説明

マイクロ波硬化性組成物

【課題】 本発明の目的は、硬化性組成物を効率的に硬化させることができ、かつ、硬化物の機械的物性も良好であり、耐熱性、耐ブリードアウト性に優れる硬化性組成物を提供することにある。
【解決手段】 イオン液体(A)と重合性化合物(D)を含有するマイクロ波硬化性組成物であって、イオン液体(A)の分子内に重合性化合物(D)と反応する官能基(f)、好ましくはビニル基を少なくとも1つ有することを特徴とするマイクロ波硬化性組成物(X)であり、組成物(X)の重量に対して、イオン液体(A)の含有量が0.1〜25重量%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、接着剤、粘着剤、塗料、コーティング剤、レジスト材料、成形材料には大量の有機溶剤を含む樹脂溶液が使われてきたが、地球環境または作業環境への関心の高まりとともに、大量の有機溶剤を含有する樹脂溶液の使用を制限する様になってきている。それらに対処する一つの方法として、熱、紫外線、電子線硬化性樹脂組成物等の樹脂素材の開発が進められてきた。これら硬化性樹脂組成物に代表される無溶剤型樹脂組成物は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、またはエステルアクリレート等の反応性オリゴマー及び、各種のビニル、アクリレート系モノマー等の低粘度単量体を主成分として構成されており、硬化物の硬度、耐溶剤性、強靱性、機械特性は使用する反応性オリゴマー、低粘度単量体の配合により調整され、通常は揮発性の有機溶剤等は使用されない。
【0003】
硬化を行うにあたっては、熱硬化性樹脂の場合、オーブン、電気炉などによる加熱であるため、熱伝導効率が低いため、熱が伝わりにくく、樹脂が硬化するまでに長時間を要する。また、加熱機器によっては、硬化に使用される熱量は、全体の加熱に要する熱量の10%にも達していない場合が多く、とても効率のよい方法とはいえない。
紫外線硬化型の場合、紫外線照射装置が比較的安価で市場に流通している点と、熱硬化型と比較して、硬化速度、エネルギー的に大きな優位性があることから、コーティング材料、レジスト材料などの硬化には、専らこの樹脂が使用されている。しかしながら、紫外線硬化の場合、紫外線の透過深度が非常に浅いため、薄膜の形成しかできず、また薄膜であっても着色剤、顔料などの紫外線を通さない物質が樹脂に含まれていると、使用することができないため、一般的に透明かつ薄膜でないものは紫外線硬化樹脂を使用することはできない。
【0004】
電子線硬化型の場合、装置が高価であったり、照射強度の調節により、紫外線硬化型よりは厚膜の樹脂硬化物を得ることができるが、表面近傍の樹脂が劣化したりと、均一な硬化物を得ることが難しい。
【0005】
そこでこれら従来の硬化方式の欠点を解決するために、近年マイクロ波を用いた化学反応が注目されており、マイクロ波を用いたポリイミド前駆体のイミド環化(例えば、特許文献1および2参照)など、マイクロ波を吸収して樹脂を硬化させる検討が行われている。
また、イオン液体を重合性化合物に添加することでマイクロ波吸収効率が上がるため、反応を促進できることが知られている(非特許文献1)。
【特許文献1】特開平4−305148
【特許文献2】特開平5−040339
【非特許文献1】Macromolecular Rapid Communications (2007)、28、456
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1のようにイオン液体を重合性化合物に添加することで、反応速度は大きくなるが、合成したポリマー中にイオン液体が残存するため、得られるポリマーの強度が、イオン液体を添加していない場合と比較して低下したり、硬化後のイオン液体のブリードアウトなどの問題があった。
すなわち、本発明の目的は、硬化性組成物を効率的に硬化させることができ、かつ、硬化物の機械的物性も良好であり、硬化後のブリードアウトが少ないマイクロ波硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意研究した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、イオン液体(A)と重合性化合物(D)を含有するマイクロ波硬化性組成物であって、イオン液体(A)の分子内に重合性化合物(D)と反応する官能基(f)を少なくとも1つ有することを特徴とするマイクロ波硬化性組成物(X);該組成物(X)を硬化してなる硬化物;該組成物(X)にマイクロ波を照射する重合性化合物(D)の重合方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のマイクロ波硬化性組成物を用いれば、機械的物性が良好かつブリードアウト物の少ない樹脂硬化物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明におけるイオン液体(A)とは、100℃以下で液体である塩であり、カチオン(a1)とアニオン(a2)から成り、分子内に重合性化合物(D)と反応する官能基(f)を少なくとも1つ有する。この官能基(f)は、カチオン(a1)にある官能基(f1)、アニオン(a2)にある(f2)のどちらか一方、または両方どちらでも構わない。
また、イオン液体(A)は、官能基(f)を有しないイオン液体を含有していてもよい。官能基(f)を有しないイオン液体は、イオン液体全体の重量に対して0〜50重量%含有していてもよい。
また、イオン液体(A)は、分子内に重合性化合物(D)と反応する官能基(f)とともに、重合性化合物(D)と反応しない官能基を有していてもよい。
官能基(f)としては、ビニル基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基などが挙げられる。なお、本発明において、ビニル基とは炭素炭素2重結合を有する炭素数2〜25の炭化水素基を言うものとし、例えば狭義のビニル基(−CH=CH2)、アリル基、CH2=C<(例えばメタアクリロイル基の残基等)等が含まれる。
【0010】
例えば官能基(f)がビニル基の場合、イオン液体(A)を構成するカチオンとしては、4級アンモニウムイオンとビニル基を分子内に持つものが上げられる。このようなカチオンとしてはアミジニウムイオンの側鎖に1つ以上のビニル基を持つカチオン、4級アンモニウムイオンの側鎖の1つ以上にビニル基を持つカチオンなどが挙げられる。このようなカチオンの具体的な例としては、1−メチル−3−ビニルイミダゾリウム、1−アリル−3−メチルイミダゾリウム、1−アリル−3−エチルイミダゾリウム、トリメチルビニルアンモニウム、トリメチル−2−メタクロイロキシエチルアンモニウムなどが挙げられる。これらの中で1−メチル−3−ビニルイミダゾリウム、1−アリル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−ビニルイミダゾリウム、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムが特に好ましい。
【0011】
官能基(f)がビニル基の場合、イオン液体(A)を構成するアニオンとしては、反応性の二重結合部位と、カルボキシルアニオン、スルホン酸などのアニオンを分子内に持つものが挙げられる。このようなアニオンとしては、メタクリル酸アニオン、アクリル酸アニオン、マレイン酸アニオン、フマル酸アニオンなどのほかに、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが挙げられる。このようなアニオンの具体例としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アニオン、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アニオンなどが挙げられる。これらの中で2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アニオンが特に好ましい。
【0012】
上記反応性のカチオンと組み合わされることでイオン液体を構成してもよい非反応性のカチオンとしては以下のものが挙げられる。
(1)イミダゾリニウムカチオン
1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリニウム等
(2)イミダゾリウムカチオン
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム等
(3)テトラヒドロピリミジニウムカチオン
1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム等
(4)第四級アンモニウムカチオン
ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム等
(5)ホスホニウムカチオン
テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム等が挙げられる。
【0013】
上記反応性のアニオンと組み合わされることでイオン液体を構成してもよい非反応性のアニオンとしては以下のものが挙げられる。
(1)無機強酸:
フッ酸、塩酸、硫酸、燐酸、HClO4、HBF4、HPF6、HAsF6、HSbF6、フルオロスルホン酸等;
(2)カルボン酸
モノカルボン酸{C1〜30の脂肪族モノカルボン酸[飽和モノカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸など)および芳香族モノカルボン酸[安息香酸、ケイ皮酸、ナフトエ酸など]};
ポリカルボン酸(2〜4価のポリカルボン酸){脂肪族ポリカルボン酸[飽和ポリカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸など);
芳香族ポリカルボン酸[フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリト酸など];
脂肪族オキシカルボン酸[グリコール酸、乳酸、酒石酸など];
芳香族オキシカルボン酸[サリチル酸、マンデル酸など];
S含有ポリカルボン酸[チオジプロピオン酸];および
その他のポリカルボン酸[シクロブテン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸、フラン−2,3−ジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプタ−2−エン−2,3−ジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプタ−2,5−ジエン−2,3−ジカルボン酸]など]
(3)ハロゲン原子含有アルキル基置換無機強酸(アルキル基の炭素数1〜30):
HBFn(CF34-n、HPFn(CF36-n、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、ペンタクロロプロパンスルホン酸、ヘプタクロロブタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸、ペンタフルオロブタン酸、トリクロロ酢酸、ペンタクロロプロピオン酸およびヘプタクロロブタン酸等;
(4)ハロゲン原子含有スルホニルイミド(炭素数1〜30):
ビス(フルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドおよびビス(フルオロスルホニル)イミド等;
(5)ハロゲン原子含有スルホニルメチド(炭素数3〜30):
トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド等;
(6)ハロゲン原子含有カルボン酸アミド(炭素数2〜30):
ビス(トリフルオロアセト)アミド等;
(7)ニトリル基含有イミド:
HN(CN)2等;
(8)ニトリル含有メチド:
HC(CN)3等;
(9)炭素数1〜30のハロゲン原子含有アルキルアミン:
HN(CF32
(10)チオシアン酸等が挙げられる。
【0014】
官能基(f)がビニル基であるイオン液体としては、上記のカチオン、アニオンの組み合わせから多種のものを選択することができる。
具体的には、1−メチル−3−ビニルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1−メチル−3−ビニルイミダゾリウムとテトラフルオロボレートイオンからなるイオン液体、1−メチル−3−ビニルイミダゾリウムと塩化物イオンからなるイオン液体、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムとテトラフルオロボレートイオンからなるイオン液体、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムと塩化物イオンからなるイオン液体、トリメチルビニルアンモニウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、トリメチルビニルアンモニウムとテトラフルオロボレートイオンからなるイオン液体、トリメチルビニルアンモニウムと塩化物イオンからなるイオン液体、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アニオンからなるイオン液体、1−メチル−3−ビニルイミダゾリウムカチオンと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アニオンからなるイオン液体、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムカチオンと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アニオンからなるイオン液体、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アニオンから成るイオン液体などが挙げられる。これらの中でも、1−メチル−3−ビニルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1−メチル−3−ビニルイミダゾリウムとテトラフルオロボレートイオンからなるイオン液体、1−メチル−3−ビニルイミダゾリウムと塩化物イオンからなるイオン液体、1−メチル−3−ビニルイミダゾリウムカチオンと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アニオンからなるイオン液体、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムカチオンと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アニオンからなるイオン液体が好ましく、1−メチル−3−ビニルイミダゾリウムカチオンと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アニオンからなるイオン液体、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムカチオンと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アニオンからなるイオン液体が樹脂強度が増す観点からさらに好ましい。
【0015】
本発明において、官能基(f)がビニル基であるイオン液体の場合、これと組合わせて使用される重合性化合物としては、分子内にビニル基を少なくとも1つ以上有するモノマー、または重合体、分子内に2個以上のアミノ基を有する、分子量50以上のジアミンなどが挙げられる。
【0016】
分子内にビニル基を少なくとも1つ以上有するモノマーとしては、単官能のオレフィン類(ブテン-1、イソブテン、4-メチルペンテン-1、オクテンなど);芳香族ビニ ル炭化水素またはその置換体(スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、ジメチルスチレン、アセトキシスチレン、ビニルトルエンなど);(メタ)アクリル酸およびそのアルキルエステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルなど);ビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテルなど);ビニルアルコール誘導体(酢酸ビニル、酪酸ビニルなど);(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミドおよびそのN置換誘導体;エチレンのハロゲン置換化合物(塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンなど);1,2-ジ置換不飽和ポリカルボン酸またはその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸およびそのエステル化合物など)などが挙げられる。多官能性の重合性化合物としては、以下のものが挙げられる。ジエン類(ブタジエン、イソプレンなど);多官能アクリレート:2官能としては:エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、グリセリンジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等が例示される。
3官能としては、グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のトリアクリレート等が例示される。
4〜6官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が例示される。
は分子内にビニル基を有する重合体としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、グリシジル化合物などが挙げられる。
【0017】
分子量60以上のジアミンとしては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、アミノ基を両末端にもつポリアミド、ポリイミド、ポリウレア、ポリウレタンなどが挙げられる。
【0018】
次に官能基(f)がアミノ基の場合、イオン液体(A)を構成するカチオンとしては4級アンモニウムカチオンとアミノ基を分子内に持つものが上げられる。このようなカチオンとしてはアミジニウムイオンの側鎖に1つ以上のアミノ基を持つカチオン、4級アンモニウムイオンの側鎖の1つ以上にアミノ基を持つカチオンが挙げられる。このようなカチオンの具体的な例としては、1−3(−アミノプロピル)イミダゾリウム、N,N,N−トリエチルエチレンジアミンアンモニウムなどが挙げられる。これらの中1−3(−アミノプロピル)イミダゾリウムが特に好ましい。
【0019】
上記反応性のカチオンと組み合わされることでイオン液体を構成してもよい非反応性のアニオンとしては上記で挙げたものと同じものが挙げられる。
【0020】
官能基(f)としてアミノ基をもつイオン液体としては、上記のカチオン、アニオンの組み合わせから多種のものを選択することができる、具体的には、1−3(−アミノプロピル)イミダゾリウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1−3(−アミノプロピル)イミダゾリウムとテトラフルオロボレートイオンからなるイオン液体、1−3(−アミノプロピル)イミダゾリウムと塩化物イオンからなるイオン液体、N,N,N−トリエチルエチレンジアミンアンモニウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、N,N,N−トリエチルエチレンジアミンアンモニウムとテトラフルオロボレートイオンからなるイオン液体、N,N,N−トリエチルエチレンジアミンアンモニウムと塩化物イオンからなるイオン液体などが挙げられる。これらの中でも1−3(−アミノプロピル)イミダゾリウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体が特に好ましい。
【0021】
本発明において、官能基(f)がアミノ基を有するイオン液体の場合、これと組合わせて使用される重合性化合物としては、分子内に1個以上のビニル基、カルボキシル基、グリシジル基を有する化合物が挙げられる。
【0022】
ビニル基を有する化合物としては、単官能のオレフィン類(ブテン-1、イソブテン、4-メチルペンテン-1、オクテンなど);芳香族ビニ ル炭化水素またはその置換体(スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、ジメチルスチレン、アセトキシスチレン、ビニルトルエンなど);(メタ)アクリル酸およびそのアルキルエステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルなど);ビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテルなど);ビニルアルコール誘導体(酢酸ビニル、酪酸ビニルなど);(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミドおよびそのN置換誘導体;エチレンのハロゲン置換化合物(塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンなど);1,2-ジ置換不飽和ポリカルボン酸またはその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸およびそのエステル化合物など)などが挙げられる。またはこれらを分子内の一部に有するプレポリマーなどが挙げられる。多官能性の重合性化合物としては、以下のものが挙げられる。ジエン類(ブタジエン、イソプレンなど);多官能アクリレート:2官能としては:エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、グリセリンジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等が例示される。
3官能としては、グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のトリアクリレート等が例示される。
4〜6官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が例示される。
【0023】
分子内に1個以上のグリシジル基、カルボキシル基を有する化合物としては、フェノールエーテル系グリシジル化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのジグリシジルエーテル類など);エーテル系グリシジル化合物(ジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、ポリアリルグリシジルエーテルなど);エステル系グリシジル化合物[グリシジル(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和単量体(アクリロニトリルなど)との共重合体など];グリシジルアミン類(パラアミノフェノールのグリシジルエーテルなど)、非グリシジル型エポキシ化合物(エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化大豆油など)などを挙げることができる。カルボキシル基を有する化合物としてはテレフタル酸、アジピン酸などのジカルボン酸、及び末端がカルボン酸のポリエステル、ポリアミドなどが挙げられる。
【0024】
例えば官能基(f)がカルボキシル基の場合、イオン液体(A)を構成するカチオンとしては4級アンモニウムカチオンとカルボキシル基を分子内に持つものが上げられる。このようなカチオンとしてはアミジニウムイオンの側鎖に1つ以上のカルボキシル基を持つカチオン、4級アンモニウムイオンの側鎖の1つ以上にカルボキシル基を持つカチオンが挙げられる。このようなカチオンの具体的な例としては、1−(カルボキシメチル)−3−メチルイミダゾリウム、4−(トリメチルアンモニオ)ブチレートなどが挙げられる。これらの中で1−(カルボキシメチル)−3−メチルイミダゾリウムが特に好ましい。
【0025】
官能基(f)がカルボキシル基の場合、イオン液体(A)を構成するアニオンとしては、分子内に2個以上のカルボキシル基をもつカルボン酸のアニオンが上げられる。マレイン酸アニオン、フマル酸アニオン、フタル酸アニオン、ポリカルボン酸アニオン(2〜4価のポリカルボン酸アニオン){脂肪族ポリカルボン酸アニオン[飽和ポリカルボン酸アニオン(シュウ酸アニオン、マロン酸アニオン、コハク酸アニオン、グルタル酸アニオン、アジピン酸アニオン、ピメリン酸アニオン、スベリン酸アニオン、アゼライン酸アニオン、セバシン酸アニオンなど);
芳香族ポリカルボン酸アニオン[フタル酸アニオン、イソフタル酸アニオン、テレフタル酸アニオン、トリメリット酸アニオン、ピロメリト酸アニオンなど];
などが挙げられる。
【0026】
上記反応性のカチオン、アニオンと組み合わされることでイオン液体を構成してもよい非反応性のカチオン、アニオンとしては、上記で挙げたものと同じものが使用できる。
【0027】
官能基(f)としてカルボキシル基をもつイオン液体としては、上記のカチオン、アニオンの組み合わせから多種のものを選択することができる、具体的には、1−(カルボキシメチル)−3−メチルイミダゾリウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1−(カルボキシメチル)−3−メチルイミダゾリウムとテトラフルオロボレートイオンからなるイオン液体、1−(カルボキシメチル)−3−メチルイミダゾリウムと塩化物イオンからなるイオン液体、
4−(トリメチルアンモニオ)ブチレートとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、4−(トリメチルアンモニオ)ブチレートとテトラフルオロボレートイオンからなるイオン液体、4−(トリメチルアンモニオ)ブチレートと塩化物イオンからなるイオン液体、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとマレイン酸アニオンからなるイオン液体、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとフタル酸アニオンからなるイオン液体、1−(カルボキシメチル)−3−メチルイミダゾリウムとマレイン酸アニオンからなるイオン液体、1−(カルボキシメチル)−3−メチルイミダゾリウムとフタル酸アニオンからなるイオン液体などが挙げられる。これらの中でも、1−(カルボキシメチル)−3−メチルイミダゾリウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとマレイン酸アニオンからなるイオン液体、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとフタル酸アニオンからなるイオン液体、1−(カルボキシメチル)−3−メチルイミダゾリウムとマレイン酸アニオンからなるイオン液体、1−(カルボキシメチル)−3−メチルイミダゾリウムとフタル酸アニオンからなるイオン液体が好ましく、1−(カルボキシメチル)−3−メチルイミダゾリウムとマレイン酸アニオンからなるイオン液体、1−(カルボキシメチル)−3−メチルイミダゾリウムとフタル酸アニオンからなるイオン液体が最も好ましい。
【0028】
本発明において、官能基(f)がカルボキシル基を有するイオン液体の場合、これと組合わせて使用される重合性化合物としては、分子内にアミノ基、ヒドロキシル基、グリシジル基を有する化合物が挙げられる。
【0029】
分子内に1個以上のグリシジル基、アミノ基、ヒドロキシル基を有する化合物としては、次のものが挙げられる。グリシジル基を有するものとしては、フェノールエーテル系グリシジル化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのジグリシジルエーテル類など);エーテル系グリシジル化合物(ジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、ポリアリルグリシジルエーテルなど);エステル系グリシジル化合物[グリシジル(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和単量体(アクリロニトリルなど)との共重合体など];グリシジルアミン類(パラアミノフェノールのグリシジルエーテルなど)、非グリシジル型エポキシ化合物(エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化大豆油など)などを挙げることができる。アミノ基を有するものとしては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、またはアミノ基を両末端にもつポリアミド、ポリイミド、ポリウレア、ポリウレタンなどが挙げられる。ヒドロキシル基を有するものとしては、1,4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、またはヒドロキシル基を両末端にもつポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテルなどである。
【0030】
例えば官能基(f)がヒドロキシル基の場合、イオン液体(A)を構成するカチオンとしては4級アンモニウムカチオンとヒドロキシル基を分子内に持つものが上げられる。このようなカチオンとしてはアミジニウムイオンの側鎖に1つ以上のヒドロキシル基を持つカチオン、4級アンモニウムイオンの側鎖の1つ以上にヒドロキシル基を持つカチオンが挙げられる。このようなカチオンの具体的な例としては、1−メチル−3−ヒドロキシプロピルイミダゾリウム、1−メチル−3−ヒドロキシエチルイミダゾリウム、1−ヒドロキシエチル−3−ヒドロキシプロピルイミダゾリウム、トリメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウムなどが挙げられる。これらの中で1−メチル−3−ヒドロキシプロピルイミダゾリウム、1−メチル−3−ヒドロキシエチルイミダゾリウムが特に好ましい。
【0031】
官能基(f)がヒドロキシル基の場合、イオン液体(A)を構成するアニオンとしては、ヒドロキシル基と、カルボキシルアニオン、スルホン酸などのアニオンを分子内に持つものが挙げられる。このようなアニオンとしては、サリチル酸、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、乳酸、レゾルシル酸などが挙げられる。
【0032】
上記反応性のカチオン、アニオンと組み合わされることでイオン液体を構成してもよい非反応性のカチオン、アニオンとしては、上記で挙げたものと同じものが使用できる。
【0033】
官能基(f)としてヒドロキシル基をもつイオン液体としては、上記のカチオン、アニオンの組み合わせから多種のものを選択することができる、具体的には、1−メチル−3−ヒドロキシプロピルイミダゾリウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1−メチル−3−ヒドロキシエチルイミダゾリウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1−ヒドロキシエチル−3−ヒドロキシプロピルイミダゾリウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、トリメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとサリチル酸アニオンからなるイオン液体、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとサリチル酸アニオンからなるイオン液体、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンと3−ヒドロキシ安息香酸アニオンからなるイオン液体、1−メチル−3−ヒドロキシプロピルイミダゾリウムとサリチル酸アニオンからなるイオン液体、1−メチル−3−ヒドロキシエチルイミダゾリウムとサリチル酸アニオンからなるイオン液体、1−ヒドロキシエチル−3−ヒドロキシプロピルイミダゾリウムとサリチル酸アニオンからなるイオン液体、1−ヒドロキシエチル−3−ヒドロキシプロピルイミダゾリウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムとサリチル酸アニオンから成るイオン液体などが挙げられ、これらの中でも1−メチル−3−ヒドロキシプロピルイミダゾリウムとサリチル酸アニオンからなるイオン液体、1−メチル−3−ヒドロキシエチルイミダゾリウムとサリチル酸アニオンからなるイオン液体、1−ヒドロキシエチル−3−ヒドロキシプロピルイミダゾリウムとサリチル酸アニオンからなるイオン液体が樹脂強度が増す観点から特に好ましい。
【0034】
本発明において、官能基(f)がヒドロキシル基を有するイオン液体の場合、これと組合わせて使用される重合性化合物としては、分子内に1個以上のイソシアネート基、カルボキシル基を有する化合物が挙げられ、必要に応じてイソシアネート基又はブロックドイソシアネート基含有化合物と活性水素含有化合物[例えばジオール(エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等)]との混合物が挙げられる。
イソシアネート基としては、例えば芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど)、脂環式ジイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサンなど)、脂肪族ジイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートなど)、及び、イソシアネート基を末端にもつ分子量200以上のウレタンプレポリマー、ウレアプレポリマーなどが挙げられる。カルボキシル基を有する化合物としてはテレフタル酸、アジピン酸などのジカルボン酸、及び末端がカルボン酸のポリエステル、ポリアミドなどが挙げられる。
【0035】
例えば官能基(f)がエポキシ基(グリシジル基等)の場合、イオン液体(A)を構成するカチオンとしては、4級アンモニウムカチオンとエポキシ基を分子内に持つものが上げられる。このようなカチオンとしてはアミジニウムイオンの側鎖に1つ以上のエポキシ基を持つカチオン、4級アンモニウムイオンの側鎖の1つ以上にエポキシ基を持つカチオンが挙げられる。このようなカチオンの具体的な例としては、1−グリシジル−3−メチルイミダゾリウム、1、3−ジグリシジルイミダゾリウム、トリメチル−2−グリシジルアンモニウムなどが挙げられる。これらの中で1−グリシジル−3−メチルイミダゾリウム、1、3−ジグリシジルイミダゾリウムが特に好ましい。
【0036】
上記反応性のカチオンと組み合わされることでイオン液体を構成してもよい非反応性のアニオンとしては、上記で挙げたものと同じものが使用できる。
官能基(f)としてエポキシ基(グリシジル基等)をもつイオン液体としては、上記のカチオン、アニオンの組み合わせから多種のものを選択することができる、具体的には、1−グリシジル−3−メチルイミダゾリウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1、3−ジグリシジルイミダゾリウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、トリメチル−2−グリシジルアンモニウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1−グリシジル−3−メチルイミダゾリウムとテトラフルオロボレートアニオンからなるイオン液体、1、3−ジグリシジルイミダゾリウムとテトラフルオロボレートアニオンからなるイオン液体、トリメチル−2−グリシジルアンモニウムとテトラフルオロボレートアニオンからなるイオン液体などが挙げられ、これらの中でも1−グリシジル−3−メチルイミダゾリウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1、3−ジグリシジルイミダゾリウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、トリメチル−2−グリシジルアンモニウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1−グリシジル−3−メチルイミダゾリウムとテトラフルオロボレートアニオンからなるイオン液体、1、3−ジグリシジルイミダゾリウムとテトラフルオロボレートアニオンが特に好ましい。
【0037】
本発明において、官能基(f)がエポキシ基を有するイオン液体の場合、これと組合わせて使用される重合性化合物としては、分子内に1個以上のアミノ基、カルボキシル基、エポキシ基などを有する化合物が挙げられる。
エポキシ化合物としては、フェノールエーテル系グリシジル化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのジグリシジルエーテル類など);エーテル系グリシジル化合物(ジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、ポリアリルグリシジルエーテルなど);
エステル系グリシジル化合物[グリシジル(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和単量体(アクリロニトリルなど)との共重合体など];グリシジルアミン類(パラアミノフェノールのグリシジルエーテルなど)、非グリシジル型エポキシ化合物(エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化大豆油など)などを挙げることができる。
【0038】
本発明のマイクロ波硬化性組成物(X)において、組成物(X)の重量に対して、イオン液体(A)の含有量は0.1〜25重量%であることが好ましく、1〜10重量%であることがさらに好ましい。イオン液体(A)は少量でもマイクロ波吸収による発熱性が高く、0.1重量%以上の添加で、十分にマイクロ波硬化組成物の温度を上昇させることができる。またイオン液体(A)が25重量%以下であれば、イオン液体によるマイクロ波照射時の発熱性が非常に高く、重合性化合物(D)の濃度も高いため重合反応がより速やかに完了させることができる。
【0039】
本発明のマイクロ波硬化性組成物(X)には、必要によりイオン液体(A)と重合性化合物(D)以外の添加物(E)を含有してもよい。添加物(E)の合計添加量は組成物(X)の重量に対して0〜20重量%であることが好ましく、1〜10重量%であることがさらに好ましい。
添加物(E)としては、重合開始剤、触媒などの重合反応に直接関与するもの、他に溶剤、顔料、着色剤、可塑剤、酸化防止剤、耐光安定剤などが挙げられる。
【0040】
重合開始剤としては、過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。
過酸化物としては、無機過酸化物(例えば、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなど)、および有機過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ラウリルパーオキシドなど)などが挙げられる。アゾ化合物としては、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩(例えば塩酸塩など)、およびアゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライドなどが挙げられる。好ましいものは有機過酸化物である。重合開始剤の使用量(重量%)としては、モノマーの合計重量に基づいて、通常、0.0001〜20%が好ましく、さらに好ましくは0.001〜15%、特に好ましくは0.005〜10%である。反応温度および反応時間は、ラジカル重合開始剤の種類により適宜決定される。
【0041】
本発明のマイクロ波硬化性組成物(D)をマイクロ波照射により重合する方法は例えば以下の方法が挙げられる。
【0042】
(1)本発明のマイクロ波硬化性組成物を配合する工程
本発明のマイクロ波硬化性組成物は必須成分であるイオン液体、重合性化合物の他に、開始剤、触媒、顔料、着色剤、可塑剤、酸化防止剤、耐光安定剤等を添加することができる。混合方法としては、イオン液体、重合性化合物を均一溶解後、添加剤を添加、混合していけばよい。混合の際の温度は、粘度が高い場合、加熱して粘度を下げることもできるが、この場合、開始剤、触媒等は入れない方が好ましい。開始剤、触媒を添加する際は、重合が開始しない条件であることを確認してから添加したほうがよい。可能であれば、開始剤、触媒は、マイクロ波照射を行う直前に添加するのが最も好ましい。
【0043】
(2)−1 本発明のマイクロ波硬化性組成物を塗布する工程
本発明に係るマイクロ波硬化性組成物を基材上に塗布する方法としては、例えば、塗付、スプレー法、スピンコート、スクリーン印刷、グラビア印刷、凹板印刷、フレキソ印刷、バーコート法による方法等が挙げられるが、特に限定されない。
【0044】
本発明のマイクロ波硬化性組成物の利用方法は多様に考えられるが、例えば基板の表面コーティング剤として使用する場合、コーティング膜の精度にも影響されるが、塗付法が低コストであり、簡便である。本発明のマイクロ波硬化性組成物を用いて塗膜を形成させる際に使用する基材は、高温、例えば200℃以上の温度での熱処理で変形、溶融、劣化等の損傷を受けてしまう素材であっても、使用することができる。なぜならば、温度上昇する部分が、マイクロ波硬化組成物に限られ、基材が熱伝導により昇温する前に、反応が完結してしまうからである。よって、本発明に係る本発明のマイクロ波硬化性組成物を用いれば、より広い範囲の基材の中から選ぶことができ、高い密着性を有する被膜を形成させることができる。本発明に係るマイクロ波硬化性組成物を適用する基材としては、例えば、熱にガラス、セラミックなどの基材をはじめ、高温をかけると変形または分解するおそれのある高分子系の基体(例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ビニル樹脂等)が挙げられる。またマイクロ波の基材への浸透深さは、電子線、紫外線などと比較してはるかに深いため、光硬化型のコーティング剤では不可能な厚膜のコーティングも可能である。
【0045】
本発明のマイクロ波硬化性組成物を、例えば接着剤として使用する場合、塗付法、スプレー法などにより、被接着体の一方又は両方の接着面にマイクロ波硬化性組成物を塗付し、両方の材料を張り合わせた後、マイクロ波照射工程を行うことができる。本発明のマイクロ波硬化性組成物を用いて接着される被接着体は、コーティング剤と同様の理由から、高温、例えば200℃以上の温度での熱処理で変形、溶融、劣化等の損傷を受けてしまう素材であっても、接着することができる。マイクロ波硬化性の接着剤は、電子線、紫外線などの光硬化型の接着剤では光吸収がおこるため不可能な、不透明な被接着体も接着することができる。
【0046】
本発明のマイクロ波硬化性組成物と基材、被接着体との濡れ性が悪い場合には、使用するイオン液体の組成を調整することにより、濡れ性を向上させればよい。本発明のマイクロ波硬化性組成物は重合性化合物を代えることなく、イオン液体により、溶解性パラメーター(SP値)を調整することができる。
【0047】
(2)−2
本発明のマイクロ波硬化性組成物を鋳型に注入する工程
本発明に係るマイクロ波硬化性組成物は液状であるため、様々な鋳型内に注入、あるいは展開し、硬化させることができる。注入する方法は特に限定されないが、従来から知られる重力注型法、トップゲート方式、アンダーゲート方式、真空注型法などが挙げられる。
【0048】
(3)マイクロ波照射工程
本発明のマイクロ波硬化性組成物を基材に塗布、または鋳型内に注入した後、これをマイクロ波照射装置内にセットする。マイクロ波照射の強度は装置によるが、家庭用の電子レンジと同じ500W程度の照射でも、マイクロ波硬化組成物は十分に硬化することができる。硬化が可能な照射強度としては、30〜3000Wが好ましく、100〜1500Wが特に好ましい。照射強度を上げればその分、硬化速度は速くなるが、温度制御が困難になり、過昇温させてしまうので注意を要する。硬化に必要な時間は、マイクロ波硬化組成物の組成にもよるが、5秒〜10分である。照射時の雰囲気、温度は特に限定されないので、照射装置内の雰囲気管理等は特に必要としない。
【0049】
実施例
実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下、部は重量部とする。
【0050】
製造例1
<ウレタンプレポリマーの合成>
ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(50部)とポリオキシテトラメチレングリコール(分子量1000)(100部)と触媒として、ジブチルチンジラウレート(0.01部)を攪拌装置、温度計、窒素導入管を備えた、ガラス製4つ口フラスコに入れ、80℃に加熱して、4時間反応させることで、ウレタンプレポリマー(P)を得た。イソシアネート基含量は5.6%であった。
【0051】
製造例2
<1−ヒドロキシエチル−3−ヒドロキシプロピルイミダゾリウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体の合成>
ガラス製オートクレーブにイミダゾール(68部)(和光純薬製)とテトラヒドロフラン(600部)(和光純薬製)を入れ、3−クロロ−1−プロパノール(94.5部)(和光純薬製)を25℃で30分かけて滴下した。減圧蒸留により、テトラヒドロフランを除去した後、メタノール(600部)(和光純薬製)を入れ、これに2−クロロエタノール(80.5部)を25℃で30分かけて滴下した。これにビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(280部)を60分かけて20℃で滴下を行い、減圧脱溶剤により、1−ヒドロキシエチル−3−ヒドロキシプロピルイミダゾリウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体(A−1)を得た。
【0052】
製造例3
<1,3−ジグリシジルイミダゾリウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体の合成>
ガラス製オートクレーブにイミダゾール(68部)(和光純薬製)とテトラヒドロフラン(600部)(和光純薬製)を入れ、エピクロロヒドリン(92.5部)(和光純薬製)を25℃で30分かけて滴下した。減圧蒸留により、テトラヒドロフランを除去し、1,3−ジグリシジルイミダゾリウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体(A−2)を得た。
【0053】
製造例4
<1−エチル−3−メチルイミダゾリウムとサリチル酸アニオンから成るイオン液体の合成>
ガラス製オートクレーブに塩化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(147部)(関東化学社製)とメタノール(600部)(和光純薬製)を入れ、サリチル酸(138部)(和光純薬製)を25℃で30分かけて添加した。減圧蒸留により、メタノールを除去し、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムとサリチル酸アニオンから成るイオン液体(A−3)を得た。
【0054】
製造例5
<1−エチル−3−メチルイミダゾリウムと2−アクリルアミド−2メチルプロパンスルホン酸アニオンから成るイオン液体の合成>
ガラス製オートクレーブに塩化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(147部)(関東化学社製)とメタノール(600部)(和光純薬製)を入れ、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(207部)(関東化学社製)を25℃で30分かけて滴下した。減圧蒸留により、メタノールを除去し、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アニオンから成るイオン液体(A−4)を得た。
【0055】
製造例6
<1−アリル−3−エチルイミダゾリウムとサリチル酸アニオンから成るイオン液体の合成>
ガラス製オートクレーブに臭化1−アリル−3−エチルイミダゾリウム(217部)(関東化学社製)をメタノールに溶解し、サリチル酸(138部)を添加して、80℃で12時間還流させた後、減圧蒸留によりメタノールを除去し、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムとサリチル酸アニオンから成るイオン液体(A−5)を得た。
【0056】
製造例7
<1−アリル−3−エチルイミダゾリウムと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アニオンから成るイオン液体の合成>
ガラス製オートクレーブに1−アリル−3−エチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(224部)(関東化学社製)をメタノール(600部)に溶解させ、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(207部)を30分かけ添加した。これに水(200部)をいれ、80℃で24時間反応させた。120℃減圧蒸留により溶剤を除去し、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アニオンから成るイオン液体(A−6)を得た。
【0057】
<実施例1>
製造例1で合成したウレタンプレポリマー(P)(100部)、1,4−ブタンジオール(3部)、イオン液体(A−1)(5.4部)を500mlの4つ口フラスコに入れ、スリーワンモーター(アズワン社製)を用いて150rpmで30℃で1時間混合することで、マイクロ波硬化性組成物(X−1)を得た。イオン液体(A)の含有量はマイクロ波硬化性組成物(X)の重量に対して、5重量%であった。
【0058】
<実施例2>
分子内のアクリレート基数が2で、分子量が約900のエポキシアクリレートEBECRYL 3105(ダイセル・サイテック社製)(70部)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(12.4部)、過酸化ベンゾイル(2.5部)、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体(0.9部)(関東化学社製)を500mlの4つ口フラスコに入れ、スリーワンモーター(アズワン社製)を用いて150rpmで30℃で1時間混合することで、マイクロ波硬化性組成物(X−2)を得た。イオン液体(A)の含有量はマイクロ波硬化性組成物(X)の重量に対して、1重量%であった。
【0059】
<実施例3>
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(油化シェルエポキシ)(100部)と、エピキュア113(4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサン)アミン)(油化シェルエポキシ)(30部)と、イオン液体(A−2)(10部)を500mlの4つ口フラスコに入れ、スリーワンモーター(アズワン社製)を用いて150rpmで30℃で1時間混合することで、マイクロ波硬化性組成物(X−4)を得た。イオン液体(A)の含有量はマイクロ波硬化性組成物(X)の重量に対して、7.1重量%であった。
【0060】
<実施例4>
製造例1で合成したウレタンプレポリマー(P)(100部)、1,4−ブタンジオール(3部)、イオン液体(A−3)(34部)を500mlの4つ口フラスコに入れ、スリーワンモーター(アズワン社製)を用いて150rpmで30℃で1時間混合することで、マイクロ波硬化性組成物(X−1)を得た。イオン液体(A)の含有量はマイクロ波硬化性組成物(X)の重量に対して、25重量%であった。
【0061】
<実施例5>
分子内のアクリレート基数が2で、分子量が約900のエポキシアクリレートEBECRYL 3105(ダイセル・サイテック社製)(70部)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(12.4部)、過酸化ベンゾイル(2.5部)、イオン液体(A−4)(0.9部)を500mlの4つ口フラスコに入れ、スリーワンモーター(アズワン社製)を用いて150rpmで30℃で1時間混合することで、マイクロ波硬化性組成物(X−5)を得た。イオン液体(A)の含有量はマイクロ波硬化性組成物(X)の重量に対して、1重量%であった。
【0062】
<実施例6>
製造例1で合成したウレタンプレポリマー(P)(100部)、1,4−ブタンジオール(3部)、イオン液体(A−5)(12部)を500mlの4つ口フラスコに入れ、スリーワンモーター(アズワン社製)を用いて150rpmで30℃で1時間混合することで、マイクロ波硬化性組成物(X−1)を得た。イオン液体(A)の含有量はマイクロ波硬化性組成物(X)の重量に対して、10重量%であった。
【0063】
<実施例7>
分子内のアクリレート基数が2で、分子量が約900のエポキシアクリレートEBECRYL 3105(ダイセル・サイテック社製)(70部)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(12.4部)、過酸化ベンゾイル(2.5部)、イオン液体(A−6)(0.1部)を500mlの4つ口フラスコに入れ、スリーワンモーター(アズワン社製)を用いて150rpmで30℃で1時間混合することで、マイクロ波硬化性組成物(X−5)を得た。イオン液体(A)の含有量はマイクロ波硬化性組成物(X)の重量に対して、0.1重量%であった。
【0064】
<比較例1>
製造例1で合成したウレタンプレポリマー(P)(100部)、1,4−ブタンジオール(3部)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとテトラフルオロボレートアニオンからなるイオン液体(5.4部)(関東化学社製)を500mlの4つ口フラスコに入れ、スリーワンモーター(アズワン社製)を用いて150rpmで30℃で1時間混合することで、マイクロ波硬化性組成物(X’−1)を得た。イオン液体(A)の含有量はマイクロ波硬化性組成物(X)の重量に対して、5重量%であった。
【0065】
<比較例2>
分子内のアクリレート基数が2で、分子量が約900のエポキシアクリレートEBECRYL 3105(ダイセル・サイテック社製)(70部)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(12.4部)、過酸化ベンゾイル(2.5部)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン(0.9部)(関東化学社製)を500mlの4つ口フラスコに入れ、スリーワンモーター(アズワン社製)を用いて150rpmで30℃で1時間混合することで、マイクロ波硬化性組成物(X’−2)を得た。イオン液体(A)の含有量はマイクロ波硬化性組成物(X)の重量に対して、1重量%であった。
【0066】
<比較例3>
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(油化シェルエポキシ)(100部)と、エピキュア113(4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサン)アミン)(油化シェルエポキシ)(30部)と、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン(10部) (関東化学社製)を500mlの4つ口フラスコに入れ、スリーワンモーター(アズワン社製)を用いて150rpmで30℃で1時間混合することで、マイクロ波硬化性組成物(X’−3)を得た。イオン液体(A)の含有量はマイクロ波硬化性組成物(X)の重量に対して、7.1重量%であった。
【0067】
<比較例4>
製造例1で合成したウレタンプレポリマー(P)(100部)、1,4−ブタンジオール(3部)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン(34部)を500mlの4つ口フラスコに入れ、スリーワンモーター(アズワン社製)を用いて150rpmで30℃で1時間混合することで、マイクロ波硬化性組成物(X’−4)を得た。イオン液体(A)の含有量はマイクロ波硬化性組成物(X)の重量に対して、25重量%であった。
【0068】
<比較例5>
分子内のアクリレート基数が2で、分子量が約900のエポキシアクリレートEBECRYL 3105(ダイセル・サイテック社製)(70部)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(12.4部)、過酸化ベンゾイル(2.5部)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン(0.9部)を500mlの4つ口フラスコに入れ、スリーワンモーター(アズワン社製)を用いて150rpmで30℃で1時間混合することで、マイクロ波硬化性組成物(X’−5)を得た。イオン液体(A)の含有量はマイクロ波硬化性組成物(X)の重量に対して、1重量%であった。
【0069】
<比較例6>
製造例1で合成したウレタンプレポリマー(P)(100部)、1,4−ブタンジオール(3部)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン(12部)を500mlの4つ口フラスコに入れ、スリーワンモーター(アズワン社製)を用いて150rpmで30℃で1時間混合することで、マイクロ波硬化性組成物(X’−6)を得た。イオン液体(A)の含有量はマイクロ波硬化性組成物(X)の重量に対して、10重量%であった。
【0070】
<比較例7>
分子内のアクリレート基数が2で、分子量が約900のエポキシアクリレートEBECRYL 3105(ダイセル・サイテック社製)(70部)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(12.4部)、過酸化ベンゾイル(2.5部)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン(0.1部)を500mlの4つ口フラスコに入れ、スリーワンモーター(アズワン社製)を用いて150rpmで30℃で1時間混合することで、マイクロ波硬化性組成物(X’−7)を得た。イオン液体(A)の含有量はマイクロ波硬化性組成物(X)の重量に対して、0.1重量%であった。
【0071】
<マイクロ波照射による硬化試験>
マイクロ波硬化性組成物(X−1)〜(X−7)、及び(X’−1)〜(X’−7)を、100×100×10mmのテフロン製の容器に、2mmの膜厚になるように展開した後、マイクロ波照射装置μリアクター(四国計測工業製)内に入れ、500Wの条件で120秒間マイクロ波照射を行ない、マイクロ波硬化性組成物の硬化を行った。
厚さ2.0mmのシートが得られた。このシートについて、以下の試験方法で強度試験の測定を行なった。その結果を表1に示した。
【0072】
<硬化物強度試験>
(1)引張破断点強度および引張破断点伸び
JIS K6301(1995年改正)に従い、引張速度200mm/分で引張試験(オートグラフAG−500N/50N IS、島津製作所製)を行なって測定した。
(2)摩耗量テーバー摩耗試験
JIS K7204(1999年改正)に従い、摩耗輪(CS17/1kg荷重)が1000回転した後の試験片の重量を測定し、試験前後の試料片の重量の変化量を摩耗量とした。
(3)耐熱性試験
100℃に設定したオーブン中に、2mm厚のJIS K6301規格(1995年改正)で定められている3号ダンベルを100時間吊し、ダンベルの外観及び重量の変化を測定した。自重による変形はダンベルの上端から下端の長さで評価を行い、重量変化はダンベル全体の重量変化を測定した。これらの変化のいずれもが5%以下のダンベルを合格とし、一方もしくは両方が5%を超えるものを不合格とした。
(4)ブリードアウト物の有無
25℃で2週間放置後のシートについて、表面のブリードアウト物の有無を、目視により確認を行った。ブリードアウト物の有無を分りやすくするため、ろ紙でシート表面を軽く拭いた。ブリードアウト物が確認されたものを×、それ以外を○で判定した。
実施例を表1、それぞれに対応する比較例を表2に示した。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
表1及び表2より、本発明のマイクロ波硬化性組成物(X)は、マイクロ波を照射することにより、重合性化合物(D)と反応する官能基(f)を有さないイオン液体(A)を含有するマイクロ波硬化性組成物(比較例)と比較して、高強度、耐熱性、耐ブリードアウト性に優れる樹脂硬化物が得られることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のマイクロ波硬化性組成物は、接着剤、コーティング剤、塗料、レジスト材料、ポリマー製の各種成形物、レンズ、フィルム等の各種光学成形材料など、これまでオーブン、電気炉などによる加熱、またはUV硬化、電子線硬化などの方法により固化定着を行っていたものを、マイクロ波照射により強力に固化定着させることができるようになるため、省エネ、被接着体への熱履歴低減できる点、実用的な強度を持つ点からも極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン液体(A)と重合性化合物(D)を含有するマイクロ波硬化性組成物であって、イオン液体(A)の分子内に重合性化合物(D)と反応する官能基(f)を少なくとも1つ有することを特徴とするマイクロ波硬化性組成物(X)。
【請求項2】
官能基(f)がビニル基を含み、重合性化合物(D)がビニル化合物を含有する請求項1に記載の組成物(X)。
【請求項3】
官能基(f)がヒドロキシル基を含み、重合性化合物(D)がイソシアネート基又はブロックドイソシアネート基含有化合物と活性水素含有化合物との混合物を含有する請求項1に記載の組成物(X)。
【請求項4】
組成物(X)の重量に対して、イオン液体(A)の含有量が0.1〜25重量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物(X)。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物(X)にマイクロ波を照射することを特徴とする重合性化合物(D)の重合方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物(X)を硬化してなることを特徴とする硬化物。



【公開番号】特開2009−227949(P2009−227949A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106372(P2008−106372)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】