説明

マイクロプレート用吸収体

【課題】 簡便かつ迅速に、マイクロプレート下面に付着した水滴を取り除くことが可能なマイクロプレート用吸収体の提供を目的とする。
【解決手段】 本発明のマイクロプレート用吸収体1は、表面1aに、マイクロプレート2の複数のウェル3,3,3‥に同時に嵌合する凹部4,4,4‥が設けられ、ウェル3に嵌合されて、ウェル3に付着した水滴を吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、薬剤感受性試験に使用されるマイクロプレートに付着した水滴を、簡便かつ迅速に取り除くことができる吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
感染症の治療に抗生剤を用いる場合、適切な抗生剤の選択をするため、薬剤感受性試験が不可欠である。また、抗生剤の投与量を菌に対して有効かつ最少に調節することが好ましく、薬剤感受性試験に際し、最小発育阻止濃度(MIC)が決定される。
【0003】
薬剤感受性試験としては、通常、微量液体希釈法が採用され、具体的には、以下のような手順により行われる。(1)菌を培地で培養する。(2)培養により形成されたコロニーから釣菌し、液体培地や生理食塩水中で培養して試験に必要な菌量を確保し、菌液を作成する。(3)複数のウェルが形成されたマイクロプレートを用いて、所定の濃度を有する抗生剤について抗生剤希釈系列を作成する。(4)抗生剤希釈系列に菌液を接種して培養する。(5)抗生剤希釈系列の沈殿物及び濁度変化を判定して薬剤感受性の有無を判断し、最小発育阻止濃度を決定する。
【0004】
上記(4)の培養後、上記(5)の沈殿物及び濁度変化の判定を画像判定にて行う場合、ウェル内壁に存在する菌についても観察するため、通常、培養器から取り出したマイクロプレートを下方から撮った写真が用いられる。ところが、培養後、画像判定を行うまでの間に結露が起こり、マイクロプレートの下面に付着した水滴が、画像判定において菌として判断されてしまうという問題があった。従って、より正確に薬剤感受性の評価を行うためには、この水滴をできる限り取り除く必要があった。
【0005】
しかしながら、マイクロプレートは、通常、図1に示すように、透明の樹脂等でプレート状とされ、該プレート上面に開口部を有し、下方に膨出した井戸状のウェルが一定の間隔で、複数個(例えば、96(8×12)個)密接して形成されている。従って、マイクロプレートの下面は、多数の膨出部が密接した形状とされているため、特に、膨出部と膨出部の間、すなわち、各ウェルの外壁に付着した水滴に対しては、紙、布等で拭き取る方法では、完全に取り除くことが困難であった。
【0006】
そこで、先端部に吸収体を備えた綿棒を用いて、各ウェルの外壁に付着した水滴を除くことが行われているが、綿棒を用いる方法では、水滴を完全に除くのに多大な手間と時間を要してしまうという問題があった。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開平10−24065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、簡便かつ迅速に、マイクロプレート下面に付着した水滴を取り除くことが可能なマイクロプレート用吸収体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、表面に、マイクロプレートの複数のウェルに同時に嵌合する凹部が設けられ、前記ウェルに嵌合されて、前記ウェルに付着した水滴を吸収するマイクロプレート用吸収体に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマイクロプレート用吸収体によれば、簡便かつ迅速に、マイクロプレートの底面に付着した水滴を取り除くことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のマイクロプレート用吸収体は、表面に、マイクロプレートの複数のウェルに同時に嵌合する凹部が設けられ、ウェルに嵌合されて、ウェルに付着した水滴を吸収するものである。
【0011】
以下、本発明のマイクロプレート用吸収体について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るマイクロプレート用吸収体1及びマイクロプレート2を示す外観斜視図であり、図2は、マイクロプレート用吸収体1の使用状態を示す断面図である。マイクロプレート2は、プレート本体2aと、プレート本体2aの上面に開口部を有し、下方に膨出する複数のウェル3,3,3‥と、プレート本体2aの外縁から下方に延出して形成される周壁2bとを備える。図示を省略しているが、本実施形態においては、8行12列で合計96個のウェル3が一定間隔で配列形成されており、このウェル3は、所定深さを有する井戸形状を呈するものである。マイクロプレート用吸収体1は、マイクロプレート2の周壁2b内に収容可能な形状とされ、その表面1aには、96個のウェル3,3,3‥に下方から同時に嵌合する凹部4,4,4‥が設けられている。
【0012】
本発明のマイクロプレート用吸収体を構成する材料としては、水等の液状物吸収能を有するものであれば特に限定されず、例えば、ポリウレタン多孔質体、ポリビニルアルコールスポンジ、セルローススポンジ等が挙げられる。
【0013】
以下、マイクロプレート用吸収体が、ポリオール、鎖長剤、親水性鎖長剤及びイソシアネートを重合して得られた末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー水分散体とポリアミン化合物とを架橋反応させて得られたゲル化物から、水分を除去して得られるポリウレタン多孔質体であり、親水性鎖長剤が、ウレタンプレポリマーを構成する全ての反応成分中、0.1〜4重量%含有されてなるポリウレタン多孔質体からなる場合について説明する。
【0014】
ポリオールとしては、通常のポリウレタンの製造に使用され、分子中にヒドロキシル基を2個以上有するものであれば特に限定されず、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリル系ポリオール、ヒマシ油系ポリオール、シリコーン系ポリオール等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、得られるポリウレタン多孔質体の劣化を抑制する観点から、ポリカーボネートポリオールが好ましく用いられる。なお、前記でいう劣化には、光による劣化、水による劣化等が含まれる。
【0015】
ポリエーテルポリオールとしては、アルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等)及び/又は複素環式エーテル(テトラヒドロフラン等)を重合又は共重合して得られるもの、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン−ポリプロピレン(ブロック又はランダム)グリコール、ポリエチレン−テトラメチレングリコール(ブロック又はランダム)、ポリテトラメチレングリコール、ポリ-2-メチルテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等が挙げられる。
【0016】
ポリエステルポリオールとしては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、グルタル酸、アゼライン酸等)及び/又は芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、テレフタル酸等)と低分子グリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサン等)とを縮重合させたもの、具体的にはポリエチレングリコールアジペート、ポリブタンジオールアジペート、ポリヘキサンジオールアジペート、ポリ-3-メチルペンタンジオールアジペート、ポリネオペンチルグリコールアジペート、ポリエチレン/ブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペートジオール、ポリブチレンイソフタレートジオール等が挙げられる。
【0017】
ポリカーボネートポリオールとしては、ポリブタンジオールカーボネート、ポリ-3-メチルペンタンジオールカーボネート、ポリヘキサンジオールカーボネート、ポリノナンジオールカーボネート、ポリブタンジオールヘキサンジオールカーボネート等が挙げられる。
【0018】
ポリラクトンポリオールとしては、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール、ポリ-3-メチルバレロラクトンジオール等が挙げられる。
【0019】
ポリオレフィンポリオールとしては、ポリブタジエングリコール、ポリイソプレングリコールまたはその水素化物等が挙げられる。
【0020】
シリコーン系ポリオールとは、ポリシロキサン主鎖に水酸基を導入したものである。また、導入した水酸基は、ポリシロキサン主鎖の両末端、または片末端にあればよい。
【0021】
また、前記ポリオールの数平均分子量としては、得られるポリウレタン多孔質体に微細な連続気孔を形成させる観点から、好ましくは500〜5000、より好ましくは500〜4000、特に好ましくは500〜3000である。
【0022】
鎖長剤としては、通常のポリウレタンの製造に使用され、分子中にヒドロキシル基を2個以上有する化合物であれば特に限定されず、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチルペンタンジオール、ノナンジオール、オクタンジオール、ジメチロールヘプタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
鎖長剤の配合量は、良好な製品特性を有するポリウレタン多孔質体を得る観点から、上記ポリオール100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜7重量部、特に好ましくは1〜5重量部である。
【0024】
さらに、親水性鎖長剤としては、分子内にアニオン性親水基(カルボキシル基又はスルホン基)を1個以上有するポリヒドロキシ化合物等のアニオン性鎖長剤、エチレンオキサイド化合物等のノニオン性鎖長剤、N-メチルジエタノールアミン等のカチオン性鎖長剤が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。こられの中でも、アニオン性鎖長剤が好ましく用いられ、具体的には、2,2-ジメチロール乳酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸、1,4-ブタンジオール-2-スルホン酸等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
親水性鎖長剤の配合量は、用いるポリオール及び後述するイソシアネートの種類にもよるが、得られるウレタンプレポリマーの水分散性及び後述するゲル化特性を向上させる観点並びに微細な連続気孔を有するポリウレタン多孔質体を得る観点から、ウレタンプレポリマーを構成する全ての反応成分中、好ましくは0.1〜4重量%、より好ましくは1〜4重量%、特に好ましくは1〜3重量%である。すなわち、親水性鎖長剤の配合量が0.1重量%を下回ると、得られるウレタンプレポリマーの水分散性が極端に低下するおそれがある。他方、親水性鎖長剤の配合量が4重量%を上回ると、得られるウレタンプレポリマー水分散体のゲル化特性が損なわれるおそれがある。
【0026】
イソシアネートとしては、通常のポリウレタンの製造に使用され、末端にイソシアネート基を2つ以上有するものであれば特に限定されず、例えば、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、4, 4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4, 4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2, 2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2, 4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート及びその水素添加物;1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
イソシアネートの配合量としては、得られるウレタンプレポリマーの末端がイソシアネート基を有する限り特に限定されず、前記ポリオール、鎖長剤及び親水性鎖長剤がそれぞれ有する活性水素基と定量的に反応するよう配合すればよい。
【0028】
ウレタンプレポリマーは、公知の方法で製造することができ、特に限定されないが、例えば、分子内に活性水素基を含まない有機溶剤の存在下、又は非存在下で、ポリオールと鎖長剤と親水性鎖長剤とイソシアネートとを、ワンショット法または多段法により、好ましくは20℃〜150℃、より好ましくは60〜120℃で、2〜10時間、反応させる方法等が挙げられる。ここで、各成分の添加順序は特に限定されない。また、反応終点は、粘度でモニターするのが好ましい。
【0029】
上記有機溶剤は、ウレタンプレポリマー製造時の粘度を下げる観点から用いられ、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、N-メチルピロリドン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N’-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0030】
ウレタンプレポリマー水分散体は、上記ウレタンプレポリマーを水中に分散させたものであり、水に対するウレタンプレポリマーの配合割合は、得られるポリウレタン多孔質体の見かけ密度を制御する観点から、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは15〜40重量%である。
【0031】
ウレタンプレポリマー水分散体の製造方法としては、特に限定はなく、例えば、ウレタンプレポリマーと水とを、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ホモジナイザー等の分散装置を用いて、混合、分散する方法等が挙げられる。
【0032】
ここで、親水性鎖長剤としてアニオン性鎖長剤を用いる場合、ウレタンプレポリマーの水分散性を向上させる観点から、あらかじめウレタンプレポリマーを構成する親水性鎖長剤のアニオン性親水基を中和させておいてもよい。かかる中和剤としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン等の低級アルキルアミン;アンモニア等の無機中和剤が挙げられる。これらの中でも、後述する水分除去工程により取り除きやすいという観点から、水より低い沸点を有するトリメチルアミン、トリエチルアミンが好ましく用いられる。
【0033】
中和剤の配合量としては、特に限定されないが、通常は、親水性鎖長剤のアニオン性親水基とほぼ同等量配合することが好ましい。
【0034】
さらに、ウレタンプレポリマーの水分散性を向上させる観点から、界面活性剤を適宜用いてもよい。使用しうる界面活性剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド付加物(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等)、高級アルコールプロピレンオキサイド付加物、高級アルコール(エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド)付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等)、アリールフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、長鎖アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル(ソルビタンエステル)、ソルビタンエステルエチレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等のノニオン界面活性剤;アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジアルキルエステル塩等のアニオン界面活性剤;第四級アルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。こられの中でも、ウレタンプレポリマーの水分散性を向上させる観点及び後述する水洗工程を効率良く行う観点から、HLB値が6〜20のノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0035】
界面活性剤の配合量は、ウレタンプレポリマーに対し、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%、特に好ましくは2〜5重量%である。
【0036】
界面活性剤を配合する場合における、ウレタンプレポリマー水分散体の製造方法としては、例えば、1)界面活性剤を混合したウレタンプレポリマーと水を上記と同様にホモミキサー等の分散装置を用いて分散する方法、2)ウレタンプレポリマーと界面活性剤を含む水溶液を上記と同様にホモミキサー等の分散装置を用いて分散する方法等が挙げられる。
【0037】
上記ポリアミン化合物としては、ウレタンプレポリマー水分散体のイソシアネート基と反応し得る水素原子を分子中に2個以上有する(1分子中に1級及び/又は2級アミノ基を2個以上含有する)ものであれば特に限定されず、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1, 3-ジアミノペンタン、1, 5-ジアミノペンタン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1, 7-ジアミノヘプタン、1, 5-ジアミノ-2-メチルペンタン、3, 3’-ジアミノジプロピルアミン、3, 3’-メチルイミノビスプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンジアミン、N,N’-ビスアミノプロピル-1, 3-プロピレンジアミン、N,N’-ビスアミノプロピル-1, 4-ブチレンジアミン、1, 2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、1, 2-ビス(3-アミノプロポキシ)エタン、1, 4-ビス(3-アミノプロポキシ)ブタン、2-ヒドロキシルアミノプロピルアミン、ビス-(3-アミノプロピル)エーテル、1, 3-ビス-(3-アミノプロポキシ)-2, 2-ジメチルプロパン等の脂肪族ポリアミン;1, 4-ジアミノシクロヘキサン、4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン等の脂環族ポリアミン;4, 4’-ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン;ヒドラジンヒドラート等のヒドラジン類;ピペラジン、2-メチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、2-アミノメチルピペラジン、ホモピペラジン、4-アミノメチルピペリジン、(3R)-(+)-3-アミノピロリジン、(3S)-(-)-3-アミノピロリジン等のヘテロ環類等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0038】
また、ポリアミン化合物として、α,ω-ジアミノポリプロピレンオキサイド等のポリオキシアルキレンアミン類、トリメチロールプロパン又はグリセリンのプロピレンオキサイド付加物で末端アミノ基を有するポリアミン末端物等を使用することもでき、前者では分子量230〜2000のものが、後者では分子量480〜5000のものが好ましく用いられる。
【0039】
ポリアミン化合物の配合量としては、良好な製品特性を有するポリウレタン多孔質体を得る観点から、ウレタンプレポリマー水分散体の活性イソシアネート基(水分散前における理論値)とポリアミン化合物の活性水素基との当量比として、好ましくは0.1〜90%、より好ましくは1〜50%、特に好ましくは5〜30%である。
【0040】
ポリウレタン多孔質体の製造方法としては、例えば、上記で得られたウレタンプレポリマー水分散体とポリアミン化合物とを均一に混合し、マイクロプレートの下面の形状と略同一形状を有する異型成形型、又は、本実施形態のようにマイクロプレートに周壁が形成されている場合は、直接、各ウェルの開口部が下面に位置するように載置したマイクロプレートに、得られた混合物を流し込み、室温下、10時間以上静置した状態で架橋反応を進行させ、得られたゲル化物から水分を除去する方法が挙げられる。マイクロプレートに周壁が形成されていない場合等は、所定の容器に、ウレタンプレポリマー水分散体とポリアミン化合物との混合物を流し込んで30秒程度静置した後、容器内の混合物にマイクロプレートの各ウェルの膨出部を差し込み、室温下、10時間以上静置した状態で架橋反応を進行させ、得られたゲル化物から水分を除去する方法等が挙げられる。
【0041】
異型成形型、マイクロプレート又は容器に流し込む際のウレタンプレポリマー水分散体とポリアミン化合物との混合物の粘度としては、得られる成形体に各ウェルの膨出部に忠実に対応した形状を付与する観点から、6000(mPa・s/25℃)以下であることが好ましく、より好ましくは5〜4000(mPa・s/25℃)である。異型成形型、マイクロプレート又は容器の材質は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。また、ポリウレタン多孔質体の成形に際し、離型性を向上させる観点から、適宜、シリコーン等の離型剤を異型成形型等に予め塗布しておいてもよい。
【0042】
なお、ポリウレタン多孔質体には、本発明の目的を損なわない範囲で、着色剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、pH調整剤等の添加剤が含まれていてもよく、これらを単独で又は2種以上を混合して添加することが可能である。
【0043】
また、親水性鎖長剤としてアニオン性鎖長剤が構成成分として含有されてなるウレタンプレポリマー水分散体中に中和剤が添加されている場合、得られるポリウレタン多孔質体の劣化を抑制する観点から、アニオン性鎖長剤のアニオン性親水基と反応し得る化合物を添加してウレタンプレポリマーを架橋させてもよい。かかる化合物としては、例えば、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、エポキシ系化合物、メラミン系化合物等が挙げられる。また、上記化合物を添加した場合、アニオン性親水基と塩を形成していた中和剤がアニオン性鎖長剤から解離するので、後述する水洗工程を効率良く行うことができる。
【0044】
上記のポリウレタン多孔質体の製造において、ウレタンプレポリマー水分散体中のウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基は、周りに存在する水と反応してしまうため、ウレタンプレポリマーを水に分散後、通常は、48時間以内にポリアミン化合物と反応させることが好ましい。
【0045】
上記水分除去方法としては、室温下で自然乾燥させてもよいが、通常は水分除去時間を短縮するため、熱風乾燥機等を用いて70℃以上で乾燥させることが好ましい。なお、得られたゲル化物中に中和剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、pH調整剤等が含まれているときは、上記乾燥工程の前に、例えば、洗濯機等を用いてこれらの成分を水洗しておくことが好ましい。
【0046】
このようにして得られたポリウレタン多孔質体は、微細な連続気孔を有するとともに、優れた吸水性を備えるものである。
【0047】
次に、マイクロプレート用吸収体1の使用方法を説明する。薬剤感受性試験において、培養器から取り出したマイクロプレートの下面には水滴が付着している。図2に示すように、水滴が付着したウェル3,3,3‥に、マイクロプレート用吸収体1の表面1aに設けられた凹部4,4,4‥を嵌合し、各ウェル3に付着した水滴をマイクロプレート用吸収体1に吸収させる。このように、マイクロプレート用吸収体1を用いることで、簡便かつ迅速に、マイクロプレート下面に付着した水滴を取り除くことができる。
【実施例】
【0048】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0049】
3口丸底フラスコに、ポリオールとしてポリカーボネートジオール〔旭化成株式会社製、商品名:T−4671、数平均分子量:1000〕、鎖長剤としてエチレングリコール、親水性鎖長剤として2,2-ジメチロールプロピオン酸及びイソシアネートとして1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを表1に示す配合割合で加え、90℃で3時間攪拌し、ウレタンプレポリマーを得た。-
【0050】
上記で得られたウレタンプレポリマーを80℃にして、中和剤としてトリエチルアミンを加えて2分間攪拌を行った。次いで、界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン界面活性剤〔旭電化工業製、商品名:アデカトールTN−100、HLB:13.8、曇点:75℃〕を加えてさらに2分間攪拌を行った。
【0051】
次に、中和剤および界面活性剤を添加したウレタンプレポリマーを蒸留水に加え、ホモミキサーで5分間攪拌を行い、ウレタンプレポリマー水分散体を得た。
【0052】
上記で得られたウレタンプレポリマー水分散体に、ポリアミン化合物としてエチレンジアミンを含む水溶液を攪拌しながら加え、室温下で、10秒間攪拌機で混合を行った後、この混合物を、各ウェルの開口部が下面に位置するように載置したマイクロプレート(周壁が形成されている)に流し込み、室温で12時間静置して反応させた。次に、マイクロプレートから脱型した反応物を水洗し、80℃で乾燥を行い、図1に示すような、表面に各ウェルの反転形状とされた凹部が設けられたマイクロプレート用吸収体を得た。各成分の配合割合については表1に示す。また、マイクロプレートに流し込む際の混合物の粘度を、B型粘度計(BM形式)〔株式会社トキメック製〕にて測定した。この結果についても表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1に示すように、マイクロプレートに流し込む際のウレタンプレポリマー水分散体とポリアミン化合物との混合物の粘度は、100(mPa・s/25℃)と、優れた流動性を有していたので、マイクロプレートのように複雑な形状を有する成形型であっても、各ウェルの膨出部に忠実に対応した形状を有する吸収体が得られた。
【0055】
次に、実施例1及び実施例2で得られたマイクロプレート用吸収体を用いて、マイクロプレートの下面に付着した水滴の拭き取りを行った。
[培養]
マイクロプレートにペニシリン系抗生剤希釈系列を作製し、ブドウ球菌属の菌液を接種して、36℃の雰囲気の恒温槽内で24時間培養を行った。
[マイクロプレートに付着した水滴の拭き取り]
培養後、恒温槽からマイクロプレートを取り出すと、結露によりマイクロプレートに水滴が付着した。そこで、各実施例で得られたマイクロプレート用吸収体の凹部を、マイクロプレートの各ウェルに嵌合して3秒放置後、該マイクロプレート用吸収体を取り外すという操作を3回繰り返すことにより、マイクロプレート下面に付着した水滴の拭き取りを行った。なお、比較例として、市販の吸水スポンジ〔アイオン株式会社製、商品名:ソフラス〕を用いて、マイクロプレートの下面に付着した水滴の拭き取りを行った。拭き取り方法としては、マイクロプレートの下面に、吸水スポンジを3秒間押し当てた後、該吸水スポンジを引き離すという操作を3回繰り返すことにより行った。
【0056】
[画像判定]
その後、マイクロプレートの下方から写真を撮り、画像判定を行った。実施例1及び実施例2で得られたマイクロプレート用吸収体を用いて水滴の拭き取りを行った場合は、ウェルの外壁に付着した水滴まで取り除かれており、正確に薬剤感受性の評価を行うことができた。一方、市販の吸水スポンジを用いて水滴の拭き取りを行った場合は、ウェルの外壁に水滴が残存しており、この水滴とウェル内壁に存在する菌との区別がつかず、正確に薬剤感受性の評価を行うことができなかった。以上のことから、実施例1及び実施例2で得られたマイクロプレート用吸収体を用いることで、簡便かつ迅速な操作でマイクロプレート下面に付着した水滴を取り除くことが可能であるといえ、実施例1及び実施例2で得られたマイクロプレート用吸収体は優れた吸水性を有しているといえる。
【0057】
さらに、実施例1及び実施例2で得られたマイクロプレート用吸収体については、上述したような拭き取り操作を連続して行ったところ、マイクロプレート100枚程度の拭き取り操作を行った後においても優れた吸水性を有していた。従って、薬剤感受性試験の処理時間が劇的に短縮された。なお、これらのマイクロプレート用吸収体は、乾燥させることにより再度使用可能であることはいうまでもない。
【0058】
また、実施例1及び実施例2で得られたマイクロプレート用吸収体を、デジタルマイクロスコープ〔株式会社キーエンス製、型番:VH−6300〕を用いて、倍率600倍で観察した。実施例1の観察写真を図3に示す。
【0059】
図3に示すように、実施例1で得られたマイクロプレート用吸収体は、微細な連続気孔を有していた。また、実施例2で得られたマイクロプレート用吸収体についても、実施例1と同様、微細な連続気孔を有していることが観察された。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態に係るマイクロプレート用吸収体を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示すマイクロプレート用吸収体の使用状態を示す断面図である。
【図3】実施例1で得られたマイクロプレート用吸収体のマイクロスコープ写真(倍率:600倍)である。
【符号の説明】
【0061】
1 マイクロプレート用吸収体
2 マイクロプレート
3 ウェル
4 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に、マイクロプレートの複数のウェルに同時に嵌合する凹部が設けられ、
前記ウェルに嵌合されて、前記ウェルに付着した水滴を吸収するマイクロプレート用吸収体。
【請求項2】
ポリウレタン多孔質体からなる請求項1に記載のマイクロプレート用吸収体。
【請求項3】
前記ポリウレタン多孔質体が、ポリオール、鎖長剤、親水性鎖長剤及びイソシアネートを重合して得られた末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー水分散体とポリアミン化合物とを架橋反応させて得られたゲル化物から、水分を除去して得られるものであって、
親水性鎖長剤が、ウレタンプレポリマーを構成する全ての反応成分中、0.1〜4重量%含有されてなるものである請求項2に記載のマイクロプレート用吸収体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−265308(P2006−265308A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−82460(P2005−82460)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000222417)トーヨーポリマー株式会社 (9)
【出願人】(593164158)小松電子株式会社 (11)
【出願人】(505104375)有限会社ニッタ (1)
【Fターム(参考)】