説明

マイボーム腺閉塞の溶解

いくつかの実施形態によれば、装置は、電気信号が印加されたときに患者の眼瞼に伝わる熱を発生する加熱素子(42)を備える加熱ユニット(38)を使って、患者の眼瞼の少なくとも一方に調節された熱を与える。温度調節器が、加熱素子(42)の指定温度範囲までの加熱を達成するために加熱素子(42)に電気信号を印加する。この要約は限定的なものとみなすべきではなく、他の実施形態によってはこの要約に記載されている特徴からそれるものもある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連文献の相互参照)
本出願は、2005年7月18日に出願された米国仮出願第60/700233号の優先権の利益を主張する、2006年5月15日に出願された、Korbらの、「Method and Apparatus for Treating Meibomian Gland Dysfunction」という名称の米国特許出願第11/434054号の一部継続出願であり、両出願とも参照により本明細書に組み込まれるものである。
【0002】
また、本出願は、2006年5月15日に出願された、Grenonらの、「Method and Apparatus for Treating Gland Dysfunction Employing Heated Medium」という名称の米国特許出願第11/434033号、および2006年5月15日に出願された、Korbらの、「Method and Apparatus for Treating Gland Dysfunction」という名称の米国特許出願第11/434446号にも関連し、各出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものである。
【0003】
(著作権表示)
本特許明細書の開示の一部は著作権保護の対象となる資料を含むものである。著作権所有者は、本特許明細書または特許開示が米国特許商標局の特許ファイルまたは記録として表示される際には、その複製に異存を唱えるものではないが、それ以外についてはあらゆる著作権を保持するものである。
【0004】
本発明は、一般に、哺乳類の眼の治療に関する。より詳細には、本発明は、それだけに限らないが、特定の閉塞を溶解する熱の使用によりマイボーム腺の閉塞を緩和し、または緩和を助長することを含む、治療のために眼瞼に調節された熱を加えることに関する。
【背景技術】
【0005】
人体はいくつかの腺を含み、その中には眼の涙腺およびマイボーム腺、顔および腋の下の皮脂腺または毛嚢皮脂腺、ならびに乳房の乳腺が含まれる。これらの腺は、年齢、刺激、環境条件、細胞片、炎症、ホルモン失調およびその他の原因により正しく働かないことがある。眼瞼腺の一般的な疾患状態の1つが、閉塞によって引き起こされる腺からの液の自然な流れの制限または停止である。
【0006】
ヒトの眼において、眼球表面を覆う涙液膜は3層で構成されている。眼球表面と接する最内層は多くのムチンで構成される粘液層である。涙液膜の大部分を構成する中間層は水層であり、最外層は、「マイバム」または「皮脂」として知られる多くの脂質で構成された薄層(250nm未満)である。皮脂は、上眼瞼と下眼瞼の両方に位置する拡大された特殊な皮脂性の腺(したがって分泌物を記述するのに「皮脂」を使用)であり、眼瞼縁上に脂質分泌物を排出するようにできている開口部を有するマイボーム腺によって分泌され、涙液膜の脂質層を形成する。典型的な上眼瞼には約25個のマイボーム腺があり、下眼瞼には約20個のマイボーム腺があり、下眼瞼のマイボーム腺は上眼瞼に位置するものより幾分大きい。マイボーム腺は、腺の主中央導管に分泌物を排出する様々な嚢状の腺房を備える。次いで分泌物は、皮脂の滲出を促すと考えられる平滑筋組織とリョラン筋とに取り囲まれた開口部へと進む。マイボーム腺開口部は、粘膜皮膚移行部と呼ばれる眼瞼の内側の粘膜と外側の皮膚の接合部とその周りの眼瞼縁上に開いている。
【0007】
具体的には、上記の特許出願に示されるように、各マイボーム腺には、内面が4つの上皮層で覆われたまっすぐな長い中央導管がある。中央導管の長手方向に沿って、腺の分泌物が生成される、腺房と呼ばれる複数の外側に膨らんだ構造がある。各腺房の内層は、これらの特殊な細胞がマイボーム腺の分泌物を供給するという点で主中央導管とは異なる。分泌物は各腺房から導管に流れる。まだ確定されてはいないが、腺房と中央導管の間には、分泌物が中央導管に排出されるときに必要になるまで分泌を留めておくための弁機構があると考えられる。次いでマイボーム腺分泌物は中央導管に蓄えられ、各腺の開口部を通って眼瞼縁上に放出される。瞬目およびマイボーム腺を取り囲むリョラン筋の圧縮作用が、マイボーム腺からの分泌物の放出のために開口部を開く主要な機構であると考えられる。
【0008】
瞬目は、上眼瞼に、マイボーム腺が分泌する脂質の薄層を、涙液膜の他の2層に被せて引き上げさせ、下にある層が蒸発する速度を抑える一種の保護被覆を形成する。したがって、脂質層が不完全であったり、このような脂質が不適切な量であったりすると、水層の蒸発が促進され、ひいては、「ドライアイ」と総称される、かゆみ、焼灼感、刺激、乾燥といった症状を引き起こす可能性があることが分かるであろう。
【0009】
ドライアイ状態には多くの病因がある。一般のドライアイ状態のよくある原因は、腺が閉塞し、または閉鎖される障害である「マイボーム腺機能不全」(MGD)として知られる状態である。一般のドライアイ状態のよくある原因は、腺が閉塞、または閉鎖される障害である「マイボーム腺機能不全」(MGD)と普通呼ばれる状態である。本明細書で用いる際、「閉鎖される(occluded)」および「閉塞(obstruction)」という用語は、これらがマイボーム腺機能不全に関連するものである場合には、固形の、半固形の、または濃化した凝結分泌物および/または栓を有し、危殆化、より具体的には、分泌物の減少または停止につながる、部分的に、または完全に遮断され、または詰まったマイボーム腺、またはマイボーム腺の任意の構成部分と定義される。また、分泌が減少し、または制限されると、マイボーム腺は、感染状態の疑いを示す黄ばみによって示されるように、閉鎖もしくは閉塞状態によって障害を来たし、または別の原因で障害を来たし、結果として保護脂質保護膜が不十分になることもある。
【0010】
マイボーム腺炎は、マイボーム腺の機能不全をもたらすマイボーム腺の炎症であり、普通は眼瞼炎(眼瞼の炎症)を伴う。マイボーム腺機能不全がマイボーム腺炎を伴うこともあり、マイボーム腺機能不全が明らかな眼瞼炎症を伴わずに発症することもある。マイボーム腺機能不全は、マイボーム腺開口部および/もしくは腺の中央導管(管(canal))、または場合によっては腺房または腺房弁(これらが実際に存在するものとして)または腺房の中央導管との接合部を部分的に、または完全に遮断する角化性閉塞の結果であることが多い。このような閉塞は個々のマイボーム腺の分泌機能を低下させる。より詳細には、これらの角化性閉塞は、細菌、皮脂性基質、死んだ細胞および/または剥離した上皮細胞からなる。Korbら、「Meibomian Gland Dysfunction and Contact Lens Intolerance」、Journal of the Optometric Association、第51巻、第3号、1980年、243−251頁参照。マイボーム腺炎は外眼瞼の視診により明らかになるが、重症の閉塞性マイボーム腺機能不全ですら、細隙生体顕微鏡で拡大して調べたときでさえ見つからないこともある。これは外見的徴候がなく、または外見的徴候がごくわずかであるために見落とされることがあるからである。明白な眼瞼炎症のない閉塞性マイボーム腺機能不全の外見的徴候は、マイボーム腺開口部の細かい変化、開口部を覆う眼瞼縁の上皮の過成長、閉塞として作用する凝固物質による腺の開口部の突出だけに限られ得る。明白な眼瞼炎症のない閉塞性マイボーム腺機能不全の重症例では、変化がはっきり分かることもあり、これらの変化には、鋸歯状または波状の眼瞼縁、開口部後退および開口部を覆う上皮のより明白な過成長、ならびに開口部の突出が含まれる。
【0011】
閉経時に、特にエストロゲンレベルが変化する間に生じるホルモンの変化は、結果として腺開口部に目詰まりを生じさせる、マイボーム腺の分泌する油の濃化を生じさせることになり得る。さらにエストロゲンレベルの減少は、ブドウ球菌が増殖し得る条件も増大させる。これは、細菌を腺内へ移動させ、分泌速度の減少をもたらす結果になり得る。
【0012】
閉塞が存在するためにマイボーム腺からの分泌物の流れが制限されると、眼瞼縁上の細胞が腺開口部を覆って成長し、皮脂の流れをさらに制限し、ドライアイ状態を悪化させることが観察されている。マイボーム腺機能不全を生じさせ、または悪化させる別の要因には、年齢、瞬目の障害、正常な瞬目を弱めるコンピュータの使用などの行動、コンタクトレンズの装着および衛生、化粧品の使用、またはその他の病気、特に糖尿病が含まれる。
【0013】
個々のマイボーム腺の状態は、澄んだマイボーム腺液が生成される最適状態から、乳状液または濃縮した、もしくはクリーム状の分泌物が生成される軽度または中程度のマイボーム腺機能不全、どんな種類の分泌物も得られない完全な遮断まで様々である(Korbら、「Increase in Tear Film Lipid Layer Thickness Following Treatment of Meibomian Gland Dysfunction」、Lacrimal Gland,tear Film,ad Dry Eye Syndromes、293−298頁、D.A.Sullivan編、Plenum Press、ニューヨーク(1994)参照)。マイボーム腺機能不全と共にマイボーム腺分泌物の大きな化学変化が生じ、結果的に、自然に発生する涙液膜の組成が変化し、それがさらに、「ドライアイ」と一般に呼ばれる眼病の原因となる。
【0014】
涙液膜は個々の実在として機能し、涙液膜の各層はすべて重要であるが、マイボーム腺から分泌される脂質層は特に重要である。これは脂質層が下にある層の蒸発を緩慢にし、瞬目時に眼瞼を潤滑し、これがドライアイを防ぐからである。
【0015】
したがって、要約すると、哺乳類(ヒトなど)の眼瞼のマイボーム腺は、涙液膜の蒸発を防ぎ、眼と眼瞼に潤滑作用を与える油を分泌する。これらの腺は様々な機構により遮断されたり、詰まったりして、いわゆる「ドライアイ症候群」になる可能性がある。唯一の原因ではないが、マイボーム腺機能不全(MGD)は、ドライアイ症候群の主要な原因であることが知られている。この障害は、マイボーム腺内の、またはマイボーム腺の表面における、正常な脂質分泌物がマイボーム腺から流れて涙液膜の脂質層を形成するのを妨げるある種の障害物を特徴とする。
【0016】
このような分泌物は、涙液膜の蒸発を防ぎ、眼および眼瞼を潤滑するように働き、よってこの分泌物がないとドライアイ症候群を引き起こし得る。マイボーム腺の閉塞または閉鎖は、腺の開口部の上もしくは開口部に、狭められたり遮断されたりしている腺の主導管内に、または場合によっては、腺房から主導管に至る通路を含む別の箇所に存在する。
【0017】
マイボーム腺の腺房は、腺房と腺の主導管との接合部に弁を備えるという学説が唱えられている。本発明者らは、これらの弁が存在するのであれば、理論上、これらの弁も場合によってはやはり閉塞し、腺房からの流れが低減され、または遮断されることにつながると考える。これらの閉塞または閉鎖は様々な成分を有し得る。
【0018】
以上の状況に対応して、ドライアイ状態を治療するための様々な治療モダリティが開発されており、これには、自然の涙液膜を複製し、置き換えるための滴剤、涙を作り出す細胞を刺激するための医薬、マイボーム腺の詰まりの除去を促すように設計された様々な加熱装置が含まれる。別の技法には腺を手で圧搾することが含まれる。
【0019】
Refresh(R)、Soothe(R)、およびSystane(R)といったブランドの点眼剤は、自然に発生する健康な涙液膜を厳密に複製するように設計されている。しかし、これらの点眼薬の使用および投与は、単に症状に対する処置にすぎず、根本原因に対処するものではない。さらに、滴剤の使用は一般に不確定な期間にわたるものであり、結果的に、長期間にわたる使用が煩わしく、高くつくものになり得る。
【0020】
また、マイボーム腺機能不全を治療するためのテトラサイクリンの使用など、薬剤のモダリティも提示されており、そのような治療の1つが、「Method for Treating Meibomian Gland Disease」という名称の米国特許公開第2003/011426号明細書、Pflugfelderらの、「Method for Treating Meibomian Gland Disease」という名称の米国特許第6455583号明細書、および「Use of Tetracyclines for Treating Meibomian Gland Disease」という名称の国際公開第99/58131号パンフレットに開示されている。しかし、この治療は、普遍的な臨床的有効性を有することが証明されておらず、マイボーム腺機能不全が、感染を伴わない腺の閉塞の結果である場合には不必要である。また、マイボーム腺機能不全を治療するためのコルチコステロイドも提案されており、Pflugfelderらの、「Non−preserved Topical Corticosteroid for Treatment of Dry Eye,filamentary Keratitis,and Delayed Tear Clearance(or Turnover)」という名称の米国特許第6153607号明細書に開示されている。この治療案もやはり、根本原因への対処ではなく、ドライアイの症状を治療するものと見受けられる。加えて、乾性角結膜炎における急性のドライアイの徴候および症状を治療するための局所的に用いられるアンドロゲンまたはアンドロゲン類似体の使用も行われており、これは米国特許第5958912号明細書および米国特許第6107289号明細書に開示されており、どちらも「Ocular Therapy in Keratoconjunctivitis Sicca Using Topically Applied Androgens or TGF−β」という名称で、Sullivanに特許されたものである。
【0021】
大部分の知識を有する医者らは、MGDを治療するに際して加熱が有益であることを認めている。閉塞の性質によっては、加熱は、閉塞物質を実際に融解し、または緩ませ、腺により自由な脂質およびその他の液の生成および排出を始めさせるのに有益である。しかし目下のところ、眼瞼に局所的加熱を行い、加えられる熱の量を制御する適切な方法は商品化されていない。
【0022】
マイボーム腺機能不全の加熱治療の1つのモダリティが、「Eyelid Margin Wipes Comprising Chemical Means for Temperature Adjustment」という名称の、PCT出願第PCT/GB2003/004782号明細書に開示されている。この特許出願に開示されているように、拭き取り手段が設けられ、使用前に、拭き取り手段を約32℃から約40℃まで加熱する化学薬品が活性化される。次いで高温の拭き取り手段が眼瞼に当てられ、次いで手で圧搾することにより導管の詰まりを除くことができる。この方法にも、非特異的加熱により眼瞼刺激を悪化させる可能性があるという点で欠陥がないわけではない。
【0023】
眼瞼およびマイボーム腺を加熱する別の方法は近赤外線(NIR)放射を使用する。より具体的には、2つの硬い眼帯が被験者の瞳孔間距離に従ってアイマスクに取り付けられた。アイマスクは弾性ヘッドバンドで所定の位置に保持された。各眼帯は、940nmをピークとする850nmから1050nmまでの近赤外線放射を発する19個の発光ダイオードを用いた。この装置は電力で動作する10mW/cmのエネルギーを生成した。Goto,E.ら、「Treatment of Non−Inflamed Obstructive Meibomian Gland dysfunction by an Infrared Warm Compression Device」、British Journal of Ophthalmology、第86巻、2002年、1403−1407頁参照。この装置はIR発光ダイオードを使った非接触赤外線加熱マスクとして設計されている。しかし、赤外線加熱機構の使用には多くの潜在的な問題がある。例えば、IR加熱は眼瞼の奥の角膜まで貫通するおそれがあり、これは有害であり、究極的には、白内障やその他の損傷を引き起こす可能性もある。加えて、IRマスク加熱器は、(加圧装置と記載されているにもかかわらず)本発明者らが障害物を除去するのに有用であると判断している眼瞼に対する圧力を何ら加えるものではない。しかも、このマスクのサンプルに対して行われた試験によれば、潜在的な危険にもかかわらず、マスクは実際にはごくわずかな熱しか生じないことが明らかになった。
【0024】
「Therapeutic Eye and Eye Lid Cover」という名称の、米国特許公開第2004/0237969号明細書には、やはりマイボーム腺を加熱するために、眼瞼、また特にマイボーム腺に加熱された飽和空気を送出するように構成された保護眼鏡が含まれている。また、眼の加熱治療については、Mitraらより、Eye(2004年)の1−4頁に発表された、「Tear Film Lipid Layer Thickness and Ocular Comfort after Meibomian Therapy via Latent Heat with a Novel Device in Normal Subjects」という名称の論文でも論じられている。
【0025】
Yeeの、「Method and Apparatus for Preventing and Treating Eyelid Problems」という名称の、米国特許公開第2003/0233135号明細書では、本発明でマイボーム腺分泌物の滲出を促すものと想定しているリョラン筋の電気刺激によってマイボーム腺の詰まりを除去しようと試みている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許公開第2003/011426号明細書
【特許文献2】米国特許第6455583号明細書
【特許文献3】国際公開第99/58131号パンフレット
【特許文献4】米国特許第6153607号明細書
【特許文献5】米国特許第5958912号明細書
【特許文献6】米国特許第6107289号明細書
【特許文献7】PCT出願第PCT/GB2003/004782号明細書
【特許文献8】米国特許公開第2004/0237969号明細書
【特許文献9】米国特許公開第2003/0233135号明細書
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】Korbら、「Meibomian Gland Dysfunction and Contact Lens Intolerance」、Journal of the Optometric Association、第51巻、第3号、1980年、243−251頁
【非特許文献2】Korbら、「Increase in Tear Film Lipid Layer Thickness Following Treatment of Meibomian Gland Dysfunction」、Lacrimal Gland,tear Film,ad Dry Eye Syndromes、293−298頁、D.A.Sullivan編、Plenum Press、ニューヨーク(1994)
【非特許文献3】Goto,E.ら、「Treatment of Non−Inflamed Obstructive Meibomian Gland dysfunction by an Infrared Warm Compression Device」、British Journal of Ophthalmology、第86巻、2002年、1403−1407頁
【非特許文献4】Mitraら、「Tear Film Lipid Layer Thickness and Ocular Comfort after Meibomian Therapy via Latent Heat with a Novel Device in Normal Subjects」、Eye、2004年、1−4頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明と一致するいくつかの実施形態の目的は、哺乳類の眼瞼の調節された選択的加熱の方法および/または装置を提供することである。
【0029】
本発明と一致するいくつかの実施形態の別の目的は、マイボーム腺内またはその周囲にある特定の種類の閉塞の除去を助長するために、片眼または両眼の上眼瞼および/または下眼瞼のマイボーム腺を加熱するのに適した方法および/または装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明と一致する一実施形態では、哺乳類の眼瞼の治療のために調節された熱を供給する装置は、電気信号が印加されたときに熱を発生する加熱素子を備える加熱ユニットを備える。温度調節器が、加熱素子の指定温度範囲までの加熱を達成するために加熱素子に電気信号を印加する。眼瞼接触機構が、指定温度範囲内の眼瞼の調節された加熱を達成するために眼瞼に加熱ユニットを結合している。
【0031】
別の実施形態と一致するように患者の眼瞼の少なくとも一方に調節された熱を供給する装置は、電気信号が印加されたときに熱を発生する第1の面および第2の面を備える加熱素子と、加熱素子から眼瞼に熱を伝えるために加熱素子の第1の面に結合された熱ヒートシンクと、第2の面からの熱損失を低減するために加熱素子の第2の面に結合された断熱材と、断熱材に結合している背板とを備える加熱ユニットを備える。温度調節器が、加熱素子の指定温度範囲までの加熱を達成するために、加熱素子に電気信号を印加する。患者の頭部に取り付け、患者の眼瞼を、ねじ穴が開けられたレンズピースで覆うのに適した保護眼鏡が設けられる。眼瞼との接触が達成されるまでシャフトを穴にねじ込むことにより加熱ユニットを移動させて眼瞼と接触させることができるように、ねじ付きシャフトがねじ付きレンズピースを貫通して背板のところで加熱ユニットに結合している。
【0032】
別の実施形態では、患者の眼瞼の少なくとも一方に調節された熱を供給する装置は、電気信号が印加されたときに患者の眼瞼に伝わる熱を発生する加熱素子を備える。温度調節器が、加熱素子の指定温度範囲までの加熱を達成するために加熱素子に電気信号を印加する。いくつかの好ましい実施形態では、加熱素子は抵抗加熱素子である。
【0033】
これらの実施形態では、それだけに限らないが、温度を感知し、温度調節器に温度情報を提供するセンサを設けることを含めて、多くの変形が可能である。ある実施形態では、眼瞼接触機構は、眼瞼との接触を達成するよう加熱ユニットを移動させるために加熱ユニットに調整可能に結合された保護眼鏡を備える。保護眼鏡は、ねじ込み操作によって加熱ユニットの位置を調整することができるように、ねじ込み接続によって加熱ユニットに調整可能に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、加熱ユニットは、加熱素子から眼瞼に熱を伝えるために加熱素子の表面に結合された熱ヒートシンクを備える。熱ヒートシンクは、例えば、熱伝導ゴム部材、熱伝導シリコン部材、カプセル化流体含有部材、および固体伝導部材のうちの少なくとも1つとすることができる。熱ヒートシンクから眼瞼への熱伝導を改善するために、ヒートシンクと眼瞼の間に熱伝導ゲル、クリームまたは液体を配置することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、加熱ユニットは、眼瞼に向かう方向以外の方向への加熱ユニットからの熱損失を低減するために加熱素子の表面に結合された断熱材を備える。断熱材は、いくつかの実施形態では、非熱伝導発泡エレメント、非熱伝導ゴムエレメント、および非熱伝導固体エレメントのうちの1つとすることができる。温度調節器は、加熱素子によって発せられる熱を調節するために加熱素子にパルス幅変調電気信号を印加し、パルス幅変調電気信号は制御プロセッサの制御下で生成される。
【0035】
いくつかの実施形態では、温度調節器は、加熱素子によって発せられる熱を調節するために加熱素子に電気信号を選択的に印加するスイッチを組み込んでもよい。電気信号は、制御プロセッサの制御下で加熱素子に選択的に印加される電流または電圧のうちの少なくとも1つとすることができる。加熱ユニットは、眼瞼に適合するように眼瞼と接する柔軟な部分を有していても、眼瞼の形状に適合するように成形された眼瞼と接する硬い部分を有してもよく、両者の組み合わさったものでもよい。加熱ユニットは、加熱ユニットを眼瞼に直接取り付けるための接着剤を有してもよく、接着テープを使って眼瞼に取り付けられてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、ユーザインターフェースで、ユーザに治療の時間と温度の少なくとも一方を設定することを可能にさせる。いくつかの実施形態では、機械エネルギー発生器が、マイボーム腺からの分泌を刺激するための眼瞼の振動、脈動、および/または搾り出し動作を発生させ、振動発生器は眼瞼に、振幅と振動数の両方を有する機械エネルギーを与える。
【0037】
いくつかの実施形態では、指定温度範囲は37℃超であり、より好ましくは、約45℃を目標温度とする44℃から47℃までである。いくつかの実施形態では、指定の治療時間の後、タイマが加熱素子への信号を遮断する。治療時間は、例えば約10分から60分とすることができ、好ましくは約15分である。いくつかの実施形態では、圧力センサが、加熱ユニットが眼瞼に当てられる際の圧力を測定する。
【0038】
いくつかの実施形態と一致するように調節された熱を用いて患者の眼瞼の少なくとも一方において治療を行う方法は、患者の眼瞼と接する加熱素子を備える加熱ユニットを配置すること、および加熱素子に制御信号を印加して加熱素子において熱を発生させ、規定の期間にわたって眼瞼に生成された熱を伝えることを伴う。
【0039】
いくつかの実施形態では、方法はさらに、規定の期間の満了後に制御信号を除去することを伴う。いくつかの実施形態では、方法はさらに、加熱素子を含む調整可能な眼接触部(eye interface)を備える保護眼鏡を患者に取り付けること、および眼瞼との接触を達成するように眼接触部を調整することを伴う。いくつかの実施形態では、方法はさらに、接着テープのストリップを使ってアイピースを患者の眼瞼にテープ止めすることを伴う。いくつかの実施形態では、方法は、医療用両面接着テープを使って、または別の形の接着材を使って患者の眼瞼にアイピースを取り付けることを伴う。いくつかの実施形態では、熱は約摂氏40°から50°まで発せられる。いくつかの実施形態では、患者の眼瞼に振動が加えられる。いくつかの実施形態では、規定の期間は約10分から60分である。方法は、片眼または両眼の上眼瞼、下眼瞼またはその両方に適用することができる。いくつかの実施形態では、方法はさらに、加熱ユニットが眼瞼と接する際の圧力を測定することを伴う。プログラムされたプロセッサ上で実行されると、これらの方法のいずれかの適切な部分を実行する命令を、有形のコンピュータ可読記憶媒体が格納してもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、哺乳類の眼瞼を治療する方法は、眼瞼を加熱し、少なくとも4分以上60分未満にわたって規定の温度を維持し、同時に眼瞼に機械エネルギーおよび圧力を加えることを伴う。別の実施形態では、少なくとも1つの哺乳類の眼瞼を治療する方法は、60分未満の期間にわたって少なくとも1つの哺乳類の眼瞼に持続的な調節された熱を加えること、およびマイボーム腺閉塞を除去するために、加熱時に、または加熱後3分以内に眼瞼に力を加えることを伴う。
【0041】
以上の目的および概要は、以下の詳細な説明と併せて読めば十分に理解される例示的実施形態を示すためのものであり、添付の特許請求の範囲の適用範囲または意味を限定するためのものではなく、特許請求の範囲は、本明細書および図面全体の全教示に鑑みて解釈されるべきである。複数の例示的、非限定的な実施形態の例を使用して本発明の教示を考察すれば、当業者には、他の多くの変形が想起されるであろう。
【0042】
構成および操作方法を、目的および利点と共に示すいくつかの例示的実施形態は、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて参照すれば、十分に理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】マイボーム腺を示すヒトの上眼瞼と下眼瞼を描いた図である。
【図2】マイボーム腺20の例を示す切断図である。
【図3】いくつかの目詰まりした機構を示すマイボーム腺20の切断図である。
【図4】時間に対して温度を示すグラフである。
【図5】時間に対して内眼瞼と外眼瞼の温度を示すグラフである。
【図6】本発明のいくつかの実施形態と一致する眼瞼加熱回路を示すブロック図である。
【図7】本発明のいくつかの実施形態と一致する眼瞼加熱回路の別の実施形態を示すブロック図である。
【図8】本発明のいくつかの実施形態と一致するような眼瞼に熱療法を施すための保護眼鏡組部品を示す図である。
【図9】本発明のいくつかの実施形態と一致するような保護眼鏡レンズピースへのねじ込み相互接続を有する眼瞼接触組部品(eyelid interface assembly)の第1の実施形態を示す図である。
【図10】本発明のいくつかの実施形態と一致するような眼瞼接触組部品で使用される圧力測定機構の第1の実施形態を示す切断図である。
【図11】本発明のいくつかの実施形態と一致するような眼瞼接触組部品で使用される圧力測定機構の第2の実施形態を示す図である。
【図12】本発明のいくつかの実施形態と一致するような眼瞼接触組部品で使用される圧力測定機構の第3の実施形態を示す図である。
【図13】本発明のいくつかの実施形態と一致するような保護眼鏡レンズピースへのねじ込み相互接続を有する眼瞼接触組部品の第2の実施形態を示す図である。
【図14】本発明のいくつかの実施形態と一致する眼瞼加熱組部品を示す図である。
【図15】本発明のいくつかの実施形態と一致する別の眼瞼加熱組部品を示す図である。
【図16】本発明のいくつかの実施形態と一致する別の眼瞼加熱組部品を示す図である。
【図17】本発明のいくつかの実施形態と一致するような振動子制御を組み込んだ眼瞼加熱組部品の一実施形態の例を示す図である。
【図18】本発明のいくつかの実施形態と一致する加熱素子制御装置を示すブロック図である。
【図19】本発明のいくつかの実施形態と一致する別の加熱素子制御装置を示すブロック図である。
【図20】本発明のいくつかの実施形態と一致するような振動子制御を組み込んだ別の加熱素子制御装置を示すブロック図である。
【図21】本発明のいくつかの実施形態と一致する加熱素子の一実施形態を示す図である。
【図22】本発明のいくつかの実施形態と一致する加熱素子の別の実施形態を示す図である。
【図23】本発明のいくつかの実施形態と一致する治療過程を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は多くの異なる形の実施形態を可能とするが、本開示のこのような実施形態は、原理の一例とみなすべきであり、本発明を図示し、説明する特定の実施形態だけに限定するためのものではないという了解の下で、特定の実施形態を図面に示し、本明細書で詳細に説明するものである。以下の説明では、図面のいくつかの図において同じ、類似の、または対応する部分を示すのに類似の参照符号を使用する。
【0045】
「複数の(plurality)」という語は、本明細書で使用する場合、「2以上」であると定義される。「他の(another)」という語は、本明細書で使用する場合、「少なくとも1つの第2のまたはそれ以上の」であると定義される。「含む(including)」および/または「持つ(having)」という語は、本明細書で使用する場合、「有する(comprising)」(すなわち排他的でない語法)であると定義される。「結合された(coupled)」という語は、本明細書で使用する場合、「接続された」であると定義されるが、必ずしも直接接続されるとは限らず、必ずしも機械的に接続されるとも限らない。「プログラム(program)」または「コンピュータプログラム(computer program)」という語または類似の用語は、本明細書で使用する場合、「コンピュータシステム上で実行するために設計された命令シーケンス」であると定義される。「プログラム」または「コンピュータプログラム」には、サブルーチン、関数、プロシージャ、オブジェクトメソッド、オブジェクトインプリメンテーション、実行可能アプリケーション、アプレット、サーブレット、ソースコード、オブジェクトコード、共用ライブラリ/動的ロードライブラリおよび/またはコンピュータシステム上で実行するために設計されたその他の命令シーケンスが含まれ得る。
【0046】
本明細書全体を通じて、「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「1つの実施形態」または類似の語句に言及する場合、それは、実施形態と関連して記述される特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味するものである。したがって、本明細書全体の様々な箇所においてこのような語句が現れる場合、それらは必ずしもすべて同じ実施形態を指すものであるとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において無制限に任意の適切な方法で組み合わされてもよい。
【0047】
本明細書で使用する「または(or)」という語は、包含的であり、またはいずれか1つもしくはいずれかの組み合わせであるものとして解釈すべきである。したがって、「A、BまたはC」とは、「A;B;C;AおよびB;AおよびC;BおよびC;A、BおよびCのうちのいずれか」を意味する。この定義の例外は、要素、機能、ステップまたは動作の組み合わせが、何らかの形で、本質的に相互に排他的であるときに限って生じるものである。
【0048】
前述のように、マイボーム腺機能不全(MGD)はドライアイ症候群の主要な原因であることが知られている。障害は、正常な脂質分泌物が流れ出るのを妨げるマイボーム腺内のある種の遮断を特徴とする。マイボーム腺の閉塞または閉鎖は、腺の開口部を覆って、または開口部に存在することも、狭められ、または遮断された腺の主導管内に存在することも、場合によってはその腺房から主導管までの通路を含む他の位置に存在することもある。
【0049】
マイボーム腺の腺房は、腺房と腺の主導管との接合部に弁を備え、これらの弁が、場合によっては閉塞して腺房からの流れが減少し、または遮断されることにつながることもあるという学説が唱えられている。これらの閉塞または閉鎖は様々な組成を有し得る。
【0050】
次に図1を参照すると、マイボーム腺10の位置が、それぞれ上眼瞼12と下眼瞼14とに示されている。簡単に前述したように、上眼瞼は約25個のマイボーム腺を含み、下眼瞼は約20個のマイボーム腺を含むが、かなりのばらつきがある。図2の1つの腺10の横断面図に示すように、各腺は、分泌物が腺房19から流れ込む中央導管または管18と、眼瞼縁状に開いており、瞬目時に分泌物がそこから流れ出て涙液膜に加えられる開口部20とを含む。各腺は、眼瞼内の位置に応じてサイズが異なり、開口部20は中央導管18より狭いことが分かる。開口部は開口であり導管や管ではない。開口部は普通閉じられている。すなわち、開口部または開口は、流体または分泌物を通す他の開口と似たものであり、排出のために開かれるまで閉じたままである。よって技術的には、開口部に近接した導管は主導管より狭い。
【0051】
閉塞組成は、閉塞を生じされた病因により異なる。しかし閉塞は、現在まで観察された大部分の症例において、死んだ細胞、細菌、剥離した細胞、角化性集塊として凝集した剥離細胞、乳状液、濃縮した、もしくはクリーム状の分泌物の組み合わせ、または固形、半固形、および濃化した形でのこれらの任意の組み合わせである。図3を参照すると、腺10に対する閉塞の例の簡略化した図が示されている。この例は、前述のように必ずしもあらゆるマイボーム腺閉塞を代表するものではないが、腺10の開口部20に至る導管を完全に閉鎖している、固形または半固形または濃化した栓24が描かれている。別の閉塞26が、腺房の1つからの中央導管との接合部に示されている。前述のように、これは腺構造内の弁の部位とすることができるが、本発明と一致する実施形態は、実際のマイボーム腺構造の学説に限定されるべきではない。
【0052】
これらの腺を正常な機能に回復させるいくつかの治療法が提案されているが、ほとんどの医師は、MGDの治療に際して加熱が有益であることを認めている。閉塞の性質によっては、加熱は、閉塞物質を実際に溶解し、または緩ませ、腺により自由に脂質およびその他の流体の生成および排出を開始させるのに有益となる。しかし、眼瞼に局所的な熱を加え、加えられる熱の量を調節するのに適した方法はまだ示されていない。
【0053】
眼瞼に熱を加える1つの治療方法は温水圧を使用するものである。代替として、ちょうどビーンバッグ(bean bag)のように材料を包被に入れた小型の温熱塊(米や亜麻仁など)を使用することもできる。その場合これらのビーンバッグは、電子レンジで加熱し、眼瞼に当てることができる。
【0054】
これらの技法は、眼瞼に局所的な熱を加えるのに十分満足のいくものではない。温湿布は眼瞼と比べてサイズが大きい。また温湿布は不潔で、制御されず、時間もかかる。さらに、大きなサイズの温湿布により生じる眼瞼を取り囲む領域の加熱が、処置を不快にし、場合によっては不潔で逆効果になることさえある。
【0055】
また、眼瞼だけの局所的加熱が眼瞼と眼瞼を取り囲む顔面の両方を加熱するよりも有益であるという学説も唱えられている。眼瞼の外部の領域を加熱することにより、顔のより多くの血管が拡張され、眼瞼および周囲の領域への血流が理論的には増大することになる。残念ながらこの増大した血流は、血流を介した熱対流によって眼瞼の温度を下げる傾向になる。これは、身体が自然に眼瞼の温度を調節しようとするものである。眼瞼を通常の体温より高い一定の治療温度に保持することが望ましいため、その結果当然ながら、大きな領域を加熱すれば、より多くの血管が拡張され、より多くの血液が流れ、よって温度を上げるのにさらに多くの熱を必要とすることになるため、ことによると逆効果になる。
【0056】
温湿布およびビーンバッグは、その性質により、適切な温度制御ができない。したがって、患者ごとおよび当てるごとにこれらの湿布の温度は変動する。これは、温度が熱すぎる場合には、患者にとって潜在的に危険または不快であり、温度が低すぎる場合には、効果がなくなる可能性がある。さらに悪いことには、湿布は、眼瞼上に置かれるや否や冷却し始め、効果がなくなる前のごく短期間しか治療温度範囲にとどまらず、おそらくは、眼瞼から熱を吸い取る働きさえすることがある。
【0057】
問題を回避する1つの方法は、「ビーンバッグ」の内部に入れられ、電子レンジで加熱される小型の共形の温熱塊を使用するものである。一例は、この目的で布袋に入れた米を使用するものである。これは温湿布より清潔ではあるが、乾熱における熱伝達は湿熱における熱伝達よりずっと低いため、やはり効果が低い。これは、加熱器と加熱される表面の間に溜まった空気が、非常に良好な熱伝達をもたらした流体境界と比べて、断熱材として働くことによるものである。加えて、これらの装置は熱伝達を装置の温熱塊に依存するため、装置が小さいほど、装置から吸い取られる熱も少なくて済む。したがって、定義によれば、当てる前に加熱されるどんな装置も、装置が実質的に冷却する前に眼瞼温度を上げるのに必要とされる温熱塊を収容するために、相当に大きなサイズを有する必要がある。
【0058】
いくつかの実施形態によれば、眼瞼に当てられる面は、加熱装置と眼瞼の間の水分の膜を維持する特性を有することが好ましい。したがって、ヒートシンクは、好ましくは、眼瞼への熱伝達にさらに円滑化するために眼瞼接触部のところに水分を維持する。
【0059】
図4に、この問題を時間に対する温度のグラフとして示す。治療温度範囲は37℃超と決定されている。約44℃から47℃までの範囲が最も好ましい。これは、一般に温度が50℃に近づくと人間にとって耐えがたくなり、不必要な痛みまたは軽度の火傷を引き起こし得るからである。提案する目標治療温度は、(快適さと効能の間の適正なバランスを示す)曲線25で示すように45℃である。曲線25は、指定の治療時間にわたる比較的一定の45°の治療温度を示している(例えば本発明と一致する実施形態では、10分から20分が好ましく、軽度から中程度MGDを示す大部分の患者には目下のところ15分が適正な指定時間とみなされている)。より重症のMGDでは、約30分から45分までがより有効であることが分かっている。極めて重症のMGDでは、約30分から60分がより有効である。これらの時間は約摂氏45度の温度でのものであり、他の温度ではおそらく増大または低減し得る。試験では、一般に、10分から60分までの範囲が有効である。
【0060】
温湿布またはビーンバッグ装置が使用されるとき、結果は曲線28および曲線30のようになり、曲線28は、傷害を生じることさえある、治療温度範囲より高い、場合によっては不快な温度レベルから開始し、直ちに温度が降下し始め、急速に治療温度範囲より下になる。湿布が冷たすぎると考えられると、新しい湿布またはビーンバッグが使用され、結果として熱源が交換される際に短時間のギャップを生じ、次いで温度曲線30が続く。やはりこの曲線も治療温度範囲の上から開始し、最終的には治療温度範囲より下になる。図5に示す持続的な調節された熱源を用いて加熱される間の眼瞼温度上昇時間の試験測定は、温湿布またはビーンバッグ装置が、少なくとも約4分間にわたって治療温度範囲内の温かさのままである必要があることを示している。温湿布またはビーンバッグ装置が再加熱のために眼瞼から外された場合、眼瞼温度は非常に急速に、通常は90秒以内に(おそらくはほぼ30秒以内に)体温まで降下し、よって眼瞼を温湿布ではじめから温め直すことが必要になる。明らかにこの方法はきわめて効率が悪く、眼瞼温度を、必要とされるより高い治療レベルまで上げ、これを維持する見込みがほとんどない。
【0061】
これらの腺を正常な機能に回復するためのいくつかの治療法が提案されているが、ほとんどの医師は、MGDを治療する際に加熱が有益であることを認める。閉塞の性質によっては、加熱は、閉塞物質または閉塞を形成する固体粒子を結合する物質を実際に溶解し、または緩ませ、腺により自由に脂質およびその他の流体の生成および排出を開始させるのに有益となる。本明細書の背景の項で述べた加熱治療法には多くの欠陥があることが分かっているが、上記参照の同時係属出願に記載されている加熱法は、有効であり、有益であることが分かっている。一般にこれらの装置は、(眼瞼の外面において測定される)眼瞼の調節された加熱を、摂氏40度から50度まで、より好ましくは、摂氏45度を目標温度とする約摂氏44度から47度の治療温度まで生じさせる。
【0062】
ヒトの眼瞼の外皮表面は、若干の変動はあるが、体温より約摂氏1から2度ほど冷たいことが観測されている。温度を少なくとも37度まで上げれば、MGDの軽度の症例に治療効果を与え始めることができる。治療に好都合な範囲の1つは摂氏44度から47度までであり、摂氏45度の目標温度が有効であり、患者にとって快適であることが分かっている。いくつかの実施形態では、閉塞の流動状態をさらに維持するために、期間中、または期間の終了直後に、好ましくは加熱された器具を用いて機械的処置が実行される。特に眼瞼が麻酔下にある場合には、さらに高い温度(摂氏50から55度など)を使用する(またはより短い期間にわたって間欠的に加える)こともでき、その場合には、患者に永久的な損傷を与えずに、より短期間にわたるずっと高温の処置を用いることができる。一般に、より高い温度は、より短い期間にわたって使用することができる。さらに、使用される温度と時間は、状態の重症度および患者の許容度に応じて個別化されるべきである。肌の色の白い患者は、一般に、肌の色の黒い患者よりも熱に対する耐容性が低いと考えられ、肌の色の黒い患者は、熱への暴露の結果として炎症を生じにくい傾向があることが分かっている。処置時間および/または温度は、これらの違いに対応するように調整することができる。上記の温度はそれぞれ眼瞼の外面において測定される温度を指す。
【0063】
また、いくつかの実施形態では、患者は、処置が低い温度で開始し、時間の経過と共に温度が上げられると、より快適に感じる。したがって温度は調節されるべきであり、その場合の調節とは、持続的加熱の量が、自動化され、制御された、反復可能な方法で、増大され、および/または低減され、眼瞼に送出され得ることを意味するものと解釈すべきである。したがって追加加熱を随意に加えることができる。加熱の温度プロファイルは、一定の温度とすることもでき、増加、減少、最高値、最低値を有してもよく、間欠的に加えることもでき、様々な特性などを用いて調節することもできるが、そのようなプロファイルは反復可能であるように調節されるべきである。また、温度を調節すると、一定の温度よりも高い平均温度を生じる可能性があり、用途によっては有用であることも分かっている。
【0064】
この温度は、約10分から60分の処置期間にわたってある処置温度に維持することができる(または患者によっては、これを超える期間でさえも安全であり、有益であることが分かっている)。調節された熱によるこのような処置の間、または処置後に、マイボーム腺からの脂質およびその他の流体を機械的に搾り出すことにより、(固形物を相互に結合している物質の溶解により)事実上溶解し、または懸濁状態に置かれている閉塞が除去されることが分かっている。上記の出願には、眼瞼に広く搾り出し作用を加えて、流体もしくは懸濁液を滲出させ、または、閉塞もしくは閉鎖を生じさせる溶解した、もしくは懸濁した物質を含む腺からの流体の動きを別の方法で機械的に刺激する装置が開示されている。場合によっては、眼瞼に連続して適度な力を加えるだけで、流体および懸濁液の滲出を助長することもあり、加熱と同時に、または加熱の直後に振動を使用することもできる。本明細書では、「溶解した(melted)」という語は、固体粒子が液体流体内に懸濁して残存している状態を含むものと解釈すべきである。
【0065】
次に図5を参照すると、グラフには、約摂氏45度の一定の熱源が被験者である患者に加えられたときの眼瞼の内面と眼瞼の外面が示されている。加熱器は時刻0:00に電源がオンにされ、時刻8:00(8分後)にオフにされる。循環系が眼瞼の温度を調節しようとし、加熱に伴って血流が増大することに留意すべきである。この患者では、眼瞼の外面が約摂氏45度に達するのに約4分かかり、眼瞼の内面は、おそらくは身体の熱調節機構のために、この温度には全く到達しなかった。したがって、45度の一定の熱源が使用される場合、眼瞼が治療温度に達するには、少なくとも約4分を要する。
【0066】
またこのグラフからは、眼瞼から熱源が外されると、温度が体温まで急速に降下することも分かる。ほとんどいかなる場合にも温度は2から3分以内に降下し、より一般的には、患者の眼瞼温度が降下するのには約30秒から90秒しかかからない。この例では、温度は、熱除去後の最初の30秒間にわたって急速に降下した。この短期間の間に、溶解した閉塞の一部または全部が再凝結し得る。したがって、加熱に続いて手搾り法が実行される場合、手搾りは、直後に、もしくは約90秒以内に行われるべきであり、間隔は、30秒以内など、より短い方が好ましい。よってこのグラフからは、温湿布を使った従来の技法が、その後極めて短期間の間に手搾りが行われなければ、実質的には効果が少ないことが明らかになるであろう。さらに、温湿布がその治療範囲内の熱を少なくとも4分間にわたって維持せず、または手搾りの前に治療レベルより下まで冷める場合、温湿布は、重症の閉塞を患っている患者に最小源の利益しかもたらさないことになり得る。
【0067】
図6は、眼瞼のマイボーム腺の治療を示すブロック図であり、特に下眼瞼が示されている。この治療(および本明細書で説明する他の治療および装置)は、左眼または右眼または左右両眼の、上眼瞼にも下眼瞼にも、あるいは上下両方の眼瞼にも利用され、または構成されることができることが分かる。この実施形態では、電源34が熱調節回路38に電力を供給し、熱調節回路38は熱調節を実現するのに適した任意の設計のものとすることができる。この熱調節回路38は、治療範囲内の調節された温度、例えば45℃を発生させるために、加熱素子42(電流が抵抗器を通るときに発生する熱、すなわち抵抗加熱によって熱を発生させるフレキシブルフォイル加熱素子など)に電流などの電気信号(AC信号、DC信号、パルス信号、プログラム信号または変調信号)を印加する。この加熱素子42は、最終的には熱療法のために眼瞼に伝達される熱を発生させるのに使用される。本実施形態では、加熱素子42と眼球54の眼瞼50との間にヒートシンク46が配置されている。このヒートシンク46は、例えば、治療される眼瞼の形状に適合するように(実施形態によっては加熱素子と共に)曲がるフレキシブルシリコン部材などとすることもできる。一実施形態では、比較的熱伝導性を有するフレキシブルシリコンゴムパッド(厚さ1/16インチの1または2層など)が使用され得る。代替として、ヒートシンク46は、眼瞼50の外面にぴったりと適合するように事前に成形された剛性の、または比較的剛性の熱伝導部材とすることもできる。この実施形態では、眼球の外形に合致し、それによって上眼瞼と下眼瞼とに同時に治療を施すように1つの代表的なサイズまたは複数のサイズが設けられるが、片眼の片方の眼瞼もしくは片眼の両方の探検、または両眼の片方の眼瞼もしくは両眼の両方の眼瞼を治療するように容易に構成されることもできる。
【0068】
加熱素子42はこのヒートシンク46と断熱材58との間に挟まれている。断熱材58は、加熱素子の背面(治療される眼瞼から最も遠い側)からの熱損失を最小限に抑えるように働き、それによって加熱素子42からヒートシンクを介して眼瞼50に熱を伝えるのを助ける。いくつかの実施形態では、後で明らかになるように、組部品を眼瞼に取り付け、または別様に眼瞼50と接し、眼瞼と連結するのを助長するために、任意選択で背板62が断熱材58の外面に当てられる。いくつかの実施形態では、流体を放出させるためにマイボーム腺にも力を加えている間に、眼瞼に熱エネルギーをより効率よく伝えるために、矢印66で示すわずかな力でヒートシンクを刺激して眼瞼50と接触させる。
【0069】
マイボーム腺を治療するのに熱を使用する理由の1つは、マイボーム腺を加熱することにより、閉塞および閉鎖を引き起こしている物質がほとんど溶解し、流体になることが観察されていることである。したがって、熱は有益であり、わずかな圧力で、閉塞を生じさせていた溶解した物質が刺激されて1つまたは複数のマイボーム腺から放出される。本明細書では、「溶解した(melted)」という語は、固体粒子が液体流体内に懸濁したまま残存している状態を含むものと解釈すべきである。
【0070】
いくつかの実施形態によれば、加熱素子42は、フレキシブルフォイル抵抗加熱素子として実現される。このような素子は、抵抗加熱を発生させるために電流が通される抵抗性の経路を有するフレキシブル回路を備える。このような加熱素子ではしばしば、素子が加熱するに従って幾分変化する素子の抵抗を測定することによって温度を監視することができる。抵抗は、加熱素子への電流の流れおよび/または加熱素子の両端に印加される電圧を測定することによる間接的なものを含めて、いくつかの方法で測定され得る。したがって、この特定の実施形態で使用される加熱素子においては、熱発生の主要な、または唯一の形態は、加熱ユニットと抵抗加熱によって与えられる熱との直接接触によるものであり、潜在的に有害な赤外線エネルギーの生成は最小限であり、または存在しない。また、本発明と一致する実施形態から逸脱することなく、別の種類の抵抗加熱素子も使用され得る。
【0071】
図6に示す回路は事実上基本的なものであり、本発明の実施形態と一致する多くの変形を利用することもできる。一実施形態では、図6に示すような、熱調節回路38が加熱素子42において所望の一定の治療温度を発生するように工場で較正済みの、温度を固定された装置が利用される。この一定の治療温度は、安全な治療レベルの加熱が得られるような加熱素子42またはヒートシンク46の温度および抵抗を測定することにより、工場で構成され得る。臨床医または患者が使用するために加熱設定の選択を設けることができる。また、熱調節回路は、加熱サイクルの開始後に熱が指定された期間にわたって加えられ、指定された治療期間の後に加熱が打ち切られるようなタイマも組み込んでいる。加えて熱調節回路は、指定の治療時間が満了したときにユーザに治療期間の終わりを通知する警報器もトリガする。一般には、約15分の治療時間で十分であると分かっているが、本発明から逸脱することなく、大幅な変動および最適化が可能である。一般に、状態の重症度および温度に応じて、約10分から60分までの範囲の時間が適当であるが、これは限定とみなすべきではない。
【0072】
加えて加熱素子は、無制限に、加熱素子の集合体または配列として実施することもできる。本発明の教示を考察すれば、当業者には、上記およびその他の変数がそれぞれ想起されるであろう。
【0073】
本明細書では、断熱材は、加熱素子の背後からの熱の放出に対する障壁として働こうとするように適切な断熱性を有し、他方ヒートシンクは、加熱素子から眼瞼に向けて熱を吸い取ろうとするように適切な伝導性を有する必要がある。本発明と一致する実施形態では、ヒトの眼瞼との接触が求められ、しばしば、眼瞼と接して配置されるヒートシンクまたはその他の要素は、軟らかく、快適であることが望まれる。これは、その材料の実際の無条件の熱伝導度を制限することもある。しかし、熱が材料を介して流れようとする適度な傾向がある限り、それはヒートシンクとみなされる。同様に、断熱材も、類似の制限およびサイズのために、理想的な断熱材に似たものとなる見込みは少ないが、むき出しの加熱素子よりも少ない熱損失で、十分に眼の方に向けられる熱を保持するならば、断熱材とみなされるのに十分である。したがって、ヒートシンクの相対的熱伝導率は、断熱材の熱伝導率より大きくすべきであり、好ましくはずっと大きいもの(10倍など)とすべきである。すなわち、断熱材は、好ましくは、ヒートシンクより熱伝導性の低いものとすべきである。
【0074】
プロトタイプにおいて、断熱材の熱伝導率は、約0.10W/mK(ワット毎メートル毎ケルビン)の熱伝導率を有する92%ゴムの熱伝導率より低いものであり、ヒートシンクの熱伝導率は約1.3W/mKであったが、これらの伝導率の値は限定的なものとみなすべきではない。いくつかの実施形態では、背板は、断熱材の機能を提供するのに十分な働きをする。
【0075】
「ヒートシンク」および「断熱材」という用語は、材料が熱を吸収し、伝達しようとするか、それとも熱の流れを妨げようとするかの傾向を記述する相対的な用語であることを当業者は理解するであろう。本明細書では、「ヒートシンク」という用語は、問題となる物質が(断熱材と比べて)相対的に良好な熱導体であることを示す。熱伝導シリコンゴムなどの材料については、熱伝導度は、たとえ鋼やアルミニウムなどの金属ほどではないにしても、一般に、断熱材とみなされるものよりもよい。しかし、熱伝導率を改善するように設計された市販の材料が利用可能であり、これらはシリコンゴムなどの可撓性を有する材料でできている。同様に、大部分の「断熱材」は本質的にある一定量の熱を伝達する。このことは、本明細書において材料が断熱材とみなされることを除外するものではない。断熱発泡ゴムやプラスチックなどといった断熱材料が市販されている。
【0076】
本発明の実施形態で使用するのに適した断熱材料の一例が、厚さ約1/8から1/4インチのネオプレンゴムであるが、これらの寸法は限定的なものとみなすべきではない。熱伝導シリコンゴム材料は、例えば、米国ペンシルバニア州19136フィラデルフィア、タルバット・ストリート・4749所在のStockwell Elastomerics,Inc.の製品T100などを含めていくつかの製造元から入手することができる。
【0077】
次に図7を参照すると、加熱素子42に隣接して別個の温度センサ70を含むことを除いて、図6のものと類似した代替の実施形態が示されている。この温度センサは便宜上構造的に別個の層を占めるものとして示されているが、これは単に説明の都合上にすぎない。温度センサ70は、加熱素子42によって発せられ、および/または眼瞼の外面に送られる温度を読み取るために、無制限に、断熱材58とヒートシンク46の間に置くことも、加熱素子42とヒートシンク46の間に置くことも、加熱素子42と断熱材58の間に置くことも、加熱素子42内に埋め込むことも、ヒートシンク内に埋め込むことも、眼瞼の表面に置くこともできる。ヒートシンクと断熱材とが適正にその機能を果たせば、これらの点のいずれを使っても、(整定期間後に)妥当な程度の正確さで、最終的に眼瞼の外面に送達される温度を測定することができる(または最終眼瞼表面温度を表すように較正することができる)。しかし、この温度を測定するのに最適な場所は、眼瞼の表面である。
【0078】
温度センサ70は、いくつかの実施形態では、センサ配列として実施される。温度センサ70は、熱調節回路38が加熱素子42によって発せられる実際の温度を監視することができるように、調節回路38に電気信号を送り返す。次いで、フィードバック制御技術を利用して、加熱素子42において治療範囲内の適正な加熱が維持されるようにすることができる。温度センサ70は、それだけに限らないが、熱電対(米国ニュージャージー州07013クリフトン、ヒューロン・アベニュー・154所在のPhysitemp Instruments Inc.から入手可能な極小の熱電対など)や、従来の小型サーミスタを含めていくつかの方法で実施され得る。
【0079】
次に図8を参照すると、電源34と熱調節回路38を収容するのに別個のハウジングが使用されている、本発明と一致する治療装置の一実施形態が示されている。このハウジングは、加熱ユニット80に配線78で取り付けることができる。代替として、電源34と熱調節回路は、保護眼鏡組部品またはヘルメット様組部品内部に組み込むこともできる。加熱ユニット80は、図6および/または図7に示した各要素の一部または全部(および後述する変形)を、眼瞼への接触部を提供するヒートシンク46の外面と共に組み込んでいる。加熱ユニット80は、ヒートシンク46、加熱素子42、場合によっては温度センサ70、ならびに断熱材58および背板62を組み込むはずである。プロトタイプでは、1層または2層の厚さ1/16インチシリコンゴムヒートシンクが使用され、満足のいく結果をもたらした。本実施形態の背板62は、ボール84を背板内の係留ソケットに固定して、加熱ユニット80をホルダ(後述する保護眼鏡など)に対して回転させ、調整して、治療される眼瞼に適切に接触させるのに使用される。ボールはさらに、ユーザ、臨床医、看護師、医師または技師が、シャフトをねじ込んで眼瞼との接触を調整し、それによって、加熱ユニットから眼瞼に加えられ初期圧力を調整することができるように、蝶ナット、蝶ねじ、または他の操作に好都合な終端92を有するねじ付きシャフト88に接続されている。この実施形態では、シャフトは、ユーザが、多少なりとも従来の方法で調整可能なストラップ102を使って患者の頭部に設置する保護眼鏡98の一部を形成するレンズピース94を貫通してねじ込まれる。
【0080】
いくつかの実施形態では、調節器およびその他の部分は複数の患者に再利用され、残りの部分は清潔な状態のままであるように、ヒートシンク、または加熱ユニット80全体または加熱ユニット80の一部を使い捨てとされる。
【0081】
本明細書では、加熱ユニット80を所定の位置に保持するホルダまたは接続機構の例示的実施形態として保護眼鏡が使用されているが、他の機構も可能である。したがって、「保護眼鏡」という用語を使用した記述は、任意の方法で患者の頭部に装着され、本明細書で説明する治療の間に患者の眼瞼と接する80などの加熱ユニットを保持するのに利用することのできる、任意の種類の保護眼鏡、フレーム、ヘッドギア、保護眼鏡様のヘッドギア、ヘルメット、ストラップまたはその他の装置であるとみなされる。論じられる保護眼鏡のレンズピースは、レンズが通常眼の前に位置する場所にだいたい位置する保護眼鏡またはその他の装置の1要素と定義され、必ずしも実際の光学レンズが存在することを意味するとは限らない。
【0082】
この実施形態では、水泳に使用されるのと同様の保護眼鏡を、加熱ユニット80を搭載し、指定の治療時間の間加熱ユニット80を治療される眼瞼に近接して保持するように構成させることができる。図8に示す保護眼鏡98は多かれ少なかれ、水泳時に眼を覆うのに使用されるような通常の保護眼鏡であるが、接着材、テープ、ストラップ、ヘルメット、クランプ、または他の任意の適切な手段を含めて、治療すべき眼瞼の一方または両方において加熱ユニット80を所定位置に保持するのに適する任意の別の機構を利用することができる。このような機構はそれぞれ、本明細書のための適切な接続機構とみなされ得る。
【0083】
したがって、別の実施形態と一致する方法で患者の眼瞼の少なくとも一方に調節された熱を供給する装置は、電気信号が印加されたときに熱を発生する第1の面および第2の面を備える加熱素子と、加熱素子から眼瞼に熱を伝えるために加熱素子の第1の面に結合された熱ヒートシンクと、第2の面からの熱損失を低減するために加熱素子の第2の面に結合された断熱材と、断熱材に結合している背板とを備える加熱ユニットを備える。温度調節器が、指定温度範囲までの加熱素子の加熱を達成するために、加熱素子に電気信号を印加する。患者の頭部に取り付け、患者の眼瞼をレンズピースで覆うのに適した保護眼鏡は、ねじ穴が開けられたレンズピースを備える。眼瞼との接触が達成されるまでシャフトを穴にねじ込むことにより加熱ユニットを移動させて眼瞼と接触させることができるように、ねじ付きシャフトがねじ付きレンズピースを貫通して背板のところで加熱ユニットに結合している。
【0084】
いくつかの実施形態では、患者の眼瞼の少なくとも一方に調節された熱を供給する装置は、電気信号が印加されたときに患者の眼瞼に伝わる熱を発生する加熱素子を備える加熱ユニットを備える。温度調節器が、加熱素子の指定温度範囲までの加熱を達成するために加熱素子に電気信号を印加する。
【0085】
次に図9を参照すると、加熱ユニット80のレンズピース94への接続のより詳細な図が示されている。この図では、明確にするために、加熱ユニット80の各層が誇張された形で示されている。最外面には加熱素子42と接するヒートシンク46があり、加熱素子42は例えば、Minco Corporationによって製造販売されているような柔軟な抵抗フォイル加熱器などとすることができる。フォイル加熱器は市販のものをすぐに利用することができ、本発明の加熱ユニット80で使用するのに適したサイズおよび熱特性を備えるものもある。次の層は、熱が眼瞼と接して必要とされる場所に維持されるように、加熱ユニット80の背後から熱が放散するのを防ぐように働く断熱層58である。最後に背板62が、加熱ユニット80を眼瞼と適正に接触するように保持する構造との相互接続のために、断熱材58の背面に固定されている。いくつかの実施形態によっては、後述する背板が、それ自体、背板と断熱材の両方とみなされる適切な断熱特性を有する材料で作られている。
【0086】
この背板62の実施形態は、ねじ付きシャフト88を自由に回転させ、加熱ユニット80を治療すべき眼瞼と適正に接触するように枢動させるボール84を受けるソケット110を含む。ねじ付きシャフト88は、レンズピース94を貫通し、この例では、凹凸のある(gnarled)つまみ114と嵌合されており、つまみ114によりユーザ、患者、医師、臨床医、看護師、または技師は、好ましくはいずれにせよ少量の加圧で、適切な接触、患者の快適さ、および適正な治療のための加熱を確実にするように、眼瞼に加えられる圧力の量を調整することができる。
【0087】
圧力を一貫して設定するために微小力を感知する装置または機構を加えることができる。そのような装置の簡単なものを図10の部分切断図に示す。この例示的実施形態では、ボールジョイントで使用されるボール84とねじ付きシャフト88の間にばねまたはばね特性を有する材料104が挿入されている。ボール84は図9のアイピースソケット110に嵌合するが、ボール84はこの場合、ねじ付きシャフト88に直接ではなく、中空管106に取り付けられている。中空管106は管106に挿入されたばね104を備え、ねじ付きシャフト88がばね104を押し、ばね104がさらにボールジョイントを押して、アイピースを眼瞼に押しつける。中空管106とねじ付きシャフト88の間の変位量により力が指示される。中空管106は、圧力が低下するにつれて現れ、圧力が増大するにつれて隠れる印を含んでもよい。図10に示す実施形態ではシャフト88の中空の端部内に中空管106が示されているが、シャフト88は同様に中空管106内に配置することもできる。そのような実施形態では、圧力表示を提供する印を配置するために、ねじ付きシャフト88の端部には、ねじが切られていない。また、本発明と一致する実施形態を逸脱することなく、別の圧力表示器を考案することもできる。タブを使ってシャフト内に管を取り込むこともでき、図示のようにその逆とすることもできる。
【0088】
また力は、ばねを使用せずに、単に、フォースゲージを適切な位置に、例えば、保護眼鏡とアイピースの間のねじ付きシャフト88上や、アイピース80自体の内部に組み込んで設置するだけで測定することもできる。これは図11として示す例示的実施形態に図示されている。フォースゲージ116は、図示のように、シャフト88の一部分などのような、力が向けられる経路に沿って配置される。その場合、フォースゲージ116からの出力信号を(例えば制御プロセッサやその他の処理装置などを使って)電子的に処理させ、表示装置118に力の量を表す可視画像(数字やグラフィック表示など)を表示させることができる。
【0089】
図12に、力に応じて色を変化させる薄膜(またはその他の)技術を使用した、力を測定する別の機構を示す。これは、例えば、背板62を透明な材料で作成し(色変化が識別され得る限り、完全な透明性は不要である)、背板62に隣接して薄膜感圧膜122を配置するなどによって実施することができる。薄膜122は圧力に応じて色を変化させる。特定の色をもたらすように装置を調整することにより、標準またはその他の知られている圧力を実現することができる。
【0090】
図13に類似の構成を示す。しかし、断熱材58と加熱素子42との間には、図示しやすくするために、温度センサが層70として一般的に示されている。温度センサ70は、例えば、その抵抗を加熱素子42で発せられる温度の表示として測定することのできるサーミスタまたは感熱抵抗器などとすることができる。配線束78は、加熱素子42に至る1対の電線と温度センサ70に至る1対の電線を含んでもよく、三線の配線束78を利用してユニット76を接続するために1本の共通電線が加熱器42と温度センサ70の両方に利用されてもよい。実際には、このような温度センサは、フォイル加熱器、断熱材58またはヒートシンク46に直接取り付けられてもよく、ヒートシンク46内に、または眼の表面に組み込まれてもよい。また、複数のセンサ70または加熱素子42を使ってより多くの制御の自由度が実現されてもよい。
【0091】
いくつかの実施形態によれば、フォイル加熱器またはその他の加熱素子42が、熱伝導ヒートシンクの表面全体にわたって均一な熱を与えることが望ましい。既製の加熱素子の中には、円形、正方形、長方形または楕円である多くの市販の加熱素子と比べて眼瞼の形状が不規則であるために、素子の表面全体にわたって、または治療される眼瞼の表面全体にわたって均一な加熱を供給しないものもある。しかし、加熱素子がフォイルに電気的に接続する位置を変え、加熱素子を機械的に適切に配置することによってこの問題を解決する、カスタム設計の加熱素子を設けることもできる。加熱素子の一部ではないタブに電力を送り、眼瞼の輪郭に近づけるように加熱素子を成形することによって、眼接触部における加熱ユニット80全体に及ぶ温度勾配を最小限に抑えることができる。好ましくは、加熱素子は、温点も冷点もなく眼瞼全体にわたって均一な熱を供給するのに適するように成形される。また、適切な熱伝導性ヒートシンクの使用は、加熱ユニット80の眼瞼への接触部における加熱ユニット80全体の温度勾配を平坦化するのに役立つ。しかし、いくつかの実施形態では、適切に設計された加熱素子を用いればヒートシンクが不要になる。
【0092】
プロトタイプ加熱ユニットでは、市販のMinco製のHeaterstat(TM)モデルCT198−1001R8.00L1温度調節器が利用された。この装置には、Minco製のフォイル加熱素子に接続するのに2本の線だけで済むという利点があり、フォイル加熱器の加熱電流および温度調節を行う。これが達成され得るのは、プロトタイプで利用されたMinco製のフォイル加熱器(Minco HK5207R6.5L12A。参照により本明細書に組み込まれるMinco「Thermofoil Heaters」広報HS−202を参照されたい)が、同時に、加熱素子とセンサの両方として働くからである。このフォイル加熱器は0.3インチ×1.5インチを測定し、試験されたヒトの下眼瞼の上の部分だけをカバーした。改善された加熱素子については以下で論じる。
【0093】
プロトタイプでは、加熱器を、約3.0ボルトで50%のデューティサイクルで動作させた。より高い電圧は、同じ加熱を達成するのにより低いデューティサイクルをもたらす。温度が増大するにつれて、加熱素子の抵抗も増大する。したがって調節器は、特定の抵抗値を目標として、温度が低すぎるときには電流を増大させ、温度が高すぎるときには電源を切ることにより、加熱素子の温度を制御することができる。この市販のHeaterstat(TM)調節装置では、温度は、大部分の加熱器サーモスタットによって使用されるのと同様に、フォイル加熱器に電力を印加し、次いで、温度が降下するのを待ってから、再度電力を印加することにより調節される。よってこの装置は、狭い温度範囲内で変動する温度を供給する。装置を利用する場合、この温度は約1℃以内であり、そのためこの装置は本用途に使用するのに極めて適している。
【0094】
しかし、眼瞼へ加熱ユニットを当てることは表面温度の短期間の降下をもたらすことが観察されている(図4に、加熱ユニットが熱初期損失を取り戻す際の左端の上昇曲線として示す)。プロトタイプで使用されたHeaterstat(TM)製の温度調節器は、最初に眼瞼との接触により生じる余分な熱放散を補償するのに時間がかかった。これは、眼瞼のところの温度降下は、最初は検出されず、ヒートシンクからの温度伝達が加熱素子に到達した後に検出されるからである。この問題は、後述する改善された加熱素子において、加熱器領域および総出熱を増大させることによって対処される。
【0095】
電源は、AC信号、DC信号、パルス信号、プログラム信号または変調信号とすることができ、実験用のプロトタイプでは、3つの直列接続のAAサイズの市販のアルカリ電池が使用された。これは、約3.6ボルトのDC電圧を供給する。プロトタイプ実験で使用された指定治療時間は約15分であったため、約1時間の電池寿命は、問題なく3から4回の治療を行うのに十分である。しかし、電池寿命を最適化し、またはAC電源、充電式電池および/またはDC以外の変調信号、パルス信号もしくはプログラム信号を利用する解決法を提供するための別の実施形態が利用されてもよい。
【0096】
次に図14を参照すると、いくつかの実施形態と一致する加熱ユニット80が示されており、この場合もやはり、断熱材58が最後部層をなし、加熱素子42が中央層をなし、熱ヒートシンク46が眼瞼と接するように配置される前層をなす積層サンドイッチ型の組部品が示されている。この実施形態では、加熱ユニットを眼瞼に固定するためにヒートシンクの外面に接着材120が貼り付けられている。この例では、接着材120は、眼瞼に加熱ユニット80を貼り付ける目的で剥がして接着材を露出させるためのカバーを備える両面接着テープの形である。図示の例では、熱ヒートシンク46は、所定の位置で押し下げられると、眼瞼の形状に適合して、熱ヒートシンク46と眼瞼の間の密接な接触を実現するように、柔軟な、または曲げやすいものである。しかし、別の実施形態では、接着材120が施される面は、治療すべき眼瞼の上下、および左上と右上の曲率に適合するように成形されてもよい。この例では、熱ヒートシンク46は、曲げやすいものではなく剛性のものとすることができる。図示しやすいようにやや半月形に描かれているが、形状は、眼瞼または対または眼瞼に密接に適合するものが好ましい。特に、一般には下眼瞼に問題が生じやすいため、下眼瞼に適合する形状が望ましい。
【0097】
任意の接着機構を使って加熱ユニット80を取り付けるときには、接着材が確実に正しく貼りつくよう身体の油分などを除去するために、接着材が当てられる面を清潔にし、乾燥させることが望ましい。これを怠ると、加熱ユニットが眼と適合せずに両端付近ではがれることになる。
【0098】
類似の実施形態を図15に示す。この実施形態では、温度センサ70が、熱ヒートシンク46の前、または熱ヒートシンク46の一部を形成する層に組み込まれている。層70として描かれてはいるが、温度センサは、単一要素の温度センサとすることもでき、加熱素子の様々な区間または領域にまたがって温度を検出する温度センサの配列とすることもできる。加えて、以上では単一のフォイル加熱素子を論じているが、加熱素子は、眼瞼の表面全体にわたって均一な加熱を供給するように個別に制御され得る加熱素子の配列として実施されてもよい。
【0099】
図16に、前述の加熱ユニットのいずれかのような加熱ユニット80を、治療のために加熱ユニット80を上眼瞼または下眼瞼と接する状態に保持するように、片面接着医用接着テープ130などの接着テープのストリップを使って下眼瞼に取り付けることのできる、本発明と一致する別の実施形態を示す。この場合もやはり加熱ユニット80は、説明例における治療される眼瞼の形状に適合する、比較的平坦だが柔軟な接触面を有するものとして図示されている。しかし、本発明と一致する実施形態から逸脱することなく、より剛性のヒートシンク46を使った眼瞼に適合する形状が利用されてもよい。
【0100】
次に図17を参照すると、振動素子の例136が装置内部に組み込まれた別の実施形態が示されている。加熱と適度の圧力は、マイボーム腺の閉鎖または閉塞を引き起こす溶解した物質の排出を円滑化し得るが、適度な振動の印加(例えば全治療期間中、指定治療時間の終了近くの一部の治療期間、または直後などにおける)は、溶解した閉塞性物質の排出をさらに誘発し得る。この実施形態では、一般的な振動子136がアイピース内に埋め込まれたものとして示されている。このような振動素子136は、任意の適切な設計のものとすることができる。加熱されたアイピースに振動エネルギーを提供するのに利用され得る機構は複数ある。限定するものとみなすべきではないが、例えば以下のとおりである。
【0101】
オフセットモータを使用し、アイピース加熱器80またはシャフト88の外面に取り付けることができる。このようなオフセットモータの中には、モータに電源が投入されると振動を生じさせるシャフトに取り付けられた偏心錘を備えることにより動作するものもある。オフセットモータは携帯電話機および電子ブザーにおいてユーザに警報を発するのに使用される。オフセットモータは市販の様々なサイズのものを容易に入手することができ、様々な異なる振動数および振幅の振動を発生するよう動作し得る。適切な振動数および振幅は、本教示を考慮に入れた実験により求めることができる。
【0102】
ボタン型振動モータを、振動を誘発するよう動作するように、アイピース内に埋め込み、または別の方法で取り付けることができる。
【0103】
マスクと加熱器に連結するねじ機構上に小型モータを配置することができる。その場合、モータを使って図8のねじを回転させ、ねじを抜き差しすることができる。この場合の変位量は固定されるが、速度(振動数)はマイクロプロセッサユニットで制御することができる。
【0104】
小型圧電モータを使って、マスクと加熱器に連結するねじ機構を移動させることができる。変位量および動作振動数は、マイクロプロセッサユニットで制御することができる。
【0105】
保護眼鏡と眼瞼加熱器の間のねじ連結機構を取り外し、これをダイアフラムで置き換えることもできる。ダイアフラムは保護眼鏡と眼瞼加熱器の間に配置し、これら両方に取り付けることができる。簡単な脈動空気ポンプ(または流体ポンプ)を使ってダイアフラムを膨張、収縮させて、眼瞼加熱器に機械的運動を与えることができる。空気量および脈動の振動数はマイクロプロセッサユニットで制御することができる。
【0106】
本発明の教示を考察すれば、任意の適切な機構を使って機械エネルギー(機械エネルギーとは、閉塞が熱により軟化している間に腺から遮断または閉塞を押し出すのを助長するようにマイボーム腺に圧力を加えるための腺に加わる任意の形の機械的圧力であると定義される)エネルギーが印加される他の実施形態を考案することができる。加熱素子が1つまたは複数のマイボーム腺の閉塞を溶解するように働いた後で、脈動、振動エネルギー、搾り出しなどといった機械エネルギー作用を眼瞼に加えると、以前閉塞を構成していた現在は流動性を有する物質を伴う脂質の排出が刺激される。
【0107】
次に図18を参照すると、加熱素子42によって発せられる温度の調節のための一機構が示されている。この実施形態では、加熱素子42の温度を調節するために、温度センサ70からフィードバック情報を受け取り、この情報を利用して加熱素子42に電力を印加するスイッチ164を制御する制御プロセッサ160を使って熱調節回路38が実施される。この実施形態では加熱素子42と温度センサ70を、2つの別個の装置であるものとして描いているが、前述のように、(1つまたは複数の)加熱素子の動作温度を感知する目的で、加熱素子の抵抗または加熱素子42のその他の特性を利用することもできる。制御プロセッサ160は、加熱素子42が作動され、誤動作が発生した場合または指定治療期間が終了した場合には警告を発する時間量の制御を可能にするように、内部または外部クロック(図示せず)を使って動作する。また、本発明から逸脱することなく、制御プロセッサ160を用いて他の機能が実行されてもよい。
【0108】
図19に、加熱素子42の温度を調節する機構の別の実施形態を示す。この実施形態では、制御プロセッサは、別個の温度センサ70により、または加熱素子42自体により感知される温度に基づいて、加熱素子42の動作を同様に制御する。この情報は、パルス幅変調器168を制御するのに使用される。パルス幅変調器168により発生するパルスの幅を増大させる(すなわちデューティサイクルを増大させる)ことにより、加熱素子42はより多くの熱を発生し、パルス幅変調器168により発生するパルスの幅を狭めることにより、加熱素子42によって発せられる熱の温度が下がる。また、本発明から逸脱することなく、それだけに限らないが、可変電圧および/または可変電流源を含め、他の変調方式を利用して加熱素子42の加熱が調節されてもよい。この場合もやはり、制御プロセッサ160は、後述するように、他の機能も制御し得る。
【0109】
次に図20を参照すると、加熱ユニット80は、(熱ヒートシンク、断熱材、背板などに加えて)加熱素子42を、別個の、または一体型の温度センサ70および振動素子136と共に組み込んでおり、これらはすべて、眼瞼と接するように配置される加熱ユニット80の一部を形成する。この実施形態では、制御プロセッサ160は(前述のような、または別の設計の)温度調節回路172を使って熱調節回路38を構成している。電源34が、加熱素子と制御プロセッサ160の両方に電力を供給し、警報器176と振動子136にも供給する。この実施形態では、ユーザが、装置の動作の様々な態様を制御するように制御プロセッサ160と対話するためのユーザインターフェース180(ディスプレイ118を組み込んだものなど)が提供される。一実施形態では、例えば、ユーザインターフェースは、治療時間を調整するのに利用される。上記その他の実施形態の諸要素は、本発明から逸脱することなく自由に入れ換えられてもよい。
【0110】
本明細書では、振動エネルギーを、振動数成分と振幅成分を有する機械的運動と定義することが有益である。目下のところ、振動数成分はランダム振動を含む約0.1Hzから300Hzまでであり、変位量として定義される振幅成分は、好ましくは、約3mmまでであり、現在的に好ましい偏位は約0.5mmであることが最も好ましいと考えられている。しかし、これは限定とみなすべきではない。これは、これらのパラメータの最適化および適切なプロファイルの定義は実験により最適化され得るからである。一実施形態では、例えば温度プロファイルは、最後の5分間にわたって0.1Hzから300Hzまで直線的に増大する振動エネルギーの印加、および最後の5分間にわたって3mmから0mmまで直線的に減少する振動エネルギーの振幅を伴う、15分間にわたる摂氏45度の一定温度を設定するものとすることもできる。使用する実際のプロファイルは、本明細書に示す教示を考察した後に実験的に最適化することができる。
【0111】
前述のように、プロトタイプで使用された加熱素子の加熱プロファイルは、眼瞼全体に及ぶ摂氏数度の温度勾配を生じた。プロトタイプでは、Mincoサーモフォイル加熱器HK5207R6.5L12Aを利用した。この加熱素子は、極めて実用的ではあるが、理想的な温度プロファイルを生じず、よって眼瞼の一部だけを加熱した。
【0112】
図21に、眼瞼を加熱するためにカスタマイズされた加熱素子設計の一例を示す。このような加熱素子設計は、米国ミネソタ州55432ミネアポリス、コマース・レーン・7300所在のMincoなどのフォイル加熱器企業により容易にカスタム製作され得る。この実施形態では、加熱素子の外形は下眼瞼の輪郭に適合するように設計されているが、上眼瞼または同時に両眼瞼を治療するための別の設計を考案することもできる。このような加熱器設計の1つの典型的な実用寸法は、寸法204が約1.8インチ、寸法208が約1.015インチ、タブ212の寸法214と216とが約0.375インチである。当然ながら、これらの寸法は限定とみなすべきではなく、平均的サイズのヒトの眼瞼に適したものと考えられる。この設計では、眼瞼から約90度離れるように曲げられ、電線の連結を可能にするタブ212を設ける。加えて、タブ212およびフォイル加熱器の形状により、試験された標準的な市販のフォイル加熱器において認められた眼瞼全体にわたる加熱のむらも低減される。
【0113】
いくつかの実施形態によれば、図20に示すような加熱ユニット80は、加熱ユニット80が、洗浄のために、または加熱ユニット80の一部(ヒートシンクなど)もしくは全体を廃棄するために取り外せるように、電線とプラグ接続とを用いて調節器と接続される。このようにして、衛生を維持すると同時に、装置の一部を再利用し、治療速度を改善することができる。
【0114】
加熱は、タブ212において終端する導体間の導電路の抵抗によって生じる抵抗加熱である。この実施形態では、加熱経路が、熱を発する抵抗経路を実現するにように左から右、右から左へと蛇行している。別の実施形態では、抵抗経路は、図22に示すような抵抗経路を生じさせるように上から下、下から上へと蛇行してもよい。また他にも多くのパターンを使用することができる。経路の寸法および正確なレイアウトは、フォイル加熱器またはその他の抵抗加熱器設計の通常の設計原理を利用して、均一な加熱プロファイルを有する必要な熱を発生させるのに適した導体間の距離、ライン幅および抵抗を維持するように設計される。さらに、本発明から逸脱することなく、フォイル加熱器以外、抵抗加熱以外の加熱技術を使用することもできる。
【0115】
本発明の教示を考察すれば、本発明から逸脱することなく、図示の実施形態における多くの変形が可能であることを、当業者は理解するであろう。例えば加熱素子は、好ましくは、眼瞼全体にわたり均一な熱を与えるべきであり、これは、単一の加熱素子ではなく加熱素子の配列を使えば達成される。加熱素子は、好ましくは、眼瞼の形状に適合させるのに役立つ、フォイル加熱素子などの柔軟な加熱素子とする。しかし加熱素子は、剛性のものとし、ある平均的な、または様々な眼瞼の形状およびサイズに適合するように事前成形された形状として設けられてもよい。代替として、剛性の加熱素子が、眼瞼に適合する軟らかいヒートシンクを伴ってもよい。前述のように、このヒートシンクは、熱伝導ゴム、流体、ゲルもしくは空気が充填されたダイアフラム、湿らせた布、または、熱伝導性を有し、容易に適合させることができる任意の数の材料で作成することができる。
【0116】
ヒートシンクは、熱伝導ゴムまたはシリコンでてきてもよく、カプセル化された流体またはゼラチンとすることもできる。別の実施形態では、ヒートシンクは、眼瞼の幾何学的形状に適合する(ほぼ回転楕円体の一部である表面に適合する)ようにしかるべく成形されている固体熱伝導材料とすることができる。断熱要素58は、非伝導性ゴムまたは発泡材料(非導電性は低熱伝導率を意味するものである)から作成することもでき、低熱伝導率固体材料から作成されてもよい。加熱素子は、眼瞼と加熱ユニットの間により均一な伝導性境界を生じさせるようヒートシンクと眼瞼の間の隙間を埋めるための熱伝導性のゲル、液体、またはクリームと併せて使用されてもよい。代替として、眼瞼の加熱により生じる汗は、本来、熱伝達を促進するのを助長するものであり、熱伝導シリコンゴムのような非吸収性ヒートシンクを使用することの副産物である。図示の各層は、任意の適切な方法でまとめて一体化することができ、眼瞼に比較的均一な調節された加熱を与えるという目的に適した他の任意の形をとり得る。
【0117】
加熱素子42の温度を調節する調節要素と、もしあれば、振動素子136とは、コンピュータ制御下で動作してもよく、ユーザによる調整が可能な、振幅および振動数を含む温度設定値および振動設定値を有してもよい。また必要に応じて、コンピュータ制御下で様々な温度プロファイルおよび/または機械エネルギープロファイルを実施することもでき、その場合温度および振動エネルギーは、それが所望の制御機能とみなされる場合には、時間の経過と共に増大させ、および/または減少させることもできる。また、温度調節器および/または機械エネルギー要素は、治療の時間制限を設けるためのタイマに基づいて動作することもできる。加熱素子の温度を調節するためのパルス幅変調および/または単純なオン/オフ切換えが開示されているが、本発明の教示を考察すれば、当業者には別の実施形態が想起されるであろう。いくつかの実施形態によれば、この熱調節および/または機械エネルギー調節は、読取り専用メモリ(ROM)やその他の適切な記憶媒体といった電子的コンピュータ可読記憶媒体に命令として格納されたコンピュータプログラムの制御下で動作するマイクロプロセッサなど、コンピュータの制御下で実行されてもよい。
【0118】
電源34は、交換可能または充電可能な電池によるものとすることもでき、装置を実施する際に必要に応じてDCに変換されるAC電力を利用してもよい。
【0119】
加熱ユニットを眼瞼に取り付けるのに適した任意の機構を利用することができる。前述のようにこれは、加熱ユニットを所定の位置に保持するための両面粘着医用テープを用いて、または保護眼鏡などのヘッドピースを用いて行うことができる。別の実施形態では、加熱ユニットは、所定の位置にひもで留められてもよく、ノーズブリッジによって所定位置に保持されてもよく、回転して所定位置にはまってもよく、保護眼鏡機構によって所定位置にねじ込まれてもよく、ラッチで所定位置に留められてもよく、保護眼鏡または他のヘッドギアからの他の任意の適切な調整機構を利用したものでもよい。このような機構は、加熱ユニットから眼瞼に加わる力の量を調整するように働く。別の実施形態では、眼瞼に加わる力を自動的に調整する機構が考案されてもよく、機構は、加熱ユニット80内に含まれてもよく、加熱ユニット80に機械エネルギーを伝達するために(例えば保護眼鏡内などで)加熱ユニット80に別の方法で結合されてもよい。
【0120】
したがって、いくつかの実施形態によれば、装置は、電気信号が印加されたときに患者の眼瞼に伝わる熱を発生する加熱素子を備える加熱ユニットを使って、患者の眼瞼の少なくとも一方に調節された熱を提供する。温度調節器が、加熱素子の指定温度範囲までの加熱を達成するために加熱素子に電気信号を印加する。
【0121】
図23を参照すると、開示する様々な実施形態を使って実行され得る任意の数の治療法を想い描くことができる。この流れ図には、250から始まる、いくつかの実施形態による治療を実行する際に通る一般的な過程が示されている。254で加熱ユニットが(図示の保護眼鏡装置や接着材装置などを使って)患者に取り付けられる。圧力が加えられ得る実施形態では、圧力が、選択された適度な大きさの力で、加熱ユニットを押さえて治療すべき1つまたは複数の眼瞼と接触させるように調整される。次いで加熱ユニットの電源を入れることができ、258から手動または自動の過程に従って治療サイクルが開始する。
【0122】
加熱ユニットが適切な治療温度(摂氏45度など)に達した後、262で、フィードバック制御を利用して熱が一定レベルに維持され、または所望の熱治療プロファイルが達成される。同様に、治療プロファイルの所望のタイミングにおいて、(加熱ユニットの実施形態がそのように装備されている場合には)266で機械エネルギーを印加することができる。目下のところ、最適な結果は、治療温度に到達し、熱療法が完了した直後に中断されたときに機械エネルギーが印加されると達成することができるものと思われる。この過程は、(操作者によって選択されたものであれ、事前にプログラムされたものであれ)選択された治療プロファイルに従って、270で治療プロファイルが完了するまで進む。次いで274で治療が終了し、または続いて次の治療モダリティ(手搾りなど)に進む。
【0123】
したがって、いくつかの実施形態と一致する方法で調節された熱を用いて患者の眼瞼の少なくとも一方において治療を行う方法は、患者の眼瞼と接する加熱素子を備える加熱ユニットを配置することと、加熱素子に制御信号を印加して加熱素子において熱を発生させ、生成された熱を規定の期間にわたって眼瞼に伝えることとを伴う。
【0124】
図8に戻って、使用に際して患者は、通常水泳用保護眼鏡を装着するのと同様に保護眼鏡98を装着し、次いで、加熱ユニットが快適な力加減で眼瞼と接触するまで押しねじ(ねじ付きシャフト)を調整するだけでよい。この時点で、装置は動作可能な状態にあり、電源を入れるだけで治療を開始することができる。プロトタイプと好ましい実装形態においては、調整機構のねじ付きシャフト、背板、凹凸のあるつまみ、およびその他の機構はナイロンでできており、患者、技師、医師、または看護師が、眼瞼に適切な量の圧力を加えるように容易に調整することができる。治療中に眼瞼に少量の静圧を加えることにより、熱によって閉塞が溶解する際にマイボーム腺からの分泌が促される。実験では、上記で参照され、参照により組み込まれている特許出願明細書に記載されている装置において使用された圧力の量は、最大約30ポンド/平方インチまでに及ぶ脈動圧を利用し、より一般的な範囲は約2から10ポンド/平方インチであった。脈動圧は、一般に、より効果的であり、同等の静圧より高い平均圧でもより多く耐えることができる。したがって、静圧として使用するには最大2ポンド/平方インチまでの範囲の圧力が適切であり、前述のような振動、脈動、および/または搾り出し作用といった他の形の機械エネルギーと併せればより大きな圧力が使用可能になるものと期待される(参考までに、マイボーム腺が、例えば器具とヒトの指の間などでの圧搾により手で搾りだされるとき、圧力は1平方インチ当たり数百ポンドに達し得る)。
【0125】
したがって、開示の装置では、周囲の顔の組織の血管を拡張しないように、眼瞼の局所的な加熱だけを得ることができる。シリコンゴムヒートシンクを使って眼瞼に熱が伝えられるときには、汗の薄い層が生じ、これが熱伝達を改善するように思われる。治療法は単純で、簡単に実施することができ、医療専門家により施される治療を補い、マイボーム腺で生成される脂質の自由な流れを保つのを助けるために、患者自身が在宅治療を行うのに利用することさえもできる。発生する熱は一定であり、または指定のプロファイルに合わせて調節され得るため、乾熱、ビーンバッグ、または温湿布の使用に伴う問題が改善される。加えて、装置は容易に運搬され、必要に応じて電池で動作することもでき、適切な量の熱を適切な量の時間にわたって提供するようにプログラムすることもできる。
【0126】
加えて、温湿布に伴う不潔さも、温湿布に伴う一貫性を欠く温度プロファイルも、それによって提供される、過熱の危険を伴うIR加熱法も、最小限におさえられる。加熱ユニット80は、小型軽量であるため、個々の患者およびその他の要因に応じて、いくつかの方法のうちのいずれを使っても眼瞼に取り付けることができる。下眼瞼に取り付けられると、装置は眼を開けたままで使用することができる。これは、患者が、治療を受けている間、暇つぶしのために何らかの簡単な作業(読書やテレビの視聴など)を行うことを可能にする。加えて、眼瞼に加わる一定の圧力は、閉塞が溶解する際に、マイボーム腺脂質およびその他の流体の排出を助長する。機械エネルギー装置を利用した実施形態では、振動、脈動および/または搾り出し動作が閉塞の除去をさらに助長する。
【0127】
以上の教示を考察すれば、当業者には、上記の例示的実施形態のあるものはプログラムされたプロセッサの使用に基づくものであることが理解される。しかし、本発明はこのような例示的実施形態だけに限定されるものではない。これは、専用ハードウェアおよび/または専用プロセッサといった同等のハードウェア構成部品を使って別の実施形態を実施することもできるからである。同様に、汎用コンピュータ、マイクロプロセッサベースのコンピュータ、マイクロコントローラ、光コンピュータ、アナログコンピュータ、専用プロセッサ、特定用途向け回路および/または専用配線論理を使用して、代替の等価の実施形態が構築されてもよい。また、実施形態の中には、ディジタル領域からアナログ領域へ、およびその逆の変換を必要とするものもあることも当業者は認めるであろう。必要に応じてD/A変換器やA/D変換器といった変換装置を使ってそのような変換が行われてもよいが、そのような装置は明確さのために図面からは省かれている。
【0128】
本明細書で説明する方法のいくつかの実施形態は、流れ図や説明として一般的に前述した、任意の適切な電子またはコンピュータ可読記憶媒体上に格納することができ、および/または任意の適切な電子通信媒体を介して伝送することのできるプログラミング命令を実行するプログラムプロセッサを使って実施され、または実施され得る。しかし、本発明の教示を考察すれば、当業者は、前述の各過程が、本発明の実施形態から逸脱することなく、任意の数の変形として、多くの適切なプログラミング言語で実施され得ることを理解するであろう。例えば、本発明のいくつかの実施形態から逸脱することなく、実行されるいくつかの操作の順序をたいていの場合は変更することもでき、追加操作を加えることもでき、操作を削除することもできる。本発明のいくつかの実施形態から逸脱することなく、エラートラップを加え、および/または改善することもでき、ユーザインターフェースおよび情報提示の変形を行うこともできる。
【0129】
ソフトウェア実施形態および/またはファームウェア実施形態は、いくつかの実施形態において、任意の適切な電子またはコンピュータ可読記憶媒体(例えば、ディスク記憶、読取り専用メモリ(ROM)装置、ランダムアクセスメモリ(RAM)装置、ネットワークメモリ装置、光学記憶素子、磁気記憶素子、光磁気記憶素子、フラッシュメモリ、コアメモリおよび/またはその他の同等の揮発性および不揮発性記憶技術など)上に格納することができ、および/または任意の適切な電子通信媒体を介して伝送することのできる流れ図として一般的に前述したプログラミング命令を実行するプログラムプロセッサを使って実施され得る。しかし、本発明の教示を考察すれば、当業者は、前述の各過程が、本発明の実施形態から逸脱することなく、任意の数の変形として、多くの適切なプログラミング言語で実施され得ることを理解するであろう。例えば、本発明のいくつかの実施形態から逸脱することなく、実行されるいくつかの操作の順序を、たいていの場合は変更することもでき、追加操作を加えることもでき、操作を削除することもできる。本発明のいくつかの実施形態から逸脱することなく、エラートラップを加え、および/または改善することもでき、ユーザインターフェースおよび情報提示の変形を行うこともできる。そのような変形は企図されており、等価とみなされる。
【0130】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、以上の説明に照らしてみれば当業者には、多くの代替、改変、置換および変形が明らかになるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の眼瞼の治療のために調節された熱を供給する装置であって、
電気信号が印加されたときに熱を発生する加熱素子を備える加熱ユニットと、
加熱素子の指定温度範囲までの加熱を達成するために加熱素子に電気信号を印加する温度調節器と、
指定温度範囲内の眼瞼の調節された加熱を達成するために加熱ユニットを眼瞼と接するように結合する眼瞼接触機構と
を備える、装置。
【請求項2】
温度を感知し、温度調節器に温度情報を提供するセンサをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
眼瞼接触機構が、眼瞼との接触を達成するよう加熱ユニットを移動させるために加熱ユニットに調整可能に結合された保護眼鏡を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
保護眼鏡が、加熱ユニットの位置をねじ込み操作によって調整することができるように、ねじ込み接続により加熱ユニットに調整可能に結合されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
加熱ユニットが、加熱素子から眼瞼に熱を伝えるために加熱素子の表面に結合された熱ヒートシンクをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
熱ヒートシンクが、熱伝導ゴム部材、熱伝導シリコン部材、カプセル化流体含有部材、および固体伝導部材からなる群より選択される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
熱ヒートシンクから眼瞼への熱伝導を改善するためにヒートシンクと眼瞼の間に熱伝導ゲル、クリームまたは液体のうちの1つが配置される、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
加熱ユニットが、眼瞼に向かう方向以外の方向への加熱ユニットからの熱損失を低減するために加熱素子の表面に結合された断熱材をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
断熱材が、非熱伝導発泡エレメント、非熱伝導ゴムエレメント、および非熱伝導固体エレメントからなる群より選択される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
温度調節器が、加熱素子によって発せられる熱を調節するために加熱素子にパルス幅変調電気信号を印加する、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
制御プロセッサをさらに備え、パルス幅変調電気信号が制御プロセッサの制御下で生成される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
温度調節器が、加熱素子によって発せられる熱を調節するために加熱素子に電気信号を選択的に印加するスイッチを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
制御プロセッサをさらに備え、電気信号が、制御プロセッサの制御下で加熱素子に選択的に印加される電流と電圧の少なくとも1つを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
温度調節器が加熱素子に一定の連続した電力を供給する、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
加熱ユニットが、眼瞼に適合するように眼瞼と接する柔軟な部分を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
加熱ユニットが眼瞼と接する剛性の部分を備え、剛性の部分が眼瞼の形状に適合するように成形されている、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
加熱ユニットが、加熱ユニットを眼瞼に直接取り付けるための接着材をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
加熱ユニットが接着テープの使用により眼瞼に取り付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
ユーザに治療のための時間と温度の少なくとも一方を設定させるユーザインターフェースをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
マイボーム腺からの分泌を刺激するための眼瞼に対する力を発生させる機械エネルギー発生器であって、眼瞼に、振幅と振動数の両方を有する機械エネルギーを与える前記発生器をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
指定温度範囲が37℃超である、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
指定温度範囲が44℃から47℃までである、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
指定温度範囲が、約45℃の前後の温度範囲を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
指定の治療時間の後に加熱素子への信号を遮断するタイマをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
指定の治療時間が約10分から60分である、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
指定の治療時間が10分超である、請求項24に記載の装置。
【請求項27】
加熱ユニットが眼瞼に当てられる際の圧力を測定する圧力センサをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項28】
眼瞼接触機構の一部分が使い捨てにできる、請求項1に記載の装置。
【請求項29】
加熱器が眼瞼に加える圧力の量を設定する調整手段をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項30】
患者の眼瞼の少なくとも一方に調節された熱を供給する装置であって、
電気信号が印加されたときに熱を発生する第1の面および第2の面を備える加熱素子、
加熱素子から眼瞼に熱を伝えるために加熱素子の第1の面に結合された熱ヒートシンク、
第2の面からの熱損失を低減するために加熱素子の第2の面に結合された断熱材、ならびに
断熱材に結合する背板
を有する加熱ユニットと、
加熱素子の指定温度範囲までの加熱を達成するために加熱素子に電気信号を印加する温度調節器と、
患者の頭部に取り付け、患者の眼瞼を、ねじ穴が開けられたレンズピースで覆うのに適した保護眼鏡と、
眼瞼との接触が達成されるまでシャフトを穴にねじ込むことにより加熱ユニットを移動させて眼瞼と接触させることができるように、ねじ付きレンズピースを貫通し、背板のところで加熱ユニットに結合されたねじ付きシャフトと
を備える、装置。
【請求項31】
温度を感知し、温度調節器に温度情報を提供するセンサをさらに備える、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
加熱ユニットが眼瞼と接する際の圧力を測定する圧力センサをさらに備える、請求項30に記載の装置。
【請求項33】
熱ヒートシンクが熱伝導ゴム部材、熱伝導シリコン部材、カプセル化流体含有部材、および固体伝導部材からなる群より選択される、請求項30に記載の装置。
【請求項34】
熱ヒートシンクから眼瞼への熱伝導を改善するために熱伝導ゲル、クリームまたは液体のうちの1つが使用される、請求項31に記載の装置。
【請求項35】
断熱材が、非熱伝導発泡エレメント、非熱伝導ゴムエレメント、および非熱伝導固体エレメントからなる群より選択される、請求項30に記載の装置。
【請求項36】
温度調節器が、加熱素子によって発せられる熱を調節するために加熱素子にパルス幅変調信号を印加する、請求項30に記載の装置。
【請求項37】
制御プロセッサをさらに備え、パルス幅変調信号が制御プロセッサの制御下で生成される、請求項36に記載の装置。
【請求項38】
温度調節器が、加熱素子によって発せられる熱を調節するために加熱素子に電気信号を選択的に印加するスイッチを備える、請求項30に記載の装置。
【請求項39】
制御プロセッサを備え、制御プロセッサの制御下で電流と電圧の少なくとも1つが加熱素子に印加される、請求項30に記載の装置。
【請求項40】
温度調節器が加熱素子に一定の連続した電力を供給する、請求項30に記載の装置。
【請求項41】
加熱ユニットが、眼瞼に適合するように眼瞼と接する柔軟な部分を備える、請求項30に記載の装置。
【請求項42】
加熱ユニットが眼瞼と接する剛性の部分を備え、剛性の部分が眼瞼の形状に適合するように成形されている、請求項30に記載の装置。
【請求項43】
ユーザに治療のための時間と温度の少なくとも一方を設定させるユーザインターフェースをさらに備える、請求項30に記載の装置。
【請求項44】
マイボーム腺からの分泌を刺激するための眼瞼の振動を発生させる振動発生器をさらに備える、請求項30に記載の装置。
【請求項45】
指定温度範囲が37℃超である、請求項30に記載の装置。
【請求項46】
指定温度範囲が、約45℃の前後の温度範囲を含む、請求項30に記載の装置。
【請求項47】
指定の治療時間の後に加熱素子への信号を遮断するタイマをさらに備える、請求項30に記載の装置。
【請求項48】
指定の治療時間が約10分から60分である、請求項30に記載の装置。
【請求項49】
加熱素子が抵抗加熱素子である、請求項30に記載の装置。
【請求項50】
眼瞼接触機構の一部分が使い捨てである、請求項30に記載の装置。
【請求項51】
加熱器が眼瞼マイボーム腺に加える圧力の量を設定する調整手段をさらに備える、請求項30に記載の装置。
【請求項52】
患者の眼瞼の少なくとも一方に調節された熱を供給する装置であって、
電気信号が印加されたときに患者の眼瞼に伝わる熱を発生する抵抗加熱素子を有する加熱ユニットと、
加熱素子の指定温度範囲までの加熱を達成するために加熱素子に電気信号を印加する温度調節器と
を備える、装置。
【請求項53】
抵抗加熱素子から眼瞼に熱を伝えるために抵抗加熱素子の表面に結合された熱ヒートシンクをさらに備える、請求項52に記載の装置。
【請求項54】
表面からの熱損失を低減するために抵抗加熱素子の表面に結合された断熱材をさらに備える、請求項52に記載の装置。
【請求項55】
眼瞼との接触を達成するよう加熱ユニットを移動させるために加熱ユニットに調整可能に結合された保護眼鏡をさらに備える、請求項52に記載の装置。
【請求項56】
加熱素子から眼瞼に熱を伝えるために抵抗加熱素子の表面に結合された熱ヒートシンクをさらに備える、請求項52に記載の装置。
【請求項57】
加熱素子の表面からの熱損失を低減するために抵抗加熱素子の表面に結合された断熱材をさらに備える、請求項52に記載の装置。
【請求項58】
温度調節器が、加熱素子によって発せられる熱を調節するために抵抗加熱素子にパルス幅変調電気信号を印加する、請求項52に記載の装置。
【請求項59】
温度調節器が、加熱素子によって発せられる熱を調節するために抵抗加熱素子に電流と電圧の少なくとも1つを選択的に印加するスイッチを備える、請求項52に記載の装置。
【請求項60】
制御プロセッサを備え、制御プロセッサの制御下で電気信号が印加される、請求項52に記載の装置。
【請求項61】
加熱ユニットが、眼瞼に適合するように眼瞼と接する柔軟な部分を備える、請求項52に記載の装置。
【請求項62】
加熱ユニットが眼瞼と接する剛性の部分を備え、剛性の部分が眼瞼の形状に適合するように成形されている、請求項52に記載の装置。
【請求項63】
加熱ユニットを眼瞼に直接取り付けるための接着材をさらに備える、請求項52に記載の装置。
【請求項64】
加熱ユニットが接着テープの使用により眼瞼に取り付けられる、請求項52に記載の装置。
【請求項65】
ユーザに治療のための時間と温度の少なくとも一方を設定させるユーザインターフェースをさらに備える、請求項52に記載の装置。
【請求項66】
マイボーム腺からの分泌を刺激するための眼瞼の振動を発生させる振動発生器をさらに備える、請求項52に記載の装置。
【請求項67】
患者の頭部に取り付け、患者の眼瞼をレンズピースで覆うのに適した保護眼鏡をさらに備え、加熱ユニットが移動可能なようにレンズピースに取り付けられている、請求項52に記載の装置。
【請求項68】
指定温度範囲が37℃超である、請求項52に記載の装置。
【請求項69】
指定温度範囲が約44℃から47℃を含む、請求項52に記載の装置。
【請求項70】
指定の治療時間後に加熱素子への電流を遮断するタイマをさらに備える、請求項53に記載の装置。
【請求項71】
指定の治療時間が約10分から60分である、請求項70に記載の装置。
【請求項72】
指定の治療時間が約15分である、請求項70に記載の装置。
【請求項73】
加熱ユニットが眼瞼と接する際の圧力を測定する圧力センサをさらに備える、請求項52に記載の装置。
【請求項74】
患者の眼瞼の少なくとも一方を調節された熱を用いて治療する方法であって、
患者の眼瞼と接する加熱素子を備える加熱ユニットを配置すること、および
加熱素子に制御信号を印加して加熱素子において熱を発生させ、生成された熱を規定の期間にわたって眼瞼に伝えること
を備える、方法。
【請求項75】
規定の期間の満了後に制御信号を除去することをさらに含む、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
配置することが、
加熱素子を含む調整可能な眼接触部を備える保護眼鏡を患者に取り付けること、および
眼瞼との接触を達成するように眼接触部を調整すること
を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
配置することが、接着テープのストリップを使ってアイピースを患者の眼瞼にテープ止めすることを含む、請求項74に記載の方法。
【請求項78】
配置することが、医療用両面接着テープを使って患者の眼瞼にアイピースを取り付けることを含む、請求項74に記載の方法。
【請求項79】
取り付けることが、接着用アタッチメントを使って眼瞼にアイピースを取り付けることを含む、請求項74に記載の方法。
【請求項80】
熱が摂氏37°を超えるまで発せられる、請求項74に記載の方法。
【請求項81】
患者の眼瞼に振動を加えることをさらに含む、請求項74に記載の方法。
【請求項82】
規定の期間が約10分から60分である、請求項74に記載の方法。
【請求項83】
患者の上眼瞼と下眼瞼の両方に適用される、請求項74に記載の方法。
【請求項84】
患者の両眼のうちの少なくとも一方の眼瞼に適用される、請求項74に記載の方法。
【請求項85】
加熱ユニットが眼瞼と接する際の圧力を測定することをさらに含む、請求項74に記載の方法。
【請求項86】
加熱素子が抵抗加熱素子である、請求項74に記載の方法。
【請求項87】
プログラムプロセッサ上で実行されると、請求項74に記載の方法を実行する命令を格納しているコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項88】
眼瞼を加熱し、少なくとも4分以上60分未満にわたって規定の温度を維持し、同時に眼瞼に機械エネルギーおよび圧力を加えることを含む、哺乳類の眼瞼を治療する方法。
【請求項89】
60分未満の期間にわたって少なくとも1つの哺乳類の眼瞼に持続的な調節された熱を加えること、およびマイボーム腺閉塞を除去するために、加熱時に、または加熱後3分以内に眼瞼に力を加えることを含む、少なくとも1つの哺乳類の眼瞼を治療する方法。
【請求項90】
哺乳類の眼瞼に制御された加熱を供給する装置であって、
指定温度範囲内の熱を発生する手段を有する加熱ユニットと、
加熱ユニットを眼瞼と接するように結合する眼瞼接触機構と、
加熱ユニットの眼瞼との接触を調整する手段と
を備える、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2010−504769(P2010−504769A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525537(P2009−525537)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/000508
【国際公開番号】WO2008/039221
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(509050214)テイアサイエンス・インコーポレーテツド (8)
【Fターム(参考)】