説明

マイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタの製造方法

【課題】凹形状のレンズも凸形状のレンズも形成することが可能であり、各レンズの配置位置及び曲面形状をより高精度に形成することが可能であり、ワークの両面にレンズを形成する場合、ワーク両面の一対のレンズの光軸位置をより高精度に合致させることができるマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタの製造方法を提供する。
【解決手段】直交するX軸とZ軸を含むXZ平面に平行にベース部材を保持し、ベース部材と、XZ平面に平行な回転軸を中心として回転する回転工具とを、相対的にXZ平面に対して平行に移動させ、ベース部材の表面と、回転工具とを、相対的にXZ平面に垂直な方向に沿って近づけて接触させ、回転工具とベース部材との接触点を通るとともにXZ平面に垂直なB軸を中心として、ベース部材と回転工具との少なくとも一方を、XZ平面において少なくとも180°旋回させて個々のレンズまたはレンズ型を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数百μm〜数mm程度の間隔にて2次元状に凸レンズまたは凹レンズが配置されたマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタを、より高精度に製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、2次元状に配置された半導体レーザ素子を有する面発光レーザから出射された個々のレーザ光を、マイクロレンズアレイで集光して、複数の光ファイバにそれぞれ入力して光通信等に利用している。また、光通信の他にもマイクロレンズアレイが種々の技術に使用されており、従来からマイクロレンズアレイに関する種々の製造方法が提案されている。
例えば特許文献1では、図7(A)に示すように、単結晶シリコン基板95aにエッチングを施して複数個の穴を穿設し、接着用の層95bを形成して、各穴にボール状のマイクロレンズLを配置するマイクロレンズアレイの製造方法が提案されている。
また、特許文献2では、図7(B)に示すように、ガラス基板95cにエッチングにて多角柱状の樹脂95dを複数形成し、当該樹脂95dを熱軟化させて、多角柱の樹脂をレンズ状に変形させ、そのレンズ状の樹脂とガラス基板の一部とをエッチングにて除去するマイクロレンズアレイの製造方法が提案されている。
また、特許文献3では、図7(C)に示すように、レンズの光軸Z2に平行な回転軸Z1を有する回転工具95fを用い、回転工具の刃先95rはレンズLの片側半分の形状であり、切れ刃は回転軸Z1に対して外側に向いている。そして回転軸Z1を中心に回転工具95fを回転させ、凸レンズの光軸Z2を中心に回転工具95fを公転させて、各凸レンズLを切れ刃の外周部で加工するマイクロレンズアレイの製造方法が提案されている。
また、特許文献4では、図7(D)に示すように、プラスチック等の材料のワーク95hの所定個所に、集光したレーザ光LSを照射し、照射個所を熱膨張させて凸レンズLを形成するマイクロレンズアレイの製造方法が提案されている。
また、特許文献5では、図7(E)に示すように、ワーク95mをワーク回転軸Z3を中心に回転させながら、ワーク95mの所定個所95pに接触するように回転工具95nをワーク回転軸Z3を中心に公転させてマイクロレンズアレイ型を製造する方法が提案されている。
【特許文献1】特開平7−134202号公報
【特許文献2】特開平8−166502号公報
【特許文献3】特開2000−052217号公報
【特許文献4】特開2003−266553号公報
【特許文献5】特開2004−148454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
面発光レーザから出射された個々のレーザ光をマイクロレンズアレイで集光して、複数の光ファイバにそれぞれ入力するには、各レンズの間隔(各レンズの配置位置)と、各レンズの焦点距離(各レンズの曲面形状)を、非常に高精度にする必要がある。また、場合によっては、ワークの表面と裏面との両面に、対となるレンズを形成しなければならない場合もある。
特許文献1に記載の従来技術では、どの方向でマイクロレンズLが穴に配置されるか製造工程にて管理できないため、マイクロレンズLの形状を高い精度で真球にする必要がある。また、接着用の層95bの厚さ、及びマイクロレンズLを接着する際の押圧力にて各レンズの配置位置が微妙に変化する。このため、各レンズの配置位置と曲面形状を高い精度で製造することは困難である。
また特許文献2に記載の従来技術では、レンズの曲面形状を樹脂の熱軟化に依存させていることと、更にエッチングでレンズの曲面形状を形成するため、レンズ曲面形状を高い精度で製造することは困難である。
また特許文献3に記載の従来技術では、凸形状のレンズを形成することはできるが、凹形状のレンズを形成することはできない。また、ワークの両面にレンズを形成する場合、一旦ワークを取り外して、再度ワークを取り付けなければならず、ワーク両面の一対のレンズの光軸位置を高精度に合致させることは困難である。
また特許文献4に記載の従来技術では、ワークをレーザ光で加熱してワークを熱膨張させてレンズ曲面を形成するため、レンズ曲面形状を高い精度で製造することは困難であるとともに、凹形状のレンズを形成することができない。また、材質はプラスチック等の樹脂に限定され、ガラス等の材質では困難である。
また特許文献5に記載の従来技術では、凸形状のレンズを形成することができない。また、ワークの両面にレンズを形成する場合、一旦ワークを取り外して、再度ワークを取り付けなければならず、ワーク両面の一対のレンズの光軸位置を高精度に合致させることは困難である。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、凹形状のレンズも凸形状のレンズも形成することが可能であり、各レンズの配置位置及び曲面形状をより高精度に形成することが可能であり、ワークの両面にレンズを形成する場合、ワーク両面の一対のレンズの光軸位置をより高精度に合致させることができるマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための手段として、本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりのマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタの製造方法である。
請求項1に記載のマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタの製造方法は、平板状のベース部材の表面に、複数のレンズが形成されたマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタの製造方法である。
直交するX軸とZ軸を含むXZ平面に平行となるようにベース部材を保持し、ベース部材と、XZ平面に平行な回転軸を中心として回転する回転工具とを、相対的にXZ平面に対して平行に移動させる。
そしてXZ平面に平行なベース部材の表面と、回転工具とを、相対的にXZ平面に垂直な方向に沿って近づけて接触させ、回転工具とベース部材との接触点を通るとともにXZ平面に垂直なB軸を中心として、ベース部材と回転工具との少なくとも一方を、XZ平面において少なくとも180°旋回させて、個々のレンズまたはレンズ型を形成する。
【0005】
また、本発明の第2発明は、請求項2に記載されたとおりのマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタの製造方法である。
請求項2に記載のマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタの製造方法では、請求項1に記載のマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタの製造方法であって、回転工具の回転軸に対して垂直方向から見た場合、ベース部材に接触させる回転工具の外周面の形状はベース部材に向かって凸状の曲面に形成されており、当該回転工具を用いて凹状の個々のレンズまたはレンズ型を形成する。
あるいは、回転工具の回転軸に対して垂直方向から見た場合、ベース部材に接触させる回転工具の外周面の形状はベース部材に向かって凹状の曲面に形成されており、当該回転工具を用いて凸状の個々のレンズまたはレンズ型を形成する。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載のマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタの製造方法を用いれば、回転工具にてレンズを形成するため、エッチングやレーザ等による形成方法と比べて、非常に高い精度でレンズの曲面形状を形成することができる。また、回転工具とベース部材の表面とを接触させて、更にB軸を中心として回転工具とベース部材とを相対的に旋回させるため、複雑な制御を行わなくても、レンズ曲面の形状を高精度に形成することができる。
また、XZ平面に垂直な方向(B軸)に沿って回転工具とベース部材とを相対的に近づけて接触させるが、例えばベース部材の一側面を保持していれば、回転工具をベース部材の表面から接触させることも可能であるし、回転工具をベース部材の裏面から接触させることも可能である。従って、ベース部材の両面にレンズを形成する場合であっても、ベース部材を一旦取り外して付け直す必要がなく、ベース部材の両面にレンズを形成する場合であっても、ベース部材の両面の一対のレンズの光軸位置を高精度に合致させることができる。
【0007】
また、請求項2に記載のマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタの製造方法によれば、各マイクロレンズ(またはマイクロレンズ型)が凸形状であっても凹形状であっても適切な位置に、適切な形状のマイクロレンズを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明のマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタの製造方法にて利用する加工装置の例を示している。本加工装置にてマイクロレンズアレイとマイクロレンズアレイ型マスタのいずれも製造することが可能であるが、以下の説明では、(主として)マイクロレンズアレイの製造方法について説明する。
本実施の形態に説明する加工装置は、数[nm]〜数10[nm]の誤差で、レンズあるいはレンズの型等を製作することが可能な超精密加工装置である。この超精密加工装置を用い、更に各レンズを以下に説明する方法で形成することで、各レンズの配置位置及び曲面形状を非常に高い精度で実現している。まず加工装置について説明する。
【0009】
●[加工装置の例(図1〜図3)]
図1(左側面図)及び図2(平面図)及び図3(斜視図)を用いて、本発明のマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタの製造方法に用いる加工装置における各移動手段及び各旋回手段等の配設位置を説明する。ここで、図1(A)は加工装置の左側面図を示しており、図1(B)は図1(A)のA−A断面図(Y軸移動手段30の断面図)を示している。また、図2(A)は加工装置の平面図を示しており、図2(B)は図2(A)のB−B断面図(Z軸移動手段50の断面図)を示している。
【0010】
本実施の形態の説明における回転工具Tには、回転砥石車を用いている。
ベッド1は、略直方体の形状であり、水平方向(図1(A)及び図2(A)中のX軸方向、及びZ軸方向)の上面と、垂直方向(図1(A)及び図2(A)中のY軸方向)の側面を有している。ベッド1は略直方体形状の非常にシンプルな形状であるため、各面の精度(水平方向の面の水平度、垂直方向の面の垂直度)を出すことが容易である。このため、配設における位置決め及び位置調整が重要な各部品等を高精度に配置及び位置調節することができる。これにより、加工精度をより向上させることができる。
【0011】
ベッド1の上面には、ワークW(ベース部材に相当する)と回転工具Tとを相対的に水平方向(この場合、図1〜図3中のX軸方向)に移動可能な、リニアモータ60cによってX軸方向に往復動するX軸移動手段60が配設されている。リニアモータ60cにより、ダイレクトに直線移動させることができ、バックラッシュもほとんど発生しないため、誤差をより小さくすることができる。
X軸移動手段60の上面には、ワークWと回転工具Tとを相対的に、X軸と直交する水平方向(この場合、図1〜図3中のZ軸方向)に移動可能な、リニアモータ50cによってZ軸方向に往復動するZ軸移動手段50が配設されている。
【0012】
Z軸移動手段50の先端には、水平方向(この場合、図1(A)及び図2(A)中のZ軸方向)を軸としてワークWと回転工具Tとを相対的に旋回(回転)可能な、水平方向(この場合、Z軸方向)のC軸駆動軸線(C軸)を軸とするC軸駆動手段40が配設されている。図1(A)及び図2(A)の例の場合、C軸駆動手段40は、ワークWを保持し、ワークWをC軸まわりに回転させることができる。
なお、本発明のマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタの製造方法においては、ワークWの両面に対となるレンズを形成しない場合は、ワークWをC軸まわりに回転させなくても良いため、C軸駆動手段40は省略してもよい。
【0013】
ベッド1の側面には、ワークWと回転工具Tとを相対的に垂直方向(この場合、図1〜図3中のY軸方向)に移動可能な、リニアモータ30cによってY軸方向に往復動するY軸移動手段30が配設されている。
なお、Y軸移動手段30の下方には、回転工具Tを配設したB軸旋回手段20を搭載している可動体30bを重力とほぼ等しい力でささえるバランスシリンダ80が設けられている。これにより、Y軸移動手段30のリニアモータにかかる負荷を低減して誤差をより小さくすることができる。
【0014】
Y軸移動手段30の上面には、垂直方向(この場合、図1(A)中のY軸方向)を軸としてワークWと回転工具Tとを相対的に旋回可能な、垂直方向(この場合、Y軸方向)のB軸旋回軸線(B軸)を軸とするB軸旋回手段20が配設されている。図2(A)に示すように、B軸旋回手段20にはB軸旋回テーブル20bが設けられており、このB軸旋回テーブル20bがB軸まわりに旋回する。図1(A)及び図2(A)及び図3の例の場合、B軸旋回テーブル20bには、回転工具Tを回転駆動する駆動手段10が固定されている。
B軸旋回手段20におけるB軸旋回テーブル20bの上面には、回転工具Tの先端部分の加工点S(接触点に相当する)が、B軸旋回軸線(B軸)上に位置するように回転工具Tが配設されている(図4(A)参照)。このため、B軸旋回手段20がどのような角度で旋回しても、回転工具Tの加工点Sの位置は、ずれることなくB軸旋回軸線上(B軸上)に留まっている。
【0015】
なお、図3には、ワークWの被加工点(回転工具Tと接触する点)と回転工具Tの加工点S(ワークWと接触する点)との位置合わせ用の顕微鏡90と、当該顕微鏡90での位置確認を補助するためのストロボ92が図中に記載されている。また、回転工具TとB軸旋回テーブル20b(B軸旋回手段20により旋回するテーブル)との間には、回転工具Tの先端の加工点Sの位置を正確にB軸上に位置させるための微調整手段12が設けられている。作業者は、顕微鏡90にて回転工具Tの先端の加工点Sの位置がB軸上に位置するように、微調整手段12を操作する(図3の例では、回転工具Tを駆動する駆動手段10の位置を微調整する)。
また、図3には、ベッド1を床面等に対して正確に水平に維持し、かつ床面等からの振動を吸収することができる除振台3も図中に記載されている。
【0016】
●[回転工具TとワークWの配置位置(図4)]
図4(A)はワークW及び回転工具T周辺の模式図を示している。ここでX軸とZ軸とY軸とは互いに直交する方向であり、Y軸及びB軸は鉛直方向である。
ワークWは例えば所定の屈折率を有するガラスを材質とした、平板状の10[mm]四方程度のサイズである。なお、ワークWの材質は、ガラスに限定されず、プラスチック、マイクロレンズアレイ型マスタ用の金属等、種々の材質のものを用いることができる。
【0017】
次にワークWと回転工具Tとの配置について説明する。
ワークWはZ軸移動手段50の先端に設けられたワーク保持部42(図1〜図3には図示せず)に、一側面が固定されている。
このように、ワークWは、直交するX軸とZ軸とを含むXZ平面内の任意の位置に制御可能なX軸移動手段60とZ軸移動手段50に、ワークWの表面がXZ平面に平行となるようにワーク保持部42に(ワークWの側面部が)保持されている(取り付けられている)。
回転工具Tは、XZ平面に平行なM軸を有し、例えば略円盤状であり、駆動手段10により円周方向に回転する。また駆動手段10は、B軸旋回テーブル20bに固定されている。
B軸とY軸とは平行であり、(XZ平面に垂直な)B軸の方向から回転工具Tの外周面をワークWに接触させた場合における、回転工具Tの外周面におけるワークWとの接点(加工点S)が、B軸(B軸はXZ平面の所定位置に直交する)上に位置するように、回転工具Tを配置している。
また図4(B)には、ワークWの表面に2次元状に複数のマイクロレンズを形成したマイクロレンズアレイの例を示している。各マイクロレンズの中心間の距離(ΔX、ΔZ)は、例えば約1[mm]であり、以下に説明する方法にて、ワークWの所望する個所にマイクロレンズを1個ずつ形成していく。
【0018】
●[マイクロレンズの形成方法(図5、図6)]
図4(A)に示す状態からワークWの表面におけるマイクロレンズLの形成を所望する位置がB軸上に位置するように、X軸移動手段60とZ軸移動手段50にてワークWをXZ平面に平行に移動させ、図5(B)に示すようにY軸移動手段30にてY軸(B軸)の方向から回転工具Tの外周面(加工点S)をワークWに接触させる。そしてB軸旋回手段20にてB軸を中心としてB軸旋回テーブル20bを旋回させて(回転工具Tを旋回させて)、回転工具Tをひねるように動作させてマイクロレンズLを形成する。なお、旋回の角度θ(図4(A)参照)は少なくとも180°旋回すれば、回転工具Tにてレンズ形状(この例では凹状の略部分球面形状)を形成することができる。また、回転する円盤状の回転工具Tを用いるため、非常に真球(真球の一部)に近い形状を形成することができる。
図5(A)に、回転工具TをM軸を通る面で切断した断面図を示す。回転工具Tの外周面の断面形状は、図5(A)のTaに示すように、ワークWに向かって凸状の円弧が形成されている。
【0019】
なお、本実施の形態では、ワークWをXZ平面に対して平行移動させたが、回転工具TをXZ平面に平行に移動させてもよく、ワークWと回転工具Tとが相対的にXZ平面に対して平行に移動させることができればよい。
また、本実施の形態では、ワークWの表面に回転工具Tの外周面をB軸に沿って近づけて接触させたが、回転工具Tの外周面(加工点S)にワークWの表面をB軸に沿って近づけてもよく、ワークWの表面と回転工具の外周面とをB軸に沿って相対的に近づけて接触させることができればよい。
また、本実施の形態では、B軸と中心として回転工具Tを旋回させたが、B軸を中心としてワークWを旋回させるようにしてもよく(B軸旋回テーブル20bにX軸移動手段60とZ軸移動手段50とを載置すればよい)、B軸を中心としてワークWと回転工具Tの少なくとも一方を、XZ平面において少なくとも180°旋回させて、相対的に旋回させることができればよい。
【0020】
また、図4(A)に示す距離DH(B軸旋回テーブル20bからM軸までの距離)と、距離DL(駆動手段10から回転工具Tまでの距離)を適切な寸法に設定することで、ワークWを着脱することなく、C軸駆動手段40を180°回転させることにより、ワークWの上側表面と下側表面の双方にマイクロレンズLを形成することができる(図5(C)参照)。
ワークWを着脱することなくワーク表面と裏面に各マイクロレンズを形成することができるため、ワークWの上側表面に形成したマイクロレンズLuの中心Puを通る光軸と、ワークWの下側表面に形成したマイクロレンズLdの中心Pdを通る光軸とを非常に高い精度(数[nm]〜数10[nm]の誤差)で合致させることができる。
【0021】
以上の説明では、ワークWに凹形状のマイクロレンズを形成する方法について説明したが、回転工具Tの形状を変更することで、凸形状のマイクロレンズを形成することも可能である。
回転工具Tを図6(A)に示す形状の回転工具Tに変更する。図6(A)は、回転工具TをM軸を通る面で切断した断面図を示している。回転工具Tの外周面の断面形状は、図6(A)のTaに示すように、ワークWに向かって凹状の円弧が形成されている。そして上記と同様の方法でワークWの表面にマイクロレンズLを形成すると、凸形状の部分球面のマイクロレンズLが形成される(図6(B)参照)。
なお、上記の説明と同様に、図4(A)に示す距離DHと、距離DLを適切な寸法に設定することで、ワークWを着脱することなく、C軸駆動手段40を180°回転させることにより、ワークWの上側表面と下側表面の双方にマイクロレンズLを形成することができる(図6(C)参照)。上記の説明と同様に、ワークWを着脱することなくワーク表面と裏面に各マイクロレンズを形成することができるため、ワークWの上側表面に形成したマイクロレンズLuの中心Puを通る光軸と、ワークWの下側表面に形成したマイクロレンズLdの中心Pdを通る光軸とを非常に高い精度(数[nm]〜数10[nm]の誤差)で合致させることができる。
【0022】
以上、本実施の形態の説明にて、図1〜図3に示す加工装置を用いて、図4〜図6に示す方法にてマイクロレンズアレイを形成する製造方法を説明したが、ワークWをマイクロレンズアレイ型マスタ用の材質に変更すれば、上記に説明した方法にてマイクロレンズアレイ型マスタを製造することができる。
【0023】
本発明のマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタの製造方法は、本実施の形態で説明した方法等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。また、使用する加工装置は、本実施の形態にて説明した加工装置に限定されるものではない。
また、製造するマイクロレンズアレイは、ワークWの一方の面のみにマイクロレンズが形成されていてもよいし、ワークWの両面にマイクロレンズが形成されていてもよい。また、ワークの両面にマイクロレンズを形成する場合、一方の面に凸形状のレンズを形成し、他方の面に凹形状のレンズを形成するようにしてもよい。この場合、一方の面を加工した後、回転工具Tの断面形状を凹形状から凸形状に機上で成形し、他方の面を加工すれば、対となるマイクロレンズLの光軸の位置を非常に高い精度で合致させることができる。
また、回転工具Tの断面形状は、図5(A)及び図6(A)に示す円弧の形状に限定されず、種々の断面形状の回転工具Tを用いることで、真球(の一部)の形状に限らず、種々の形状の凸レンズまたは凹レンズ(またはレンズ型)を形成することができる。
また、本実施の形態の説明に用いた数値等は一例であり、この数値等に限定されるものではない。
また、ワークWの両面にレンズを形成する場合、実施の形態の説明ではワークWの下側表面にレンズを形成した後、ワークWをC軸を中心に180°回転させた(ワークWの上側表面と下側表面とを逆にさせた)例を説明したが、ワークWの下側表面にレンズを形成した後、ワークWを図4(A)に示すB軸旋回テーブル20bと回転工具Tとの間(距離DHにおける空間の部分)に移動させてワークWの上側表面にレンズを形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタの製造方法に用いる加工装置の例を説明する図である。
【図2】本発明のマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタの製造方法に用いる加工装置の例を説明する図である。
【図3】本発明のマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタの製造方法に用いる加工装置の例を説明する図である。
【図4】回転工具TをワークWとの配置位置と、製造されたマイクロレンズアレイの例を説明する図である。
【図5】各マイクロレンズを凹形状に形成する方法を説明する図である。
【図6】各マイクロレンズを凸形状に形成する方法を説明する図である。
【図7】従来のマイクロレンズアレイの製造方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ベッド
10 駆動手段
20 B軸旋回手段
20b B軸旋回テーブル
30 Y軸移動手段
40 C軸駆動手段
50 Z軸移動手段
60 X軸移動手段
W ワーク(ベース部材)
T 回転工具
S 加工点(接触点)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状のベース部材の表面に、複数のレンズが形成されたマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタの製造方法であって、
直交するX軸とZ軸を含むXZ平面に平行となるようにベース部材を保持し、
ベース部材と、XZ平面に平行な回転軸を中心として回転する回転工具とを、相対的にXZ平面に対して平行に移動させ、
XZ平面に平行なベース部材の表面と、回転工具とを、相対的にXZ平面に垂直な方向に沿って近づけて接触させ、
回転工具とベース部材との接触点を通るとともにXZ平面に垂直なB軸を中心として、ベース部材と回転工具との少なくとも一方を、XZ平面において少なくとも180°旋回させて、個々のレンズまたはレンズ型を形成する、
ことを特徴とするマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタの製造方法であって、
回転工具の回転軸に対して垂直方向から見た場合、ベース部材に接触させる回転工具の外周面の形状はベース部材に向かって凸状の曲面に形成されており、当該回転工具を用いて凹状の個々のレンズまたはレンズ型を形成する、
あるいは、回転工具の回転軸に対して垂直方向から見た場合、ベース部材に接触させる回転工具の外周面の形状はベース部材に向かって凹状の曲面に形成されており、当該回転工具を用いて凸状の個々のレンズまたはレンズ型を形成する、
ことを特徴とするマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズアレイ型マスタの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−84909(P2006−84909A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270928(P2004−270928)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【Fターム(参考)】