マイクロ波可視センサー
【課題】導波管内のマイクロ波の電磁界分布や定在波位置が視覚をもって検出することができるマイクロ波可視センサーを提案すること。
【解決手段】方形導波管構造のアプリケータ34の側面34Eに、管軸に沿って複数の小孔36を設けると共に、前記小孔36の各々の間隔に合わせたアンテナ39を有する複数個の検出部材37を設けた基板38を前記アプリケータ34の側面34Eに固着し、さらに、前記した各検出部材37には前記アンテナ39に発生する起電力によって導通する検波ダイオード40とこの検波ダイオード40の導通により点灯するLED41とを備えたマイクロ波可視センサー50となっている。
【解決手段】方形導波管構造のアプリケータ34の側面34Eに、管軸に沿って複数の小孔36を設けると共に、前記小孔36の各々の間隔に合わせたアンテナ39を有する複数個の検出部材37を設けた基板38を前記アプリケータ34の側面34Eに固着し、さらに、前記した各検出部材37には前記アンテナ39に発生する起電力によって導通する検波ダイオード40とこの検波ダイオード40の導通により点灯するLED41とを備えたマイクロ波可視センサー50となっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波管内を伝播するマイクロ波の電界強度分布やマイクロ波定在波の発生位置などを視覚を通して検出することができるマイクロ波可視センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
方形導波管式アプリケータを備え、このアプリケータ内で被処理物にマイクロ波を照射し、被処理物を加熱処理するマイクロ波装置が広く知られている。
図8は、従来例として示したマイクロ波加熱の試験装置を示す簡略図、図9は同試験装置の部分的な拡大断面図である。
この試験装置は、マグネトロン10が高周波結合器11に搭載されており、マグネトロン10から出力されたマイクロ波電力(本出願では、単に「マイクロ波」という)が高周波結合器11に結合し、導波管回路を伝播する。
【0003】
すなわち、マイクロ波は、高周波結合器11、パワーモニタ12、スタブチューナー13、アプリケータ14、可動プランジャ15のプランジャ可動部15aに至り、このプランジャ可動部15aで反射される。
詳しくは、アプリケータ14とプランジャ可動部15aで反射されたマイクロ波がマグネトロン10に向かう。
したがって、パワーモニタ12の反射電力値をモニタしながらスタブチューナー13を調整して、スタブチューナー13で反射波と逆位相の波を作り打ち消すと、パワーモニタ12の反射電力値がゼロになる。
【0004】
また、方形導波管で構成されたアプリケータ14には、上面(磁界面H)に試験管16の挿入口14aが設けられており、試料17を入れた細長の試験管16をその挿入口14aから挿入し、アプリケータ14内に試料17を配設するようになっている。
なお、試験管16には、挿入長さを調整するための調整部材18が設けられている。
【0005】
プランジャ可動部15はプランジャ可動部15aを調整し、アプリケータ14内に発生するマイクロ波の定在波の位置を移動調整する。
具体的には、アプリケータ14内には、マグネトロン10から出力されたマイクロ波の進行波とプランジャ可動部15aで反射される反射波とが干渉して大きな定在波が発生するので、この定在波による大きな電界を試料17に作用させるように調整する。
【0006】
上記した試験装置は、試料17をマイクロ波加熱し、試料17の化学反応や化学変化の有無などの試験を行うものであるが、ただ、この試験装置の場合、定在波の発生位置が分からないとい言う問題がある。
すなわち、プランジャ可動部15aを調整して定在波を試料17に合わせるが、定在波の発生位置が分からないため、プランジャ可動部15aの調整を経験に基づいて大まかに行なうため、定在波が試料17の位置に発生している否かが正確には分からない。
【0007】
一方、マイクロ波の電磁界分布を検出する検出装置が本出願人によって既に提案されている。
この検出装置は、図10に示すように、ユニット化した検出部21A、21Bを基板22の面上に多数個配列した構成となっている。
なお、基板22は、基板自体がマイクロ波によって加熱されないように誘電体の低いプリント基板となっている。
【0008】
検出部21A、21Bは、図11に詳細に示してある。
すなわち、検出部21Aは、U字形とした長形アンテナ23aと直線アンテナ23bとによって検波ダイオード24とLED25とを直列接続した構成となっている。(図12参照)
なお、検波ダイオード24は、マイクロ波周波数f=2450MHz程度の高周波電圧がアンテナに発生したとき導通する検波ダイオードであり、また、LED25は、緑色光の発光ダイオードとなっている。
【0009】
検出部21Bは、検波ダイオード26とLED27とを2つの直線(短径)アンテナ28a、28bによって直列接続した構成となっている。(図13参照)
なお、検波ダイオード26は上記した検波ダイオード24と同様のものであるが、LED27は、赤色光の発光ダイオードとなっている。
【0010】
上記した検出部21A、21Bは、各アンテナ23a、23b、28a、28bをプリント形成した基板22の面上に検波ダイオード24、26、LED25、27を面上半田して取り付けてある。
このように構成した検出部21A、21Bは、アンテナが長いほど検出感度が高く、検出部21Bに対し検出部21Aの検出感度が高くなっている。
【0011】
上記した検出装置は、マイコロ波を照射すると、検出部21A、21B各々のアンテナによってマイクロ波が受電されるが、マイクロ波の電磁界が強い部所では、検出部21A、21Bが共に検出動作する。
つまり、マイクロ波磁界によって各アンテナに誘起する起電力によって検出部21A、21Bの検波ダイオード24、26が共に導通し、緑色LED25と赤色LED27とが発光する。
【0012】
マイクロ波電磁界が弱い部所では、検出感度の低い検出部21Bが非検出状態となるため、検出部21Aのみが検出動作し、緑色LED25のみが発光する。
このように、緑色と赤色の発光色の多い部所と緑色の発光色が多い部所とでマイクロ波の強弱部所を視覚を通して検出することができる。
【0013】
【特許文献1】特開2006―322869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
解決しようとする問題点は、上記したように、導波管内に発生するマイクロ波の定在波位置や導波管内の電磁界分布が視覚を通して検出できないために、マイクロ波応用装置において、マイクロ波電界を最良の形態で被処理物に与えることができないことである。
そこで、本発明では、マイクロ波の電磁界分布を検出する上記の検出装置を応用して、導波管内の定在波や電磁界分布などを視覚をもって検出することができるマイクロ波可視センサーを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した目的を達成するため、本発明では第1の発明として、マイクロ波を受けるアンテナと、前記アンテナによって受けたマイクロ波を検波するダイオードと、前記ダイオードの検波にしたがって給電されて点灯する光源とから形成した検出部材を設け、前記検出部材のアンテナを導波管に形成した小孔に対応させて配設させるようにして当該検出部材を導波管に備え、前記検出部材の光源の点灯を視覚によって確認し、導波管内に存在するマイクロ波を検出する構成としたことを特徴とするマイクロ波可視センサーを提案する。
【0016】
第2の発明としては、基板の裏面には、マイクロ波を受けるアンテナを配設し、前記基板の表面には、スルーホールを介して前記アンテナと接続し、前記アンテナによって受けたマイクロ波を検波するダイオードと、このダイオードの検波にしたがって給電されて点灯する光源とを配設して形成した検出部材を設け、前記検出部材のアンテナを導波管に形成した小孔に対応させて配設させるようにして当該検出部材の基板を導波管外面に固着し、前記検出部材の光源の点灯を視覚によって確認し、導波管内に存在するマイクロ波を検出する構成としたことを特徴とするマイクロ波可視センサーを提案する。
【0017】
第3の発明としては、基板の裏面には、マイクロ波を受けるアンテナを配設し、前記基板の表面には、スルーホールを介して前記アンテナと接続し、前記アンテナによって受けたマイクロ波を検波するダイオードと、このダイオードの検波にしたがって給電されて点灯する光源とを配設して形成した検出部材を、長形の基板の長手方向に沿って複数個配列し、前記した各々の検出部材のアンテナを導波管の管軸方向に沿って形成した複数の小孔に配設させるようにして前記基板を導波管外面に固着し、前記した各検出部材の光源の点灯状態を視覚によって確認し、導波管内のマイクロ波電界強度分布またはマイクロ波定在波位置を検出する構成としたことを特徴とするマイクロ波可視センサーを提案する。
【発明の効果】
【0018】
第1、第2の発明の可視センサーによれば、検出部材のアンテナが導波管の小孔を介してマイクロ波を受け、このアンテナにマイクロ波磁界による起電力が発生する。
したがって、所定電圧以上の起電力がアンテナに発生したとき、検波ダイオードが導通して光源が点灯する。
具体的には、検出部材が所定感度で点灯するので、導波管の所定部所内のマイクロ波電磁界が所定値以上の強さであるときに検出部材の光源が点灯する。
これより、検出部材の光源が消灯しているか、点灯したかを確認することによって導波管内の電磁界分布を視覚をもって知ることができる。
【0019】
第3の発明では、導波管には管軸に沿って形成した複数個の小孔を設け、さらに、導波管の前記小孔各々にアンテナを配設させるようにした複数個の検出部材を導波管外面に配列させた構成としてある。
したがって、導波管の管軸方向に並んだ検出部材の光源が導波管内のマイクロ波電磁界分布または定在波に対応した点灯状態となる。
すなわち、マイクロ波電磁界の強い部所の検出部材は光源が点灯し、マイクロ波電磁界の弱い部所の検出部材は光源が消灯したままとなるから、検出部材の点灯状態よりマイクロ波の電磁界分布を視認することができ、さらに、定在波の位置を視覚をもって検出することができる。
【0020】
一方、第3の発明によれば、可動プランジヤなどを動作させて導波管内の定在波位置を移動させると、導波管の管軸方向に並んだ複数の検出部材の光源が、定在波の移動にしたがって順次点灯する。
つまり、定在波の移動にしたがって点灯する光源が順次切り替わるので、定在波の位置調整が検出部材の光源の点灯を確認しながら行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について図面に沿って説明する。
図1は、一実施形態として示したマイクロ波可視センサー50を装備したマイクロ波加熱の試験装置の簡略図である。
図示の如く、この試験装置は、マグネトロン30、高周波結合器31、パワーモニタ32、スタブチューナー33、アプリケータ34、可動プランジャ35から構成してあり、マイクロ波可視センサー50を備えたアプリケータ34以外は図8に従来例として示した試験装置に比べ同構成となっている。
【0022】
アプリケータ34は、図2、図3に示した如く、方形導波管であり、その上面(磁界H面)34Hには、従来例同様の試験管17を挿入する挿入孔34aが設けてある。
なお、試験管17は、従来例で説明したように、マイクロ波加熱による化学反応や化学変化などを試験する試料が入れてある。
【0023】
そして、アプリケータ34の側面(電界E面)34Eには、マイクロ波可視センサー50が備えてある。
このマイクロ波可視センサー50は、アプリケータ34の側面34Eに、管軸方向に沿って2列に形成した小孔36と、複数個の検出部材37を設けてその側面34Eに面張りした長径の基板38とより構成してある。
なお、このように固着する基板38は、図4に部分拡大図として詳細に示すように、各々の検出部材37のアンテナ39を各々の小孔36に対向させるように面張りしてある。
また、基板38をアプリケータ34に固着する手段としては、ねじ止め、接着剤を使用した貼着などを用いる。
【0024】
複数個の検出部材37は、アプリケータ34の小孔位置に合わせした位置間として長形の基板38に設けたもので、個々の検出部材37については、図10に示した従来の検出部21Aと同様に構成してある。
すなわち、検出部材37は、マイクロ波を受ける長形のアンテナ39と、このアンテナ39に発生する起電力を受けて導通する検波ダイオード40と、検波ダイオード40の導通下に点灯するLED41と、検波ダイオード40とLED41とを接続する回路線42とで構成してある。
【0025】
そして、この検出部材37の具体的な構成としては、図4、図5に示すように、
基板38の表面に面上半田して検波ダイオード40とLED41を実装し、また、基板38の面上にプリント配線した回路線42によってこれら検波ダイオード40とLED41とを接続し、さらに、検波ダイオード40とLED41は基板38の裏面にプリント配線したアンテナ39に対しスルーホール43a、43bを介して電気接続して、図6に示すところの回路接続となっている。
【0026】
上記の試験装置は、マグネトロン30から出力されたマイクロ波の進行波と可動プランジャ35のプランジャ可動部35aで反射された反射波とが干渉し、アプリケータ34内には大きな定在波が発生する。
そして、この定在波よる大きな電界によって試料17を加熱し試験する。
【0027】
したがって、可動プランジャ35を操作してプランジャ可動部35aを移動させ、定在波の発生位置を調整し、定在波を試料17の位置で正しく発生させる。
このように、可動プランジャ35を操作して定在波の発生位置を調整すると、定在波の移動に伴って整列した各検出部材37のLED41の点灯が順次切り替わる。
具体的には、図2において、右から左に、または、この逆に検出部材37の点灯が順次切り代わるから、検出部材37の点灯状態(LED41)を見ながら可動プランジャ35を操作し、試料17に最も強い電界が作用する定在波位置に調整することができる。
【0028】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、パワーモニタを使用しなくても定在波の存在がわかるので、導波管のチューナの整合などに使用することができる。
さらに、試料17に合わせたアプリケータ34の側面に1つの小孔を設け、この小孔に一個の検出部材37を配設する構成とすると、可動プランジャ35の操作にしたがってLED41の発光強度が変わるので、マイクロ波の電界強度を視覚をもって確認することができる。
【0029】
一方、本発明の実施に際しては、アンテナ39を検波ダイオード40、LED41、回路線42と共に基板38の表面に設けてもよい。
このように構成した場合、感度が多少低下するが検出部材としては充分に作用する。
他方、検出部材37は必ずしも2列に配列しなくともよく、一列に直線的に配列するマイクロ波可視センサーとすることもでき、また、上記のように構成したマイクロ波可視センサー50は検出部材37の数を任意に増減することができる。
さらに、アプリケータ34の上面34Hに複数の小孔を形成し、複数個の検出部材37を上面34Hに配列させても同様のマイクロ波可視センサーを構成することができる。
【0030】
図7は他の実施形態として示したマイクロ波可視センサーの部分図である。
本実施形態では、アプリケータ34に形成した小孔36aに、LED44の2本の接続端子44a、44bを挿入し、さらに、これら接続端子44a、44bを検波ダイオード45で接続して構成したマイクロ波可視センサーとしてある。
このように構成したマイクロ波可視センサーは、接続端子44a、44bがマイクロ波を受けるから、これらの接続端子に発生した起電力によって検波ダイオード45が導通してLED44が点灯する。
なお、図7は1つの小孔36aに設けたマイクロ波可視センサーを示したが、複数の小孔36aを形成して複数のLED44を設けても同様に備えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
マイクロ波の電界分布や定在波位置を視覚をもって検出することが望まれる、マイクロ波加熱の試験装置、マイクロ波を利用した情報記録ディスクの記録膜破壊装置、マイクロ波加熱の糸(フィラメント)の延伸装置などのマイクロ波応用装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】一実施形態のマイクロ波可視センサーを装備したマイクロ波加熱の試験装置を示す簡略図である。
【図2】上記した試験装置に備えるアプリケータと、このアプリケータに備えたマイクロ波可視センサーとを示す拡大部分図である。
【図3】上記したアプリケータとマイクロ波可視センサーとの分解斜視図である。
【図4】上記したマイクロ波可視センサーの一部分を拡大して示す表面図である。
【図5】図4同様の裏面図である。
【図6】上記したマイクロ波可視センサーに備える検出部材の回路図である。
【図7】他の実施形態のマイクロ波可視センサーを示す部分図である。
【図8】従来例のマイクロ波加熱の試験装置を示す簡略図である。
【図9】図8に示す従来の試験装置の部分的な拡大断面図である。
【図10】マイクロ波の電界分布を検出する従来の検出装置を示す正面図である。
【図11】図10の従来の検出装置の一部を拡大して示した部分図である。
【図12】図10の従来の検出装置が備える検出部のうち、長径のアンテナを有する検出部の回路図である。
【図13】図10の従来の検出装置が備える検出部のうち、短径のアンテナを有する検出部の回路図である。
【符号の説明】
【0033】
34 アプリケータ
34H 上面(磁界面)
34E 側面(電界面)
36 小孔
37 検出部材
38 基板
39 アンテナ
40 検波ダイオード
41 LED
42 回路線
43a、43b スルーホール
50 マイクロ波可視センサー
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波管内を伝播するマイクロ波の電界強度分布やマイクロ波定在波の発生位置などを視覚を通して検出することができるマイクロ波可視センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
方形導波管式アプリケータを備え、このアプリケータ内で被処理物にマイクロ波を照射し、被処理物を加熱処理するマイクロ波装置が広く知られている。
図8は、従来例として示したマイクロ波加熱の試験装置を示す簡略図、図9は同試験装置の部分的な拡大断面図である。
この試験装置は、マグネトロン10が高周波結合器11に搭載されており、マグネトロン10から出力されたマイクロ波電力(本出願では、単に「マイクロ波」という)が高周波結合器11に結合し、導波管回路を伝播する。
【0003】
すなわち、マイクロ波は、高周波結合器11、パワーモニタ12、スタブチューナー13、アプリケータ14、可動プランジャ15のプランジャ可動部15aに至り、このプランジャ可動部15aで反射される。
詳しくは、アプリケータ14とプランジャ可動部15aで反射されたマイクロ波がマグネトロン10に向かう。
したがって、パワーモニタ12の反射電力値をモニタしながらスタブチューナー13を調整して、スタブチューナー13で反射波と逆位相の波を作り打ち消すと、パワーモニタ12の反射電力値がゼロになる。
【0004】
また、方形導波管で構成されたアプリケータ14には、上面(磁界面H)に試験管16の挿入口14aが設けられており、試料17を入れた細長の試験管16をその挿入口14aから挿入し、アプリケータ14内に試料17を配設するようになっている。
なお、試験管16には、挿入長さを調整するための調整部材18が設けられている。
【0005】
プランジャ可動部15はプランジャ可動部15aを調整し、アプリケータ14内に発生するマイクロ波の定在波の位置を移動調整する。
具体的には、アプリケータ14内には、マグネトロン10から出力されたマイクロ波の進行波とプランジャ可動部15aで反射される反射波とが干渉して大きな定在波が発生するので、この定在波による大きな電界を試料17に作用させるように調整する。
【0006】
上記した試験装置は、試料17をマイクロ波加熱し、試料17の化学反応や化学変化の有無などの試験を行うものであるが、ただ、この試験装置の場合、定在波の発生位置が分からないとい言う問題がある。
すなわち、プランジャ可動部15aを調整して定在波を試料17に合わせるが、定在波の発生位置が分からないため、プランジャ可動部15aの調整を経験に基づいて大まかに行なうため、定在波が試料17の位置に発生している否かが正確には分からない。
【0007】
一方、マイクロ波の電磁界分布を検出する検出装置が本出願人によって既に提案されている。
この検出装置は、図10に示すように、ユニット化した検出部21A、21Bを基板22の面上に多数個配列した構成となっている。
なお、基板22は、基板自体がマイクロ波によって加熱されないように誘電体の低いプリント基板となっている。
【0008】
検出部21A、21Bは、図11に詳細に示してある。
すなわち、検出部21Aは、U字形とした長形アンテナ23aと直線アンテナ23bとによって検波ダイオード24とLED25とを直列接続した構成となっている。(図12参照)
なお、検波ダイオード24は、マイクロ波周波数f=2450MHz程度の高周波電圧がアンテナに発生したとき導通する検波ダイオードであり、また、LED25は、緑色光の発光ダイオードとなっている。
【0009】
検出部21Bは、検波ダイオード26とLED27とを2つの直線(短径)アンテナ28a、28bによって直列接続した構成となっている。(図13参照)
なお、検波ダイオード26は上記した検波ダイオード24と同様のものであるが、LED27は、赤色光の発光ダイオードとなっている。
【0010】
上記した検出部21A、21Bは、各アンテナ23a、23b、28a、28bをプリント形成した基板22の面上に検波ダイオード24、26、LED25、27を面上半田して取り付けてある。
このように構成した検出部21A、21Bは、アンテナが長いほど検出感度が高く、検出部21Bに対し検出部21Aの検出感度が高くなっている。
【0011】
上記した検出装置は、マイコロ波を照射すると、検出部21A、21B各々のアンテナによってマイクロ波が受電されるが、マイクロ波の電磁界が強い部所では、検出部21A、21Bが共に検出動作する。
つまり、マイクロ波磁界によって各アンテナに誘起する起電力によって検出部21A、21Bの検波ダイオード24、26が共に導通し、緑色LED25と赤色LED27とが発光する。
【0012】
マイクロ波電磁界が弱い部所では、検出感度の低い検出部21Bが非検出状態となるため、検出部21Aのみが検出動作し、緑色LED25のみが発光する。
このように、緑色と赤色の発光色の多い部所と緑色の発光色が多い部所とでマイクロ波の強弱部所を視覚を通して検出することができる。
【0013】
【特許文献1】特開2006―322869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
解決しようとする問題点は、上記したように、導波管内に発生するマイクロ波の定在波位置や導波管内の電磁界分布が視覚を通して検出できないために、マイクロ波応用装置において、マイクロ波電界を最良の形態で被処理物に与えることができないことである。
そこで、本発明では、マイクロ波の電磁界分布を検出する上記の検出装置を応用して、導波管内の定在波や電磁界分布などを視覚をもって検出することができるマイクロ波可視センサーを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した目的を達成するため、本発明では第1の発明として、マイクロ波を受けるアンテナと、前記アンテナによって受けたマイクロ波を検波するダイオードと、前記ダイオードの検波にしたがって給電されて点灯する光源とから形成した検出部材を設け、前記検出部材のアンテナを導波管に形成した小孔に対応させて配設させるようにして当該検出部材を導波管に備え、前記検出部材の光源の点灯を視覚によって確認し、導波管内に存在するマイクロ波を検出する構成としたことを特徴とするマイクロ波可視センサーを提案する。
【0016】
第2の発明としては、基板の裏面には、マイクロ波を受けるアンテナを配設し、前記基板の表面には、スルーホールを介して前記アンテナと接続し、前記アンテナによって受けたマイクロ波を検波するダイオードと、このダイオードの検波にしたがって給電されて点灯する光源とを配設して形成した検出部材を設け、前記検出部材のアンテナを導波管に形成した小孔に対応させて配設させるようにして当該検出部材の基板を導波管外面に固着し、前記検出部材の光源の点灯を視覚によって確認し、導波管内に存在するマイクロ波を検出する構成としたことを特徴とするマイクロ波可視センサーを提案する。
【0017】
第3の発明としては、基板の裏面には、マイクロ波を受けるアンテナを配設し、前記基板の表面には、スルーホールを介して前記アンテナと接続し、前記アンテナによって受けたマイクロ波を検波するダイオードと、このダイオードの検波にしたがって給電されて点灯する光源とを配設して形成した検出部材を、長形の基板の長手方向に沿って複数個配列し、前記した各々の検出部材のアンテナを導波管の管軸方向に沿って形成した複数の小孔に配設させるようにして前記基板を導波管外面に固着し、前記した各検出部材の光源の点灯状態を視覚によって確認し、導波管内のマイクロ波電界強度分布またはマイクロ波定在波位置を検出する構成としたことを特徴とするマイクロ波可視センサーを提案する。
【発明の効果】
【0018】
第1、第2の発明の可視センサーによれば、検出部材のアンテナが導波管の小孔を介してマイクロ波を受け、このアンテナにマイクロ波磁界による起電力が発生する。
したがって、所定電圧以上の起電力がアンテナに発生したとき、検波ダイオードが導通して光源が点灯する。
具体的には、検出部材が所定感度で点灯するので、導波管の所定部所内のマイクロ波電磁界が所定値以上の強さであるときに検出部材の光源が点灯する。
これより、検出部材の光源が消灯しているか、点灯したかを確認することによって導波管内の電磁界分布を視覚をもって知ることができる。
【0019】
第3の発明では、導波管には管軸に沿って形成した複数個の小孔を設け、さらに、導波管の前記小孔各々にアンテナを配設させるようにした複数個の検出部材を導波管外面に配列させた構成としてある。
したがって、導波管の管軸方向に並んだ検出部材の光源が導波管内のマイクロ波電磁界分布または定在波に対応した点灯状態となる。
すなわち、マイクロ波電磁界の強い部所の検出部材は光源が点灯し、マイクロ波電磁界の弱い部所の検出部材は光源が消灯したままとなるから、検出部材の点灯状態よりマイクロ波の電磁界分布を視認することができ、さらに、定在波の位置を視覚をもって検出することができる。
【0020】
一方、第3の発明によれば、可動プランジヤなどを動作させて導波管内の定在波位置を移動させると、導波管の管軸方向に並んだ複数の検出部材の光源が、定在波の移動にしたがって順次点灯する。
つまり、定在波の移動にしたがって点灯する光源が順次切り替わるので、定在波の位置調整が検出部材の光源の点灯を確認しながら行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について図面に沿って説明する。
図1は、一実施形態として示したマイクロ波可視センサー50を装備したマイクロ波加熱の試験装置の簡略図である。
図示の如く、この試験装置は、マグネトロン30、高周波結合器31、パワーモニタ32、スタブチューナー33、アプリケータ34、可動プランジャ35から構成してあり、マイクロ波可視センサー50を備えたアプリケータ34以外は図8に従来例として示した試験装置に比べ同構成となっている。
【0022】
アプリケータ34は、図2、図3に示した如く、方形導波管であり、その上面(磁界H面)34Hには、従来例同様の試験管17を挿入する挿入孔34aが設けてある。
なお、試験管17は、従来例で説明したように、マイクロ波加熱による化学反応や化学変化などを試験する試料が入れてある。
【0023】
そして、アプリケータ34の側面(電界E面)34Eには、マイクロ波可視センサー50が備えてある。
このマイクロ波可視センサー50は、アプリケータ34の側面34Eに、管軸方向に沿って2列に形成した小孔36と、複数個の検出部材37を設けてその側面34Eに面張りした長径の基板38とより構成してある。
なお、このように固着する基板38は、図4に部分拡大図として詳細に示すように、各々の検出部材37のアンテナ39を各々の小孔36に対向させるように面張りしてある。
また、基板38をアプリケータ34に固着する手段としては、ねじ止め、接着剤を使用した貼着などを用いる。
【0024】
複数個の検出部材37は、アプリケータ34の小孔位置に合わせした位置間として長形の基板38に設けたもので、個々の検出部材37については、図10に示した従来の検出部21Aと同様に構成してある。
すなわち、検出部材37は、マイクロ波を受ける長形のアンテナ39と、このアンテナ39に発生する起電力を受けて導通する検波ダイオード40と、検波ダイオード40の導通下に点灯するLED41と、検波ダイオード40とLED41とを接続する回路線42とで構成してある。
【0025】
そして、この検出部材37の具体的な構成としては、図4、図5に示すように、
基板38の表面に面上半田して検波ダイオード40とLED41を実装し、また、基板38の面上にプリント配線した回路線42によってこれら検波ダイオード40とLED41とを接続し、さらに、検波ダイオード40とLED41は基板38の裏面にプリント配線したアンテナ39に対しスルーホール43a、43bを介して電気接続して、図6に示すところの回路接続となっている。
【0026】
上記の試験装置は、マグネトロン30から出力されたマイクロ波の進行波と可動プランジャ35のプランジャ可動部35aで反射された反射波とが干渉し、アプリケータ34内には大きな定在波が発生する。
そして、この定在波よる大きな電界によって試料17を加熱し試験する。
【0027】
したがって、可動プランジャ35を操作してプランジャ可動部35aを移動させ、定在波の発生位置を調整し、定在波を試料17の位置で正しく発生させる。
このように、可動プランジャ35を操作して定在波の発生位置を調整すると、定在波の移動に伴って整列した各検出部材37のLED41の点灯が順次切り替わる。
具体的には、図2において、右から左に、または、この逆に検出部材37の点灯が順次切り代わるから、検出部材37の点灯状態(LED41)を見ながら可動プランジャ35を操作し、試料17に最も強い電界が作用する定在波位置に調整することができる。
【0028】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、パワーモニタを使用しなくても定在波の存在がわかるので、導波管のチューナの整合などに使用することができる。
さらに、試料17に合わせたアプリケータ34の側面に1つの小孔を設け、この小孔に一個の検出部材37を配設する構成とすると、可動プランジャ35の操作にしたがってLED41の発光強度が変わるので、マイクロ波の電界強度を視覚をもって確認することができる。
【0029】
一方、本発明の実施に際しては、アンテナ39を検波ダイオード40、LED41、回路線42と共に基板38の表面に設けてもよい。
このように構成した場合、感度が多少低下するが検出部材としては充分に作用する。
他方、検出部材37は必ずしも2列に配列しなくともよく、一列に直線的に配列するマイクロ波可視センサーとすることもでき、また、上記のように構成したマイクロ波可視センサー50は検出部材37の数を任意に増減することができる。
さらに、アプリケータ34の上面34Hに複数の小孔を形成し、複数個の検出部材37を上面34Hに配列させても同様のマイクロ波可視センサーを構成することができる。
【0030】
図7は他の実施形態として示したマイクロ波可視センサーの部分図である。
本実施形態では、アプリケータ34に形成した小孔36aに、LED44の2本の接続端子44a、44bを挿入し、さらに、これら接続端子44a、44bを検波ダイオード45で接続して構成したマイクロ波可視センサーとしてある。
このように構成したマイクロ波可視センサーは、接続端子44a、44bがマイクロ波を受けるから、これらの接続端子に発生した起電力によって検波ダイオード45が導通してLED44が点灯する。
なお、図7は1つの小孔36aに設けたマイクロ波可視センサーを示したが、複数の小孔36aを形成して複数のLED44を設けても同様に備えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
マイクロ波の電界分布や定在波位置を視覚をもって検出することが望まれる、マイクロ波加熱の試験装置、マイクロ波を利用した情報記録ディスクの記録膜破壊装置、マイクロ波加熱の糸(フィラメント)の延伸装置などのマイクロ波応用装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】一実施形態のマイクロ波可視センサーを装備したマイクロ波加熱の試験装置を示す簡略図である。
【図2】上記した試験装置に備えるアプリケータと、このアプリケータに備えたマイクロ波可視センサーとを示す拡大部分図である。
【図3】上記したアプリケータとマイクロ波可視センサーとの分解斜視図である。
【図4】上記したマイクロ波可視センサーの一部分を拡大して示す表面図である。
【図5】図4同様の裏面図である。
【図6】上記したマイクロ波可視センサーに備える検出部材の回路図である。
【図7】他の実施形態のマイクロ波可視センサーを示す部分図である。
【図8】従来例のマイクロ波加熱の試験装置を示す簡略図である。
【図9】図8に示す従来の試験装置の部分的な拡大断面図である。
【図10】マイクロ波の電界分布を検出する従来の検出装置を示す正面図である。
【図11】図10の従来の検出装置の一部を拡大して示した部分図である。
【図12】図10の従来の検出装置が備える検出部のうち、長径のアンテナを有する検出部の回路図である。
【図13】図10の従来の検出装置が備える検出部のうち、短径のアンテナを有する検出部の回路図である。
【符号の説明】
【0033】
34 アプリケータ
34H 上面(磁界面)
34E 側面(電界面)
36 小孔
37 検出部材
38 基板
39 アンテナ
40 検波ダイオード
41 LED
42 回路線
43a、43b スルーホール
50 マイクロ波可視センサー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を受けるアンテナと、前記アンテナによって受けたマイクロ波を検波するダイオードと、前記ダイオードの検波にしたがって給電されて点灯する光源とから形成した検出部材を設け、
前記検出部材のアンテナを導波管に形成した小孔に対応させて配設させるようにして当該検出部材を導波管に備え、
前記検出部材の光源の点灯を視覚によって確認し、導波管内に存在するマイクロ波を検出する構成としたことを特徴とするマイクロ波可視センサー。
【請求項2】
基板の裏面には、マイクロ波を受けるアンテナを配設し、前記基板の表面には、スルーホールを介して前記アンテナと接続し、前記アンテナによって受けたマイクロ波を検波するダイオードと、このダイオードの検波にしたがって給電されて点灯する光源とを配設して形成した検出部材を設け、
前記検出部材のアンテナを導波管に形成した小孔に対応させて配設させるようにして当該検出部材の基板を導波管外面に固着し、
前記検出部材の光源の点灯を視覚によって確認し、導波管内に存在するマイクロ波を検出する構成としたことを特徴とするマイクロ波可視センサー。
【請求項3】
基板の裏面には、マイクロ波を受けるアンテナを配設し、前記基板の表面には、スルーホールを介して前記アンテナと接続し、前記アンテナによって受けたマイクロ波を検波するダイオードと、このダイオードの検波にしたがって給電されて点灯する光源とを配設して形成した検出部材を、長形の基板の長手方向に沿って複数個配列し、
前記した各々の検出部材のアンテナを導波管の管軸方向に沿って形成した複数の小孔に配設させるようにして前記基板を導波管外面に固着し、
前記した各検出部材の光源の点灯状態を視覚によって確認し、導波管内のマイクロ波電界強度分布またはマイクロ波定在波位置を検出する構成としたことを特徴とするマイクロ波可視センサー。
【請求項1】
マイクロ波を受けるアンテナと、前記アンテナによって受けたマイクロ波を検波するダイオードと、前記ダイオードの検波にしたがって給電されて点灯する光源とから形成した検出部材を設け、
前記検出部材のアンテナを導波管に形成した小孔に対応させて配設させるようにして当該検出部材を導波管に備え、
前記検出部材の光源の点灯を視覚によって確認し、導波管内に存在するマイクロ波を検出する構成としたことを特徴とするマイクロ波可視センサー。
【請求項2】
基板の裏面には、マイクロ波を受けるアンテナを配設し、前記基板の表面には、スルーホールを介して前記アンテナと接続し、前記アンテナによって受けたマイクロ波を検波するダイオードと、このダイオードの検波にしたがって給電されて点灯する光源とを配設して形成した検出部材を設け、
前記検出部材のアンテナを導波管に形成した小孔に対応させて配設させるようにして当該検出部材の基板を導波管外面に固着し、
前記検出部材の光源の点灯を視覚によって確認し、導波管内に存在するマイクロ波を検出する構成としたことを特徴とするマイクロ波可視センサー。
【請求項3】
基板の裏面には、マイクロ波を受けるアンテナを配設し、前記基板の表面には、スルーホールを介して前記アンテナと接続し、前記アンテナによって受けたマイクロ波を検波するダイオードと、このダイオードの検波にしたがって給電されて点灯する光源とを配設して形成した検出部材を、長形の基板の長手方向に沿って複数個配列し、
前記した各々の検出部材のアンテナを導波管の管軸方向に沿って形成した複数の小孔に配設させるようにして前記基板を導波管外面に固着し、
前記した各検出部材の光源の点灯状態を視覚によって確認し、導波管内のマイクロ波電界強度分布またはマイクロ波定在波位置を検出する構成としたことを特徴とするマイクロ波可視センサー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−21824(P2010−21824A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181078(P2008−181078)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000114031)ミクロ電子株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000114031)ミクロ電子株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
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