説明

マイクロ空中輸送手段

【課題】軽量でより簡単な構成のマイクロ空中輸送手段を提供する。
【解決手段】胴体1と、胴体1の前部に載置されるフラッピング動力伝達機構2と、ハチドリのような小さい自然のフライヤの飛行に似せて8の字形状のフラッピング動作経路となるように創成するフラッピング動力伝達機構2により駆動されかつ取り付けられた可撓翼フレーム3と、胴体1の尾部に取り付けられた尾翼4と、を有し、可撓翼フレーム3が、炭素繊維製の一対の前縁アーム部材31に、パリレン箔製の翼皮32を回転可能に設けることにより形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明は、8の字形状のフラッピング動作経路を有する生体模倣のマイクロ空中輸送手段に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、羽ばたき機の羽運動が開示されている。この羽ばたき機は、出力軸に載置された複数対の羽を有し、各羽は、実質的に駆動モータの一側に沿って突出する、無限大記号状のカーブしたパターンに沿って運動する。
【0003】
しかし、この先行技術は、下記の問題を有している。
【0004】
1.複数対の羽を運動させるには、2つのモータと2つのギアボックスを必要とし、羽ばたき機の全重量を増大させることになり、このため、羽ばたき機やマイクロ空中輸送手段(MAV:micro-aerial-vehicle)の小型化が限界に達している。
【0005】
2.一対の翼運動(72、74)は、各一対の翼(76、78;80、82)で行われるようになっており、1つの羽ばたき機を構成するには、全体で4つの翼が必要となるので、製品重量、組み付けの複雑さ、及び、保守上の問題を増大さる。
【0006】
本発明の発明者は、この先行技術の欠点を見出し、より軽量でより簡単な構成のマイクロ空中輸送手段を発明するに至った。
【特許文献1】米国特許6,227,483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、軽量でより簡単な構成のマイクロ空中輸送手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、胴体と、当該胴体の前部に載置されるフラッピング動力伝達機構と、例えば、ハチドリのような小さい自然のフライヤの飛行に似せて8の字形状のフラッピング動作経路を創成する前記フラッピング動力伝達機構により駆動されかつ取付けられた可撓翼フレームと、前記胴体の尾部に取り付けられた尾翼と、を有し、前記可撓翼フレームが、炭素繊維製の一対の前縁アーム部材に、パリレン箔製の翼皮を枢動可能あるいは回動可能に設けることにより形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、フラッピング動力伝達機構が、前縁アーム部材を、小さい自然なフライヤを生体模倣して8の字形状のフラッピング動作経路で動作せせるので、前記前縁アーム部材に取付けられた各翼皮の先端部で、垂直方向にレシプロ的にフラップする第1周波数が、その2倍の第2周波数に発展し、前記翼皮の始端から終端まで一貫したレシプロ的な流れ様式で振動させることができる。また、炭素繊維製などの一対の前縁アーム部材に、パリレン箔製などの翼皮を回動可能に設けたので、フラッピング動力伝達機構により前縁アーム部材を上下レシプロ的に動作させると、可撓翼フレームが前記8の字形状のフラッピング動作経路となり、昇降力と推進力を両方とも共に強化することができ、軽量でより簡単な構成のマイクロ空中輸送手段となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0011】
図1〜5に示すように、本発明のマイクロ空中輸送手段(即ち、micro aerial vehicle;MAV)は、胴体1と、胴体1の前部に載置されたフラッピング動力伝達機構2と、フラッピング動力伝達機構2に回動可能に取り付けられた可撓翼フレーム3と、胴体1の尾部に固着された尾翼4と、を有している。
【0012】
胴体1は、簡単な構成の長尺な梁又はロッドであり、軽い材料、例えば、炭素繊維、アルミニウム、チタン合金又は軽量のプラスチック材料などにより構成されている。ただし、本発明では、これらのみに制限されるものではない。
【0013】
フラッピング動力伝達機構2(又はフラッピング手段)は、自由度(DOF)が1のフラッピング運動となるように形成され、胴体1の前部に載置され、可撓翼フレーム3の下方に配置されているが、これは、可撓翼フレーム3の駆動、可撓翼フレーム3の翼先端部での8の字状のフラッピング動作経路の創成、本発明のマイクロ空中輸送手段の推力と上昇力を生じさせるためのものである。
【0014】
図2と図3に示すように、フラッピング動力伝達機構2は、軽い材料でできている4本のリンクを結合した動力伝達システムであって、以下の構成要素を有している。つまり、胴体1の前部に取り付けられたベース部20と、胴体1上に固定されたバッテリ(図示せず)に電気的に連結されたモータ21と、モータ21に同軸的に連結された駆動ギア22と、駆動ギア22によって回動される内側ギア23、及び、モータ21の回転を減速するために内側ギア23に同軸的に取り付けられたピニオン231を介して内側ギア23により回動される外側ギア24から構成された減速ギア機構と、外側ギア24に同軸的に連結されたカム241と、カム241に下部リンク端251、261がそれぞれ回動可能に取り付けられた一対の駆動リンク25、26と、リンク中心部271、281がそれぞれベース部20の対向端部に回動可能に取り付けられた一対の付勢リンク27、28と、を有している。そして、付勢リンク27、28のリンク内側部272、282は、駆動リンク25、26の上端部252、262にそれぞれ回動可能に取り付けられ、付勢リンク27、28のリンク外側部273、283は、それぞれ可撓翼フレーム3の一対の前縁アーム部材31、31に回動可能に取り付けられている。これによりモータ21が始動されると、可撓翼フレーム3の一対の前縁アーム部材31、31が、フラッピング動力伝達機構2の4本のリンクを結合した動力伝達システムによって、垂直にレシプロ的にフラッピングする。
【0015】
可撓翼フレーム3は、フラッピング動力伝達機構2にそれぞれ連結されて駆動される一対の前縁アーム部材31と、一対の前縁アーム部材31(特に図4参照)に回動可能に取り付けられ、可撓翼フレーム3の最先端から可撓翼フレーム3の後端に向って後方あるいは横方向に突出する(右翼部と左翼部からなる)翼皮32と、翼皮32に一体的に形成され、各前縁アーム部材31に並列的に形成された少なくとも一対のリブ35と、を有している。各前縁アーム部材31は、丸棒またはロッド(図4参照)のようなもので形成することが好ましい。各リブ35は、各リブ35とその並列的に形成された前縁アーム部材31とのなす角が、(例えば30度という)鋭角にしているが、この角度に限定されるものではない。
【0016】
正面の開口部34は、可撓翼フレーム3の中心部分若しくは根元部分33の前部に形成され、フラッピング動力伝達機構2の上下レシプロ的動作を許容し、8の字形状のフラッピング動作を行うとき、翼皮32の「膠着状態(deadlocking)」が生じるのを防止する。ここに、8の字形状のフラッピング動作とは、図5に示すように、可撓翼フレーム3の1点を「P」としたときの点Pの軌跡動作である。
【0017】
前縁アーム部材31は、炭素繊維、軽量プラスチック、例えば、アルミニウム又はチタン合金のような金属的材料で構成することが好ましい。翼皮32は、パリレン(又はポリ−パラ−キシリレン)箔又は他の可撓性の薄膜で構成してもよい。
【0018】
本発明のフラッピング動力伝達機構2における4本リンクのレシプロ的な運動により、可撓翼フレーム3の一対の前縁アーム部材31は、前縁アーム部材31に回動可能に取り付けられた翼皮32をフラッピングするように上下動を繰り返し、垂直にレシプロ的に運動する。
【0019】
したがって、本発明のマイクロ空中輸送手段は、下記のように分析されるフラッピング運動を実行することになる。
【0020】
1.前縁アーム部材31は、第1周波数(つまり、例えば、15.6Hz〜21.7Hzのフラッピング周波数)で、垂直にレシプロ的にフラッピングすると、翼皮32は、各翼先端部で第1周波数の2倍の第2周波数(つまり、振動数)に発展し、始端から終端まで一貫してレシプロ的な流れ様式で振動されるようになる。
【0021】
2.翼皮32と一体的に形成されている各リブ35は、フラッピングのストローク中の昇降力を強化することになり、空気での反りに対する鳥の羽の羽枝として連結されたシャフトのような重要な役割を果たす。
【0022】
3.翼皮32のパリレン箔は、枢動又は回転可能に前縁アーム部材31(図4参照)に取り付けられているので、瞬間的に翼の迎え角が、可撓翼フレーム3の調和的で正弦波的なフラッピング運動に対応して同時に変化し、これにより遅延失速、捕獲軌跡及び回転循環の不安定な流れメカニズムでも、十分な昇降力や推進力を生じさせることになる。
【0023】
羽ばたきの周波数は、本発明の翼構造の実際の振動数(例えば、85Hz)より小さい、例えば、15.6Hz〜21.7Hzの範囲とすると、これにより、可撓翼フレームが受けるダメージを防止し、本発明の可撓翼フレームのダメージも防止する。
【0024】
本発明の翼皮32は、本発明の8の字状フラッピング動作を強化するため、翼の最先端から後縁の方に、かつ、翼の先端から翼の中心の根元部の方に、振動波(又はしなやかな波)の流れが滑らかに移動するように、図6に示すように、波形状に形成することが好ましい。
【0025】
ノーズコーン10は、本発明のマイクロ空中輸送手段の飛行中、風抵抗を減らすために、胴体1の前端部分に形成することが好ましい(図6参照)。
【0026】
また、尾翼4は、図7に示すように修正してもよく、あるいは輸送手段の性能を向上させるために更に修正することができる。
【0027】
本発明は、自然のハチドリを想像的に模倣し、「8」の字状のフラッピングのパターンとなるマイクロ空中輸送手段を提供する。本発明の8の字状のフラッピングのパターンは、水平8の字状パターンより、むしろ垂直にレシプロ的に指向され、これにより、昇降力と推進力を両方とも共に強化する。
【0028】
本発明は、優れた飛行性能を示すが、この輸送手段の重量や大きさは、21.6cmの翼幅で、5.9グラムと低く(軽く)、手のひらサイズと同程度で、大幅に小型化されている。したがって、本発明によりマイクロ空中輸送手段の小型化は、その飛行性能を低下させることなく、達成されることになる。
【0029】
本発明は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、更に修正することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の斜視図である。
【図2】本発明のフラッピング動力伝達機構における分解斜視図である。
【図3】本発明のフラッピング動力伝達機構における組み立て状態の斜視図である。
【図4】図1の第4−4線から見た断面図である。
【図5】本発明におけるフラッピング右翼部の翼先端部の8の字状動作経路を示す側面図である。
【図6】本発明の波状翼とノーズコーンを有する実施形態を示す図である。
【図7】本発明の修正された尾翼を有する実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1…胴体、
2…フラッピング動力伝達機構、
20…ベース部、
21…モータ、
23…内部ギア、
24…外部ギア、
25,26…駆動リンク、
27,28…付勢リンク、
272,282…付勢リンクの内側部、
273,283…付勢リンクの外側部、
3…可撓翼フレーム、
31…前縁アーム部材、
32…翼皮、
34…開口部、
35…リブ、
4…尾翼。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体と、
当該胴体に載置されたフラッピング動力伝達機構と、
当該フラッピング動力伝達機構にそれぞれ取り付けられた一対の前縁アーム部材、及び、当該一対の前縁アーム部材にそれぞれ回動可能に取り付けられ、右翼部及び左翼部を有する翼皮、を有する可撓翼フレームと、
前記胴体の尾部に固着された尾翼と、を有し、
前記フラッピング動力伝達機構の動作によって、前記前縁アーム部材を第1周波数で垂直方向にレシプロ的にフラップすると共に、前記翼皮の各先端部で前記第1周波数の2倍の第2周波数に発展させ、前記翼皮の始端から終端まで一貫したレシプロ的な流れ様式で振動させるように、小さい自然なフライヤに生体模倣的に前記各翼皮の先端部で8の字形状動作経路を形成するようにしたことを特徴とするマイクロ空中輸送手段。
【請求項2】
前記フラッピング動力伝達機構は、4本リンクが結合した動力伝達システムである請求項1に記載のマイクロ空中輸送手段。
【請求項3】
前記フラッピング動力伝達機構は、前記一対の前縁アーム部材と回動可能に連結されたものであり、前記胴体に載置されるベース部と、当該ベース部に載置されたモータと、前記ベース部に回転可能に取り付けられ、前記モータによって有効に駆動される減速ギア機構と、当該減速ギア機構にそれぞれ回動可能に連結され、かつ、前記減速ギア機構により有効に駆動される一対の駆動リンクと、前記ベース部にそれぞれ回動可能に載置され、かつ、前記駆動リンクにより垂直にレシプロ運動される各前記駆動リンクに内側部が回動可能に連結された一対の付勢リンクと、を有し、
各前記付勢リンクの外側部が、前記各前縁アーム部材を有効にレシプロ的にフラッピングするように前記各前縁アーム部材に連結されている、請求項2に記載のマイクロ空中輸送手段。
【請求項4】
各前記前縁アーム部材は、炭素繊維製である、請求項1に記載のマイクロ空中輸送手段。
【請求項5】
前記翼皮は、パリレン又はポリ−パラ−キシリレン製である、請求項1に記載のマイクロ空中輸送手段。
【請求項6】
前記翼皮は、当該翼皮と一体的に形成された複数のリブを有する請求項1に記載のマイクロ空中輸送手段。
【請求項7】
前記翼皮は、少なくとも一対のリブを有し、前記各リブは、前記各前縁アーム部材に並列的に配置され、前記各リブと、前記リブに並列的に配置される前記各アーム部材との間のなす角が鋭角となるようにした、請求項1に記載のマイクロ空中輸送手段。
【請求項8】
前記翼皮は、前記可撓翼フレームに振動波を滑らかに伝達するに適した波形状に形成されている請求項1に記載のマイクロ空中輸送手段。
【請求項9】
前記翼皮は、前記可撓翼フレームのレシプロ的なフラッピング運動を許容するように、前記可撓翼フレーム及び前記胴体における前面部に対応する部分に形成された開口部を有する請求項1に記載のマイクロ空中輸送手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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