マイクロ流路デバイス
【課題】安定した送液を実現するマイクロ流路デバイスを提供する。
【解決手段】液を流通させる流路が設けられたマイクロ流路デバイスであって、本流路と、前記本流路を挟んで該本流路にそれぞれ接続する一対の分流路と、を備え、前記本流路は、第1の区間と、第2の区間と、前記第1の区間と前記第2の区間とを連結する連結区間と、を含み、前記第2の区間は、前記第1の区間に比べて、底面と天井面との間隔が小さく、前記連結区間は、前記第1の区間から前記第2の区間に向けて、底面と天井面との間隔が次第に小さくなっており、前記本流路における前記一対の分流路との接続区間と、前記連結区間とは、重なりを有し、前記一対の分流路は、少なくとも前記接続区間と前記連結区間とが重なる区間において、前記本流路の底面及び天井面を跨いで該本流路に接続している。
【解決手段】液を流通させる流路が設けられたマイクロ流路デバイスであって、本流路と、前記本流路を挟んで該本流路にそれぞれ接続する一対の分流路と、を備え、前記本流路は、第1の区間と、第2の区間と、前記第1の区間と前記第2の区間とを連結する連結区間と、を含み、前記第2の区間は、前記第1の区間に比べて、底面と天井面との間隔が小さく、前記連結区間は、前記第1の区間から前記第2の区間に向けて、底面と天井面との間隔が次第に小さくなっており、前記本流路における前記一対の分流路との接続区間と、前記連結区間とは、重なりを有し、前記一対の分流路は、少なくとも前記接続区間と前記連結区間とが重なる区間において、前記本流路の底面及び天井面を跨いで該本流路に接続している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流路デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液体試料の分析にマイクロ流路デバイスが用いられている。マイクロ流路デバイスは、微細な流路に試料やその他の液を流通させ、流路内で化学的又は生化学的な反応を生じさせ、試料に含まれる検出対象物質を検出するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図10は、特許文献1に記載されたマイクロ流路デバイスを示す。
【0004】
特許文献1に記載されたマイクロ流路デバイス101は、試料に含まれるアレルゲンを電気化学的に検出するものである。マイクロ流路デバイス101は、2枚の基板部材102、103が積層されてなる基板104を備えており、これらの基板部材102、103の間に流路105が形成されている。流路105は、反応部106と、検出部107と、反応部106と検出部107とを連結する連結部108とを含んでいる。そして、反応部106には、試料に含まれるアレルゲンを特異的に吸着する抗体が固定されており、検出部107には、電極109が設けられている。
【0005】
流路105には、アレルゲンに所定の酵素を結合させる前処理が施された試料が流される。試料に含まれるアレルゲンは、反応部106に固定された抗体によって捕捉される。次いで、アレルゲンに結合した酵素によって電極活性物質に変化する基質材料を含む緩衝液が流される。緩衝液に含まれる基質材料は、反応部106を流れる過程で、反応部106に捕捉されたアレルゲンに結合している酵素によって電極活性物質に変化する。この電極活性物質が、検出部107に達し、電極109に作用して電流が生じる。この電流を測定することによって、試料に含まれるアレルゲンを検出する。
【0006】
特許文献1では、検出感度を高めるべく、検出部107における流路厚(底面と天井面との間隔)を、反応部106に比べて小さくしている。それにより、電極活性物質が電極109に作用しやすくなり、高感度化が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−337221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されたマイクロ流路デバイスにおいて、流路厚が互いに異なる反応部106と検出部107とを連結する連結部108は、気泡の発生を防止し、送液を安定させるべく、反応部106から検出部107に向けて流路厚が次第に小さくさなるテーパとさている。しかし、依然として、連結部108において気泡が生じ得る。
【0009】
図11は、図10のマイクロ流路デバイスの送液を模式的に示す。
【0010】
液Lは、その表面張力に起因して、流路105の隅や、流路105に露呈する基板部材102、103の境界(以下、これらを総称してエッジという)を伝って先行する傾向にある。そして、エッジは、流路105の幅方向の両側に同様に存在するが、いずれか片側のエッジを伝って先行する傾向にある(FIG.11A)。
【0011】
反応部106に比べて流路厚が小さい検出部107では、流速が大きくなり、液は急速に濡れ広がる。そのため、連結部108の幅方向の片側を先行して液が流れ、検出部107に達すると、後続する液が検出部107に達する以前に、検出部107の端部が液で満たされる。そのため、連結部108において、その幅方向の片側に気泡Aが巻き込まれる。そして、この気泡によって、液の流れが幅方向に不均一となり、安定した送液が阻害される。(FIG.11B〜FIG.11D)
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みされたものであり、安定した送液を実現するマイクロ流路デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
液を流通させる流路が設けられたマイクロ流路デバイスであって、前記流路は、本流路と、前記本流路を挟んで該本流路にそれぞれ接続する一対の分流路と、を備え、前記本流路は、第1の区間と、第2の区間と、前記第1の区間と前記第2の区間とを連結する連結区間と、を含み、前記第2の区間は、前記第1の区間に比べて、底面と天井面との間隔が小さく、前記連結区間は、前記第1の区間から前記第2の区間に向けて、底面と天井面との間隔が次第に小さくなっており、前記本流路における前記一対の分流路との接続区間と、前記連結区間とは、重なりを有し、前記一対の分流路は、少なくとも前記接続区間と前記連結区間とが重なる区間において、前記本流路の底面及び天井面を跨いで該本流路に接続しているマイクロ流路デバイス。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、連結区間において、その幅方向の片側に気泡が巻き込まれることを防止し、安定した送液を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態を説明するための、マイクロ流路デバイスの一例を示す図。
【図2】図1のマイクロ流路デバイスのII-II線断面を示す図。
【図3】図1のマイクロ流路デバイスの本流路と一対の分流路との接続箇所を示す図。
【図4】図1のマイクロ流路デバイスの本流路と一対の分流路との接続箇所を示す図。
【図5】図1のマイクロ流路デバイスの分流路におけるエッジの分断を模式的に示す図。
【図6】図1のマイクロ流路デバイスの送液を模式的に示す図。
【図7】図1のマイクロ流路デバイスの変形例であって、一対の分流路との接続箇所を示す図。
【図8】図7のマイクロ流路デバイスの本流路と一対の分流路との接続箇所を示す図。
【図9】図7のマイクロ流路デバイスの送液を模式的に示す図。
【図10】従来のマイクロ流路デバイスを示す図。
【図11】図10のマイクロ流路デバイスの送液を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び図2に、マイクロ流路デバイスの一例を示す。
【0017】
以下に説明するマイクロ流路デバイスは、検出対象物質を含む液体試料を流通させ、励起発光する標識物質が結合した検出対象物質を流路内に捕捉し、捕捉された検出対象物質に付着している標識物質の発光を観察し、それにより検出対象物質を検出するものである。ただし、本発明はこれに限定されず、例えば上述の従来技術のように電気化学的に検出するものにも適用可能である。
【0018】
マイクロ流路デバイス1は、基板2を備えている。基板2は、二枚の基板部材10、11が積層されて構成されている。下層の基板部材10の表面には、所定のパターンの微細な溝12が形成されている。基板部材11には、基板部材10の表面に接する裏面に、所定のパターンの微細な溝13が形成されており、また、厚み方向に貫通する二つの孔14、15が形成されている。基板部材10に基板部材11を積層し、基板部材10の溝12と基板部材11の溝13とを合わせることで、基板2の内部に流路3が形成される。孔14は、流路3の一方の端部に連通し、流路3に試料等の液を導入する導入孔となる。また、孔15は、流路3の他方の端部に重なり、流路3を流れた液を排出する排出孔となる。
【0019】
マイクロ流路デバイス1は、上述のとおり、標識物質の発光を観察して、検出対象物質を検出するものであるから、基板部材10、11の少なくともいずれかは透明である。なお、上述の従来技術のように電気化学的に検出する場合には、基板部材10、11の透明、不透明は問わない。
【0020】
基板部材10、11の材料には、例えば樹脂が用いられる。そして、流路3を構成するための溝12、13は、例えば溝12、13のパターンが形成された型に樹脂を注入し、これを固化して作製することができる。また、樹脂の平板に、溝12、13のパターンでホットエンボスを施して作製することもできる。なお、一方の基板部材にのみ溝を形成し、この溝に他方の基板部材で蓋をして流路を構成することもできる。
【0021】
流路3は、本流路4と、一対の分流路5とを備えている。
【0022】
本流路4は、導入区間20(第1の区間)と、検出区間21(第2の区間)と、導入区間20と検出区間21とを連結する連結区間22と、排出区間23と、を含んでいる。導入区間20は、導入孔14に接続しており、排出区間23は、排出孔15に接続している。
【0023】
検出区間21には、試料に含まれる検出対象物質を検出するための検出手段が設けられる。本例のマイクロ流路デバイス1は、上述のとおり、励起発光する標識物質が結合した検出対象物質を流路内に捕捉し、捕捉された検出対象物質に結合している標識物質の発光を観察し、それにより検出対象物質を検出するものであり、検出区間21には、検出対象物質を捕捉するための手段が設けられる。例えば、検出対象物質がアレルゲン等の抗原であれば、検出区間21には、その表面に、抗原を特異的に吸着して捕捉する抗体が固定される。なお、検出手段は、検出対象物質の検出方法に応じて適宜選択され、上述の従来技術のように電気化学的に検出する場合には、検出区間21の表面には電極が設けられる。
【0024】
検出区間21における流路厚(底面30と天井面31との間隔)T2は、導入区間20における流路深さT1に比べて小さくなっており、検出区間21は、導入区間20に比べて扁平である。それにより、検出手段が設けられている検出区間21の表面に、試料に含まれる検出対象物質が接触しやすくなり、検出感度の向上が図られる。導入区間20の流路厚T1は、典型的には1mm〜2mmである。検出区間21の流路厚T2は、毛細管力により試料が全体に浸潤するよう、好ましくは0.2mm以下である。そして、連結区間22は、その区間における流路厚が導入区間20から検出区間21に向けて次第に小さくなるテーパとされている。
【0025】
一対の分流路5は、本流路4を挟んで本流路4にそれぞれ接続している。本流路4における分流路5との接続区間24、即ち、分流路5の接続口25が延在している区間は、連結区間22に包含されており、接続区間24は、その全区間に亘って連結区間22に重なる。よって、分流路5の接続口25は、連結区間22にのみ開口している。なお、接続区間24は、連結区間22に一致してもよいし、また、導入区間20に及んでいてもよいし、また、検出区間21に及んでいてもよい。
【0026】
図3及び図4は、図1のマイクロ流路デバイスの本流路と一対の分流路との接続箇所を示す。なお、図4は、一方の基板部材を省略して示している。
【0027】
分流路5は、接続区間24における本流路4の底面30及び天井面31を跨いで本流路4に接続している。換言すれば、基板2の表面を基準に、分流路5の底面32は、接続区間24における本流路4の底面30より深い位置にあり、本流路4の底面30との間に段を形成する。それにより、接続区間24において、本流路4の底面30の側縁30aに隣接して空間がおかれる。また、分流路5の天井面33は、接続区間24における本流路4の天井面31より浅い位置にあり、本流路4の天井面31と間に段を形成する。それにより、接続区間24において、本流路4の天井面31の側縁に隣接して空間がおかれる。
【0028】
本流路4の隅は、その底面30、及び天井面31の側縁に沿って延在する。分流路5が、上記のように本流路4に接続することで、接続区間24において、本流路4の底面30の側縁30a、及び天井面31の側縁に隣接して空間がおかれる。そのため、本流路4の隅は、接続区間24において分断される。
【0029】
また、本流路4及び分流路5が、基板部材10、11との間に形成されることから、基板部材10、11の境界Bは、本流路4の底面30と天井面31との間、そして分流路5の底面32と天井面33との間に露呈する。分流路5が、接続区間24における本流路4の底面30及び天井面31を跨いで本流路4に接続することで、基板部材10、11の境界Bは、常に分流路5を経由する。さらに、分流路5が基板部材10、11に跨っていることで、基板部材10、11の境界Bは、分流路5内で切断される。
【0030】
図5に、分流路におけるエッジの切断を模式的に示す。
【0031】
図5において、実線は、分流路5を形成する基板部材10の溝12の、基板部材10の表面に現れる縁を示す。また、破線は、分流路5を形成する基板部材11の溝13の、基板部材11の裏面に現れる縁を示す。
【0032】
分流路5内での基板部材10、11の境界B(図3参照)は、互いに整合する基板部材10の溝12の縁と基板部材11の溝13の縁とで構成される。ここで、溝12、13の成形誤差や、基板部材10、11の組立誤差などにより、基板部材10の溝12の縁と基板部材11の溝13の縁とは交差する。その交差点Pにおいて、基板部材10、11の境界Bは切断される。
【0033】
以上のように構成されたマイクロ流路デバイス1を用い、アレルゲン等の抗原を検出する方法を簡単に説明する。
【0034】
抗原を含む液体試料に対して、励起発光する標識物質を抗原に結合させる前処理を施し、前処理を施した試料を導入孔14に注入する。排出孔15に減圧ポンプを接続し、導入孔14と排出孔15とに圧力差を生じさせ、導入孔14に注入された試料を流路3に引き込む。試料は、導入区間20、連結区間22、検出区間21、そして排出区間23を経て排出孔15より排出される。試料が検出区間21を流れる過程で、試料に含まれる抗原は、検出区間21の表面に固定された抗体に特異的に吸着され、捕捉される。そして、検出区間21に励起光を照射し、検出区間21に捕捉された抗原に結合している標識物質の発光を観察する。発光の有無、発光の強度から、試料に含まれていた抗原を検出する。
【0035】
なお、前処理によって抗原に標識物質を付着させるものとして説明したが、導入区間20の表面に標識物質を付着させ、或いは、標識物質を担持した担体を導入区間20に配置しておき、試料が導入区間20を流通する過程で、試料に含まれる抗原に標識物質を結合させるようにしてもよい。
【0036】
図6は、図1のマイクロ流路デバイスの送液を模式的に示す。
【0037】
導入区間20を流れる液Lは、上述のとおり、液の表面張力に起因して、導入区間20の幅方向のいずれか片側のエッジを伝って先行する。図示の例では、図中下側を伝って先行している。(FIG.6A)
【0038】
先行する液は、連結区間22に達し、そして、分流路5が接続している接続区間24の導入区間20側の端に達する。上述のとおり、底面30及び天井面31の側縁に沿って延在する本流路4の隅は、接続区間24において分断されている。また、上述のとおり、基板部材10、11の境界Bは、分流路5を経由している。よって、エッジを伝って先行する液は、境界Bを伝って分流路5に流入するが、本流路4においては、接続区間24の導入区間20側の端にとどまるか、あるいはその先行が抑制される。エッジを伝う液の先行を検出区間21まで持続して抑制するため、接続区間24は、連結区間22における検出区間21側の端に達するか、又は連結区間22における検出区間21側の端を越えて検出区間21に及んでいることが好ましい。(FIG.6B)
【0039】
エッジを伝って先行した液が、本流路4において接続区間24の導入区間20側の端にとどまっているか、あるいはその先行が抑制されている間に、後続する液が追い付き、その後は、連結区間22を流れる液は、連結区間22の幅方向の略中央部において先行するように流れる。なお、上述のとおり、基板部材10、11の境界Bは、分流路5内で切断されている。そのため、分流路5に流入した液が、境界Bを伝って本流路4に合流し、先行することはない。(FIG.6C)
【0040】
そして、連結区間22の幅方向の略中央部において先行するように流れる液は、検出区間21の幅方向の略中央から次第に両側に広がって検出区間21に流入する。それにより、連結区間22の片側における気泡の巻き込みが回避され、送液が安定する。(FIG.6D)
【0041】
図7及び図8は、図1のマイクロ流路デバイスの変形例であって、マイクロ流路デバイスの本流路と一対の分流路との接続箇所を示す。なお、図8は、一方の基板部材を省略して示している。
【0042】
図7及び図8に示すマイクロ流路デバイス1において、本流路4における分流路5との接続区間24は、連結区間22の検出区間21側の端から、導入区間20に及んでいる。
分流路5の流路厚T3は、導入区間20における本流路4の流路厚T1と同じとなっており、接続区間24のうち導入区間20と重なる区間24bにおいて、基板2の表面を基準に、分流路5の底面32と本流路4の底面30とは同じ深さに位置し、よって、分流路5の天井面33と本流路4の天井面31とは同じ深さに位置している。即ち、区間24bにおいて、分流路5の底面32は、本流路4の底面30と面一であり、分流路5の天井面33は、本流路4の天井面31と面一である。なお、接続区間24のうち連結区間22と重なる区間24aにおいては、分流路5は、本流路4の底面30及び天井面31を跨いで本流路4に接続している。
【0043】
本流路4の隅は、その底面30の側縁30a、及び天井面31の側縁に沿って延びる。また、分流路5の隅も、その底面32の縁32a、及び天井面33の縁に沿って延びる。分流路5が、上記のように本流路4に接続することで、本流路4の隅は、接続区間24の導入区間20側の端、即ち連結区間22の手前で分流路5の隅に接続する。また、基板部材10、11の境界Bも、接続区間24の導入区間20側の端、即ち連結区間22の手前で分流路5に引き込まれ、分流路5を経由する。
【0044】
図9は、図7のマイクロ流路デバイスの送液を模式的に示す。
【0045】
導入区間20を流れる液は、上述のとおり、液の表面張力に起因して、導入区間20の幅方向のいずれか片側のエッジを伝って先行する。図示の例では、図中下側を伝って先行している。(FIG.9A)
【0046】
先行する液は、分流路5が接続している接続区間24の導入区間20側の端に達する。上述のとおり、本流路4の隅は、そこで分流路5の隅に接続しており、基板部材10、11の境界Bもまた、分流路5に引き込まれている。よって、先行する液は、接続区間24の導入区間20側の端で分流路5に流入し、本流路4においては、接続区間24の導入区間20側の端に確実にとどまる。(FIG.9B)
【0047】
先行する液が、接続区間24の導入区間20側の端、即ち連結区間22の手前でとどまっている間に、後続する液が追い付き、その後は、本流路4を流れる液は、幅方向の略中央部において先行するようにして、接続区間24、それに連なる連結区間22を流れる。(FIG.9C)
【0048】
そして、連結区間22の幅方向の略中央部において先行するように流れる液は、検出区間21の幅方向の略中央から次第に両側に広がって検出区間21に流入する。それにより、連結区間22の片側における気泡の巻き込みが回避され、送液が安定する。(FIG.9D)
【0049】
このように、先行する液を、接続区間24の導入区間20側の端で、即ち連結区間22の手前で分流路5に流入させるようにすれば、本流路4の幅方向の略中央部において先行して流れる状態として液を連結区間22に到達させることができ、連結区間22の片側における気泡の巻き込みをより確実に回避することができる。
【0050】
以上説明したように、本明細書に開示されたマイクロ流路デバイスは、液を流通させる流路が設けられたマイクロ流路デバイスであって、前記流路は、本流路と、前記本流路を挟んで該本流路にそれぞれ接続する一対の分流路と、を備え、前記本流路は、第1の区間と、第2の区間と、前記第1の区間と前記第2の区間とを連結する連結区間と、を含み、前記第2の区間は、前記第1の区間に比べて、底面と天井面との間隔が小さく、前記連結区間は、前記第1の区間から前記第2の区間に向けて、底面と天井面との間隔が次第に小さくなっており、前記本流路における前記一対の分流路との接続区間と、前記連結区間とは、重なりを有し、前記一対の分流路は、少なくとも前記接続区間と前記連結区間とが重なる区間において、前記本流路の底面及び天井面を跨いで該本流路に接続している。
【0051】
また、本明細書に開示されたマイクロ流路デバイスは、前記接続区間が、前記第1の区間に及んでおり、前記一対の分流路の各々の底面が、前記本流路の前記第1の区間における底面と面一であり、前記一対の分流路の各々の天井面が、前記本流路の前記第1の区間における天井面と面一である。
【0052】
また、本明細書に開示されたマイクロ流路デバイスは、前記接続区間が、前記連結区間における前記第2の区間側の端に達しているか、又は前記第2の区間に及んでいる。
【0053】
また、本明細書に開示されたマイクロ流路デバイスは、複数の基板部材が積層されてなる基板を備え、前記本流路及び前記一対の分流路が、隣り合う二枚の前記基板部材の間に形成されており、前記一対の分流路が、これら二枚の基板部材に跨っている。
【0054】
また、本明細書に開示されたマイクロ流路デバイスは、前記第2の区間が、毛細管力で液体が浸潤する。
【0055】
また、本明細書に開示されたマイクロ流路デバイスは、前記第2の区間における底面と天井面との間隔が、0.2mm以下である。
【0056】
また、本明細書に開示されたマイクロ流路デバイスは、前記第2の区間に、該第2の区間を流れる液に含まれる検出対象物質を検出する検出手段が設けられている。
【0057】
また、本明細書に開示されたマイクロ流路デバイスは、前記検出対象物質が、抗原であり、前記検出手段が、前記抗原を特異的に吸着する抗体である。
【符号の説明】
【0058】
1 マイクロ流路デバイス
2 基板
3 流路
4 本流路
5 分流路
10 基板部材
11 基板部材
12 溝
13 溝
14 導入孔
15 排出孔
20 導入区間
21 検出区間
22 連結区間
23 排出区間
24 接続区間
25 接続口
30 底面
31 天井面
32 底面
33 天井面
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流路デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液体試料の分析にマイクロ流路デバイスが用いられている。マイクロ流路デバイスは、微細な流路に試料やその他の液を流通させ、流路内で化学的又は生化学的な反応を生じさせ、試料に含まれる検出対象物質を検出するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図10は、特許文献1に記載されたマイクロ流路デバイスを示す。
【0004】
特許文献1に記載されたマイクロ流路デバイス101は、試料に含まれるアレルゲンを電気化学的に検出するものである。マイクロ流路デバイス101は、2枚の基板部材102、103が積層されてなる基板104を備えており、これらの基板部材102、103の間に流路105が形成されている。流路105は、反応部106と、検出部107と、反応部106と検出部107とを連結する連結部108とを含んでいる。そして、反応部106には、試料に含まれるアレルゲンを特異的に吸着する抗体が固定されており、検出部107には、電極109が設けられている。
【0005】
流路105には、アレルゲンに所定の酵素を結合させる前処理が施された試料が流される。試料に含まれるアレルゲンは、反応部106に固定された抗体によって捕捉される。次いで、アレルゲンに結合した酵素によって電極活性物質に変化する基質材料を含む緩衝液が流される。緩衝液に含まれる基質材料は、反応部106を流れる過程で、反応部106に捕捉されたアレルゲンに結合している酵素によって電極活性物質に変化する。この電極活性物質が、検出部107に達し、電極109に作用して電流が生じる。この電流を測定することによって、試料に含まれるアレルゲンを検出する。
【0006】
特許文献1では、検出感度を高めるべく、検出部107における流路厚(底面と天井面との間隔)を、反応部106に比べて小さくしている。それにより、電極活性物質が電極109に作用しやすくなり、高感度化が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−337221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されたマイクロ流路デバイスにおいて、流路厚が互いに異なる反応部106と検出部107とを連結する連結部108は、気泡の発生を防止し、送液を安定させるべく、反応部106から検出部107に向けて流路厚が次第に小さくさなるテーパとさている。しかし、依然として、連結部108において気泡が生じ得る。
【0009】
図11は、図10のマイクロ流路デバイスの送液を模式的に示す。
【0010】
液Lは、その表面張力に起因して、流路105の隅や、流路105に露呈する基板部材102、103の境界(以下、これらを総称してエッジという)を伝って先行する傾向にある。そして、エッジは、流路105の幅方向の両側に同様に存在するが、いずれか片側のエッジを伝って先行する傾向にある(FIG.11A)。
【0011】
反応部106に比べて流路厚が小さい検出部107では、流速が大きくなり、液は急速に濡れ広がる。そのため、連結部108の幅方向の片側を先行して液が流れ、検出部107に達すると、後続する液が検出部107に達する以前に、検出部107の端部が液で満たされる。そのため、連結部108において、その幅方向の片側に気泡Aが巻き込まれる。そして、この気泡によって、液の流れが幅方向に不均一となり、安定した送液が阻害される。(FIG.11B〜FIG.11D)
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みされたものであり、安定した送液を実現するマイクロ流路デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
液を流通させる流路が設けられたマイクロ流路デバイスであって、前記流路は、本流路と、前記本流路を挟んで該本流路にそれぞれ接続する一対の分流路と、を備え、前記本流路は、第1の区間と、第2の区間と、前記第1の区間と前記第2の区間とを連結する連結区間と、を含み、前記第2の区間は、前記第1の区間に比べて、底面と天井面との間隔が小さく、前記連結区間は、前記第1の区間から前記第2の区間に向けて、底面と天井面との間隔が次第に小さくなっており、前記本流路における前記一対の分流路との接続区間と、前記連結区間とは、重なりを有し、前記一対の分流路は、少なくとも前記接続区間と前記連結区間とが重なる区間において、前記本流路の底面及び天井面を跨いで該本流路に接続しているマイクロ流路デバイス。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、連結区間において、その幅方向の片側に気泡が巻き込まれることを防止し、安定した送液を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態を説明するための、マイクロ流路デバイスの一例を示す図。
【図2】図1のマイクロ流路デバイスのII-II線断面を示す図。
【図3】図1のマイクロ流路デバイスの本流路と一対の分流路との接続箇所を示す図。
【図4】図1のマイクロ流路デバイスの本流路と一対の分流路との接続箇所を示す図。
【図5】図1のマイクロ流路デバイスの分流路におけるエッジの分断を模式的に示す図。
【図6】図1のマイクロ流路デバイスの送液を模式的に示す図。
【図7】図1のマイクロ流路デバイスの変形例であって、一対の分流路との接続箇所を示す図。
【図8】図7のマイクロ流路デバイスの本流路と一対の分流路との接続箇所を示す図。
【図9】図7のマイクロ流路デバイスの送液を模式的に示す図。
【図10】従来のマイクロ流路デバイスを示す図。
【図11】図10のマイクロ流路デバイスの送液を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び図2に、マイクロ流路デバイスの一例を示す。
【0017】
以下に説明するマイクロ流路デバイスは、検出対象物質を含む液体試料を流通させ、励起発光する標識物質が結合した検出対象物質を流路内に捕捉し、捕捉された検出対象物質に付着している標識物質の発光を観察し、それにより検出対象物質を検出するものである。ただし、本発明はこれに限定されず、例えば上述の従来技術のように電気化学的に検出するものにも適用可能である。
【0018】
マイクロ流路デバイス1は、基板2を備えている。基板2は、二枚の基板部材10、11が積層されて構成されている。下層の基板部材10の表面には、所定のパターンの微細な溝12が形成されている。基板部材11には、基板部材10の表面に接する裏面に、所定のパターンの微細な溝13が形成されており、また、厚み方向に貫通する二つの孔14、15が形成されている。基板部材10に基板部材11を積層し、基板部材10の溝12と基板部材11の溝13とを合わせることで、基板2の内部に流路3が形成される。孔14は、流路3の一方の端部に連通し、流路3に試料等の液を導入する導入孔となる。また、孔15は、流路3の他方の端部に重なり、流路3を流れた液を排出する排出孔となる。
【0019】
マイクロ流路デバイス1は、上述のとおり、標識物質の発光を観察して、検出対象物質を検出するものであるから、基板部材10、11の少なくともいずれかは透明である。なお、上述の従来技術のように電気化学的に検出する場合には、基板部材10、11の透明、不透明は問わない。
【0020】
基板部材10、11の材料には、例えば樹脂が用いられる。そして、流路3を構成するための溝12、13は、例えば溝12、13のパターンが形成された型に樹脂を注入し、これを固化して作製することができる。また、樹脂の平板に、溝12、13のパターンでホットエンボスを施して作製することもできる。なお、一方の基板部材にのみ溝を形成し、この溝に他方の基板部材で蓋をして流路を構成することもできる。
【0021】
流路3は、本流路4と、一対の分流路5とを備えている。
【0022】
本流路4は、導入区間20(第1の区間)と、検出区間21(第2の区間)と、導入区間20と検出区間21とを連結する連結区間22と、排出区間23と、を含んでいる。導入区間20は、導入孔14に接続しており、排出区間23は、排出孔15に接続している。
【0023】
検出区間21には、試料に含まれる検出対象物質を検出するための検出手段が設けられる。本例のマイクロ流路デバイス1は、上述のとおり、励起発光する標識物質が結合した検出対象物質を流路内に捕捉し、捕捉された検出対象物質に結合している標識物質の発光を観察し、それにより検出対象物質を検出するものであり、検出区間21には、検出対象物質を捕捉するための手段が設けられる。例えば、検出対象物質がアレルゲン等の抗原であれば、検出区間21には、その表面に、抗原を特異的に吸着して捕捉する抗体が固定される。なお、検出手段は、検出対象物質の検出方法に応じて適宜選択され、上述の従来技術のように電気化学的に検出する場合には、検出区間21の表面には電極が設けられる。
【0024】
検出区間21における流路厚(底面30と天井面31との間隔)T2は、導入区間20における流路深さT1に比べて小さくなっており、検出区間21は、導入区間20に比べて扁平である。それにより、検出手段が設けられている検出区間21の表面に、試料に含まれる検出対象物質が接触しやすくなり、検出感度の向上が図られる。導入区間20の流路厚T1は、典型的には1mm〜2mmである。検出区間21の流路厚T2は、毛細管力により試料が全体に浸潤するよう、好ましくは0.2mm以下である。そして、連結区間22は、その区間における流路厚が導入区間20から検出区間21に向けて次第に小さくなるテーパとされている。
【0025】
一対の分流路5は、本流路4を挟んで本流路4にそれぞれ接続している。本流路4における分流路5との接続区間24、即ち、分流路5の接続口25が延在している区間は、連結区間22に包含されており、接続区間24は、その全区間に亘って連結区間22に重なる。よって、分流路5の接続口25は、連結区間22にのみ開口している。なお、接続区間24は、連結区間22に一致してもよいし、また、導入区間20に及んでいてもよいし、また、検出区間21に及んでいてもよい。
【0026】
図3及び図4は、図1のマイクロ流路デバイスの本流路と一対の分流路との接続箇所を示す。なお、図4は、一方の基板部材を省略して示している。
【0027】
分流路5は、接続区間24における本流路4の底面30及び天井面31を跨いで本流路4に接続している。換言すれば、基板2の表面を基準に、分流路5の底面32は、接続区間24における本流路4の底面30より深い位置にあり、本流路4の底面30との間に段を形成する。それにより、接続区間24において、本流路4の底面30の側縁30aに隣接して空間がおかれる。また、分流路5の天井面33は、接続区間24における本流路4の天井面31より浅い位置にあり、本流路4の天井面31と間に段を形成する。それにより、接続区間24において、本流路4の天井面31の側縁に隣接して空間がおかれる。
【0028】
本流路4の隅は、その底面30、及び天井面31の側縁に沿って延在する。分流路5が、上記のように本流路4に接続することで、接続区間24において、本流路4の底面30の側縁30a、及び天井面31の側縁に隣接して空間がおかれる。そのため、本流路4の隅は、接続区間24において分断される。
【0029】
また、本流路4及び分流路5が、基板部材10、11との間に形成されることから、基板部材10、11の境界Bは、本流路4の底面30と天井面31との間、そして分流路5の底面32と天井面33との間に露呈する。分流路5が、接続区間24における本流路4の底面30及び天井面31を跨いで本流路4に接続することで、基板部材10、11の境界Bは、常に分流路5を経由する。さらに、分流路5が基板部材10、11に跨っていることで、基板部材10、11の境界Bは、分流路5内で切断される。
【0030】
図5に、分流路におけるエッジの切断を模式的に示す。
【0031】
図5において、実線は、分流路5を形成する基板部材10の溝12の、基板部材10の表面に現れる縁を示す。また、破線は、分流路5を形成する基板部材11の溝13の、基板部材11の裏面に現れる縁を示す。
【0032】
分流路5内での基板部材10、11の境界B(図3参照)は、互いに整合する基板部材10の溝12の縁と基板部材11の溝13の縁とで構成される。ここで、溝12、13の成形誤差や、基板部材10、11の組立誤差などにより、基板部材10の溝12の縁と基板部材11の溝13の縁とは交差する。その交差点Pにおいて、基板部材10、11の境界Bは切断される。
【0033】
以上のように構成されたマイクロ流路デバイス1を用い、アレルゲン等の抗原を検出する方法を簡単に説明する。
【0034】
抗原を含む液体試料に対して、励起発光する標識物質を抗原に結合させる前処理を施し、前処理を施した試料を導入孔14に注入する。排出孔15に減圧ポンプを接続し、導入孔14と排出孔15とに圧力差を生じさせ、導入孔14に注入された試料を流路3に引き込む。試料は、導入区間20、連結区間22、検出区間21、そして排出区間23を経て排出孔15より排出される。試料が検出区間21を流れる過程で、試料に含まれる抗原は、検出区間21の表面に固定された抗体に特異的に吸着され、捕捉される。そして、検出区間21に励起光を照射し、検出区間21に捕捉された抗原に結合している標識物質の発光を観察する。発光の有無、発光の強度から、試料に含まれていた抗原を検出する。
【0035】
なお、前処理によって抗原に標識物質を付着させるものとして説明したが、導入区間20の表面に標識物質を付着させ、或いは、標識物質を担持した担体を導入区間20に配置しておき、試料が導入区間20を流通する過程で、試料に含まれる抗原に標識物質を結合させるようにしてもよい。
【0036】
図6は、図1のマイクロ流路デバイスの送液を模式的に示す。
【0037】
導入区間20を流れる液Lは、上述のとおり、液の表面張力に起因して、導入区間20の幅方向のいずれか片側のエッジを伝って先行する。図示の例では、図中下側を伝って先行している。(FIG.6A)
【0038】
先行する液は、連結区間22に達し、そして、分流路5が接続している接続区間24の導入区間20側の端に達する。上述のとおり、底面30及び天井面31の側縁に沿って延在する本流路4の隅は、接続区間24において分断されている。また、上述のとおり、基板部材10、11の境界Bは、分流路5を経由している。よって、エッジを伝って先行する液は、境界Bを伝って分流路5に流入するが、本流路4においては、接続区間24の導入区間20側の端にとどまるか、あるいはその先行が抑制される。エッジを伝う液の先行を検出区間21まで持続して抑制するため、接続区間24は、連結区間22における検出区間21側の端に達するか、又は連結区間22における検出区間21側の端を越えて検出区間21に及んでいることが好ましい。(FIG.6B)
【0039】
エッジを伝って先行した液が、本流路4において接続区間24の導入区間20側の端にとどまっているか、あるいはその先行が抑制されている間に、後続する液が追い付き、その後は、連結区間22を流れる液は、連結区間22の幅方向の略中央部において先行するように流れる。なお、上述のとおり、基板部材10、11の境界Bは、分流路5内で切断されている。そのため、分流路5に流入した液が、境界Bを伝って本流路4に合流し、先行することはない。(FIG.6C)
【0040】
そして、連結区間22の幅方向の略中央部において先行するように流れる液は、検出区間21の幅方向の略中央から次第に両側に広がって検出区間21に流入する。それにより、連結区間22の片側における気泡の巻き込みが回避され、送液が安定する。(FIG.6D)
【0041】
図7及び図8は、図1のマイクロ流路デバイスの変形例であって、マイクロ流路デバイスの本流路と一対の分流路との接続箇所を示す。なお、図8は、一方の基板部材を省略して示している。
【0042】
図7及び図8に示すマイクロ流路デバイス1において、本流路4における分流路5との接続区間24は、連結区間22の検出区間21側の端から、導入区間20に及んでいる。
分流路5の流路厚T3は、導入区間20における本流路4の流路厚T1と同じとなっており、接続区間24のうち導入区間20と重なる区間24bにおいて、基板2の表面を基準に、分流路5の底面32と本流路4の底面30とは同じ深さに位置し、よって、分流路5の天井面33と本流路4の天井面31とは同じ深さに位置している。即ち、区間24bにおいて、分流路5の底面32は、本流路4の底面30と面一であり、分流路5の天井面33は、本流路4の天井面31と面一である。なお、接続区間24のうち連結区間22と重なる区間24aにおいては、分流路5は、本流路4の底面30及び天井面31を跨いで本流路4に接続している。
【0043】
本流路4の隅は、その底面30の側縁30a、及び天井面31の側縁に沿って延びる。また、分流路5の隅も、その底面32の縁32a、及び天井面33の縁に沿って延びる。分流路5が、上記のように本流路4に接続することで、本流路4の隅は、接続区間24の導入区間20側の端、即ち連結区間22の手前で分流路5の隅に接続する。また、基板部材10、11の境界Bも、接続区間24の導入区間20側の端、即ち連結区間22の手前で分流路5に引き込まれ、分流路5を経由する。
【0044】
図9は、図7のマイクロ流路デバイスの送液を模式的に示す。
【0045】
導入区間20を流れる液は、上述のとおり、液の表面張力に起因して、導入区間20の幅方向のいずれか片側のエッジを伝って先行する。図示の例では、図中下側を伝って先行している。(FIG.9A)
【0046】
先行する液は、分流路5が接続している接続区間24の導入区間20側の端に達する。上述のとおり、本流路4の隅は、そこで分流路5の隅に接続しており、基板部材10、11の境界Bもまた、分流路5に引き込まれている。よって、先行する液は、接続区間24の導入区間20側の端で分流路5に流入し、本流路4においては、接続区間24の導入区間20側の端に確実にとどまる。(FIG.9B)
【0047】
先行する液が、接続区間24の導入区間20側の端、即ち連結区間22の手前でとどまっている間に、後続する液が追い付き、その後は、本流路4を流れる液は、幅方向の略中央部において先行するようにして、接続区間24、それに連なる連結区間22を流れる。(FIG.9C)
【0048】
そして、連結区間22の幅方向の略中央部において先行するように流れる液は、検出区間21の幅方向の略中央から次第に両側に広がって検出区間21に流入する。それにより、連結区間22の片側における気泡の巻き込みが回避され、送液が安定する。(FIG.9D)
【0049】
このように、先行する液を、接続区間24の導入区間20側の端で、即ち連結区間22の手前で分流路5に流入させるようにすれば、本流路4の幅方向の略中央部において先行して流れる状態として液を連結区間22に到達させることができ、連結区間22の片側における気泡の巻き込みをより確実に回避することができる。
【0050】
以上説明したように、本明細書に開示されたマイクロ流路デバイスは、液を流通させる流路が設けられたマイクロ流路デバイスであって、前記流路は、本流路と、前記本流路を挟んで該本流路にそれぞれ接続する一対の分流路と、を備え、前記本流路は、第1の区間と、第2の区間と、前記第1の区間と前記第2の区間とを連結する連結区間と、を含み、前記第2の区間は、前記第1の区間に比べて、底面と天井面との間隔が小さく、前記連結区間は、前記第1の区間から前記第2の区間に向けて、底面と天井面との間隔が次第に小さくなっており、前記本流路における前記一対の分流路との接続区間と、前記連結区間とは、重なりを有し、前記一対の分流路は、少なくとも前記接続区間と前記連結区間とが重なる区間において、前記本流路の底面及び天井面を跨いで該本流路に接続している。
【0051】
また、本明細書に開示されたマイクロ流路デバイスは、前記接続区間が、前記第1の区間に及んでおり、前記一対の分流路の各々の底面が、前記本流路の前記第1の区間における底面と面一であり、前記一対の分流路の各々の天井面が、前記本流路の前記第1の区間における天井面と面一である。
【0052】
また、本明細書に開示されたマイクロ流路デバイスは、前記接続区間が、前記連結区間における前記第2の区間側の端に達しているか、又は前記第2の区間に及んでいる。
【0053】
また、本明細書に開示されたマイクロ流路デバイスは、複数の基板部材が積層されてなる基板を備え、前記本流路及び前記一対の分流路が、隣り合う二枚の前記基板部材の間に形成されており、前記一対の分流路が、これら二枚の基板部材に跨っている。
【0054】
また、本明細書に開示されたマイクロ流路デバイスは、前記第2の区間が、毛細管力で液体が浸潤する。
【0055】
また、本明細書に開示されたマイクロ流路デバイスは、前記第2の区間における底面と天井面との間隔が、0.2mm以下である。
【0056】
また、本明細書に開示されたマイクロ流路デバイスは、前記第2の区間に、該第2の区間を流れる液に含まれる検出対象物質を検出する検出手段が設けられている。
【0057】
また、本明細書に開示されたマイクロ流路デバイスは、前記検出対象物質が、抗原であり、前記検出手段が、前記抗原を特異的に吸着する抗体である。
【符号の説明】
【0058】
1 マイクロ流路デバイス
2 基板
3 流路
4 本流路
5 分流路
10 基板部材
11 基板部材
12 溝
13 溝
14 導入孔
15 排出孔
20 導入区間
21 検出区間
22 連結区間
23 排出区間
24 接続区間
25 接続口
30 底面
31 天井面
32 底面
33 天井面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液を流通させる流路が設けられたマイクロ流路デバイスであって、
前記流路は、本流路と、前記本流路を挟んで該本流路にそれぞれ接続する一対の分流路と、を備え、
前記本流路は、第1の区間と、第2の区間と、前記第1の区間と前記第2の区間とを連結する連結区間と、を含み、
前記第2の区間は、前記第1の区間に比べて、底面と天井面との間隔が小さく、
前記連結区間は、前記第1の区間から前記第2の区間に向けて、底面と天井面との間隔が次第に小さくなっており、
前記本流路における前記一対の分流路との接続区間と、前記連結区間とは、重なりを有し、
前記一対の分流路は、少なくとも前記接続区間と前記連結区間とが重なる区間において、前記本流路の底面及び天井面を跨いで該本流路に接続しているマイクロ流路デバイス。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロ流路デバイスであって、
前記接続区間は、前記第1の区間に及んでおり、
前記一対の分流路の各々の底面は、前記本流路の前記第1の区間における底面と面一であり、
前記一対の分流路の各々の天井面は、前記本流路の前記第1の区間における天井面と面一であるマイクロ流路デバイス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のマイクロ流路デバイスであって、
前記接続区間は、前記連結区間における前記第2の区間側の端に達しているか、又は前記第2の区間に及んでいるマイクロ流路デバイス。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項記載のマイクロ流路デバイスであって、
複数の基板部材が積層されてなる基板を備え、
前記本流路及び前記一対の分流路は、隣り合う二枚の前記基板部材の間に形成されており、前記一対の分流路は、これら二枚の基板部材に跨っているマイクロ流路デバイス。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項記載のマイクロ流路デバイスであって、
前記第2の区間は、毛細管力で液体が浸潤するマイクロ流路デバイス。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項記載のマイクロ流路デバイスであって、
前記第2の区間における底面と天井面との間隔は、0.2mm以下であるマイクロ流路デバイス。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のマイクロ流路デバイスであって、
前記第2の区間は、該第2の区間を流れる液に含まれる検出対象物質を検出する検出手段が設けられているマイクロ流路デバイス。
【請求項8】
請求項7に記載のマイクロ流路デバイスであって、
前記検出対象物質は、抗原であり、
前記検出手段は、前記抗原を特異的に吸着する抗体であるマイクロ流路デバイス。
【請求項1】
液を流通させる流路が設けられたマイクロ流路デバイスであって、
前記流路は、本流路と、前記本流路を挟んで該本流路にそれぞれ接続する一対の分流路と、を備え、
前記本流路は、第1の区間と、第2の区間と、前記第1の区間と前記第2の区間とを連結する連結区間と、を含み、
前記第2の区間は、前記第1の区間に比べて、底面と天井面との間隔が小さく、
前記連結区間は、前記第1の区間から前記第2の区間に向けて、底面と天井面との間隔が次第に小さくなっており、
前記本流路における前記一対の分流路との接続区間と、前記連結区間とは、重なりを有し、
前記一対の分流路は、少なくとも前記接続区間と前記連結区間とが重なる区間において、前記本流路の底面及び天井面を跨いで該本流路に接続しているマイクロ流路デバイス。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロ流路デバイスであって、
前記接続区間は、前記第1の区間に及んでおり、
前記一対の分流路の各々の底面は、前記本流路の前記第1の区間における底面と面一であり、
前記一対の分流路の各々の天井面は、前記本流路の前記第1の区間における天井面と面一であるマイクロ流路デバイス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のマイクロ流路デバイスであって、
前記接続区間は、前記連結区間における前記第2の区間側の端に達しているか、又は前記第2の区間に及んでいるマイクロ流路デバイス。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項記載のマイクロ流路デバイスであって、
複数の基板部材が積層されてなる基板を備え、
前記本流路及び前記一対の分流路は、隣り合う二枚の前記基板部材の間に形成されており、前記一対の分流路は、これら二枚の基板部材に跨っているマイクロ流路デバイス。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項記載のマイクロ流路デバイスであって、
前記第2の区間は、毛細管力で液体が浸潤するマイクロ流路デバイス。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項記載のマイクロ流路デバイスであって、
前記第2の区間における底面と天井面との間隔は、0.2mm以下であるマイクロ流路デバイス。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のマイクロ流路デバイスであって、
前記第2の区間は、該第2の区間を流れる液に含まれる検出対象物質を検出する検出手段が設けられているマイクロ流路デバイス。
【請求項8】
請求項7に記載のマイクロ流路デバイスであって、
前記検出対象物質は、抗原であり、
前記検出手段は、前記抗原を特異的に吸着する抗体であるマイクロ流路デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−163986(P2011−163986A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28265(P2010−28265)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]