター中にマイクロバブル化した酸素ガスが溶解するため、数分後には酸素濃度約2.5ppm、容量250mLの酸素水を採取することができる。
【0057】
また、本実施形態のマイクロバブル化装置M2によれば、炭酸水を製造する装置とすることもできる。この場合、図10の酸素ボンベ5を取り外し、代わりに炭酸ボンベを取り付けて運転することにより、ミネラルウォーターに炭酸ガスを注入すれば良い。なお、炭酸水を製造する場合には、気泡発生器4に二酸化炭素吸蔵体(例えば、シリカゲル)を充填するようにする。
【符号の説明】
【0058】
M1…マイクロバブル化装置(オゾンガス用)
M2…マイクロバブル化装置(酸素ガス用)
1…速度制御弁
2…オゾン発生器
3…移送管
4…気泡発生器
5…酸素ボンベ
6…供給管
7…充電池
8…オゾン吸蔵体
9…微小孔
10…魔法瓶
11…液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中にマイクロバブル化したガスを溶解させるための装置であって、
ガスボンベからのガスを流速制御して供給する速度制御弁と、速度制御弁により供給されたガスを移送する移送管と、移送管により移送されたガスを導入してマイクロバブル化した気泡を発生させる気泡発生器を備えており、
気泡発生器には、容器内にガス吸蔵体が充填されているとともに、ガス吸蔵体に吸着させて貯蔵したガスを容器外へと通過させ、かつ、容器外の液体を容器内へと通過させない大きさの微小孔が間隔を隔てて複数個設けられていることを特徴とするマイクロバブル化装置。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロバブル化装置において、
ガスボンベが酸素ボンベであり、速度制御弁により供給された酸素ガスからオゾンガスを発生させるオゾン発生器を更に備え、
気泡発生器の容器内に充填したオゾン吸蔵体に吸着させて貯蔵したオゾンガスを液体に溶解させてオゾン水を製造する装置としたことを特徴とするマイクロバブル化装置。
【請求項3】
請求項1に記載のマイクロバブル化装置において、
ガスボンベが酸素ボンベであり、
気泡発生器の容器内に充填した酸素吸蔵体に吸着させて貯蔵した酸素ガスを液体に溶解させて酸素水を製造する装置としたことを特徴とするマイクロバブル化装置。
【請求項4】
請求項1に記載のマイクロバブル化装置において、
ガスボンベが炭酸ボンベであり、
気泡発生器の容器内に充填した二酸化炭素吸蔵体に吸着させて貯蔵した炭酸ガスを液体に溶解させて炭酸水を製造する装置としたことを特徴とするマイクロバブル化装置。
【請求項5】
請求項2に記載のマイクロバブル化装置において、
オゾン発生器が充電池からの出力電圧により作動するものであり、全体として携帯可能な装置としたことを特徴とするマイクロバブル化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−34976(P2013−34976A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175554(P2011−175554)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【特許番号】特許第4879365号(P4879365)
【特許公報発行日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【出願人】(597117514)
【Fターム(参考)】