説明

マイクロ波処理装置

【課題】被加熱物にマイクロ波を照射する際、マイクロ波が強く照射される指向性を制御して、高い加熱効率と加熱の仕上がり具合の向上を実現する。
【解決手段】発振部1a、1c、電力分配部2a、2c、増幅部4a〜4d、被加熱物9を収納する加熱室8、加熱室8の底壁面に配置されマイクロ波を放射する給電部5a〜5d、マイクロ波伝播路に挿入した位相可変部3a〜3dを備え、給電部5a〜5dより放射されるマイクロ波の位相差および発振周波数を最適制御することにより、様々な被加熱物9に対して反射電力を最小に抑制し、指向性を被加熱物9に向け操作した高効率な加熱を実現させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を用いて構成したマイクロ波発生部を備えたマイクロ波処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、マイクロ波発生装置として一般的に用いられるマグネトロンに代えて、半導体素子を用いたマイクロ波発生装置が提案されてきた。半導体素子を用いたマイクロ波発生装置によれば、小型でかつ安価な構成で、マイクロ波の周波数を容易に調整することができる。このように、半導体素子を用いたマイクロ波発生装置を備えるマイクロ波加熱装置が、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1のマイクロ波加熱装置においては、所定の周波数帯域でマイクロ波の周波数が掃引され、反射電力が最小値を示すときのマイクロ波の周波数が記憶される。そして、記憶された周波数のマイクロ波が加熱室内のアンテナから放射され、対象物が加熱される。これにより、電力変換効率が向上する。
【0004】
また、位相器を備えたものとして、半導体発振部と、半導体発振部の出力を複数に分割する分配部と、分配された出力をそれぞれ増幅する複数の増幅部と、増幅部の出力を合成する合成部とを有し、分配部と増幅部との間に位相器を設けたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
そして、位相器は、ダイオードのオンオフ特性により、マイクロ波の通過線路長を切り替える構成としている。また、合成部は90度および180度ハイブリッドを用いることで合成部の出力を2つにすることができ、位相器を制御することで2出力の電力比率を変化させたり、2出力間の位相を同相、あるいは逆相にしたりできるとしている。
【0006】
また、複数個のマイクロ波発振器を基準信号に所定位相関係で同期させたものがある(例えば、特許文献3参照)。そして、位相器の位相量を時間的に変化させて、均一加熱を計ることができ、被加熱物近傍に設けた感温体の検出温度が、最高の値をとるように位相器を動作させることで、高効率な加熱動作を行なえるとしている。
【特許文献1】特開昭56−096486号公報
【特許文献2】特開昭56−132793号公報
【特許文献3】特開昭55−010777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の方法では、加熱室内に放射されるマイクロ波が、常に同じ場所同じ位相から放射されるため、被加熱物を加熱する際に被加熱物の特定の場所に、常にマイクロ波が強く照射され、逆に別の部位では常にマイクロ波の照射が不足し、被加熱物全体としてみると、加熱のムラが強く現れるため、被加熱物を均一に仕上げることができないという課題がある。
【0008】
さらに、位相器を備えたものにおいては、合成部の2つの出力から放射されるマイクロ波は、位相器によって位相を変化させることで、2つの放射アンテナからの放射電力比率や位相差を、任意にかつ瞬時に変化させることは可能だけれども、その放射によってマイクロ波が供給される、加熱室内に収納されたさまざまな形状・種類・量・設置位置の異なる被加熱物を、所望の状態に加熱することは難しい課題を有していた。
【0009】
また、位相量を変化させるものにおいては、被加熱物の量や置き場所などの条件に関係なく位相を動かしても、十分な効果は得られず、感温体の検出温度を最高の値にする位相器の制御手段については具体的な記載が無く、効果を得ることが難しい課題を有していた。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、様々な形状・種類・量・設置位置の異なる被加熱物に対しても電力変換効率を向上させることができ、所望の状態に加熱するマイクロ波処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明のマイクロ波処理装置は、被加熱物を収容する加熱室と、発振部と、前記発振部の出力を複数に分配して出力する電力分配部と、前記電力分配部の少なくともひとつの出力位相を可変する位相可変部と、前記電力分配部の出力および/または前記位相可変部の出力をそれぞれ電力増幅する複数の電力増幅部と、前記電力増幅部の出力を前記加熱室に供給する複数の給電部と、前記発振部の発振周波数と前記位相可変部の出力位相と前記電力増幅部を制御する制御部とを備え、放射するマイクロ波の励振電界または、励振磁界の方向を一致させた前記給電部2つの組合せを複数設ける構成としたものである。
【0012】
これによって、給電部組合せを構成する2つの給電部の位相差を制御して、放射されるマイクロ波の合成による電界の強弱分布を操作することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のマイクロ波処理装置は、複数の給電部から照射されるマイクロ波を合成することで加熱室内での電界強度分布を操作できるので、さまざまな形状・種類・量・設置位置の異なる被加熱物を効率よく所望の状態に加熱するマイクロ波処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
第1の発明は、被加熱物を収容する加熱室と、発振部と、発振部の出力を複数に分配して出力する電力分配部と、電力分配部の少なくともひとつの出力位相を可変する位相可変部と、電力分配部および/または位相可変部の出力をそれぞれ電力増幅する複数の電力増幅部と、電力増幅部の出力を加熱室に供給する複数の給電部と、発振部の発振周波数と位相可変部の位相量と電力増幅部を制御する制御部とを有し、加熱室を構成する1つの壁面に給電部を3つ以上設け、放射するマイクロ波の励振電界または、励振磁界の方向を一致させた給電部2つの組合せを複数設け、給電部組合せの2つの給電部間を結ぶ複数の線が、一直線上に並ばないよう前記給電部を配置する構成とすることにより、複数の給電部から照射されるマイクロ波の合成によって生じる電界分布を2次元方向に操作でき、形状や種類・設置位置が異なる被加熱物に対して効率よくかつ所望の状態に被加熱物を加熱することができる。
【0015】
第2の発明は、特に第1の発明の給電部組合せを構成する2つの給電部の内、少なくとも1つの給電部が、異なる給電部組合せの1つの給電部を兼ねる構成とすることにより、より少ない給電部で広範囲の電界分布を操作でき加熱室が狭い機器でも形状や種類・設置位置が異なる被加熱物に対して効率よくかつ所望の状態に被加熱物を加熱することができる。
【0016】
第3の発明は、特に第1または第2の発明の被加熱物の設置位置を検知する位置検知手段を備え、給電部組合せを構成する2つの給電部間の位相差を制御して、給電部組合せか
ら、位置検知手段で検知した被加熱物の設置位置に向かう指向性のマイクロ波を放射する構成とすることにより、加熱室の載置台に載置された被加熱物に向かって、合成したマイクロ波電界の強い部分を向けることができるので、効率よくマイクロ波を被加熱物に照射・吸収させるマイクロ波処理装置を実現することができる。
【0017】
第4の発明は、特に第1または第3の発明の給電部組合せを構成する2つの給電部に、同じ周波数で略同等な電力のマイクロ波を供給する構成とすることにより、給電部組合せ間でのマイクロ波相互干渉を確実に行なえ、電界分布の操作の再現性を高めることができ、形状や種類・設置位置が異なる被加熱物に対して効率よくかつ所望の状態に被加熱物を加熱することができる。
【0018】
第5の発明は、特に第1から3のいずれか1つの発明の給電部組合せを構成する2つの給電部間の位相差を複数の給電部組合せ間で関連して制御する構成とすることにより、複数の合成マイクロ波を重ね合わせることで、より細かな電界分布操作ができ、形状や種類・設置位置が異なる被加熱物に対して効率よくかつ所望の状態に被加熱物を加熱することができる。
【0019】
第6の発明は、特に第1から3のいずれか1つの発明の位置検知手段の検知結果に応じて、使用する前記給電部組合せを選択する構成とすることにより、被加熱物の配置に合わせた合成マイクロ波による電界分布操作ができ、形状や種類・設置位置が異なる被加熱物に対して効率よくかつ所望の状態に被加熱物を加熱することができる。
【0020】
第7の発明は、特に第1の発明の給電部から増幅部方向に反射するマイクロ波電力を検出する電力検出部を有し、制御部は、給電部から増幅部方向に反射するマイクロ波電力が最小となる周波数および/または位相値を検出する検出動作を行い、給電部組合せを構成する2つの給電部に供給するマイクロ波の周波数と位相値を決める構成とすることにより、電部組合せを構成する2つの前記給電部での反射電力を最小に抑えることができ、効率のよいマイクロ波処理装置を実現することができる。
【0021】
第8の発明は、特に第7の発明の給電部組合せを構成する2つの給電部の一方に、検出動作で検出した周波数および位相値のマイクロ波を供給し、他方に同じ周波数で、位置検知手段の検知結果に応じた、位相差のマイクロ波を供給する構成とすることにより、電部組合せを構成する2つの前記給電部での反射電力を抑え、さらに効率よくマイクロ波を被加熱物に照射・吸収させることで効率のよいマイクロ波処理装置を実現することができる。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施形態における、マイクロ波処理装置の構成図である。
【0024】
図1において、マイクロ波発生部は、半導体素子を用いて構成した発振部1a、1c、発振部1a、1cの出力を2分配する電力分配部2a、2c、電力分配部2a、2cそれぞれの出力を増幅する半導体素子を用いて構成した増幅部4a〜4d、増幅部4a〜4dによって増幅されたマイクロ波出力を後述する加熱室8内に放射する給電部5a〜5d、および電力分配部2a、2cと増幅部4a〜4dとを接続する、マイクロ波伝播路に挿入され入出力に任意の位相差を発生させる位相可変部3a〜3d、増幅部4a〜4dと給電部5a〜5dとを接続するマイクロ波伝播路に挿入され、給電部5a〜5dから増幅部4a〜4dの方向に反射するマイクロ波反射電力を検出する電力検出部6a〜6d、電力検
出部6a〜6dによって検出される反射電力に応じて、発振部1a、1cの発振周波数と位相可変部3a〜3dの位相量を制御する制御部7とで構成している。
【0025】
また、本発明のマイクロ波処理装置は、被加熱物9を収納する略直方体構造からなる加熱室8を有し、加熱室8は金属材料からなる壁面、および被加熱物9を収納するために開閉する開閉扉(図示していない)と、被加熱物9を載置する載置台10にて、供給されるマイクロ波を内部に閉じ込めるように構成している。そして、発振部1a、1cで発生したマイクロ波出力が伝播され、加熱室8内に放射供給する4ヶ所の給電部5a〜5dは、全て加熱室8を構成する壁面の1つである底壁面に配置されている。
【0026】
増幅部4a〜4dは、低誘電損失材料から構成し誘電体基板の片面に形成した導電体パターンにて回路を構成し、各増幅部4a〜4dの増幅素子である半導体素子を良好に動作させるべく、各半導体素子の入力側と出力側とに、それぞれ整合回路を配している。電力分配部2a、2cは、例えばウィルキンソン型分配器のような出力間に位相差を生じない同相分配器であってもよいし、またブランチライン型やラットレース型のような出力間に位相差を生じる分配器であっても構わない。
【0027】
この電力分配部2a、2cによって、各々の出力には発振部1a、1cから入力されたマイクロ波電力の略1/2の電力が伝播される。位相可変部3a〜3dは、印加電圧に応じて容量が変化する容量可変素子を用いて構成し、各々の位相可変範囲は、0度から略180度の範囲としている。
【0028】
これによって、位相可変部3a〜3dより出力されるマイクロ波電力の位相差は、0度から±180度の範囲を制御することができる。電力検出部6a〜6dは、給電部5a〜5dから増幅部4a〜4dの方向に反射するマイクロ波、いわゆる反射波の電力を抽出するものであり、電力結合度を例えば約40dBとし、反射電力の約1/10000の電力量を抽出する。この電力信号はそれぞれ、検波ダイオード(図示していない)で整流化し、コンデンサ(図示していない)で平滑処理し、その出力信号を制御部7に入力させている。
【0029】
制御部7は、使用者が直接入力する被加熱物9の加熱条件、あるいは位置検知手段(図示していない)から得られる被加熱物9の設置位置情報や電力検出部6a〜6dの検出情報に基づいて、マイクロ波発生部の構成要素である発振部1a、1cと増幅部4a〜4dのそれぞれに供給する駆動電力の制御や位相可変部3a〜3dに供給する電圧を制御し、加熱室8内に収納された被加熱物9を最適に加熱する。
【0030】
以上のように構成されたマイクロ波処理装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0031】
まず、被加熱物9を加熱室8に収納し、その加熱条件を操作部(図示していない)から入力して、加熱開始キーを押し加熱開始信号を出力する。加熱開始信号を受けた制御部7の制御出力信号により、マイクロ波発生部が動作を開始する。制御部7は、駆動電源(図示していない)を動作させて、発振部1a、1cに電力を供給する。
【0032】
この時、発振部1a、1cの初期の発振周波数は、例えば2400MHzに設定する電圧信号を供給し、発振が開始する。発振部1a、1cを動作させると、その出力は電力分配部2a、2cにて各々略1/2分配され、4つのマイクロ波電力信号となる。以降、駆動電源を制御して、増幅部4a〜4dを動作させる。そして、それぞれのマイクロ波電力信号は、並列動作する増幅部4a〜4d、電力検出部6a〜6dを経て、給電部5a〜5dにそれぞれ出力され、加熱室8内に放射される。
【0033】
加熱室8内に供給されるマイクロ波電力が被加熱物に100%吸収されると、加熱室8からの反射電力は0Wになるが、被加熱物の種類・形状・量・設置位置により加熱室8のインピーダンスが変わり、マイクロ波電力供給側との整合ずれなどによって、給電部5a〜5dから増幅部4a〜4dの方向に伝播するマイクロ波反射電力が生じる。電力検出器6a〜6dは、このマイクロ波反射電力を検出し、その反射電力量に比例した検出信号を制御部7に送る。
【0034】
制御部7は、発振部1a、1cと位相可変部3a〜3dを制御して、電力検出器6a〜6dで検出することで、反射電力を最小化する発振周波数および位相値を見極める検出動作ができる。制御部7は、発振部1a、1cの発振周波数を例えば2400MHzから1MHzピッチで、周波数可変範囲の上限である2500MHzに到達するまで動作させ、同時に、給電部5a〜5dから増幅部4a〜4dの方向に反射するマイクロ波電力を電力検出器6a〜6dにて検出することで、反射電力を最小とする発振周波数情報を得ることができる。同様に、給電部組合せ間の相対的な位相差を位相可変部3a〜3dの制御により調整し、電力検出器6a〜6dで検出する反射電力を最小とする位相制御条件を見極めることができる。
【0035】
しかし、載置台10などに電力が吸収されて、反射電力が小さくなる場合もある。様々な形状・種類・量・設置位置の異なる被加熱物9で加熱効率を高めるには、反射電力の最小化だけでなく、被加熱物9に吸収されるマイクロ波の放射が必要となる。給電部5a、5bは、励振電界または励振磁界の方向を一致させた組合せとなっていて、相互干渉により、相互の位相差に応じた指向性のマイクロ波を放射する。
【0036】
指向性は、給電部5a、5bそれぞれから放射されるマイクロ波の強い位置が重なった方向となる。給電部5a、5bから放射されるマイクロ波の位相差を操作することで、2つ(2ヶ所)の給電部5a、5bを結ぶ線上方向に、強いマイクロ波の重なる位置をずらすことができる。強いマイクロ波の重なる位置は、2ヶ所の給電部5a、5bから放射するマイクロ波の周波数が異なると変動するので、発振部1aから同じ周波数のマイクロ波を供給する。
【0037】
また、2つの給電部5a、5bから放射するマイクロ波の電力が違うと、指向性がずれるので、ほぼ同等の電力を供給して指向性の再現性を高める。給電部5c、5dの組合せも同様に、励振電界または励振磁界の方向を一致させた組合せとなっていて、相互の位相差に応じた指向性のマイクロ波を放射する。給電部5a、5bを結ぶ線と、給電部5c、5dとを結ぶ線を一直線上から外しておく(給電部5a、5b、5c、5dを一直線上に配置しない)ことにより、給電部5a、5bと、給電部5c、5dとの組合せそれぞれの位相差を関連させて操作して、それぞれの組合せから放射するマイクロ波を重ね合わせることで、2次元的な指向性の制御が可能となる。位置検知手段により検知した被加熱物9の設置位置にマイクロ波の指向性を合わせる事により、放射電力を被加熱物9に確実に吸収させることで、効率よく加熱を行なうことができる。
【0038】
このように検出動作で得た反射電力を最小とする、発振周波数情報および位相制御条件と、被加熱物9の設置位置に応じた位相差制御に基づいて、被加熱物9を含む加熱室8内の特性に合わせて動作をすることで、加熱室8に放射したマイクロ波を効率的に被加熱物9に吸収させることができ、様々な形状・種類・量・設置位置の異なる被加熱物9に対しても反射電力が小さく、思惑通りの設定条件で高効率な加熱をすることができ、増幅部4a〜4dに備えられた半導体素子が、反射電力によって過剰に発熱することも防止でき、熱的な破壊を回避することができる。
【0039】
次に、給電部の配置とマイクロ波電力の指向性操作の関係について説明する。
【0040】
図2は、本発明の第2の実施形態におけるマイクロ波処理装置の斜視図である。
【0041】
図2において、加熱室8の載置台10下側の底壁面に、3ヶ所に設けられた3つの給電部5a〜5cが、設置されている。給電部5aと給電部5bとの放射マイクロ波電界の励振方向11が、同じ向きとなるよう設置され、給電部5aと給電部5bの間の位相差に応じ、2つの給電部5a、5bを結ぶ線上方向に、操作可能な指向性のマイクロ波を放射する。
【0042】
つまり給電部5a、5bの組合せを選択して、給電部5aと給電部5bの間の位相差を操作することにより、載置台10の前後方向に配置された被加熱物9を効果的に加熱できる。給電部5bと給電部5cの放射マイクロ波電界の励振方向11も、同じ向きとなるよう設置されているので、同様に左右方向に放射するマイクロ波の指向性を操作できる。給電部5bは、両方の給電部組合せを兼ねた構成となっていて、3つの給電部5a〜5cにより、前後左右の2次元方向に、マイクロ波を放射できる。
【0043】
このように動作することで、強いマイクロ波分布の操作ができ、加熱室8に放射したマイクロ波を効率的に被加熱物9に吸収させることができ、様々な形状・種類・量・設置位置の異なる被加熱物9を高効率で最適に加熱することができる。
【0044】
本実施の形態では3、4ヶ所給電の構成を示しているが、本実施の形態に拘束されるものではなく、給電部組合せを増やしたりした場合も同様にそれぞれの位相差の操作に見合った指向性のマイクロ波分布を加熱室8内に発生させることができ、複数のマイクロ波分布の重ね合せにより、所望の加熱ができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明にかかるマイクロ波処理装置は、複数の給電部を有し、放射するマイクロ波の指向性を操作する装置を提供できるので、電子レンジで代表されるような誘電加熱を利用した加熱装置や生ゴミ処理機、あるいは半導体製造装置であるプラズマ電源のマイクロ波電源などの用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態1におけるマイクロ波処理装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態2におけるマイクロ波処理装置の斜視図
【符号の説明】
【0047】
1a、1c 発振部
2a、2c 電力分配部
3a〜3d 位相可変部
4a〜4d 増幅部
5a〜5d 給電部
6a〜6d 電力検出部
7 制御部
8 加熱室
9 被加熱物
10 載置台
11 励振方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容する加熱室と、発振部と、前記発振部の出力を複数に分配して出力する電力分配部と、前記電力分配部の少なくともひとつの出力位相を可変する位相可変部と、前記電力分配部および/または前記位相可変部の出力をそれぞれ電力増幅する複数の電力増幅部と、前記電力増幅部の出力を前記加熱室に供給する複数の給電部と、前記発振部の発振周波数と前記位相可変部の位相量と前記電力増幅部を制御する制御部とを有し、前記加熱室を構成する1つの壁面に前記給電部を3つ以上設け、放射するマイクロ波の励振電界または、励振磁界の方向を一致させた前記給電部2つの組合せを複数設け、前記給電部組合せの2つの前記給電部間を結ぶ複数の線が、一直線上に並ばないよう前記給電部を配置する構成としたマイクロ波処理装置。
【請求項2】
給電部組合せを構成する2つの前記給電部の内、少なくとも1つの前記給電部が、異なる前記給電部組合せの1つの前記給電部を兼ねる構成とした請求項1に記載のマイクロ波処理装置。
【請求項3】
被加熱物の設置位置を検知する位置検知手段を備え、給電部組合せを構成する2つの前記給電部間の位相差を制御して、前記給電部組合せから、前記位置検知手段で検知した前記被加熱物の設置位置に向かう指向性のマイクロ波を放射する構成とした請求項1または2に記載のマイクロ波処理装置。
【請求項4】
給電部組合せを構成する2つの給電部に、同じ周波数で略同等な電力のマイクロ波を供給する構成とした請求項1または3に記載のマイクロ波処理装置。
【請求項5】
給電部組合せを構成する2つの給電部間の位相差を複数の前記給電部組合せ間で関連して制御する構成とした請求項1から3のいずれか1項に記載のマイクロ波処理装置。
【請求項6】
位置検知手段の検知結果に応じて、使用する給電部組合せを選択する構成とした請求項1から3のいずれか1項に記載のマイクロ波処理装置。
【請求項7】
給電部から増幅部方向に反射するマイクロ波電力を検出する電力検出部を有し、制御部は、前記給電部から前記増幅部方向に反射するマイクロ波電力が最小となる周波数および/または位相値を検出する検出動作を行い、前記給電部組合せを構成する2つの前記給電部に供給するマイクロ波の周波数と位相値を決める構成とした請求項1に記載のマイクロ波処理装置。
【請求項8】
給電部組合せを構成する2つの前記給電部の一方に、前記給電部から前記増幅部方向に反射するマイクロ波電力が最小となる周波数および/または位相値を検出する検出動作で検出した周波数および位相値のマイクロ波を供給し、他方に同じ周波数で、位置検知手段の検知結果に応じた、位相差のマイクロ波を供給する構成とした請求項7に記載のマイクロ波処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate