説明

マウント装置及びマウント方法

【課題】極薄チップ(特に単層)の反りや破損を生ずることなく該チップのピックアップ及び/またはリリース動作を精密に行うことのできるマウント装置及びマウント方法の提供。
【解決手段】先端から懸垂される第1の液滴26によって小片の第1の面を吸着することのできる、互いに絶縁された第1及び第2の電極34,72が設置されたピックアップであって、前記ピックアップを移動させる搬送機構と、第2の位置近傍に所在し、先端から湧出される2の液滴76によって前記小片の第2の面を吸着することのできる、互いに絶縁された第3及び第4の電極が設置されたマウント先液滴湧出機構と、前記第1の電極及び第2の電極間に電位を印加して、及び/または前記第3の電極及び第4の電極間に電位を印加して、前記第1及び/または、第2の液滴の表面張力を変化させるための第1及び/または第2電位発生源とを具備したマウント装置及びマウント方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はたとえばマウント装置及びマウント方法に係り、特に、単層の極薄チップ等の小片を所望の場所でピックアップ、リリースするマウント装置及びマウント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップをマウントする際には、チップ或いは電子部品をピックアップして、プリント基板などの所定位置に配置・接合するマウンターにおいて、ピックアップ及びリリースには先端に真空コレットを擁したノズルによる真空吸着のON/OFF動作によって動作している。すなわち真空吸着によって、チップを吸着し、所望位置まで移動させた後にそれをリリースすることでマウント動作を完了する、という技術が主流となっていた。
【0003】
しかしながら、半導体技術分野の驚異的な速度をもった進展により、昨今、数十ミクロン以下厚の、いわゆる極薄チップが世に出てきている。この手のチップはこれまでの約1/7〜1/10の薄さを有しており、容量の増大化、小型化のニーズにも合致するため、益々その活躍の場を拡大しつつある。これに加え、貫通部分を有するチップなど、チップ自体の多様化、多種化が進展している。
【0004】
こうした動きに伴い、半導体製造装置、半導体製造等の技術分野においては、これまでにないタイプである、極薄厚の半導体チップや貫通部分を持つMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)チップなどをマウントする必要性が出てきた。前者の場合には、極薄であるがゆえに真空吸着にてチップを破損したり、また膜応力によりチップ自体が反りを持っている場合には真空吸着が効かない恐れがあった。後者の場合についても、貫通部分を有するために真空吸着自体が使えないという問題があった。
【特許文献1】特開2005−33014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、真空吸着を初めとする従来の半導体チップのマウント技術を、極薄タイプのチップに対して用いた場合には、チップの反りや破損といった、通常のチップでは起こらなかったような新たな問題・課題が発生してしまい、ニーズの高い極薄チップの製造に対して支障となっているのが現状である。
【0006】
この場合、特許文献1のように、液滴の表面張力を利用して、チップのピックアップ及びリリースを行うという技術思想もあるが、液滴に対する精密な制御、微小な液滴の表面張力というミクロレベルに相応した細かい制御は為し得ていないのが現状である。つまり、液滴という分子間力の一種を数十ミクロンの精度を要する実用的レベルで制御するには至っていない。微小寸法レベルでの正確、精密なピックアップ及び/またはリリース動作が為されえなかったために、液滴利用によるピックアップは実用的なレベルではなかった。
【0007】
本発明は、このような従来技術上の課題を解決するためになされたもので、極薄チップ(特に単層)を対象とした半導体製造において、チップの反りや破損を生ずることなくチップのピックアップ及び/またはリリースを行うことを前提としつつ、ピックアップ及び/またはリリース動作を精密に行うことを可能とする、マウント装置及びマウント方法を提供することを目的とする。
【0008】
また本発明は、精密度を有する液滴利用によるピックアップを実用的なレベルで実現するマウント装置及びマウント方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係るマウント装置は、先端から懸垂される液滴によって小片の吸着を行うことのできるピックアップであって、互いに絶縁された第1及び第2の電極が設置されたピックアップと、前記ピックアップを第1の位置から任意の第2の位置まで移動させる搬送機構と、前記第1の電極及び第2の電極間に電位を印加して、かかる電位によるEWOD(Electrowetting on Dielectric)を利用して前記液滴の表面張力を変化させるための電位発生源とを具備して構成される。
【0010】
ここで、「電位発生源」とは、ノズルやピックアップの先端から懸垂される液滴に対して、いわゆるEWOD(Electrowetting on Dielectric)と呼ばれる方法により、ノズルやピックアップ内に設置された互いに絶縁された第1及び第2の電極に対して電圧を印加することによって、当該液滴の表面張力の濡れ性勾配を制御する機能を持った機構をいい、具体的には、たとえばノズルの横断面において平面視半円部分の一方を第1の電極とし、これと絶縁層を介して隣接する反対側半円部分を第2の電極とし、これら電極間に電位を発生させる発生源を備える機構によって実現することができる。この場合、かかる半円部分の双方は縦断面視でずれていてもよい。或いは代替的に、ノズルとして、略同軸で互いに絶縁される2重構造の管状のものとし、外側管を第1電極、内側管を第2電極とし、これら2つの電極間に電位を発生させる発生源を備える機構によっても実現することができる。
【0011】
またここで、「小片」とは、半導体チップ或いは電子部品を含めた極めて小型かつ薄型の対象物をいい、特に数ミクロン以下厚の半導体チップを含む(以下同)。
【0012】
かかる構成を備える本発明によれば、チップ(たとえば半導体チップ)をノズルもしくはピックアップから液滴を用いてピックアップする際に、かかるノズルもしくはピックアップに設置された(好適には、ノズルもしくはピックアップの先端部に埋め込まれた)第1の電極及び第2の電極間に電位発生源が電位を印加することで、かかる液滴に対して、電界が発生するので、ノズルもしくはピックアップの先端部に発生されたこの液滴の濡れ性勾配を自在に変化させ得、これにより液滴の表面張力が変化するので、所望のピックアップ動作を精密に制御することができる。したがって、真空吸着によった場合には反りや破損の生ずるような極薄チップを対象としてピックアップ動作を行う場合においても、チップへの余分な応力を発生させることを防止し、チップの反りや破損を未然に防ぎつつ精密なマウントを行うことが可能となる。
【0013】
また、本発明に係るマウント装置は、先端から懸垂される第1の液滴によって小片の第1の面を吸着することのできるピックアップであって、互いに絶縁された第1及び第2の電極が設置されたピックアップと、前記ピックアップを第1の位置から任意の第2の位置まで移動させる搬送機構と、前記第2の位置近傍に所在し、先端から湧出される2の液滴によって前記小片の第2の面を吸着することのできるマウント先液滴湧出機構であって、互いに絶縁された第3及び第4の電極が設置されたマウント先液滴湧出機構と、前記第1の電極及び第2の電極間に電位を印加して、かかる電位によるEWOD(Electrowetting on Dielectric)を利用して前記第1の液滴の表面張力を変化させるための第1電位発生源、及び、前記第3の電極及び第4の電極間に電位を印加して、かかる電位によるEWOD(Electrowetting
on Dielectric)を利用して前記第2の液滴の表面張力を変化させるための第2電位発生源のうちの少なくとも一方とを具備して構成される。
【0014】
かかる構成を備える本発明によれば、チップ(たとえば半導体チップ)をノズルから第1の液滴を用いてピックアップする際、及び/または、ピックアップされたチップを移動させた後に第2の液滴を用いて保持面にマウントする際に、第1電位発生源及び/または第2電位発生源が、かかるノズルもしくはピックアップに設置された(好適には、ノズルもしくはピックアップの先端部に埋め込まれた)第1の電極及び第2の電極間に、及び/または、マウント先液滴湧出機構に設置された(好適には、かかる機構のノズルの先端部に埋め込まれた)第3の電極及び第4の電極間に、電位を印加させることで、第1の液滴及び/または第2の液滴に対して、電界を発生させるので、たとえばかかるノズルもしくはピックアップの先端部に発生されたこの第1の液滴及び/または第2の液滴の濡れ性勾配をそれぞれ自在に精密レベルで変化させることができる。これにより第1の液滴及び/または第2の液滴の表面張力が変化するので、所望のピックアップ動作及びリリース・マウント動作を制御することができる。したがって、真空吸着によった場合には反りや破損の生ずるような極薄チップを対象としてピックアップ動作及びリリース・マウント動作を行う場合においても、チップへの余分な応力を発生させることを防止し、チップの反りや破損を防ぎつつ精密なマウントを実現することが可能となる。
【0015】
これらの構成に加えて、前記第1の液滴もしくは前記第2の液滴を加熱する加熱装置を更に具備するように構成してもよい。或いは、前記第2の液滴の表面張力は、前記第1の液滴の表面張力より大きいように構成することもできる。または、前記第1及び第2の液滴の少なくとも一方に対して減圧をかける減圧部をさらに備えるように構成しても良く、或いは前記第1及び第2の液滴の少なくとも一方は複数個生成されるように構成しても良い。
【0016】
これらの構成を備えることによれば、第1の液滴および第2の液滴のうちの所望のものを加熱、減圧により取り除くことで、或いは第2の液滴による吸着力を第1の液滴による小片上部への吸着力より大きくすることによって第1の液滴による吸着を剥ぎ取る動作において、EWODの技術を組み合わせることができるので、液滴を利用したチップのピックアップ、マウント動作をより精密かつ正確に制御することができる。
【0017】
また、これらの場合のマウント装置において、前記小片は同一直線状にはない少なくとも3点(第1パターン)位置に配置されたパットを裏面に有し、前記マウント先液滴湧出機構は同一直線状にはない少なくとも3点(第2パターン)位置に配置されたノズルを表面に有し、前記第1パターン及び第2パターンは互いに対応するものであるように構成することもできる。この場合、好適には、かかるパットは第2の液滴に対する親液性、すなわちかかる液滴と親和性を有する性質を有する素材を選択する。
【0018】
「同一直線上にはない少なくとも3点」とは、かかる3点によって平面座標の2軸(必ずしも両者は互いに直交していなくともよい)を構成できるために十分な3点をいう。これにより、平面上の座標が定められることになり、位置制御が可能となる。
【0019】
かかる構成を備える本発明によれば、小片をマウント目的場所にマウントする際に、マウント先液滴湧出機構から湧出された第2の液滴上に小片が仮位置で載置されると、(好適には、小片下面に配置されたパットもしくはバンプがかかる第2の液滴に対する親液性を有していることから、)この第2の液滴にはその表面張力を最小化する方向に力が働く。このとき、このパットもしくはバンプは同一直線上にはない少なくとも3点を含む複数点が配置される第1パターンにしたがって配置されており、その素材と対をなす対象である、マウント位置におけるノズルは第1パターンと対応する第2パターンにしたがって配置されているため、並行しない二つの軸によって液滴の表面張力の力の方向(及び座標)を特定することが可能である。換言すれば、第1のパターンと第2のパターンとを精密なレベルで予め形成しておくことで、第2の液滴に小片が載った際に働く表面張力の方向を平面座標的に制御することができる。これに加えて、かかる第2の液滴を複数設けた場合には、かかる第2の液滴によるチップの吸着力を当該液滴が単数の場合に比して増大させ、この力によってピックアップ用である第1の液滴の吸着力からマウント対象チップを剥ぎ取ることが容易化することとなる。
【0020】
さらに、本発明は、互いに絶縁された第1及び第2の電極が設置されたピックアップのノズルの先端から液滴を懸垂し、前記液滴に吸着せしめることによってピックアップ対象の小片を吸着し、前記吸着された小片を第1の位置から任意の第2の位置まで移動させる、マウント方法において、前記液滴に対して、電位発生源により前記第1の電極及び第2の電極間に電位を印加して、かかる電位によるEWOD(Electrowetting on Dielectric)を利用して前記液滴の表面張力を変化させることを特徴とするマウント方法としても実現できる。
【0021】
かかる構成を備える本発明によれば、チップ(たとえば半導体チップ)をノズルから液滴を用いてピックアップする際に、かかるノズルもしくはピックアップに設置された(好適には、ノズルもしくはピックアップの先端部に埋め込まれた)第1の電極及び第2の電極間に電位発生源が電位を印加することで、かかる液滴に対して、電界が発生する。この電界により液滴の濡れ性勾配を自在に変化させ得、これにより液滴の表面張力が変化するので、所望のピックアップ動作について十分に精密な制御が可能なチップマウント方法を提供することができる。したがって、真空吸着によった場合には反りや破損の生ずるような極薄チップを対象としてピックアップ動作を行う場合においても、チップへの余分な応力を発生させることを防止し、チップの反りや破損を防ぎつつ精密なマウントを実現することが可能となる。
【0022】
また、本発明は、互いに絶縁された第1及び第2の電極が設置されたピックアップの先端から第1の液滴を懸垂し、前記第1の液滴を湧出して該液滴に吸着せしめることによってピックアップ対象の小片の第1の面を吸着し、前記吸着された小片をマウント先場所にまで移動させ、前記マウント先場所近傍に所在するマウント先液滴湧出機構であって互いに絶縁された第3及び第4の電極が設置されたマウント先液滴湧出機構の先端から第2の液滴を湧出して前記小片の第2の面を吸着し、前記略マウント先場所において前記小片をリリースするマウント方法において、前記第1及び/または第2の液滴に対して、それぞれ前記第1・第2の電極間及び/または前記第3・第4の電極間に電位を印加して、かかる電位によるEWOD(Electrowetting on Dielectric)を利用して前記第1及び/または第2の液滴の表面張力を変化させることを特徴とするマウント方法としても実現できる。
【0023】
また、上記の場合、前記第1の液滴を加熱する加熱装置を更に具備するように構成してもよく、このように構成された場合には、所望のマウント先等において加熱装置が第1の液滴(或いは第2の液滴)を加熱し蒸発させるので、第1の液滴の表面張力が消滅して、ピックアップされていた極薄チップのピックアップのみならずリリース動作も、チップの反りや破損を生ずることない上に、容易に行えることとなる。
【0024】
さらに、上記の場合、前記第2の液滴の表面張力は、前記第1の液滴の表面張力より大きくなるように構成してもよく、このように構成された場合には、所望のマウント先の第2の液滴の表面張力が第1の液滴の表面張力に勝るために、ピックアップされていたチップは第1の液滴からそぎ取られて所望のマウント先である第2の液滴部位においてリリースされることとなり、極薄チップのピックアップのみならずリリース動作も、チップの反りや破損を生ずることのない上に、容易に行えることとなる。
【0025】
またさらに、上記の場合、前記第1の液滴及び第2の液滴の少なくとも一方に対して減圧をかける減圧部をさらに備えるように構成してもよく、このように構成された場合には、第1の液滴及び第2の液滴のうちの所望のものに対して減圧部が減圧により気化しやすくするために、第1及び第2の液滴の表面張力を自在に制御することが容易となり、結局、極薄チップのピックアップ及びリリース動作を、チップの反りや破損を生ずることなしに、容易に行えることとなる。
【0026】
本発明においては、チップのピックアップを、真空吸着ではなく、水その他の液体の表面張力を用いて行う。すなわち、ノズル表面に微小な液滴を作った後、チップに接触させて吸着させる。ピックアップしたチップをリリースするには、ノズル先端の液滴を加熱することで蒸発させる、空気圧を減圧することで気化しやすい雰囲気中で蒸発させる、マウント先に第2の液滴を配置し、この表面張力によってチップを剥がすようにする、等の方法を用いる。このピックアップ及びリリースにおいて、液滴について、いわゆるEWOD(Electrowetting on Dielectric)と呼ばれる方法を用いてその表面張力の濡れ性勾配を制御する。このEWODでは、電極間に印加する電位に応じて液滴の表面張力についての細かい制御、電位に応じた精密制御が可能である。
【0027】
換言すれば、本発明によれば、真空吸着ではなく水その他の液体の表面張力でチップを吸着するので、反りを生ずる可能性のある極薄チップや貫通部分を持つMEMSチップであっても破損することなく、ピックアップすることができる。また、保持している液滴を加熱等により蒸発させ、或いは別の液滴によって引き剥がすので、ダメージなくチップをリリースすることができる。しかも、これらの効果に加えて、チップマウントを行うノズル及び/又はマウント先保持面における液滴に対して発生させる電界によって第1の液滴及び/又は第2の液滴の表面張力が変化することで所望のピックアップ動作及びリリース・マウント動作を精密に制御することができる。結論的にいえば、極薄チップの製造において、チップの反りや破損を防止した精密な製造が可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明においては、チップのピックアップ及びリリースを、真空吸着ではなく、水その他の液体の表面張力を用いて行うのみならず、液滴について、いわゆるEWODを用いてその表面張力を制御する。したがって、電極間に印加する電位に応じて、液体の表面張力の精密制御が可能である。したがって、極薄チップの製造において、チップの反りや破損を防止した精密な製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係るチップマウント装置の全体の概略構成を示した構成概念図である。同図には本発明の説明に必要な箇所のみを示しており、その他の事項については従来から公知である技術を採用している。
【0031】
同図に示すように、本発明のチップマウント装置1は、装置全体の動作を制御する全体制御部10と、製造対象であるチップ3のピックアップに関する諸々の機能を司るピックアップ装置20と、ピックアップ装置20先端のピックアップノズル20Aから滴出される液滴26に対して電位を印加するべく、互いに(図示しない)絶縁物を介して配置される第1の電極32、第2の電極34と、第1の電極32、第2の電極34間に電位を発生させて液滴26の表面張力の精密な制御を行う第1電位発生機構30と、ピックアップされたチップ3をマウント目的箇所7にまで搬送する搬送機構40と、マウント先で液滴26を加熱蒸発させる加熱機構50と、液滴26の気化点を下げ蒸発を促進するための減圧機構60と、マウント目的箇所7でチップ3を吸着させるのに用いる第2の液滴を生成する第2液滴湧出機構70と、第2液滴湧出機構70先端に表出される液滴76に対して電位を印加するべく、互いに(図示しない)絶縁物を介して配置される第1の電極72、第2の電極74と、第1の電極72、第2の電極74間に電位を発生させて液滴76の表面張力の精密な制御を行う第2電位発生機構80とを備えて構成される。
【0032】
なお、第1の液滴26を(実質的に)除去するための機構である、加熱機構50、減圧機構60や、第2液滴湧出機構70、第2電位発生機構80については、必ずしもこれら総てを具備する必要はなく、これらのうちの一部のみを選択的に備える構成であっても本願の目的とするところを達成することが可能である。
【0033】
全体制御部10は、装置全体の制御の他、ピックアップ装置20、第1電位発生機構30、搬送機構40、加熱機構50、減圧機構60、第2液滴湧出機構70、第2電位発生機構80の各機構・装置の細かい制御及び動作タイミングの制御・管理等を、たとえば制御ソフトウェア或いは制御回路によって行う機能を有する部分であり、これはかかる機能を果たすソフトウェア、回路、ソフトウェアを搭載した記憶媒体等として実現される。
【0034】
先端にピックアップノズル20Aを具備するピックアップ装置20は、その内部もしくは近傍に第1の液滴生成機構22と第1の液滴懸垂機構24とを備える。第1の液滴生成機構22は、(図示しない)液体供給源から供給される水もしくは油その他の液体を微小な液滴として生成する機能を有する。この場合、液滴の種類はチップの吸着を行うのに十分な性能(半導体チップとの相性、安全性、操作容易性等)を有するものであればよく、種類を限定されるものではない。第1の液滴懸垂機構24は、第1の液滴生成機構22で生成された液滴26を先端部から懸垂させる機能を有する。
【0035】
第1電位発生機構30は、チップ3を液滴26によって吸着してピックアップする際に、液滴26に対して電位を印加することで、液滴26の濡れ性勾配を電位によって変動させて表面張力を変化させ、これによってピックアップ動作を細かく精密に制御するための機構である。こうした濡れ性勾配を制御し得るようにするため、たとえば図1Aに示すように、ノズル24の横断面(同図(B))において平面視上、一方の半円部分32を第1の電極とし、これと絶縁層80を介する反対側半円部分34を第2の電極とし、これら電極間に電位を発生させる発生源を備える機構(図示しない)によって実現することができる。この際には、半円部分32と半円部分34とは、ノズル24の縦断面である同図(A)に示されるように、平面視ほぼ等分に分割して段差を設けた上で、ノズル断面に沿った形もしくは貼り付くような形で電極32と電極34とが縦断面視でずれるように区分けして形成するようにしてもよい。また、段差は同図に示すような1段分だけでなく、例えば1/2段分などのような任意の段差であってよく、電極32、34が液滴26に対して電位を印加できるような任意の位置であってよい。
【0036】
或いは代替的に第1電位発生機構30は、たとえば図1Bに示すように(同図中、(A)は縦断面を、(B)は横断面を、それぞれ示す)、ノズル24を、絶縁物80を介して略同軸に配置される管状物241、242からなる2重構造の管状のものとし、外側管241の先端部に第1電極32、内側管242の先端部に第2電極34を配置し、これら2つの電極間に電位を発生させる発生源を備える機構(図示しない)によって実現してもよい。これらの第1電極32、第2電極34は本質的に、液滴26の濡れ性勾配を変化させるために十分可能な任意の位置にあればよく、図示した位置に限定されずに配置することが可能である。
【0037】
また、これら図1A、図1Bは第1の液滴懸垂機構24の先端について説明するための図であるが、(後述する)第2の電位発生機構80先端についても同様な方法を採用することが可能である。
【0038】
図1に戻り、搬送機構40は、ピックアップ装置20によってピックアップされたチップ3を、液滴26の表面張力による吸着を維持したまま、所望のマウント先7もしくはその近傍にまで搬送する機能を有し、図示しないアーム、ローラー、動力源等を備えて構成される。
【0039】
加熱機構50は、チップ3のマウント先箇所7近傍に設置され、液滴26に対して温度を加える機能を有する。
【0040】
減圧機構60は、ピックアップ装置20先端の一定範囲を画し(図示しない)、この範囲を減圧する機能を有する。
【0041】
第2液滴湧出機構70は、マウント目的箇所7でチップ3を吸着させるための第2の液滴76を生成し、たとえばノズル先端から第2の液滴76を湧出させる機能を有する。この第2の液滴が湧出された直後は、チップ3を上部から液滴26、下部から液滴76が挟むような状態となる。
【0042】
第2電位発生機構80は、液滴26によってピックアップされているチップ3を液滴76によって吸着して剥ぎ取る動作を行う際に、液滴76に対して電位を印加することで、液滴76の濡れ性勾配を電位によって変動させて表面張力を変化させ、これによって剥ぎ取り・吸着動作を細かく精密に制御するための機構である。こうした濡れ性勾配を変更し得るようにするべく第2電位発生機構80は、図1A、図1Bで示した構成と同様の構成を有するものであり、ここでは特に図示しない。これらの第1電極、第2電極は本質的に、液滴76の濡れ性勾配を変化させるために十分可能な任意の位置にあればよく、図示した位置に限定されずに配置することが可能である。
【0043】
また第1電位発生機構30と第2電位発生機構80とは、必ずしも総ての場合にその双方を具備する必要はなく、一方のみを備える構成であっても、本願の目的とするところは達成することができる。
【0044】
次に、このように構成されるチップマウント装置1の動作を説明する。
【0045】
図2は、チップマウント装置1の動作を説明するための概念図である。同図において、(a)は主にピックアップ動作段階を、(b)はマウント先での液滴76によるチップの吸着段階を、(c)はピックアップに用いた液滴26による吸着が解かれた段階を、(d)は(c)の液滴吸着解放動作を種類ごとに説明するためのもので、(d−1)は加熱による解放、(d−2)は第2の液滴による表面張力を比較的に大きなものとして剥ぎ取ることによる解放、(d−3)はピックアップ装置20の先端周辺の一定範囲に対して減圧を加えることにより液滴26の気化を促進することによる解放を、それぞれ示している。なお、本図に限らず以降の図においても、液滴の形状、ピックアップ装置の形状、チップの厚み等は概念的に示したものであって、必ずしも現実的形状等を寸法・形状的に正確に反映したものではない。
【0046】
また、図2に示す例においては、液滴26をEWOD(Electrowetting on Dielectric)法での濡れ性勾配の電位印加による制御を行うための第1の電極32を第1の液滴懸垂機構24の先端部に配置し、第2の電極34を第1の液滴懸垂機構24の先端部であって第1の電極32とは絶縁物80(図示しない)によって絶縁される位置に配置する例を示している。また、液滴76についてのEWOD法に伴う第1の電極72を第2液滴湧出機構70の上端部に配置し、第2の電極74を第2液滴湧出機構70の上端部であって第1の電極72とは絶縁物80(図示しない)によって絶縁される位置に配置する場合を取り上げている。これらの電極32、34、72、74の配置位置としては、本質的に、それぞれ液滴26、76の濡れ性勾配を変化させるために十分可能な任意の位置にあればよく、図示した位置に限定されずに配置することが可能である。
【0047】
たとえば、チップ3中で電極を埋め込むような構成とすることも可能である(図示しない)。さらには、これら第1の電位発生機構30と第2の電位発生機構80を上記のように分割するのでなく、統合的な電位発生機構として液滴26及び/もしくは液滴76を制御するようにしてもよい。
【0048】
図2(a)のピックアップ動作段階について説明する。図3は、このピックアップ動作を詳細に説明するための図で、(a)は、ピックアップ前の液滴を表出させた状態を示す概念的斜視図、(b)は液滴にチップを吸着させた状態を示す断面図である。たとえば図示しない製造装置上に載置された半導体チップ3の頭上にあって十分近接して配置されるピックアップ装置20の内部もしくは近傍に位置する第1の液滴生成機構22にて第1の液滴26を発生させ、これをたとえばノズル20Aに挿設されている第1の液滴懸垂機構24の先端から懸垂させる(図3(A))。このとき、液滴26は十分に微小であり、チップ3が十分軽量かつ極小であるがゆえに、その表面(図の下側)に生じた表面張力によって、チップ3はピックアップ装置20先端部、液滴懸垂機構24に吸着される(図3(B))。よってピックアップ装置20に吸い付いて宙にピックアップされた状態となる(図2(a)左側)。この際には、第1電位発生機構30によって第1の電極32及び第2の電極34間に電位を印加して、液滴26の表面張力を濡れ性勾配の変化を起させることで制御することで最適の表面張力を得るようにする。
【0049】
ここで、液滴の濡れ性勾配の電位を用いた制御について説明する。図4は、電位により液滴の濡れ性勾配を変化させ表面張力を制御する技術の一般的な考え方を示す図である。図4に示すように、第1の電極と第2の電極との間で電位を生じさせ、この電位によって液滴の濡れ性勾配が変化する。この場合、液滴(液体)と表面7Aとの相性、すなわち表面7Aの親液性、疎液性によっても液滴の勾配・挙動は異なり得る。なお、第1の電極と第2の電極とは絶縁されているものとする。
【0050】
図2(a)のピックアップ動作段階についての説明に戻る。上記のピックアップ・吸着状態を維持したまま、搬送機構40がかかるチップ3を、所望のマウント先7もしくはその周辺にまで搬送する(図2(a)右矢印)。
【0051】
一方、搬送先であるマウント目的箇所7では、第2液滴湧出機構70が第2の液滴76を生成し、その表面7Aに湧出させる(図2(a)右側)。或いは代替的に、液滴76の湧出は、図2(a)左側の動作とは別にすでに湧出されている。
【0052】
次に、図2(b)のマウント先でのチップの吸着段階について説明する。マウント先では、ピックアップ装置20が下降してチップ3の下面が第2の液滴76と接する状態となる(図2(b))。このステップで、或いはその後に、第1電位発生機構30によって第1の電極32及び第2の電極34間に電位を印加して、液滴26の表面張力を濡れ性勾配の変化を起させることで制御することで、液滴26に係る表面張力を最適のものとすることが可能である。また、これとは独立に或いは連動させて、第2電位発生機構80によって第1の電極72及び第2の電極74間に電位を印加して、液滴76の表面張力を濡れ性勾配の変化を起させることでこれを制御するようにすることも可能である。
【0053】
図5は、濡れ性勾配の電位による制御をこの第2電位発生機構80として実現する技術的概念をさらに説明するための概念的断面図である。同図(A)に示すように第1の電極72及び第2の電極74間に電位が印加されていない場合の液滴76の濡れ性勾配が、同図(B)に示すように通電して電位が印加されると、EWODの電気物理的性質によって、変動する。この性質を用いて、液滴によるチップのピックアップ及びリリース動作を精密に制御することができる。このとき、液滴の接する表面材7の材質(たとえば液滴が水の場合には、表面材7の親水性、疎水性等)、電位の向き・大きさ等によって液滴制御の詳細は変動しうる。なお、同図では、第1の電極72が表面材7とは空間的に離隔した位置に配置される場合を示しているが、第1の電極72及び第2の電極74が互いに絶縁された上で、共に表面材7上等に配置されてもよい。
【0054】
次に、図2(c)のピックアップに用いた液滴26による吸着が解かれた段階について説明する。第1の液滴26による吸着を解除し、第2の液滴76のみによりチップ3が吸着される状態として、マウント動作を終了する(図2(c))。
【0055】
次に、この第1の液滴26の吸着の解除動作の複数の形態について、さらに詳細に説明する。
【0056】
まず、図2(d−1)の加熱による場合には、ピックアップ装置20先端付近に配置される加熱機構50によって、第1の液滴26を加熱することで、液滴26を蒸発せしめ、これにより液滴26の表面張力が霧散するから、結果的に第2の液滴76による吸着のみが残存し、所望位置へのマウント動作が完了する(図2(d−1))。図6は、この加熱による液滴26の蒸発の様子を概念的に示す断面図である。同図に示されるように、液滴26が加熱機構50により加熱されることで蒸発すれば、液滴76の吸着力のみが働くことになり、ピックアップ動作は解除される。また、この加熱機構50は、第2の液滴76の蒸発に用いることも可能である。
【0057】
次に、図2(d−2)の、第2の液滴の表面張力を大きくとることで第1の液滴から引き剥がす技術を用いる場合について説明する。先に説明した加熱による液滴蒸発に換えて、或いはこれと共に、第2の液滴76の表面張力を第1の液滴26の表面張力よりも大きくすることで、第2の液滴76がチップ3を引き剥がすようにする。第2の液滴76の表面張力を第1の液滴26の表面張力よりも大きくするための実現手段としては、2つの液滴の材質を変える(第2の液滴76の表面張力の方が第1の液滴26の表面張力よりも大きくなるような組合せとする)、2つの液滴の大きさを変える、2つの液滴の数を変える(単数もしくは複数の第2の液滴76の表面張力の合計が、単数もしくは複数の第1の液滴26の表面張力の合計よりも大きくなるような液滴剤の組合せとする)、などを選択的に、或いは組み合わせて、採用する。この結果、液滴26の表面張力が霧散するから、結果的に第2の液滴76による吸着のみが残存し、所望位置へのマウント動作が完了する(図2(d−2))。
【0058】
図7は、この第2の液滴の表面張力を大きくとることで第1の液滴から引き剥がす技術を概念的に示す断面図である。図7(A)に示されるように、液滴26の表面張力によってピックアップ状態が維持されたチップ3を所望のマウント場所にある目的地7の上部に配置してから徐々に下降させる。目的地7の上面には、予め或いは下降時に併せて第2の液滴76を形成しておく。ある位置においてチップ3の下面に第2の液滴76が接触すると、第2の液滴76の表面張力によってチップ3の下面には下方に引張力が作用する(図7には図示しない)。この場合に、第2の液滴76の表面張力を第1の液滴26の表面張力よりも大きなものを設定しておく(この実現手段については上記のとおり)ことにより、下方への引張力の方が勝る結果、チップは下の方向に引き剥がされることになる。結果として、図7(B)にあるように、第1の液滴26はチップ3との吸着が解除され、ピックアップ装置20は役割を終えて、上方に移動する。
【0059】
次に、図2(d−3)の、第1の液滴周辺の一定範囲を減圧することで第1の液滴の気化を促進する技術を用いる場合について説明する。先に説明した加熱による液滴蒸発の方法、第2の液滴76の表面張力を第1の液滴26の表面張力よりも大きくする方法に換えて、或いはこれらと共に、減圧による方法を用いてよく、この場合には、ピックアップ装置20先端付近に配置される減圧機構60によって、ピックアップ装置20周辺の一定区画を区切った上で、かかる区画に対して減圧処理を行う。この減圧により、第1の液滴26の気化が促進され、結果的に液滴26の表面張力が霧散して、第2の液滴76による吸着のみが残存する(図2(d−3))。
【0060】
以上詳細に説明したように、本願のチップマウント装置によれば、チップのピックアップを、真空吸着ではなく、水その他の液体の表面張力を用いて行う。すなわち、ノズル表面に微小な液滴を作った後、チップに接触させて吸着させる。ピックアップしたチップをリリースするには、ノズル先端の液滴を加熱することで蒸発させる、空気圧を減圧することで気化しやすい雰囲気中で蒸発させる、マウント先に第2の液滴を配置し、この表面張力によってチップを剥がすようにする、等の方法を選択的に、或いは組み合わせて用いる。このピックアップ及びリリースにおいて、液滴について、いわゆるEWOD技術を用いてその表面張力の濡れ性勾配を制御する。EWODでは、電極間に印加する電位に応じて液滴の表面張力についての細かい制御、電位に応じた精密な制御が可能であるため、本願での各液滴について、その表面張力を精密に制御することが可能となり、したがって、MEMSチップに適した微小寸法での微妙かつ厳密な製造・制御・管理技術が提供される。
【0061】
換言すれば、本発明によれば、真空吸着ではなく水その他の液体の表面張力でチップを吸着するので、反りを生ずる可能性のある極薄チップや貫通部分を持つMEMSチップであっても破損することなく、ピックアップすることができる。また、保持している液滴を加熱等により蒸発させ、或いは別の液滴によって引き剥がすので、ダメージなくチップをリリースすることができる。しかも、これらの効果に加えて、チップマウントを行うノズル先端部や、保持面上にそれぞれ絶縁して配置される第1及び第2の電極間に発生させる電界によって第1及の液滴び第2の液滴の表面張力が変化することで所望のピックアップ動作及びリリース・マウント動作を精密に制御することができる。結論的にいえば、極薄チップの製造において、チップの反りや破損を防止した精密な製造が可能となる。
【0062】
なお、上記において、第1の液滴、第2の液滴にそれぞれ電位を与えるための電極の配置箇所は上記に説明した箇所に限定されることはなく、対象となる液滴の濡れ性勾配を変動させることで表面張力を制御することができる環境を形成するものであれば、いかなる場所に配置するようにしてもよく、たとえば図8に示すような配置であってもよい。
【0063】
また、上記の説明では、ピックアップ装置を単数、第2液滴湧出機構についてそれぞれ単数の場合を例にとって説明したが、これらの一方もしくは双方を複数設置するような構成としてもよい。たとえば図9は、ピックアップ装置20を4個設置し、第1の液滴26が4個生成される場合を示したが、このように複数の液滴によって、液滴(合計)の表面張力がより強力になるため、所望のピックアップ及びリリース動作のより効果的な推進を図ることが可能となる。この場合、同図ではその他の構成要素の記載は省略してある。
【0064】
次に、本願発明の別の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、上記の実施形態で説明したものと同様の要素については、当該箇所の説明をもってこれに換え、以下では主に上記の形態と異なる箇所に重点を置き説明する。
【0065】
図10は、本発明の一実施形態に係るチップマウント装置1Aの全体の概略構成を示した構成概念図である。同図では、チップ3の厚さを無視して表記しているが、チップ3は実際には極薄の厚さを有している。また、同図では、図1に記載した構成を図示はしないが有しているものとし、具体的には、第1電位発生機構30、加熱機構50、減圧機構60、及び第2電位発生機構80を備えるが図示しない。
【0066】
チップ3は、図11(同図は、本願に係る半導体チップ3の構成の一例についての部分的断面を示した断面概念図である)にその一例が示されるように、その下面に、第2の液滴76に対する親液性を有する素材、たとえば金属によって形成される突起(パット)部320と、突起(パット)部320を取り囲むようにチップ3下面を覆うものであって、第2の液滴76に対する撥液性を有するパッシベーション部340とを備えて構成される。ここで、「親液性」とは、液滴に係る液体といわゆる「濡れる」性質を持つもの、当該液体との親和性を有する性質をいう。「撥液性」とは、この逆に、かかる液体をはじく性質をいう。分子レベルでは、液体分子とバンプ分子、パッシベーション分子との間で分子構造の組合せにより種々の組合せがあり、上記の金属とポリイミドの組合せ以外に様々な可能性が考えられ、本発明はこれら総ての場合に適用することができる。
【0067】
突起(パット)部320の素材としては、好適には、アルミニウム、銅、金等の金属を用いるが、素材が分子レベルで液滴76の分子との親和性が高い分子構造を持つものがよい。パッシベーション部340は、好適には、ポリイミドなどの有機膜とし、或いは、結晶粒が微細な針状の表面を持っているもの、素材が液滴の粒子をはじくもの、素材が分子レベルで液滴分子との親和性が低い分子構造を持つもの、などがよい。パッシベーション部340は必須ではなく、パッシベーション部340を有しない構成であってもよい。
【0068】
突起(パット)部320は、後述するように、平面上に座標軸を形成しうる、予めパターンニング(たとえば印刷)された位置である、少なくとも3箇所(本例では4箇所)に精密に配置・固定されている。この突起(パット)部320の配置位置パターンは、(後述する)第2液滴湧出機構70のノズル720の配置位置パターンと対応するものである。なお、本実施形態では第2液滴湧出機構70の実現例としてノズル720を例にとって説明しているが、これに限定されるわけではなく、たとえば先端に針を有しここから液滴を湧出させる機構を持つシリンジであってもよい。
【0069】
次に、チップ3のマウントの際のアラインメントの精度を確保するための、突起(パット)部320の配置位置パターン、及び、第2液滴湧出機構70のノズル720の配置位置パターンについて説明する。図12は、突起(パット)部320の配置位置パターンである第1パターン、及び、第2液滴湧出機構70のノズル720の配置位置パターンである第2パターンを概略的に示した説明図である。同図中、(a)〜(c)はチップ3の突起(パット)部320の配置位置パターンを説明するためのもの、(d)〜(f)は第2液滴湧出機構70のノズル720の配置位置パターンを説明するためのものである。(a)はチップ3の突起(パット)部320の配置位置パターン(第1パターン)の斜視図、(b)はA方向に見た底面図、(c)はA−A断面図である。(d)は第2液滴湧出機構70のノズル720の配置位置パターン(第2パターン)の斜視図、(e)は平面図、(f)はA−A断面図である。
【0070】
同図(a)〜(c)に示されるように、チップ3の突起(パット)部320は、4箇所に配置される。この4箇所は、平面上の2座標軸、すなわちX軸およびY軸を形成しうる(つまり同一直線上にない)ように設定される。ここでは4点が矩形(長方形)を形成するような例を挙げているが、これに限定されることはなく、また、4点でなく、3点でも、或いは5点以上であってもよい。また、断面的に、突起(パット)部320はチップ3に埋め込まれていてもよいし、表面に貼着或いは固定されていてもよい。或いは、LSI等の回路配置上表面に現れるバンプをもってこの役割を果たさせることもできる。またこれらの複数配置位置は、チップ3表面に予めパターンニング(たとえば印刷)されていてもよく、正確な位置に精密に配置・固定されている。なお、同図は、突起(パット)部320のみを複数個配置され、パッシベーション部340を有していない構成の場合を示している。
【0071】
第2液滴湧出機構70のノズル720の配置位置パターン(第2パターン)については、同図(d)〜(f)に示されるように、上記の突起(パット)部320の配置位置パターン(第1パターン)に対応するものである。具体的には、たとえば、XX軸、YY軸をそれぞれX軸、Y軸と重ね、突起(パット)部320の各位置(ここでは4箇所)である第1パターンに正確に重なる位置(ここでは4箇所)にノズル720の配置位置が予め定められている。
【0072】
なお、上記では、平面的なアラインメントに焦点を当てた技術としているが、これに立面的補正、すなわち鉛直方向へのアラインメントを組み合わせてもよく、この場合の鉛直方向アラインメントについては既存の技術を用いるものでよい。
【0073】
また、上記図12の構成に換えて、図13のような構成としてもよい。つまり、図13には、たとえばアルミ、金、銅などの金属から構成されるチップ3の突起(パット)部320に隣接した位置に、たとえばポリイミドから構成されるパッシベーション部34を配設した構成が示されている。突起(パット)部320の素材はマウント用液滴76との間で親液性(親和性)を有するものとし、パッシベーション部340の素材はマウント用液滴76との間で撥液性(反親和性)を有するものとする。この構成によれば、マウント用液滴76に対しては、突起(パット)部320と吸着しようとする力とともに、パッシベーション部340から離れようとする力が働くので、液滴の表面張力を利用したアラインメントという本願の技術的思想は一層効率よく達成されることになる。
【0074】
次に、このように構成されるチップマウント装置1Aの動作を説明する。
【0075】
図14は、チップマウント装置1Aの動作を説明するための概念図であって、チップのピックアップ前から、ピックアップ、アラインメント、マウント完了に至るまでの動作を時系列的に示した図である。なお、図14においては、チップ3が突起(パット)部320のみを有し、パッシベーション部340を有していない構成の場合を示しているが、パッシベーション部340を有している構成であってもよいのは言うまでもない。
【0076】
図14において、(a)〜(c)は主にピックアップ動作前段階((a)はチップ3の突起(パット)部320の配置位置パターン(第1パターン)の斜視図、(b)はA方向に見た底面図、(c)はA−A断面図である)を、(d)はチップのピックアップ直後であって突起(パット)部320の吸着段階を、(e)は(d)中の点線円周によって囲まれる突起(パット)部320の周辺範囲を拡大した部分に係るマウント先での液滴76による吸着直前段階を、(f)は液滴76による突起(パット)部320の吸着直後から液滴76の表面張力によって移動された段階を、(g)は突起(パット)部320が液滴76の表面張力によって移動された後何らかの手段により液滴76の表面張力が取り除かれて、突起(パット)部320ひいてはチップ3が目的のマウント位置に安定配置された段階を、それぞれ示すものである。
【0077】
まず、同図(a)〜(c)の状態で(マウント元位置で)待機されているチップ3に向けて、ピックアップ装置20が降下し、チップ3の上面に十分に近い位置までピックアップノズル20Aが降下すると、ピックアップノズル20Aから液滴26が湧出・懸垂され、この液滴26がチップ3に当接すると、液滴26の表面張力によって吸着力がチップ3上面に作用する結果、チップ3はピックアップされる(同図(d))。以下の図14についての説明は、同図(d)中の点線円周で囲まれた部分をその主な対象とする。
【0078】
次に、かかるピックアップされた状態を維持した状態で、搬送機構40がピックアップ装置20(及びこの先端に吸着されたチップ3)をマウント所望位置或いはその近傍にまで搬送・移動する(図示しない)。具体的には、チップ3の吸着後、ピックアップ装置20の上方移動及び水平移動を段階的に、或いは同時並行的に行うことになる。
【0079】
マウント先位置の略上部(仮位置:正確なマウント目的位置の近傍のこと)にピックアップ装置20(及びこの先端に吸着されたチップ3)が到達した時点で搬送機構40は水平移動を停止し、マウント先位置に向けて降下を始める(図10の点線部)。
【0080】
一方、搬送機構40がチップ3の突起(パット)部320が十分降下を完了する前後までに、或いはこれと時を同じくして、第2液滴湧出機構70が先端部の複数のノズル720の各々から、第2の液滴76を湧出させる(図14(e))。
【0081】
搬送機構40が(チップ3の)突起(パット)部320をさらに降下させると、第2の液滴76が突起(パット)部320の下面に当接する。この際、第2の液滴76は4箇所設定してあるので、吸着力も当該液滴が単独の場合の略4倍の強度があることになる。したがって、第1の液滴26による吸着力に打ち勝って突起(パット)部320を(したがってチップ3を)マウント先側(同図の720側、すなわち下方)に剥ぎ取ることが可能となる。この場合、代替的に、第2の液滴76の表面張力が比較的大きな材質の液滴とする方法、加熱機構50によって第1の液滴26を加熱蒸発させてピックアップ用液滴26の吸着力を霧散させる方法、減圧機構60によって第1の液滴26の周囲一定範囲を減圧して第1の液滴26の蒸発を促進することでピックアップ用の吸着力を霧散させる方法、(図示しない)風力発生機構から風力を噴出させて液滴26をとばすことで吸着力を除去する方法等を、それぞれ代替的に、或いは組み合わせて用いても良く、これら総ての場合を本願発明は技術的思想として包摂するものである。
【0082】
こうしてチップ3のピックアップ吸着が解かれ突起(パット)部320が第2の液滴76によってのみ吸着されている状態になると、略瞬間的に、液滴76の表面張力が作用する。すなわち、当該液滴76に対する突起(パット)部320下面表面の親液性も相俟って、かかる表面張力が最小化する方向に力が作用して突起(パット)部320が瞬間的に移動される(同図(f))。換言すれば、正しい精密なマウント位置近傍に仮置きされた位置(仮位置、すなわち同図(f)の「C」位置)から、当該表面張力が最小化される位置(本位置、すなわち同図(f)の「D」位置)まで移動させる力が作用する。これによって液滴76の表面張力によってマウントの正確な位置にまで移動せしむることが可能となる。
【0083】
なお、この場合、上記図13のようなパッシベーション部340をさらに備えた構成の場合であってもよく、この構成の場合には、上述したように、マウント用液滴76に対しては、突起(パット)部320と吸着しようとする力とともに、パッシベーション部340から離れようとする力が働くので、液滴の表面張力を利用したアラインメントという本願の技術的思想は一層効率よく達成されることになる。
【0084】
次に図14(f)において、こうして精密な位置にまで移動された突起(パット)部320、したがってチップ3の位置を(図示しない)固定装置によって固定し、この固定位置において、先に説明したいずれかの手段によって第2の液滴76の吸着力を除去することで、突起(パット)部320、したがってチップ3は正規の精密なマウント位置にマウントされて、一連の(ピックアップ、)アラインメント、マウントの動作を完了する(同図(g))。
【0085】
上記のアラインメントの精密な制御について補足説明する。図15は、本実施形態に係るチップ3のマウントの際のアラインメントの精密制御を行うための、液滴マウント・配置位置に係る第1パターン及び第2パターンを合致させる概念を示した平面図である。同図に示されるように、パターンニングにより正確に2軸で位置決めされた突起(パット)部320の配置パターンである第1パターン(図12の(a)及び(b))と、第1パターンに対応させて定めたノズル720の配置パターンである第2パターン(図12の(d)及び(e))とが合致するようにすることで、かかる位置において液滴76の表面張力が最小化するような位置とすればよい。これにより、図15に示す仮想位置決め線に向かって液滴と突起(パット)部320の裏面との親液性(パッシベーション部340を有する場合には、突起(パット)部320の親液性及びパッシベーション部340の撥液性)による表面張力が作用することとなり、これにより、精密なアラインメントが実現される。
【0086】
図16は、このアラインメント調整の様子を断面的に説明するための断面概念図である。ここでは、チップ3が複数個配置された突起(パット)部320と、これを取り囲むパッシベーション部340とを有している構成の場合(同図(a))を示している。この構成を有するチップ3を、上記で説明したように、その突起(パット)部320が仮位置で第2の液滴76により吸着される(第1の液滴26による吸着を除去する)と(同図(b))、チップ3には突起(パット)部320の親液性及びパッシベーション部340の撥液性による力が働き、その薄厚、軽量性も手伝って、液滴76の表面張力によって略瞬間的に正規の位置まで移動させる力(=表面張力を最小化する方向の力)が働く結果、チップ3は正規位置にアラインされる(同図(c))こととなる。
【0087】
以上詳細に説明したように、本実施形態のチップマウント装置によれば、ピックアップ用液滴を用いてピックアップされ搬送機構によって移動された小片(たとえば半導体チップ)をマウント目的場所にマウントする際に、複数のマウント面ノズルから湧出されたマウント用液滴上に小片が仮位置で載置されると、マウント対象である小片の下面のバンプは同一直線上にはない少なくとも3点を含む複数点が配置される第1パターンに沿って形成・配置され、マウント先であるマウント用液滴及びノズルは第1パターンに対応した配置を持つ第2パターンに沿って形成・配置されるため、マウント用液滴上に小片が仮位置で載置されると同時に、小片下面に配置されたバンプの有するマウント用液滴に対する親液性(代替的に、チップがパッシベーション部をも有する場合には、バンプ部の親液性及びパッシベーション部の撥液性)によって当該マウント用液滴にはその表面張力を最小化する方向に力が働く。したがって、平行しない平面座標位置を画し得る二軸によって液滴の表面張力の力の方向を特定することが可能となり、これにより、本来のマウント位置からずれた場所(仮位置)に仮載置されても、本来の場所にまで液滴の表面張力を利用して小片を数ミクロン単位の精密度で自動的に移動させることが可能となる。
【0088】
換言すれば、第1のパターンと第2のパターンとを精密なレベルで予め形成しておくことで、マウント用液滴に小片が載った際に働く表面張力の方向を平面座標的に制御することができる。これに加えて、かかるマウント用液滴は複数存在するから、マウント用液滴によるチップの吸着力を液滴が単数の場合に比して増大させ、この力によってピックアップ用液滴の吸着力からマウント対象チップを剥ぎ取ることが容易化することとなる。このとき、たとえば、マウント用液滴の表面張力をピックアップ用液滴の表面張力よりも大きなものとする、ピックアップ用液滴を加熱装置によって加熱蒸発させる、ピックアップ用液滴周囲を減圧するなどを適宜選択的に、もしくは組み合わせて、用いるように構成しても良い。このように構成された場合には、所望のマウント先のマウント用液滴の表面張力がピックアップ用液滴の表面張力に勝るため(或いはピックアップ用液滴の表面張力が霧散するため)に、ピックアップされていたチップはピックアップ用液滴からそぎ取られて所望のマウント先であるマウント用液滴部位においてリリースされることとなり、極薄チップのピックアップのみならずリリース動作も、チップの反りや破損を生ずることない上に、容易に行えることとなる。これにより、マウント目的位置でのマウント動作を安定的かつ確実に完了することができる。
【0089】
したがって、ピックアップされた小片を所望位置まで搬送し、マウントする際の所望のアラインメント動作を精密に制御することができる。したがって、真空吸着によった場合には反りや破損の生ずるような極薄チップを対象としてピックアップ動作を行う場合においても、チップへの余分な応力を発生させることを防止し、チップの反りや破損を防ぎつつ、精密なアラインメントを伴ったマウント動作が可能となる。
【0090】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。
【0091】
たとえば、上述した実施形態においては、第1の液滴の制御に対して第1、第2の電極及び電位発生機構、第2の液滴に対して第1、第2の電極及び電位発生機構をそれぞれ別に用意する構成を例示したが、それぞれの液滴に対してではなく全体の液滴(ここでは2個だが、それ以上であってもよい)に対して第1及び第2の液滴と電位発生機構とを設けて制御を行うような構成としてもよい(図示しない)。
【0092】
また、上述したものは本願に係る技術思想を具現化するための実施形態の一例を示したにすぎないものであり、他の実施形態でも本願に係る技術思想を適用することが可能である。
【0093】
さらにまた、本願発明を用いて生産される装置、方法、システムが、その2次的生産品に登載されて商品化された場合であっても、本願発明の価値は何ら減ずるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明に係るチップマウンター及びチップマウント方法によれば、チップのピックアップ及びリリースを、真空吸着ではなく、水その他の液体の表面張力を用いて行い、かつ、液滴について、いわゆるEWODを用いてその表面張力を制御することから、電極間に印加する電位に応じて、液体の表面張力の精密な制御が可能となる。したがって、極薄チップの製造産業において、チップの反りや破損を防止した精密な製造が可能となり、この効果は、半導体製造産業にとどまらず、情報産業、電気器具産業等を初めとする、半導体を用いた二次的製品を製造・使用するあらゆる産業にとって、非常な有益性をもたらすものである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の一実施形態に係るチップマウント装置の全体の概略構成を示した構成概念図である。
【図1A】本発明の一実施形態に係る第1電位発生機構を説明するための概念図であり、(A)はノズル24の縦断面、(B)はノズル24の横断面である。
【図1B】本発明の別の実施形態に係る第1電位発生機構を説明するための概念図であり、(A)はノズル24の縦断面、(B)はノズル24の横断面である。
【図2】本発明の一実施形態に係るチップマウント装置1の動作を説明するための概念図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るピックアップ動作を詳細に説明するための図で、(A)は、ピックアップ前の液滴を表出させた状態を示す概念的斜視図、(B)は液滴にチップを吸着させた状態を示す断面図である。
【図4】電位により液滴の濡れ性勾配を変化させ表面張力を制御する技術の一般的な考え方を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る、濡れ性勾配の電位による制御をこの第2電位発生機構80として実現する技術的概念をさらに説明するための概念的断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る、加熱による液滴26の蒸発の様子を概念的に示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る第2の液滴の表面張力を大きくとることで第1の液滴から引き剥がす技術を概念的に示す断面図である。
【図8】本発明の別の実施形態に係る、液滴の濡れ性勾配の電位についての異なる配置の場合を示した概念図である。
【図9】本発明の別の実施形態に係る、ピックアップ装置20を4個設置し、第1の液滴26が4個生成される場合を示した図である。
【図10】本発明の別の実施形態に係るチップマウント装置の全体の概略構成を示した構成概念図である。
【図11】本発明の別の実施形態に係る半導体チップ3の構成の一例についての部分的断面を示した断面概念図である。
【図12】本発明の別の実施形態に係る突起(パット)部320の配置位置パターンである第1パターン、及び、第2液滴湧出機構70のノズル720の配置位置パターンである第2パターンを概略的に示した説明図である。
【図13】図12の構成に代替させる別の構成を示した図である。
【図14】本発明の別の実施形態に係るチップマウント装置1Aの動作を説明するための概念図であって、チップのピックアップ前から、ピックアップ、アラインメント、マウント完了に至るまでの動作を時系列的に示した図である。
【図15】本発明の別の実施形態に係るチップ3のマウントの際のアラインメントの精密制御を行うための、液滴マウント・配置位置に係る第1パターン及び第2パターンを合致させる概念を示した平面図である。
【図16】本発明の別の実施形態に係るアラインメント調整の様子を断面的に説明するための断面概念図である。
【符号の説明】
【0096】
1、1A チップマウント装置
3 チップ
7 マウント目的箇所
10 全体制御部
20 ピックアップ装置
20A ピックアップノズル
22 第1の液滴生成機構
24 第1の液滴懸垂機構
26 第1の液滴
30 第1電位発生機構
32 第1の電極
34 第2の電極
40 搬送機構
50 加熱機構
60 減圧機構
70 第2液滴湧出機構
72 第1の電極
74 第2の電極
76 第2の液滴
80 絶縁物
320 突起(パット)部
340 パッシベーション部
720 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端から懸垂される液滴によって小片の吸着を行うことのできるピックアップであって、互いに絶縁された第1及び第2の電極が設置されたピックアップと、
前記ピックアップを第1の位置から任意の第2の位置まで移動させる搬送機構と、
前記第1の電極及び第2の電極間に電位を印加して、かかる電位によるEWOD(Electrowetting on Dielectric)を利用して前記液滴の表面張力を変化させるための電位発生源と
を具備することを特徴とするマウント装置。
【請求項2】
先端から懸垂される第1の液滴によって小片の第1の面を吸着することのできるピックアップであって、互いに絶縁された第1及び第2の電極が設置されたピックアップと、
前記ピックアップを第1の位置から任意の第2の位置まで移動させる搬送機構と、
前記第2の位置近傍に所在し、先端から湧出される2の液滴によって前記小片の第2の面を吸着することのできるマウント先液滴湧出機構であって、互いに絶縁された第3及び第4の電極が設置されたマウント先液滴湧出機構と、
前記第1の電極及び第2の電極間に電位を印加して、かかる電位によるEWOD(Electrowetting on Dielectric)を利用して前記第1の液滴の表面張力を変化させるための第1電位発生源、及び、前記第3の電極及び第4の電極間に電位を印加して、かかる電位によるEWOD(Electrowetting
on Dielectric)を利用して前記第2の液滴の表面張力を変化させるための第2電位発生源のうちの少なくとも一方と
を具備することを特徴とするマウント装置。
【請求項3】
前記第1の液滴もしくは前記第2の液滴を加熱する加熱装置を更に具備することを特徴とする請求項2記載のマウント装置。
【請求項4】
前記第2の液滴の表面張力は、前記第1の液滴の表面張力より大きいことを特徴とする請求項2記載のマウント装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の液滴の少なくとも一方に対して減圧をかける減圧部をさらに備えることを特徴とする請求項2記載のマウント装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の液滴の少なくとも一方は複数個生成されることを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか1項記載のマウント装置。
【請求項7】
請求項2記載のマウント装置において、
前記小片は同一直線状にはない少なくとも3点(第1パターン)位置に配置されたパットを裏面に有し、
前記マウント先液滴湧出機構は同一直線状にはない少なくとも3点(第2パターン)位置に配置されたノズルを表面に有し、
前記第1パターン及び第2パターンは互いに対応するものであることを特徴とするマウント装置。
【請求項8】
互いに絶縁された第1及び第2の電極が設置されたピックアップのノズルの先端から液滴を懸垂し、
前記液滴に吸着せしめることによってピックアップ対象の小片を吸着し、
前記吸着された小片を第1の位置から任意の第2の位置まで移動させる、マウント方法において、
前記液滴に対して、電位発生源により前記第1の電極及び第2の電極間に電位を印加して、かかる電位によるEWOD(Electrowetting on Dielectric)を利用して前記液滴の表面張力を変化させることを特徴とするマウント方法。
【請求項9】
互いに絶縁された第1及び第2の電極が設置されたピックアップの先端から第1の液滴を懸垂し、
前記第1の液滴を湧出して該液滴に吸着せしめることによってピックアップ対象の小片の第1の面を吸着し、
前記吸着された小片をマウント先場所にまで移動させ、
前記マウント先場所近傍に所在するマウント先液滴湧出機構であって互いに絶縁された第3及び第4の電極が設置されたマウント先液滴湧出機構の先端から第2の液滴を湧出して前記小片の第2の面を吸着し、
前記略マウント先場所において前記小片をリリースするマウント方法において、
前記第1及び/または第2の液滴に対して、それぞれ前記第1・第2の電極間及び/または前記第3・第4の電極間に電位を印加して、かかる電位によるEWOD(Electrowetting on Dielectric)を利用して前記第1及び/または第2の液滴の表面張力を変化させることを特徴とするマウント方法。
【請求項10】
請求項9記載のマウント方法において、
前記小片は同一直線状にはない少なくとも3点(第1パターン)位置に配置されたパットを裏面に有し、
前記マウント先液滴湧出機構は同一直線状にはない少なくとも3点(第2パターン)位置に配置されたノズルを表面に有し、
前記第1パターン及び第2パターンは互いに対応するものであることを特徴とするマウント方法。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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