説明

マイクロポンプ装置

【課題】
電解による酸素ガスの発生や微粒子の凝縮による詰まり等の作動液に関連する不具合を解消し、長期に安定して作動することができるマイクロポンプ装置を提供する。
【解決手段】
このマイクロポンプ装置は、流路中に配置された多孔質薄膜22と、多孔質薄膜の両側に設置された一対の電極24,26と、流路に作動液Lwを供給する手段と、一対の電極間に直流電圧を印加する直流電源34とを備えている。これらの一対の電極24,26は複数の貫通孔27が形成された板状であり、一対の電極24,26間に直流電圧を印加することにより多孔質薄膜22を経由した作動液Lwの流れを発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の流量を精密に制御することができるマイクロポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、マイクロチャネル内に血液やDNA、細胞等を含む溶液を流し、対象物を顕微鏡によって拡大し観察する作業を行う場合、流量に変動や脈動があると像がプレて精確な観察ができない。このため、脈動や変動のない微少流量を制御できるマイクロポンプ装置の開発が渇望されていた。
【0003】
このようなマイクロポンプ装置として、発明者等は、先に全く新しい原理を用いた装置を開発した(特許文献1)。これは、図11に示すように、電解質水溶液やコロイド溶液等の作動液80の流路を構成する外被82中に多孔質薄膜84を配置し、さらにこの多孔質薄膜84の両側に一対の電極86,88を配置し、これら一対の電極86,88間に直流電圧を印加することにより、作動液が多孔質薄膜84を通過して微少流量流れを発生することを利用するものである。
【0004】
しかしながら、上記のような従来の技術では、電極としてリング状の部材を用いており、多孔質薄膜の中央部分で電圧分布が小さくなり、周辺部に比べて流量が低下する不具合が有った。また、作動液として電解質水溶液を用いる場合、電気分解が発生しやすく、陰極で酸素が発生して動作不良となる場合がある。一方、作動液としてコロイド溶液を用いる場合、微粒子が凝縮して、多孔質膜の詰まりを生じるという問題も有る。
【0005】
また、このような原理を用いてマイクロポンプを構成するために、特許文献1では、作動液と吐出液の間に緩衝液を導入しているので、緩衝液が吐出液を変質・汚染する可能性が有り、場合によっては、作動液が吐出液に混合する可能性がある。さらに、マイクロポンプの始動、吐出液の補充、メンテナンス等の際に3つの液をハンドリングしなければならず、作業が煩雑である、あるいは、緩衝液を保持するための曲管部を形成するために、構造が複雑となり、マイクロチップへの組み込みが難しい、等の問題も有った。
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/052379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、電解による酸素ガスの発生や微粒子の凝縮による詰まり等の作動液に関連する不具合を解消し、長期に安定して作動することができるマイクロポンプ装置を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的は、吐出液が汚染される危険性を減少させ、かつ、始動、吐出液の補充、メンテナンス等の作業が容易であるような実用性の高いマイクロポンプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、請求項1に記載のマイクロポンプ装置は、流路中に配置された多孔質薄膜と、該多孔質薄膜の両側に設置された一対の電極と、前記流路に作動液を供給する手段と、前記一対の電極間に直流電圧を印加する直流電源とを備えており、前記一対の電極は複数の貫通孔が形成された板状であり、前記一対の電極間に直流電圧を印加することにより前記多孔質薄膜を経由した前記作動液の流れを発生させることを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明においては、一対の電極が複数の貫通孔が形成された板状であり、一対の電極間に直流電圧を印加することにより、多孔質薄膜の全面に均一な電圧分布が形成される。従って、多孔質薄膜の全面において作動液の微少流れが形成され、効率の良いポンプ動作がなされる。
【0011】
請求項2に記載のマイクロポンプ装置は、請求項1に記載の発明において、前記作動液は、電気分解が発生しないように処理された溶液であることを特徴とする。
請求項3に記載のマイクロポンプ装置は、請求項2に記載の発明において、前記作動液は、液体中に微粒子を分散させたコロイド状溶液であることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載のマイクロポンプ装置は、請求項2に記載のマイクロポンプ装置において、前記作動液はイオン交換水又は蒸留水であることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明においては、作動液がイオン交換水又は蒸留水であるので、一対の電極間に直流電圧を印加した場合に、電気分解や微粒子の凝縮が起こらない。従って、これらによる動作不良が起きず、長期に安定動作する。なお、作動液がイオン交換水である場合の動作原理は、特許文献1におけるものとは異なると考えられ、詳細は究明中である。
【0014】
請求項5に記載のマイクロポンプ装置は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の発明において、前記多孔質薄膜の下流側に可撓性を有する分離膜を設置し、この分離膜の他方側に設けた吐出室に吐出液を収容して、作動液の駆動力を分離膜を介して吐出液に伝達するようにしたことを特徴とする。
請求項3に記載の発明においては、作動液と吐出液が分離膜により分離されているので、吐出液が汚染されたりすることが防止され、また、各液の補給等の作業を独立に行うことができるので、作業が軽減される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、より効率のよいマイクロポンプ装置が提供される。
請求項2に記載の発明によれば、長期にわたり安定的に稼動するマイクロポンプ装置が提供される。
請求項3に記載の発明によれば、吐出液が汚染される危険性を減少させ、かつ、始動、吐出液の補充、メンテナンス等の作業が容易であるような実用性の高いマイクロポンプ装置を提供が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1は、この発明の1つの実施の形態のマイクロポンプ装置を模式的に示す図である。これは、作動液の微少流れを形成する作動部1と、作動液の駆動力を吐出液に伝達する伝達部2とを有している。
【0017】
作動部1を構成する作動容器1aの中央部には、多孔質薄膜22が内部空間を二分する(以下、図において左側を上流室28、右側を下流室30と呼ぶ。)ように配置され、この多孔質薄膜22の両側に一対の電極24,26が配置されている。多孔質薄膜22の両側の空間には、作動液Lwが充填されている。作動液Lwとしては、液体中で帯電する性質を有している粒径0.01μm〜0.5μmの微粒子を浮遊させた液体、例えば、溶液中に微粒子を分離させたコロイド状溶液、電解質水溶液、あるいはイオン交換水(蒸留水)等を用いることができる。
【0018】
多孔質薄膜22は、一例として、厚さが11μmのニッケル製で、直径8mmの円形の領域内に孔径約5μmの穴が55600個規則的に設けられたものである。多孔質の孔径は1μm〜100μmの範囲が望ましい。多孔質薄膜22としては、金属製だけでなく、樹脂、セラミックス等の適宜の素材を用いることができる。
【0019】
電極24,26は、図2(a)に示すように、円板の中央に1つとその周囲に8個の円形の穴27を周方向等間隔に形成したものである。この実施の形態では、中央が直径2.0mm、周囲が直径1.5mmである。穴27の寸法や形状、数は適宜に決めることができる。径が小さすぎると、液流れの抵抗となり、また、初期の空気抜きが困難になる。図2(b)に示すのは、従来のリング形の電極の形状であり、中央に直径5mmの穴が形成されている。
【0020】
各電極24,26と多孔質薄膜22との間隔は、1mmないし1cm程度の範囲が望ましい。これら一対の電極24,26は切替えスイッチ32を介して直流電源34に接続されている。直流電源34は、一対の電極24,26に100V程度以下の直流電圧を供給するための電源であり、電池を用いることができる。あるいは、直流電源34として、交流電源からコンバーターを介して直流電源を得る電源装置であっても良い。また、可変抵抗器などの電圧調整手段を具備しているものとする。
【0021】
このマイクロポンプ装置は、切替えスイッチ32によって、基本的には、上側電極24を+、下側電極26を−として動作する。すなわち、液中で+に荷電したように挙動する微粒子を多孔質薄膜22の微細孔から押し出すことにより、上流室28から下流室30に送液される。流量は、多孔質薄膜22や作動液Lwの条件が同じであれば、電極間電圧によって制御される。勿論、切替えスイッチ32によって、電圧を逆にして逆流させることもできる。
【0022】
伝達部2は、伝達容器2aの中央に分離膜48が設けられている。分離膜48の左側は、作動液管3を介して下流室30に連通する作動液空間4であり、右側は、吐出液Lhが収容される吐出液空間5である。吐出液空間5は吐出管6を介して、マイクロチップ等の吐出液被供給装置に連絡している。
【0023】
分離膜48は、樹脂、各種ゴム等からなる可撓性を有する部材で、平坦ではなく、中央が膨らんだ形状である。この実施の形態ではポリエチレン製であるが、作動液Lwや吐出液Lhと反応せず、ヘッドh程度の圧力に対して圧縮や伸張しない強度が有ればよい。分離膜48は、この実施の形態では、断面楕円状のドーム型であるが、円形、コーン型、あるいは不定形であってもよく、形状を変えることで突出した部分の容積を変えられるものであればよい。
【0024】
(実施例1)
図2(a)および(b)に示す2つの電極24,26を用いて、流量を比較するための実験を行った。作動液は、シリカ微粒子を0.1%含むコロイド溶液とし、多孔質薄膜22としては、2μmのポリカーボネイト膜を用いた。印加電圧は、10Vである。結果を図3に示す。
この図より、本発明の多穴電極24,26は、従来のリング状の電極に比べて、約2倍の流量が得られることが分かる。
【0025】
(実施例2)
図4(a)は、作動液Lwとして、イオン交換水を用いた場合の実施例の結果である。電極は、図2(a)に示す形状であり、多孔質薄膜22としては、2μmのポリカーボネイト膜を用いた。印加電圧は、10Vである。図4(b)は、作動液として0.01%のシリカ微粒子を含むコロイド溶液を用いた比較例で、印加電圧10V、多孔質薄膜22として2μmのポリカーボネイト膜を用いた点は、図4(a)の場合と同じである。
【0026】
図4(a)に示すイオン交換水を用いた場合は、図4(b)に示すコロイド溶液を用いた場合に比べて流量は約半分である。しかしながら、長時間にわたって、流量は少ないが一定流量が安定して流れることが分かった。
【0027】
図5ないし図8は、この発明のマイクロポンプ装置の他の実施の形態を示すもので、図5はポンプ本体10を、図6はその要部を、図7および図8はこのマイクロポンプ装置を用いたシステムとその液フローを示す図である。
【0028】
ポンプ本体10は、筒状の外被12および蓋13と、その下側の2枚の板部材14,16を備えている。2枚の板部材(以下、上板14および下板16と呼ぶ。)は、このマイクロポンプ装置が使用されるマイクロチップ18の一部であって、上板14の下面に形成された溝によって、上板14および下板16の間に吐出液流路20が形成されている。マイクロチップ18は、例えば血液やDNA、細胞等を含む溶液を検査するための装置であって、このマイクロポンプ装置はそのような溶液を吐出液Lhとして上記吐出液流路20に微少流量ずつ送液するものである。
【0029】
縦型筒状の外被12の高さ方向中央部には、多孔質薄膜22が内部空間を上下に二分するように配置され、この多孔質薄膜22の上下に一対の電極24,26が配置されている。多孔質薄膜22の上下の空間(以下、上側を上流室28、下側を下流室30と呼ぶ。)には、作動液が充填されている。
【0030】
多孔質薄膜22によって内部の空間は上下に分割されているが、電極24,26の多孔質薄膜22に対向する部分は実質的に液流動を許容するように開口が形成されている。多孔質薄膜22および電極24,26が傾斜して取り付けられているのは、作動液Lwを供給する際に内部に空気が残らないようにするためである。
【0031】
上流室28および下流室30の中段部以下の部分には、それぞれ作動液供給管36,38が設けられ、これらは開閉弁V1,V2を介して作動液タンク40に接続されている。作動液タンク40と多孔質薄膜22の高さ、すなわちヘッドh(図8参照)は、用途に応じて適宜に設定することにより、用途に応じた所望の流量特性を得ることができる。また、上流室28および下流室30の上段部近傍の部分には、それぞれ空気抜き管42,44が設けられ、これらは開閉弁V3,V4を介して作動液回収容器46に開口している。なお、下流室30の空気抜き管44は、後述するように、吐出液Lhを補充する際の作動液排出管としても用いられる。
【0032】
筒状の外被12の下方には、上板14を貫通する開口が形成され、その上端を覆う分離膜48が設けられている。この分離膜48は、樹脂、各種ゴム等からなる可撓性を有する部材で、平坦ではなく、中央が膨らんだ形状である。この実施の形態ではポリエチレン製であるが、作動液Lwや吐出液Lhと反応せず、ヘッドh程度の圧力に対して圧縮や伸張しない強度が有ればよい。分離膜48は、この実施の形態では、断面楕円状のドーム型であるが、円形、コーン型、あるいは不定形であってもよく、形状を変えることで突出した部分の容積を変えられるものであればよい。
【0033】
分離膜48の下側の空間は吐出液流路20と連絡しており、ここに吐出液Lhを貯留し、多孔質薄膜22の膨出によりこれを押し出す吐出室50が形成されている。上板14には、吐出液流路20の他に、吐出室50に通じる2つの流路が設けられており、一方は、吐出室50に吐出液Lhを補給する補給路52であり、他方は空気抜き路54である。図6に示すように、補給路52は吐出室50の底部近傍に開口しているが、空気抜き路54は多孔質薄膜22の付け根の部分、つまり、吐出室50の頂部に開口している。すなわち、空気抜き路54は上板14の上面に形成した溝で構成されているので、これを覆うように取り付けた継手56によって密封されている。
【0034】
補給路52は開閉弁V5を有する補給管53を介して、手押しポンプ58付きの吐出液タンク60に連絡している。空気抜き路54は、開閉弁V6を有する空気抜き管63を介して吐出液回収容器64に開口している。空気抜き管62は、例えば、垂直部分がガラス等の透明部材で形成し、液面の上昇を目視できるようにしてもよい。なお、上述した開閉弁V1〜V6は、マイクロポンプの動作に影響するものであるので、閉鎖時には漏れがないような精密な構造のものが使用される。また、吐出液流路20には、始動作業や補給作業の際に補給液が下流側に流れないようにするための開閉弁V7が設けられている。
【0035】
分離膜48は、外被12下端と上板14の開口の縁部との間に、接着剤等で固着させてもよいし、交換のための取り外しが可能なように、ねじやクランプで挟着してもよい。なお、ポンプ本体10の外被12は、樹脂や金属で作製され、上板14はpolydimethylsiloxane(PDMS)等の樹脂により好適に作製される。
【0036】
以下、上記のように構成されたマイクロポンプ装置およびポンプシステムの動作を説明する。図7又は図8に示すシステムを、ポンプ本体10の作動液Lw、吐出液Lhが空の状態で始動する際には、まず、開閉弁V1,V2および吐出液タンク60の開放弁V8と、吐出液流路20へ通じる開閉弁V7を閉じ、開閉弁V4,V5,V6を開いて、吐出液タンク60の手押しポンプ58を操作し、吐出液Lhを吐出室50に送る。空気抜き路54の先端側から液が出て来たら、吐出室50内の空気が押し出されたので、開閉弁V7を閉じる。吐出室50内には、吐出液Lhが溜まっていき、分離膜48を上方に押し出し、例えば、図8に破線で示すようになる。なお、この図では分離膜48を誇張して描いている。吐出室50内に充分な量の吐出液Lhが溜まったら、吐出液タンク60からの送液を止め、開閉弁V5を閉じる。
【0037】
次に、作動液タンク40に連絡する開閉弁V1,V2と空気抜き用の開閉弁V3,V4を開いて、作動液Lwを上流室28と下流室30に供給する。開閉弁V3,V4から作動液Lwが出るようになったら、空気抜きが終わったので、開閉弁V1〜V4を閉じて、マイクロポンプ動作を開始することができる。なお、特に、多孔質薄膜22や電極24,26近傍の空気抜きを充分に行うには、しばらくマイクロポンプを準備運転してから、もう一度上記の作動液供給動作を行うとよい。
【0038】
上記において、吐出液Lhの充填を作動液Lwの充填より先に行ったのは、開閉弁V4を開いた状態で作動液Lwを供給すると、分離膜48が作動液Lwの自重で下方に膨らんで、充分に吐出液Lhを供給できないからである。しかしながら、下流室30への作動液Lwの供給を所定量で止め、その後に開閉弁V2を閉、V4を開とした状態で吐出液Lhを供給すれば、やがて作動液が開閉弁V4より押し出されるので、このようにしてもよい。上流室28、下流室30および吐出室50のいずれにも、空気が抜けた状態で液が充填されれば良いので、やり方は任意である。
【0039】
このようにして、各室にそれぞれの液が供給された状態で、開閉弁V1とV7のみを開いて電極24,26間に所定電圧を印加して、マイクロポンプを作動させる。開閉弁V1を開とするのは、ヘッドhを一定に維持するためである。これにより多孔質薄膜22を作動液Lw中の微粒子が通過し、これに伴って上流室28から下流室30へ作動液Lwが微少流量ずつ流れる。これにより、分離膜48が下方に膨らみ、下流室30の容積が増えて吐出室50の容積が減り、吐出液Lhが吐出室50から吐出液流路へと送り出される。分離膜48が非圧縮性であるので、作動液Lwと吐出液Lhの流量は常に一致する。
【0040】
マイクロポンプの動作に伴い、下流室30の容積が増加し、やがて、分離膜48が図8で実線で示す原形に近付く。そこで、所定のタイミングで運転を停止し、吐出液Lhの補給作業を行う。これは、補給管53の開閉弁V5と、下流室30の空気抜き/作動液排出のための開閉弁V4とを開とし、他の開閉弁を閉じた状態で、手押しポンプ58を作動すれば良い。これにより、吐出室50に圧送された吐出液Lhは分離膜48を押し上げ、下流室30内の作動液Lwを空気抜き/作動液排出管44および開閉弁V4より作動液回収容器46へと押し出す。所定量が供給されたところで、開閉弁V4,V5を閉じ、開閉弁V7を開として、マイクロポンプの動作を再開すればよい。
【0041】
図9は、マイクロポンプ装置およびポンプシステムの他の実施の形態を示すもので、マイクロチップ18の下板16に貫通口を設けるとともに、その下方にカップ状の容器66を取り付けたものである。分離膜48は、吐出室50の深さに応じてドームの高さを大きくする。吐出液流路20は、分離膜48によって覆われないような位置に開口させている。このようにして、吐出室50の深さを大きくすることにより、1回の吐出液補給によって動作可能な期間を延長することができる。
【0042】
図10は、マイクロポンプ装置を用いたポンプシステムの他の実施の形態を示すもので、先の実施の形態では、吐出液Lhの補給を手押しポンプ58で人手により行ったが、この実施の形態では、所定のアクチュエータで動作する補給ポンプ68を用いている。さらに、この実施の形態では、この補給ポンプ68の動作と開閉弁V1〜V7の開閉動作を必要に応じて制御し、所定のタイミングで補給動作を行う制御装置70が設けられている。補給動作を行うタイミングは、マイクロポンプの動作時間を測定する、流量計等により総流量を測定する、分離膜48の変形をセンサで測定する等の方法が考えられる。このような構成により、長期に自動化したマイクロポンプ運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明のマイクロポンプ装置の原理を示す模式図である。
【図2】(a)は図1の装置の電極を示す図、(b)は従来の電極を示す図である。
【図3】この発明の第1の実施例の結果を従来の場合と比較して示すグラフである。
【図4】(a)はこの発明の実施例の結果を示すグラフ、(b)は従来の場合の結果を示すグラフである。
【図5】この発明の1実施の形態のマイクロポンプ装置の本体部の構成を示すもので、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。
【図6】図5の本体部の要部を示すもので、(a)は図5(b)のa矢視図、(b)は図5(b)のb矢視図である。
【図7】図5のマイクロポンプ装置を用いたポンプシステムを示す図である。
【図8】図5のマイクロポンプ装置を用いたポンプシステムにおける液フローを模式的に示す図である。
【図9】この発明の他の実施の形態のマイクロポンプ装置およびポンプシステムを示す図である。
【図10】この発明のさらに他の実施の形態のマイクロポンプ装置およびポンプシステムを示す図である。
【図11】マイクロポンプ装置の原理を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
10 ポンプ本体
12 外被
22 多孔質薄膜
24,26 電極
27 穴
28 上流室
30 下流室
32 スイッチ
34 直流電源
36,38 作動液供給管
40 作動液タンク
42 空気抜き管
44 空気抜き/作動液排出管
48 分離膜
50 吐出室
52 補給路
53 補給管
54 空気抜き路
60 吐出液タンク
62 空気抜き管
70 制御装置
Lh 吐出液
Lw 作動液
V1〜V7 開閉弁
V8 開放弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路中に配置された多孔質薄膜と、該多孔質薄膜の両側に設置された一対の電極と、前記流路に作動液を供給する手段と、前記一対の電極間に直流電圧を印加する直流電源とを備えており、
前記一対の電極は複数の貫通孔が形成された板状であり、
前記一対の電極間に直流電圧を印加することにより前記多孔質薄膜を経由した前記作動液の流れを発生させることを特徴とするマイクロポンプ装置。
【請求項2】
前記作動液は、電気分解が発生しないように処理された溶液であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロポンプ装置。
【請求項3】
前記作動液は、液体中に微粒子を分散させたコロイド状溶液であることを特徴とする請求項2に記載のマイクロポンプ装置。
【請求項4】
前記作動液は、イオン交換水又は蒸留水であることを特徴とする請求項2に記載のマイクロポンプ装置。
【請求項5】
前記多孔質薄膜の下流側に可撓性を有する分離膜を設置し、この分離膜の他方側に設けた吐出室に吐出液を収容して、作動液の駆動力を分離膜を介して吐出液に伝達するようにしたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のマイクロポンプ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−177769(P2007−177769A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380074(P2005−380074)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(802000019)株式会社新潟ティーエルオー (27)
【Fターム(参考)】