説明

マイクロ流体システム用支持ユニット及びマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法

【課題】製造が容易、且つ反応や分析の工程数や量を制限しないマイクロ流体システム用支持ユニットを提供する。
【解決手段】第一の支持体2と、この第一の支持体2の表面に設けられた第一の接着剤層1aと、第一の接着剤層1aの表面に任意の形状に敷設された複数の中空フィラメント501〜508からなる第一の中空フィラメント群と、この第一の中空フィラメント群に直交する方向に敷設された複数の中空フィラメント511〜518からなる第二の中空フィラメント群と、この第二の中空フィラメント群の表面に設けられた第二の接着剤層1bと、第二の接着剤層1bの表面に設けられた第二の支持体6とを備える。第一及び第2二の中空フィラメント群は、流路層を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体上に中空フィラメントを所定の形状に敷設固定したマイクロ流体システム用支持ユニット及びマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学や生化学の分野ではマイクロ電子機械システム(Micro Electro Mechanical System:MEMS)技術を応用した反応系や分析装置の小型化に関する研究が進められている。従来の研究開発では、構成要素の一つとなるマイクロモータ、マイクロポンプの単一機能を有するマイクロ化した機械要素(マイクロマシン)がある(例えば非特許文献1、2参照)。
【0003】
目的の化学反応や化学分析を行うためには、マイクロマシンなどの各種部品を複数組み合わせてシステム化する必要がある。一般にそれらのシステムの完成形は、マイクロリアクター(Micro Reactor System)、マイクロ化学分析システム(Micro Total Analysis System:μTAS)などと呼称されている。通常、マイクロマシンは半導体製造プロセスを適用してシリコンチップ上に形成する。複数の要素を一つのチップに形成(集積)し、システム化することは、原理的には可能であり、その取り組みも実際行われている(例えば、非特許文献3参照)。しかし、その作製プロセスは複雑であり、量産レベルでこれを製造することは困難と予想されている。複数のマイクロマシンなどを接続して流体回路(システム)を形成する方法として、シリコン基板の所定の位置にエッチング等で溝を形成し流路とするチップ型基板(ナノリアクター)が提案されている。上記の集積化する方法より製造ははるかに容易というメリットがある。しかし、流路断面積が小さく流体と溝側面との界面抵抗が大きく、その流路長は最大でmm単位といったところが現状であり、実際に行われる合成反応や化学分析では、反応や分析のステップ数や量が制限されてしまう。
【非特許文献1】庄子,「化学工業」,2001年4月,第52巻,第4号,p.45−55
【非特許文献2】前田,「エレクトロニクス実装学会誌」,2002年1月,第5巻,第1号,p.25−26
【非特許文献3】伊永,「日本学術会議50周年記念環境工学連合講演論文集」,1999年,第14号,p.25−32
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、その作製プロセスは複雑であり、量産レベルでこれを製造することは困難と予想されている。そのため近年では、複数のマイクロマシンなどを接続して流体回路を形成する方法として、シリコン基板の所定の位置にエッチング等で溝を形成し流路とするチップ型基板が提案されている。この方法には上記の集積化する方法よりチップ型基板の製造が、はるかに容易というメリットがある。しかし、その一方でこの方法では、流路断面積が小さく流体と溝側面との界面抵抗が大きく、その流路長は最大でmm単位が現状であり、実際に行われる合成反応や化学分析では、反応や分析のステップ数や量が制限されてしまう問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。即ち、本発明の目的は、製造が容易で、且つ反応や分析のステップ数や量を制限しないcm単位の長い距離のマイクロ流体システム用支持ユニットを提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、複雑な流体回路であっても場所を要しない小型マイクロ流体システム用支持ユニットを提供することである。
【0007】
本発明の更に他の目的は、複雑な流体回路を形成できるマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の特徴は、(イ)第一の支持体と、(ロ)この第一の支持体の表面に設けられた第一の接着剤層と、(ハ)この第一の接着剤層の表面に任意の形状に敷設された中空フィラメントとを備え、(ニ)この第一の接着剤層の表面に任意の形状に敷設されたマイクロ流体システムの流路層として機能する中空フィラメントとを備えるマイクロ流体システム用支持ユニットであることを要旨とする。
【0009】
本発明の第1の特徴においては、この中空フィラメンに交差する形で更に中空フィラメントを立体的に敷設することが出来るため、精度が良く、製造が容易で、且つ反応や分析のステップ数や量を制限しないcm単位の長い距離のマイクロ流体システム用支持ユニットを提供することが出来る。更に、本発明の第1の特徴によれば、複雑な流体回路であっても場所を要しない小型マイクロ流体システム用支持ユニットを提供することが出来るため、マイクロ流体システム自体のコンパクト化を図ることも出来る。
【0010】
又、本発明の第2の特徴は、(イ)第一の支持体と、(ロ)この第一の支持体の表面に設けられた第一の接着剤層と、(ハ)第一の接着剤層の表面に任意の形状に敷設され、それぞれがマイクロ流体システムの複数の流路層として機能する複数の中空フィラメントからなる第一の中空フィラメント群とを備えるマイクロ流体システム用支持ユニットであることを要旨とする。
【0011】
本発明の第2の特徴においては、複数の中空フィラメントからなる第一の中空フィラメント群に、これらに交差する複数の中空フィラメントからなる第二の中空フィラメント群を立体的に敷設することが出来るため、精度が良く、製造が容易で、且つ反応や分析のステップ数や量を制限しないcm単位の長い距離のマイクロ流体システム用支持ユニットを提供することが出来る。更に本発明の第1の特徴によれば、複雑な流体回路であっても場所を要しない小型マイクロ流体システム用支持ユニットを提供することが出来るため、マイクロ流体システム自体のコンパクト化を図ることも出来る。
【0012】
本発明の第3の特徴は、(イ)第一の支持体の表面に、第一の接着剤層を形成するステップと、(ロ)この第一の接着剤層の表面に中空フィラメントを敷設するステップとを含むマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法であることを要旨とする。
【0013】
本発明の第3の特徴に係るマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法は、第1の特徴で説明したマイクロ流体システム用支持ユニットを用いる製造方法である。本発明の第3の特徴によれば、複雑な流体回路を形成できる小型のマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法を提供することが出来る。
【0014】
本発明の第4の特徴は、(イ)第一の支持体の表面に、第一の接着剤層を形成するステップと、(ロ)この第一の接着剤層の表面に複数の中空フィラメントからなる第一の中空フィラメント群を敷設するステップとを含むマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法であることを要旨とする。
【0015】
本発明の第4の特徴に係るマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法は、第2の特徴で説明したマイクロ流体システム用支持ユニットを用いる製造方法である。本発明の第4の特徴によれば、複雑な流体回路を形成できる小型のマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法を提供することが出来る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、製造が容易で、且つ反応や分析の工程数や量を制限しないcm単位の長い距離のマイクロ流体システム用支持ユニットを提供することが出来る。
【0017】
この結果、本発明によれば、精度が良く、且つ製造ばらつきが少ない流体回路(マイクロ流体システム)を提供することが出来る。更に、立体的に複数の中空フィラメントからなる第一の中空フィラメント群とこれに直交する複数の中空フィラメントからなる第二の中空フィラメント群を敷設できることから複雑な流体回路であっても小型のマイクロ流体システムを提供することが出来る。
【0018】
又、本発明によれば、中空フィラメントを配列し流体の流路としたマイクロ流体システム用支持ユニットと、そのようなマイクロ流体システム用支持ユニットを精度良くかつ製造ばらつきが少なく製造する方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0020】
(第1の実施の形態)
(マイクロ流体システム用支持ユニット)
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロ流体システム用支持ユニットは、第一の支持体2と、この第一の支持体2の表面に設けられた第一の接着剤層1aと、第一の接着剤層1aの表面に任意の形状に敷設された複数の中空フィラメント501,502,503,・・・・・,508からなる第一の中空フィラメント群と、この第一の中空フィラメント群に交差する方向に敷設された複数の中空フィラメント511,512,513,・・・・・,518からなる第二の中空フィラメント群と、この第二の中空フィラメント群の表面に設けられた第二の接着剤層1bと、第二の接着剤層1bの表面に設けられた第二の支持体6とを備える。複数の中空フィラメント501,502,503,・・・・・,508からなる第一の中空フィラメント群、及び複数の中空フィラメント511,512,513,・・・・・,518からなる第二の中空フィラメント群は、それぞれ本発明の第1の実施の形態に係るマイクロ流体システム用支持ユニットの薬液の流路層を構成している。
【0021】
複数の中空フィラメント501〜508及び511〜518の内径及び外径は目的に応じて選択すれば良いが、ミリリットル(mL)〜マイクロリットル(μL)単位の流体を流すことから、内径は、φ0.05mm〜0.5mm程度のものが好ましい。この様な径の中空フィラメント501〜508及び511〜518を作製する場合は、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、4フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)などの材質が特に適している。φ0.05mm以下の内径にすると、中空フィラメント501〜508及び511〜518の内壁面と流体との界面抵抗の影響が無視できなくなる。一方、φ0.5mmより大きい内径では流体を連続的に流すためには高圧が必要となり他の部品への負担が増え、又流体中への気泡の混入などが生じてしまう。複数の中空フィラメント501〜508からなる第一の中空フィラメント群、及び複数の中空フィラメント511〜518からなる第二の中空フィラメント群に流している流体に化学反応を生じさせる場合は、中空フィラメント501〜508,511〜518は耐薬品性を備えるものが良い。又、中空フィラメント501〜508,511〜518に流している流体に光を照射し、光化学反応を生じさせたり、分光分析をする場合は、中空フィラメント501〜508,511〜518に光透過性があると良い。光透過率は目的に応じた値で良いが、目的波長において80%以上であることが好ましく、更に、90%以上あれば最適である。即ち、図9(a)に示すように、所定箇所の第二の支持体6、第二の接着剤層1b、及び中空フィラメント58が透明であること、又は中空フィラメント58が露出し、且つ少なくともこの箇所の中空フィラメント58が透明であると良い。
【0022】
中空フィラメント501〜508,511〜518を第一の支持体2に固定することは、フリーの状態にすることと比較して、周囲の温度・電場・磁場など様々な環境を制御し易いという優れたメリットがある。このことは、化学反応や化学分析を行う際に有利であり、特にマイクロ化された反応系及び分析系においては不可欠である。又、部品とのアライメントが容易で接続し易い、且つ多数の中空フィラメント501〜508,511〜518をコンパクトに収容できるという利点もある。
【0023】
又、化学分析を行う場合、複数の中空フィラメント501〜508,511〜518を有していることが作業効率を高める点で良い。この場合、第一の中空フィラメント群を構成する複数の中空フィラメント501〜508は、同時に分析を開始した時、ほぼ同時に分析結果が得られなければならないという観点から、互いに等長であることが求められる。同様に、第二の中空フィラメント群を構成する複数の中空フィラメント511〜518も等長であることが求められる。つまり、試料の流入部から流出部まで外部から受けるエネルギー量が均一であり、更に他の中空フィラメントが受けるエネルギー量ともほとんど差がないことが重要である。この様な観点から、中空フィラメント501〜508,511〜518に伝わる熱の分布が均一になるように中空フィラメント501〜508,511〜518が2枚以上の支持体間に挟まれていることが好ましい。
【0024】
又、第一の中空フィラメント群を構成する複数の中空フィラメント501〜508及び第二の中空フィラメント群を構成する複数の中空フィラメント511〜518は、それぞれ互いに等間隔に配列されていることが好ましい。又、第一の中空フィラメント群を構成する複数の中空フィラメント501〜508及び第二の中空フィラメント群を構成する複数の中空フィラメント511〜518の管の厚みは均一である方が良い。
【0025】
複数の中空フィラメント501〜508、511〜518は、市販の各種材質のチューブを使用することが出来、目的に応じて任意の材質のものを選択すれば良い。例えば、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリスチレン樹脂(PS)、スチレン・アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(ABS)、ポリエチレン樹脂(PE)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリ4−メチルペンテン(TPX)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、PEEK、PI、PEI、PPS、酢酸セルロース、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、4フッ化・6フッ化プロピレン樹脂(FEP)、PFA、4フッ化エチレン・エチレン共重合体(ETFE)、3フッ化塩化エチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリアミド樹脂(ナイロン)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンテレフタレート(PPO)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリウレタン樹脂、ポリエステルエラストマ、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などの有機材質や、ガラス、石英、カーボンなどの無機材質がある。
【0026】
第一の支持体2の材質、形状、サイズなどは目的に応じて選定すれば良い。又第一の支持体2の板厚、フィルム厚の適正な範囲は目的や求められる機能によって異なる。例えば、第一の支持体2に電気絶縁性を求める場合は、プリント配線板などに用いられているエポキシ樹脂板やポリイミド樹脂板や、フレキシブル配線板に用いられているデュポン社製のカプトンフィルムに代表されるようなポリイミドフィルムや東レ社製のルミラーフィルムに代表されるようなPETフィルムを選定する。第一の支持体2の板厚(フィルム厚)は厚い方が好ましく、特には0.05mm以上であることが望ましい。又、第一の支持体2に放熱性を求める場合は、アルミ(Al)板、銅(Cu)板、ステンレス板、チタン(Ti)板などの金属製の板を選定する。第一の支持体2の板厚は更に厚い方が好ましく、特には0.5mm以上であることが望ましい。又、第一の支持体2に光透過性を求める場合は、ガラス、石英板など透明無機材料の板や、ポリカーボネートやアクリルなど透明有機材料の板やフィルムを選定する。第一の支持体2の板厚(フィルム厚)は薄い方が好ましく、特には0.5mm以下であることが望ましい。更に、第一の支持体2の表面に銅等の金属パターンをエッチングやめっきで形成したいわゆるフレキシブル回路基板やプリント回路基板を用いても良い。このことで、マイクロマシン、発熱素子、圧電素子、温度・圧力・歪み・振動・電圧・磁界など各種のセンサーや抵抗・コンデンサ・コイル・トランジスタやICなどの電子部品、更に半導体レーザ(LD)、発光ダイオード(LED)、及びフォトダイオード(PD)などの光部品など、様々な部品や素子を実装する端子や回路を形成でき、システム化が容易になる。
【0027】
第一の支持体2の表面に形成する第一の接着剤層1aは、感圧性や感光性を備える接着剤が好ましい。これらの材料は、圧力や光などを印加することで粘着性や接着性を発現させるので、中空フィラメント(中空キャピラリ)を機械的に敷設する場合に適する。感圧性接着剤では、高分子量合成ゴムやシリコーン樹脂系の接着剤が適する。高分子量合成ゴムの接着剤としては、例えば、トーネックス社製のビスタネックスMML−120の様なポリイソブチレンや、日本ゼオン社製のニポールN1432等のアクリロニトリルブタジエンゴムや、デュポン社製のハイパロン20の様なクロルスルホン化ポリエチレン等を用いることが出来る。この場合は、これら材料を溶剤に溶解して第一の支持体2に直接塗布乾燥して第一の接着剤層1aを形成することが出来る。更に、必要に応じてこれら材料に架橋剤を配合することも出来る。又、日東電工社製No.500やスリーエム社製のA−10、A−20、A−30等のアクリル樹脂系の両面粘着テープ等も使用できる。シリコーン樹脂系の接着剤としては、高分子量のポリジメチルシロキサン又はポリメチルフェニルシロキサンからなり末端にシラノール基を有したシリコーンゴムと、メチルシリコーンレジン又はメチルフェニルシリコーンといったシリコーンレジンとを主成分としたシリコーン接着剤が適している。凝集力を制御するため各種の架橋を行っても良い。例えば、シランの付加反応、アルコキシ縮合反応、アセトキシ縮合反応、過酸化物などによるラジカル反応などにより架橋を行うことが出来る。この様な接着剤として市販のものでは、YR3286(GE東芝シリコーン株式会社製、商品名)やTSR1521(GE東芝シリコーン株式会社製、商品名)、DKQ9−9009(ダウコーニング社製、商品名)などがある。感光性接着剤としては、例えば、プリント基板のエッチングレジストとして使用されているドライフィルムレジストやソルダーレジストインクやプリント基板の感光性ビルドアップ材等が適用できる。具体的には、日立化成工業(株)製のH−K440やチバガイギー社製のプロビマー等がある。特に、ビルドアップ配線板用途として提供されているフォトビア材料は、プリント配線板の製造工程やはんだによる部品実装工程にも耐えることが出来る。この様な材料としては、光によって架橋可能な官能基を有した共重合体或いは単量体を含んだ組成物及び/又は光の他に熱で架橋可能な官能基と熱重合開始剤を混合した組成物であれば何れも使用可能である。
【0028】
第一の接着剤層1aとしては、エポキシ樹脂、ブロム化エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ゴム分散エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂又はビスフェノール−A系エポキシ樹脂及びこれらエポキシ樹脂の酸変性物などが挙げられる。特に光照射を行って光硬化を行う場合にはこれらエポキシ樹脂と不飽和酸との変性物が好ましい。不飽和酸としては無水マレイン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、イタコン酸無水物、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。これらはエポキシ樹脂のエポキシ基に対し等量若しくは等量以下の配合比率で不飽和カルボン酸を反応させることによって得られる。このほかにもメラミン樹脂、シアネートエステル樹脂のような熱硬化性材料、或いはこのものとフェノール樹脂の組み合わせ等も好ましい適用例の一つである。他には可とう性付与材の使用も好適な組み合わせであり、その例としてはブタジェンアクリロニトリルゴム、天然ゴム、アクリルゴム、SBR、カルボン酸変性ブタジェンアクリロニトリルゴム、カルボン酸変性アクリルゴム、架橋NBR粒子、カルボン酸変性架橋NBR粒子等が挙げられる。この様な種々の樹脂成分を加えることで光硬化性、熱硬化性という基本性能を保持したまま硬化物に色々な性質を付与することが可能になる。例えばエポキシ樹脂やフェノール樹脂との組み合わせによって硬化物に良好な電気絶縁性を付与することが可能になる。ゴム成分を配合した時には硬化物に強靭な性質を与えると共に、酸化性薬液による表面処理によって硬化物表面の粗化を簡単に行うことが可能になる。又、通常使用される添加剤(重合安定剤、レベリング剤、顔料、染料等)を添加しても良い。又フィラーを配合することもなんら差し支えない。フィラーとしてはシリカ、溶融シリカ、タルク、アルミナ、水和アルミナ、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、エーロジル、炭酸カルシウム等の無機微粒子、粉末状エポキシ樹脂、粉末状ポリイミド粒子等の有機微粒子、粉末状ポリテトラフロロエチレン粒子等が挙げられる。これらのフィラーには予めカップリング処理を施してあっても良い。これらの分散はニーダー、ボールミル、ビーズミル、3本ロール等既知の混練方法によって達成される。この様な感光性樹脂の形成方法は、液状の樹脂をロールコート、カーテンコート、ディプコート等の方法で塗布する方式や、絶縁樹脂をキャリアフィルム上でフィルム化してラミネートで張合わせる方式を用いることが出来る。具体的には、日立化成工業(株)製のフォトビアフィルムBF−8000等がある。
【0029】
第二の支持体6は、第一の支持体2で示した各種の材料が使用できる。更に第二の支持体6と複数の中空フィラメント511〜518からなる第二の中空フィラメント群との間に、第二の接着剤層1bが挿入することで、複数の中空フィラメント501〜508からなる第一の中空フィラメント群、及び複数の中空フィラメント511〜518からなる第二の中空フィラメント群を保護する作用が一層増すので好ましい。第二の支持体6として網目状又は多孔性のフィルムを選択すれば、ラミネート時の気泡の抱き込みといった不具合が生じにくくなる。この網目状フィルム又は織物としては、東京スクリーン社製のポリエステルメッシュTB−70等があり、多孔性のフィルムとしては、セラニーズ社製のジュラガードやダイセル化学工業社製のセルガード2400等がある。
【0030】
第二の接着剤層1bは、第一の接着剤層1aで示した各種の材料が使用できる。
【0031】
(マイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法)
次に、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法について図2〜図8を用いて説明する。
【0032】
(イ)まず、図2に示すように、第一の支持体2の表面に、第一の支持体2と同一形状で、ほぼ同一サイズの第一の接着剤層1aを形成する。そして、図3に示すように、第一の接着剤層1aの表面の周辺部に均等に4つの矩形の離形層3a、3b、3c、3dを形成する。この様な離形層3a,3b,3c,3dを第一の接着剤層1aの表面に形成するには、第一の接着剤層1aの表面の所定の箇所に、市販の離形剤を予め塗布する方法や、離形フィルムを貼り付ける方法がある。次に、この第一の支持体2にカッター等でスリット4a,4b,4c,4dを設ける。スリット4a,4b,4c,4dは、図3(b)に示すように、例えば、4つの離形層3a、3b、3c、3dのそれぞれの内側の辺の近傍の位置に形成する。
【0033】
(ロ)次に、図4に示すように、第一の接着剤層1aが形成された第一の支持体2の表面において、離形層3bから離形層3dに向かう垂直方向に、複数の中空フィラメント501〜508からなる第一の中空フィラメント群を敷設する。この敷設の際には、図示を省略しているが、図5(a)と同様なNC布線機61を用いる(この様な布線機として、特開2001−59910号公報に開示されている布線装置がある。又、特公昭50−9346号公報に開示されている装置は布線時に荷重と超音波振動を印加することが出来る。更に、特公平7−95622号公報に開示されている装置は、荷重の印加とレーザ光の照射が可能である。)。NC布線機61は、数値制御され超音波振動と荷重の出力制御が可能であり、NC布線機61を用いることにより、複数の中空フィラメント501〜508からなる第一の中空フィラメント群の敷設パターンを精密に制御できる。具体的には、NC布線機61を第一の支持体2に対し、水平に移動させながら、中空フィラメント501〜508からなる第一の中空フィラメント群に荷重及び超音波による振動をかける。
【0034】
(ハ)次に、図5に示すように、複数の中空フィラメント511〜518からなる第二の中空フィラメント群を、すでに敷設された複数の中空フィラメント501〜508からなる第一の中空フィラメント群に交差するように、離形層3aから離形層3cに向かう方向に敷設する。この敷設の際には、図5(a)に示すようにNC布線機61を用いる。複数の中空フィラメント511〜518からなる第二の中空フィラメント群の敷設パターンを精密に制御できる。具体的には、NC布線機61を第一の支持体2に対し、水平に移動させながら、複数の中空フィラメント511〜518からなる第二の中空フィラメント群に荷重及び超音波による振動をかける。ただし、このNC布線機61は中空フィラメント501〜508からなる第一の中空フィラメント群と中空フィラメント511〜518からなる第二の中空フィラメント群とが交差する部分では荷重と超音波振動は止まるように設定する。第一の中空フィラメント群と第二の中空フィラメント群との交差部の近傍で、荷重及び/又は超音波振動を止めることで、中空フィラメント501〜508、511〜518への応力を低減し、中空フィラメント501〜508、511〜518の破損を防ぐことが出来る。
【0035】
(ニ)次に、図6に示すように、すでに敷設された複数の中空フィラメント501〜508からなる第一の中空フィラメント群、及び複数の中空フィラメント511〜518からなる第二の中空フィラメント群を覆うように、第一の支持体2の同一形状で、ほぼ同一サイズの第二の接着剤層1bを形成する。更に、第一の支持体2の同一形状で、同一サイズの第二の支持体6を用意し、第二の接着剤層1bの上に、第二の支持体6を接着(ラミネート)する。第二の支持体6をラミネートするには各種方法が考えられる。この時に第二の支持体6が網目状又は多孔性のフィルムの場合は、僅かの圧力をかけることで界面に抱き込まれる空気等もなく保護フィルムを第二の接着剤層1bに密着することが出来る。しかし、第二の支持体6が均一なフィルムの場合は、残存気泡は避けられない。この場合は、高圧でプレスする方法も考えられるが、中空フィラメント501〜508,511〜518に大きな力が加わり中空部分の変形が生じる。更に、第一の中空フィラメント群と第二の中空フィラメント群との交差部で局所的に大きな力がかかり破損してしまう等の問題がある。この様な場合は、真空ラミネート装置を用いて、第二の支持体6が第二の接着剤層1bに密着する前に真空状態にし、その後低圧で圧着することで、界面に抱き込まれる空気もなく中空フィラメント501〜508,511〜518に大きな応力が残存せず破損もないため好ましい。
【0036】
(ホ)その後、図7(b)の点線で示す所望の形状の切断線7に沿って、加工切断する。第二の支持体6をラミネートした後に、所望の形状にマイクロ流体システム用支持ユニットを加工する方法としては、カッターによる切断や、所望の形に予め作製した金属製の刃型を押し当てて切断加工する等の方法がある。しかし、カッターでは自動化に難があり、刃型は治工具の作製に手間がかかるため、NC駆動のレーザ加工機の方がデータの準備のみで作業できるため好ましい。又、レーザ加工機においても、切断専用の出力の大きな加工機よりも、プリント基板用の小径穴あけ用途のレーザ穴あけ機が好ましい。プリント基板用のレーザ穴あけ機は、単位時間当りのエネルギー出力が大きく同一の場所を複数のショット数で穴あけし、穴径の半分程度づつ移動させてゆく方式であり、レーザの焼け焦げが非常に少なく好ましい。切断線7は、図7(b)に示すように、予めスリット4a,4b,4c,4dを入れておいた位置4aに重なる様に加工切断する。図7(a)に示すように、予めスリット4a,4b,4c,4dを入れておくことにより、中空フィラメント518の端部近傍において、第一の接着剤層1aと第二の接着剤層1bが、自動的に剥離してくる。図示を省略しているが、他の中空フィラメント501〜508、511,512,513,・・・・・,517の端部も同様に、第一の接着剤層1aと第二の接着剤層1bとが自動的に剥離する。第一の接着剤層1aに複数の中空フィラメント501〜508からなる第一の中空フィラメント群、及び複数の中空フィラメント511〜518からなる第二の中空フィラメント群を敷設し、その後に第二の接着剤層1bを介して第二の支持体6を張合わせた構造では、複数の中空フィラメント501〜508,511〜518の端部を露出する工程が煩雑となる。このため、不要となって最後に除去される部分と、第一の支持体2として残存する部分の境界線となるところに予めスリット4a,4b,4c,4dを設けておけば、中空フィラメント501〜508,511〜518の端部を露出する処理が容易になる。
【0037】
(ヘ)図7(b)の点線で示す切断線7に沿って切断加工した後、中空フィラメント501〜508の端部付近に配置された離形層3b及び離形層3d、更に、中空フィラメント511〜518の端部付近に配置された離形層3a及び離形層3cを除去すれば、図1に示すマイクロ流体システム用支持ユニットが完成する。
【0038】
上記のように、不要となって最後に除去される第一の支持体2の端部の表面に、図4に示すように、離形層3a,3b,3c,3dを設けておけば、マイクロ流体システム用支持ユニットの端部から複数の中空フィラメント501〜508からなる第一の中空フィラメント群、及び複数の中空フィラメント511〜518からなる第二の中空フィラメント群をそれぞれ取り出す処理を更に容易に行うことが出来る。しかし、中空フィラメント501〜508、511〜518は、露出する部分の長さについて注意する必要がある。中空フィラメント501〜508、511〜518の露出しない部分は固定されており、中空フィラメント501〜508、511〜518中の流体に対し、温度、流速分布、泳動速度分布及び印加電圧等の因子を制御し易い。一方、中空フィラメント501〜508、511〜518の露出する部分は、固定されず自由な状態であるので、前述の各因子を制御することは難しいからである。又、中空フィラメント501〜508、511〜518の露出する部分は、取り扱い不注意等による折損を生じ易くなる。したがって、露出させる長さは可能な限り短くすることが重要であり、少なくとも露出させる部分の長さは、露出させない部分の長さより短くすることが望ましい。
【0039】
又、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法においては、中空の部材(中空フィラメント)501〜508、511〜518を用いているので、設計や製造には相応の工夫が必要がされている。上記した第一の中空フィラメント群と第二の中空フィラメント群との交差部の敷設条件の他に、保護フィルム層となる第二の支持体6の形成条件も工夫がされている。更に、複数の中空フィラメント501〜508からなる第一の中空フィラメント群、及び複数の中空フィラメント511〜518からなる第二の中空フィラメント群のそれぞれの直線部の敷設条件や中空フィラメント501〜508、511〜518の曲率条件も考慮する必要がある。これらの条件は中空フィラメント501〜508、511〜518の材質や第一の接着剤層1aの仕様に大きく依存するので一般的には設定できない。つまり、用いる中空フィラメント501〜508、511〜518や第一の接着剤層1aに適した設計・製造条件を設定する必要がある。この作業を怠ると、良好な中空部を確保できないばかりか、中空フィラメント501〜508、511〜518に欠陥を生じ流体が漏洩するといった事故などを生じる。
【0040】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係るマイクロ流体システム用支持ユニットは、図8に示すように、第一の接着剤層1a、第二の接着剤層1b、及び第二の支持体6を壁部とし、第一の支持体2を底部とする中継部8を備える点が図1に示した本発明の第1の実施の形態に係るマイクロ流体システム用支持ユニットと異なり、他は本発明の第1の実施の形態と同様であるので重複した記載は省略する。
【0041】
中継部8は、図8に示すように、第一の接着剤層1aと第二の接着剤層1bの間から中空フィラメント58を露出する構造になっている。露出した中空フィラメント58は、流体を排出する。中継部8は、排出された流体を混合、又は分岐させる。中継部8の形状やサイズは流体の流量に応じて決めれば良い。例えば、2〜3本の内径φ200μmの中空フィラメント58で形成した流路と、その中空フィラメント58を保持する第一の接着剤層1aと第二の接着剤層1bの厚さの合計が200μmの場合、中継部8はφ2mm〜φ7mm程度の円柱形状で良い。
【0042】
中継部8となる所定箇所の第一の接着剤層1a、第二の接着剤層1b、及び中空フィラメント58の除去加工にはレーザ加工が好ましい。特に、除去する部分の体積、即ち中継部8の体積がmm3単位以下の小さな場合、レーザ加工が好適である。レーザ加工に用いるレーザは、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等であり、第一の接着剤層1a、第二の接着剤層1b、及び中空フィラメント58の材質に応じて選択すれば良い。尚、中継部8をレーザで加工する場合は、第一の支持体2の表面にレーザのストッパとなる銅やアルミといった金属薄膜を形成したものを用いると良い。中継部8の体積がcm3単位以上の大きい範囲を除去する場合は、ドリル等の機械加工を適用しても良い。機械加工の場合、切削時に生じる樹脂くずを取り除くデスミア処理が追加される。
【0043】
第二の支持体6を中継部8の一部とする方法としては、第二の支持体6を第二の接着剤層1bを接着した後、第二の支持体6に中継部8の一部となる形状に加工を施す工程がある。この場合は、注射針等のニードルで第二の支持体6を突き刺す方法等が適する。
【0044】
又、他の方法としては、第一の接着剤層1aと第二の接着剤層1bに中継部8を形成する際、同時に第二の支持体6にも中継部8の一部となる形状に加工を施す方法がある。この場合は、前述のレーザで一括して加工をする方法等が適する。
【0045】
更に、他の方法としては、第二の支持体6に予め中継部8の一部となる形状に加工を施しておき、これを第二の接着剤層1bに接着する方法がある。第二の支持体6に施す加工法としてはドリル加工、パンチング、及びレーザ加工等がある。
【0046】
本発明の第2の実施の形態に係るマイクロ流体システム用支持ユニットによれば、中継部8を備えることによって、中空フィラメント58を流れる流体を混合又は分岐させることが出来る。更に、第二の支持体6を中継部8の一部にすることで、中継部8を開いた構造に出来るので、外部から中継部に新たな流体を注入する、又は中継部8にある流体を外部に取り出すことが出来る。
【0047】
(実施例1)
第一の支持体2に厚さ75μmのデュポン社製カプトン300Hを用い、その表面に、図2に示すように、第一の接着剤層1aとして、厚さ250μmで、室温で粘着性であるスリーエム社製VBH A−10フィルムをロールラミネートする。この第一の支持体2の所望の位置に、図3に示すように、離形層3a,3b,3c,3dとして片面離形紙を離形面が接着剤面が密着する様に設ける。更に、図4に示すように、カッターで、第一の支持体2の所望の位置に、スリット4a,4b,4c,4dを入れる。これに図5(a)に示すように、超音波振動と荷重の出力制御が可能でNC制御でX−Yテーブルを可動できるNC布線機61を用い、仁礼工業株式会社の高機能エンプラチューブ(材質:PEEK、内径0.2mm、外形0.4mm)62からなる中空フィラメント501〜508,511〜518を敷設する。敷設する中空フィラメント501〜508,511〜518には、荷重80gと周波数30kHzの超音波による振動をかける。図5(b)に示すように、中空フィラメント501〜508,511〜518の敷設は、半径5mmの円弧状に行い、交差する部分も設ける。その交差する部分の近傍では、荷重と超音波振動を止めることとする。第二の支持体6として、デュポン社製カプトン300Hの表面にスリーエム社製VBH A−10フィルムをロールラミネートしたものを用い、図6に示すように、真空ラミネートで複数の中空フィラメント511〜518からなる第二の中空フィラメント群を敷設した表面にラミネートする。その後の外形加工では、プリント基板用の小径穴あけ用途のレーザ穴あけ機を用い、パルス幅5ms、ショット数4ショットでφ0.2mmの穴を0.1mm間隔で移動させて、図7に示す所望の切断線7に沿って、幅広の十字の形に加工切断する。この時、0.4mmピッチで8本まとめてフラットケーブル状になる部分で予めスリット4a,4b,4c,4dを入れておいた部分と重なる様に加工する。その後、中空フィラメント501〜508,511〜518の端部付近の第一の支持体2に離形層3a,3b,3c,3dを貼り付けてある部分は容易に除去できる。そして、8本の全長20cmの中空フィラメント501〜508からなる第一の中空フィラメント群、及び8本の全長20cmの中空フィラメント511〜518からなる第二の中空フィラメント群を、それぞれの端部の10mmの長さを露出させた形状でマイクロ流体システム用支持ユニットを作製する。敷設部分全般、特に交差する部分で中空フィラメントの破損はない。
【0048】
この結果、複数の中空フィラメント501〜508からなる第一の中空フィラメント群、及び複数の中空フィラメント511〜518からなる第二の中空フィラメント群で形成した流路の位置ばらつきは、設計図面に対し、±10μm以内に収まる。マイクロ流体システム用支持ユニットを温度調節器内に入れ、80℃に保ち、液状の着色インクを一方の端から流入し、流出までの時間をストップウォッチ等の計測機器で計測した場合、8本ともほぼ同じタイミング(±1秒以下)で他端から流出する。
【0049】
(実施例2)
第一の支持体2に厚さ0.5mmのアルミ板を用い、図2に示すように、その表面に厚さ100μmの第一の接着剤層1aとして非粘着型感圧接着剤ダウコーニングアジア社製のS9009をロールラミネートする。又、図3に示すように、中空フィラメントの端部付近の表面で不要となる部分に、粘着性のないフィルムとして片面離形紙からなる離形層3a,3b,3c,3dを離形面が接着剤面に密着する様に設ける。これに、図4及び図5に示すように、超音波振動と荷重の出力制御が可能でNC制御でX−Yテーブルを可動できるNC布線機61を用い、ハギテック社のガラスチューブESG−2(内径0.8mm外径1mm)を敷設する。敷設する中空フィラメント501〜508、511〜518には、荷重100gと周波数20kHzの超音波による振動をかける。図5(b)に示すように、中空フィラメント501〜508、511〜518の敷設は、半径10mmの円弧状に行い、交差する部分も設ける。その交差する部分の近傍では、荷重と超音波振動を止めることとする。第二の支持体6には、フィルム支持体と同じデュポン社製カプトン200Hを用い、図6に示すように、真空ラミネートを用いて中空フィラメント501〜508、511〜518を施設した支持ユニット上にラミネートする。その際、流入部、流出部、及び交差部の中空フィラメント501〜508、511〜518近傍に温度測定用の熱電対を埋め込む。その後の、図7に示す外形加工では、プリント基板用の外形加工機を用いて所望の形に切断する。この時、1mmピッチで12本まとめてフラットケーブル状になる部分で予めスリット4a,4b,4c,4dを入れておいた部分と重なる様に加工する。その後、複数の中空フィラメント501〜508、511〜518の端部付近の支持体に粘着性のないフィルムを貼り付けてある部分は容易に除去でき、12本の全長40cmの中空フィラメント501〜508、511〜518を50mmの長さを露出させた形状のマイクロ流体システム用支持ユニットを作製できる。中空フィラメント501〜508、511〜518で形成した流路の位置ばらつきは設計図面に対し、±20μm以内に収まる。敷設部分全般、特に交差配線部分で中空フィラメント501〜508、511〜518の破損はない。
【0050】
共立電子産業製のフィルムヒートFTH−40をアルミ板裏面の全面に貼り付け90℃に設定する。約20℃の水を一方の端から流入し、他端から流出した水の温度を測定したところ、88±1℃である。又、流入部、流出部、及び交差部の各温度は89±0.5℃であり、精度良い温度制御が可能である。
【0051】
(実施例3)
図8に示すように、第一の支持体2に厚さ18μmの銅を表面に有する銅張積層板(板厚0.2mm)を用い、その表面に、第一の接着剤層1a及び第二の接着剤層1bとして、室温で非粘着性接着剤であるダウコーニングアジア社製S9009(厚さ200μm)をロールラミネートする。これに超音波振動と荷重の出力制御が可能でNC制御でX−Yテーブルを可動できるマルチワイヤ用布線機を用い、仁礼工業株式会社の高機能エンプラチューブ(材質:PEEK、内径0.2mm、外形0.4mm)を敷設する。敷設する中空フィラメント58には、荷重80gと周波数30kHzの超音波による振動をかける。中空フィラメント58の敷設は、半径5mmの円弧状に行い、交差する部分も設ける。その交差部の近傍では、荷重と超音波振動を止めることとする。第二の支持体6として、デュポン社製カプトン200Hの表面にダウコーニングアジア社製S9009(厚さ200μm)をロールラミネートしたものを用い、真空ラミネートで中空フィラメント58を敷設した表面にラミネートする。
【0052】
その後、中継部8となる箇所の第二の支持体6、第一の接着剤層1a、第二の接着剤層1b、及び中空フィラメント58に対して、プリント基板用の小径穴あけ用途のレーザ穴あけ機を用いパルス幅5ms、ショット数を4ショットでφ0.2mmの穴をあける。その後、ルーターで外形加工し、複数の流路が接続した中継部8を有するマイクロ流体システム用支持ユニットを作製できる。
【0053】
(その他の実施の形態)
本発明は上記の形態によって記載したが、この開示の一部をなす部分及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0054】
例えば、図9(a)に示すように、マイクロ流体システム用支持ユニットの一部に貫通孔を設け、カム付きモータなどで中空フィラメント58の一部に時間周期的な力を加えこの箇所の中空フィラメントを変形させ、この箇所にある流体を移動させて、脈動流を生じさせるマイクロポンプ、若しくはマイクロバルブのような使い方をする場合は、中空フィラメント58に弾性があると良い。特に、中空フィラメント58は、ヤング率で10MPa以下であることが好ましい。
【0055】
又、図9(b)に示すように、露出した中空フィラメント58の一部に金属膜59を形成し、電圧などを印加するための端子を形成することが出来る。この場合、Cu、Al、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、金(Au)、等を単層、或いは多層化してめっきや蒸着などで形成すると良い。
【0056】
又、マイクロ流体システム用支持ユニットは、図8(a),図8(b)に示すように、開口部である中継部8を備えていたが、中継部8が流体の混合又は分岐のみを行う場合、図10に示すように、第二の支持体6を除去加工しないで閉ざした構造にしても良い。
【0057】
更に、第一の中空フィラメント群と第二の中空フィラメント群は必ずしも90度に直交している必要はなく、交差していれば良い。したがって、例えば、第一及び第二の中空フィラメント群だけでなく、更に第三の中空フィラメント群を敷設することも可能である。
【0058】
一方、中空フィラメントは必ずしも交差させる必要はなく、図11及び図12に示すように、一方向に走行する複数の中空フィラメント501〜508からなる第一の中空フィラメント群のみから構成しても良い。
【0059】
又、図13に示すように、湾曲を描く複数の中空フィラメント511〜518を敷設しても良い。
【0060】
尚、中空フィラメントは、必ずしも複数敷設されていなくても良く、即ち中空フィラメントは単数であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロ流体システム用支持ユニットの断面図で、図1(b)は、A−A線矢印方向から見た断面図が図1(a)に対応する平面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法を説明する工程断面図(その1)である。
【図3】図3(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法を説明する工程断面図(その2)で、図3(b)は、A−A線矢印方向から見た断面図が図3(a)に対応する平面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法を説明する工程断面図(その3)で、図4(b)は、A−A線矢印方向から見た断面図が図4(a)に対応する平面図である。
【図5】図5(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法を説明する工程断面図(その4)で、図5(b)は、A−A線矢印方向から見た断面図が図5(a)に対応する平面図である。
【図6】図6(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法を説明する工程断面図(その5)で、図6(b)は、A−A線矢印方向から見た断面図が図6(a)に対応する平面図である。
【図7】図7(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法を説明する工程断面図(その6)で、図7(b)は、A−A線矢印方向から見た断面図が図7(a)に対応する平面図である。
【図8】図8(a)は、本発明の第2の実施の形態に係る中継部を備えるマイクロ流体システム用支持ユニットの鳥瞰図で、図8(b)は、図8(a)のA−A線方向の断面図である。
【図9】本発明のその他の実施の形態に係るマイクロ流体システム用支持ユニット用中空フィラメントの構造を説明する鳥瞰図である。
【図10】本発明のその他の実施の形態に係る中継部を備えるマイクロ流体システム用支持ユニットの断面図である。
【図11】図11(a)は、図11(c)に示す本発明の更に他の実施の形態に係るマイクロ流体システム用支持ユニットの平面図のA−A線矢印方向から見た断面図、図11(b)は、図11(c)に示す平面図のB−B線矢印方向から見た断面図である。
【図12】図11に示した本発明のその他の実施の形態に係るマイクロ流体システム用支持ユニットの鳥瞰図である。
【図13】本発明のその他の実施の形態に係るマイクロ流体システム用支持ユニットの変形例を示す鳥瞰図である。
【符号の説明】
【0062】
1a…第一の接着剤層
1b…第二の接着剤層
2…第一の支持体
3a,3b,3c,3d…離形層
4a,4b,4c,4d…スリット
6…第二の支持体
7…切断線
8…中継部
58,501〜508,511〜518…中空フィラメント
59…金属膜
61…NC布線機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の支持体と、
該第一の支持体の表面に設けられた第一の接着剤層と、
該第一の接着剤層の表面に任意の形状に敷設されたマイクロ流体システムの流路層として機能する中空フィラメント
とを備えることを特徴とするマイクロ流体システム用支持ユニット。
【請求項2】
第一の支持体と、
該第一の支持体の表面に設けられた第一の接着剤層と、
該第一の接着剤層の表面に任意の形状に敷設され、それぞれがマイクロ流体システムの複数の流路層として機能する複数の中空フィラメントからなる第一の中空フィラメント群
とを備えることを特徴とするマイクロ流体システム用支持ユニット。
【請求項3】
前記第一の中空フィラメント群の表面に設けられた第二の接着剤層と、
該第二の接着剤層の表面に設けられた第二の支持体
とを更に備えることを特徴とする請求項2に記載のマイクロ流体システム用支持ユニット。
【請求項4】
前記第一の中空フィラメント群に互いに交差する方向に敷設され、前記マイクロ流体システムの他の複数の流路層として機能する、複数の中空フィラメントからなる第二の中空フィラメント群を更に備えることを特徴とする請求項2又は3に記載のマイクロ流体システム用支持ユニット。
【請求項5】
前記複数の中空フィラメントの一部が、前記第一の支持体から露出していることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のマイクロ流体システム用支持ユニット。
【請求項6】
前記複数の中空フィラメントの少なくとも1本の一部に金属膜が形成されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のマイクロ流体システム用支持ユニット。
【請求項7】
前記複数の中空フィラメントの少なくとも1本の一部が、光透過部を備えることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載のマイクロ流体システム用支持ユニット。
【請求項8】
第一の支持体と、
該第一の支持体の表面に設けられた第一の接着剤層と、
該第一の接着剤層の表面に敷設された複数の中空フィラメントと、
前記第一の接着剤層と前記中空フィラメント上に設けられた第二の接着剤層と、
該第二の接着剤層の表面に設けられた第二の支持体と、
前記第一の接着剤層と前記第二の接着剤層に設けられ、前記中空フィラメントの経路を接続する中継部
とを備えることを特徴とするマイクロ流体システム用支持ユニット。
【請求項9】
前記中継部は前記第二の支持体の一部を含むことを特徴とする請求項8に記載のマイクロ流体システム用支持ユニット。
【請求項10】
第一の支持体の表面に、第一の接着剤層を形成するステップと、
該第一の接着剤層の表面に中空フィラメントを敷設するステップ
とを含むことを特徴とするマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法。
【請求項11】
第一の支持体の表面に、第一の接着剤層を形成するステップと、
該第一の接着剤層の表面に複数の中空フィラメントからなる第一の中空フィラメント群を敷設するステップ
とを含むことを特徴とするマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法。
【請求項12】
前記第一の接着剤層を形成するステップと、前記第一の中空フィラメント群を敷設するステップとの間に、
前記第一の接着剤層の表面の中空フィラメントを露出させる箇所に離形層を設けるステップと、
前記第一の支持体にスリットを設けるステップ
とを更に含み、前記第一の中空フィラメント群は前記一対の離形層の双方の表面に接して敷設されることを特徴とする請求項11に記載のマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法。
【請求項13】
前記第一の中空フィラメント群を敷設するステップの後、前記第一の中空フィラメント群に交差する方向に複数の中空フィラメントからなる第二の中空フィラメント群を敷設するステップを更に含むことを特徴とする請求項11又は12に記載のマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法。
【請求項14】
前記第一の中空フィラメント群を敷設するステップの後、
前記第一の中空フィラメント群の表面に、第二の接着剤層を形成するステップと、
該第二の接着剤層の表面に第二の支持体を接着するステップ
とを更に含むことを特徴とする請求項11又は12に記載のマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法。
【請求項15】
第一の支持体の表面に、第一の接着剤層を形成するステップと、
前記第一の接着剤層の表面に複数の中空フィラメントを敷設するステップと、
前記第一の接着剤層と前記中空フィラメント上に第二の接着剤層を形成するステップと、
前記第一の接着剤層及び前記第二の接着剤層に中継部を形成するステップと、
前記第二の接着剤層の表面に第二の支持体を接着するステップ
とを含むことを特徴とするマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法。
【請求項16】
前記第一の接着剤層及び前記第二の接着剤層に前記中継部を形成するステップは、更に前記第二の支持体も前記中継部の一部となるように形成することを含むことを特徴とする請求項15に記載のマイクロ流体システム用支持ユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−10687(P2007−10687A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254995(P2006−254995)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【分割の表示】特願2003−46414(P2003−46414)の分割
【原出願日】平成15年2月24日(2003.2.24)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】