説明

マイクロピッチング防止性を強化するための新規基材潤滑油混合物

潤滑油配合物、および潤滑油配合物の混合方法が開示される。潤滑油配合物は、少なくとも二種の基材を含む。第一の基材は、粘度100cSt超(Kv100℃)を含む。第二の基材は、粘度10cSt未満(Kv100℃)を含む。潤滑油配合物は、風力タービンで用いられる大きなギヤを含むギヤに対して、優れたマイクロピッチング防止性を示す。加えて、潤滑油はまた、粘度38cSt超(Kv100℃)、粘度指数161超、およびFVA54マイクロピッチング試験の不合格負荷段階10超のマイクロピッチング防止性レベルを有する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
マイクロピッチングは、疲労磨耗の予想外に高均一な割合である。それは、機械寿命の最初の百万サイクルにおけるころがり滑り弾性流体潤滑(「EHL」)接触で生じる。影響を受けたギヤは、典型的には、接触表面に灰色無光沢仕上げを有する。光学顕微鏡検査では、網目状のき裂、および直径10〜20マイクロメーターのマイクロピッチングが現れる。このタイプの不具合は、大きなギヤボックスで、慢性的な問題を有している。これには、風力タービン分野で用いられるギヤボックスが含まれる。マイクロピッチングには、集合して、特徴的な鈍い無光沢の外観を有する連続的な破面が生じる。これは、ギヤに適用される場合には、種々に、グレーステイン、フロスティング、またはドイツではグラウフレッキッヒカイト(graufleckigkeit)と呼ばれる。ベアリングにおける事象の関連用語は、ピーリング、または一般的な表面スポーリングである。マイクロピッチングは、一般にしかし必ずしも排他的でなく、重加重ケースの浸炭ギヤ装置に付随する問題である。
【0002】
マイクロピッチングの進行は、究極的には、(マクロ)ピッチングをもたらしてもよいか、または停止点に発展してもよい。それは無害に見えることがあるが、ギヤ表面からのこれらの金属の減失は、ギヤ精度の減少、振動および騒音の増大、および他の関連問題をもたらす。
【0003】
ギヤのマイクロピッチングを測定する方法は、10年以上前にFZG学会(ミュンヘン)で開発されている。非特許文献1を参照されたい。FZGの提案は、引続いて、FVA協会(ドイツ)によって支援された手順に発展され、正式に、1993年に発行された。非特許文献2を参照されたい。
【0004】
FVA第54/7号手順は、工業ギヤ潤滑油のマイクロピッチング耐性性能を評価するための工業標準になった。方法では、二つの別個の段階を有するFZG出力循環装置が用いられる。第一は、漸進負荷試験または段階試験であり、ピニオン、またはセットになった二つのギヤのより小さいほうが、負荷段階5〜負荷段階10の各16時間負荷段階の後に、取外されて評価されなければならない。次いで、ギヤセットの第二の側面が、新油による負荷段階5〜10各16時間を含む段階試験で運転される。これに、耐久試験が続き、ギヤは、第二の段階試験と同じ給油で、全6回の80時間運転される。これは、最初の80時間の負荷段階8で始まり、次いでその後の80時間の負荷段階10で終わる。検査は、各時間の間で行われる。検査では、ピニオンの歯面のマイクロピッチング面積、ピニオンの重量減、およびプロフィル偏差の形態が評価される。歯車プロフィルの測定は、プロフィルメーターを用いて行われる。検出チップが、歯先から歯根へ移動され、トポグラフィがコンピュータープログラムに入力される。試験前後の測定値が、比較され、差異が、「プロフィル偏差」として報告される。損傷負荷段階は、プロフィル偏差が7.5μmを超える場合に到達される。
【0005】
エクソンモービル(バージニア州フェアファックス(Fairfax、Virginia))から販売されるモービルギヤ合成炭化水素−エキストラマイクロ防止または(「SHC XMP」)は、マイクロピッチング耐性の工業ギヤ油として、1998年に商業化された。この潤滑油の主要な市場は、風力タービン分野である。モービルギヤSHC XMPは、一例を除く使用では大成功であった。その例外は、製造業者から今日求められるグラウフレッキッヒカイト(Graufleckigkeit)試験「GFT」のFLS 10超クラスの優れた性能レベルである。GFTクラスは、FLS 10超を求める評価である。モービルギヤSHC XMP320は、FLS 10を示す。今日では、BPカストロールオプチモル合成A320製品のみが、マイクロピッチング性能について、この同等レベルを求めている。
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,827,064号明細書
【特許文献2】米国特許第4,827,073号明細書
【特許文献3】米国特許第4,990,709号明細書
【特許文献4】米国特許第5,254,274号明細書
【特許文献5】米国特許第5,132,478号明細書
【特許文献6】米国特許第4,912,272号明細書
【特許文献7】米国特許第5,264,642号明細書
【特許文献8】米国特許第5,243,114号明細書
【特許文献9】米国特許第5,208,403号明細書
【特許文献10】米国特許第5,057,235号明細書
【特許文献11】米国特許第5,104,579号明細書
【特許文献12】米国特許第4,943,383号明細書
【特許文献13】米国特許第4,906,799号明細書
【特許文献14】米国特許第5,012,020号明細書
【特許文献15】米国特許第5,146,021号明細書
【特許文献16】米国特許第6,080,301号明細書
【特許文献17】米国特許第6,090,989号明細書
【特許文献18】米国特許第6,165,949号明細書
【特許文献19】米国特許第6,1184,186号明細書
【非特許文献1】ウィンター(Winter),H.著「ケース浸炭ギヤ試験手順におけるピッチングおよびマイクロピッチング耐性に対する潤滑油の影響」(オスター(Oster),P.AGMA技術文献第87FTM9号、1987年10月)
【非特許文献2】「FVA−Infotmationsblatt Nr.54 I−IV:Testverfahren zur Untersuchung des Schmierstoffeinflusses auf die Entstehung von Grauflecken bei Zahnradern」(FVA−第54/7号標準、1993年7月)
【非特許文献3】API文献第1509号(www.API.org)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここ数年、この分野には、FLS 10超のFVA54マイクロピッチング試験で最高レベルの性能を要求し始めている多数の主要装置製造業者が存在している。評点10超の高いFLSでは、FVA54マイクロピッチング試験(段階10負荷の終わり)で、ギヤ歯車のプロフィル偏差7.5μm未満が要求される。現在、この性能レベルを一貫して示す炭化水素ベースの潤滑油は知られていない。従って、FLS 10超の一貫したFVA54マイクロピッチング試験の結果を示す潤滑油が必要とされている。本発明は、この必要性を、所望の性能を示す新規基材組み合わせを提供することによって満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
新規潤滑油配合物が開示される。一実施形態においては、新規潤滑油配合物は、第一および第二の基材の間の粘度差96cSt超(Kv100℃)を有する少なくとも二種の基材を含み、かつ潤滑油は、FVA54マイクロピッチング試験の不合格負荷8超を示す。
【0009】
第二の実施形態においては、新規潤滑油配合物は、少なくとも二種の基材を含む。第一の基材は、粘度100cSt超(Kv100℃)を有する合成油を含む。第二の基材は、粘度10cSt未満(Kv100℃)を有する合成油を含む。
【0010】
新規配合物の混合方法がまた開示される。方法は、第一の合成基材潤滑油を得る工程を含む。第一の基材は、粘度100cSt超(Kv100℃)を有する。第二の合成基材潤滑油が得られる。第二の基材潤滑油は、粘度10cSt未満(Kv100℃)を有する。第一および第二の基材潤滑油は、混合されて、潤滑油が製造され、ここで、潤滑油は、FVA54マイクロピッチング試験の不合格負荷8超を示す。
【0011】
好ましいマイクロピッチング防止性の達成方法がまた開示される。方法は、少なくとも二種の基材、即ち粘度100cSt超(Kv100℃)を有する合成油を含む第一の基材少なくとも10%および60%以下、並びに粘度10cSt未満(Kv100℃)を有する油を含む第二の基材少なくとも5%および30%以下を含む潤滑油を得る工程であって、潤滑油は、FVA54マイクロピッチング試験の不合格負荷段階8超を示す工程、および少なくとも一種のギヤを、潤滑油で潤滑する工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
マイクロピッチング防止性の予想外の増大を示す新規基材組み合わせが発見された。強化されたマイクロピッチング性の利点は、修正FVA54タイプマイクロピッチング試験および実FVA54タイプマイクロピッチング試験で実証された。マイクロピッチング性能のレベルは、一定の不合格負荷段階10超を達成している。炭化水素ベースの潤滑油は、これまで、FVA54マイクロピッチング試験で不合格負荷段階10超に至ることができなかった。
【0013】
一実施形態においては、この新規な発見は、基材の粘度差少なくとも96cSt(Kv100℃)である油粘度を有する幅広な「二峰性」混合物に基づく。動粘度は、重力下に較正ガラスキャピラリー粘度計を通って流れる流体量に対する時間を測定することによって決定される。粘度は、典型的には、センチストークス(cSt、またはmm/秒)の単位で測定される。仕上げ潤滑油の工業潤滑油に対して典型的に引用されるISO粘度分類は、40℃で観察される粘度に基づいた。仕上げ油を混合するのに用いられる基材油は、一般に、100℃で観察される粘度を用いて記載される。粘度に関するこの「二峰性」混合物はまた、ギヤ試験の潤滑油温度を、約10℃下げることによる温度利点を示す。この温度の低下は、効率を向上させるであろう。
【0014】
潤滑油は、油の少なくとも二種の基材混合物を含む。第一の基材混合物は、粘度100cSt超(Kv100℃)を有する潤滑油を含む。より好ましくは、第一の基材粘度は、300cSt未満(Kv100℃)であって、高速の機械せん断による不安定性の問題が回避される。更により好ましくは、第一の基材混合物は、粘度110cSt超(Kv100℃)および200cSt未満(Kv100℃)を有する。最も好ましくは、粘度120〜200cSt(Kv100℃)である。
【0015】
第二の基材混合物は、粘度10cSt未満(Kv100℃)、好ましくは6cSt未満(Kv100℃)を有する潤滑油を含む。好ましくは、第二の潤滑油の粘度は、好ましくは、少なくとも2cSt(Kv100℃)であるべきである。更により好ましくは、粘度3〜5cSt(Kv100℃)である。表1は、従来のギヤ油配合物、同様に新規二峰性混合物の両方に対するマイクロピッチング試験のデータである。データを、図1、2および3のグラフに示す。
【0016】
【表1】

【0017】
図1は、歯車のプロフィル偏差線10を、第一および第二の混合基材における粘度差に基づいて示すグラフである。このグラフに示されるように、幅広い粘度差は、マイクロピッチング防止性を、ライン19で表されるFLS 10超の障壁を突破して向上する。第一および第二の基材の間の粘度差94cSt(Kv100℃)を有するデータ点3では、先行技術を超える向上は全くない。しかし、第一および第二の基材の間の粘度差124cSt(Kv100℃)を有するデータ点2では、マイクロピッチング防止性の実質的な向上がある。FLS=10の区域11からFLS 10超の区域11への交点9は、約103cSt(Kv100℃)で生じる。マイクロピッチング防止性の向上は、第一および第二の基材の間の粘度差96cSt(Kv100℃)で始まり、約300cSt(Kv100℃)まで続く。より好ましい範囲は、100cSt(Kv100℃)〜250cSt(Kv100℃)である。粘度差の最も好ましい範囲は、約125〜150cSt(Kv100℃)であることが分かる。
【0018】
図2は、歯車のプロフィル偏差線20を、混合基材の最終粘度に基づいて示すグラフである。その際、図1における類似の要素は、同じ参照数字を充てられている。このグラフは、基材がISO320(Kv40℃)グレード内にあるように混合された後の潤滑油の最終粘度を示す。
【0019】
図2に示されるように、より高い粘度は、マイクロピッチング防止性を、ライン19で表されるFLS 10超の障壁を突破して向上する。粘度38cSt(Kv100℃)を有するデータ点3では、先行技術を超える向上は全くない。しかし、粘度44cSt(Kv100℃)を有するデータ点2では、マイクロピッチング防止性の実質的な向上がある。FLS=10の区域11からFLS 10超の区域11への交点25は、約40cSt(Kv100℃)で生じる。マイクロピッチング防止性の向上は、粘度約39cSt(Kv100℃)で始まり、約300cSt(Kv100℃)まで続く。より好ましい範囲は、40cSt(Kv100℃)〜100cSt(Kv100℃)である。
【0020】
図3は、歯車のプロフィル偏差30を、混合基材からの潤滑油の最終粘度指数または(「VI」)に基づいて示すグラフである。その際、図1および図2における類似の要素は、同じ参照数字を充てられている。VIの実務は、ASTM標準D2270に記載されるが、これは、動粘度の変動(石油生成物の温度40℃および100℃の間の変化による)について、広範囲に用いられ、かつ一般に認められる尺度である。より高い粘度指数は、温度が上昇した際に、粘度のより小さな減少を示す。VIはまた、温度変化による動粘度の従属性を示すただ一つの数値として用いられる。
【0021】
図3に示されるように、より高いVIは、マイクロピッチング防止性を、ライン19で表されるFLS 10超の障壁を突破して向上する。VI 161を有するデータ点3では、先行技術を超える向上は全くない。しかし、VI 181を有するデータ点2では、マイクロピッチング防止性の実質的な向上がある。FLS=10の区域11からFLS 10超の区域11への交点35は、約168のVIで生じる。マイクロピッチング防止性の向上は、約165のVIで始まり、約300のVIまで続く。マイクロピッチング防止性は、VI 300を過ぎても続く。
【0022】
グループI、II、III、IV、およびVは、潤滑油基油に対する指針を作成するアメリカ石油協会によって開発され、かつ定義される基油材の広い分類である(非特許文献3)。グループI基材は、一般に、粘度指数約80〜120を有し、硫黄約0.03%超、および/または飽和分約90%未満を含む。グループII基材は、一般に、粘度指数約80〜120を有し、硫黄約0.03%以下、および飽和分約90%以上を含む。グループIII材は、一般に、粘度指数約120超を有し、硫黄約0.03%以下、および飽和分約90%超を含む。グループIVには、ポリアルファオレフィン(PAO)が含まれる。グループV基材には、グループI〜IVに含まれない基材が含まれる。表2は、これらの5グループのそれぞれについての特性を要約する。
【0023】
【表2】

【0024】
好ましい実施形態においては、基材には、合成油の少なくとも一種の基材が含まれ、最も好ましくはAPIグループIVのポリアルファオレフィンの少なくとも一種の基材が含まれる。この適用のための合成油には、天然に存在する鉱油でない全ての油が含まれるであろう。天然に存在する鉱油は、しばしば、APIグループI油と呼ばれる。
【0025】
新規タイプのPAO潤滑油は、特許文献1(ウー(Wu))および特許文献2(ウー(Wu))によって紹介された。これらのPAO物質は、還元価状クロム触媒を用いることによって製造されるが、これは、非常に高い粘度指数(潤滑油基材として有用である非常に望ましい特性を、それらに付与する)によって特徴付けられ、かつより高い粘度グレードを有するオレフィンオリゴマーまたはポリマーである。即ちVI向上剤である。それらは、高粘度指数PAO、またはHVI−PAOと呼ばれる。比較的低分子量のHVI−PAO物質は、潤滑油基材として有用であることが分かり、一方より高粘度のPAO(典型的には粘度100cST以上、例えば100〜1000cStを有する)は、従来のPAO、並びに他の合成および鉱油誘導基材に対する粘度指数向上剤として非常に効果的であることが分かった。
【0026】
これらのHVI−PAO物質の種々の修正および変更はまた、引用される次の米国特許に記載される。即ち、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12および特許文献13である。これらのオリゴマーは、概略、1−オレフィンを、還元価状の担持金属である金属オリゴマー化触媒の存在下にオリゴマー化することによって製造されるものとして要約される。好ましい触媒は、還元価状クロムをシリカ担体に担持して含み、クロムを、還元剤として一酸化炭素を用いて還元することによって調製される。オリゴマー化は、得られるオリゴマーに望ましい粘度に従って選択される温度で行われる。これは、特許文献1および特許文献2に記載される。より高粘度の物質は、特許文献14および特許文献15に記載されるように製造される。その際、オリゴマー化温度約90℃未満が用いられて、より高分子量のオリゴマーが製造される。全ての場合に、オリゴマーは、残存不飽和を低減するのに必要な場合に水素添加の後に、分枝指数(特許文献1および特許文献2に定義される)0.19未満を有する。全体に、HVI−PAOは、通常、粘度約12〜5,000cStを有する。
【0027】
更に、HVI−PAOは、一般に、一種以上の次のものによって特徴付けられることができる。即ち、分枝比0.19未満、重量平均分子量300〜45,000、数平均分子量300〜18,000、分子量分布1〜5を有するC30〜C1300炭化水素である。特に好ましいHVI−PAOは、100℃粘度5〜5000cStを有する流体である。他の実施形態においては、HVI−PAOオリゴマーの粘度(100℃)は、3センチストークス(「cSt」)〜15,000cStの範囲である。更に、粘度(100℃)3cSt〜5000cStを有する流体は、VI(ASTM法D2270によって計算される)130超を有する。通常は、それらは、130〜150の範囲である。流体は全て、低流動点(−15℃未満)を有する。
【0028】
HVI−PAOは、更に、ポリマーまたはオリゴマーを含む炭化水素組成物として特徴付けられる。これは、C〜C201−アルケンからなる群から得られる1−アルケン(それ自体または混合物のいずれかの形態)から製造される。原料の例は、1−へキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン等、若しくはC〜C141−アルケンの混合物またはC〜C201−アルケンの混合物、CおよびC121−アルケン、CおよびC141−アルケン、CおよびC161−アルケン、CおよびC181−アルケン、CおよびC101−アルケン、CおよびC121−アルケン、C、C10、およびC121−アルケン、および他の適切な組み合わせであることができる。
【0029】
潤滑油生成物は、それらが重合反応から調製されるか、または出発物質から持ち越される場合には、通常、蒸留されて、いかなる低分子量組成物も除去される。600゜F未満で沸騰するもの、または炭素数C20未満を有するものなどである。この蒸留工程は、通常、仕上げ流体の揮発性を向上する。ある特定の適用では、または低沸点留分が反応混合物中に全く存在しない場合には、この蒸留は必要でない。従って、いかなる溶剤または出発物質も除去された後の全反応生成物は、潤滑油基材として、または更なる処理のために用いられることができる。
【0030】
重合またはオリゴマー化プロセスから直接製造される潤滑油流体は、通常、不飽和二重結合を有するか、またはオレフィン質分子構造を有する。二重結合、若しくは不飽和またはオレフィン質成分の量は、数種の方法によって測定されることができる。臭素価(ASTM1159)、臭素指数(ASTM D2710)、または他の適切な分析方法(NMR、IR等など)などである。二重結合の量、またはオレフィン質組成物の量は、数種の要因−重合程度、重合プロセス中に存在する水素の量、および重合プロセスの停止工程に関わる他の促進剤またはプロセスに存在する他の薬剤の量−による。通常、二重結合の量、またはオレフィン質成分の量は、重合程度が高くなるにつれて、重合プロセスに存在する水素ガス量が高くなるにつれて、または停止工程に関わる促進剤の量が高くなるにつれて低減される。
【0031】
通常、流体の酸化安定性、および光またはUV安定性は、不飽和二重結合の量またはオレフィン質含有量が低減された場合に向上することが知られていた。従って、ポリマーを、それらが高度の不飽和を有する場合には、更に水素化することが必要である。通常、臭素価5未満(ASTM D1159によって測定される)を有する流体が、高品質の基材適用のために適切である。当然ながら、臭素価がより低い程、潤滑油品質はより良好である。臭素価3または2未満を有する流体が、一般的である。最も好ましい範囲は、1未満、または0.1未満である。水素化して不飽和度が低減されるための方法は、文献(特許文献2、実施例16)に周知である。いくつかのHVI−PAO生成物においては、重合から直接製造される流体は、既に、非常に低い不飽和度を有する。粘度(100℃)150cS超を有するものなどである。それらは、臭素価5未満、または2未満をさえ有する。これらの場合には、水素化なしにそのままで用いるように選択されることができるか、または基材の特性を更に向上するように水素処理を選択されることができる。
【0032】
高パラフィン質/ナフテン質および飽和質90重量%超を有する基材は、しばしば、ある実施形態では、好都合に用いられることができる。これらの基材には、グループIIおよび/またはグループIII水素処理または水素化分解基材、若しくはポリアルファオレフィン油、GTLまたは類似基油などのそれらの合成対応物、若しくは類似基油の混合物が含まれる。この適用の目的には、合成基材には、グループII、グループIII、グループIV、およびグループV基材が含まれるであろう。
【0033】
より特定的な実施例の実施形態は、高粘度指数PAO、または例えばスペクトラシンウルトラ(SPECTRA SYN ULTRA)(商標)(150cSt、Kv100℃)、および低粘度ポリアルファオレフィン(「PAO」)の組み合わせである。これには、粘度6cSt未満(Kv100℃)を有するPAOが含まれる。より好ましくは粘度2〜4(2cSt〜4cSt、Kv100℃)を有し、更により好ましくは少量のエステルまたはアルキル化芳香族を有する。エステルまたはアルキル化芳香族を含むエステルは、更なる基材として、または添加剤の溶解性のための、第一および第二の基材のいずれかとの共基材として用いられることができる。高粘度指数PAOまたはスペクトラシンウルトラ 150は、高粘度の合成潤滑油であり、エクソンモービル(バージニア州フェアファックス(Fairfax、Virginia))によって販売される商業的に入手可能な潤滑油であり、一方エステルおよびPAOは、商業的に入手可能な汎用潤滑油である。好ましいエステルは、アルキルアジペートである。
【0034】
ガスツーリキッド基材はまた、好ましくは、仕上げ潤滑油を配合するのに用いられる基材の一部またはその全てとして、本発明の成分と共に用いられることができる。本発明の成分が、主にグループII、グループIII、および/またはGTL基材を含む潤滑系に添加される場合には、より少量の別の流体と比べて、好ましい向上が発見された。
【0035】
GTL物質は、一種以上の合成、結合、転化、再配位、および/または分解/解体プロセスを経て、ガス状炭素含有化合物、水素含有化合物、および/または原料材としての成分(水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、プロピン、ブタン、ブチレン、およびブチンなど)から誘導される物質である。GTL基材および基油は、一般に炭化水素(例えば、ワックス質合成炭化水素)から誘導される潤滑粘度のGTL物質である。これは、それ自体、より単純なガス状の炭素含有化合物、水素含有化合物、および/または原料材としての成分から誘導される。GTL基材には、潤滑油沸点範囲で沸騰する油が含まれる。これは、例えば蒸留または熱拡散によるなどで、GTL物質から分離/分留され、引続いて周知の接触または溶剤脱ロウプロセスに付されて、低減された/低流動点の潤滑油が製造される。即ち、ワックス異性化油(例えば、水素異性化または異性化脱ロウ合成炭化水素を含む);水素異性化または異性化脱ロウフィッシャー−トロプシュ(「F−T」)物質(即ち、炭化水素、ワックス質炭化水素、ワックス、および可能な類似含酸素化合物);好ましくは水素異性化または異性化脱ロウF−T炭化水素若しくは水素異性化または異性化脱ロウF−Tワックス、水素異性化または異性化脱ロウ合成ワックス、若しくはそれらの混合物である。
【0036】
GTL物質から誘導されるGTL基材、特に水素異性化/異性化脱ロウF−T物質誘導基材、および他の水素異性化/異性化脱ロウワックス誘導基材は、典型的には、動粘度(100℃)約2mm/秒〜約50mm/秒、好ましくは約3mm/秒〜約50mm/秒、より好ましくは3.5mm/秒〜約30mm/秒を有するものとして特徴付けられる。これは、F−Tワックスを異性化脱ロウすることによって誘導されるGTL基材により例示される。これは、動粘度(100℃)約4mm/秒、および粘度指数約130以上を有する。本明細書および特許請求の範囲で用いられる用語「GTL基油/基材」、および/または「ワックス異性化油基油/基材」は、製造プロセスで回収されるGTL基材/基油またはワックス異性化油基材/基油の各留分、二種以上のGTL基材/基油留分および/またはワックス異性化油基材/基油留分の混合物、同様に一種または二種以上の低粘度GTL基材/基油留分および/またはワックス異性化油基材/基油留分と、一種または二種以上の高粘度GTL基材/基油留分および/またはワックス異性化油基材/基油留分との混合物を包含して、二峰性混合物が製造され、その際混合物は、前記される範囲内の粘度を示すものとして解されるべきである。本明細書における動粘度の引用は、ASTM法D445によってなされる測定値をいう。
【0037】
GTL物質から誘導されるGTL基材および基油、特に水素異性化/異性化脱ロウF−T物質誘導基材、および他の水素異性化/異性化脱ロウワックス誘導基材(ワックス水素異性化油/異性化脱ロウ油など)は、本発明の基材成分として用いられることができるが、これは更に、典型的には、流動点約−5℃以下、好ましくは約−10℃以下、より好ましくは約−15℃以下、更により好ましくは約−20℃以下を有するものとして特徴付けられる。これは、いくつかの条件下では、約−25℃以下の好都合な流動点を有してもよく、有用な流動点は、約−30℃〜約−40℃以下である。所望により、異なる脱ロウ工程が行われて、所望の流動点が達成されてもよい。本明細書における流動点の引用は、ASTM D97および類似の自動型によってなされる測定値をいう。
【0038】
GTL物質から誘導されるGTL基材、特に水素異性化/異性化脱ロウF−T物質誘導基材および他の水素異性化/異性化脱ロウワックス誘導基材は、本発明で用いられることができる基材成分であるが、これはまた、典型的には、粘度指数80以上、好ましくは100以上、より好ましくは120以上を有するものとして特徴付けられる。加えて、ある特定の場合には、これらの基材の粘度指数は、好ましくは130以上、より好ましくは135以上、更により好ましくは140以上であってもよい。例えば、GTL物質、好ましくはF−T物質(特にF−Tワックス)から誘導するGTL基材は、一般に、粘度指数130以上を有する。本明細書における粘度指数の引用は、ASTM法D2270をいう。
【0039】
加えて、GTL基材は、典型的には、高度にパラフィン質(飽和分90%超)であり、モノシクロパラフィンおよびマルチシクロパラフィンの混合物を、非環式イソパラフィンとの組み合わせで含んでもよい。これらの組み合わせにおけるナフテン(即ち、シクロパラフィン)含有量の比率は、用いられる触媒および温度で異なる。更に、GTL基材および基油は、典型的には、非常に低い硫黄および窒素含有量を有する。これは、一般に、これらの元素のそれぞれについて、約10ppm未満、より典型的には約5ppm未満を含む。F−T物質(特にF−Tワックス)を水素異性化/異性化脱ロウすることによって得られるGTL基材および基油の硫黄および窒素含有量は、本質的にゼロである。
【0040】
好ましい実施形態においては、GTL基材は、主に非環式イソパラフィン、およびほんの少量のシクロパラフィンからなるパラフィン質物質を含む。これらのGTL基材は、典型的には、非環式イソパラフィン60重量%超、好ましくは非環式イソパラフィン80重量%超、より好ましくは非環式イソパラフィン85重量%超、最も好ましくは非環式イソパラフィン90重量%超からなるパラフィン質物質を含む。
【0041】
GTL基材、水素異性化または異性化脱ロウF−T物質誘導基材、およびワックス誘導水素異性化/異性化脱ロウ基材(ワックス異性化油/異性化脱ロウ油など)の有用な組成物は、例えば、特許文献16、特許文献17および特許文献18に列挙される。
【0042】
この独特の基材組み合わせが、特定の添加剤系と結合される場合には、更に強化されたマイクロピッチング防止性を付与することができることが発見された。添加剤には、種々の商業的に入手可能なギヤ油パッケージが含まれる。これらの添加剤パッケージには、耐磨耗剤、酸化防止剤、消泡剤、抗乳化剤、清浄剤、分散剤、金属不活性化剤、および防錆剤の化学的性質を包含する高性能な一連の成分が含まれて、所望の性能がもたらされる。
【0043】
添加剤は、潤滑油の種々の特性を修正するように選択されてもよい。風力タービンにつては、添加剤は、次の特性、即ち耐磨耗防止性、錆防止性、マイクロピッチング防止性、摩擦低減性、および向上ろ過性を提供するべきである。当業者には、好ましい特性(風力タービンギヤに好ましい特性を含む)を達成するように選択されることができる種々の添加剤が、認識されるであろう。
【0044】
最終潤滑油は、粘度100cSt超(Kv100℃)を有する第一の潤滑油基材を含むべきである。第一の潤滑油基材は、最終潤滑油の少なくとも40%および80%以下を含むべきである。粘度10cSt未満を有する第二の基材は、最終基材全体の少なくとも20%および60%以下を構成するべきである。エステルおよび/または添加剤の量は、第一および第二の基材の許容可能な範囲で比例的に低減して、最終潤滑油全体の90%以下であることができる。エステルおよび添加剤の好ましい範囲は、10〜90%である。
【0045】
より好ましい潤滑油は、粘度150cSt超(Kv100℃)を有する第一の基材を含み、第一の基材は、最終生成物の少なくとも10%および最終潤滑油の60%以下を表す。第二の基材は、粘度2〜10cSt(Kv100℃)を有するPAOであり、最終生成物の少なくとも5%および最終生成物の30%以下を表す。任意の更なる基材には、粘度少なくとも6cSt、しかし100cSt以下(Kv100℃)を有する基材が含まれる。これは、最終潤滑油生成物の0〜65%未満を表す。エステル添加剤パッケージは、最終潤滑油生成物の5%〜25%の範囲であってもよい。
【0046】
好ましい無灰酸化防止剤は、ヒンダードフェノールおよびアリールアミンである。典型的な例は、ブチル化/オクチル化/スチレン化/ノニル化/ドデシル化ジフェニルアミン、4,4’メチレンビス−(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、オクチル化フェニル−アルファ−ナフチルアミン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニルプロピオン酸のアルキルエステル、および多くの他のものである。硫黄含有酸化防止剤(硫黄結合ヒンダードフェノールおよびチオールエステルなど)がまた、用いられることができる。
【0047】
適切な分散剤には、ホウ素化および非ホウ素化スクシンイミド、コハク酸−エステルおよびアミド、アルキルフェノール−ポリアミン結合マンニッヒ付加物、他の関連成分、並びにそれらのいかなる組み合わせもが含まれる。いくつかの実施形態においては、しばしば、これらの上記される分散剤および他の関連分散剤の混合物を用いることが好都合であることができる。例には、ホウ素化された添加剤、主としてより高分子量を有するもの、主としてモノ−スクシンイミド、ビス−スクシンイミド、または上記の混合物からなるもの、異なるアミンで製造されるもの、エンドキャップされたもの、主鎖が、ポリイソブチレンなどの分枝オレフィンの重合から、またはポリイソブチレン以外(エチレン、プロピレン、ブテンなど)の他のポリオレフィンなどのポリマーからから誘導される分散剤、類似の分散剤、およびそれらのいかなる組み合わせもが含まれる。殆どの分散剤(ポリイソブチレンを含む)の炭化水素主鎖の平均分子量は、1000〜6000、好ましくは1500〜3000の範囲にあり、最も好ましくは約2200である。
【0048】
適切な清浄剤には、限定されることなく、カルシウムフィネート、カルシウムスルホネート、カルシウムサリチレート、マグネシウムフィネート、マグネシウムスルホネート、マグネシウムサリチレート、金属カルボネート、関連成分(ホウ素化清浄剤を含む)、およびそれらのいかなる組み合わせもが含まれる。清浄剤は、中性であるか、緩やかな過塩基であるか、または高度に過塩基であることができる。清浄剤の量は、通常、配合潤滑油組成物に対して、全塩基価(TBN)1〜9に寄与する。金属清浄剤は、アルカリまたはアルカリ土類カルシウムまたはマグネシウムフィネート、スルホネート、サリチレート、カルボネート、および類似の成分から選択されている。
【0049】
酸化防止剤は、ヒンダードフェノール、アリールアミン、ジヒドロキノリン、ホスフェート、チオール/チオールエステル/ジスルフィド/トリスルフィド、低硫黄過酸化物分解剤、および他の関連成分から選択されている。これらの添加剤は、それらが金属表面へ強固な化学被膜を形成することから、硫黄、リン、および/または灰分含有量に富む。従って、硫黄、灰分およびリンが低減される潤滑油においては、限定量で用いられることが必要である。
【0050】
防止剤および防錆剤は、必要に応じて用いられてもよい。シール膨潤抑制成分および消泡剤は、本発明の混合物と共に用いられてもよい。種々の摩擦調整剤もまた、用いられてもよい。例には、限定されることなく、アミン、アルコール、エステル、ジオール、トリオール、多価アルコール、脂肪酸アミド、種々のモリブデンホスホロジチオエート(MoDTP)、モリブデンジチオカルバメート(MoDTC)、硫黄/リンを含まない有機モリブデン成分、モリブデン三核成分、およびそれらのいかなる組み合わせもが含まれる。
【0051】
適切な摩擦調整剤には、ホスホネートエステル、ホスファイトエステル、脂肪族スクシンイミド、モリブデン化合物、および酸アミドが含まれる。モリブデンカルボキシレートおよび硫化イソブチレン極圧剤を含む潤滑油組成物(特許文献19)は、ギヤにおけるマイクロピッチングを低減することができる。
【実施例】
【0052】
強化されたマイクロピッチング防止性も示す数種の新規配合物が発見された。これらの配合物を、次の表3に、実施例1〜6として示す。商業的に入手可能なギヤ油パッケージを、参照のために、実施例7として示す。表1の全ての潤滑油配合物を、国際標準化機構(「ISO」)の粘度グレード320に対して混合した。粘度グレード320は、殆どの風力タービン製造業者からの主要な推奨基準である。
【0053】
【表3】

【0054】
表4に、表3からの七種の実施例について、マイクロピッチング防止性を示す。表3に示されるように、実施例1および2には、それぞれ、実施例1ではギヤ油パッケージ1からの、または実施例2ではギヤ油パッケージ2からの添加剤組み合わせ物が含まれる。実施例1および2はいずれも、アジペートエステルを、高粘度指数PAO 150cStおよびPAO 2からなる幅広の「二峰性」炭化水素混合物に溶解して有する。表2は、これらの「二峰性」混合物および添加剤が、顕著なマイクロピッチング結果をもたらすことを例示する。実施例3および4は、実施例3ではギヤ油パッケージ1からの、または実施例4ではギヤ油パッケージ3からの添加剤組み合わせ物を例示する。両実施例は、アジペートエステルを、高粘度指数PAO 150cStおよびPAO 4からなる幅広の「二峰性」炭化水素混合物に溶解して有する。表3は、これらの「二峰性」混合物および添加剤による顕著なマイクロピッチングの結果を示す。加えて、表1からの実施例5および6は、高、中および低粘度の基材を有する三成分潤滑油基材である。これらの基材は、実施例5ではギヤ油パッケージ1からの、および実施例6ではギヤ油パッケージ2からの添加剤組み合わせ物を、アジペートエステル(高粘度指数PAO 150cStおよびPAO 4を、PAO 100と組合わせてなる幅広の「二峰性」炭化水素混合物に溶解される)と混合した。この三成分基材潤滑油はまた、表3に示されるように、顕著なマイクロピッチングの利点を示す。
【0055】
【表4】

【0056】
上記の実施例に加えて、次の基材組み合わせは、強化されたマイクロピッチング防止性を示す。即ち、高粘度指数PAO 150cStおよびガスツーリキッド(「GTL」)基材またはワックス誘導潤滑油、高粘度指数PAO 150cSt+グループIII基材、高粘度指数PAO 150cSt+グループII基材、150cSt+PAO 100(ポリイソブチレン(「PIB」)を含むか、または含まない)+GTL基材、高粘度指数PAO 150cSt+PAO 100(PIBを含むか、または含まない)+グループIII基材、高粘度指数PAO 150cSt+PAO 100(PIBを含むか、または含まない)+グループIII基材、高粘度指数PAO 150cSt+ブライトストック(PIBを含むか、または含まない)+GTL基材、高粘度指数PAO 150cSt+ブライトストック(PIBを含むか、または含まない)+グループIII基材、高粘度指数PAO 150cSt+ブライトストック(PIBを含むか、または含まない)+グループII基材である。加えて、本明細書の開示に基づく、広範囲に異なる粘度の他の基材(「二峰性」混合結果を示す)もまた、本明細書の開示の利益を予想されて、作動するギヤボックスに対して強化されたマイクロピッチング防止性がもたらされることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】混合基材の粘度差に対する歯車のプロフィル偏差を示すグラフである。
【図2】混合基材からの潤滑油の最終粘度に対する歯車のプロフィル偏差を示すグラフである。
【図3】混合基材からの潤滑油の最終粘度指数に対する歯車のプロフィル偏差を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一および第二の少なくとも二種の基材を含む潤滑油であって、
前記第一および第二の基材の間の粘度差は96cSt超(Kv100℃)であり、
FVA54マイクロピッチング試験の不合格負荷8超を示す
ことを特徴とする潤滑油。
【請求項2】
前記基材のうち少なくとも一種は、粘度10cSt未満、2cSt超(Kv100℃)を有する合成ポリアルファオレフィンであり、
前記第二の基材は、粘度100cSt超、300cSt未満(Kv100℃)を有する合成油である
ことを特徴とする請求項1に記載の潤滑油。
【請求項3】
前記高粘度基材は、高粘度指数PAO(150cSt、Kv100℃)、粘度100cSt超(Kv100℃)を有する合成潤滑油、粘度100cSt超(Kv100℃)を有するPAOおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油。
【請求項4】
前記第二の低粘度基材は、GTL潤滑油、ワックス誘導潤滑油、ポリアルファオレフィン、ブライトストック、PIBを有するブライトストック、グループII基材、グループIII基材およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油。
【請求項5】
少なくとも一種の添加剤を更に含み、前記添加剤は、耐磨耗剤、酸化防止剤、消泡剤、抗乳化剤、清浄剤、分散剤、金属不活性化剤、摩擦低減剤、防錆剤およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油。
【請求項6】
第三の基材を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の潤滑油。
【請求項7】
前記第三の基材は、粘度6cSt(Kv100℃)以上、100cSt以下(Kv100℃)を有するPAO、エステル基材、アルキル化芳香族およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の潤滑油。
【請求項8】
前記第一の基材は、粘度100cSt超(Kv100℃)を有し、
前記第二の基材は、粘度6cSt未満を有し、
前記第三の基材は、粘度6cSt以上、100cSt以下(Kv100℃)を有する
ことを特徴とする請求項6に記載の潤滑油。
【請求項9】
第三および第四の基材を更に含み、
前記第三の基材は、粘度6cSt以上、100cSt未満(Kv100℃)を有するPAOを含み、
前記第四の基材は、アルキル化芳香族基材を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の潤滑油。
【請求項10】
油によるギヤ保護のための好ましい潤滑油特性を得るように選択される添加剤を更に含むことを特徴とする請求項9に記載の潤滑油。
【請求項11】
FVA54マイクロピッチング試験の不合格負荷段階10超を示すことを特徴とする請求項1に記載の潤滑油。
【請求項12】
粘度38cSt超(Kv100℃)および粘度指数161超を有することを特徴とする請求項1に記載の潤滑油。
【請求項13】
a)少なくとも二種の基材、即ち
b)粘度100cSt超(Kv100℃)を有する合成油を含む第一の基材10%以上、60%以下、および
c)粘度6cSt未満(Kv100℃)を有する油を含む第二の基材5%以上、30%以下
を含む潤滑油であって、
d)前記第一および第二の基材の粘度差は、少なくとも96cSt(Kv100℃)であり、
FVA54マイクロピッチング試験の不合格負荷段階8超を示し、
e)粘度39cSt超(Kv100℃)および粘度指数少なくとも161を有する
ことを特徴とする潤滑油。
【請求項14】
前記第一の基材は、粘度300cSt未満(Kv100℃)であることを特徴とする請求項13に記載の潤滑油。
【請求項15】
前記第一の基材は、粘度125cSt(Kv100℃)以上、300cSt未満(Kv100℃)であることを特徴とする請求項13に記載の潤滑油。
【請求項16】
前記第二の基材は、粘度2cSt超(Kv100℃)を有することを特徴とする請求項13に記載の潤滑油。
【請求項17】
アルキル化芳香族および添加剤パッケージを更に含むことを特徴とする請求項13に記載の潤滑油。
【請求項18】
前記高粘度基材は、高粘度指数PAO(150cSt、Kv100℃)、粘度100cSt超(Kv100℃)を有する合成潤滑油、粘度100cSt超(Kv100℃)を有するPAOおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項13に記載の潤滑油。
【請求項19】
前記第二の低粘度基材は、GTL潤滑油、ワックス誘導潤滑油、ポリアルファオレフィン、ブライトストック、PIBを有するブライトストック、グループII基材、グループIII基材およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項13に記載の潤滑油。
【請求項20】
添加剤を更に含み、前記添加剤は、耐磨耗剤、酸化防止剤、消泡剤、抗乳化剤、清浄剤、分散剤、金属不活性化剤、摩擦低減剤、防錆剤およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項13に記載の潤滑油。
【請求項21】
油によるギヤ保護のための好ましい潤滑油特性を得るように選択される添加剤を更に含むことを特徴とする請求項13に記載の潤滑油。
【請求項22】
粘度38cSt超(Kv100℃)および粘度指数165超を有することを特徴とする請求項13に記載の潤滑油。
【請求項23】
FVA54マイクロピッチング試験の不合格負荷段階10超を示すことを特徴とする請求項13に記載の潤滑油。
【請求項24】
a)第一の合成基材潤滑油、即ち粘度100cSt超(Kv100℃)を有する第一の基材を得る工程;
b)第二の合成基材潤滑油、即ち粘度10cSt未満(Kv100℃)を有する第二の基材潤滑油を得る工程;および
c)第一および第二の基材潤滑油を混合して、潤滑油を製造する工程であって、前記潤滑油は、FVA54マイクロピッチング試験の不合格負荷段階8超を示す工程
を含むことを特徴とする潤滑油の混合方法。
【請求項25】
第三の基材を得る工程であって、前記第三の基材は粘度6cSt超(Kv100℃)および100cSt未満(Kv100℃)を有する工程;および
前記第三の基材潤滑油を、前記第一および第二の基材潤滑油と混合して、潤滑油を生じる工程
を更に含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
第四の基材を得る工程であって、前記第四の基材はアルキル化芳香族基材を含む工程;および
前記第四の基材を前記第一、第二および第三の基材と混合して、潤滑油を製造する工程
を更に含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項27】
添加剤を前記潤滑油へ添加して、前記潤滑油の好ましいギヤ油特性を達成する工程を更に含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記高粘度基材は、高粘度指数PAO 150(150cSt、Kv100℃)、粘度100cSt超(Kv100℃)を有する合成潤滑油、粘度100cSt超(Kv100℃)を有するPAOおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記第二の低粘度基材は、GTL潤滑油、ワックス誘導潤滑油、ポリアルファオレフィン、ブライトストック、PIBを有するブライトストック、グループII基材、グループIII基材、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項30】
添加剤を更に含み、前記添加剤は、耐磨耗剤、酸化防止剤、消泡剤、抗乳化剤、清浄剤、分散剤、金属不活性化剤、摩擦低減剤、防錆剤およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記潤滑油は、粘度38cSt超(Kv100℃)および粘度指数161超を有することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記潤滑油は、FVA54マイクロピッチング試験の不合格負荷段階10超を示すことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項33】
a)少なくとも二種の基材、即ち粘度100cSt超(Kv100℃)を有する合成油を含む第一の基材10%以上、60%以下、および粘度10cSt未満(Kv100℃)を有する油を含む第二の基材5%以上、30%以下を含む潤滑油を得る工程であって、前記潤滑油は、FVA54マイクロピッチング試験の不合格負荷段階8超を示す工程;および
b)少なくとも一種のギヤを、前記潤滑油で潤滑する工程
を含むことを特徴とする好ましいマイクロピッチング防止性の達成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−542524(P2008−542524A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515867(P2008−515867)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/022109
【国際公開番号】WO2006/133293
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】