マイクロRNA発現プロファイリング及び肺癌における末梢血ターゲティング
【課題】診断マーカー及び治療標的を正確に同定するためのマイクロアレイ研究については、遺伝子発現のどの変化がタンパク質分析により検証されるのかを決定する必要がある。さらに機能的読取の進歩が、マイクロアレイ分析の生物学的意義を決定するために必要とされる。
【解決手段】末梢血中の少なくとも一つのマイクロRNAを検出することによる、肺癌の診断、予後診び治療のための方法が開示されている。
【解決手段】末梢血中の少なくとも一つのマイクロRNAを検出することによる、肺癌の診断、予後診び治療のための方法が開示されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照及び連邦政府支援の研究に関する宣言
[0001]本出願は、その開示が本明細書に組み入れられる、2007年11月30日に出願された米国仮出願番号第61/004,863号の優先権を主張する。本発明は政府支援を得ずに行われ、政府は本発明に権利を有しない。
【0002】
[0002]本発明は、末梢血中の少なくとも一つのマイクロRNA(miR)を検出することによる、肺癌の診断、予後及び治療のためのある種の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]肺癌は、米国の男性及び女性において癌死の主な原因であり、<15%の低い5年生存率しか有していない。ここ数年において、疫学統計は、肺癌の大多数が元喫煙者及び非喫煙者で診断されたことを明らかした。
【0004】
[0004]最近、肺癌の症例及び死亡数はわずかに減少しているにもかかわらず、2008年において、215,020の新規症例及び161,840の死亡例が見積もられている。肺癌の早期発見のための確立されたスクリーニング検査はなく、25%未満の対象しか外科的に治療可能な疾患(ステージI及びII)を示していない。加えて、切除可能な早期疾患の5年生存は70〜80%に達するが、疾患の再発率は受け入れ難いほど高いままである。
【0005】
[0005]肺癌は、類似の形態学にも関わらず、異なる増殖率、転移能及び療法への応答を示す、不均質性疾患の群を表すことがますます認識されている。喫煙経験者間での肺癌の高い発生率を考えると、リスク層別化及び早期治療可能疾患の同定が極めて重要である。
【0006】
[0006]臨床的及び病理的には、肺癌は、小細胞肺癌(SCLC)及び非小細胞肺癌(NSCLC)の大きく二つの異なるカテゴリーに分類される。小細胞肺癌(SCLC)は全肺癌の約20%に相当し、速い成長速度及び初期診断での広範囲にわたる疾患により特性付けられる。非小細胞肺癌(NSCLC)(肺癌の80%を占める)は、同様の様式で挙動する及び臨床的に治療される、少なくとも三つの異なる病理学的疾患単位(腺癌、扁平上皮癌及び大細胞癌)の集合である。NSCLCはSCLCよりも遅発性の傾向があり、そして化学療法に対する応答性が悪い。SCLCの主力治療は、化学療法プラスマイナス放射線治療であり、一方、NSCLCの主な治療法は放射線療法及び/又は化学療法の慎重な追加を伴った手術である。
【0007】
[0007]マイクロRNA(MiRNA、miR)は、動物、植物及びウイルスを含む多くの生物において発現される小さな非翻訳RNA(およそ21〜25nt長)のファミリーである。miRNAは、mRNAの分解か又はタンパク質翻訳の抑制のための遺伝子を標的とする。単一のmiRNAが複数の遺伝子を標的とすることができ、一方、単一の遺伝子が複数のmiRNAにより標的とされることもある。ほとんどのmiRNAの機能が依然として不明であるにもかかわらず、いくつかの研究は、それらが遺伝子調節、アポトーシス、造血発生及び細胞分化の維持を含む主要な生物学的機能に不可欠であろうことを示唆している。miRNAの50%以上が、癌において欠失され又は増幅されていることが知られている染色体領域に位置していると推定されている。
【0008】
[0008]肺癌におけるmiRNAの知識が明らかになり始めている。これまでに、研究者は複数のmiR−let−7ファミリー遺伝子が、C.エレガンスにおいて線虫RAS遺伝子(let−60)の3’−非翻訳領域(UTR)を標的にし得ることを同定した。let−7の過剰発現は、RASタンパク質の発現を抑制し、そしてlet−7相補的部位がヒトNRAS及びKRAS3’−UTRで観察されている。RASシグナル伝達は、肺癌においてヒトlet−7ゲノム領域の欠失を開始させるのを助けると考えられている。実際、143の切除された肺癌症例中での減少したlet−7発現は、予後不良と相関していた。
【0009】
[0009]最近、miRNAチップ分析の使用を介して、研究者は104対の原発性肺癌及び対応する非癌性組織における異なるmiRNAプロファイルを示した。加えて、五つの異なるmiRNA(miR−155、17−3p、let−7a−2、145及び21)の発現が変化しており、腺癌を有する対象間での予後を予測した。
【0010】
[00010]ゲノムプラットフォームは、疾患の組織学的サブカテゴリー、新規分子標的、予後診断ツール及び療法への応答を同定することにおいて強力なツールとなってきた。しかしながら、肺癌の研究の再現性における改善はあったが、マイクロアレイ分析を利用した組織学的分類における可変性が残っている。加えて、ゲノム研究は遺伝子発現又は生物学的関連性における検証の欠如に取り組んでいない。分析のいくつかのプラットフォームを組み入れるシステムアプローチが、肺癌における分子不均質をより明確化するために必要とされる。
【0011】
[00011]しかしながら、診断マーカー及び治療標的を正確に同定するためのマイクロアレイ研究については、遺伝子発現のどの変化がタンパク質分析により検証されるのかを決定する必要がある。さらに機能的読取の進歩が、マイクロアレイ分析の生物学的意義を決定するために必要とされる。
【0012】
[00012]正常対照から肺癌対象を識別するために有用である、末梢血のゲノム解析で使用し得る特異的バイオマーカーのシグネチャーセットが本明細書に示される。
【発明の概要】
【0013】
[00013]最初の広範な側面において、対象が肺癌を有するか又は発症するリスクがあるかどうかを診断する方法が提供される。該方法は、該対象からの末梢血試験サンプル中の少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルを測定することを含む。対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較した、該試験サンプル中の該miR遺伝子産物のレベルの変化は、該対象が肺癌を有するか又は発症するリスクがあることを示す。
【0014】
[00014]別の側面において、疾患の診断及び予後についての非侵襲的バイオマーカーとして、末梢血における遺伝子発現パターンを使用する方法が、本明細書において提供される。
【0015】
[00015]別の広範な側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患(lung cancer associated disease)を有する対象の予後を決定する方法が、本明細書において提供される。
[00016]以下の好ましい態様の詳細な説明を、付随する図面を照らし合わせて読むことにより、本発明の多様な目的及び利点が当業者には明らかになるであろう。
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
診断マーカー及び治療標的を正確に同定するためのマイクロアレイ研究については、遺伝子発現のどの変化がタンパク質分析により検証されるのかを決定する必要がある。さらに機能的読取の進歩が、マイクロアレイ分析の生物学的意義を決定するために必要とされる。
【発明が解決するための手段】
【0017】
対象が肺癌を有するか又は発症するリスクがあるかどうかを診断する方法が提供される。該方法は、該対象からの末梢血試験サンプル中の少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルを測定することを含む。対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較した、該試験サンプル中の該miR遺伝子産物のレベルの変化は、該対象が肺癌を有するか又は発症するリスクがあることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】[00017]進行した肺癌を有する対象(腫瘍n=4)及び正常対照(正常N=3)からの全末梢血miRNAを示しているタイル。緑は相対的に高発現を表し、赤は相対的に低発現を表す。
【図2】[00018]正常対象(n=3)及び進行した無処置肺癌を有する対象(n=4)の全末梢血におけるMiR−126発現のRT−PCR(*p<.05)。
【図3A】[00019]ヒト肺癌におけるmiR−155のインサイツハイブリダイゼーション。 [00020] 図3A:未成熟MiR−155は腺癌の核に局在する(矢印)。
【図3B】ヒト肺癌におけるmiR−155のインサイツハイブリダイゼーション。[00021]同一の腺癌サンプルにおいてmiR−155の成熟形の発現が検出されないことは、障害されたプロセシングを示唆する。
【図3C】ヒト肺癌におけるmiR−155のインサイツハイブリダイゼーション。[00022]気管支肺胞細胞癌(BAC)の核にある未成熟miR−155(矢印)。
【図3D】ヒト肺癌におけるmiR−155のインサイツハイブリダイゼーション。[00023]成熟miR−155は細胞質に局在する。
【図4A】[00024]miR−126トランスフェクションは、Crkタンパク質発現を変化させる。 [00025] 図4A:H1703(非小細胞癌)細胞のpremiR−126トランスフェクションは、miR−126mRNA発現を1000〜5000倍増加させ、CrkIIタンパク質を減少させる。
【図4B】miR−126トランスフェクションは、Crkタンパク質発現を変化させる。[00026]Crk mRNAに変化なし(図4B)。ウエスタンブロットを二重に実施し、すべてのRT−PCR結果は、二重に実施された2回の独立した実験からの平均=/−S.E.を示している(*p<.05 スクランブル対pre−miR)。18Sを内部標準として使用した。
【図4C】miR−126トランスフェクションは、Crkタンパク質発現を変化させる。CrkIタンパク質はウエスタンでは検出されなかった。100nMのLNA miR−126アンチセンスオリゴヌクレオチドによるH226細胞のトランスフェクションは、スクランブルpre−miRトランスフェクションと比較してmiR−126発現が10分の1に減少した(図4C)。ウエスタンブロットを二重に実施し、すべてのRT−PCR結果は、二重に実施された2回の独立した実験からの平均=/−S.E.を示している(*p<.05 スクランブル対pre−miR)。18Sを内部標準として使用した。
【図4D】miR−126トランスフェクションは、Crkタンパク質発現を変化させる。デンシトメトリーにより測定されたCrkIIタンパク質発現は増加したが(*p<.05)、mRNAは変化しなかった(図4D)。ウエスタンブロットを二重に実施し、すべてのRT−PCR結果は、二重に実施された2回の独立した実験からの平均=/−S.E.を示している(*p<.05 スクランブル対pre−miR)。18Sを内部標準として使用した。
【図5】[00027] 図5A〜5G:肺のヒト扁平上皮癌における、miR−126についてのインサイツハイブリダイゼーション及びCrkについての免疫組織化学を示している代表的像。1のケースにおいて、Crk発現(赤色)がほとんどの腫瘍細胞内で明らかであり(図5A)、一方、miR−126発現は腫瘍細胞に隣接する切片では観察されないが(図5B)、miR−126は正常気管支上皮で検出された(図5C)(青色シグナル)。第2のケースにおいて、Crkは腫瘍内で検出不能であるが(図5D)、一方、腫瘍内にmiR−126の強い発現(青色)があり(図5E);正常組織において、Crkは内皮(図5F)及び気管支上皮(図5G)に局在している(全ての像は、1000xである図5F及び200xである図5Gを除いて400xである)。
【図6】[00028]末梢血単核細胞(PBMC)中の正常(N=5)レベルと比較した肺癌(N=5)中のmiR−126の相対的発現を示しているグラフ。(p<.05)
【図7】[00029]血清中の正常(N=5)レベルと比較した肺癌(N=5)中のmiR−let7aの相対的発現を示しているグラフ。(p<.05)
【図8】[00030]血清中の正常(N=5)レベルと比較した肺癌(N=5)中のmiR−126の相対的発現を示しているグラフ。(p<.05)
【図9−1】[00031]H1703増殖、接着、遊走及び浸潤に対するmiR−126過剰発現の効果。 [00032] 図9A:[00032]対照、スクランブルpre−miR及びpre−miR126細胞は、96時間にわたって類似の増殖速度を示した。2回の独立した増殖アッセイを三重に実施した。H1703増殖、接着、遊走及び浸潤に対するmiR−126過剰発現の効果。[00033]miR−126過剰発現細胞は、減少した接着(図9B)、遊走(図9C)及び浸潤(図9D)を示した。
【図9−2】図9C:H1703増殖、接着、遊走及び浸潤に対するmiR−126過剰発現の効果。[00033]miR−126過剰発現細胞は、減少した接着(図9B)、遊走(図9C)及び浸潤(図9D)を示した。図9C及び図9Dの像は、盲検ランダム視野(blinded random field)の代表像である(p<.05)。全ての実験において、miR−126過剰発現がRT−PCRにより確認され、適切な誘導は確実である。結果は、三重に実施された四つの視野の平均を示している(*p<.05 スクランブル対pre−miR)。
【図9−3】図9D:H1703増殖、接着、遊走及び浸潤に対するmiR−126過剰発現の効果。[00033]miR−126過剰発現細胞は、減少した接着(図9B)、遊走(図9C)及び浸潤(図9D)を示した。図9C及び図9Dの像は、盲検ランダム視野(blinded random field)の代表像である(p<.05)。全ての実験において、miR−126過剰発現がRT−PCRにより確認され、適切な誘導は確実である。結果は、三重に実施された四つの視野の平均を示している(*p<.05 スクランブル対pre−miR)。
【図10A】[00034]NSCLC組織におけるmiR−126及びCrk発現:ヒト非小細胞肺癌及び非病変部隣接肺(扁平上皮1〜13及び腺癌14〜19)の19対の試験は、非病変部隣接正常(N)肺と比較して腫瘍(T)でのmiR−126 mRNA発現の減少を示した(図10A)。RT−PCRの結果は、二重に実施された2回の独立した実験からの平均=/−S.Eを示している(*p<.05 腫瘍対非病変部肺)。18Sを内部標準として使用した。
【図10B】[00034]NSCLC組織におけるmiR−126及びCrk発現:これら同一サンプル中のCrk mRNA発現は不定であり、19の腫瘍の内の7が非病変部隣接肺よりも高いCrk発現を示した(図10B)。RT−PCRの結果は、二重に実施された2回の独立した実験からの平均=/−S.Eを示している(*p<.05 腫瘍対非病変部肺)。18Sを内部標準として使用した。
【図11−1】[00035]図11(実際の数字は図9下部を示す)−表4は、オリゴプローブ、前駆体配列、成熟mRNA、活性部位上にプローブがあるかどうか、Entrez- Gene ID、基準配列番号、miR塩基ステムループ 寄託番号、miR塩基成熟配列寄託番号、注、オリゴ配列、成熟miRNA配列、及びステムループ配列を示す。
【図11−2】図11−表4の続き。
【図11−3】図11−表4の続き。
【図11−4】図11−表4の続き。
【図11−5】図11−表4の続き。
【図11−6】図11−表4の続き。
【図11−7】図11−表4の続き。
【図11−8】図11−表4の続き。
【図11−9】図11−表4の続き。
【図11−10】図11−表4の続き。
【図11−11】図11−表4の続き。
【図11−12】図11−表4の続き。
【図11−13】図11−表4の続き。
【図11−14】図11−表4の続き。
【図11−15】図11−表4の続き。
【図11−16】図11−表4の続き。
【図11−17】図11−表4の続き。
【図12−1】[00036]表5は血清中に検出されたmiRNAを示す。
【図12−2】図12−表5の続き。
【図12−3】図12−表5の続き。
【図12−4】図12−表5の続き。
【図12−5】図12−表5の続き。
【図12−6】図12−表5の続き。
【図12−7】図12−表5の続き。
【図12−8】図12−表5の続き。
【図12−9】図12−表5の続き。
【図13−1】[00037]表6は末梢血単核細胞(PBMC)中に検出されたmiRNAを示す。
【図13−2】図13−表6の続き。
【図13−3】図13−表6の続き。
【図13−4】図13−表6の続き。
【図13−5】図13−表6の続き。
【図13−6】図13−表6の続き。
【図13−7】図13−表6の続き。
【図13−8】図13−表6の続き。
【図13−9】図13−表6の続き。
【図13−10】図13−表6の続き。
【図13−11】図13−表6の続き。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[00038]本発明は、一部、炎症性応答に関与し、及び/又は血液中で変化した発現レベルを有する特異的マイクロRNA(miRNA)の同定に基づいている。本発明はさらに、一部、これらのmiRNAと特定の診断、予後及び療法的特色との関連に基づいている。
【0020】
[00039]第一の広範な側面において、対象が一つ以上の肺癌随伴疾患を有しているか、又は発症するリスクがあるかどうかを決定する方法が本明細書において提供される。該方法は、一般的に:該対象からの末梢血サンプル中の少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルを測定することを含み、対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較し、該サンプル中の該miR遺伝子産物のレベルの変化は、該対象が一つ以上の肺癌随伴疾患を有しているか、又は発症するリスクがあることを示す。
【0021】
[00040]ある態様において、該末梢血サンプルは、全血、末梢血単核細胞(PBMC)及び血清の一つ以上を含む。
[00041]ある態様において、該一つ以上の肺癌随伴疾患は、気管支肺胞癌(BAC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺腺癌、肺扁平上皮癌及び小細胞癌を含む。
【0022】
[00042]ある態様において、該末梢血サンプルは全血を含み、そして少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、正常対照と比較して増加した発現を有する、本明細書の表1に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である。ある態様において、該miRは、hsa−miR−518f、hsa−miR−516−3p及びhsa−miR−516−5p:の一つ以上である。
【0023】
[00043]ある態様において、該末梢血サンプルは全血を含み、そして少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、正常対照と比較して減少した発現を有する、本明細書の表1に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である。ある態様において、該miRは、hsa−miR−1−2No1、hsa−miR−511−2No2、hsa−miR−101−2No1、hsa−miR−218−2−precNo1、hsa−miR−451No2、hsa−miR−126*No2、hsa−let−7d−vl−prec、hsa−miR−1−lNo1、hsa−miR−123−precNo1、hsa−miR−l00No1、hsa−miR−150−prec、hsa−miR−021−prec−17No1、hsa−miR−34aNo1、hsa−let−7iNo1、hsa−miR−126*No1、hsa−miR−126No2、hsa−miR−181c−precNo2、hsa−miR−126No1の一つ以上である。
【0024】
[00044]別の側面において、該末梢血サンプルは末梢血単核細胞(PBMC)を含み、そして少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、hsa−miR−630:の減少したmiR発現から成る、表2に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である。
【0025】
[00045]別の側面において、該サンプルは末梢血単核細胞を含み、そして少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、hsa−miR−152、hsa−miR−365、hsa−miR−487a、hsa−miR−148a、hsa−miR−636、hsa−miR−320及びhsa−miR−145:の増加したmiR発現から成る、表2に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である。
【0026】
[00046]別の側面において、該末梢血サンプルは血清を含み、そして少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、hsa−miR−192の増加したmiR発現から成る、表3に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である。
【0027】
[00047]別の側面において、該サンプルは血清を含み、そして少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、hsa−miR−532、hsa−miR−197、hsa−miR−342:の減少したmiR発現から成る、表3に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である。
【0028】
[00048]別の側面において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、表4に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である。
[00049]別の側面において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、表5に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である。
【0029】
[00050]別の側面において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、表6に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である。
[00051]別の側面において、該方法は、肺癌を有する対象の予後を決定するために使用され、該対象からのサンプル中の該少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルを測定することを含み、該miR遺伝子産物は肺癌の予後不良と関連しており;そして、対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較して、該サンプル中の該少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルの変化は、予後不良を示す。
【0030】
[00052]別の側面において、末梢血サンプルで一つ以上の肺癌随伴疾患を検出する方法が本明細書に提供され、該方法は、肺癌に関連した少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現についてサンプルを分析すること;及び該少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現と該サンプル中の肺癌の有無を相関させること:を含み、該少なくとも一つのバイオマーカーは、表1、表2又は表3にリストしたmiRから選択される。
【0031】
[00053]別の側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患を有していると疑われる対象を早期診断する方法が本明細書に提供され、該方法は、該対象からサンプルを入手すること;肺癌と関連した少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現についてサンプルを分析すること;該少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現と該対象における肺癌の存在を相関させること:を含み、該少なくとも一つのバイオマーカーは、表1、表2又は表3にリストしたmiRから選択される。
【0032】
[00054]別の側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患を有する対象を治療する方法が本明細書に提供され、表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群から選択される少なくとも一つのバイオマーカーと相補的な核酸を含む、治療的に有効量の組成物を投与することを含む。
【0033】
[00055]別の側面において、表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群から選択される、少なくとも一つのバイオマーカーと相補的な核酸を含む医薬組成物が本明細書に提供される。
【0034】
[00056]別の側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患のため化学放射線治療を受けている患者の末梢血サンプルと、化学放射線治療を受けていない患者のサンプルを比較する方法が本明細書に提供され:表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群から選択される少なくとも一つのバイオマーカーの異なった発現を比較することを含む。
【0035】
[00057]別の側面において、患者の一つ以上の肺癌随伴疾患のステージ分類を比較する方法が本明細書に提供され:該患者から末梢血サンプルを入手すること;及び表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群から選択される少なくとも一つのバイオマーカーの異なった発現を比較することを含む。
【0036】
[00058]別の側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患を抑制するための方法を、それを必要とする対象において行うこと本明細書に提供され:表1、表2又は表3にリストしたmiRの少なくとも一つを投与することを含む。
【0037】
[00059]別の側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患を患っている対象においてそれらの疾患を治療する方法が本明細書に提供され、ここで対照細胞と比較して該対象の癌細胞においては少なくとも一つのmiRが下方調節又は上方調節されており:該癌細胞において該少なくとも一つのmiRが下方調節されている場合、該対象の癌細胞の増殖が抑制されるように、少なくとも一つの単離されたmiRの有効量を該対象に投与すること;又は、該癌細胞において該少なくとも一つのmiRが上方調節されている場合、該対象の癌細胞の増殖が抑制されるように、少なくとも一つのmiRの発現を抑制するための少なくとも一つの化合物の有効量を該対象に投与することを含み;該miRは表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群より選択される。
【0038】
[00060]別の側面において、対象の一つ以上の肺癌随伴疾患を治療する方法が本明細書に提供され:対照サンプルと比較した、該対象から入手した末梢血サンプル中の少なくとも一つのmiRの量を決定すること、ここで該miRは表1、表2又は表3にリストしたmiRから選択され;及び、該対象における肺癌の増殖が抑制されように、(i)もし、該対象において発現された該miRの量が対照細胞中で発現されたmiRの量よりも少なければ、少なくとも一つの単離されたmiRの有効量を該対象に投与することにより;又は(ii)もし、該対象において発現された該miRの量が対照細胞中で発現されたmiRの量よりも多ければ、該少なくとも一つのmiRの発現を抑制するための少なくとも一つの化合物の有効量を該対象に投与することにより;該対象におけるmiR活性の量を変化させることを含む。
【0039】
[00061]別の側面において、抗肺癌随伴疾患剤を同定する方法が本明細書に提供され:癌細胞に試験剤を提供すること、及び該肺癌細胞中での減少した発現レベルと関連した少なくとも一つのmiRのレベルを測定することを含み、適した対照細胞と比較し、該肺癌細胞中の該miRのレベルの増加は、該試験剤が抗癌剤であることを示し;該miRは、表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群より選択される。
【0040】
[00062]別の側面において、対象における病的状態、又は病的状態を発症するリスクを評価する方法が本明細書に提供され:該対象からのサンプル中の一つ以上のマーカーの発現プロファイルを測定することを含み、該対象からのサンプルにおける発現プロファイルと正常サンプルの発現プロファイルとの相違は、一つ以上の肺癌随伴疾患又はそれらへの素因を示し、そして該マーカーは表1、表2又は表3にリストした一つ以上のmiRを少なくとも含む。
【0041】
[00063]別の側面において、表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群から選択される一つ以上のmiRを含む組成物が本明細書に提供される。
[00064]別の側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患を試験するための試薬が本明細書に提供され、該試薬は、表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRのヌクレオチド配列、又は該miRのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を含んでいるポリヌクレオチドを含む。
【0042】
[00065]別の側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患を試験するための試薬が本明細書に提供され、該試薬は、表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRによりコードされたタンパク質を認識する抗体を含む。
[00066]別の側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患を予防する、診断する及び/又は治療するための療法の有効性を評価する方法が本明細書に提供され:その有効性が評価されている療法を患者に供すること;そして表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRを評価することにより、一つ以上の肺癌随伴疾患を治療する又は予防することについて、試験されている治療の有効性のレベルを決定すること;を含む。
【0043】
[00067]ある態様において、該候補治療剤は:医薬組成物、栄養機能組成物及びホメオパシー組成物の一つ以上を含む。
[00068]ある態様において、評価されている療法は、ヒト対象での使用のためである。
【0044】
[00069]別の側面において、製品が本明細書に提供され:表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRから選択される、一つ以上の肺癌随伴疾患のためのマーカーへ結合する少なくとも一つの捕捉試薬を含む。
【0045】
[00070]別の側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患を治療する療法剤の候補化合物をスクリーニングするためのキットが本明細書に提供され、該キットは:表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRの一つ以上の試薬、及び少なくとも一つのmiRを発現している細胞を含む。
【0046】
[00071]ある態様において、該miRの存在は、少なくとも一つのmiRと特異的に結合する抗体又は抗体断片を含む試薬を使用して検出される。
[00072]別の側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患のためのスクリーニング試験が本明細書に提供され:表1、表2又は表3にリストした一つ以上のmiRと、こうしたmiRの基質及び試験剤を接触させること、及び該試験剤が該miRの活性を変調するかどうかを決定すること;を含む。
【0047】
[00073]ある態様において、全ての工程はインビトロで実施される。
[00074]別の側面において、個体における一つ以上の肺癌随伴疾患に関連する合併症を治療する、予防する、逆行させる、又は重度を限定する医薬の製造のための、一つ以上の肺癌関連応答シグナル伝達経路を妨害する剤の使用が本明細書に提供され、該剤は、表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRを含む。
【0048】
[00075]別の側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患合併症を治療する、予防する、逆行させる、又は重度を限定する方法を、それらを必要とする個体で行うことが本明細書において提供され:少なくとも一つ以上の肺癌随伴疾患応答カスケードを妨害する剤を該個体に投与することを含み、該剤は、表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRを含む。
【0049】
[00076]別の側面において、個体の一つ以上の肺癌随伴疾患合併症を治療する、予防する、逆行させる、又は重度を限定する医薬の製造のための、少なくとも一つ以上の肺癌随伴疾患応答カスケードを妨害する剤の使用が本明細書に提供され、該剤は、表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRを含む。
【0050】
[00077]実施例
[00078]本発明の例示として働くが、本発明を制限するものではない以下の非制限的実施例を参照することにより、本発明をより良く理解することができる。
【0051】
[00079]従って、本発明は、対象が肺癌を有する、又は発症するリスクがあるかどうかを診断する方法を包含する。一つの側面に従うと、該対象からの試験サンプル中の該少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルが、対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較される。対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較して、該試験サンプル中の該miR遺伝子産物のレベルの変化(例えば、増加、減少)は、該対象が肺癌を有する、又は発症するリスクがあることを示す。ある態様において、該試験サンプルは末梢血を含む。
【0052】
[00080]理論に束縛されるものではないが、miRNA発現プロファイルは末梢血で検出可能であり、対象における肺癌を評価することに有用であると発明者には考えられる。該miRNA発現プロファイルは、後期疾患を有する対象と早期肺癌を有する対象を識別するため、及びさらに肺癌を有しない現/元経験者を識別するために有用であることも本明細書に示される。
【0053】
[00081]また、末梢血中のマイクロRNAは、原発腫瘍生物学を反映すると本発明者により考えられており、肺癌疾患進行/再発の診断、サーベイランス及び療法への応答をモニターすることにおいて有用である。
【0054】
[00082]本発明者は、確認された肺癌を有する対象の末梢血において、はっきりと異なるmiRNA発現プロファイル(即ち、miRシグネチャ又はバイオマーカー)をここに同定した。
【0055】
[00083]特定の側面において、本発明者は、進行した肺癌を有する対象及び肺癌を有さない非喫煙者対象の組の両方の末梢血中のmiRNAの存在を同定した。最初の目的変数なしのクラスター分析は、二つの群を区別するmiRNAの存在を示した。
【0056】
[00084]miRNAプロファイリングは、生物学的に関連する標的を同定するために有用なツールである。末梢血中のmiRNAの役割は依然として不明であるが、末梢血miRNAプロファイリングは、肺癌においてはっきりと異なる分子シグネチャを同定するために、そしてこうしたプロファイルを腫瘍生物学と相関させるために有用であることを本発明者は考えている。これらのシグネチャは、例えば、マイクロアレイ/プロテオミクスプラットフォーム及びCTスキャンのような他のモダリティーを補足するために使用することができ;それ故、肺癌診断及び治療のための個別化されたアプローチを支援している。
【0057】
[00085]本発明者は、末梢血中に同定されたマイクロRNAは、原発腫瘍生物学を反映し、そして疾患検出のための、療法への応答を決定するための、及び肺癌のサーベイランス、及び/又は肺癌のなんらかの再発をモニタリングするためのバイオマーカーとして有用であることもここに考えている。さらに、該miRNAは分子経路のはっきりと異なるネットワークを示すのに有用であり、それは順に、新規治療標的を同定することにおいて有用である。
【0058】
[00086]本明細書の実施例で示したように、元/現及び非喫煙者からの肺腫瘍に存在する、はっきりと異なるmiRNAシグネチャがある。これらのシグネチャは、生物学的標的及び経路を同定するために有用である。
【0059】
[00087]miRNAシグネチャが、肺癌を有する喫煙及び非喫煙個体及びマッチした対照で同定された。腫瘍中のはっきり異なるmiRNA発現パターンの存在は以下の群で評価すべきである:1−現又は元喫煙者である非小細胞肺癌(NSCLC)を有する切除可能な対象;2−非喫煙者である非小細胞肺癌(NSCLC)を有する切除可能な対象;及び3−健常対照。
【0060】
[00088]腫瘍及び末梢血両方におけるはっきり異なるmiRNAシグネチャの存在は、肺癌を有する現/元喫煙及び非喫煙者と対照を区別するのに役立つ。また、末梢血miRNA発現パターンも原発腫瘍シグネチャを反映する。
【0061】
[00089]肺癌特異的miRNA
[00090]癌におけるmiRNAの発現変化の原因は、まだ十分に明らかにされていない。しかしながら、少なくとも一つの五つの主な機構が近年同定されている:1)癌関連ゲノム領域でのmiRNA位置;2)エピジェネティック(epigenetic)調節;3)ダイサー及びドローシャのようなmiRNAプロセシングタンパク質及び遺伝子の破壊;4)miRNA−miRNA相互作用;及び5)癌遺伝子及び癌抑制遺伝子によるmiRNA発現の標的化。
【0062】
[00091]マイクロRNAバイオジェネシス(biogenesis)及び標的化
[00092]miRNAは、タンパク質コード遺伝子のイントロン内又は非コードRNAのイントロン又はエクソン内のような、いくつかのゲノム位置に位置することができる。核内において、miRNAは、RNAポリメラーゼIIにより、数百〜数千のヌクレオチド長範囲の長い一次転写産物、一次miRNA(pri−miRNA)に転写される。
【0063】
[00093]核にある間、ドローシャはpri−miRNAの両鎖を切断して、miRNA前駆体(pre−miRNA)と称される70〜100ヌクレオチドステムループを放出する。pre−miRNAは引き続いてエクスポーチン5/RanGTPにより核から細胞質へ輸送される。細胞質へ輸送されるとすぐに、dsRBDと共同して、第二のRNaseIII(ダイサーと称される)がpre−miRNAを切断し、およそ22ヌクレオチドのRNA二重鎖(成熟miRNA及びその相補的miRNA*)を放出する。
【0064】
[00094]miRNA含有リボ核タンパク質粒子(miRNP)のタンパク質複合体に進入するため、miRNA/miRNA*二重鎖の一つの鎖のみが放出され、他の鎖は分解される。miRNPがmiRNAを標的RNAに導き、翻訳抑制か又はmRNA分解によりタンパク質発現を調節する。miRNAはタンパク質コード転写体の3’−非翻訳領域中の標的部位に結合する。翻訳の抑制及びmRNA分解は、miRNAの5’末端の「種(seed)」領域と標的部位間の塩基対形成に依存する。ほとんどのmiRNAは複数の標的を有し、それ故、数百〜数千の遺伝子を調節する能力を有する。
【0065】
[00095]本発明者は、進行したNSCLCを有する4人の対象及び3人の正常対照のコホートにおいて、全末梢血miRNA発現を試験した。確認された進行(ステージ3B、IV)非小細胞肺癌を有する4人の対象及び3人の健常対照対象からの全末梢血を試験した。これらの個体のmiRNAチップ分析は、正常と比較して肺癌対象の末梢血で上方か又は下方調節されている93のmiRNAの存在を示した(データは示されていない)。2倍変化のカットオフを使用して、有意なmiRNAを示した。
【0066】
[00096]本発明者は、進行した肺癌を有する対象及び既知の肺癌を有しない非喫煙者の組の両方の末梢血においてmiRNAの存在を同定した。
[00097]加えて、最初の目的変数なしのクラスター分析は、疾患の極端における個体の二つの群(進行した肺癌を有する喫煙者及び疾患のない非喫煙者)間を識別するmiRNAの存在を示した。しかしながら、これらの結果は、喫煙歴又は合併している疾患に起因しうる変化を考慮に入れていないことに注意すべきである。
【0067】
[00098]ヒト肺癌組織中の局在化しているmiRNA及び特異的標的は、インビトロモデルに基づいた関連細胞タイプを開発する、及び鍵となる生物学的経路を決定するための重要なステップである。
【0068】
[00099]本発明者は、肺腫瘍中の局在化miRNAについての方法としてインサイツハイブリダイゼーションを示した。本発明者は、成熟miR−155は腺癌には存在していないが、気管支肺胞癌(BAC)に存在していることを観察した。この発見は、両方のmiRNA調節に相違が存在していてもよいことを示唆し、肺癌のこれらサブタイプにおいて生物学的関連を有していると考えられる。
【0069】
[000100]方法
[000101]明確にするために、肺腺癌に関連した喫煙は、>年間20箱喫煙歴の対象に制限した。現又は元喫煙者であった。<100の生涯タバコ歴の対象のみが「非喫煙者」に含まれた。BACを有するほとんどの対象が非喫煙者であろうと考えられるが、患者群をこの臨床的特徴により限定しなかった。頻度マッチングは、三つの群、即ち、年齢について補充して実施した。
【0070】
[000102]全国データと一致して、およそ13%の対象が喫煙未経験と報告したことが見出された。また全国データと一致して、肺癌の対象のおよそ40〜45%が腺癌を有していた。BACに関しては、かなりの数の対象がBAC特色を有していたが、腫瘍登録は、2000〜2006年に76の対象が粘液性又は非粘液性BACと診断されたことを報告している。
【0071】
[000103]サンプルは液体窒素中で急速冷凍し、−80℃で保存した。肺癌の病歴又は肺癌の現診断(過去の胸部X線)のない現及び元喫煙者は、健康な非喫煙者の群を評価することに加えて研究した。該対象は年齢、性別及び内科的合併疾患についてほぼマッチしていた。
【0072】
[000104]サンプルサイズ及び検出力計算(power calculation)
[000105]切除可能/切除不可能な現/元喫煙者群と、対照及び非喫煙者群を、全末梢血マイクロRNA発現レベルの相違について比較した。仮説試験は、以前に興味を引いたマイクロRNA(予備的データで観察された93マイクロRNA及びYanaihara et al., 2006にリストされた43マイクロRNA)対探査全ヒトマイクロRNAに分離した。
【0073】
[000106]125の以前に興味を引いたマイクロRNAについては、Lehman and Romano (2005)の一般化ファミリーワイズエラー率(generalized familywise error rate)(GFWER)アプローチを使用して四つの偽陽性を回避した。80(20の対照、40の切除可能な現/元喫煙者及び20の切除可能な非喫煙者)のサンプルサイズは、予備的データで観察された中央値標準偏差を与える>80%の検出力で、発現の2倍の相違を検出することを可能にする。
【0074】
[000107]全ゲノムの探査については、およそ180のマイクロRNAがチップ上で試験可能であった。0.05のGFWERを使用し、10の偽陽性が認められた。三つの群について80のサンプルを用い、80%検出力で1.9の倍数変化を検出した。バックグラウンド補正、フィルタリング及び規格化法を、技術的な偏りを回避するために実施した。T検定を、差次的に発現されたマイクロRNAを検出するために実施した。差次的に発現についての可変性及び統計検定の推定を改善するため、縮小分散推定法を用いた。p値は、ノンパラメトリック法(Westfall and Young, 1993)によって評価した。
【0075】
[000108]血液処理
[000109]血液サンプルは、対象が外科的切除を行ったかどうかにかかわらず入手した(即ち、手術、放射線療法、化学療法又は非処置が予定されている対象が、血液サンプルを得るのに適格である)。全血液サンプル(5cc)を二つの別々のPAX-GENE(市販)チューブに採取した。サンプルは次ぎに、全血RNAのための改良トリゾール抽出プロトコールで処理した。
【0076】
[000110]血清及びPBMC中での分析のため、miRNA解析のための第二の方法を用いた。第二の方法の場合、18ccの末梢血からの血清分画より、十分なRNA(5〜10μg)を得ることが可能であった。末梢血はEDTA−チューブに採取した。血液を滅菌PBSで1:2に希釈し、次ぎにFicoll-Histopaque(d=1.077)上に層積し、遠心分離した。得られた血漿は、トリゾールを使用して直接的にRNA分離に供した。リンパ球及び単核球を含有する単核細胞層はRNA単離に先だって、滅菌PBSで1回洗浄した。好中球は、デキストラン硫酸沈降により赤血球ペレットから分離した。RBCはRNA抽出に先だって、低張溶解に供されるであろう。
【0077】
[000111]マイクロRNA分析
[000112]全血miRNA発現は、OSU−CCCマイクロアレイ施設を介してのmiRNAチップにより、及び既知のmiRNAについてはRT−PCRにより分析した。RNAは、全血、PBMC、血清及び肺組織から分離し、処理した。該マイクロアレイ設備は、578のmiRNA前駆体配列(329ヒト、249マウス及び3シロイヌナズナ)に対するプローブを含有するマイクロRNACHIP v3を利用している。5μgの全RNAは、第一鎖cDNAの発生、続いての各OSU−CCC miRNAチップへのアレイハイブリダイゼーションにより調製した。完了したら、miRNA標的を、Sanger miRBase 7.0(Target scan. Pictar)を利用して同定した。
【0078】
[000113]図1は、miRNAシグネチャが肺癌を有する個体及びマッチした対照で同定されたことを示すmiRNAバイオジェネシスを図示している。該miRNAは、確認された肺癌を有する個体の末梢血で検出可能である。
【0079】
[000114]末梢血miRNAプロファイル
[000115]末梢血miRNAプロファイルは、療法に先立って確認された肺癌を有する個体と肺癌を有しない個体間を識別するために有用である。
【0080】
[000116]全末梢血miRNAを、SAM(マイクロアレイの有意性分析)ソフトウェアーを使用して分析し、二つのクラス(肺癌を有する対象(腫瘍)対確認された肺癌又は肺疾患がない対象(正常)の末梢血)において統計的に有意なmiRNAを同定した。
【0081】
[000117]実施例1
[000118]末梢全血マイクロRNA発現は、以前に報告されている特異的マイクロRNAについての原発性腫瘍発現と相関する。
【0082】
[000119]肺腫瘍及び進行した肺癌を有する対象からの末梢血サンプルの両方で下方調節されているmiRNAが同定された。miRNAが対象の群の末梢血中で変化したことを示している表1を参照されたい。
【0083】
[000120]表1は、全血中の、正常レベルと比較して肺癌で増加した及び減少したmiRNAを示している。スコア(d)、変化倍数及びq値(%)が示されている。
[000121]
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
[000122]実施例2
[000123]加えて、RT−PCRにより特異的miRNA(miR−126)の全末梢血発現パターンを確認し(図2参照)、そして非小細胞肺癌(NSCLC)(n=4)の場合、正常対照(n=3)と比較した。
【0088】
[000124]実施例3
[000125]インサイツハイブリダイゼーションは、哺乳類組織中のmiRNA位置を同定するために有用である。
【0089】
[000126]肺組織のMiRNA発現プロファイルは、肺癌と正常肺組織を識別する。インサイツハイブリダイゼーション研究は、ヒト肺癌組織サンプル中の潜在的miRNAを位置付けるために使用した。一つの非制限的実施例において、miR−155はいくつかの固形及び血液悪性腫瘍での発現が増加している。肺癌において、増加したmiR−155発現は悪い生存率と相関する。
【0090】
[000127]しかしながら、肺癌におけるmiR−155発現の位置及び調節はまだ分かっていない。本明細書で示したように、miR−155未成熟形が腺癌中の癌性細胞の核において同定されたが、成熟形は容易には同定されていない(図3A、3B参照)。
【0091】
[000128]理論に束縛されるわけではないが、このことは、NSCLCにおける調節の潜在的機構としての、miR−155のプロセシング障害を示していると考えられる。気管支肺胞細胞癌においては、miR−155の未熟及び成熟形の両方が高レベルで存在していた(図3C、3D参照)。この発見は、肺癌のサブタイプにおけるマイクロRNA発現に存在する不均質性の例を表している。
【0092】
[000129]図4A〜4Dは、MiR−126トランスフェクションがCrkタンパク質発現を変化させることを示す。Crkは肺癌を含むいくつかの悪性腫瘍で関係付けられているアダプタータンパク質、そしてmiR−126の予測される標的である。図4Aは、H1703細胞のpremiR−126トランスフェクションが、miR−126mRNA発現を1000〜5000倍増加させ、CrkIIタンパク質を減少させることを示している。
【0093】
[000130]図4B〜4Dは、Crk mRNAに変化がないことを示している(図4B)。CrkIタンパク質はウエスタンでは検出されなかった。100nMのLNA miR−126アンチセンスオリゴヌクレオチドによるH226細胞(扁平上皮)のトランスフェクションは、スクランブルpre−miRトランスフェクションと比較してmiR−126発現が10分の1に減少し(図4C)、デンシトメトリーにより測定されたCrkIIタンパク質発現は増加したが(*p<.05)、mRNAは変化しなかった(図4D)。ウエスタンブロットを二重に実施し、すべてのRT−PCR結果は、二重に実施された2回の独立した実験からの平均=/−S.E.を示している(*p<.05 スクランブル対pre−miR)。18Sを内部標準として使用した。
【0094】
[000131]実施例4
[000132]標的MiRNAサイレンシングは、細胞表現型に生じた変化を試験するために有用である。
【0095】
[000133]図5A〜5Gは、肺のヒト扁平上皮癌における、miR−126についてのインサイツハイブリダイゼーション及びCrkについての免疫組織化学を示している代表的像を示している。1のケースにおいて、Crk発現(赤色)がほとんどの腫瘍細胞内で明らかであり(図5A)、一方、miR−126発現は腫瘍細胞に隣接する切片では観察されないが(図5B)、miR−126は正常気管支上皮で検出された(図5C)(青色シグナル)。第2のケースにおいて、Crkは腫瘍内で検出不能であるが(図5D)、一方、腫瘍内にmiR−126の強い発現(青色)があり(図5E);正常組織において、Crkは内皮(図5F)及び気管支上皮(図5G)に局在している(全ての像は、1000xである図5F及び200xである図5Gを除いて400xである)。
【0096】
[000134]miR−126は、キナーゼシグナル伝達及びインビトロでの足場非依存性増殖を活性化することが示されているシグナル伝達アダプタータンパク質、CRKを含む複数の予測標的を有する。
【0097】
[000135]実施例5
[000136]肺癌の早期発見のためのスクリーニング試験
[000137]本発明まで、肺癌の早期発見のための確立されたスクリーニング試験はなく、対象の25%未満しか外科的に治療可能疾患(ステージI及びII)を有していない。加えて、疾患再発は受け入れ難いほど高い。最近の疫学統計は、肺癌の大多数が現在、元及び非喫煙者で診断されていることを明らかにした。タバコを吸ったことがない対象において気管支肺胞癌(BAC)又は非BAC腺癌の発症を導く、はっきり異なった遺伝的及びエピジェネティック事象についてはほとんど知られていない。
【0098】
[000138]肺癌特異的miRNA
[000139]組織/細胞及び疾患モデルのmiRNA機能を決定する戦略には:a)インビトロ標的化過剰発現の効果を決定すること、及び疾患表現型に対する選択された肺癌特異的マイクロRNAのサイレンシング、及びb)選択された肺癌特異的マイクロRNAの調節及びプロセシングを同定することが含まれる。
【0099】
[000140]実施例6
[000141]表2は、末梢血単核細胞(PBMC)での正常レベルと比較して、肺癌で増加した及び減少したmiRNAを示している。表2は、Cl、C2、C3、C5、Nl、N2、N3、N4及びN5の癌(C)及び正常(N)について、末梢血単核細胞(PBMC)で観察されたmiRNAに関して、デルタCT(内部標準18sマイナスサンプル)として表されたデータを示している。
【0100】
[000142]
【0101】
【表4】
【0102】
[000143]実施例7
[000144]表3は、血清での正常レベルと比較して、肺癌で増加した及び減少したmiRNAを示している。これらはデルタCT(内部標準18Sマイナスサンプル)として表されている。表3は、Cl、C2、C3、C5、Nl、N2、N3、N4及びN5の癌(C)及び正常(N)について、血清で観察されたmiRNAに関するデータを示している。
【0103】
[000145]
【0104】
【表5】
【0105】
[000146]実施例8
[000147]図6は、末梢血単核細胞(PBMC)中の正常レベルと比較した肺癌中のmiR−126の相対的発現を示しているグラフである。.
[000148]また、血清中の正常レベルと比較した肺癌中のmiR−let7aの相対的発現を示しているグラフを含む、図7を参照されたい。図8は、血清中の正常レベルと比較した肺癌中のmiR−126の相対的発現を示しているグラフを含む。
【0106】
[000149]実施例9
[000150]図9A〜9D:H1703増殖、接着、遊走及び浸潤に対するmiR−126過剰発現の効果。
【0107】
[000151]図9A:対照、スクランブルpre−miR及びpre−miR126細胞は、96時間にわたって類似の増殖速度を示した。2回の独立した増殖アッセイを三重に実施した。
【0108】
[000152]図92B〜92D:miR−126過剰発現細胞は、減少した接着(図9B)、遊走(図9C)及び浸潤(図9D)を示した。図9C及び図9Dの像は、盲検ランダム視野の代表像である(p<.05)。全ての実験において、miR−126過剰発現がRT−PCRにより確認され、適切な誘導は確実である。結果は、三重に実施された四つの視野の平均を示している(*p<.05 スクランブル対pre−miR)。
【0109】
[000153]実施例10
[000154]図10A〜10B:NSCLC組織におけるmiR−126及びCrk発現:ヒト非小細胞肺癌及び非病変部隣接肺(扁平上皮1〜13及び腺癌14〜19)の19対の試験は、非病変部隣接正常(N)肺と比較して腫瘍(T)でのmiR−126 mRNA発現の減少を示した(図10A)。これら同一サンプル中のCrk mRNA発現は不定であり、19の腫瘍の内の7が非病変部隣接肺よりも高いCrk発現を示した(図10B)。RT−PCRの結果は、二重に実施された2回の独立した実験からの平均=/−S.Eを示している(*p<.05 腫瘍対非病変部肺)。18Sを内部標準として使用した。
【0110】
[000155]選択された未成熟及び成熟miRNAの局在化についてのインサイツハイブリダイゼーション
[000156]腫瘍形成に結び付けられるmiRNAは、肺癌細胞タイプに依存して、調節及び生物学的関連性が異なっているとここで考えられる。現/元喫煙者及び非喫煙者からの肺腫瘍におけるmiRNA発現のはっきりと異なったシグネチャがあることがここで考えられる。さらに、肺腫瘍発生に関連するmiRNAの群を同定した。
【0111】
[000157]実施例11
[000158]リアルタイムPCRを使用するmiRNA解析
[000159]500の成熟ヒトmiRNAの発現をリアルタイムPCRによりプロファイル作製することができ、肺癌を有する患者及び正常対照からの血液中で異なって発現されたmiRNAを発見した。以前に公表された逆転写条件を使用し、500の既知ヒト成熟miRNAのためのループ化プライマーの混合物(Mega Plex kit,Applied Biosystems)でのプライミングにより、RNA(50ng)をcDNAに変換し得る。内部標準snoRNA U38B及びU43ならびに18S及び7S rRNAに対するプライマーをプライマー混合物に含ませることができる。発現は、384ウェル反応プレートを備えたApplied Biosystems 7900HTリアルタイムPCR装置を使用してプロファイル作製し得る。
【0112】
[000160]液体取り扱いロボット及びZymak Twister robotを、スループットを増加させる、及びエラーを減少させるために使用し得る。リアルタイムPCRは標準条件を使用して実施し得る。最適内部標準は、GOLDクラスの平均2−CTを比較することにより決定し得る。この内部標準は、相対的遺伝子発現を計算するために使用し得る。各miRNAの相対的発現は、式2−ΔCT(式中、ΔCT=CTmiRNA−CT内部標準)から計算し得る。
【0113】
[000161]PCRに基づいた相対的miRNA発現は、次ぎにt検定を使用して分析し得る。−ΔCTデータは、階層的クラスター分析の方法を使用して分析することができ、ヒートマップにプロットした。ANOVAのような追加の統計分析を実施することができ、肺癌及び正常レベル間で異なって発現されているmiRNAが決定される。
【0114】
[000162]図11−表4は、オリゴプローブ、前駆体配列、成熟mRNA、活性部位上にプローブがあるかどうか、Entrez- Gene ID、基準配列番号、miR塩基ステムループ 寄託番号、miR塩基成熟配列寄託番号、注、オリゴ配列、成熟miRNA配列、及びステムループ配列のリストを示す。
【0115】
[000163]実施例12
[000164]図12−表5は、血清中に検出されたmiRNAを示す。
[000165]実施例13
[000166]図13−表6は、末梢血単核細胞(PBMC)中に検出されたmiRNAを示す。
【0116】
[000167]定義及び使用例
[000168]本明細書において相互交換的に使用される、「miR遺伝子産物」、「マイクロRNA」、「miR」又は「miRNA」とは、プロセッシングされていない又はプロセッシングされたmiR遺伝子からのRNA転写体を指す。miR遺伝子産物はタンパク質に翻訳されないので、用語「miR遺伝子産物」はタンパク質を含んでいない。プロセッシングされていないmiR遺伝子転写体は「miR前駆体」とも称され、そして典型的には約70〜100ヌクレオチド長のRNA転写体を含む。miR前駆体は、RNAse(例えば、ダイサー、アルゴノート又はRNAse III(例えば、大腸菌RNAse III))での消化により、活性19〜25ヌクレオチドRNA分子にプロセッシングし得る。この活性19〜25ヌクレオチドRNA分子は、「プロセッシングされた」miR遺伝子転写体又は「成熟」miRNAとも称される。
【0117】
[000169]活性19〜25ヌクレオチドRNA分子は、天然のプロセッシング経路(例えば、無傷の細胞又は細胞溶解物を使用して)を介して、又は合成プロセッシング経路(例えば、ダイサー、アルゴノート又はRNAase IIIのような単離されたプロセッシング酵素を使用して)によりmiR前駆体から得ることが可能である。活性19〜25ヌクレオチドRNA分子は、miR前駆体からプロセッシングされることなく、生物学的に又は化学合成により直接的に生成し得ることも理解されている。マイクロRNAが名称で本明細書において参照される場合、特に示されない限り、該名称は前駆体及び成熟形の両方に対応する。
【0118】
[000170]本方法は、対象からのサンプル中の該少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルを決定すること、及び対照に対する該サンプル中の該少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルを比較することを含む。本明細書において使用される「対象」は、こうした障害を有する、又は有していると疑われるいずれの哺乳類でもあり得る。好ましい態様において、該対象はこうした障害を有している、又は有していると疑われるヒトである。
【0119】
[000171]少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルは、対象から得られた生物学的サンプルの細胞中で測定し得る。
[000172]別の態様において、サンプルを対象から取り出すことが可能であり、そしてDNAを標準技術により抽出し及び単離し得る。例えば、ある態様において、該サンプルは、放射線療法、化学療法及びホルモン療法又は他の療法的治療に先立って対象から得ることができる。対応する対照サンプル又は対照基準サンプル(例えば、対照サンプルの集団から得られる)は、対象の罹患していないサンプルから、正常ヒト個体又は正常個体の集団から、又は患者のサンプル中の大多数の細胞に対応している培養細胞から得ることが可能である。対照サンプルは、対象のサンプルからの細胞中の所与のmiR遺伝子から産生されるmiR遺伝子産物のレベルを、対照サンプルの細胞からの対応するmiR遺伝子産物レベルと比較できるように、対象からのサンプルと同様に処理し得る。もしくは、基準サンプルは、試験サンプルとは別に(例えば、異なった時に)得ること及び処理することができ、試験サンプルからの細胞中の所与のmiR遺伝子から産生されるmiR遺伝子産物のレベルを、基準サンプルからの対応するmiR遺伝子産物レベルと比較し得る。
【0120】
[000173]一つの態様において、試験サンプル中の少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルは、対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルよりも高い(即ち、miR遺伝子産物の発現が「上方調節」されている)。本明細書で使用するmiR遺伝子産物の発現が「上方調節」されているとは、対象からの細胞又は組織サンプル中のmiR遺伝子産物の量が、対照(例えば、標準サンプル、対照細胞サンプル、対照組織サンプル)中の同一遺伝子産物の量よりも多い場合である。
【0121】
[000174]別の態様において、試験サンプル中の少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルは、対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルよりも低い(即ち、miR遺伝子産物の発現が「下方調節」されている)。本明細書で使用するmiR遺伝子産物の発現が「下方調節」されているとは、対象からのサンプル中遺伝子から産生されるmiR遺伝子産物の量が、対照サンプル中の同一遺伝子から産生される量よりも少ない場合である。対照及び正常サンプル中の相対的miR遺伝子発現は、一つ以上のRNA発現標品に対して決定し得る。該標品は、例えば、ゼロmiR遺伝子発現レベル、標準細胞株中でのmiR遺伝子発現レベル、患者の影響を受けていないサンプル中のmiR遺伝子発現レベル、又は正常ヒト対照の集団(例えば、対照基準標品)について以前に得られているmiR遺伝子発現の平均レベルを含むことが可能である。
【0122】
[000175]該少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルは、当業者には公知である多様な技術(例えば、定量的又は半定量的RT−PCR、ノーザンブロット分析、溶液ハイブリダイゼーション検出)を使用して測定し得る。特定の態様において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルは、対象から得られた試験サンプルからのRNAを逆転写して標的オリゴデオキシヌクレオチドを提供し、標的オリゴデオキシヌクレオチドを一つ以上のmiRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせ(例えば、miRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイ)、試験サンプルについてのハイブリダイゼーションプロファイルを提供し、そして試験サンプルハイブリダイゼーションプロファイルを対照サンプルから発生させたハイブリダイゼーションプロファイルと比較することにより測定する。対照サンプルと比較し、試験サンプルにおける少なくとも一つのmiRNAのシグナルの変化は、該対象が特定の障害を有している、又は特定の障害になるリスクにあることを示す。
【0123】
[000176]マイクロアレイは既知のmiRNA配列から発生させた遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブからも調製し得る。該アレイは各miRNAについて二つの異なったオリゴヌクレオチドプローブを含むことができ、一つは活性成熟配列を含んでおり、そして他はmiRNAの前駆体に対して特異的である。該アレイは、ハイブリダイゼーションストリンジェンシー条件のための対照として働き得る、ヒトオルソログとわずか数塩基が異なっている一つ以上のマウス配列のような対照も含むことができる。両方の種からのtRNA及び他のtRNA(例えば、rRNA、mRNA)もマイクロチップ上にプリントすることができ、特異的ハイブリダイゼーションのための内部の、比較的に安定な陽性対照を提供している。非特異的ハイブリダイゼーションのための一つ以上の適切な対照も該マイクロチップ上に含ませることができる。この目的のためには、いずれの既知のmiRNAとも、いずれの相同性も存在しないことに基づいて配列が選択される。
【0124】
[000177]該マイクロアレイは当該技術分野で公知の技術を使用して製作することができる。例えば、適切な長さの(例えば、40ヌクレオチド)のプローブオリゴヌクレオチドが、C6位で5’−アミン修飾され、商業的に入手可能なマイクロアレイシステム、例えば、GeneMachine OmniGrid(商標)100 Microarrayer 及びAmersham CodeLink(商標)活性化スライド、を使用してプリントされる。標的RNAに対応する標識cDNAオリゴマーは、標識プライマーで標的RNAを逆転写することにより調製される。第一鎖合成に続いて、RNA/DNAハイブリッドを変性させてRNA鋳型を分解する。このようにして調製された標識標的cDNAを、ハイブリダイズ条件下(例えば、25℃で18時間の6X SSPE/30%ホルムアミド、続いて37℃で40分の0.75X TNT(トリス HCl/NaCl/Tween 20)中での洗浄)、マイクロアレイチップにハイブリダイズさせる。固定化されたプローブDNAがサンプル中の相補的標的cDNAを認識するアレイ上の位置でハイブリダイゼーションが起こる。標識標的cDNAは、結合が起こったアレイ上の正確な位置に印を付け、自動的な検出及び定量化を可能にする。出力はハイブリダイゼーション事象のリストから成っており、特異的cDNA配列の相対的存在量、そしてそれ故、患者サンプル中の対応する相補的miRの相対量を示している。一つの態様に従うと、標識cDNAオリゴマーは、ビオチン標識プライマーから調製されたビオチン標識cDNAである。該マイクロアレイは次ぎに、例えば、ストレプトアビジン−Alexa647 コンジュゲートを使用するビオチン含有転写体の直接検出により処理され、慣用的スキャニング法を利用してスキャンする。アレイ上の各スポットのイメージ強度は、患者サンプル中の対応するmiRの存在量に比例している。
【0125】
[000178]該アレイの使用は、miRNA発現検出にいくつかの利点を有する。第一に、数百の遺伝子の全体的発現が、同一サンプル中で一つの時点で同定し得る。第二に、オリゴヌクレオチドプローブの注意深い設計を介して、成熟及び前駆体分子の両方の発現を同定し得る。第三に、ノーザンブロット分析と比較し、該チップは少量のRNAしか必要とせず、及び2.5μgの総RNAを使用して再現性のある結果を提供する。比較的限られた数のmiRNA(種当たり数百)は、それぞれに特有のオリゴヌクレオチドプローブを有するいくつかの種のための共通マイクロアレイの構築を可能にする。こうしたツールは、多様な条件下、各々の既知miRについての種を越えた発現の分析を可能にするであろう。
【0126】
[000179]特異的miRの定量的発現レベルアッセイのための使用に加えて、miRNome、好ましくは全miRNomeのかなりの部分に対応するmiRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含有するマイクロチップは、miR発現パターンの分析のためのmiR遺伝子発現プロファイリングを実施するために用いることができる。固有のmiRシグニチァーは、確立された疾患マーカーと、又は直接的に疾患状態と関連させることができる。
【0127】
[000180]本明細書に記載した発現プロファイリング法に従うと、特定の障害を有していると疑われる対象からのサンプルの総RNAが定量的に逆転写されて、サンプル中のRNAに相補的な標識標的オリゴデオキシヌクレオチドの組を提供する。標的オリゴデオキシヌクレオチドは次ぎに、miRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイへハイブリダイズされて、サンプルについてのハイブリダイゼーションプロファイルを提供する。結果は、サンプル中のmiRNAの発現パターンを示している、サンプルについてのハイブリダイゼーションプロファイルである。該ハイブリダイゼーションプロファイルは、マイクロアレイ中のmiRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドに対する、サンプルに由来する標的オリゴデオキシヌクレオチドへの結合からのシグナルを含む。該プロファイルは、結合の存在又は不存在(シグナル対ゼロシグナル)として記録することができる。より好ましくは、記録された該プロファイルは、各ハイブリダイゼーションからのシグナルの強度を含む。該プロファイは、正常対照サンプル又は基準サンプルから発生されたハイブリダイゼーションプロファイルと比較される。シグナルの変化は、対象中の特定の障害の存在、又は該障害を発症する傾向を示す。
【0128】
[000181]miR遺伝子発現を測定するための他の技術も当業者の範囲内であり、RNA転写及び分解の速度を測定するための多様な技術が含まれる。
[000182]本発明は、対象が予後不良の特定の障害を有するか、又は発症するリスクがあるかどうかを診断する方法も提供する。この方法において、特定の障害の予後不良に関連している少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルは、該対象から得られた試験サンプルからのRNAを逆転写し、標的オリゴデオキシヌクレオチドの組を提供することにより測定される。標的オリゴデオキシヌクレオチドは次に、一つ以上のmiRNA特異的プローブオリゴヌクレオチド(例えば、miRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイ)とハイブリダイズさせ、試験サンプルについてのハイブリダイゼーションプロファイルを提供し、そして該試験サンプルハイブリダイゼーションプロファイルを、対照サンプルから発生させたハイブリダイゼーションプロファイルと比較する。対照サンプルと比較して、試験サンプル中の少なくとも一つのmiRNAシグナルの変化は、該対象が予後不良の特定の障害を有するか、又は発症するリスクがあることを示す。
【0129】
[000183]いくつかの例において、サンプル中の複数の異なったmiR遺伝子産物の発現レベルを同時に決定することが望ましいであろう。他の例においては、特定の障害に相関するすべての既知のmiR遺伝子の転写体の発現レベルを決定することが望ましいであろう。数百のmiR遺伝子又は遺伝子産物についての特異的発現レベルを評価することは多大な時間を必要とし、そして大量の総RNA(例えば、各ノーザンブロットについて少なくとも20μg)及び放射性同位元素を必要とするオートラジオグラフィー技術を要求する。
【0130】
[000184]これらの制限を克服するため、miR遺伝子の組に特異的であるオリゴヌクレオチド(例えば、オリゴデオキシヌクレオチド)プローブの組を含有するように、マイクロチップフォーマット(即ち、マイクロアレイ)でオリゴライブラリーを構築することができる。こうしたマイクロアレイを使用し、RNAを逆転写して標的オリゴデオキシヌクレオチドの組を発生させ、及びそれらをマイクロアレイ上のプローブオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせ、ハイブリダイゼーション又は発現プロファイルを発生させることにより、生物学的サンプル中の複数のマイクロRNA発現レベルを決定し得る。試験サンプルのハイブリダイゼーションプロファイルは次ぎに対照サンプルのものと比較することが可能であり、どのマイクロRNAが変化した発現レベルを有しているのかを決定する。本明細書で使用する「プローブオリゴヌクレオチド」又は「プローブオリゴデオキシヌクレオチド」は、標的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることが可能であるオリゴヌクレオチドを指す。「標的オリゴヌクレオチド」又は「標的オリゴデオキシヌクレオチド」は、検出されるべき分子を指す(例えば、ハイブリダイゼーションを介して)。「miR特異的プローブオリゴヌクレオチド」又は「miRに対して特異的なプローブオリゴヌクレオチド」は、特異的miR遺伝子産物又は特異的miR遺伝子産物の逆転写体にハイブリダイズするように選択された配列を有するプローブオリゴヌクレオチドを意味する。
【0131】
[000185]特定のサンプルの「発現プロファイル」又は「ハイブリダイゼーションプロファイル」は、本質的にはサンプルの状態のフィンガープリントである;二つの状態は同様に発現されるいずれの特定の遺伝子も有することができる一方、多数の遺伝子の同時評価は、細胞の状態に独特である遺伝子発現プロファイルの発生を可能にする。即ち、正常サンプルは、対応する障害提示サンプルから区別することができる。こうした障害提示サンプル内の、異なった予後状態(例えば、良好な又は不良な長期生存見通し)を決定することができる。異なった状態にある障害提示サンプルの発現プロファイルを比較することにより、これらの状態の各々においてどの遺伝子が重要であるかに関する情報(遺伝子の上方及び下方調節を含んで)が得られる。
【0132】
[000186]障害提示サンプルにおいて異なって発現された配列、ならびに異なった予後結果を生じる異なった発現の同定は、この情報のさまざまな形での使用を可能にする。例えば、特定の治療計画を評価することができる(例えば、特定の対象における長期予後を改善するために化学療法薬剤が作用するかどうかを決定するための)。同様に、既知の発現プロファイルを有する対象からのサンプルを比較することにより、診断を行う又は確認することができる。さらに、これらの遺伝子発現プロファイル(又は個々の遺伝子)は、特定の障害発現プロファイルを抑制する、又は不良な予後プロファイルをより良い予後プロファイルに変換する薬剤候補のスクリーニングを可能にする。
【0133】
[000187]細胞中の一つ以上のmiR遺伝子産物のレベルの変化は、特定の障害を導き得るこれらのmiRについての一つ以上の意図された標的の調節解除を生じ得る。それ故、miR遺伝子産物のレベルを変化させることは(例えば、障害提示細胞で上方調節されているmiRのレベルを減少させることにより、障害提示細胞で下方調節されているmiRのレベルを増加させることにより)、該障害を成功裏に治療することができる。
【0134】
[000188]従って、本発明は対象における障害を治療する方法を包含し、ここで少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、該対象の細胞中で脱調節されている(例えば、下方調節、上方調節)。一つの態様において、試験サンプル中の該少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルは、対照又は基準サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルよりも高い。別の態様において、試験サンプル中の該少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルは、対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルよりも低い。該少なくとも一つの単離されたmiR遺伝子産物が試験サンプル中で下方調節されている場合、該方法は、対象中の障害提示細胞の増殖が抑制されるように、該少なくとも一つの単離されたmiR遺伝子産物、又は単離された変異体又はそれらの生物学的に活性な断片の有効量を投与することを含む。
【0135】
[000189]例えば、miR遺伝子産物が対象の癌細胞において下方調節されている場合、単離されたmiR遺伝子産物の有効量を該対象に投与することは、該癌細胞の増殖を抑制し得る。該対象に投与される単離されたmiR遺伝子産物は、該癌細胞中で下方調節されている内在性野生型miR遺伝子産物と同一でもよいし、又は変異体又はそれらの生物学的に活性な断片でもあり得る。
【0136】
[000190]本明細書で定義されるmiR遺伝子産物の「変異体(variant)」とは、対応する野生型miR遺伝子産物と100%未満の同一性を有し、対応する野生型miR遺伝子産物の一つ以上の生物活性を有するmiRNAを指す。こうした生物活性の例には、限定されるわけではないが、標的RNA分子の発現の抑制(例えば、標的RNA分子の翻訳を抑制すること、標的RNA分子の安定性を変調すること、標的RNA分子のプロセシングを抑制すること)、及び癌及び/又は骨髄増殖性障害に関連した細胞プロセス(例えば、細胞分化、細胞増殖、細胞死)の抑制が含まれる。これらの変異体には、種変異体及びmiR遺伝子中の一つ以上の突然変異(例えば、置換、欠失、挿入)の結果である変異体が含まれる。ある態様において、該変異体は、対応する野生型miR遺伝子産物と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は99%同一である。
【0137】
[000191]本明細書で定義された、miR遺伝子産物の「生物学的に活性な断片」とは、対応する野生型miR遺伝子産物の一つ以上の生物活性を有するmiR遺伝子産物のRNA断片を指す。上に記載したように、こうした生物活性の例には、限定されるわけではないが、標的RNA分子の発現の抑制、及び癌及び/又は骨髄増殖性障害に関連した細胞プロセスの抑制が含まれる。ある態様において、該生物学的に活性な断片は、少なくとも約5、7、10、12、15、又は17ヌクレオチド長である。特定の態様において、単離されたmiR遺伝子産物は、一つ以上の追加の抗癌治療と組み合わせて対象に投与し得る。適した抗癌治療には、限定されるわけではないが、化学療法、放射線療法及びそれらの組み合わせ(例えば、放射線化学療法)が含まれる。
【0138】
[000192]該少なくとも一つの単離されたmiR遺伝子産物が癌細胞中で上方調節されている場合、該方法は、障害提示細胞の増殖が抑制されるように、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物の発現を抑制する化合物の有効量を該対象に投与することを含む。こうした化合物は、本明細書においてmiR遺伝子発現抑制化合物と称される。適したmiR遺伝子発現抑制化合物の例には、限定されるわけではないが、本明細書に記載した化合物が含まれる(例えば、二本鎖RNA、アンチセンス核酸及び酵素的RNA分子)。
【0139】
[000193] 特定の態様において、miR遺伝子発現抑制化合物は、一つ又はそれより多くの追加の抗癌治療と組み合わせて対象に投与し得る。適した抗癌治療には、限定されるわけではないが、化学療法、放射線療法及びそれらの組み合わせ(例えば、放射線化学療法)が含まれる。
【0140】
[000194]本明細書に記載されたように、該少なくとも一つの単離されたmiR遺伝子産物が癌細胞中で上方調節されている場合、該方法は、癌細胞の増殖が抑制されるように、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物の発現を抑制するための少なくとも一つの化合物の有効量を該対象に投与することを含む。
【0141】
[000195]本明細書で使用される用語「治療する」、「治療すること」及び「治療」は、疾患又は状態、例えば、癌及び/又は他の状態又は障害に関連する症状を寛解させることを指し、疾患症状の発症を防止する又は遅延すること、及び/又は疾患、障害又は状態の症状の重症度又は頻度を減らすことを含んでいる。用語「対象」、「患者」及び「個体」は、限定されるわけではないが、霊長類、乳牛、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス又は他のウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、げっ歯類又はマウス種を含む哺乳類のような動物を含むことが本明細書において定義される。好ましい態様において、該動物はヒトである。
【0142】
[000196]本明細書で使用される「単離された」miR遺伝子産物は、合成された又はヒトの介在を介して天然の状態から変化された又は取り出されたものである。例えば、合成miR遺伝子産物又はその天然の状態で同時に存在する物質から部分的に又は完全に分離されたmiR遺伝子産物が、「単離されて」いると考えられる。単離されたmiR遺伝子産物は実質的に精製された形態で存在することが可能であり、又は該miR遺伝子産物が送達される細胞内で存在することが可能である。それ故、細胞へ計画的に送達された又は細胞中で発現されたmiR遺伝子産物は、「単離された」miR遺伝子産物と考えられる。miR前駆分子から細胞内部で産生されたmiR遺伝子産物も「単離された」分子であると考えられる。本発明に従うと、本明細書に記載された該単離されたmiR遺伝子産物は、対象(例えば、ヒト)を治療するための医薬の製造に使用し得る。
【0143】
[000197]単離されたmiR遺伝子産物は、多くの標準技術を使用して得ることが可能である。例えば、該miR遺伝子産物は当該技術分野で公知の方法を使用して化学的に合成して又は組換え的に産生し得る。一つの態様において、miR遺伝子産物は適切に保護されたリボヌクレオシドホスホラミダイト及び慣用的DNA/RNAシンセサイザーを使用して化学的に合成される。合成RNA分子又は合成試薬の商業的供給元には、例えば、Proligo (Hamburg, Germany), Dharmacon Research (Lafayette, CO, U.S.A.), Pierce Chemical (Perbio Science の一部門, Rockford, IL, U.S.A.), Glen Research (Sterling, VA, U.S.A.), ChemGenes (Ashland, MA, U.S.A.) 及びCruachem (Glasgow, UK) が含まれる。
【0144】
[000198]もしくは、該miR遺伝子産物は、いずれかの適したプロモーターを使用して組換え環状又は直線状DNAプラスミドから発現し得る。プラスミドからRNAを発現するために適したプロモーターには、例えば、U6又はH1 RNAポリメラーゼIIIプロモーター配列又はサイトメガロウイルスプロモーターが含まれる。他の適したプロモーターの選択は当業者には自明である。本発明の組換えプラスミドは、細胞(例えば、癌細胞、骨髄増殖性障害を示している細胞)中での該miR遺伝子産物の発現のための誘導可能又は調節可能プロモーターも含み得る。
【0145】
[000199]組換えプラスミドから発現された該miR遺伝子産物は、標準技術により培養細胞発現システムから単離し得る。組換えプラスミドから発現されたmiR遺伝子産物は、細胞へ送達する、及び細胞中で直接発現することも可能である。
【0146】
[000200]該miR遺伝子産物は別の組換えプラスミドから発現することも、又は同一の組換えプラスミドから発現することも可能である。一つの態様において、該miR遺伝子産物は、単一プラスミドからRNA前駆分子として発現され、そして該前駆分子は、限定されるわけではないが、癌細胞内に実存するプロセッシングシステムを含む適したプロセッシングシステムにより、機能性miR遺伝子産物にプロセッシングされる。
【0147】
[000201]該miR遺伝子産物を発現するために適したプラスミドの選択、遺伝子産物を発現するために該プラスミド内へ核酸配列を挿入する方法、及び組換えプラスミドを問題とする細胞へ送達する方法は当業者には自明である。例えば、その全開示が本明細書において援用される、Zeng et al. (2002), Molecular Cell 9:1327-1333; Tuschl (2002), Nat.Biotechnol, 20:446-448; Brummelkamp et al. (2002), Science 296:550-553; Miyagishi et al. (2002), Nat. Biotechnol. 20:497-500; Paddison et al. (2002), Genes Dev. 16:948-958; Lee et al. (2002), Nat. Biotechnol. 20:500-505; 及び Paul et al. (2002), Nat. Biotechnol. 20:505-508 を参照されたい。例えばある態様において、該miR遺伝子産物を発現しているプラスミドは、CMV中間初期プロモーター制御下のmiR前駆体RNAをコードしている配列を含むことが可能である。本明細書において使用されるプロモーターの「制御下」とは、プロモーターがmiR遺伝子産物コード配列の転写を開始できるように、miR遺伝子産物をコードする核酸配列が該プロモーターの3’に位置していることを意味する。
【0148】
[000202]該miR遺伝子産物は組換えウイルスベクターからも発現し得る。該miR遺伝子産物が二つの別の組換えウイルスベクターから、又は同一のウイルスベクターから発現できることが企図される。該組換えウイルスベクターから発現されたRNAは、標準技術により培養細胞発現システムから単離することが可能であり、又は細胞(例えば、癌細胞、骨髄増殖性障害を示している細胞)中で直接発現することも可能である。
【0149】
[000203]本発明の治療法の他の態様において、miR発現を抑制する少なくとも一つの化合物の有効量を対象に投与し得る。本明細書において使用される「miR発現を抑制する」とは、治療後のmiR遺伝子産物の前駆体及び/又は活性成熟形の産生が、治療に先だって産生される量よりも少ないことを意味する。当業者は、例えば、本明細書で議論したmiR転写体レベルを決定するための技術を使用して、細胞においてmiR発現が抑制されたかどうかを容易に決定し得る。抑制は、遺伝子発現のレベル(即ち、該miR遺伝子産物をコードするmiR遺伝子の転写を抑制することにより)、又はプロセッシングのレベル(例えば、成熟活性miRへのmiR前駆体のプロセッシングを抑制することにより)で起こり得る。
【0150】
[000204]本明細書で使用される、miR発現を抑制する化合物の「有効量」とは、癌及び/又は骨髄増殖性障害を罹患した対象において、細胞の増殖を抑制するために十分な量である。当業者は、該対象のサイズ及び体重;疾患浸透の程度;該対象の年齢、健康状態及び性;投与経路;及び投与が局所的であるか又は全身的であるかどうかのような因子を考慮に入れることにより、所与の対象に投与すべきmiR発現抑制化合物の有効量を容易に決定し得る。
【0151】
[000205]当業者は、本明細書に記載したように、miR発現を抑制する化合物を所与の対象に投与するための適切な投与計画を容易に決定することも可能である。miR遺伝子発現を抑制するために適した化合物には、二本鎖RNA(短い又は小さな干渉RNA又は「siRNA」のような)、アンチセンス核酸、及びリボザイムのような酵素的RNA分子が含まれる。これらの化合物の各々は、所与のmiR遺伝子産物へ標的化すること、及び標的miR遺伝子産物の発現を妨害(例えば、翻訳を抑制することにより、開裂又は分解を誘発することにより)することが可能である。
【0152】
[000206]例えば、所与のmiR遺伝子の発現は、該miR遺伝子産物の少なくとも一部と、少なくとも90%、例えば少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列相同性を有する単離された二本鎖RNA(「dsRNA」)分子で該miR遺伝子のRNA干渉を誘発することにより抑制し得る。特定の態様において、該dsRNA分子は、「短い又は小さな干渉RNA」又は「siRNA」である。
【0153】
[000207]少なくとも一つのmiR遺伝子産物、又はmiR発現を抑制するための少なくとも一つの化合物の投与は、癌及び/又は骨髄増殖性障害を有する対象中の細胞(例えば、癌性細胞、骨髄増殖性障害を示している細胞)の増殖を抑制するであろう。本明細書で使用される「癌性細胞又は骨髄増殖性障害を示している細胞の増殖を抑制する」とは、該細胞を殺す、又は該細胞の増殖を持続的又は一時的に休止させる又は遅らせることを意味する。もし、該miR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物の投与後に該対象中のこうした細胞の数が一定に残るか又は減少したら、癌細胞増殖の抑制が推測できる。もし、こうした細胞の絶対数が増加しても、腫瘍増殖の速度が低下したら、癌性細胞又は骨髄増殖性障害を示している細胞の増殖の抑制がまた推測できる。
【0154】
[000208]miR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物は、いずれかの適した経腸又は非経口投与経路によっても対象に投与し得る。本方法に適した経腸投与経路には、例えば、経口、直腸又は鼻孔内送達が含まれる。適した非経口投与経路には、例えば、血管内投与(例えば、静脈内ボーラス投与、静脈内注入、動脈内ボーラス投与、動脈内注入、及び血管系内へのカテーテル点滴注入);組織周辺及び組織内注射(例えば、腫瘍周囲及び腫瘍内注射、網膜内注射又は網膜下注射);皮下注入(浸透圧ポンプによるような)を含む皮下注射又はデポジション;カテーテル又は他の設置デバイス(例えば、網膜ペレット又は座剤、又は多孔質、非多孔質又はゲル状物質を含んでなる移植片)による目的の組織への直接適用;及び吸入が含まれる。特に適した投与経路は注射、注入及び腫瘍内への直接注射である。
【0155】
[000209]該miR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物は、当該技術分野で公知である技術に従って、対象への投与に先立ってしばしば「医薬(medicament)」と称される医薬組成物として製剤し得る。従って、本発明は癌及び/又は骨髄増殖性障害を治療するための医薬組成物を包含する。
【0156】
[000210]本医薬組成物は、医薬として受容可能な坦体と混合された、少なくとも一つのmiR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物(又はmiR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物をコードする配列を含む少なくとも一つの核酸)又はそれらの生理学的に受容可能な塩を含む(例えば、0.1〜90重量%)。ある態様において、本発明の医薬組成物は一つ又はそれより多くの抗癌剤(例えば、化学療法剤)を追加して含む。本発明の医薬製剤は、リポソームで被包されている少なくとも一つのmiR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物(又は、該miR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物をコードする配列を含む少なくとも一つの核酸)、及び薬学的に許容できる坦体も含むことができる。
【0157】
[000211]本発明の医薬組成物は、慣用的医薬賦形剤及び/又は添加剤も含むことができる。適した医薬賦形剤には、安定剤、抗酸化剤、浸透圧調節剤、緩衝剤及びpH調整剤が含まれる。適した添加剤には、例えば、生理学的生体適合性緩衝剤(例えば、トロメタミン塩酸塩)、キレート剤(例えば、DTPA又はDTPA−ビスアミドのような)又はカルシウムキレート錯体(例えば、カルシウムDTPA、CaNaDTPA−ビスアミドのような)の添加又は、随意に、カルシウム又はナトリウム塩(例えば、塩化カルシウム、アスコビル酸カルシウム、グルコン酸カルシウム又は乳酸カルシウム)の添加が含まれる。本発明の医薬組成物は液体形態での使用のために包装することができ、又は凍結乾燥することができる。
【0158】
[000212]本発明の固形医薬組成物のためには、慣用的無毒性固体の薬学的に許容できる坦体を使用することができる;例えば、医薬用のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなど。
【0159】
[000213]例えば、経口投与のための固形医薬組成物は、上に列挙したいずれかの坦体及び賦形剤、及び10〜95%、好ましくは25%〜75%の該少なくとも一つのmiR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物(又は、それらをコードする配列を含む少なくとも一つの核酸)を含み得る。エアロゾル(吸入)投与のための医薬組成物は、0.01〜20重量%、好ましくはl%〜10重量%の上記のようにリポソーム中に被包された該少なくとも一つのmiR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物(又は、該miR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物をコードする配列を含む少なくとも一つの核酸)、及び噴霧剤を含み得る。望むなら坦体も含ませ得る;例えば、鼻腔内送達のためのレシチン。
【0160】
[000214]本発明の医薬組成物は、一つ以上の抗癌剤をさらに含み得る。特定の態様において、該組成物は、少なくとも一つのmiR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物(又は、該miR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物をコードする配列を含む少なくとも一つの核酸)、及び少なくとも一つの化学療法剤を含む。本発明の方法に適している化学療法剤には、限定されるわけではないが、DNAアルキル化剤、抗腫瘍抗生物質剤、抗代謝剤、チューブリン安定化剤、チューブリン不安定化剤、ホルモンアンタゴニスト剤、トポイソメラーゼ阻害剤、タンパク質キナーゼ阻害剤、HMG−CoA阻害剤、CDK阻害剤、サイクリン阻害剤、カスパーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、アンチセンス核酸、三重らせんDNA、核酸アプタマー及び分子的修飾ウイルス、細菌又は外毒素剤が含まれる。本発明の組成物に適した剤の例には、限定されるわけではないが、シチジンアラビノシド、メトトレキサート、ビンクリスチン、エトポシド(VP−16)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラチン(CDDP)、デキサメタゾン、アルグラビン、シクロホスファミド、サルコリシン、メチルニトロソ尿素、フルオロウラシル、5−フルオロウラシル(5FU)、ビンブラスチン、カンプトテシン、アクチノマイシンD、マイトマイシンC、過酸化水素、オキサリプラチン、イリノテカン、トポテカン、ロイコボリン、カルムスチン、ストレプトゾシン、CPT−11、タキソール、タモキシフェン、ダカルバジン、リツキシマブ、ダウノルビシン、1−β−D−アラビノフラノシルシトシン、イマチニブ、フルダラビン、ドセタキセル及びFOLFOX4が含まれる。
【0161】
[000215]一つの態様において、該方法は、細胞に試験剤を提供すること、及び癌性細胞中で減少した発現に関連する少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルを測定すること、を含む。適した対照のレベル(例えば、対照細胞中の該miR遺伝子産物のレベル)と比較し、該細胞中の該miR遺伝子産物のレベルの増加は、該試験剤が抗癌剤であることを示す。
【0162】
[000216]適した剤には、限定されるわけではないが、薬剤(例えば、低分子、ペプチド)及び生体高分子(例えば、タンパク質、核酸)が含まれる。該剤は、組換え的に、合成的に製造することが可能であり、又は天然源から単離する(即ち、精製する)ことができる。細胞へこうした剤を提供するための多様な方法(例えば、トランスフェクション)は当該技術分野では公知であり、こうした方法のいくつかは上に記載されている。少なくとも一つのmiR遺伝子産物の発現検出するための方法(例えば、ノーザンブロッティング法、インサイツハイブリダイゼーション、RT−PCR、発現プロファイリング)も当該技術分野では公知である。これらの方法のいくつかも本明細書に記載されている。
【0163】
[000217]本発明は多様な及び好ましい態様を参照して記載されてきたが、本発明の本質的範囲から離れることなく、多様な変更を行うことができ、そして均等物をそれらの要素と置換することができることを当業者は理解しなければならない。加えて、本発明の本質的範囲から離れることなく、本発明の特定の状況又は材料を本発明の教示に適応させるために多くの修飾を行うことができる。それ故、本発明は、この発明を実施するために企図された、本発明で開示された特定の態様に限定されるものではなく、本発明は特許請求の範囲内に含まれるすべての態様を含むであろうことが意図される。
【0164】
[000218]本発明を明らかにする又は本発明の実施に関する追加の詳細を提供するために本明細書で使用した出版物及び他の材料は、本明細書に参照として組み入れられ、便宜上、以下の参照文献に提供されている。
【0165】
[000219]参照文献
1. Kopper, L. and J. Timar. 2005. Genomics of lung cancer may change diagnosis, prognosis and therapy. Pathol.Oncol.Res. 11:5-10.
2. Lynch, T. J., D. W. Bell, R. Sordella, S. Gurubhagavatula, R. A. Okimoto, B. W. Brannigan, P. L. Harris, S. M. Haserlat, J. G. Supko, F. G. Haluska, D. N. Louis, D. C. Christiani, J. Settleman, and D. A. Haber. 2004. Activating mutations in the epidermal growth factor receptor underlying responsiveness of non-small-cell lung cancer to gefitinib. N.EngUMed. 350:2129-2139.
3. Shepherd, F. A., P. J. Rodrigues, T. Ciuleanu, E. H. Tan, V. Hirsh, S. Thongprasert, D. Campos, S. Maoleekoonpiroj, M. Smylie, R. Martins, K. M. van, M. Dediu, B. Findlay,D. Tu, D. Johnston, A. Bezjak, G. Clark, P. Santabarbara, and L. Seymour. 2005. Erlotinib in previously treated non-small-cell lung cancer. N.Engl.J.Med. 353:123-132.
4. Sher, Y. P., J. Y. Shih, P. C. Yang, S. R. Roffler, Y. W. Chu, C. W. Wu, C. L. Yu, and K. Peck. 2005. Prognosis of non-small cell lung cancer subjects by detecting circulating cancer cells in the peripheral blood with multiple marker genes. Clin.Cancer Res. 11:173-179.
5. Nana-Sinkam, S. P. and M. W. Geraci. 2006. MicroRNA in lung cancer. Journal of Thoracic Oncology 1:929-931.
6. Johnson, S. M., H. Grosshans, J. Shingara, M. Byrom, R. Jarvis, A. Cheng, E. Labourier, K. L. Reinert, D. Brown, and F. J. Slack. 2005. RAS is regulated by the let-7 microRNA family. Cell 120:635-647.
7. Takamizawa, J., H. Konishi, K. Yanagisawa, S. Tomida, H. Osada, H. Endoh, T. Harano, Y. Yatabe, M. Nagino, Y. Nimura, T. Mitsudomi, and T. Takahashi. 2004. Reduced expression of the let-7 microRNAs in human lung cancers in association with shortened postoperative survival. Cancer Res. 64:3753-3756.
8. Yanaihara, N., N. Caplen, E. Bowman, M. Seike, K. Kumamoto, M. Yi, R. M. Stephens, A. Okamoto, J. Yokota, T. Tanaka, G. A. Calin, C. G. Liu, C. M. Croce, and C. C. Harris. 2006. Unique microRNA molecular profiles in lung cancer diagnosis and prognosis. Cancer Cell 9:189-198.
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照及び連邦政府支援の研究に関する宣言
[0001]本出願は、その開示が本明細書に組み入れられる、2007年11月30日に出願された米国仮出願番号第61/004,863号の優先権を主張する。本発明は政府支援を得ずに行われ、政府は本発明に権利を有しない。
【0002】
[0002]本発明は、末梢血中の少なくとも一つのマイクロRNA(miR)を検出することによる、肺癌の診断、予後及び治療のためのある種の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]肺癌は、米国の男性及び女性において癌死の主な原因であり、<15%の低い5年生存率しか有していない。ここ数年において、疫学統計は、肺癌の大多数が元喫煙者及び非喫煙者で診断されたことを明らかした。
【0004】
[0004]最近、肺癌の症例及び死亡数はわずかに減少しているにもかかわらず、2008年において、215,020の新規症例及び161,840の死亡例が見積もられている。肺癌の早期発見のための確立されたスクリーニング検査はなく、25%未満の対象しか外科的に治療可能な疾患(ステージI及びII)を示していない。加えて、切除可能な早期疾患の5年生存は70〜80%に達するが、疾患の再発率は受け入れ難いほど高いままである。
【0005】
[0005]肺癌は、類似の形態学にも関わらず、異なる増殖率、転移能及び療法への応答を示す、不均質性疾患の群を表すことがますます認識されている。喫煙経験者間での肺癌の高い発生率を考えると、リスク層別化及び早期治療可能疾患の同定が極めて重要である。
【0006】
[0006]臨床的及び病理的には、肺癌は、小細胞肺癌(SCLC)及び非小細胞肺癌(NSCLC)の大きく二つの異なるカテゴリーに分類される。小細胞肺癌(SCLC)は全肺癌の約20%に相当し、速い成長速度及び初期診断での広範囲にわたる疾患により特性付けられる。非小細胞肺癌(NSCLC)(肺癌の80%を占める)は、同様の様式で挙動する及び臨床的に治療される、少なくとも三つの異なる病理学的疾患単位(腺癌、扁平上皮癌及び大細胞癌)の集合である。NSCLCはSCLCよりも遅発性の傾向があり、そして化学療法に対する応答性が悪い。SCLCの主力治療は、化学療法プラスマイナス放射線治療であり、一方、NSCLCの主な治療法は放射線療法及び/又は化学療法の慎重な追加を伴った手術である。
【0007】
[0007]マイクロRNA(MiRNA、miR)は、動物、植物及びウイルスを含む多くの生物において発現される小さな非翻訳RNA(およそ21〜25nt長)のファミリーである。miRNAは、mRNAの分解か又はタンパク質翻訳の抑制のための遺伝子を標的とする。単一のmiRNAが複数の遺伝子を標的とすることができ、一方、単一の遺伝子が複数のmiRNAにより標的とされることもある。ほとんどのmiRNAの機能が依然として不明であるにもかかわらず、いくつかの研究は、それらが遺伝子調節、アポトーシス、造血発生及び細胞分化の維持を含む主要な生物学的機能に不可欠であろうことを示唆している。miRNAの50%以上が、癌において欠失され又は増幅されていることが知られている染色体領域に位置していると推定されている。
【0008】
[0008]肺癌におけるmiRNAの知識が明らかになり始めている。これまでに、研究者は複数のmiR−let−7ファミリー遺伝子が、C.エレガンスにおいて線虫RAS遺伝子(let−60)の3’−非翻訳領域(UTR)を標的にし得ることを同定した。let−7の過剰発現は、RASタンパク質の発現を抑制し、そしてlet−7相補的部位がヒトNRAS及びKRAS3’−UTRで観察されている。RASシグナル伝達は、肺癌においてヒトlet−7ゲノム領域の欠失を開始させるのを助けると考えられている。実際、143の切除された肺癌症例中での減少したlet−7発現は、予後不良と相関していた。
【0009】
[0009]最近、miRNAチップ分析の使用を介して、研究者は104対の原発性肺癌及び対応する非癌性組織における異なるmiRNAプロファイルを示した。加えて、五つの異なるmiRNA(miR−155、17−3p、let−7a−2、145及び21)の発現が変化しており、腺癌を有する対象間での予後を予測した。
【0010】
[00010]ゲノムプラットフォームは、疾患の組織学的サブカテゴリー、新規分子標的、予後診断ツール及び療法への応答を同定することにおいて強力なツールとなってきた。しかしながら、肺癌の研究の再現性における改善はあったが、マイクロアレイ分析を利用した組織学的分類における可変性が残っている。加えて、ゲノム研究は遺伝子発現又は生物学的関連性における検証の欠如に取り組んでいない。分析のいくつかのプラットフォームを組み入れるシステムアプローチが、肺癌における分子不均質をより明確化するために必要とされる。
【0011】
[00011]しかしながら、診断マーカー及び治療標的を正確に同定するためのマイクロアレイ研究については、遺伝子発現のどの変化がタンパク質分析により検証されるのかを決定する必要がある。さらに機能的読取の進歩が、マイクロアレイ分析の生物学的意義を決定するために必要とされる。
【0012】
[00012]正常対照から肺癌対象を識別するために有用である、末梢血のゲノム解析で使用し得る特異的バイオマーカーのシグネチャーセットが本明細書に示される。
【発明の概要】
【0013】
[00013]最初の広範な側面において、対象が肺癌を有するか又は発症するリスクがあるかどうかを診断する方法が提供される。該方法は、該対象からの末梢血試験サンプル中の少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルを測定することを含む。対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較した、該試験サンプル中の該miR遺伝子産物のレベルの変化は、該対象が肺癌を有するか又は発症するリスクがあることを示す。
【0014】
[00014]別の側面において、疾患の診断及び予後についての非侵襲的バイオマーカーとして、末梢血における遺伝子発現パターンを使用する方法が、本明細書において提供される。
【0015】
[00015]別の広範な側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患(lung cancer associated disease)を有する対象の予後を決定する方法が、本明細書において提供される。
[00016]以下の好ましい態様の詳細な説明を、付随する図面を照らし合わせて読むことにより、本発明の多様な目的及び利点が当業者には明らかになるであろう。
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
診断マーカー及び治療標的を正確に同定するためのマイクロアレイ研究については、遺伝子発現のどの変化がタンパク質分析により検証されるのかを決定する必要がある。さらに機能的読取の進歩が、マイクロアレイ分析の生物学的意義を決定するために必要とされる。
【発明が解決するための手段】
【0017】
対象が肺癌を有するか又は発症するリスクがあるかどうかを診断する方法が提供される。該方法は、該対象からの末梢血試験サンプル中の少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルを測定することを含む。対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較した、該試験サンプル中の該miR遺伝子産物のレベルの変化は、該対象が肺癌を有するか又は発症するリスクがあることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】[00017]進行した肺癌を有する対象(腫瘍n=4)及び正常対照(正常N=3)からの全末梢血miRNAを示しているタイル。緑は相対的に高発現を表し、赤は相対的に低発現を表す。
【図2】[00018]正常対象(n=3)及び進行した無処置肺癌を有する対象(n=4)の全末梢血におけるMiR−126発現のRT−PCR(*p<.05)。
【図3A】[00019]ヒト肺癌におけるmiR−155のインサイツハイブリダイゼーション。 [00020] 図3A:未成熟MiR−155は腺癌の核に局在する(矢印)。
【図3B】ヒト肺癌におけるmiR−155のインサイツハイブリダイゼーション。[00021]同一の腺癌サンプルにおいてmiR−155の成熟形の発現が検出されないことは、障害されたプロセシングを示唆する。
【図3C】ヒト肺癌におけるmiR−155のインサイツハイブリダイゼーション。[00022]気管支肺胞細胞癌(BAC)の核にある未成熟miR−155(矢印)。
【図3D】ヒト肺癌におけるmiR−155のインサイツハイブリダイゼーション。[00023]成熟miR−155は細胞質に局在する。
【図4A】[00024]miR−126トランスフェクションは、Crkタンパク質発現を変化させる。 [00025] 図4A:H1703(非小細胞癌)細胞のpremiR−126トランスフェクションは、miR−126mRNA発現を1000〜5000倍増加させ、CrkIIタンパク質を減少させる。
【図4B】miR−126トランスフェクションは、Crkタンパク質発現を変化させる。[00026]Crk mRNAに変化なし(図4B)。ウエスタンブロットを二重に実施し、すべてのRT−PCR結果は、二重に実施された2回の独立した実験からの平均=/−S.E.を示している(*p<.05 スクランブル対pre−miR)。18Sを内部標準として使用した。
【図4C】miR−126トランスフェクションは、Crkタンパク質発現を変化させる。CrkIタンパク質はウエスタンでは検出されなかった。100nMのLNA miR−126アンチセンスオリゴヌクレオチドによるH226細胞のトランスフェクションは、スクランブルpre−miRトランスフェクションと比較してmiR−126発現が10分の1に減少した(図4C)。ウエスタンブロットを二重に実施し、すべてのRT−PCR結果は、二重に実施された2回の独立した実験からの平均=/−S.E.を示している(*p<.05 スクランブル対pre−miR)。18Sを内部標準として使用した。
【図4D】miR−126トランスフェクションは、Crkタンパク質発現を変化させる。デンシトメトリーにより測定されたCrkIIタンパク質発現は増加したが(*p<.05)、mRNAは変化しなかった(図4D)。ウエスタンブロットを二重に実施し、すべてのRT−PCR結果は、二重に実施された2回の独立した実験からの平均=/−S.E.を示している(*p<.05 スクランブル対pre−miR)。18Sを内部標準として使用した。
【図5】[00027] 図5A〜5G:肺のヒト扁平上皮癌における、miR−126についてのインサイツハイブリダイゼーション及びCrkについての免疫組織化学を示している代表的像。1のケースにおいて、Crk発現(赤色)がほとんどの腫瘍細胞内で明らかであり(図5A)、一方、miR−126発現は腫瘍細胞に隣接する切片では観察されないが(図5B)、miR−126は正常気管支上皮で検出された(図5C)(青色シグナル)。第2のケースにおいて、Crkは腫瘍内で検出不能であるが(図5D)、一方、腫瘍内にmiR−126の強い発現(青色)があり(図5E);正常組織において、Crkは内皮(図5F)及び気管支上皮(図5G)に局在している(全ての像は、1000xである図5F及び200xである図5Gを除いて400xである)。
【図6】[00028]末梢血単核細胞(PBMC)中の正常(N=5)レベルと比較した肺癌(N=5)中のmiR−126の相対的発現を示しているグラフ。(p<.05)
【図7】[00029]血清中の正常(N=5)レベルと比較した肺癌(N=5)中のmiR−let7aの相対的発現を示しているグラフ。(p<.05)
【図8】[00030]血清中の正常(N=5)レベルと比較した肺癌(N=5)中のmiR−126の相対的発現を示しているグラフ。(p<.05)
【図9−1】[00031]H1703増殖、接着、遊走及び浸潤に対するmiR−126過剰発現の効果。 [00032] 図9A:[00032]対照、スクランブルpre−miR及びpre−miR126細胞は、96時間にわたって類似の増殖速度を示した。2回の独立した増殖アッセイを三重に実施した。H1703増殖、接着、遊走及び浸潤に対するmiR−126過剰発現の効果。[00033]miR−126過剰発現細胞は、減少した接着(図9B)、遊走(図9C)及び浸潤(図9D)を示した。
【図9−2】図9C:H1703増殖、接着、遊走及び浸潤に対するmiR−126過剰発現の効果。[00033]miR−126過剰発現細胞は、減少した接着(図9B)、遊走(図9C)及び浸潤(図9D)を示した。図9C及び図9Dの像は、盲検ランダム視野(blinded random field)の代表像である(p<.05)。全ての実験において、miR−126過剰発現がRT−PCRにより確認され、適切な誘導は確実である。結果は、三重に実施された四つの視野の平均を示している(*p<.05 スクランブル対pre−miR)。
【図9−3】図9D:H1703増殖、接着、遊走及び浸潤に対するmiR−126過剰発現の効果。[00033]miR−126過剰発現細胞は、減少した接着(図9B)、遊走(図9C)及び浸潤(図9D)を示した。図9C及び図9Dの像は、盲検ランダム視野(blinded random field)の代表像である(p<.05)。全ての実験において、miR−126過剰発現がRT−PCRにより確認され、適切な誘導は確実である。結果は、三重に実施された四つの視野の平均を示している(*p<.05 スクランブル対pre−miR)。
【図10A】[00034]NSCLC組織におけるmiR−126及びCrk発現:ヒト非小細胞肺癌及び非病変部隣接肺(扁平上皮1〜13及び腺癌14〜19)の19対の試験は、非病変部隣接正常(N)肺と比較して腫瘍(T)でのmiR−126 mRNA発現の減少を示した(図10A)。RT−PCRの結果は、二重に実施された2回の独立した実験からの平均=/−S.Eを示している(*p<.05 腫瘍対非病変部肺)。18Sを内部標準として使用した。
【図10B】[00034]NSCLC組織におけるmiR−126及びCrk発現:これら同一サンプル中のCrk mRNA発現は不定であり、19の腫瘍の内の7が非病変部隣接肺よりも高いCrk発現を示した(図10B)。RT−PCRの結果は、二重に実施された2回の独立した実験からの平均=/−S.Eを示している(*p<.05 腫瘍対非病変部肺)。18Sを内部標準として使用した。
【図11−1】[00035]図11(実際の数字は図9下部を示す)−表4は、オリゴプローブ、前駆体配列、成熟mRNA、活性部位上にプローブがあるかどうか、Entrez- Gene ID、基準配列番号、miR塩基ステムループ 寄託番号、miR塩基成熟配列寄託番号、注、オリゴ配列、成熟miRNA配列、及びステムループ配列を示す。
【図11−2】図11−表4の続き。
【図11−3】図11−表4の続き。
【図11−4】図11−表4の続き。
【図11−5】図11−表4の続き。
【図11−6】図11−表4の続き。
【図11−7】図11−表4の続き。
【図11−8】図11−表4の続き。
【図11−9】図11−表4の続き。
【図11−10】図11−表4の続き。
【図11−11】図11−表4の続き。
【図11−12】図11−表4の続き。
【図11−13】図11−表4の続き。
【図11−14】図11−表4の続き。
【図11−15】図11−表4の続き。
【図11−16】図11−表4の続き。
【図11−17】図11−表4の続き。
【図12−1】[00036]表5は血清中に検出されたmiRNAを示す。
【図12−2】図12−表5の続き。
【図12−3】図12−表5の続き。
【図12−4】図12−表5の続き。
【図12−5】図12−表5の続き。
【図12−6】図12−表5の続き。
【図12−7】図12−表5の続き。
【図12−8】図12−表5の続き。
【図12−9】図12−表5の続き。
【図13−1】[00037]表6は末梢血単核細胞(PBMC)中に検出されたmiRNAを示す。
【図13−2】図13−表6の続き。
【図13−3】図13−表6の続き。
【図13−4】図13−表6の続き。
【図13−5】図13−表6の続き。
【図13−6】図13−表6の続き。
【図13−7】図13−表6の続き。
【図13−8】図13−表6の続き。
【図13−9】図13−表6の続き。
【図13−10】図13−表6の続き。
【図13−11】図13−表6の続き。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[00038]本発明は、一部、炎症性応答に関与し、及び/又は血液中で変化した発現レベルを有する特異的マイクロRNA(miRNA)の同定に基づいている。本発明はさらに、一部、これらのmiRNAと特定の診断、予後及び療法的特色との関連に基づいている。
【0020】
[00039]第一の広範な側面において、対象が一つ以上の肺癌随伴疾患を有しているか、又は発症するリスクがあるかどうかを決定する方法が本明細書において提供される。該方法は、一般的に:該対象からの末梢血サンプル中の少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルを測定することを含み、対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較し、該サンプル中の該miR遺伝子産物のレベルの変化は、該対象が一つ以上の肺癌随伴疾患を有しているか、又は発症するリスクがあることを示す。
【0021】
[00040]ある態様において、該末梢血サンプルは、全血、末梢血単核細胞(PBMC)及び血清の一つ以上を含む。
[00041]ある態様において、該一つ以上の肺癌随伴疾患は、気管支肺胞癌(BAC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺腺癌、肺扁平上皮癌及び小細胞癌を含む。
【0022】
[00042]ある態様において、該末梢血サンプルは全血を含み、そして少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、正常対照と比較して増加した発現を有する、本明細書の表1に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である。ある態様において、該miRは、hsa−miR−518f、hsa−miR−516−3p及びhsa−miR−516−5p:の一つ以上である。
【0023】
[00043]ある態様において、該末梢血サンプルは全血を含み、そして少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、正常対照と比較して減少した発現を有する、本明細書の表1に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である。ある態様において、該miRは、hsa−miR−1−2No1、hsa−miR−511−2No2、hsa−miR−101−2No1、hsa−miR−218−2−precNo1、hsa−miR−451No2、hsa−miR−126*No2、hsa−let−7d−vl−prec、hsa−miR−1−lNo1、hsa−miR−123−precNo1、hsa−miR−l00No1、hsa−miR−150−prec、hsa−miR−021−prec−17No1、hsa−miR−34aNo1、hsa−let−7iNo1、hsa−miR−126*No1、hsa−miR−126No2、hsa−miR−181c−precNo2、hsa−miR−126No1の一つ以上である。
【0024】
[00044]別の側面において、該末梢血サンプルは末梢血単核細胞(PBMC)を含み、そして少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、hsa−miR−630:の減少したmiR発現から成る、表2に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である。
【0025】
[00045]別の側面において、該サンプルは末梢血単核細胞を含み、そして少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、hsa−miR−152、hsa−miR−365、hsa−miR−487a、hsa−miR−148a、hsa−miR−636、hsa−miR−320及びhsa−miR−145:の増加したmiR発現から成る、表2に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である。
【0026】
[00046]別の側面において、該末梢血サンプルは血清を含み、そして少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、hsa−miR−192の増加したmiR発現から成る、表3に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である。
【0027】
[00047]別の側面において、該サンプルは血清を含み、そして少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、hsa−miR−532、hsa−miR−197、hsa−miR−342:の減少したmiR発現から成る、表3に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である。
【0028】
[00048]別の側面において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、表4に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である。
[00049]別の側面において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、表5に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である。
【0029】
[00050]別の側面において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、表6に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である。
[00051]別の側面において、該方法は、肺癌を有する対象の予後を決定するために使用され、該対象からのサンプル中の該少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルを測定することを含み、該miR遺伝子産物は肺癌の予後不良と関連しており;そして、対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較して、該サンプル中の該少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルの変化は、予後不良を示す。
【0030】
[00052]別の側面において、末梢血サンプルで一つ以上の肺癌随伴疾患を検出する方法が本明細書に提供され、該方法は、肺癌に関連した少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現についてサンプルを分析すること;及び該少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現と該サンプル中の肺癌の有無を相関させること:を含み、該少なくとも一つのバイオマーカーは、表1、表2又は表3にリストしたmiRから選択される。
【0031】
[00053]別の側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患を有していると疑われる対象を早期診断する方法が本明細書に提供され、該方法は、該対象からサンプルを入手すること;肺癌と関連した少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現についてサンプルを分析すること;該少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現と該対象における肺癌の存在を相関させること:を含み、該少なくとも一つのバイオマーカーは、表1、表2又は表3にリストしたmiRから選択される。
【0032】
[00054]別の側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患を有する対象を治療する方法が本明細書に提供され、表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群から選択される少なくとも一つのバイオマーカーと相補的な核酸を含む、治療的に有効量の組成物を投与することを含む。
【0033】
[00055]別の側面において、表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群から選択される、少なくとも一つのバイオマーカーと相補的な核酸を含む医薬組成物が本明細書に提供される。
【0034】
[00056]別の側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患のため化学放射線治療を受けている患者の末梢血サンプルと、化学放射線治療を受けていない患者のサンプルを比較する方法が本明細書に提供され:表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群から選択される少なくとも一つのバイオマーカーの異なった発現を比較することを含む。
【0035】
[00057]別の側面において、患者の一つ以上の肺癌随伴疾患のステージ分類を比較する方法が本明細書に提供され:該患者から末梢血サンプルを入手すること;及び表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群から選択される少なくとも一つのバイオマーカーの異なった発現を比較することを含む。
【0036】
[00058]別の側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患を抑制するための方法を、それを必要とする対象において行うこと本明細書に提供され:表1、表2又は表3にリストしたmiRの少なくとも一つを投与することを含む。
【0037】
[00059]別の側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患を患っている対象においてそれらの疾患を治療する方法が本明細書に提供され、ここで対照細胞と比較して該対象の癌細胞においては少なくとも一つのmiRが下方調節又は上方調節されており:該癌細胞において該少なくとも一つのmiRが下方調節されている場合、該対象の癌細胞の増殖が抑制されるように、少なくとも一つの単離されたmiRの有効量を該対象に投与すること;又は、該癌細胞において該少なくとも一つのmiRが上方調節されている場合、該対象の癌細胞の増殖が抑制されるように、少なくとも一つのmiRの発現を抑制するための少なくとも一つの化合物の有効量を該対象に投与することを含み;該miRは表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群より選択される。
【0038】
[00060]別の側面において、対象の一つ以上の肺癌随伴疾患を治療する方法が本明細書に提供され:対照サンプルと比較した、該対象から入手した末梢血サンプル中の少なくとも一つのmiRの量を決定すること、ここで該miRは表1、表2又は表3にリストしたmiRから選択され;及び、該対象における肺癌の増殖が抑制されように、(i)もし、該対象において発現された該miRの量が対照細胞中で発現されたmiRの量よりも少なければ、少なくとも一つの単離されたmiRの有効量を該対象に投与することにより;又は(ii)もし、該対象において発現された該miRの量が対照細胞中で発現されたmiRの量よりも多ければ、該少なくとも一つのmiRの発現を抑制するための少なくとも一つの化合物の有効量を該対象に投与することにより;該対象におけるmiR活性の量を変化させることを含む。
【0039】
[00061]別の側面において、抗肺癌随伴疾患剤を同定する方法が本明細書に提供され:癌細胞に試験剤を提供すること、及び該肺癌細胞中での減少した発現レベルと関連した少なくとも一つのmiRのレベルを測定することを含み、適した対照細胞と比較し、該肺癌細胞中の該miRのレベルの増加は、該試験剤が抗癌剤であることを示し;該miRは、表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群より選択される。
【0040】
[00062]別の側面において、対象における病的状態、又は病的状態を発症するリスクを評価する方法が本明細書に提供され:該対象からのサンプル中の一つ以上のマーカーの発現プロファイルを測定することを含み、該対象からのサンプルにおける発現プロファイルと正常サンプルの発現プロファイルとの相違は、一つ以上の肺癌随伴疾患又はそれらへの素因を示し、そして該マーカーは表1、表2又は表3にリストした一つ以上のmiRを少なくとも含む。
【0041】
[00063]別の側面において、表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群から選択される一つ以上のmiRを含む組成物が本明細書に提供される。
[00064]別の側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患を試験するための試薬が本明細書に提供され、該試薬は、表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRのヌクレオチド配列、又は該miRのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を含んでいるポリヌクレオチドを含む。
【0042】
[00065]別の側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患を試験するための試薬が本明細書に提供され、該試薬は、表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRによりコードされたタンパク質を認識する抗体を含む。
[00066]別の側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患を予防する、診断する及び/又は治療するための療法の有効性を評価する方法が本明細書に提供され:その有効性が評価されている療法を患者に供すること;そして表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRを評価することにより、一つ以上の肺癌随伴疾患を治療する又は予防することについて、試験されている治療の有効性のレベルを決定すること;を含む。
【0043】
[00067]ある態様において、該候補治療剤は:医薬組成物、栄養機能組成物及びホメオパシー組成物の一つ以上を含む。
[00068]ある態様において、評価されている療法は、ヒト対象での使用のためである。
【0044】
[00069]別の側面において、製品が本明細書に提供され:表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRから選択される、一つ以上の肺癌随伴疾患のためのマーカーへ結合する少なくとも一つの捕捉試薬を含む。
【0045】
[00070]別の側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患を治療する療法剤の候補化合物をスクリーニングするためのキットが本明細書に提供され、該キットは:表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRの一つ以上の試薬、及び少なくとも一つのmiRを発現している細胞を含む。
【0046】
[00071]ある態様において、該miRの存在は、少なくとも一つのmiRと特異的に結合する抗体又は抗体断片を含む試薬を使用して検出される。
[00072]別の側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患のためのスクリーニング試験が本明細書に提供され:表1、表2又は表3にリストした一つ以上のmiRと、こうしたmiRの基質及び試験剤を接触させること、及び該試験剤が該miRの活性を変調するかどうかを決定すること;を含む。
【0047】
[00073]ある態様において、全ての工程はインビトロで実施される。
[00074]別の側面において、個体における一つ以上の肺癌随伴疾患に関連する合併症を治療する、予防する、逆行させる、又は重度を限定する医薬の製造のための、一つ以上の肺癌関連応答シグナル伝達経路を妨害する剤の使用が本明細書に提供され、該剤は、表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRを含む。
【0048】
[00075]別の側面において、一つ以上の肺癌随伴疾患合併症を治療する、予防する、逆行させる、又は重度を限定する方法を、それらを必要とする個体で行うことが本明細書において提供され:少なくとも一つ以上の肺癌随伴疾患応答カスケードを妨害する剤を該個体に投与することを含み、該剤は、表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRを含む。
【0049】
[00076]別の側面において、個体の一つ以上の肺癌随伴疾患合併症を治療する、予防する、逆行させる、又は重度を限定する医薬の製造のための、少なくとも一つ以上の肺癌随伴疾患応答カスケードを妨害する剤の使用が本明細書に提供され、該剤は、表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRを含む。
【0050】
[00077]実施例
[00078]本発明の例示として働くが、本発明を制限するものではない以下の非制限的実施例を参照することにより、本発明をより良く理解することができる。
【0051】
[00079]従って、本発明は、対象が肺癌を有する、又は発症するリスクがあるかどうかを診断する方法を包含する。一つの側面に従うと、該対象からの試験サンプル中の該少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルが、対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較される。対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較して、該試験サンプル中の該miR遺伝子産物のレベルの変化(例えば、増加、減少)は、該対象が肺癌を有する、又は発症するリスクがあることを示す。ある態様において、該試験サンプルは末梢血を含む。
【0052】
[00080]理論に束縛されるものではないが、miRNA発現プロファイルは末梢血で検出可能であり、対象における肺癌を評価することに有用であると発明者には考えられる。該miRNA発現プロファイルは、後期疾患を有する対象と早期肺癌を有する対象を識別するため、及びさらに肺癌を有しない現/元経験者を識別するために有用であることも本明細書に示される。
【0053】
[00081]また、末梢血中のマイクロRNAは、原発腫瘍生物学を反映すると本発明者により考えられており、肺癌疾患進行/再発の診断、サーベイランス及び療法への応答をモニターすることにおいて有用である。
【0054】
[00082]本発明者は、確認された肺癌を有する対象の末梢血において、はっきりと異なるmiRNA発現プロファイル(即ち、miRシグネチャ又はバイオマーカー)をここに同定した。
【0055】
[00083]特定の側面において、本発明者は、進行した肺癌を有する対象及び肺癌を有さない非喫煙者対象の組の両方の末梢血中のmiRNAの存在を同定した。最初の目的変数なしのクラスター分析は、二つの群を区別するmiRNAの存在を示した。
【0056】
[00084]miRNAプロファイリングは、生物学的に関連する標的を同定するために有用なツールである。末梢血中のmiRNAの役割は依然として不明であるが、末梢血miRNAプロファイリングは、肺癌においてはっきりと異なる分子シグネチャを同定するために、そしてこうしたプロファイルを腫瘍生物学と相関させるために有用であることを本発明者は考えている。これらのシグネチャは、例えば、マイクロアレイ/プロテオミクスプラットフォーム及びCTスキャンのような他のモダリティーを補足するために使用することができ;それ故、肺癌診断及び治療のための個別化されたアプローチを支援している。
【0057】
[00085]本発明者は、末梢血中に同定されたマイクロRNAは、原発腫瘍生物学を反映し、そして疾患検出のための、療法への応答を決定するための、及び肺癌のサーベイランス、及び/又は肺癌のなんらかの再発をモニタリングするためのバイオマーカーとして有用であることもここに考えている。さらに、該miRNAは分子経路のはっきりと異なるネットワークを示すのに有用であり、それは順に、新規治療標的を同定することにおいて有用である。
【0058】
[00086]本明細書の実施例で示したように、元/現及び非喫煙者からの肺腫瘍に存在する、はっきりと異なるmiRNAシグネチャがある。これらのシグネチャは、生物学的標的及び経路を同定するために有用である。
【0059】
[00087]miRNAシグネチャが、肺癌を有する喫煙及び非喫煙個体及びマッチした対照で同定された。腫瘍中のはっきり異なるmiRNA発現パターンの存在は以下の群で評価すべきである:1−現又は元喫煙者である非小細胞肺癌(NSCLC)を有する切除可能な対象;2−非喫煙者である非小細胞肺癌(NSCLC)を有する切除可能な対象;及び3−健常対照。
【0060】
[00088]腫瘍及び末梢血両方におけるはっきり異なるmiRNAシグネチャの存在は、肺癌を有する現/元喫煙及び非喫煙者と対照を区別するのに役立つ。また、末梢血miRNA発現パターンも原発腫瘍シグネチャを反映する。
【0061】
[00089]肺癌特異的miRNA
[00090]癌におけるmiRNAの発現変化の原因は、まだ十分に明らかにされていない。しかしながら、少なくとも一つの五つの主な機構が近年同定されている:1)癌関連ゲノム領域でのmiRNA位置;2)エピジェネティック(epigenetic)調節;3)ダイサー及びドローシャのようなmiRNAプロセシングタンパク質及び遺伝子の破壊;4)miRNA−miRNA相互作用;及び5)癌遺伝子及び癌抑制遺伝子によるmiRNA発現の標的化。
【0062】
[00091]マイクロRNAバイオジェネシス(biogenesis)及び標的化
[00092]miRNAは、タンパク質コード遺伝子のイントロン内又は非コードRNAのイントロン又はエクソン内のような、いくつかのゲノム位置に位置することができる。核内において、miRNAは、RNAポリメラーゼIIにより、数百〜数千のヌクレオチド長範囲の長い一次転写産物、一次miRNA(pri−miRNA)に転写される。
【0063】
[00093]核にある間、ドローシャはpri−miRNAの両鎖を切断して、miRNA前駆体(pre−miRNA)と称される70〜100ヌクレオチドステムループを放出する。pre−miRNAは引き続いてエクスポーチン5/RanGTPにより核から細胞質へ輸送される。細胞質へ輸送されるとすぐに、dsRBDと共同して、第二のRNaseIII(ダイサーと称される)がpre−miRNAを切断し、およそ22ヌクレオチドのRNA二重鎖(成熟miRNA及びその相補的miRNA*)を放出する。
【0064】
[00094]miRNA含有リボ核タンパク質粒子(miRNP)のタンパク質複合体に進入するため、miRNA/miRNA*二重鎖の一つの鎖のみが放出され、他の鎖は分解される。miRNPがmiRNAを標的RNAに導き、翻訳抑制か又はmRNA分解によりタンパク質発現を調節する。miRNAはタンパク質コード転写体の3’−非翻訳領域中の標的部位に結合する。翻訳の抑制及びmRNA分解は、miRNAの5’末端の「種(seed)」領域と標的部位間の塩基対形成に依存する。ほとんどのmiRNAは複数の標的を有し、それ故、数百〜数千の遺伝子を調節する能力を有する。
【0065】
[00095]本発明者は、進行したNSCLCを有する4人の対象及び3人の正常対照のコホートにおいて、全末梢血miRNA発現を試験した。確認された進行(ステージ3B、IV)非小細胞肺癌を有する4人の対象及び3人の健常対照対象からの全末梢血を試験した。これらの個体のmiRNAチップ分析は、正常と比較して肺癌対象の末梢血で上方か又は下方調節されている93のmiRNAの存在を示した(データは示されていない)。2倍変化のカットオフを使用して、有意なmiRNAを示した。
【0066】
[00096]本発明者は、進行した肺癌を有する対象及び既知の肺癌を有しない非喫煙者の組の両方の末梢血においてmiRNAの存在を同定した。
[00097]加えて、最初の目的変数なしのクラスター分析は、疾患の極端における個体の二つの群(進行した肺癌を有する喫煙者及び疾患のない非喫煙者)間を識別するmiRNAの存在を示した。しかしながら、これらの結果は、喫煙歴又は合併している疾患に起因しうる変化を考慮に入れていないことに注意すべきである。
【0067】
[00098]ヒト肺癌組織中の局在化しているmiRNA及び特異的標的は、インビトロモデルに基づいた関連細胞タイプを開発する、及び鍵となる生物学的経路を決定するための重要なステップである。
【0068】
[00099]本発明者は、肺腫瘍中の局在化miRNAについての方法としてインサイツハイブリダイゼーションを示した。本発明者は、成熟miR−155は腺癌には存在していないが、気管支肺胞癌(BAC)に存在していることを観察した。この発見は、両方のmiRNA調節に相違が存在していてもよいことを示唆し、肺癌のこれらサブタイプにおいて生物学的関連を有していると考えられる。
【0069】
[000100]方法
[000101]明確にするために、肺腺癌に関連した喫煙は、>年間20箱喫煙歴の対象に制限した。現又は元喫煙者であった。<100の生涯タバコ歴の対象のみが「非喫煙者」に含まれた。BACを有するほとんどの対象が非喫煙者であろうと考えられるが、患者群をこの臨床的特徴により限定しなかった。頻度マッチングは、三つの群、即ち、年齢について補充して実施した。
【0070】
[000102]全国データと一致して、およそ13%の対象が喫煙未経験と報告したことが見出された。また全国データと一致して、肺癌の対象のおよそ40〜45%が腺癌を有していた。BACに関しては、かなりの数の対象がBAC特色を有していたが、腫瘍登録は、2000〜2006年に76の対象が粘液性又は非粘液性BACと診断されたことを報告している。
【0071】
[000103]サンプルは液体窒素中で急速冷凍し、−80℃で保存した。肺癌の病歴又は肺癌の現診断(過去の胸部X線)のない現及び元喫煙者は、健康な非喫煙者の群を評価することに加えて研究した。該対象は年齢、性別及び内科的合併疾患についてほぼマッチしていた。
【0072】
[000104]サンプルサイズ及び検出力計算(power calculation)
[000105]切除可能/切除不可能な現/元喫煙者群と、対照及び非喫煙者群を、全末梢血マイクロRNA発現レベルの相違について比較した。仮説試験は、以前に興味を引いたマイクロRNA(予備的データで観察された93マイクロRNA及びYanaihara et al., 2006にリストされた43マイクロRNA)対探査全ヒトマイクロRNAに分離した。
【0073】
[000106]125の以前に興味を引いたマイクロRNAについては、Lehman and Romano (2005)の一般化ファミリーワイズエラー率(generalized familywise error rate)(GFWER)アプローチを使用して四つの偽陽性を回避した。80(20の対照、40の切除可能な現/元喫煙者及び20の切除可能な非喫煙者)のサンプルサイズは、予備的データで観察された中央値標準偏差を与える>80%の検出力で、発現の2倍の相違を検出することを可能にする。
【0074】
[000107]全ゲノムの探査については、およそ180のマイクロRNAがチップ上で試験可能であった。0.05のGFWERを使用し、10の偽陽性が認められた。三つの群について80のサンプルを用い、80%検出力で1.9の倍数変化を検出した。バックグラウンド補正、フィルタリング及び規格化法を、技術的な偏りを回避するために実施した。T検定を、差次的に発現されたマイクロRNAを検出するために実施した。差次的に発現についての可変性及び統計検定の推定を改善するため、縮小分散推定法を用いた。p値は、ノンパラメトリック法(Westfall and Young, 1993)によって評価した。
【0075】
[000108]血液処理
[000109]血液サンプルは、対象が外科的切除を行ったかどうかにかかわらず入手した(即ち、手術、放射線療法、化学療法又は非処置が予定されている対象が、血液サンプルを得るのに適格である)。全血液サンプル(5cc)を二つの別々のPAX-GENE(市販)チューブに採取した。サンプルは次ぎに、全血RNAのための改良トリゾール抽出プロトコールで処理した。
【0076】
[000110]血清及びPBMC中での分析のため、miRNA解析のための第二の方法を用いた。第二の方法の場合、18ccの末梢血からの血清分画より、十分なRNA(5〜10μg)を得ることが可能であった。末梢血はEDTA−チューブに採取した。血液を滅菌PBSで1:2に希釈し、次ぎにFicoll-Histopaque(d=1.077)上に層積し、遠心分離した。得られた血漿は、トリゾールを使用して直接的にRNA分離に供した。リンパ球及び単核球を含有する単核細胞層はRNA単離に先だって、滅菌PBSで1回洗浄した。好中球は、デキストラン硫酸沈降により赤血球ペレットから分離した。RBCはRNA抽出に先だって、低張溶解に供されるであろう。
【0077】
[000111]マイクロRNA分析
[000112]全血miRNA発現は、OSU−CCCマイクロアレイ施設を介してのmiRNAチップにより、及び既知のmiRNAについてはRT−PCRにより分析した。RNAは、全血、PBMC、血清及び肺組織から分離し、処理した。該マイクロアレイ設備は、578のmiRNA前駆体配列(329ヒト、249マウス及び3シロイヌナズナ)に対するプローブを含有するマイクロRNACHIP v3を利用している。5μgの全RNAは、第一鎖cDNAの発生、続いての各OSU−CCC miRNAチップへのアレイハイブリダイゼーションにより調製した。完了したら、miRNA標的を、Sanger miRBase 7.0(Target scan. Pictar)を利用して同定した。
【0078】
[000113]図1は、miRNAシグネチャが肺癌を有する個体及びマッチした対照で同定されたことを示すmiRNAバイオジェネシスを図示している。該miRNAは、確認された肺癌を有する個体の末梢血で検出可能である。
【0079】
[000114]末梢血miRNAプロファイル
[000115]末梢血miRNAプロファイルは、療法に先立って確認された肺癌を有する個体と肺癌を有しない個体間を識別するために有用である。
【0080】
[000116]全末梢血miRNAを、SAM(マイクロアレイの有意性分析)ソフトウェアーを使用して分析し、二つのクラス(肺癌を有する対象(腫瘍)対確認された肺癌又は肺疾患がない対象(正常)の末梢血)において統計的に有意なmiRNAを同定した。
【0081】
[000117]実施例1
[000118]末梢全血マイクロRNA発現は、以前に報告されている特異的マイクロRNAについての原発性腫瘍発現と相関する。
【0082】
[000119]肺腫瘍及び進行した肺癌を有する対象からの末梢血サンプルの両方で下方調節されているmiRNAが同定された。miRNAが対象の群の末梢血中で変化したことを示している表1を参照されたい。
【0083】
[000120]表1は、全血中の、正常レベルと比較して肺癌で増加した及び減少したmiRNAを示している。スコア(d)、変化倍数及びq値(%)が示されている。
[000121]
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
[000122]実施例2
[000123]加えて、RT−PCRにより特異的miRNA(miR−126)の全末梢血発現パターンを確認し(図2参照)、そして非小細胞肺癌(NSCLC)(n=4)の場合、正常対照(n=3)と比較した。
【0088】
[000124]実施例3
[000125]インサイツハイブリダイゼーションは、哺乳類組織中のmiRNA位置を同定するために有用である。
【0089】
[000126]肺組織のMiRNA発現プロファイルは、肺癌と正常肺組織を識別する。インサイツハイブリダイゼーション研究は、ヒト肺癌組織サンプル中の潜在的miRNAを位置付けるために使用した。一つの非制限的実施例において、miR−155はいくつかの固形及び血液悪性腫瘍での発現が増加している。肺癌において、増加したmiR−155発現は悪い生存率と相関する。
【0090】
[000127]しかしながら、肺癌におけるmiR−155発現の位置及び調節はまだ分かっていない。本明細書で示したように、miR−155未成熟形が腺癌中の癌性細胞の核において同定されたが、成熟形は容易には同定されていない(図3A、3B参照)。
【0091】
[000128]理論に束縛されるわけではないが、このことは、NSCLCにおける調節の潜在的機構としての、miR−155のプロセシング障害を示していると考えられる。気管支肺胞細胞癌においては、miR−155の未熟及び成熟形の両方が高レベルで存在していた(図3C、3D参照)。この発見は、肺癌のサブタイプにおけるマイクロRNA発現に存在する不均質性の例を表している。
【0092】
[000129]図4A〜4Dは、MiR−126トランスフェクションがCrkタンパク質発現を変化させることを示す。Crkは肺癌を含むいくつかの悪性腫瘍で関係付けられているアダプタータンパク質、そしてmiR−126の予測される標的である。図4Aは、H1703細胞のpremiR−126トランスフェクションが、miR−126mRNA発現を1000〜5000倍増加させ、CrkIIタンパク質を減少させることを示している。
【0093】
[000130]図4B〜4Dは、Crk mRNAに変化がないことを示している(図4B)。CrkIタンパク質はウエスタンでは検出されなかった。100nMのLNA miR−126アンチセンスオリゴヌクレオチドによるH226細胞(扁平上皮)のトランスフェクションは、スクランブルpre−miRトランスフェクションと比較してmiR−126発現が10分の1に減少し(図4C)、デンシトメトリーにより測定されたCrkIIタンパク質発現は増加したが(*p<.05)、mRNAは変化しなかった(図4D)。ウエスタンブロットを二重に実施し、すべてのRT−PCR結果は、二重に実施された2回の独立した実験からの平均=/−S.E.を示している(*p<.05 スクランブル対pre−miR)。18Sを内部標準として使用した。
【0094】
[000131]実施例4
[000132]標的MiRNAサイレンシングは、細胞表現型に生じた変化を試験するために有用である。
【0095】
[000133]図5A〜5Gは、肺のヒト扁平上皮癌における、miR−126についてのインサイツハイブリダイゼーション及びCrkについての免疫組織化学を示している代表的像を示している。1のケースにおいて、Crk発現(赤色)がほとんどの腫瘍細胞内で明らかであり(図5A)、一方、miR−126発現は腫瘍細胞に隣接する切片では観察されないが(図5B)、miR−126は正常気管支上皮で検出された(図5C)(青色シグナル)。第2のケースにおいて、Crkは腫瘍内で検出不能であるが(図5D)、一方、腫瘍内にmiR−126の強い発現(青色)があり(図5E);正常組織において、Crkは内皮(図5F)及び気管支上皮(図5G)に局在している(全ての像は、1000xである図5F及び200xである図5Gを除いて400xである)。
【0096】
[000134]miR−126は、キナーゼシグナル伝達及びインビトロでの足場非依存性増殖を活性化することが示されているシグナル伝達アダプタータンパク質、CRKを含む複数の予測標的を有する。
【0097】
[000135]実施例5
[000136]肺癌の早期発見のためのスクリーニング試験
[000137]本発明まで、肺癌の早期発見のための確立されたスクリーニング試験はなく、対象の25%未満しか外科的に治療可能疾患(ステージI及びII)を有していない。加えて、疾患再発は受け入れ難いほど高い。最近の疫学統計は、肺癌の大多数が現在、元及び非喫煙者で診断されていることを明らかにした。タバコを吸ったことがない対象において気管支肺胞癌(BAC)又は非BAC腺癌の発症を導く、はっきり異なった遺伝的及びエピジェネティック事象についてはほとんど知られていない。
【0098】
[000138]肺癌特異的miRNA
[000139]組織/細胞及び疾患モデルのmiRNA機能を決定する戦略には:a)インビトロ標的化過剰発現の効果を決定すること、及び疾患表現型に対する選択された肺癌特異的マイクロRNAのサイレンシング、及びb)選択された肺癌特異的マイクロRNAの調節及びプロセシングを同定することが含まれる。
【0099】
[000140]実施例6
[000141]表2は、末梢血単核細胞(PBMC)での正常レベルと比較して、肺癌で増加した及び減少したmiRNAを示している。表2は、Cl、C2、C3、C5、Nl、N2、N3、N4及びN5の癌(C)及び正常(N)について、末梢血単核細胞(PBMC)で観察されたmiRNAに関して、デルタCT(内部標準18sマイナスサンプル)として表されたデータを示している。
【0100】
[000142]
【0101】
【表4】
【0102】
[000143]実施例7
[000144]表3は、血清での正常レベルと比較して、肺癌で増加した及び減少したmiRNAを示している。これらはデルタCT(内部標準18Sマイナスサンプル)として表されている。表3は、Cl、C2、C3、C5、Nl、N2、N3、N4及びN5の癌(C)及び正常(N)について、血清で観察されたmiRNAに関するデータを示している。
【0103】
[000145]
【0104】
【表5】
【0105】
[000146]実施例8
[000147]図6は、末梢血単核細胞(PBMC)中の正常レベルと比較した肺癌中のmiR−126の相対的発現を示しているグラフである。.
[000148]また、血清中の正常レベルと比較した肺癌中のmiR−let7aの相対的発現を示しているグラフを含む、図7を参照されたい。図8は、血清中の正常レベルと比較した肺癌中のmiR−126の相対的発現を示しているグラフを含む。
【0106】
[000149]実施例9
[000150]図9A〜9D:H1703増殖、接着、遊走及び浸潤に対するmiR−126過剰発現の効果。
【0107】
[000151]図9A:対照、スクランブルpre−miR及びpre−miR126細胞は、96時間にわたって類似の増殖速度を示した。2回の独立した増殖アッセイを三重に実施した。
【0108】
[000152]図92B〜92D:miR−126過剰発現細胞は、減少した接着(図9B)、遊走(図9C)及び浸潤(図9D)を示した。図9C及び図9Dの像は、盲検ランダム視野の代表像である(p<.05)。全ての実験において、miR−126過剰発現がRT−PCRにより確認され、適切な誘導は確実である。結果は、三重に実施された四つの視野の平均を示している(*p<.05 スクランブル対pre−miR)。
【0109】
[000153]実施例10
[000154]図10A〜10B:NSCLC組織におけるmiR−126及びCrk発現:ヒト非小細胞肺癌及び非病変部隣接肺(扁平上皮1〜13及び腺癌14〜19)の19対の試験は、非病変部隣接正常(N)肺と比較して腫瘍(T)でのmiR−126 mRNA発現の減少を示した(図10A)。これら同一サンプル中のCrk mRNA発現は不定であり、19の腫瘍の内の7が非病変部隣接肺よりも高いCrk発現を示した(図10B)。RT−PCRの結果は、二重に実施された2回の独立した実験からの平均=/−S.Eを示している(*p<.05 腫瘍対非病変部肺)。18Sを内部標準として使用した。
【0110】
[000155]選択された未成熟及び成熟miRNAの局在化についてのインサイツハイブリダイゼーション
[000156]腫瘍形成に結び付けられるmiRNAは、肺癌細胞タイプに依存して、調節及び生物学的関連性が異なっているとここで考えられる。現/元喫煙者及び非喫煙者からの肺腫瘍におけるmiRNA発現のはっきりと異なったシグネチャがあることがここで考えられる。さらに、肺腫瘍発生に関連するmiRNAの群を同定した。
【0111】
[000157]実施例11
[000158]リアルタイムPCRを使用するmiRNA解析
[000159]500の成熟ヒトmiRNAの発現をリアルタイムPCRによりプロファイル作製することができ、肺癌を有する患者及び正常対照からの血液中で異なって発現されたmiRNAを発見した。以前に公表された逆転写条件を使用し、500の既知ヒト成熟miRNAのためのループ化プライマーの混合物(Mega Plex kit,Applied Biosystems)でのプライミングにより、RNA(50ng)をcDNAに変換し得る。内部標準snoRNA U38B及びU43ならびに18S及び7S rRNAに対するプライマーをプライマー混合物に含ませることができる。発現は、384ウェル反応プレートを備えたApplied Biosystems 7900HTリアルタイムPCR装置を使用してプロファイル作製し得る。
【0112】
[000160]液体取り扱いロボット及びZymak Twister robotを、スループットを増加させる、及びエラーを減少させるために使用し得る。リアルタイムPCRは標準条件を使用して実施し得る。最適内部標準は、GOLDクラスの平均2−CTを比較することにより決定し得る。この内部標準は、相対的遺伝子発現を計算するために使用し得る。各miRNAの相対的発現は、式2−ΔCT(式中、ΔCT=CTmiRNA−CT内部標準)から計算し得る。
【0113】
[000161]PCRに基づいた相対的miRNA発現は、次ぎにt検定を使用して分析し得る。−ΔCTデータは、階層的クラスター分析の方法を使用して分析することができ、ヒートマップにプロットした。ANOVAのような追加の統計分析を実施することができ、肺癌及び正常レベル間で異なって発現されているmiRNAが決定される。
【0114】
[000162]図11−表4は、オリゴプローブ、前駆体配列、成熟mRNA、活性部位上にプローブがあるかどうか、Entrez- Gene ID、基準配列番号、miR塩基ステムループ 寄託番号、miR塩基成熟配列寄託番号、注、オリゴ配列、成熟miRNA配列、及びステムループ配列のリストを示す。
【0115】
[000163]実施例12
[000164]図12−表5は、血清中に検出されたmiRNAを示す。
[000165]実施例13
[000166]図13−表6は、末梢血単核細胞(PBMC)中に検出されたmiRNAを示す。
【0116】
[000167]定義及び使用例
[000168]本明細書において相互交換的に使用される、「miR遺伝子産物」、「マイクロRNA」、「miR」又は「miRNA」とは、プロセッシングされていない又はプロセッシングされたmiR遺伝子からのRNA転写体を指す。miR遺伝子産物はタンパク質に翻訳されないので、用語「miR遺伝子産物」はタンパク質を含んでいない。プロセッシングされていないmiR遺伝子転写体は「miR前駆体」とも称され、そして典型的には約70〜100ヌクレオチド長のRNA転写体を含む。miR前駆体は、RNAse(例えば、ダイサー、アルゴノート又はRNAse III(例えば、大腸菌RNAse III))での消化により、活性19〜25ヌクレオチドRNA分子にプロセッシングし得る。この活性19〜25ヌクレオチドRNA分子は、「プロセッシングされた」miR遺伝子転写体又は「成熟」miRNAとも称される。
【0117】
[000169]活性19〜25ヌクレオチドRNA分子は、天然のプロセッシング経路(例えば、無傷の細胞又は細胞溶解物を使用して)を介して、又は合成プロセッシング経路(例えば、ダイサー、アルゴノート又はRNAase IIIのような単離されたプロセッシング酵素を使用して)によりmiR前駆体から得ることが可能である。活性19〜25ヌクレオチドRNA分子は、miR前駆体からプロセッシングされることなく、生物学的に又は化学合成により直接的に生成し得ることも理解されている。マイクロRNAが名称で本明細書において参照される場合、特に示されない限り、該名称は前駆体及び成熟形の両方に対応する。
【0118】
[000170]本方法は、対象からのサンプル中の該少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルを決定すること、及び対照に対する該サンプル中の該少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルを比較することを含む。本明細書において使用される「対象」は、こうした障害を有する、又は有していると疑われるいずれの哺乳類でもあり得る。好ましい態様において、該対象はこうした障害を有している、又は有していると疑われるヒトである。
【0119】
[000171]少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルは、対象から得られた生物学的サンプルの細胞中で測定し得る。
[000172]別の態様において、サンプルを対象から取り出すことが可能であり、そしてDNAを標準技術により抽出し及び単離し得る。例えば、ある態様において、該サンプルは、放射線療法、化学療法及びホルモン療法又は他の療法的治療に先立って対象から得ることができる。対応する対照サンプル又は対照基準サンプル(例えば、対照サンプルの集団から得られる)は、対象の罹患していないサンプルから、正常ヒト個体又は正常個体の集団から、又は患者のサンプル中の大多数の細胞に対応している培養細胞から得ることが可能である。対照サンプルは、対象のサンプルからの細胞中の所与のmiR遺伝子から産生されるmiR遺伝子産物のレベルを、対照サンプルの細胞からの対応するmiR遺伝子産物レベルと比較できるように、対象からのサンプルと同様に処理し得る。もしくは、基準サンプルは、試験サンプルとは別に(例えば、異なった時に)得ること及び処理することができ、試験サンプルからの細胞中の所与のmiR遺伝子から産生されるmiR遺伝子産物のレベルを、基準サンプルからの対応するmiR遺伝子産物レベルと比較し得る。
【0120】
[000173]一つの態様において、試験サンプル中の少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルは、対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルよりも高い(即ち、miR遺伝子産物の発現が「上方調節」されている)。本明細書で使用するmiR遺伝子産物の発現が「上方調節」されているとは、対象からの細胞又は組織サンプル中のmiR遺伝子産物の量が、対照(例えば、標準サンプル、対照細胞サンプル、対照組織サンプル)中の同一遺伝子産物の量よりも多い場合である。
【0121】
[000174]別の態様において、試験サンプル中の少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルは、対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルよりも低い(即ち、miR遺伝子産物の発現が「下方調節」されている)。本明細書で使用するmiR遺伝子産物の発現が「下方調節」されているとは、対象からのサンプル中遺伝子から産生されるmiR遺伝子産物の量が、対照サンプル中の同一遺伝子から産生される量よりも少ない場合である。対照及び正常サンプル中の相対的miR遺伝子発現は、一つ以上のRNA発現標品に対して決定し得る。該標品は、例えば、ゼロmiR遺伝子発現レベル、標準細胞株中でのmiR遺伝子発現レベル、患者の影響を受けていないサンプル中のmiR遺伝子発現レベル、又は正常ヒト対照の集団(例えば、対照基準標品)について以前に得られているmiR遺伝子発現の平均レベルを含むことが可能である。
【0122】
[000175]該少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルは、当業者には公知である多様な技術(例えば、定量的又は半定量的RT−PCR、ノーザンブロット分析、溶液ハイブリダイゼーション検出)を使用して測定し得る。特定の態様において、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルは、対象から得られた試験サンプルからのRNAを逆転写して標的オリゴデオキシヌクレオチドを提供し、標的オリゴデオキシヌクレオチドを一つ以上のmiRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせ(例えば、miRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイ)、試験サンプルについてのハイブリダイゼーションプロファイルを提供し、そして試験サンプルハイブリダイゼーションプロファイルを対照サンプルから発生させたハイブリダイゼーションプロファイルと比較することにより測定する。対照サンプルと比較し、試験サンプルにおける少なくとも一つのmiRNAのシグナルの変化は、該対象が特定の障害を有している、又は特定の障害になるリスクにあることを示す。
【0123】
[000176]マイクロアレイは既知のmiRNA配列から発生させた遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブからも調製し得る。該アレイは各miRNAについて二つの異なったオリゴヌクレオチドプローブを含むことができ、一つは活性成熟配列を含んでおり、そして他はmiRNAの前駆体に対して特異的である。該アレイは、ハイブリダイゼーションストリンジェンシー条件のための対照として働き得る、ヒトオルソログとわずか数塩基が異なっている一つ以上のマウス配列のような対照も含むことができる。両方の種からのtRNA及び他のtRNA(例えば、rRNA、mRNA)もマイクロチップ上にプリントすることができ、特異的ハイブリダイゼーションのための内部の、比較的に安定な陽性対照を提供している。非特異的ハイブリダイゼーションのための一つ以上の適切な対照も該マイクロチップ上に含ませることができる。この目的のためには、いずれの既知のmiRNAとも、いずれの相同性も存在しないことに基づいて配列が選択される。
【0124】
[000177]該マイクロアレイは当該技術分野で公知の技術を使用して製作することができる。例えば、適切な長さの(例えば、40ヌクレオチド)のプローブオリゴヌクレオチドが、C6位で5’−アミン修飾され、商業的に入手可能なマイクロアレイシステム、例えば、GeneMachine OmniGrid(商標)100 Microarrayer 及びAmersham CodeLink(商標)活性化スライド、を使用してプリントされる。標的RNAに対応する標識cDNAオリゴマーは、標識プライマーで標的RNAを逆転写することにより調製される。第一鎖合成に続いて、RNA/DNAハイブリッドを変性させてRNA鋳型を分解する。このようにして調製された標識標的cDNAを、ハイブリダイズ条件下(例えば、25℃で18時間の6X SSPE/30%ホルムアミド、続いて37℃で40分の0.75X TNT(トリス HCl/NaCl/Tween 20)中での洗浄)、マイクロアレイチップにハイブリダイズさせる。固定化されたプローブDNAがサンプル中の相補的標的cDNAを認識するアレイ上の位置でハイブリダイゼーションが起こる。標識標的cDNAは、結合が起こったアレイ上の正確な位置に印を付け、自動的な検出及び定量化を可能にする。出力はハイブリダイゼーション事象のリストから成っており、特異的cDNA配列の相対的存在量、そしてそれ故、患者サンプル中の対応する相補的miRの相対量を示している。一つの態様に従うと、標識cDNAオリゴマーは、ビオチン標識プライマーから調製されたビオチン標識cDNAである。該マイクロアレイは次ぎに、例えば、ストレプトアビジン−Alexa647 コンジュゲートを使用するビオチン含有転写体の直接検出により処理され、慣用的スキャニング法を利用してスキャンする。アレイ上の各スポットのイメージ強度は、患者サンプル中の対応するmiRの存在量に比例している。
【0125】
[000178]該アレイの使用は、miRNA発現検出にいくつかの利点を有する。第一に、数百の遺伝子の全体的発現が、同一サンプル中で一つの時点で同定し得る。第二に、オリゴヌクレオチドプローブの注意深い設計を介して、成熟及び前駆体分子の両方の発現を同定し得る。第三に、ノーザンブロット分析と比較し、該チップは少量のRNAしか必要とせず、及び2.5μgの総RNAを使用して再現性のある結果を提供する。比較的限られた数のmiRNA(種当たり数百)は、それぞれに特有のオリゴヌクレオチドプローブを有するいくつかの種のための共通マイクロアレイの構築を可能にする。こうしたツールは、多様な条件下、各々の既知miRについての種を越えた発現の分析を可能にするであろう。
【0126】
[000179]特異的miRの定量的発現レベルアッセイのための使用に加えて、miRNome、好ましくは全miRNomeのかなりの部分に対応するmiRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含有するマイクロチップは、miR発現パターンの分析のためのmiR遺伝子発現プロファイリングを実施するために用いることができる。固有のmiRシグニチァーは、確立された疾患マーカーと、又は直接的に疾患状態と関連させることができる。
【0127】
[000180]本明細書に記載した発現プロファイリング法に従うと、特定の障害を有していると疑われる対象からのサンプルの総RNAが定量的に逆転写されて、サンプル中のRNAに相補的な標識標的オリゴデオキシヌクレオチドの組を提供する。標的オリゴデオキシヌクレオチドは次ぎに、miRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイへハイブリダイズされて、サンプルについてのハイブリダイゼーションプロファイルを提供する。結果は、サンプル中のmiRNAの発現パターンを示している、サンプルについてのハイブリダイゼーションプロファイルである。該ハイブリダイゼーションプロファイルは、マイクロアレイ中のmiRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドに対する、サンプルに由来する標的オリゴデオキシヌクレオチドへの結合からのシグナルを含む。該プロファイルは、結合の存在又は不存在(シグナル対ゼロシグナル)として記録することができる。より好ましくは、記録された該プロファイルは、各ハイブリダイゼーションからのシグナルの強度を含む。該プロファイは、正常対照サンプル又は基準サンプルから発生されたハイブリダイゼーションプロファイルと比較される。シグナルの変化は、対象中の特定の障害の存在、又は該障害を発症する傾向を示す。
【0128】
[000181]miR遺伝子発現を測定するための他の技術も当業者の範囲内であり、RNA転写及び分解の速度を測定するための多様な技術が含まれる。
[000182]本発明は、対象が予後不良の特定の障害を有するか、又は発症するリスクがあるかどうかを診断する方法も提供する。この方法において、特定の障害の予後不良に関連している少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルは、該対象から得られた試験サンプルからのRNAを逆転写し、標的オリゴデオキシヌクレオチドの組を提供することにより測定される。標的オリゴデオキシヌクレオチドは次に、一つ以上のmiRNA特異的プローブオリゴヌクレオチド(例えば、miRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイ)とハイブリダイズさせ、試験サンプルについてのハイブリダイゼーションプロファイルを提供し、そして該試験サンプルハイブリダイゼーションプロファイルを、対照サンプルから発生させたハイブリダイゼーションプロファイルと比較する。対照サンプルと比較して、試験サンプル中の少なくとも一つのmiRNAシグナルの変化は、該対象が予後不良の特定の障害を有するか、又は発症するリスクがあることを示す。
【0129】
[000183]いくつかの例において、サンプル中の複数の異なったmiR遺伝子産物の発現レベルを同時に決定することが望ましいであろう。他の例においては、特定の障害に相関するすべての既知のmiR遺伝子の転写体の発現レベルを決定することが望ましいであろう。数百のmiR遺伝子又は遺伝子産物についての特異的発現レベルを評価することは多大な時間を必要とし、そして大量の総RNA(例えば、各ノーザンブロットについて少なくとも20μg)及び放射性同位元素を必要とするオートラジオグラフィー技術を要求する。
【0130】
[000184]これらの制限を克服するため、miR遺伝子の組に特異的であるオリゴヌクレオチド(例えば、オリゴデオキシヌクレオチド)プローブの組を含有するように、マイクロチップフォーマット(即ち、マイクロアレイ)でオリゴライブラリーを構築することができる。こうしたマイクロアレイを使用し、RNAを逆転写して標的オリゴデオキシヌクレオチドの組を発生させ、及びそれらをマイクロアレイ上のプローブオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせ、ハイブリダイゼーション又は発現プロファイルを発生させることにより、生物学的サンプル中の複数のマイクロRNA発現レベルを決定し得る。試験サンプルのハイブリダイゼーションプロファイルは次ぎに対照サンプルのものと比較することが可能であり、どのマイクロRNAが変化した発現レベルを有しているのかを決定する。本明細書で使用する「プローブオリゴヌクレオチド」又は「プローブオリゴデオキシヌクレオチド」は、標的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることが可能であるオリゴヌクレオチドを指す。「標的オリゴヌクレオチド」又は「標的オリゴデオキシヌクレオチド」は、検出されるべき分子を指す(例えば、ハイブリダイゼーションを介して)。「miR特異的プローブオリゴヌクレオチド」又は「miRに対して特異的なプローブオリゴヌクレオチド」は、特異的miR遺伝子産物又は特異的miR遺伝子産物の逆転写体にハイブリダイズするように選択された配列を有するプローブオリゴヌクレオチドを意味する。
【0131】
[000185]特定のサンプルの「発現プロファイル」又は「ハイブリダイゼーションプロファイル」は、本質的にはサンプルの状態のフィンガープリントである;二つの状態は同様に発現されるいずれの特定の遺伝子も有することができる一方、多数の遺伝子の同時評価は、細胞の状態に独特である遺伝子発現プロファイルの発生を可能にする。即ち、正常サンプルは、対応する障害提示サンプルから区別することができる。こうした障害提示サンプル内の、異なった予後状態(例えば、良好な又は不良な長期生存見通し)を決定することができる。異なった状態にある障害提示サンプルの発現プロファイルを比較することにより、これらの状態の各々においてどの遺伝子が重要であるかに関する情報(遺伝子の上方及び下方調節を含んで)が得られる。
【0132】
[000186]障害提示サンプルにおいて異なって発現された配列、ならびに異なった予後結果を生じる異なった発現の同定は、この情報のさまざまな形での使用を可能にする。例えば、特定の治療計画を評価することができる(例えば、特定の対象における長期予後を改善するために化学療法薬剤が作用するかどうかを決定するための)。同様に、既知の発現プロファイルを有する対象からのサンプルを比較することにより、診断を行う又は確認することができる。さらに、これらの遺伝子発現プロファイル(又は個々の遺伝子)は、特定の障害発現プロファイルを抑制する、又は不良な予後プロファイルをより良い予後プロファイルに変換する薬剤候補のスクリーニングを可能にする。
【0133】
[000187]細胞中の一つ以上のmiR遺伝子産物のレベルの変化は、特定の障害を導き得るこれらのmiRについての一つ以上の意図された標的の調節解除を生じ得る。それ故、miR遺伝子産物のレベルを変化させることは(例えば、障害提示細胞で上方調節されているmiRのレベルを減少させることにより、障害提示細胞で下方調節されているmiRのレベルを増加させることにより)、該障害を成功裏に治療することができる。
【0134】
[000188]従って、本発明は対象における障害を治療する方法を包含し、ここで少なくとも一つのmiR遺伝子産物は、該対象の細胞中で脱調節されている(例えば、下方調節、上方調節)。一つの態様において、試験サンプル中の該少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルは、対照又は基準サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルよりも高い。別の態様において、試験サンプル中の該少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルは、対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルよりも低い。該少なくとも一つの単離されたmiR遺伝子産物が試験サンプル中で下方調節されている場合、該方法は、対象中の障害提示細胞の増殖が抑制されるように、該少なくとも一つの単離されたmiR遺伝子産物、又は単離された変異体又はそれらの生物学的に活性な断片の有効量を投与することを含む。
【0135】
[000189]例えば、miR遺伝子産物が対象の癌細胞において下方調節されている場合、単離されたmiR遺伝子産物の有効量を該対象に投与することは、該癌細胞の増殖を抑制し得る。該対象に投与される単離されたmiR遺伝子産物は、該癌細胞中で下方調節されている内在性野生型miR遺伝子産物と同一でもよいし、又は変異体又はそれらの生物学的に活性な断片でもあり得る。
【0136】
[000190]本明細書で定義されるmiR遺伝子産物の「変異体(variant)」とは、対応する野生型miR遺伝子産物と100%未満の同一性を有し、対応する野生型miR遺伝子産物の一つ以上の生物活性を有するmiRNAを指す。こうした生物活性の例には、限定されるわけではないが、標的RNA分子の発現の抑制(例えば、標的RNA分子の翻訳を抑制すること、標的RNA分子の安定性を変調すること、標的RNA分子のプロセシングを抑制すること)、及び癌及び/又は骨髄増殖性障害に関連した細胞プロセス(例えば、細胞分化、細胞増殖、細胞死)の抑制が含まれる。これらの変異体には、種変異体及びmiR遺伝子中の一つ以上の突然変異(例えば、置換、欠失、挿入)の結果である変異体が含まれる。ある態様において、該変異体は、対応する野生型miR遺伝子産物と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は99%同一である。
【0137】
[000191]本明細書で定義された、miR遺伝子産物の「生物学的に活性な断片」とは、対応する野生型miR遺伝子産物の一つ以上の生物活性を有するmiR遺伝子産物のRNA断片を指す。上に記載したように、こうした生物活性の例には、限定されるわけではないが、標的RNA分子の発現の抑制、及び癌及び/又は骨髄増殖性障害に関連した細胞プロセスの抑制が含まれる。ある態様において、該生物学的に活性な断片は、少なくとも約5、7、10、12、15、又は17ヌクレオチド長である。特定の態様において、単離されたmiR遺伝子産物は、一つ以上の追加の抗癌治療と組み合わせて対象に投与し得る。適した抗癌治療には、限定されるわけではないが、化学療法、放射線療法及びそれらの組み合わせ(例えば、放射線化学療法)が含まれる。
【0138】
[000192]該少なくとも一つの単離されたmiR遺伝子産物が癌細胞中で上方調節されている場合、該方法は、障害提示細胞の増殖が抑制されるように、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物の発現を抑制する化合物の有効量を該対象に投与することを含む。こうした化合物は、本明細書においてmiR遺伝子発現抑制化合物と称される。適したmiR遺伝子発現抑制化合物の例には、限定されるわけではないが、本明細書に記載した化合物が含まれる(例えば、二本鎖RNA、アンチセンス核酸及び酵素的RNA分子)。
【0139】
[000193] 特定の態様において、miR遺伝子発現抑制化合物は、一つ又はそれより多くの追加の抗癌治療と組み合わせて対象に投与し得る。適した抗癌治療には、限定されるわけではないが、化学療法、放射線療法及びそれらの組み合わせ(例えば、放射線化学療法)が含まれる。
【0140】
[000194]本明細書に記載されたように、該少なくとも一つの単離されたmiR遺伝子産物が癌細胞中で上方調節されている場合、該方法は、癌細胞の増殖が抑制されるように、該少なくとも一つのmiR遺伝子産物の発現を抑制するための少なくとも一つの化合物の有効量を該対象に投与することを含む。
【0141】
[000195]本明細書で使用される用語「治療する」、「治療すること」及び「治療」は、疾患又は状態、例えば、癌及び/又は他の状態又は障害に関連する症状を寛解させることを指し、疾患症状の発症を防止する又は遅延すること、及び/又は疾患、障害又は状態の症状の重症度又は頻度を減らすことを含んでいる。用語「対象」、「患者」及び「個体」は、限定されるわけではないが、霊長類、乳牛、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス又は他のウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、げっ歯類又はマウス種を含む哺乳類のような動物を含むことが本明細書において定義される。好ましい態様において、該動物はヒトである。
【0142】
[000196]本明細書で使用される「単離された」miR遺伝子産物は、合成された又はヒトの介在を介して天然の状態から変化された又は取り出されたものである。例えば、合成miR遺伝子産物又はその天然の状態で同時に存在する物質から部分的に又は完全に分離されたmiR遺伝子産物が、「単離されて」いると考えられる。単離されたmiR遺伝子産物は実質的に精製された形態で存在することが可能であり、又は該miR遺伝子産物が送達される細胞内で存在することが可能である。それ故、細胞へ計画的に送達された又は細胞中で発現されたmiR遺伝子産物は、「単離された」miR遺伝子産物と考えられる。miR前駆分子から細胞内部で産生されたmiR遺伝子産物も「単離された」分子であると考えられる。本発明に従うと、本明細書に記載された該単離されたmiR遺伝子産物は、対象(例えば、ヒト)を治療するための医薬の製造に使用し得る。
【0143】
[000197]単離されたmiR遺伝子産物は、多くの標準技術を使用して得ることが可能である。例えば、該miR遺伝子産物は当該技術分野で公知の方法を使用して化学的に合成して又は組換え的に産生し得る。一つの態様において、miR遺伝子産物は適切に保護されたリボヌクレオシドホスホラミダイト及び慣用的DNA/RNAシンセサイザーを使用して化学的に合成される。合成RNA分子又は合成試薬の商業的供給元には、例えば、Proligo (Hamburg, Germany), Dharmacon Research (Lafayette, CO, U.S.A.), Pierce Chemical (Perbio Science の一部門, Rockford, IL, U.S.A.), Glen Research (Sterling, VA, U.S.A.), ChemGenes (Ashland, MA, U.S.A.) 及びCruachem (Glasgow, UK) が含まれる。
【0144】
[000198]もしくは、該miR遺伝子産物は、いずれかの適したプロモーターを使用して組換え環状又は直線状DNAプラスミドから発現し得る。プラスミドからRNAを発現するために適したプロモーターには、例えば、U6又はH1 RNAポリメラーゼIIIプロモーター配列又はサイトメガロウイルスプロモーターが含まれる。他の適したプロモーターの選択は当業者には自明である。本発明の組換えプラスミドは、細胞(例えば、癌細胞、骨髄増殖性障害を示している細胞)中での該miR遺伝子産物の発現のための誘導可能又は調節可能プロモーターも含み得る。
【0145】
[000199]組換えプラスミドから発現された該miR遺伝子産物は、標準技術により培養細胞発現システムから単離し得る。組換えプラスミドから発現されたmiR遺伝子産物は、細胞へ送達する、及び細胞中で直接発現することも可能である。
【0146】
[000200]該miR遺伝子産物は別の組換えプラスミドから発現することも、又は同一の組換えプラスミドから発現することも可能である。一つの態様において、該miR遺伝子産物は、単一プラスミドからRNA前駆分子として発現され、そして該前駆分子は、限定されるわけではないが、癌細胞内に実存するプロセッシングシステムを含む適したプロセッシングシステムにより、機能性miR遺伝子産物にプロセッシングされる。
【0147】
[000201]該miR遺伝子産物を発現するために適したプラスミドの選択、遺伝子産物を発現するために該プラスミド内へ核酸配列を挿入する方法、及び組換えプラスミドを問題とする細胞へ送達する方法は当業者には自明である。例えば、その全開示が本明細書において援用される、Zeng et al. (2002), Molecular Cell 9:1327-1333; Tuschl (2002), Nat.Biotechnol, 20:446-448; Brummelkamp et al. (2002), Science 296:550-553; Miyagishi et al. (2002), Nat. Biotechnol. 20:497-500; Paddison et al. (2002), Genes Dev. 16:948-958; Lee et al. (2002), Nat. Biotechnol. 20:500-505; 及び Paul et al. (2002), Nat. Biotechnol. 20:505-508 を参照されたい。例えばある態様において、該miR遺伝子産物を発現しているプラスミドは、CMV中間初期プロモーター制御下のmiR前駆体RNAをコードしている配列を含むことが可能である。本明細書において使用されるプロモーターの「制御下」とは、プロモーターがmiR遺伝子産物コード配列の転写を開始できるように、miR遺伝子産物をコードする核酸配列が該プロモーターの3’に位置していることを意味する。
【0148】
[000202]該miR遺伝子産物は組換えウイルスベクターからも発現し得る。該miR遺伝子産物が二つの別の組換えウイルスベクターから、又は同一のウイルスベクターから発現できることが企図される。該組換えウイルスベクターから発現されたRNAは、標準技術により培養細胞発現システムから単離することが可能であり、又は細胞(例えば、癌細胞、骨髄増殖性障害を示している細胞)中で直接発現することも可能である。
【0149】
[000203]本発明の治療法の他の態様において、miR発現を抑制する少なくとも一つの化合物の有効量を対象に投与し得る。本明細書において使用される「miR発現を抑制する」とは、治療後のmiR遺伝子産物の前駆体及び/又は活性成熟形の産生が、治療に先だって産生される量よりも少ないことを意味する。当業者は、例えば、本明細書で議論したmiR転写体レベルを決定するための技術を使用して、細胞においてmiR発現が抑制されたかどうかを容易に決定し得る。抑制は、遺伝子発現のレベル(即ち、該miR遺伝子産物をコードするmiR遺伝子の転写を抑制することにより)、又はプロセッシングのレベル(例えば、成熟活性miRへのmiR前駆体のプロセッシングを抑制することにより)で起こり得る。
【0150】
[000204]本明細書で使用される、miR発現を抑制する化合物の「有効量」とは、癌及び/又は骨髄増殖性障害を罹患した対象において、細胞の増殖を抑制するために十分な量である。当業者は、該対象のサイズ及び体重;疾患浸透の程度;該対象の年齢、健康状態及び性;投与経路;及び投与が局所的であるか又は全身的であるかどうかのような因子を考慮に入れることにより、所与の対象に投与すべきmiR発現抑制化合物の有効量を容易に決定し得る。
【0151】
[000205]当業者は、本明細書に記載したように、miR発現を抑制する化合物を所与の対象に投与するための適切な投与計画を容易に決定することも可能である。miR遺伝子発現を抑制するために適した化合物には、二本鎖RNA(短い又は小さな干渉RNA又は「siRNA」のような)、アンチセンス核酸、及びリボザイムのような酵素的RNA分子が含まれる。これらの化合物の各々は、所与のmiR遺伝子産物へ標的化すること、及び標的miR遺伝子産物の発現を妨害(例えば、翻訳を抑制することにより、開裂又は分解を誘発することにより)することが可能である。
【0152】
[000206]例えば、所与のmiR遺伝子の発現は、該miR遺伝子産物の少なくとも一部と、少なくとも90%、例えば少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列相同性を有する単離された二本鎖RNA(「dsRNA」)分子で該miR遺伝子のRNA干渉を誘発することにより抑制し得る。特定の態様において、該dsRNA分子は、「短い又は小さな干渉RNA」又は「siRNA」である。
【0153】
[000207]少なくとも一つのmiR遺伝子産物、又はmiR発現を抑制するための少なくとも一つの化合物の投与は、癌及び/又は骨髄増殖性障害を有する対象中の細胞(例えば、癌性細胞、骨髄増殖性障害を示している細胞)の増殖を抑制するであろう。本明細書で使用される「癌性細胞又は骨髄増殖性障害を示している細胞の増殖を抑制する」とは、該細胞を殺す、又は該細胞の増殖を持続的又は一時的に休止させる又は遅らせることを意味する。もし、該miR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物の投与後に該対象中のこうした細胞の数が一定に残るか又は減少したら、癌細胞増殖の抑制が推測できる。もし、こうした細胞の絶対数が増加しても、腫瘍増殖の速度が低下したら、癌性細胞又は骨髄増殖性障害を示している細胞の増殖の抑制がまた推測できる。
【0154】
[000208]miR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物は、いずれかの適した経腸又は非経口投与経路によっても対象に投与し得る。本方法に適した経腸投与経路には、例えば、経口、直腸又は鼻孔内送達が含まれる。適した非経口投与経路には、例えば、血管内投与(例えば、静脈内ボーラス投与、静脈内注入、動脈内ボーラス投与、動脈内注入、及び血管系内へのカテーテル点滴注入);組織周辺及び組織内注射(例えば、腫瘍周囲及び腫瘍内注射、網膜内注射又は網膜下注射);皮下注入(浸透圧ポンプによるような)を含む皮下注射又はデポジション;カテーテル又は他の設置デバイス(例えば、網膜ペレット又は座剤、又は多孔質、非多孔質又はゲル状物質を含んでなる移植片)による目的の組織への直接適用;及び吸入が含まれる。特に適した投与経路は注射、注入及び腫瘍内への直接注射である。
【0155】
[000209]該miR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物は、当該技術分野で公知である技術に従って、対象への投与に先立ってしばしば「医薬(medicament)」と称される医薬組成物として製剤し得る。従って、本発明は癌及び/又は骨髄増殖性障害を治療するための医薬組成物を包含する。
【0156】
[000210]本医薬組成物は、医薬として受容可能な坦体と混合された、少なくとも一つのmiR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物(又はmiR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物をコードする配列を含む少なくとも一つの核酸)又はそれらの生理学的に受容可能な塩を含む(例えば、0.1〜90重量%)。ある態様において、本発明の医薬組成物は一つ又はそれより多くの抗癌剤(例えば、化学療法剤)を追加して含む。本発明の医薬製剤は、リポソームで被包されている少なくとも一つのmiR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物(又は、該miR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物をコードする配列を含む少なくとも一つの核酸)、及び薬学的に許容できる坦体も含むことができる。
【0157】
[000211]本発明の医薬組成物は、慣用的医薬賦形剤及び/又は添加剤も含むことができる。適した医薬賦形剤には、安定剤、抗酸化剤、浸透圧調節剤、緩衝剤及びpH調整剤が含まれる。適した添加剤には、例えば、生理学的生体適合性緩衝剤(例えば、トロメタミン塩酸塩)、キレート剤(例えば、DTPA又はDTPA−ビスアミドのような)又はカルシウムキレート錯体(例えば、カルシウムDTPA、CaNaDTPA−ビスアミドのような)の添加又は、随意に、カルシウム又はナトリウム塩(例えば、塩化カルシウム、アスコビル酸カルシウム、グルコン酸カルシウム又は乳酸カルシウム)の添加が含まれる。本発明の医薬組成物は液体形態での使用のために包装することができ、又は凍結乾燥することができる。
【0158】
[000212]本発明の固形医薬組成物のためには、慣用的無毒性固体の薬学的に許容できる坦体を使用することができる;例えば、医薬用のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなど。
【0159】
[000213]例えば、経口投与のための固形医薬組成物は、上に列挙したいずれかの坦体及び賦形剤、及び10〜95%、好ましくは25%〜75%の該少なくとも一つのmiR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物(又は、それらをコードする配列を含む少なくとも一つの核酸)を含み得る。エアロゾル(吸入)投与のための医薬組成物は、0.01〜20重量%、好ましくはl%〜10重量%の上記のようにリポソーム中に被包された該少なくとも一つのmiR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物(又は、該miR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物をコードする配列を含む少なくとも一つの核酸)、及び噴霧剤を含み得る。望むなら坦体も含ませ得る;例えば、鼻腔内送達のためのレシチン。
【0160】
[000214]本発明の医薬組成物は、一つ以上の抗癌剤をさらに含み得る。特定の態様において、該組成物は、少なくとも一つのmiR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物(又は、該miR遺伝子産物又はmiR遺伝子発現抑制化合物をコードする配列を含む少なくとも一つの核酸)、及び少なくとも一つの化学療法剤を含む。本発明の方法に適している化学療法剤には、限定されるわけではないが、DNAアルキル化剤、抗腫瘍抗生物質剤、抗代謝剤、チューブリン安定化剤、チューブリン不安定化剤、ホルモンアンタゴニスト剤、トポイソメラーゼ阻害剤、タンパク質キナーゼ阻害剤、HMG−CoA阻害剤、CDK阻害剤、サイクリン阻害剤、カスパーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、アンチセンス核酸、三重らせんDNA、核酸アプタマー及び分子的修飾ウイルス、細菌又は外毒素剤が含まれる。本発明の組成物に適した剤の例には、限定されるわけではないが、シチジンアラビノシド、メトトレキサート、ビンクリスチン、エトポシド(VP−16)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラチン(CDDP)、デキサメタゾン、アルグラビン、シクロホスファミド、サルコリシン、メチルニトロソ尿素、フルオロウラシル、5−フルオロウラシル(5FU)、ビンブラスチン、カンプトテシン、アクチノマイシンD、マイトマイシンC、過酸化水素、オキサリプラチン、イリノテカン、トポテカン、ロイコボリン、カルムスチン、ストレプトゾシン、CPT−11、タキソール、タモキシフェン、ダカルバジン、リツキシマブ、ダウノルビシン、1−β−D−アラビノフラノシルシトシン、イマチニブ、フルダラビン、ドセタキセル及びFOLFOX4が含まれる。
【0161】
[000215]一つの態様において、該方法は、細胞に試験剤を提供すること、及び癌性細胞中で減少した発現に関連する少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルを測定すること、を含む。適した対照のレベル(例えば、対照細胞中の該miR遺伝子産物のレベル)と比較し、該細胞中の該miR遺伝子産物のレベルの増加は、該試験剤が抗癌剤であることを示す。
【0162】
[000216]適した剤には、限定されるわけではないが、薬剤(例えば、低分子、ペプチド)及び生体高分子(例えば、タンパク質、核酸)が含まれる。該剤は、組換え的に、合成的に製造することが可能であり、又は天然源から単離する(即ち、精製する)ことができる。細胞へこうした剤を提供するための多様な方法(例えば、トランスフェクション)は当該技術分野では公知であり、こうした方法のいくつかは上に記載されている。少なくとも一つのmiR遺伝子産物の発現検出するための方法(例えば、ノーザンブロッティング法、インサイツハイブリダイゼーション、RT−PCR、発現プロファイリング)も当該技術分野では公知である。これらの方法のいくつかも本明細書に記載されている。
【0163】
[000217]本発明は多様な及び好ましい態様を参照して記載されてきたが、本発明の本質的範囲から離れることなく、多様な変更を行うことができ、そして均等物をそれらの要素と置換することができることを当業者は理解しなければならない。加えて、本発明の本質的範囲から離れることなく、本発明の特定の状況又は材料を本発明の教示に適応させるために多くの修飾を行うことができる。それ故、本発明は、この発明を実施するために企図された、本発明で開示された特定の態様に限定されるものではなく、本発明は特許請求の範囲内に含まれるすべての態様を含むであろうことが意図される。
【0164】
[000218]本発明を明らかにする又は本発明の実施に関する追加の詳細を提供するために本明細書で使用した出版物及び他の材料は、本明細書に参照として組み入れられ、便宜上、以下の参照文献に提供されている。
【0165】
[000219]参照文献
1. Kopper, L. and J. Timar. 2005. Genomics of lung cancer may change diagnosis, prognosis and therapy. Pathol.Oncol.Res. 11:5-10.
2. Lynch, T. J., D. W. Bell, R. Sordella, S. Gurubhagavatula, R. A. Okimoto, B. W. Brannigan, P. L. Harris, S. M. Haserlat, J. G. Supko, F. G. Haluska, D. N. Louis, D. C. Christiani, J. Settleman, and D. A. Haber. 2004. Activating mutations in the epidermal growth factor receptor underlying responsiveness of non-small-cell lung cancer to gefitinib. N.EngUMed. 350:2129-2139.
3. Shepherd, F. A., P. J. Rodrigues, T. Ciuleanu, E. H. Tan, V. Hirsh, S. Thongprasert, D. Campos, S. Maoleekoonpiroj, M. Smylie, R. Martins, K. M. van, M. Dediu, B. Findlay,D. Tu, D. Johnston, A. Bezjak, G. Clark, P. Santabarbara, and L. Seymour. 2005. Erlotinib in previously treated non-small-cell lung cancer. N.Engl.J.Med. 353:123-132.
4. Sher, Y. P., J. Y. Shih, P. C. Yang, S. R. Roffler, Y. W. Chu, C. W. Wu, C. L. Yu, and K. Peck. 2005. Prognosis of non-small cell lung cancer subjects by detecting circulating cancer cells in the peripheral blood with multiple marker genes. Clin.Cancer Res. 11:173-179.
5. Nana-Sinkam, S. P. and M. W. Geraci. 2006. MicroRNA in lung cancer. Journal of Thoracic Oncology 1:929-931.
6. Johnson, S. M., H. Grosshans, J. Shingara, M. Byrom, R. Jarvis, A. Cheng, E. Labourier, K. L. Reinert, D. Brown, and F. J. Slack. 2005. RAS is regulated by the let-7 microRNA family. Cell 120:635-647.
7. Takamizawa, J., H. Konishi, K. Yanagisawa, S. Tomida, H. Osada, H. Endoh, T. Harano, Y. Yatabe, M. Nagino, Y. Nimura, T. Mitsudomi, and T. Takahashi. 2004. Reduced expression of the let-7 microRNAs in human lung cancers in association with shortened postoperative survival. Cancer Res. 64:3753-3756.
8. Yanaihara, N., N. Caplen, E. Bowman, M. Seike, K. Kumamoto, M. Yi, R. M. Stephens, A. Okamoto, J. Yokota, T. Tanaka, G. A. Calin, C. G. Liu, C. M. Croce, and C. C. Harris. 2006. Unique microRNA molecular profiles in lung cancer diagnosis and prognosis. Cancer Cell 9:189-198.
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象が一つ以上の肺癌随伴疾患を有する、又は発症するリスクがあるかどうかを決定する方法であって、
該対象からの末梢血サンプル中の少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルを測定すること:を含み、
対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較し、該サンプル中の該miR遺伝子産物のレベルの変化は、該対象が一つ以上の肺癌随伴疾患を有しているか、又は発症するリスクがあることを示す、前記方法。
【請求項2】
該末梢血サンプルが、全血、末梢血単核細胞(PBMC)及び血清の一つ以上を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
該一つ以上の肺癌随伴疾患が、気管支肺胞癌(BAC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺腺癌及び肺扁平上皮癌を含む、請求項1の方法。
【請求項4】
該末梢血サンプルが全血を含み、そして少なくとも一つのmiR遺伝子産物が:
miR
hsa−miR−518f
hsa−miR−516−3,5p
hsa−miR−517b*
hsa−miR−490No2
hsa−miR−139−prec
hsa−miR−007−2−precNo1
hsa−miR−021−prec−17No2
hsa−miR−106bNo2
hsa−miR−345No2
hsa−miR−217−precNo1
hsa−miR−323No2
hsa−miR−218−2−precNo2
hsa−miR−202
hsa−miR−425No1
hsa−miR−096−prec−7No1
hsa−miR−125a−precNo2
hsa−miR−339No1
hsa−miR−141−precNo1
hsa−miR−321No1
の増加したmiR発現から成る、表1に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である、請求項1の方法。
【請求項5】
該miRが、hsa−miR−518f及びhsa−miR−516−35p:の一つ以上である、請求項4の方法。
【請求項6】
該末梢血サンプルが全血を含み、そして少なくとも一つのmiR遺伝子産物が:
miR
hsa−miR−1−2No1
hsa−miR−511−2No2
hsa−miR−101−2No1
hsa−miR−218−2−precNo1
hsa−miR−451No2
hsa−miR−126*No2
hsa−let−7d−vl−prec
hsa−miR−1−lNo1
hsa−miR−123−precNo1
hsa−miR−l00No1
hsa−miR−150−prec
hsa−miR−021−prec−17No1
hsa−miR−34aNo1
hsa−let−7iNo1
hsa−miR−017−precNo2
hsa−miR−00lb−2−prec
hsa−miR−126*No1
hsa−miR−20bNo1
hsa−miR−202−prec
hsa−miR−020−prec
hsa−miR−383No1
hsa−let−7d−v2−precNo2
hsa−let−7g−precNo1
hsa−miR−106aNo1
hsa−miR−126No2
hsa−miR−018−prec
hsa−miR−206−precNo1
hsa−miR−009−lNo1
hsa−miR−181c−precNo2
hsa−let−7b−prec
hsa−miR−007−3−precNo1
hsa−miR−103−2−prec
hsa−miR−219−2No2
hsa−miR−016a−chr13
hsa−miR−126No1
hsa−miR−106−prec−X
hsa−miR−107No1
hsa−miR−196−1−precNo1
hsa−miR−106bNo1
hsa−let−7f−l−precNo2
hsa−miR−107−prec−l0
hsa−let−7a−l−prec
hsa−miR−144−precNo2
hsa−let−7d−prec
hsa−miR−320No2
hsa−miR−21No1
hsa−miR−103−prec−5=103−l
hsa−miR−516−2No1
hsa−miR−00lb−1−precl
hsa−miR−125b−2−precNo2
hsa−miR−130a−precNo2
hsa−miR−030b−precNo2
hsa−let−7a−2−precNo2
hsa−miR−132−precNo2
hsa−miR−516−45p
hsa−miR−374No1
hsa−miR−015a−2−precNo1
hsa−miR−517a
hsa−miR−016b−chr3
hsa−miR−017−precNo1
hsa−miR−148−prec
の減少したmiR発現から成る、表1に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である、請求項1の方法。
【請求項7】
該miRが、
miR
hsa−miR−1−2No1
hsa−miR−511−2No2
hsa−miR−101−2No1
hsa−miR−218−2−precNo1
hsa−miR−451No2
hsa−miR−126*No2
hsa−let−7d−vl−prec
hsa−miR−1−1No1
hsa−miR−123−precNo1
hsa−miR−l00No1
hsa−miR−150−prec
hsa−miR−021−prec−17No1
hsa−miR−34aNo1
hsa−let−7iNo1
hsa−miR−126*No1
hsa−miR−126No2
hsa−miR−181c−precNo2
hsa−miR−126No1
の一つ以上である、請求項6の方法。
【請求項8】
該末梢血サンプルが末梢血単核細胞(PBMC)を含み、そして
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が:hsa−miR−630の減少したmiR発現から成る、表2に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である、請求項1の方法。
【請求項9】
該サンプルが末梢血単核細胞を含み、そして
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が:hsa−miR−152、hsa−miR−365、hsa−miR−487a、hsa−miR−148a、hsa−miR−636、hsa−miR−320及びhsa−miR−145の増加したmiR発現から成る、表2に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である、請求項1の方法。
【請求項10】
該末梢血サンプルが血清を含み、そして
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が:hsa−miR−192の増加したmiR発現から成る、表3に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である、請求項1の方法。
【請求項11】
該サンプルが血清を含み、そして
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が:hsa−miR−532、hsa−miR−197、hsa−miR−342の減少したmiR発現から成る、表3に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である、請求項1の方法。
【請求項12】
該少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、表4に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である、請求項1の方法。
【請求項13】
該少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、表5に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である、請求項1の方法。
【請求項14】
該少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、表6に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である、請求項1の方法。
【請求項15】
該方法が肺癌を有する対象の予後を決定するために使用され:
該対象からのサンプル中の該少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルを測定すること;を含み、
該miR遺伝子産物が肺癌の予後不良と関連し;そして
対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較して、該サンプル中の該少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルの変化が予後不良を示す、請求項1の方法。
【請求項16】
末梢血サンプルで一つ以上の肺癌随伴疾患を検出する方法であって、該方法が:
肺癌に関連した少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現についてサンプルを分析すること;及び
該少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現と該サンプル中の肺癌の存在又は不存在を相関させること;を含み、
該少なくとも一つのバイオマーカーが、表1、表2又は表3にリストしたmiRから選択される、前記方法。
【請求項17】
一つ以上の肺癌随伴疾患を有していると疑われる対象を早期診断する方法であって、該方法が:
該対象から末梢血サンプルを入手すること;
肺癌と関連した少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現についてサンプルを分析すること;
該少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現と該対象における肺癌の存在を相関させること:を含み、
該少なくとも一つのバイオマーカーが、表1、表2又は表3にリストしたmiRから選択される、前記方法。
【請求項18】
一つ以上の肺癌随伴疾患を有する対象を治療する方法であって、表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群から選択される少なくとも一つのバイオマーカーと相補的な核酸を含む、治療的に有効量の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項19】
表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群から選択される、少なくとも一つのバイオマーカーと相補的な核酸を含む、医薬組成物。
【請求項20】
一つ以上の肺癌随伴疾患のため化学放射線治療を受けている患者の末梢血サンプルと、化学放射線治療を受けていない患者のサンプルを比較する方法であって:
表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの異なった発現を比較することを含む、前記方法。
【請求項21】
患者の一つ以上の肺癌随伴疾患のステージ分類を比較する方法であって:
該患者から末梢血サンプルを入手すること;及び表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの異なった発現を比較することを含む、前記方法。
【請求項22】
一つ以上の肺癌随伴疾患を抑制することを、それらを必要とする対象において行う方法であって:
表1、表2又は表3にリストしたmiRの少なくとも一つを投与することを含む、前記方法。
【請求項23】
一つ以上の肺癌随伴疾患を患っている対象においてそれらの疾患を治療する方法であって、ここで対照細胞と比較して該対象の癌細胞においては少なくとも一つのmiRが下方調節又は上方調節されており:
該癌細胞において該少なくとも一つのmiRが下方調節されている場合、該対象の癌細胞の増殖が抑制されるように、少なくとも一つの単離されたmiRの有効量を該対象に投与すること;又は、
該癌細胞において該少なくとも一つのmiRが上方調節されている場合、該対象の癌細胞の増殖が抑制されるように、少なくとも一つのmiRの発現を抑制するための少なくとも一つの化合物の有効量を該対象に投与すること;を含み、
該miRが表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群より選択される、前記方法。
【請求項24】
対象の一つ以上の肺癌随伴疾患を治療する方法であって:
対照サンプルと比較した、該対象から入手した末梢血サンプル中の少なくとも一つのmiRの量を決定すること、ここで該miRは表1、表2又は表3にリストしたmiRから選択され;及び
該対象における肺癌の増殖が抑制されるように、
(i)もし、該対象において発現された該miRの量が対照細胞中で発現されたmiRの量よりも少なければ、少なくとも一つの単離されたmiRの有効量を該対象に投与することにより;又は
(ii)もし、該対象において発現された該miRの量が対照細胞中で発現されたmiRの量よりも多ければ、該少なくとも一つのmiRの発現を抑制するための少なくとも一つの化合物の有効量を該対象に投与することにより;
該対象におけるmiR活性の量を変化させることを含む、前記方法。
【請求項25】
抗肺癌随伴疾患剤を同定する方法であって:
癌細胞に試験剤を提供すること;及び
該肺癌細胞中での減少した発現レベルと関連した少なくとも一つのmiRのレベルを測定すること;を含み、
適した対照細胞と比較し、該肺癌細胞中の該miRのレベルの増加は、該試験剤が抗癌剤であることを示し;該miRが、表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群より選択される、前記方法。
【請求項26】
対象における病的状態、又は病的状態を発症するリスクを評価する方法であって:
該対象からのサンプル中の一つ以上のマーカーの発現プロファイルを測定することを含み、
該対象からのサンプルにおける発現プロファイルと正常サンプルの発現プロファイルとの相違は、一つ以上の肺癌随伴疾患又はそれらへの素因を示し、そして
該マーカーが表1、表2又は表3にリストした一つ以上のmiRを少なくとも含む、前記方法。
【請求項27】
表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群から選択された一つ以上のmiRを含む組成物。
【請求項28】
一つ以上の肺癌随伴疾患を試験するための試薬であって、表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRのヌクレオチド配列、又は該マーカーのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を含んでいるポリヌクレオチドを含む、前記試薬。
【請求項29】
一つ以上の肺癌随伴疾患を試験するための試薬であって、表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRによりコードされたタンパク質を認識する抗体を含む、前記試薬。
【請求項30】
一つ以上の肺癌随伴疾患を予防する、診断する及び/又は治療するための療法の有効性を評価する方法であって:
その有効性が評価されている療法を患者に供すること;及び
表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRを評価することにより、一つ以上の肺癌随伴疾患を治療する又は予防することについて試験されている治療の有効性のレベルを決定すること;
を含む、前記方法。
【請求項31】
該候補治療剤が、医薬組成物、栄養機能組成物及びホメオパシー組成物の一つ以上を含む、前の請求項の方法。
【請求項32】
該評価されている療法が、ヒト対象での使用のためである、前の請求項の方法。
【請求項33】
製品であって:表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRから選択される、一つ以上の肺癌随伴疾患のためのマーカーへ結合する少なくとも一つの捕捉試薬を含む、前記製品。
【請求項34】
一つ以上の肺癌随伴疾患を治療する療法剤の候補化合物をスクリーニングするためのキットであって:表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRの一つ以上の試薬、及び少なくとも一つのmiRを発現している細胞を含む、前記キット。
【請求項35】
該miRの存在が、少なくとも一つのmiRと特異的に結合する抗体又は抗体断片を含む試薬を使用して検出される、前の請求項のキット。
【請求項36】
一つ以上の肺癌随伴疾患のためのスクリーニング試験であって:
表1、表2又は表3にリストした一つ以上のmiRと、こうしたmiRの基質及び試験剤を接触させること;及び
該試験剤が該miRの活性を変調するかどうかを決定すること;
を含む、前記スクリーニング試験。
【請求項37】
全ての工程がインビトロで実施される、前の請求項のスクリーニング試験。
【請求項38】
個体の一つ以上の肺癌随伴疾患に関連する合併症を治療する、予防する、逆行させる、又は重度を限定する医薬の製造のための、一つ以上の肺癌随伴応答シグナル伝達経路を妨害する剤の使用であって、該剤が、表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRを含む、前記使用。
【請求項39】
一つ以上の肺癌随伴疾患合併症を治療する、予防する、逆行させる、又は重度を限定する方法を、それらを必要とする個体において行う方法であって:
少なくとも一つ以上の肺癌随伴疾患応答カスケードを妨害する剤を該個体に投与することを含み、該剤が、表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRを含む、前記方法。
【請求項40】
個体の一つ以上の肺癌随伴疾患合併症を治療する、予防する、逆行させる、又は重度を限定する医薬の製造のための、少なくとも一つ以上の肺癌随伴疾患応答カスケードを妨害する剤の使用であって、該剤が、表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRを含む、前記使用。
【請求項1】
対象が一つ以上の肺癌随伴疾患を有する、又は発症するリスクがあるかどうかを決定する方法であって、
該対象からの末梢血サンプル中の少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルを測定すること:を含み、
対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較し、該サンプル中の該miR遺伝子産物のレベルの変化は、該対象が一つ以上の肺癌随伴疾患を有しているか、又は発症するリスクがあることを示す、前記方法。
【請求項2】
該末梢血サンプルが、全血、末梢血単核細胞(PBMC)及び血清の一つ以上を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
該一つ以上の肺癌随伴疾患が、気管支肺胞癌(BAC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺腺癌及び肺扁平上皮癌を含む、請求項1の方法。
【請求項4】
該末梢血サンプルが全血を含み、そして少なくとも一つのmiR遺伝子産物が:
miR
hsa−miR−518f
hsa−miR−516−3,5p
hsa−miR−517b*
hsa−miR−490No2
hsa−miR−139−prec
hsa−miR−007−2−precNo1
hsa−miR−021−prec−17No2
hsa−miR−106bNo2
hsa−miR−345No2
hsa−miR−217−precNo1
hsa−miR−323No2
hsa−miR−218−2−precNo2
hsa−miR−202
hsa−miR−425No1
hsa−miR−096−prec−7No1
hsa−miR−125a−precNo2
hsa−miR−339No1
hsa−miR−141−precNo1
hsa−miR−321No1
の増加したmiR発現から成る、表1に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である、請求項1の方法。
【請求項5】
該miRが、hsa−miR−518f及びhsa−miR−516−35p:の一つ以上である、請求項4の方法。
【請求項6】
該末梢血サンプルが全血を含み、そして少なくとも一つのmiR遺伝子産物が:
miR
hsa−miR−1−2No1
hsa−miR−511−2No2
hsa−miR−101−2No1
hsa−miR−218−2−precNo1
hsa−miR−451No2
hsa−miR−126*No2
hsa−let−7d−vl−prec
hsa−miR−1−lNo1
hsa−miR−123−precNo1
hsa−miR−l00No1
hsa−miR−150−prec
hsa−miR−021−prec−17No1
hsa−miR−34aNo1
hsa−let−7iNo1
hsa−miR−017−precNo2
hsa−miR−00lb−2−prec
hsa−miR−126*No1
hsa−miR−20bNo1
hsa−miR−202−prec
hsa−miR−020−prec
hsa−miR−383No1
hsa−let−7d−v2−precNo2
hsa−let−7g−precNo1
hsa−miR−106aNo1
hsa−miR−126No2
hsa−miR−018−prec
hsa−miR−206−precNo1
hsa−miR−009−lNo1
hsa−miR−181c−precNo2
hsa−let−7b−prec
hsa−miR−007−3−precNo1
hsa−miR−103−2−prec
hsa−miR−219−2No2
hsa−miR−016a−chr13
hsa−miR−126No1
hsa−miR−106−prec−X
hsa−miR−107No1
hsa−miR−196−1−precNo1
hsa−miR−106bNo1
hsa−let−7f−l−precNo2
hsa−miR−107−prec−l0
hsa−let−7a−l−prec
hsa−miR−144−precNo2
hsa−let−7d−prec
hsa−miR−320No2
hsa−miR−21No1
hsa−miR−103−prec−5=103−l
hsa−miR−516−2No1
hsa−miR−00lb−1−precl
hsa−miR−125b−2−precNo2
hsa−miR−130a−precNo2
hsa−miR−030b−precNo2
hsa−let−7a−2−precNo2
hsa−miR−132−precNo2
hsa−miR−516−45p
hsa−miR−374No1
hsa−miR−015a−2−precNo1
hsa−miR−517a
hsa−miR−016b−chr3
hsa−miR−017−precNo1
hsa−miR−148−prec
の減少したmiR発現から成る、表1に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である、請求項1の方法。
【請求項7】
該miRが、
miR
hsa−miR−1−2No1
hsa−miR−511−2No2
hsa−miR−101−2No1
hsa−miR−218−2−precNo1
hsa−miR−451No2
hsa−miR−126*No2
hsa−let−7d−vl−prec
hsa−miR−1−1No1
hsa−miR−123−precNo1
hsa−miR−l00No1
hsa−miR−150−prec
hsa−miR−021−prec−17No1
hsa−miR−34aNo1
hsa−let−7iNo1
hsa−miR−126*No1
hsa−miR−126No2
hsa−miR−181c−precNo2
hsa−miR−126No1
の一つ以上である、請求項6の方法。
【請求項8】
該末梢血サンプルが末梢血単核細胞(PBMC)を含み、そして
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が:hsa−miR−630の減少したmiR発現から成る、表2に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である、請求項1の方法。
【請求項9】
該サンプルが末梢血単核細胞を含み、そして
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が:hsa−miR−152、hsa−miR−365、hsa−miR−487a、hsa−miR−148a、hsa−miR−636、hsa−miR−320及びhsa−miR−145の増加したmiR発現から成る、表2に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である、請求項1の方法。
【請求項10】
該末梢血サンプルが血清を含み、そして
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が:hsa−miR−192の増加したmiR発現から成る、表3に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である、請求項1の方法。
【請求項11】
該サンプルが血清を含み、そして
少なくとも一つのmiR遺伝子産物が:hsa−miR−532、hsa−miR−197、hsa−miR−342の減少したmiR発現から成る、表3に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である、請求項1の方法。
【請求項12】
該少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、表4に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である、請求項1の方法。
【請求項13】
該少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、表5に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である、請求項1の方法。
【請求項14】
該少なくとも一つのmiR遺伝子産物が、表6に示した群より選択される一つ以上のmiR遺伝子産物である、請求項1の方法。
【請求項15】
該方法が肺癌を有する対象の予後を決定するために使用され:
該対象からのサンプル中の該少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルを測定すること;を含み、
該miR遺伝子産物が肺癌の予後不良と関連し;そして
対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較して、該サンプル中の該少なくとも一つのmiR遺伝子産物のレベルの変化が予後不良を示す、請求項1の方法。
【請求項16】
末梢血サンプルで一つ以上の肺癌随伴疾患を検出する方法であって、該方法が:
肺癌に関連した少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現についてサンプルを分析すること;及び
該少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現と該サンプル中の肺癌の存在又は不存在を相関させること;を含み、
該少なくとも一つのバイオマーカーが、表1、表2又は表3にリストしたmiRから選択される、前記方法。
【請求項17】
一つ以上の肺癌随伴疾患を有していると疑われる対象を早期診断する方法であって、該方法が:
該対象から末梢血サンプルを入手すること;
肺癌と関連した少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現についてサンプルを分析すること;
該少なくとも一つのバイオマーカーの変化した発現と該対象における肺癌の存在を相関させること:を含み、
該少なくとも一つのバイオマーカーが、表1、表2又は表3にリストしたmiRから選択される、前記方法。
【請求項18】
一つ以上の肺癌随伴疾患を有する対象を治療する方法であって、表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群から選択される少なくとも一つのバイオマーカーと相補的な核酸を含む、治療的に有効量の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項19】
表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群から選択される、少なくとも一つのバイオマーカーと相補的な核酸を含む、医薬組成物。
【請求項20】
一つ以上の肺癌随伴疾患のため化学放射線治療を受けている患者の末梢血サンプルと、化学放射線治療を受けていない患者のサンプルを比較する方法であって:
表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの異なった発現を比較することを含む、前記方法。
【請求項21】
患者の一つ以上の肺癌随伴疾患のステージ分類を比較する方法であって:
該患者から末梢血サンプルを入手すること;及び表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーの異なった発現を比較することを含む、前記方法。
【請求項22】
一つ以上の肺癌随伴疾患を抑制することを、それらを必要とする対象において行う方法であって:
表1、表2又は表3にリストしたmiRの少なくとも一つを投与することを含む、前記方法。
【請求項23】
一つ以上の肺癌随伴疾患を患っている対象においてそれらの疾患を治療する方法であって、ここで対照細胞と比較して該対象の癌細胞においては少なくとも一つのmiRが下方調節又は上方調節されており:
該癌細胞において該少なくとも一つのmiRが下方調節されている場合、該対象の癌細胞の増殖が抑制されるように、少なくとも一つの単離されたmiRの有効量を該対象に投与すること;又は、
該癌細胞において該少なくとも一つのmiRが上方調節されている場合、該対象の癌細胞の増殖が抑制されるように、少なくとも一つのmiRの発現を抑制するための少なくとも一つの化合物の有効量を該対象に投与すること;を含み、
該miRが表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群より選択される、前記方法。
【請求項24】
対象の一つ以上の肺癌随伴疾患を治療する方法であって:
対照サンプルと比較した、該対象から入手した末梢血サンプル中の少なくとも一つのmiRの量を決定すること、ここで該miRは表1、表2又は表3にリストしたmiRから選択され;及び
該対象における肺癌の増殖が抑制されるように、
(i)もし、該対象において発現された該miRの量が対照細胞中で発現されたmiRの量よりも少なければ、少なくとも一つの単離されたmiRの有効量を該対象に投与することにより;又は
(ii)もし、該対象において発現された該miRの量が対照細胞中で発現されたmiRの量よりも多ければ、該少なくとも一つのmiRの発現を抑制するための少なくとも一つの化合物の有効量を該対象に投与することにより;
該対象におけるmiR活性の量を変化させることを含む、前記方法。
【請求項25】
抗肺癌随伴疾患剤を同定する方法であって:
癌細胞に試験剤を提供すること;及び
該肺癌細胞中での減少した発現レベルと関連した少なくとも一つのmiRのレベルを測定すること;を含み、
適した対照細胞と比較し、該肺癌細胞中の該miRのレベルの増加は、該試験剤が抗癌剤であることを示し;該miRが、表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群より選択される、前記方法。
【請求項26】
対象における病的状態、又は病的状態を発症するリスクを評価する方法であって:
該対象からのサンプル中の一つ以上のマーカーの発現プロファイルを測定することを含み、
該対象からのサンプルにおける発現プロファイルと正常サンプルの発現プロファイルとの相違は、一つ以上の肺癌随伴疾患又はそれらへの素因を示し、そして
該マーカーが表1、表2又は表3にリストした一つ以上のmiRを少なくとも含む、前記方法。
【請求項27】
表1、表2又は表3にリストしたmiRから成る群から選択された一つ以上のmiRを含む組成物。
【請求項28】
一つ以上の肺癌随伴疾患を試験するための試薬であって、表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRのヌクレオチド配列、又は該マーカーのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を含んでいるポリヌクレオチドを含む、前記試薬。
【請求項29】
一つ以上の肺癌随伴疾患を試験するための試薬であって、表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRによりコードされたタンパク質を認識する抗体を含む、前記試薬。
【請求項30】
一つ以上の肺癌随伴疾患を予防する、診断する及び/又は治療するための療法の有効性を評価する方法であって:
その有効性が評価されている療法を患者に供すること;及び
表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRを評価することにより、一つ以上の肺癌随伴疾患を治療する又は予防することについて試験されている治療の有効性のレベルを決定すること;
を含む、前記方法。
【請求項31】
該候補治療剤が、医薬組成物、栄養機能組成物及びホメオパシー組成物の一つ以上を含む、前の請求項の方法。
【請求項32】
該評価されている療法が、ヒト対象での使用のためである、前の請求項の方法。
【請求項33】
製品であって:表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRから選択される、一つ以上の肺癌随伴疾患のためのマーカーへ結合する少なくとも一つの捕捉試薬を含む、前記製品。
【請求項34】
一つ以上の肺癌随伴疾患を治療する療法剤の候補化合物をスクリーニングするためのキットであって:表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRの一つ以上の試薬、及び少なくとも一つのmiRを発現している細胞を含む、前記キット。
【請求項35】
該miRの存在が、少なくとも一つのmiRと特異的に結合する抗体又は抗体断片を含む試薬を使用して検出される、前の請求項のキット。
【請求項36】
一つ以上の肺癌随伴疾患のためのスクリーニング試験であって:
表1、表2又は表3にリストした一つ以上のmiRと、こうしたmiRの基質及び試験剤を接触させること;及び
該試験剤が該miRの活性を変調するかどうかを決定すること;
を含む、前記スクリーニング試験。
【請求項37】
全ての工程がインビトロで実施される、前の請求項のスクリーニング試験。
【請求項38】
個体の一つ以上の肺癌随伴疾患に関連する合併症を治療する、予防する、逆行させる、又は重度を限定する医薬の製造のための、一つ以上の肺癌随伴応答シグナル伝達経路を妨害する剤の使用であって、該剤が、表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRを含む、前記使用。
【請求項39】
一つ以上の肺癌随伴疾患合併症を治療する、予防する、逆行させる、又は重度を限定する方法を、それらを必要とする個体において行う方法であって:
少なくとも一つ以上の肺癌随伴疾患応答カスケードを妨害する剤を該個体に投与することを含み、該剤が、表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRを含む、前記方法。
【請求項40】
個体の一つ以上の肺癌随伴疾患合併症を治療する、予防する、逆行させる、又は重度を限定する医薬の製造のための、少なくとも一つ以上の肺癌随伴疾患応答カスケードを妨害する剤の使用であって、該剤が、表1、表2又は表3にリストした少なくとも一つのmiRを含む、前記使用。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9−1】
【図9−2】
【図9−3】
【図10A】
【図10B】
【図11−1】
【図11−2】
【図11−3】
【図11−4】
【図11−5】
【図11−6】
【図11−7】
【図11−8】
【図11−9】
【図11−10】
【図11−11】
【図11−12】
【図11−13】
【図11−14】
【図11−15】
【図11−16】
【図11−17】
【図12−1】
【図12−2】
【図12−3】
【図12−4】
【図12−5】
【図12−6】
【図12−7】
【図12−8】
【図12−9】
【図13−1】
【図13−2】
【図13−3】
【図13−4】
【図13−5】
【図13−6】
【図13−7】
【図13−8】
【図13−9】
【図13−10】
【図13−11】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9−1】
【図9−2】
【図9−3】
【図10A】
【図10B】
【図11−1】
【図11−2】
【図11−3】
【図11−4】
【図11−5】
【図11−6】
【図11−7】
【図11−8】
【図11−9】
【図11−10】
【図11−11】
【図11−12】
【図11−13】
【図11−14】
【図11−15】
【図11−16】
【図11−17】
【図12−1】
【図12−2】
【図12−3】
【図12−4】
【図12−5】
【図12−6】
【図12−7】
【図12−8】
【図12−9】
【図13−1】
【図13−2】
【図13−3】
【図13−4】
【図13−5】
【図13−6】
【図13−7】
【図13−8】
【図13−9】
【図13−10】
【図13−11】
【公表番号】特表2011−505143(P2011−505143A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536157(P2010−536157)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/084821
【国際公開番号】WO2009/070653
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(593172050)ジ・オハイオ・ステイト・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデイション (33)
【氏名又は名称原語表記】THE OHIO STATE UNIVERSITY RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/084821
【国際公開番号】WO2009/070653
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(593172050)ジ・オハイオ・ステイト・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデイション (33)
【氏名又は名称原語表記】THE OHIO STATE UNIVERSITY RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】
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