説明

マクロファージ刺激タンパク質受容体(RON)の阻害およびその処置の方法

本発明は、マクロファージ刺激タンパク質受容体(MSP−RまたはRON)に特異的な、ヒト抗体を含む、抗体またはそのフラグメントを提供し、それは、RON活性化を阻害する。RONを阻害する方法、特に癌のような疾患を処置するためのRON抗体の使用もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2007年11月21日に出願された米国仮出願USSN60/989558の利益を主張し、その全内容は参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ヒトマクロファージ刺激タンパク質受容体(「MSP−R」または「RON」(receptor d’origine nantais))を阻害するための方法および組成物に関する。本発明は、RON活性化を阻害する、RONに特異的な抗体または抗体フラグメントの投与を含む、哺乳動物における腫瘍および他の疾患の処置のための方法をさらに提供する。
【背景技術】
【0003】
以降、「RON」とも呼ばれるマクロファージ刺激タンパク質受容体は、受容体チロシンキナーゼのc−metファミリーに属する。RONは、細胞外α鎖および膜貫通β鎖で構成された、ヘテロ二量体タンパク質である。RONは最初に、1本鎖前駆体として発現され、その後α鎖およびβ鎖に切断される(1)。β鎖は、そのリガンドであるマクロファージ刺激タンパク質(「MSP」;別称HGF様タンパク質)が受容体へ結合するのに必要であり、そして、MSPのクリングルドメイン2および3は、RON/MSP相互作用に必要であると考えられる(特許文献1)。RONの細胞外ドメインは、c−metファミリー受容体の対応するドメインとほとんど相同性を有さないと思われる。実際、c−metファミリーにおいて他の受容体を刺激する肝細胞増殖因子(「HGF」)のRON受容体への結合は、チロシンキナーゼ活性を刺激しない(特許文献2)。
【0004】
RONは、細胞移動、形状変化および腫瘍による組織の浸潤において役割を有すると考えられる(1)。しかしながら、以前の刊行物は、変質を誘導するRONの限定された役割を報告するが、RON活性化による侵襲性増殖の促進を記載する(16)。
【0005】
突然変異、欠失、遺伝子再配列および代替的mRNAスプライシングは、いかなるリガンド結合も伴わずにRONの活性化を引き起こし得る(1)。RONのチロシンキナーゼドメインの変化は、RONの活性化において重要な役割を果たし得る(1)。様々な癌細胞株由来のRONのクローニングは、RONをコードするmRNAの様々な欠損に起因するRON活性化を示している。
【0006】
MSPは、クリングルドメインプラスミノーゲン関連タンパク質ファミリーの一員である(1)。その名前が示すように、MSPは、様々な手段によってマクロファージを刺激することが最初に見出された(概説について、2、3を参照のこと)。例えば、あるRON発現マクロファージへのMSPの添加は、形状変化、走化性、マクロピノサイトーシス、ファゴサイトーシス、および免疫メディエイタ産生を誘導した(4、5、6)。RONはまた、MSPがRONをリン酸化することが示されている角化細胞のような上皮細胞において発現され、そして細胞接着/移動性、抗アポトーシス、および増殖反応を誘起する多くのシグナル伝達経路を活性化することも認められた(7,8)。最近数年間に、RONの過剰発現が、いくつかの上皮腫瘍および細胞株(例えば、結腸(9、10、11)、肺(12)、胸部(13))において観察されている。最近の研究において、肺腫瘍が、その肺にRONを過剰発現するように改変されたトランスジェニックマウスにおいて発生した(14、15)。
【0007】
RONは、様々なヒト癌細胞株において発現される。RONに対する抗体は、受容体(リン酸化されたRON)の活性化、ならびにこれらの癌細胞株の多くにおける下流のシグナル伝達分子であるリンMAPKおよびリンAKTの活性化を阻害することができる。本明細書中下記に例示される抗RON抗体(RON6およびRON8)の両方は、いくつかの癌細胞由来細胞株(HT−29 結腸、H−292 肺、BxPC3 膵臓、JIMT−1 胸部)がヌードマウス中に注入されたときに腫瘍を形成する能力を有意に妨害することが示されている。これは、RON受容体チロシンキナーゼの阻害がこれらの癌細胞の増殖に負に影響を与えることを確認し、そして、例えば、結腸癌、肺癌、膵臓癌、および乳癌においてRONを阻害することの有用性を強調している。従来のウエスタンブロット処置およびフローサイトメトリー処置を使用して、RONは、様々な癌に由来する多くのヒト細胞株、すなわち結腸(HT−29、Colo205、HCT−116、DLD−1、Sw480、Sw620)、膵臓(BXPC−3、CAPAN−2、ASPC−1、HPAF−II、L3.7p1#7、Hs766T)、前立腺(DU−145、PC−3)、胃(AGS、NCI−N87)、肺(A549、H596)、肝臓(HepG2、SNU−182)、および胸部(JIMT1、DU4475、AU565)において発現されることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国公開番号第2003/0073656号
【特許文献2】国際出願公開第WO02/083047号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特異的RONエピトープを含むRON標的の特定に基づき、様々な疾患の治療法、特に癌の治療法を開発する継続的必要性が、当該分野において存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、以前に利用可能であった公知の抗RON抗体よりも実質的に高い特異的結合を有する抗RON抗体を提供する。その抗体は、単離および/または精製され得る。本発明の抗体は、典型的にヒト個体群において見出される野生型RON対立遺伝子によってコードされているRONであるか、または変異体RONタンパク質、例えば、少ない変異または突然変異を有するがRON活性を保持するものであるかにかかわらず、RONへの結合に有用である。1つの実施形態において、本発明の抗体は、RONに特異的であり、約1×10−9−1以下のK(すなわち、抗体と抗原の解離についての平衡定数)を有する。他の実施形態において、本発明の精製された抗体は、約1×10−10−1以下または約1×10−11−1以下であるKを示す。さらに他の実施形態において、本発明の抗体またはその機能的フラグメントは、事実上完全なヒト抗体である。
【0011】
本発明は、例えば、RON6 VH、RON6 VL、RON8 VH、RON8 VL、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の抗体可変ドメインに由来する相補性決定領域(CDR)を含む、RONタンパク質に特異的に結合する抗体を提供し、ここで、RON6 VHのCDRは、配列番号17、配列番号19、および配列番号21であり;RON6 VLのCDRは、配列番号23、配列番号25、および配列番号27であり;RON8 VHのCDRは、配列番号29、配列番号31、および配列番号33であり;ならびにRON8 VLのCDRは、配列番号35、配列番号37、および配列番号39である。可変ドメインに含まれる各々は、3つのCDRを寄与し得る。抗体は、例えば、モノクローナル抗体、単鎖抗体、Fab、Fv、二重特異性抗体(diabody)、または三重特異性抗体(triabody)であり得る。
【0012】
いくつかの実施形態において、抗体は、RON6 VH、RON6 VL、RON8 VH、RON8 VL、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される抗体可変ドメインの少なくとも2つに由来するCDRを含み得る。より好ましくは、本発明の抗体は、RON6 VH、RON6 VL、RON8 VH、RON8 VL、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される抗体可変ドメインの少なくとも3つに由来するCDRを含み得る。いくつかの実施形態において、抗体はRON6またはRON8である。
【0013】
本発明は、その抗体をコードする単離された核酸、ならびに、最適な宿主細胞における核酸の発現を可能にする1つ以上の制御配列に作動可能に連結された核酸を含む組換えベクターをさらに提供する。その組換えベクターを含む宿主細胞もまた提供される。
【0014】
本発明は、抗体の発現を可能にする条件下で宿主細胞を培養すること、および任意選択的に作製された抗体を精製することを含む、本発明のRON抗体を作製する方法をさらに提供する。
【0015】
本発明は、本発明の抗体、および薬学的に許容され得るキャリアを含む医薬組成物をさらに提供する。医薬組成物は、1種以上の他の治療効果的な薬剤をさらに含み得る。
【0016】
本発明のRON抗体を、単独または他の薬剤、例えば化学療法剤と組み合わせて含むキットが、本明細書中で意図される。
【0017】
本発明の抗体を使用する方法もまた提供され、例えば、癌を処置し、血管形成、腫瘍の成長、移動、RONを発現する腫瘍細胞の増殖または浸潤を阻害する方法であって、哺乳動物に本発明の抗体またはそのフラグメントの有効量を投与して、RONの活性化を阻害することを含む方法が提供される。腫瘍細胞は、例えば、結腸、膵臓、前立腺、胃、肺、肝臓、卵巣、腎臓、胸部、および脳に由来する腫瘍細胞、あるいは上皮または神経内分泌由来の腫瘍細胞である。
【0018】
本発明の方法は、他の薬剤、例えば有機小分子を、抗体と共に投与することをさらに含み、ここで、他の薬剤は、限定されないが、化学療法剤、抗血管形成剤、またはRONの活性化の阻害を含み得る。任意選択的に、抗体は、他の薬剤、例えば有機小分子に結合体化され得る。
【0019】
本発明の抗体は、少なくとも1種の他の抗癌治療、例えば、抗血管形成剤、FGFR−3アンタゴニスト、化学療法剤、放射線、抗腫瘍剤、小分子、または他の抗体と共に投与することができる。例えば、本発明の抗体は、腫瘍を阻害する少なくとも1種のさらなる抗体、例えばErbitux(登録商標)(Imclone Systems,Inc.NY,NY)のような抗EGFR抗体と共に投与され得る。
【0020】
本発明の抗体は、野生型RONまたは変異体RONを標的とすることができ、または野生型RONまたは変異体RONに結合することができる。
【0021】
本発明の方法は、サンプルを本発明の抗体と接触させて特異的結合を得ること、およびそのような結合を検出することを含む、サンプル中のRONを検出する方法をさらに包含する。
【0022】
哺乳動物に本発明の抗体の有効量を投与することを含め、予防または処置を必要とする哺乳動物の炎症を予防または処置する方法もまた提供される。
【0023】
哺乳動物に本発明の抗体の有効量を投与することを含め、予防または処置を必要とする哺乳動物の疾患、例えば肝臓、胆道、胆管、および胆嚢の疾患を予防または処置する方法もまた提供される。
【0024】
哺乳動物に本発明の抗体の有効量を投与することを含め、阻害を必要とする哺乳動物のRON、MAPK、および/またはAktのリン酸化を阻害する方法もまた提供される。
【0025】
前述の方法に関して、いくつかの実施形態においては、本発明の抗体またはそのフラグメントは、哺乳動物に、約1mg/Kg〜約10mg/Kgの投与量で投与され得る。他の実施形態においては、抗体またはそのフラグメントは、約3mg/Kg〜約8mg/Kgの投与量で投与され得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1A】図1Aは、1本の下線で示されるCDRを有するRON6 VH領域のDNA(配列番号1)および翻訳された配列(配列番号2)を示す。
【図1B】図1Bは、1本の下線で示されるCDRを有するRON6 VL領域のDNA(配列番号3)および翻訳された配列(配列番号4)を示す。
【図1C】図1Cは、1本の下線で示されるCDRを有するRON8 VH領域のDNA(配列番号5)および翻訳された配列(配列番号6)を示す。
【図1D】図1Dは、1本の下線で示されるCDRを有するRON8 VL領域のDNA(配列番号7)および翻訳された配列(配列番号8)を示す。
【図2A】図2Aは、完全RON6−H(ヒトIgG1サブグループI)のDNA(配列番号9)およびアミノ酸配列(配列番号10)を示す。分泌シグナル配列(イタリック);可変領域(二重下線、CDRドメインを除く);CDRドメイン(1本の下線);γ定常領域(修飾されていない)。アスタリスク()は、終止コドンを示す。
【図2B】図2Bは、完全RON6−H(ヒトIgG1サブグループI)のDNA(配列番号9)およびアミノ酸配列(配列番号10)を示す。分泌シグナル配列(イタリック);可変領域(二重下線、CDRドメインを除く);CDRドメイン(1本の下線);γ定常領域(修飾されていない)。アスタリスク()は、終止コドンを示す。
【図2C】図2Cは、完全RON6−H(ヒトIgG1サブグループI)のDNA(配列番号9)およびアミノ酸配列(配列番号10)を示す。分泌シグナル配列(イタリック);可変領域(二重下線、CDRドメインを除く);CDRドメイン(1本の下線);γ定常領域(修飾されていない)。アスタリスク()は、終止コドンを示す。
【図2D】図2Dは、完全RON6−L(ヒトκ軽鎖サブグループIII)のDNA(配列番号11)およびアミノ酸配列(配列番号12)を示す。RON6−L分泌シグナル配列(イタリック);可変領域(二重下線、CDRドメインを除く);CDRドメイン(1本の下線);κ定常領域(修飾されていない)。
【図2E】図2Eは、完全RON6−L(ヒトκ軽鎖サブグループIII)のDNA(配列番号11)およびアミノ酸配列(配列番号12)を示す。RON6−L分泌シグナル配列(イタリック);可変領域(二重下線、CDRドメインを除く);CDRドメイン(1本の下線);κ定常領域(修飾されていない)。
【図3A】図3Aは、完全RON8−HのDNA(配列番号13)およびアミノ酸(配列番号14)配列を示す。分泌シグナル配列(イタリック);CDR(下線)を有する可変領域(二重下線);γ定常領域(修飾されていない)。アスタリスク()は、終止コドンを示す。
【図3B】図3Bは、完全RON8−HのDNA(配列番号13)およびアミノ酸(配列番号14)配列を示す。分泌シグナル配列(イタリック);CDR(下線)を有する可変領域(二重下線);γ定常領域(修飾されていない)。アスタリスク()は、終止コドンを示す。
【図3C】図3Cは、完全RON8−HのDNA(配列番号13)およびアミノ酸(配列番号14)配列を示す。分泌シグナル配列(イタリック);CDR(下線)を有する可変領域(二重下線);γ定常領域(修飾されていない)。アスタリスク()は、終止コドンを示す。
【図3D】図3Dは、完全RON8−LのDNA(配列番号15)およびアミノ酸(配列番号16)配列を示す。分泌シグナル配列(イタリック);CDR(下線)を有する可変領域(二重下線、CDRドメインを除く);κ定常領域(修飾されていない)。アスタリスク()は、終止コドンを示す。
【図3E】図3Eは、完全RON8−LのDNA(配列番号15)およびアミノ酸(配列番号16)配列を示す。分泌シグナル配列(イタリック);CDR(下線)を有する可変領域(二重下線、CDRドメインを除く);κ定常領域(修飾されていない)。アスタリスク()は、終止コドンを示す。
【図4A】図4Aは、H−292マウス異種移植モデルにおける、抗RON抗体であるRON6の投与後の、腫瘍体積 対 時間のプロットを示す。この図は、RON6抗体が、マウス異種移植系においてH−292腫瘍細胞の増殖を阻害することを示す。
【図4B】図4Bは、H−292マウス異種移植モデルにおける、抗RON抗体であるRON8の投与後の、腫瘍体積 対 時間のプロットを示す。この図は、RON8抗体が、マウス異種移植系においてH−292腫瘍細胞の増殖を阻害することを示す。
【図4C】図4Cは、HT−29マウス異種移植モデルにおける、腫瘍体積 対 時間のプロットを示す。この図は、RON6抗体が、マウス異種移植系においてHT−29腫瘍細胞の増殖を阻害することを示す。
【図4D】図4Dは、HT−29マウス異種移植モデルにおける、腫瘍体積 対 時間のプロットを示す。この図は、RON8抗体が、マウス異種移植系においてHT−29腫瘍細胞の増殖を阻害することを示す。
【図4E】図4Eは、RON8抗体単独、RON8抗体+Erbitux(登録商標)(ERB)、Erbitux(登録商標)単独、およびコントロールIgG(hulgG抗体)と組み合わせたErbitux(登録商標)を有するBxPC3マウス異種移植モデルにおいて、腫瘍体積 対 時間のプロットを示す。この図は、RON8抗体(図4E)単独で、マウス異種移植系においてBxPC3腫瘍細胞の増殖を阻害することを示す。この図はまた、Erbitux(登録商標)との組み合わせで、腫瘍の退縮または阻害の傾向があることも示す。
【図4F】図4Fは、RON8抗体がヌードマウスの胸部腫瘍異種移植片の成長を阻害することを示す。JIMT−1乳癌細胞をヌードマウス中に皮下注射し、およそ250mmまで増殖させた。腫瘍体積は、コントロール(生理食塩水)、RON8抗体(60mg/kg、2回/週)、ドセタキセル、またはドセタキセル+RON8抗体の組み合わせで処置し、プロットする。
【図5A】図5Aは、抗RON抗体であるRON6およびRON8による、MSP誘導リン酸化の阻害を確認するウエスタンブロットを示す。RON6およびRON8抗体はそれぞれ、RON受容体のMSP依存性活性化およびRON受容体下流のシグナル伝達経路の活性化を阻害することが確認される。、NIH3T3−RON細胞を一晩飢餓状態にし、表示された抗体濃度で2時間処理し、次いで、10nM MSPで10分間刺激した。刺激の後、細胞を溶解し、全細胞溶解物をSDS−PAGEによって分離し、表示された抗体でプローブした。
【図5B】図5Bは、抗RON抗体であるRON6およびRON8による、MSP誘導リン酸化の阻害を確認するウエスタンブロットを示す。RON6およびRON8抗体はそれぞれ、RON受容体のMSP依存性活性化およびRON受容体下流のシグナル伝達経路の活性化を阻害することが確認される。H−292細胞を一晩飢餓状態にし、表示された抗体濃度で2時間処理し、次いで、10nM MSPで10分間刺激した。刺激の後、細胞を溶解し、全細胞溶解物をSDS−PAGEによって分離し、表示された抗体でプローブした。
【図5C】図5Cは、抗RON抗体であるRON6およびRON8による、MSP誘導リン酸化の阻害を確認するウエスタンブロットを示す。RON6およびRON8抗体はそれぞれ、RON受容体のMSP依存性活性化およびRON受容体下流のシグナル伝達経路の活性化を阻害することが確認される。HT−29細胞を一晩飢餓状態にし、表示された抗体濃度で2時間処理し、次いで、10nM MSPで10分間刺激した。刺激の後、細胞を溶解し、全細胞溶解物をSDS−PAGEによって分離し、表示された抗体でプローブした。
【図6A】図6Aは、RON8抗体の固相ブロッキング特性を示す。ELISAを使用して、固定化された組換えヒトMSPと組換えヒトRONタンパク質との相互作用をブロックするのに必要なRON8抗体のIC50値を決定した。
【図6B】図6Bは、H596肺癌細胞の細胞移動を阻害するRON8抗体の能力を示す。
【図6C】図6Cは、BXPC3膵臓癌細胞において、RON8抗体によるMSP誘導DNA合成の阻害を示す。図6C(1)は、DNA合成の指標である[3H]−チミジン取り込みへのMSP刺激を示す。図6C(2)は、細胞を、MSPの添加の前に1時間RON8抗体で前処理した系を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、有用性、例えば、診断目的のためにRONタンパク質を検出するためのアッセイにおける有用性、および治療目的のためにRON活性を阻害する方法における有用性を有する抗RON抗体を提供する。さらに、本発明の抗RON抗体は、治療有効量、例えば、RONを発現するあらゆる腫瘍細胞の成長、増殖、転移活性(すなわち、移動および/または浸潤)を阻害するのに有効な量で、動物、例えばヒトのような哺乳動物に投与され得る。本発明はまた、開示された抗RON抗体、またはそのフラグメントを含む医薬組成物を提供する。さらに、本発明は、ヒトRON受容体チロシンキナーゼに結合する完全ヒト抗体を提供する。そのような抗体は、限定されないが、例示されたRON6およびRON8、ならびにその活性または機能的フラグメントおよび誘導体を含む。
【0028】
記載を明確にするために、上記で提供された背景技術の節で詳述されるように、標的タンパク質がRONと呼ばれ、そして本明細書中で例示された好ましい抗RON抗体がそれぞれ「RON6」および「RON8」と表わされることが理解されるべきである。スクリーニング処理を使用して、本発明の抗RON抗体は、数百の候補抗RON抗体から選択された。本発明の抗体は、以下の実施例において詳細に説明されるように、以前に利用可能であった抗RON抗体に比べて、予想外に望ましいRON結合特性を示す。特に、新しいRON6およびRON8抗体は、以前にファージライブラリー系から産生された完全ヒト抗RON抗体であるRON1より100倍大きなRON受容体に対する親和性を有する。具体的には、RON6およびRON8は、それぞれ4.1×10−11および3.2×10−11MのKでRONに結合し、一方、RON1は、7.7×10−9MのKでRONに結合する。RON1は、本明細書において参照によって組み込まれる国際特許公開番号WO2005120557に記載される、当該分野において現在指定される公知の抗体である。
【0029】
本明細書中で参照されるように、本発明の方法で使用される本明細書において開示されるCDR配列情報は、抗体可変ドメインのあらゆる考えられ得る供給源からの配列情報に「由来」、すなわち、基づき、それから作製され、またはそれから得られるものであり、それには、野生型または変異形態、ならびに天然に存在するか、または当業者によく知られている方法によって合成的に産生されるものが含まれる。
【0030】
本明細書における「腫瘍」への言及は、一般的には癌、そしてそうでないことが明記されていない限り悪性および非悪性の両方の疾患を含むことが意図される。本明細書において意図されるように、悪性の腫瘍は原発性腫瘍および二次性腫瘍を含む。原発性腫瘍は、それらが見出される組織から直接的に生じる。二次性腫瘍、または転移癌は、身体の他の場所に由来するが、遠隔器官に広がってしまった腫瘍である。転移の一般的な経路は、血管系またはリンパ系を介して広がり、かつ組織平面および体腔(body space)(腹膜液、脳脊髄液など)に沿って進み、隣接構造へ直接成長する。
【0031】
本発明の方法を使用する考えられ得る処置のために含まれ得る、原発性または二次性いずれかの癌または悪性腫瘍の特定の種類は、限定されないが、白血病、乳癌、皮膚癌、骨癌、前立腺癌、肝臓癌、肺癌、脳腫瘍、咽頭、胆嚢、膵臓、直腸、副甲状腺、甲状腺、副腎、神経組織、頭頸部、結腸、胃、気管支、腎臓の癌、基底細胞癌、潰瘍性および乳頭型の両方の有棘細胞癌、転移性皮膚癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、細網肉腫、骨髄腫、巨細胞腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胆石、ランゲルハンス島細胞腫、原発性の脳腫瘍、急性および慢性のリンパ球性腫瘍および顆粒球性腫瘍、毛様細胞性腫瘍、腺腫、過形成、髄様癌、褐色細胞腫、粘膜神経腫(mucosal neuronms)、腸管神経節神経腫(ganglloneuromas)、過形成角膜神経腫瘍、マルファン症候群様体型腫瘍(marfanoid habitus tumor)、ウィルムス腫瘍、精上皮腫、卵巣腫瘍、平滑筋腫(leiomyomater tumor)、子宮頚部形成異常および上皮内癌、神経芽腫、網膜芽腫、柔組織肉腫、悪性カルチノイド、局所的皮膚病変、菌状息肉腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨原性およびその他の肉腫、悪性高カルシウム血症、腎細胞腫瘍、真性赤血球増加症、腺癌、多形性膠芽腫、白血病、リンパ腫、悪性黒色腫、類表皮癌ならびに他の癌腫および肉腫を含む。
【0032】
明確にするために、説明の便宜上の単数形の使用は、それに限定することを全く意図していないこともまた意図されている。したがって、例えば、「1つの抗体(an antibody)」または「1つの腫瘍(a tumor)」への言及は、1つ以上のそのような抗体または腫瘍への言及を含む。複数形の用語の使用もまた、そうでないことが明記されていない限り、それに限定することを意図しない。
【0033】
RONに対して特異的な本発明の抗体またはそのフラグメントは、RON受容体の活性化を中和する。本明細書で使用される場合、受容体を中和するとは、受容体の内因性キナーゼ活性を不活性化してシグナルを変換することを意味する。RONの中和についての信頼性のあるアッセイは、受容体リン酸化の阻害である。
【0034】
本発明は、RON中和のいかなる特定の機構によっても限定されない。そのような中和は、例えば、リガンドへの特定のエピトープのアクセスをブロックする抗体によって、またはリガンド、特にMSPが受容体に結合できても受容体を活性化できない特定の様式で、RONの立体配座を変化させることによって生じ得る。米国特許第6165464号は、リガンド自身に結合する抗体、受容体をダウンレギュレートする抗体、受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害する抗体、または細胞障害性反応を引き起こす抗体を含む、そのような中和のための種々の考えられ得る機構を列挙する。ダウンレギュレーションは、RONを発現する細胞、特にRONを過剰発現(特異的発現を含む)する細胞が、それらの表面のRON受容体チロシンキナーゼの数を減少させるときに生じ得る。したがって、中和は、阻害、縮小、不活性化、および/または成長(増殖および分化)の途絶、血管形成(血管の補充、浸潤、および転移)、ならびに細胞の移動性および転移(細胞接着および細胞侵襲性)を含む種々の効果を有する。
【0035】
抗RON抗体によるRONの中和はまた、リガンド結合無しで活性であるか、またはリガンドに結合しかつその結果非活性化しない、変異体RON受容体チロシンキナーゼの中和も含み得る。したがって、RON中和は、野生型RONおよび/または変異体RON(点変異、欠失、選択的スプライシングなど)の中和を含み得る。
【0036】
本明細書中で使用される用語RONの「変異体」は、任意選択的に、野生型RONより短いかまたは長いRONタンパク質を含み、そして任意選択的に、アミノ酸置換を含有するアナログを含むだろう。RONの変異体はまた、選択的mRNAスプライシングまたは選択的mRNAイニシエーション、および/または点変異に由来する場合がある。
【0037】
抗RON抗体によるRON中和の度合いの1つの有用な指標は、受容体のチロシンキナーゼ活性の阻害である。チロシンキナーゼ阻害は、周知の方法を使用して、例えば、組換えキナーゼ受容体の自己リン酸化レベル、および/または天然または合成基質のリン酸化を測定することによって、決定できる。したがって、リン酸化アッセイは、本発明に照らして抗体の中和を決定するのに有用である。リン酸化は、例えば、ELISAアッセイまたはウエスタンブロットでホスホチロシンに特異的な抗体を使用して検出できる。チロシンキナーゼ活性についてのいくつかのアッセイが、Panekら、J.Pharmacol.Exp.Thera.283:1433−44(1997)およびBatleyらLife Sci.62:143−50(1998)に記載されている。
【0038】
RON中和の別の指標は、RONの下流基質のリン酸化の阻害である。それにより、例えば、MAPKまたはAktのリン酸化のレベルが測定できる。
【0039】
天然に存在する抗体は、典型的には、2つの同一の重鎖および2つの同一の軽鎖を有し、各軽鎖は、鎖間ジスルフィド結合によって重鎖に共有結合されており、そして複数のジスルフィド結合は、2つの重鎖を互いにさらに結合させている。個々の鎖は、類似の大きさ(110個〜125個のアミノ酸)および構造を有するが異なる機能を有するドメインへと折り重なることができる。軽鎖は、1つの可変ドメイン(VL)および/または1つの定常ドメイン(CL)を含むことができる。重鎖もまた、1つの可変ドメイン(VH)および/または、抗体のクラスまたはアイソタイプに依存して、3つまたは4つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3、およびCH4)を含むことができる。ヒトにおいて、アイソタイプは、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMであり、IgAとIgGはさらにサブクラスまたはサブタイプ(IgA1−2およびIgG1−4)にさらに細分類される。
【0040】
一般的に、可変ドメインは、抗体間に、特に抗原結合部位において、かなりのアミノ酸配列変動性を示す。超可変領域または相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つの領域は、VLおよびVHの各々に見出され、それらは、フレームワーク可変領域と呼ばれるより変動の少ない領域によって支持される。
【0041】
例示されるような本発明の抗体は、IgGモノクローナル抗体を含む。本発明による「抗体」(単数または複数)が、抗体フラグメントまたは改変された形態を含み得ることもまた意図されている。例えば、Fvフラグメント、または、代替的構造形態に新しい本発明の抗体の利点を提供するため、例示された抗体のCDRおよび/または可変ドメインが、単鎖抗原結合タンパク質、二重特異性抗体および/または三重特異性抗体として改変されたタンパク質である。
【0042】
簡単に言うと、VLドメインおよびVHドメインからなる抗体の一部は、Fv(Fragment variable)として設計され、抗原結合部位を構成する。単鎖Fv(scFvまたはSCA)は、ポリペプチド鎖上にVLドメインおよびVHドメインを含有する抗体フラグメントであり、ここで1つのドメインのN末端および他方のドメインのC末端は、可変性リンカーによって結合される(例えば、米国特許番号第4946778号(Ladnerら);WO 88/09344(Hustonら)を参照のこと)。WO 92/01047(McCaffertyら)は、バクテリオファージのような可溶性組換え遺伝表示パッケージの表面のscFvフラグメント表示を記載する。
【0043】
単鎖抗体を産生するために使用されるペプチドリンカーは、VLドメインおよびVHドメインの適切な3次元折り畳みの発生を確実にするように選択される可変性ペプチドであってもよい。リンカーは、一般的には10個〜50個のアミノ酸残基である。好ましくは、リンカーは、10個〜30個のアミノ酸残基である。より好ましくは、リンカーは、12個〜30個のアミノ酸残基である。最も好ましいのは15個〜25個のアミノ酸残基のリンカーである。そのようなリンカーペプチドの例は、4個のグリシンとそれに続くセリンの繰返しである。
【0044】
単鎖抗体は、それが由来する全抗体の定常ドメインの一部または全てを欠く。したがって、それは、全抗体の使用に伴って生じる問題のいくつかを克服することができる。例えば、単鎖抗体は、重鎖定常領域と他の生物学的分子との間の特定の望ましくない相互作用を含まない傾向がある。さらに、単鎖抗体は、全抗体よりもかなり小さく、全抗体よりも大きな透過性を有すことができ、従って、単鎖抗体が局在し、そしてより効率的に標的抗原結合部位に結合するこのを可能にする。さらに、単鎖抗体は、比較的小さなサイズであるので、全抗体よりも、レシピエントにおける望ましくない免疫応答の誘発が少ない。
【0045】
各単鎖が第1のペプチドリンカーによって共有結合された1つのVHドメインおよび1つのVLドメインを有する、複数の単鎖抗体は、少なくとも1つ以上のペプチドリンカーによって共有結合され、単一特異性または多特異性である多価単鎖抗体を形成できる。多価単鎖抗体の各鎖は、可変軽鎖フラグメントおよび可変重鎖フラグメントを含み、少なくとも1つの他の鎖に、ペプチドリンカーによって連結される。ペプチドリンカーは、少なくとも15個のアミノ酸残基からなる。アミノ酸残基の最大数は、約100個である。
【0046】
2つの単鎖抗体は、結合されて、二価二量体としても知られる二重特異性抗体を形成することができる。二重特異性抗体は、2つの鎖および2つの結合部位を有し、単一特異性または多特異性であることができる。二重特異性抗体の各鎖は、VLドメインに連結されたVHドメインを含む。それらのドメインは十分短いリンカーで連結されているので、同じ鎖上のドメイン間の対合を防止し、したがって異なる鎖上の相補的ドメイン間の対合を促進し、2つの抗原結合部位を再作成する。簡単に言うと、例として、本発明による二重特異性抗体は、二重特異性であり、かつRON6およびRON8結合ドメインの両方を含み得る。
【0047】
3つの単鎖抗体は、結合されて、三価二量体としても知られる三重特異性抗体を形成することができる。三重特異性抗体は、VLドメインまたはVHドメインのカルボキシル末端に直接的に融合されたVLドメインまたはVHドメインのアミノ酸末端で、すなわちリンカー配列無しで構成される。三重特異性抗体は、環状の頭尾様式で配置されたポリペプチドを備える3つのFvヘッドを有する。三重特異性抗体の考えられ得る立体配座は、互いに120度の角度で1つの平面に位置決めされた3つの結合部位を備える平面的なものである。三重特異性抗体は、単一特異性、二重特異性、または三重特異性であることができる。
【0048】
Fab(Fragment,antigen binding)は、VL CL VH CH1ドメインからなる抗体のフラグメントを指す。単にパパイン消化によって産生されたものはFabと呼ばれ、重鎖ヒンジ領域を保持しない。ペプシン消化の後、重鎖ヒンジを保持する種々のFabが産生される。鎖間ジスルフィド結合を備えたままであるそれらのフラグメントは、F(ab’)2と呼ばれ、一方、単一のFab’は、ジスルフィド結合が保持されないときに生じる。F(ab’)2フラグメントは、一価のFabフラグメントよりも高い、抗原に対するアビディティを有する。
【0049】
Fc(Fragment crystallization)は、対合重鎖定常ドメインを含む抗体の部分またはフラグメントの名称である。IgG抗体において、例えば、Fcは、CH2およびCH3ドメインを含む。IgA抗体またはIgM抗体のFcは、CH4ドメインをさらに含む。Fcは、Fc受容体結合、補体媒介細胞障害性、および抗体依存性細胞障害性(ADCC)の活性化に関連する。複数のIgG様タンパク質の複合体であるIgAおよびIgMのような抗体では、複合体の形成は、Fc定常ドメインを必要とする。
【0050】
最後に、ヒンジ領域は、抗体のFab部分とFc部分を分け、Fab間、およびFcに対するFabの移動性を提供し、ならびに2つの重鎖の共有結合のために複数のジスルフィド結合を含む。
【0051】
したがって、RONに特異的な抗体は、限定されないが、天然に存在する抗体およびそのフラグメントを含む。そのようなフラグメントは、単に例として、RONに特異的に結合する(Fab)2のような二価のフラグメント、Fabのような一価のフラグメント、単鎖抗体、単鎖Fv(scFv)、単一ドメイン抗体を含む。好ましくは、そのようなフラグメントは、本明細書中に例示されるRON6抗体および/またはRON8抗体の1つ以上のCDRを含む。本発明による抗体の定義は、任意選択的に、抗原に特異的に結合する多価単鎖抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体などのような、RONに特異的に結合する改変抗体をさらに含む。好ましくは、そのような多価の改変抗体は、本明細書中に例示されるRON6抗体および/またはRON8抗体の1つ以上のCDRを含む。
【0052】
本発明の抗体の各ドメインは、重鎖または軽鎖可変ドメインを備える完全抗体であることができ、またはそれは、天然に存在するドメインと機能的に同じであるか、あるいは天然に存在するドメインの変異体または誘導体であり、あるいは例えば、インビトロでWO 93/11236(Griffithsら)に記載されるような技術を使用して構築された合成ドメインであることができる。例えば、少なくとも1個のアミノ酸を欠く抗体可変ドメインに対応するドメインを結合することは可能である。重要な特徴的特性は、相補ドメインと結合して抗原結合部位を形成する各ドメインの能力である。したがって、可変重鎖および軽鎖フラグメントと言う用語は、特異性に重要な影響を及ぼす変異体を除くとみなされるべきではない。
【0053】
本明細書中で使用される用語「抗体」および「抗体フラグメント」は、RON受容体に対する特異性を保持する修飾を含む。そのような修飾は、限定されないが、化学療法剤(例えば、シスプラチン、タキソール、ドキソルビシン)または細胞毒(例えば、タンパク性または非タンパク性の有機化学療法剤)のようなエフェクター分子への結合体化を含む。抗体は、検出可能なレポーター部分への結合体化によって修飾できる。また、半減期のような非結合特性(例えば、ポリエチレングリコールポリマーへの結合体化)に影響する変更を備えた抗体もそれに含まれる。
【0054】
タンパク性および非タンパク性の薬剤は、当該分野において公知の方法によって抗体に結合体化され得る。結合体化方法は、直接結合、共有結合したリンカーを介した結合、および特異的結合対メンバー(例えば、アビジン−ビオチン)を介した結合を含む。そのような方法は、例えば、ドキソルビシンの結合体化について、Greenfieldら、Cancer Research 50,6600−6607(1990)によって記載されたもの、ならびに白金化合物の結合体化について、Arnonら、Adv.Exp.Med.Biol.303,79−90(1991)によって記載されたもの、およびKiselevaら、Mol Biol.(USSR)25,508−514(1991)によって記載されたものを含む。
【0055】
抗体「特異性」は、抗原の特定のエピトープに対する抗体の選択的認識を意味する。用語「エピトープ」は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合することができるか、そうでない場合分子と相互作用することができる任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は、一般的に、アミノ酸または炭水化物、あるいは糖の側鎖のような分子の化学的に活性な表面集団からなり、かつ、一般的に、特異的な3次元構造特性、ならびに特異的な電荷特性を有する。エピトープは、「線状」または「立体配座」であり得る。線状エピトープにおいて、タンパク質と相互作用する分子(例えば、抗体)との間の相互作用点が、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って線状に現れる。立体配座のエピトープにおいて、相互作用点は互いに分離したタンパク質上のアミノ酸残基、すなわち、タンパク質の三次折り畳みによって近接して並べられた非連続アミノ酸にわたって現れる。連続アミノ酸から形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒への暴露によっても保持され、一方、三次折り畳みによって形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒での処理によって失われる。
【0056】
エピトープは、典型的には、少なくとも3個、通常は少なくとも5個または8〜10個のアミノ酸を、固有の空間的立体配座に含む。同じエピトープを認識する抗体は、1つの抗体が他の抗体の標的抗原への結合をブロックする能力を単純な免疫アッセイによって示すことにより確認できる。
【0057】
いったん、抗原上の所望のエピトープが決定されると、そのエピトープに対する抗体を産生することが、例えば、本発明において記載される技術を使用して可能である。あるいは、発見の過程で、抗体の産生および特徴付けが、所望のエピトープについての情報を明らかにし得る。この情報から、次いで、同じエピトープへの結合について抗体を競合的にスクリーニングすることが可能である。これを達成するための1つのアプローチは、交差競合研究を実施して、互いに競合的に結合する抗体、例えば、抗原への結合について競合する抗体を見つけることである。
【0058】
(エピトープマッピングおよび関連技術)
特定のエピトープ(例えば、IgEの高親和性の受容体への結合をブロックするエピトープ)に結合する抗体についてスクリーニングするために、HarlowおよびLane,ANTIBODIES(1990)Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されるアッセイのような所定の交差ブロッキングアッセイが実施できる。他の方法としては、アラニン走査突然変異、ペプチドブロット(Reineke,2004 Methods Mol Biol 248:443−63)(その全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)、またはペプチド切断分析が含まれる。さらに、エピトープ切除、エピトープ抽出、および抗原の化学修飾などの方法が利用できる(Tomer,2000 Protein Science:9:487−496、その全体が、参照によって本明細書中に具体的に組み込まれる)。
【0059】
(機能分析)
抗原構造ベースの抗体プロファイリング(ASAP)としても知られる、修飾を使ったプロファイリング(MAP)は、化学的または酵素的に修飾された抗原の表面に対する各抗体の結合プロフィールの類似性にしたがって、同じ抗原に対して向けられた大量のモノクローナル抗体(mAb)を分類する方法である(米国特許公開第2004/0101920号、その全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。各カテゴリーは、別のカテゴリーによって示されるエピトープと明確に異なるか、または部分的に重複する固有のエピトープを示す。この技術は、遺伝的に同一の抗体の迅速なフィルタリングを可能にし、その結果、遺伝的に異なる抗体に特徴付けを集中できる。ハイブリドーマのスクリーニングに適用された場合、MAPは、所望の特徴を有するmAbを産生する希少なハイブリドーマクローンの同定を容易にし得る。MAPは、本発明のRON6抗体およびRON8抗体を異なるエピトープに結合できる抗体のグループに分類するのに使用できる。
【0060】
本発明の抗体またはそのフラグメントは、単一特異性または二重特異性であることができる。二重特異性抗体(BsAb)は、2つの異なる抗原結合特異性または抗原結合部位を有する抗体である(米国公開番号第2004/0259156号、2004年2月13日出願を参照のこと)。抗体が1つより多い特異性を有する場合、認識されるエピトープは、単一の抗原または1つより多い抗原と結合されることができる。したがって、本発明は、RONに対する少なくとも1つの特異性を備える、2つの異なる抗原に結合する2重特異性抗体、またはそのフラグメントを提供する。
【0061】
RONに対する抗体またはそのフラグメントの特異性は、親和性および/またはアビディティに基づいて決定できる。抗体との抗原の解離についての平衡定数(「Kd」)によって表わされる親和性は、抗原決定基と抗体結合部位との間の結合強度を測定する。アビディティは、抗体とその抗原との間の結合の強度の指標である。アビディティは、エピトープとその抗体上の抗原結合部位との間の親和性、および特定のエピトープの抗原結合部位の数を示す抗体価の両方に関連する。抗体は、典型的には、約10−5〜約10−11l/molの解離定数(Kd)で結合する(例えば、KD<100nM)。約10−4l/mol未満のいかなるKdも、一般的には、非特異性の結合を示すと考えられる。Kdの値が小さければ小さいほど、抗原決定基と抗体結合部位との間の結合強度は強い。
【0062】
RONは、種々の供給源、例えば、RONを発現する結腸、膵臓、前立腺、胃、肺、肝臓、卵巣、腎臓、胸部、および脳の細胞、ならびに一般的な上皮細胞および神経内分泌細胞から単離されて、免疫応答を生じ得る。また、合成受容体ペプチドを、市販の機械および対応するアミノ酸配列を使用して得てもよい。さらなる選択肢は、cDNAまたはそのフラグメントのようなRONタンパク質をコードするDNAをクローニングおよび発現させ、生じたポリペプチドを回収して免疫原として使用し、本発明の抗体を得てもよい。抗体を作製するためのRONタンパク質またはそのフラグメントを調製するため、RONをコードする核酸分子、またはその部分、特にその細胞外部分(具体的には、αおよびβ部分)を、標準的な組換えDNA技術を使用して公知のベクターに挿入し、宿主細胞で発現させてもよい。同様に、RONのリガンド、特にMSPに対する抗体が調製され得る。
【0063】
RONおよびそのリガンドMSPの配列は、GenBankデータベースに公開されており(RONアクセッション番号X70040およびMSPアクセッション番号NM 020998、両方の引用が参照によって本明細書中に組み込まれる)、抗体の調製のために容易に使用できる。抗体はまた、RONまたはMSPの変異体/突然変異体に対しても産生され得る。変異体および突然変異体の細胞外ドメイン上に存在するエピトープに対する抗体が興味深い。細胞外ドメインにおける109アミノ酸のインフレーム欠失による改変RON受容体は、構成的に活性化されることが示されている(1)。抗体は、例えば、そのような改変されたRON受容体に対して産生できる。
【0064】
RONに特異的な抗体は、哺乳動物をRONで免疫処置することによって調製され得る。可溶性受容体は、それ自体で免疫原として、またはキャリアタンパク質かビーズ、すなわちセファロースビーズのような他の物体に付着されて使用され得る。哺乳動物が抗体を産生した後で、脾細胞のような抗体産生細胞の混合物が単離される。モノクローナル抗体は、個々の抗体産生細胞を混合物から単離し、例えば、それらをミエローマ細胞のような腫瘍細胞と融合させることによって不死化することにより産生され得る。生じたハイブリドーマは、培養物中で保存され、モノクローナル抗体を発現し、それは培養培地から回収される。
【0065】
さらに、本発明の抗体および抗体フラグメントは、ヒト免疫グロブリンの重鎖および軽鎖を産生するトランスジェニックマウスを使用する標準的なハイブリドーマ技術(Harlow & Lane編、ANTIBODIES:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,211−213(1998)、参照によって本明細書中に組み込まれる)によって得ることができる。好ましい実施形態において、ヒト抗体産生ゲノムの実質的な部分をマウスのゲノムに挿入し、内因性のマウス抗体の産生を欠失させる。そのようなマウスは、完全フロイントアジュバント中のRONで皮下(s.c.)に免疫処理され得る。本発明の抗体は、さらなるアミノ酸残基に融合させることができる。そのようなアミノ酸残基は、単離を容易にするため、ペプチドタグであってもよい。抗体を特定の器官または組織にホーミングするための他のアミノ酸残基もまた意図されている。
【0066】
本発明による抗RON抗体は、ヒト重鎖および軽鎖の可変領域遺伝子から構築されたライブラリーのようなファージディスプレイライブラリーから単離できる。例えば、本発明の可変ドメインは、再配列された可変領域遺伝子を含有する末梢血リンパ球から得ることができる。あるいは、CDR領域およびFW領域のような可変ドメイン部分は、異なるヒト配列から得ることができる。
【0067】
RONに特異的な抗体は、好ましくは約1×10−9−1以下、より好ましくは約1×10−10−1以下、そして最も好ましくは約1×10−11−1以下のKdでRONに結合する。
【0068】
RONに特異的な抗体またはそのフラグメントは、受容体の活性化を阻害する。受容体を阻害することは、受容体の内因性のキナーゼ活性の活性化を防止してシグナルを変換することを意味する。RONについての信頼性のあるアッセイは、受容体リン酸化の阻害である。
【0069】
本発明は、RON阻害のいかなる特定の機構によっても限定されない。そのような阻害は、例えば、リガンドによる特定のエピトープへのアクセスをブロックする抗体によって、またはリガンド、特にMSPが受容体に結合できても受容体を活性化できない様式で、RONの立体配座を変化させることによって生じ得る。米国特許第6165464号は、リガンド自身への結合、受容体をダウンレギュレートすること、受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害すること、または細胞障害性反応を引き起こすことを含む、そのような阻害のための種々の考えられ得る機構を列挙する。ダウンレギュレーションは、RONを発現する細胞、特にRONを過剰発現(特異的発現を含む)する細胞が、それらの表面のRON受容体チロシンキナーゼの数を減少させるときに生じ得る。腫瘍細胞の浸潤および転移において機能するマトリクスメタロプロテアーゼもまた、本発明の抗体によってダウンレギュレートされ得る。
【0070】
RON阻害は、成長(増殖および分化)、血管形成(血管の補充、浸潤、および転移)、ならびに細胞の移動性および転移(細胞接着および細胞侵襲性)の阻害、縮小、不活性化、および/または途絶を含む種々の効果を有する。
【0071】
本発明はまた、リガンド結合無しで活性な変異体または突然変異したRON受容体チロシンキナーゼに結合し、不活性にする抗体も意図する。RON関連疾患に罹患している哺乳動物は、例えば、野生型および変異体RONの両方を発現し得る(発現した変異体受容体は不釣合いな量である)。Wang(1)(9)によって開示されるように、細胞外ドメイン内の欠失を有するもののような、細胞外ドメインが異なる変異体/突然変異体の配列が興味深い。したがって、RON阻害は、野生型および/または変異体RON(点突然変異、欠失、選択的スプライシングなど)を含み得る。
【0072】
RON活性化は、c−metまたはEGFRのような他のRTKでの二量化または活性化によって起こり得る。したがって、RON阻害は、RONとEGFRまたはc−metのような他の受容体チロシンキナーゼ(RTK)との間のヘテロ二量化の阻害もまた含み得る。そのような阻害はまた、例として、形成されたRONとEGFまたはc−metのヘテロ二量体によるシグナル伝達の阻害も含み得る。そのような二量化は、例えば、受容体に結合して二量化を誘導するMSP、HGF、またはEGFにより、リガンド依存性の様式で誘導され得る。
【0073】
RON阻害の1つの指標は、受容体のチロシンキナーゼ活性の阻害である。チロシンキナーゼ阻害は、周知の方法を使用して、例えば、組換えキナーゼ受容体の自己リン酸化レベル、および/または天然または合成の基質のリン酸化を測定することによって決定できる。したがって、リン酸化アッセイは、本発明に照らして抗体の阻害を決定するのに有用である。リン酸化は、例えば、ELISAアッセイまたはウエスタンブロットでホスホチロシンに特異的な抗体を使用して検出できる。チロシンキナーゼ活性についてのいくつかのアッセイが、Panekら、J.Pharmacol.Exp.Them.283:1433−44(1997)およびBatleyら、Life Sd.62:143−50(1998)[52]に記載される。さらに、タンパク質発現の検出のための方法が、RON阻害を決定するのに利用できる。これらの方法は、タンパク質発現の検出のための免疫組織化学(IHC)、遺伝子増幅の検出のための蛍光原位置ハイブリダイゼーション(FISH)、競合的放射リガンド結合アッセイ、ノーザンブロットおよびサザンブロットのような固体マトリクスブロッティング技術、逆転写ポリメラーゼ鎖反応(RT−PCR)、およびELISAを含む。
【0074】
RON阻害の別の指標は、RONの下流基質のリン酸化のレベルを含む。したがって、例えば、MAPKまたはAktのリン酸化のレベルが測定できる。
【0075】
1つの実施形態において、本発明の抗体の1個、2個、3個、4個、5個、または6個全ての相補性決定領域(CDR)を有するRONに特異的な抗体が、哺乳動物に投与される。別の実施形態において、投与された抗体は、本発明の抗体の可変領域を有する。図2A〜2Eは、本発明の抗体の配列を提供する。理論に束縛されることを意図しないが、RON6およびRON8は、RONのβ細胞外ドメインに結合するが、そのような特異性はまた、RONの他のドメインに結合することによって生じるか、または同じドメインの異なるエピトープに結合することによっても生じ得ると考えられる。RON6抗体およびRON8抗体のCDRは本発明によって単離され、以下を含む。
【0076】
【化1】

【0077】
【化2】

【0078】
【化3】

【0079】
【化4】

【0080】
RONに特異的な抗体および抗体フラグメントの機能的変異体はまた、本発明の抗体の可変領域または超可変領域のアミノ酸配列と実質的に類似のアミノ酸配列を備えるポリペプチドを含む。実質的に同じアミノ酸配列は、PearsonおよびLipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85,2444−2448(1988)に従うFASTA検索方法によって決定されるように、比較されるアミノ酸配列に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも約80%、そしてより好ましくは少なくとも約90%相同な配列として本明細書中で定義され、少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、そしてより好ましくは少なくとも約90%、95%、または99%同一な配列、およびそれらの間の全ての部分的な範囲を含む。そのような抗体は、実質的に同じCDRを有する本発明の抗体と、同じかまたは類似の、結合、リガンドブロッキング、および受容体阻害の活性を有する。
【0081】
RONに特異的な抗体および抗体フラグメントの変異体はまた、1つ以上の保存的アミノ酸置換を有する抗体も含む。保存的アミノ酸置換は、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質、あるいはそれらのフラグメントの1個、2個、またはそれ以上のアミノ酸の変化によるアミノ酸組成の変化として定義される。置換は、一般的には、類似の性質(例えば、酸性、塩基性、芳香性、大きさ、正または負の電荷、極性、非極性)を備えるアミノ酸間の置換であり、その結果、その置換は実質的にペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の特性(例えば、電荷、等電点、親和性、アビディティ、立体配座、可溶性)または活性を変更しない。そのような保存的アミノ酸置換に関して実施され得る典型的な置換は、以下のアミノ酸群間であり得る:グリシン(G)、アラニン(A)、バリン、(V)、ロイシン(L)、およびイソロイシン(I);アスパラギン酸(D)およびグルタミン酸(E);アラニン(A)、セリン(S)およびトレオニン(T);ヒスチジン(H)、リシン(K)、およびアルギニン(R);アスパラギン(N)およびグルタミン(Q);フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、およびトリプトファン(W)。
【0082】
保存的アミノ酸置換は、例えば、分子の選択的および/または特異的結合特性に主に寄与する超可変領域に隣接する領域、ならびに分子の他の部分、例えば可変重鎖カセットで行うことができる。
【0083】
抗体またはそのフラグメントはまた、直接変異、親和成熟法、ファージディスプレイ法、または鎖シャッフリング法によってそれらの結合特性が改善されるものも含む。
【0084】
親和性および特異性は、CDRおよび/またはFW残基の変異、ならびに所望の特性を有する抗原結合部位のスクリーニングにより、修飾または改善されることができる(例えば、Yangら、J.Mol.Biol.,(1995)254:392−403を参照のこと)。1つの方法は、本来は同一の抗原結合部位の集団において、2〜20個のアミノ酸のサブセットが特定の位置で見出されるように、個々の残基または残基の組合せを無作為化することである。あるいは、変異は、エラープローンPCR法によってある残基の範囲にわたって誘導できる(例えば、Hawkinsら、J.MoI.Biol,(1992)226:889−96を参照のこと)。別の例において、重鎖および軽鎖可変領域遺伝子を含有するファージディスプレイベクターは、E.coliの突然変異誘発株で増殖できる(例えば、Lowら、J.Mol.Biol.,(1996)250:359−68を参照のこと)。これらの突然変異誘発方法は、当業者に公知の多くの方法を例示したものである。
【0085】
本発明の抗体の親和性を増大する別の方法は、鎖シャッフリングを実行することであり、ここで、重鎖または軽鎖は、無作為に他の重鎖または軽鎖と対合されて、より高い親和性の抗体が調製される。この抗体の様々なCDRはまた、他の抗体における対応するCDRとシャッフリングされ得る。
【0086】
さらに、本発明は、本発明の抗体またはそのフラグメントをコードする単離されたポリヌクレオチド、ならびに発現配列に作動可能に連結されたこれらのポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを提供する。これらのヌクレオチドは、図1A〜1D、2A〜2E、および3A〜3Eに列挙される。本発明の抗体またはそのフラグメントを発現する1つ以上の発現ベクターを含む組換え宿主細胞もまた提供される。これらの細胞を、抗体またはそのフラグメントの発現を可能にする条件下で培養することを含む、抗体またはそのフラグメントを産生するための方法もまた提供される。抗体またはそのフラグメントは、次いで、細胞または細胞培養培地から精製できる。
【0087】
図1A〜1D、2A〜2E、および3A〜3Eに列挙されるヌクレオチドの変異体は、本発明の抗体と同じ機能、すなわち、RONの活性化をブロックまたは阻害する機能を有する抗体または抗体フラグメントをコードするものを含む。そのような変異体は、野生型RONと少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、そしてより好ましくは少なくとも約90%同一な配列を有する。本発明はまた、抗体融合タンパク質も提供する。これらの融合タンパク質は、酵素、蛍光タンパク質、ポリペプチドタグ、または発光マーカー、および/またはそれらの組み合わせをコードするヌクレオチド配列に作動可能に結合された図1A〜1D、2A〜2E、および3A〜3Eのヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0088】
本発明のヌクレオチド配列は、以下も含む:(a)図1A〜1D、2A〜2E、および3A〜3Eに示された抗体DNA配列;(b)(i)ストリンジェント条件下、例えば、0.5M NaHPO、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中65℃での、フィルター結合DNAへのハイブリダイゼーション、0.1×SSC/0.1%SDS中68℃での洗浄(Ausubel F.M.ら編、1989,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,Vol.I,Green Publishing Associates,Inc.,およびJohn Wiley & sons,Inc.,ニューヨーク、p.2.10.3)で、(a)に記載されたヌクレオチド配列の補体にハイブリダイズし、かつ(ii)実質的に同じ機能性を有する抗体または抗体フラグメントをコードする、任意のヌクレオチド配列;ならびに、(c)中程度にストリンジェントな条件のような、より低いストリンジェント条件下、例えば0.2×SSC/0.1%SDS中42℃での洗浄(Ausubelら、1989、前掲)で、図2A〜2E、および3A〜3Eに示された抗体配列をコードするDNA配列にハイブリダイズするが、依然同じ機能性を実質的に有する抗体または抗体フラグメントをコードする、任意のヌクレオチド配列。本発明の抗体の機能性は、RONの活性化をブロックすることである。
【0089】
本発明はまた、制御配列に作動可能に連結された本発明の抗体またはそのフラグメントをコードする核酸を含有する発現ベクター、ならびにそのような発現ベクターを含有する宿主細胞を提供する。これらの宿主細胞は、本発明の抗体またはそのフラグメントの発現を可能にする特定の条件下で培養でき、そして抗体は、次いで、宿主細胞から精製できる。
【0090】
標準的な組換え技術および公知の発現ベクターが使用されて、本発明の抗体を発現する。細菌、タンパク質を発現するためのベクター、特にE.Coliが公知である。そのようなベクターは、DieckmannおよびTzagoloff,J.Biol.Chem.260,1513−1520(1985)によって記載されたPATHベクターを含む。これらのベクターは、アントラニル酸合成酵素(TrpE)をコードするDNA配列、それに続くカルボキシ末端のポリリンカーを含有する。他の発現ベクター系は、β−ガラクトシダーゼ(pEX);λPL;マルトース結合タンパク質(pMAL);および、グルタチオンS−転移酵素(pGST)に基づく。Gene 67,31(1988)およびPeptide Research 3,167(1990)を参照のこと。
【0091】
酵母において有用なベクターが利用可能である。好適な例は、2Dプラスミドである。哺乳動物細胞における発現に好適なベクターもまた公知である。そのようなベクターは、SV−40、アデノウイルス、レトロウイルス由来DNA配列の周知の誘導体、および上記のもののような機能的哺乳動物ベクターの組合せに由来したシャトルベクター、ならびに機能性プラスミドおよびファージDNAを含む。
【0092】
さらに、真核発現ベクターが、当該技術分野において公知である(例えば、P.J.SouthernおよびP.Berg、J.Mol Appl.Genet.1,327−341(1982);S.Subramaniら、Mol.Cell.Biol.1,854−864(1981);R.J.KaufmannおよびP.A.Sharp、「Amplification and Expression Of Sequences Cotransfected with A Modular Dihydrofolate Reductase Complementary DNA Gene,」J.Mol.Biol.159,601−621(1982);R.J.KaufmannおよびP.A.Sharp、「Amplification and Expression Of Sequences Cotransfected with A Modular Dihydrofolate Reductase Complementary DNA Gene,」J.Mol.Biol.159,601−664(1982);S.I.Scahillら、「Expression and Characterization Of the Product Of A Human Immune Interferon DNA Gene In Chinese Hamster Ovary Cells,」Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80,4654−4659(1983);G.UrlaubおよびL.A.Chasin、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77,4216−4220,(1980))。
【0093】
本発明において有用な発現ベクターは、発現されるDNA配列またはフラグメントに作動可能に連結された少なくとも1つの発現制御配列を含有する。制御配列は、クローニングされたDNA配列の発現を制御および調節するために、ベクター中に挿入される。有用な発現制御配列の例は、lac系、trp系、tac系、trc系、ファージλの主要オペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、酵母の解糖プロモーター、例えば、3−ホスホグリセレートキナーゼのプロモーター、酵母酸性ホスファターゼのプロモーター、例えば、Pho5、酵母α接合因子のプロモーター、ならびに、ポリオーマ、アデノウイルス、レトロウイルス、およびシミアンウイルス由来のプロモーター、例えば初期および後期プロモーターまたはSV40、ならびに、原核細胞または真核細胞およびそれらのウイルスの遺伝子の発現を制御することが知られる他の配列、またはそれらの組合せである。
【0094】
ベクター(組換えベクターおよび発現ベクター)は、本明細書中に提供されるような用途のために意図されている。例えば、本発明の抗体またはその抗体フラグメントをコードするもののような、制御シグナルおよび発現されるべきDNAを含有する発現ベクターが、発現のために宿主細胞に挿入される。いくつかの有用な発現宿主細胞は、周知の原核細胞および真核細胞を含む。いくつかの好適な原核宿主は、例えば、E.coli SG−936、E.coli HB 101、E.coli W3110、E.coli X1776、E.coli X2282、E.coli DHI、およびE.coli MRClなどのE.coli、Pseudomonas、Bacillus subtilisのようなBacillus、ならびにStreptomycesを含む。好適な真核細胞は、酵母および他の真菌、昆虫、動物細胞、例えばCOS細胞、リンパ腫、ミエローマのようなリンパ球起源の細胞株(例えばNSO)、およびCHO細胞、組織培養物におけるヒト細胞および植物細胞を含む。
【0095】
抗体を産生する方法が提供される。この方法は、好適な発現ベクターを含む宿主細胞を培養することを含み、ここで、発現ベクターは、ポリペプチドの発現を可能にする条件下で、ポリペプチド、例えば、そのような抗体あるいはそのフラグメントまたは改変変異体の重鎖または軽鎖をコードする1個以上の核酸分子を含む。好適な培地で維持された宿主細胞における発現後、発現されたポリペプチドは、当該技術分野において公知の方法によって培地から単離され、精製され得る。ポリペプチドまたはペプチドが培養培地へ分泌されない場合は、宿主細胞は、単離および精製の前に溶解される。精製された抗体は、同定され、ならびにその天然の環境の成分から分離および/または回収されたものである。その天然の環境の混入成分は、抗体の診断的または治療的使用と干渉し得、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含み得る物質であり、一般には除去される。
【0096】
したがって、例えば、本発明によるモノクローナル抗体は、培養培地または腹水から、例えば、プロテインA−セファロース、ヒドロキシアパタイト(hydrolyapatite)クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティクロマトグラフィーのような、従来の免疫グロブリン精製法により単離または精製されるサブクローンによって分泌される。
【0097】
別の実施形態において、RONに特異的な本発明の抗体は、トランスジェニック動物において、抗体を含む軽鎖および/または重鎖、またはそのアナログをコードする1つ以上の核酸を発現することにより産生され、その結果、抗体を発現させ、回収することができる。例えば、抗体は、回収および精製を容易にする組織特異的様式で発現させることができる。1つのそのような実施形態において、本発明の抗体は、授乳時に分泌のために乳腺で発現する。トランスジェニック動物は、限定されないが、マウス、ヤギ、およびウサギを含む。任意の他の公知のトランスジェニック系、例えば、鳥の卵(例えば、鶏卵)の卵白における発現が利用できる。
【0098】
本発明は、本発明の抗RON抗体を含む医薬組成物を提供する。1つの実施形態において、組成物は、本明細書中に例示されたRON6およびRON8抗RON抗体の1種以上を含み得る。本発明の抗RON抗体は、予防または処置の目的で哺乳動物において使用される場合、薬学的に許容され得るキャリアを追加的に含む組成物の形態で投与されるであろうことが理解される。好適な薬学的に許容され得るキャリアは、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、ならびにそれらの組み合わせの1種以上を含む。薬学的に許容され得るキャリアは、結合タンパク質の貯蔵寿命または有効性を増強する少量の助剤物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、保存剤または緩衝剤をさらに含むことができる。注射用組成物は、当該分野においてよく知られているように、哺乳動物への投与後に、活性成分の迅速な、持続型の、または遅延型の放出を提供するように処方されることができる。
【0099】
本明細書中で使用される「キャリア」は、利用される投与量および濃度で、それに曝露される細胞または哺乳動物に対して非毒性である、薬学的に許容され得るキャリア、賦形剤、または安定化剤を含む。生理学的に許容され得るキャリアは、水性のpH緩衝液であることが多い。生理学的に許容され得るキャリアの例は、リン酸、クエン酸、および他の有機酸のような緩衝剤;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む、単糖、二糖、およびその他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような対イオンを形成する塩;ならびに/または、TWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS(登録商標)のような、非イオン性界面活性剤である。
【0100】
活性成分はまた、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)において、またはマクロエマルションにおいて、例えば、界面重合により調製されたマイクロカプセル中、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、またはゼラチン−マイクロカプセル、およびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに、それぞれ、取り込まれ得る。インビボ投与に使用される製剤は、滅菌しなければならない。これは、滅菌濾過膜を通す濾過により、容易に実現される。
【0101】
徐放性調製物もまた調製され得る。徐放性調製物の好適な例は、抗体を含有する固形疎水性ポリマーの半透過性マトリクスを含み、このマトリクスは、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルのような造形品の形態である。徐放性マトリクスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許番号第3773919号)、L−グルタミン酸およびγエチル−L−グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドで構成された注射可能なミクロスフェア)、ならびにポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸のようなポリマーは、100日間以上の分子の放出を可能にするが、特定のヒドロゲルは、より短い期間タンパク質を放出する。
【0102】
カプセル封入された抗体が、長期間体内に残留する場合は、それらは、37℃で水分に曝露された結果として、変性または凝集し得、生物学的活性の喪失および免疫原性の変化の可能性を生じる。関連メカニズムに基づいて(例えば、凝集メカニズムが分子間であることが分った場合など)、安定化のための理論的戦略を考慮してもよい。
【0103】
例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換による分子間S−S結合形成であることが発見された場合、安定化は、スルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適当な添加剤の使用、および特異的ポリマーマトリクス組成物の開発により、実現され得る。
【0104】
本発明は、単独療法として、または他の処置オプションとの組み合わせで、RONに特異的な抗体またはそのフラグメントの治療有効量を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む処置の方法を提供する。1つの実施形態において、哺乳動物はヒトである。そのような抗体は、様々な技術によって得られたキメラ抗体、ヒト化抗体、マウス、ウサギ、およびヒトの抗体を含み得る。別の実施形態において、投与された抗体はヒト抗体である。別の実施形態において、前記抗体は、RON6またはRON8の少なくとも1個のCDR配列を含む。これらの方法が有用である状態は、RONを発現する腫瘍、炎症性疾患、過増殖性疾患、ならびに肝臓、胆道、胆管、胆嚢、および関連する肝胆汁系の疾患を含む。
【0105】
本明細書中で議論されるように、本発明の抗RON抗体は、単独療法として、および/または他の治療剤との組み合わせで、限定されないが、腫瘍性の状態または非腫瘍性の状態を含む、任意の病理学的状態を処置するために使用され得ることが意図されている。特定の状態、例えば、癌の処置に関して、抗体が、第一線の処置戦略として(例えば、新規に診断された癌患者における処置の最初の治療として)または第二処置戦略として(例えば、他の薬剤を使用して以前に処置されたが、第1の薬剤に反応しなかったか、またはそれに対して耐性になった癌患者の処置)、単独または他の処置薬剤と組み合わせて使用され得ることがさらに意図されている。
【0106】
処置は、哺乳動物における疾患の任意の処置を意味し、以下を含む:(1)疾患に罹患する傾向にあるが、まだ疾患の症状を経験もしくは提示していない哺乳動物における疾患発生の予防;例えば、臨床症状の突発の予防;(2)疾患の阻止、例えば、その発症の停止;または、(3)疾患の緩和、例えば、疾患の症状の退縮。
【0107】
本発明の方法において、本発明の抗体の治療有効量が、それを必要とする哺乳動物に投与される。本明細書中で使用される用語「投与する」は、本発明の抗体を哺乳動物に、求められる結果を達成することができる任意の方法によって送達することを意味する。それらは、例えば、静脈内または筋肉内に投与できる。本発明のヒト抗体はヒトへの投与に特に有用であるが、それらは同様に他の哺乳動物にも投与できる。本明細書中で使用される用語「哺乳動物」は、限定されないが、ヒト、実験動物、ペット、および家畜を含むことが意図される。「治療有効量」は、哺乳動物に投与される場合、キナーゼ活性の阻害または腫瘍成長の阻害のような所望の治療効果を生じるのに有効である本発明の抗体の量を意味する。
【0108】
本発明の抗RON抗体は、腫瘍または病理学的状態の進行を予防、阻害、または軽減するのに十分な量で、腫瘍または血管形成に関連する病理学的状態に罹患している患者への治療処置のために投与されることができる。進行は、例えば、腫瘍または病理学的状態の成長、侵襲、転移、および/または再発を含む。これを実現するために適当な量が、治療有効量として定義される。この用途のために有効な量は、疾患の重篤度および患者自身の免疫系の全般的状態に依存するだろう。投薬スケジュールもまた、病態および患者の状態により変動し、典型的には単回ボーラス投与または連続注入から、1日の複数回投与(例えば、4〜6時間毎)までの範囲であるか、または担当医および患者の状態により指示されるものであろう。しかしながら、本発明が特定の投与量に限定されないことは注意されるべきである。
【0109】
本発明の抗体の好適な投与量は、本発明において例示されたインビボデータに基づいて決定され得る。インビボ実験は、3日毎に約1mg/20gの投与量を使用した。マウスの平均は約0.02kgであり、その体積は約0.008mである。ヒトの平均は約70kgであり、その体積は約1.85mである。約200mg/mの投与量は、マウスにおいて約40mg/kgに相当し、ヒトにおいてはおおまかに約2.6mg/kgである。この投与量を正しく判断するために、別の抗体Erbitux(登録商標)を、約250mg/m、1週間当たり1回投与した。これはヒトにおいて約6.5mg/kgである。これらの計算および実験に基づいて、ヒトに投与される投与量は、好ましくは約1mg/kg〜約10mg/kg、より好ましくは約3mg/kg〜約8mg/kg(1回投与量/週)である。この投与量は、Erbitux(登録商標)についての投与量、例えば、約6mg/kg〜約7mg/kgに類似し得る。
【0110】
本発明の1つの実施形態は、本発明の抗体によるRONのインビボ阻害が腫瘍成長を阻害することを意図する。図4Dに示されるように、RON抗体は、ヌードマウスにおいて増殖したHT−29細胞を皮下投与で阻害する。種々の実施形態において、腫瘍成長は、少なくとも約20%、または少なくとも約40%抑制される。図4Dは、HT−29腫瘍成長の約50〜60%の減少を40日間にわたって示す。
【0111】
本発明による抗RON抗体は、種々の実施形態において、RON、MAPK、およびAKT(例えば、HT−29、Colo205、AGS、およびDU145)のMSP誘導リン酸化の、少なくとも約60%、約80%、または約100%をブロックすることができる。図5Aにおいて、レーン1および3のバンドは、ほぼ同一であり、そのようなリン酸化の完全ブロッキングを示す。MAPKおよびAKTのリン酸化は、細胞の増殖(経時的な細胞数の増加)、移動(薬剤、特にMSPへの細胞の移動、すなわち化学誘引)、浸潤(新たな組織を通って移動する能力)、および生存に重要であると考えられる。接着HT−29細胞およびColo205細胞の増殖は、RON抗体および10%血清の存在下で、約20%〜約30%、または約25%阻害され得る。さらに、HT−29およびColo205が、RON抗体および10%血清の存在下で軟寒天において増殖される場合、コロニー形成は、HT−29について約60%〜約80%、より典型的には約75%、そしてColo205については約50%〜約70%、より典型的には60%阻害され得る。
【0112】
本発明は、RON特異的抗体が、軟寒天において癌細胞の増殖を阻害し、そして増殖を阻害すると同時に、細胞培養条件において接着細胞として成長させすることができるという知見に基づく。RON抗体は、ヌードマウスに注射された場合に、癌細胞株の腫瘍を形成する能力を著しく遅延させることができ、それは、RON受容体チロシンキナーゼの阻害が、結腸癌細胞の増殖に負に作用することを実証する。
【0113】
従来のウエスタンブロットおよびフローサイトメトリー手法を使用して、RONが、多くのヒト腫瘍細胞株において発現することが見出された:結腸(HT−29、Colo205、HCT−116、DLD−I、Sw480、Sw620)、膵臓(BXPC−3、CAPAN−2、ASPC−I、HPAF−II、L3.7pl#7、Hs766T)、前立腺(DU−145、PC−3)、胃(AGS、NCI−N87)、肺(A549、H596)、肝臓(HepG2、SNU−182)、および胸部(JIMT1、DU4475、AU565)。したがって、種々の細胞型に由来した腫瘍が、RON抗体の治療標的である。
【0114】
処置される腫瘍は、原発性腫瘍および転移性腫瘍、ならびに難治性腫瘍を含む。難治性腫瘍は、化学療法剤単独、抗体単独、放射線単独、またはそれらの組合せでの処置に反応しないか、またはその処置に耐性である腫瘍を含む。難治性腫瘍はまた、そのような薬剤による処置によって阻害されるが、処置が中断されて5年以内に、時には最大10年またはそれ以降に再発すると思われる腫瘍も包含する。
【0115】
処置され得る腫瘍は、脈管化されていない腫瘍、またはまだ実質的に脈管化されていない腫瘍、ならびに脈管化された腫瘍を含む。処置され得る固形腫瘍の例は、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、神経膠腫およびリンパ腫を含む。そのような腫瘍のいくつかの例は、類表皮腫、扁平上皮腫、例えば、頭部および頸部の腫瘍、結腸直腸腫瘍、前立腺腫瘍、乳房腫瘍、小細胞肺腫瘍および非小細胞肺腫瘍を含む肺腫瘍、膵臓腫瘍、甲状腺腫瘍、卵巣腫瘍、および肝臓腫瘍を含む。他の例は、カポジ肉腫、CNS新生物、神経芽細胞腫、毛細血管芽細胞腫、髄膜腫、および脳転移、黒色腫、胃腸管および腎臓の癌腫および肉腫、横紋筋芽細胞腫、膠芽腫、好ましくは多形性膠芽腫、および平滑筋肉腫を含む。
【0116】
特に治療的に興味深いのは、結腸、膵臓、前立腺、胃、肺、および肝臓の癌であるが、しかしながら、本発明の抗体の投与が治療利益をもたらし得る、腫瘍性疾患および非腫瘍性疾患を含む病理学的状態のあらゆる形態が、本発明の範囲内に含まれることが本明細書中で意図される。前記病理学的状態は、当業者によって、かつ本明細書中に提供される教示に照らして、容易に決定され得る。
【0117】
したがって、ヒト抗RON抗体は、脈管化された腫瘍もしくは新生物または血管形成疾患を有する対象の処置に有効であり得る。そのような腫瘍および新生物は、例えば、芽細胞腫、癌腫または肉腫、ならびに高度に脈管化された腫瘍および新生物のような悪性腫瘍および新生物を含む。本発明の方法によって処置され得る癌は、例えば、膀胱、副腎、精巣、CNSおよび末梢神経系、脳、尿生殖路、リンパ系、胃、腎臓系、結腸、喉頭、肺および骨の癌を含む。非限定的例は、類表皮腫瘍、扁平上皮腫瘍、例えば、頭部および頸部腫瘍、結腸直腸腫瘍、前立腺腫瘍、乳房腫瘍、肺腺癌ならびに小細胞肺腫瘍および非小細胞肺腫瘍を含む肺腫瘍、膵臓腫瘍、甲状腺腫瘍、卵巣腫瘍、および肝臓腫瘍をさらに含む。この方法はまた、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、およびヒト悪性角化細胞のような悪性角化細胞の増殖を抑制することによって処置することができる皮膚癌を含む、脈管化された皮膚癌の処置のためにも使用される。処置され得る他の癌は、上皮間充織転換(EMT)、カポジ肉腫、CNS新生物(神経芽細胞腫、毛細血管芽細胞腫、髄膜腫および脳転移)、黒色腫、胃腸管および腎臓の乳頭状癌を含む腎臓の癌腫および肉腫、横紋筋芽細胞腫、多形性膠芽腫を含む膠芽腫、および平滑筋肉腫を含む。
【0118】
本発明の別の態様において、抗RON抗体は、腫瘍関連血管形成を阻害する。受容体チロシンキナーゼによる血管内皮細胞の刺激は、腫瘍の脈管化に関連する。典型的には、血管内皮は、パラクリン様式で刺激される。
【0119】
抗RON抗体の投与は、単独療法を構成する。他の意図される実施形態において、抗RON抗体が、抗新生物薬または所定の病理学的状態に対して活性な他の薬剤と組み合わせて投与される併用療法が含まれ得る。
【0120】
抗新生物薬は、RON抗体と別個に、またはRON抗体の結合体として投与され得る。現在当該分野において公知または評価されている抗新生物薬は、例えば、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、インターカレーション抗生物質、増殖因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、抗生存(anti survival)剤、生物学的反応修飾剤、抗ホルモン薬、および抗血管形成剤を含む、様々なクラスに分類できる。
【0121】
本発明による「有機小分子」は、従来の抗新生物薬として定義され、例えば、抗体または核酸分子のような比較的大きな生体分子ではないものである。例えば、公知の抗新生物薬の多くは、特にトポイソメラーゼ阻害剤のような有機小分子である。したがって、本発明の実施形態は、任意選択的に、トポイソメラーゼ阻害剤が、RONに結合する抗体と組み合わせて投与される方法を含む。阻害剤は、トポイソメラーゼIまたはトポイソメラーゼIIの阻害剤であってもよい。トポイソメラーゼI阻害剤は、イリノテカン(CPT−II)、アミノカンプトテシン、カンプトテシン、DX−8951f、トポテカンを含む。トポイソメラーゼII阻害剤は、エトポシド(VP−16)、およびテニポシド(VM−26)を含む。他の物質が、トポイソメラーゼ阻害活性および抗新生物薬としての有効性に関して現在評価されている。任意選択的に本発明の抗体と同時に投与される他の有機小分子抗新生物薬または化学療法剤は、アルキル化剤または代謝拮抗剤であってもよい。アルキル化剤の例は、限定されないが、シスプラチン、シクロホスファミド、メルファラン、およびダカルバジンを含む。さらなる有機小分子は、タキソール、ドキソルビシン、アクチノマイシン−D、メトトレキセート、ゲムシタビン、オキシプラチン、フルオロウラシル(5−FU)、ロイコウリン(LU)、シスプラチン、イリノテカン(CPT−II)、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、エポチロン、シスプラチン/カルボプラチン、およびペグ化されたアドリアマイシンなどの、細胞毒および/または化学療法剤を含む。有機小分子は、以下のような組合せで投与され得る:(CPT−II;5−FU;LU);(パクリタキセル;5−FU);および、(CPT−II;5−FU;LU)。
【0122】
抗新生物薬は、放射線も含む。抗新生物薬が放射線である場合、放射線の供給源は、処置される患者の外部(外部ビーム放射線療法−EBRT)または内部(近接照射療法−BT)のいずれかであることができる。投与される抗新生物薬の投与量は、例えば、薬剤の種類、処置される腫瘍の種類および重篤度、ならびに薬剤の投与経路を含む、多くの因子に依存する。しかしながら、本発明は、いかなる特定の投与量に限定されるものではないことは強調されるべきである。放射線は、他の抗新生物薬と組合せて使用され得る。
【0123】
本発明の別の態様において、抗RON抗体または抗体フラグメントは、特に、抗体が取り込まれる場合に、抗腫瘍薬または検出可能なシグナル発生薬に化学的または生合成的に連結させることができる。抗体に連結された抗腫瘍薬は、その抗体が結合している腫瘍、あるいはその抗体が結合している細胞の環境にある腫瘍を破壊または損傷する任意の薬剤を含む。例えば抗腫瘍薬は、化学療法剤および放射性同位元素のような毒物である。好適な化学療法剤は、当業者に公知であり、アントラサイクリン(例えば、ダウノマイシンおよびドキソルビシン)、メトトレキセート、ビンデシン、ネオカルジノスタチン、シスプラチン、クロラムブシル、シトシンアラビノシド、5−フルオロウリジン、メルファラン、リシン、およびカリケアミシンを含む。化学療法剤は、従来の方法を用いて抗体に結合体化される(例えば、HermentinおよびSeiler、Behring Inst.Mitt.82:197−215(1988)を参照のこと)。
【0124】
RON抗体はまた、癌患者に放射性同位元素と共に投与され得る。抗腫瘍薬としての使用に好適な放射性同位元素はまた、当業者に公知である。例えば、131Iまたは21IAtが使用され得る。これらの同位体は、従来の技術を用いて抗体に付着される(例えば、Pedleyら、Br.J.Cancer 68,69−73(1993)を参照のこと)。あるいは、抗体に付着された抗腫瘍薬は、プロドラッグを活性化する酵素であり、この方法において、いったん抗体複合体が投与されると、腫瘍部位へ到達するまでは不活性型であり続け、腫瘍部位でその細胞毒型へと変換されるプロドラッグが投与される。実際に、抗体酵素結合体が患者に投与され、処置される組織の領域内で局在化させることが可能である。次いで、プロドラッグが、細胞毒薬物への転換が処置される組織の領域で生じるように、患者へ投与される。あるいは、抗体に結合体化された抗腫瘍薬は、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−4(IL−4)、または腫瘍壊死因子α(TNF−α)のような、サイトカインである。抗体は、サイトカインで腫瘍を標的化し、その結果サイトカインは、他の組織に影響を及ぼすことなく、腫瘍の損傷または破壊を媒介する。サイトカインは、従来の組換えDNA技術を用いて、DNAレベルで抗体に融合される。インターフェロンもまた使用され得る。
【0125】
本発明はまた、本発明の抗体の有効量を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の非癌性過増殖性疾患を処置する方法も提供する。本明細書中で開示される「過増殖性疾患」は、受容体のRONファミリーのメンバーを発現する非癌細胞の過剰な増殖により引き起こされる状態と定義される。過増殖性疾患により生成された過剰な細胞は、RONを正常レベルで発現するか、RONを過剰発現し得る。
【0126】
本発明によって処置できる過増殖性疾患の種類は、RONのリガンドまたはそのようなリガンドの突然変異体によって刺激される任意の過増殖性疾患である。過増殖性疾患の例は、乾癬、光線性角化症、および脂漏性角化症、疣、ケロイド瘢痕、および湿疹を含む。パピローマウイルス感染症のような、ウイルス感染により引き起こされた過増殖性疾患もまた含まれる。例えば、乾癬は、多くの異なる変形および重篤度で生じる。様々な種類の乾癬は、膿様疱疹(膿疱性乾癬)、皮膚の重度の腐肉(紅皮症性乾癬)、液滴様斑点(滴状乾癬)、および平坦な炎症病巣(インバース乾癬)のような特徴を示す。あらゆる種類の乾癬(例えば、尋常性乾癬、膿疱性乾癬、紅斑性乾癬、関節症性乾癬、類乾癬、掌蹠膿疱症)の処置が、本発明により意図される。
【0127】
過増殖性疾患の処置のために、上記で記載される本発明の抗体の投与は、任意の従来の治療薬の投与と組合せることができる。例えば過増殖性疾患が乾癬である場合、様々な従来の全身性および局所性薬剤が利用可能である。乾癬の全身性薬剤は、メトトレキサート、ならびにアシトレチン、エトレチネート、およびイソトレチノインのような経口レチノイドを含む。他の乾癬の全身性治療は、ヒドロキシ尿素、NSAID、スルファサラジン、および6−チオグアニンを含む。抗生物質および抗微生物薬を使用し、乾癬を引き起こし悪化させる感染を処置または予防できる。乾癬の局所用薬剤は、アントラリン、カルシポトリエン、コールタール、コルチコステロイド、レチノイド、角質溶解剤、およびタザロテンを含む。局所用ステロイドは、軽度から中等度の乾癬のために処方される最も一般的な治療法の1つである。局所用ステロイドは、皮膚の表面に塗布されるが、一部は乾癬病巣中に注射される。
【0128】
過増殖性疾患の処置は、光線療法と組合せた抗RON抗体の投与をさらに含む。光線療法は、過増殖性疾患の症状を軽減する任意の波長の光の投与、ならびに、化学療法剤の光活性化(光線化学療法)を含む。過増殖性障害の処置のさらなる議論については、WO 02/11677(Teufelら、表皮増殖因子受容体アンタゴニストでの過増殖性疾患の処置を記載する)を参照のこと。
【0129】
本発明において、任意の好適な方法または経路を使用して本発明の抗RON抗体を投与し、そして任意選択的に、他の薬剤、例えば、抗新生物薬および/または他の受容体のアンタゴニストを同時投与することができる。本発明によって利用される抗新生物薬の養生法は、患者の新生物状態の処置のために最も好適であると考えられる養生法を含む。別の悪性疾患は、特異的な抗腫瘍抗体および特異的な抗新生物薬の使用を必要とする場合があり、これは患者毎に決定されるであろう。投与の経路は、例えば、注射投与、非経口投与、注入投与、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、または筋肉内投与を含む。投与されるアンタゴニストの投与量は、例えば、アンタゴニストの種類、処置される腫瘍の種類および重篤度ならびにアンタゴニストの投与経路を含む、多くの要因に依存する。しかしながら、本発明が、投与の特定の方法または経路に限定されないことは強調されるべきである。
【0130】
特に癌の処置のために、抗RON抗体は、腫瘍成長もしくは腫瘍関連血管形成に関与するRTKまたはそれらに関連した下流のシグナル伝達エレメントの活性を阻害する、細胞内RTKアンタゴニストと共に投与できる。細胞内RTKアンタゴニストは、好ましくは小分子である。小分子のいくつかの例は、有機化合物、有機金属化合物、有機化合物および有機金属化合物の塩、ならびに無機化合物を含む。小分子中の原子は、共有結合およびイオン結合を介して互いに連結される。前者は、小分子チロシンキナーゼ阻害剤のような有機小化合物に典型的であり、後者は、無機小化合物に典型的である。有機小分子中の原子の配置は、鎖、例えば、炭素−炭素鎖または炭素−ヘテロ原子鎖を表すか、または炭素原子を含む環、例えば、ベンゼンもしくは多環式系、または炭素およびヘテロ原子の組合せ、すなわちピリミジンまたはキナゾリンのようなヘテロ環を表し得る。小分子は、任意の分子量を有することができるが、それらは一般的に、分子量が650Dを超えないことを除いて、他の点では生物学的分子と考えられる分子を含む。小分子は、ホルモン、神経伝達物質、ヌクレオチド、アミノ酸、糖、脂質、およびそれらの誘導体のような天然に見出される化合物、ならびに、伝統的な有機合成、生物媒介合成、またはそれらの組合せのいずれかにより合成的に作製された化合物の両方を含む。例えば、Ganesan、Drug Discov.Today 7(1):47−55(Jan.2002);Lou、Drug Discov.Today,6(24):1288−1294(Dec.2001)を参照のこと。
【0131】
1つの実施形態において、本発明による細胞内RTKアンタゴニストとして使用されるべき小分子は、キナーゼドメインを有するEGFRの細胞内結合領域、またはEGFR活性化のシグナル伝達経路に関連したタンパク質への結合に関してATPと競合する細胞内RONアンタゴニストである。そのようなシグナル伝達経路の例は、ras−マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路、ホスファチジルイノシトール−3キナーゼ(PI3K)−Akt経路、ストレス活性化タンパク質キナーゼ(SAPK)経路、およびシグナルトランスデューサーおよび転写アクチベーター(STAT)経路を含む。そのような経路に関連したタンパク質(およびそれに本発明による小分子RONアンタゴニストが結合することができるタンパク質)の非限定的な例は、GRB−2、SOS、Ras、Raf、MEK、MAPK、およびマトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)を含む。
【0132】
特に癌のための、本明細書に記載される処置の方法はまた、他の抗体の投与と併せて実行され得る。例えば、Erbitux(登録商標)(セツキシマブ)のようなEGFRに対する抗体も、特に結腸癌を処置する場合に投与され得る。Erbitux(登録商標)MAbは、ヒトEGFRの細胞外ドメインに特異的に結合する、組換えヒト/マウスキメラモノクローナル抗体である。Erbitux(登録商標)は、EGFRアンタゴニストであり、それはEGFRへのリガンド結合をブロックし、受容体の活性化を防止し、そしてEGFRを発現する腫瘍細胞の増殖を阻害する。Erbitux(登録商標)は、難治性であるかまたはイリノテカンベースの化学療法を許容できない、上皮増殖因子受容体発現の転移性結腸直腸癌患者の処置において、イリノテカンと組合せたまたは組合せない使用が承認されている。Erbitux(登録商標)はまた、乾癬の処置にも有効であることが示されている。Erbitux(登録商標)に加えて、他の抗体、例えば、VEGF抗体、IGF−IR抗体、PDGFRα抗体、およびPDGFRβ抗体が使用され得る。
【0133】
併用のための他の抗体は、ヘルセプチン(トラスツマブ)(HER2を発現する乳癌細胞、または他の癌細胞でのHER2発現に対する抗体)およびAvastin(登録商標)(ベバシツマブ)(血管形成を阻害する抗体)を含む。組み合わせのための他の抗体は、例えば、2005年2月24日に公開された国際特許出願WO2005/016970(例えば、18頁、表1を参照のこと)に記載されるような、抗体2F8およびA12を含む、ヒトインスリン様増殖因子−1(IGFR)に特異的に結合する抗体であり、それは以下のCDR配列を有する:
【表1】

【0134】
本明細書に記載される処置の方法はまた、他のペプチドの投与と共に実行され得る。例えば、MSPの変異体は、この変異体がRONに結合するが、RONを活性化しないか、または少なくともMSPを競合的に阻害する場合に投与され得る。例えば、米国公開出願番号第2003/0073656号を参照のこと。
【0135】
他の抗体および/または有機小分子と組み合わせたRON抗体の投与は、同時に、または別個に、同じまたは異なる経路により起こり得る。
【0136】
本発明の抗RON抗体は、RONアンタゴニスト、および/またはRTKリガンドをブロックするかまたはRTKを阻害する抗体のような他のRTKのアンタゴニストと共に投与できる。他のそのようなRTKの例は、EGFR、c−met、およびVEGFRを含む。
【0137】
本発明の1つの実施形態において、抗RON抗体は、VEGFRアンタゴニストと組合せて使用される。例えば、Wuら、Clin Cancer Res;12(21)6573−6584(2006)に記載されるようなVEGFRアンタゴニストIMC−18F1である。本発明の1つの実施形態において、抗RON抗体は、VEGFR−2/KDR受容体と特異的に結合する受容体アンタゴニストと組合せて使用される(1992年2月20日に出願されたPCT/US92/01300;Termanら、Oncogene 6:1677−1683(1991))。別の実施形態において、抗RON抗体は、VEGFR−I/Fit−I受容体に特異的に結合する受容体アンタゴニストと組合せて使用される(Shibuya M.ら、Oncogene 5,519−524(1990))。特に好ましいのは、VEGFR−1またはVEGFR−2の細胞外ドメインに結合し、かつリガンド(VEGFまたはPlGF)による結合をブロックし、かつ/またはVEGF誘導活性化もしくはPlGF誘導活性化を阻害する抗原結合タンパク質である。例えば、Mab IMC−1121は、可溶性の細胞表面に発現さしたKDRに結合する。Mab IMC−1121は、ヒトFabファージディスプレイライブラリーから得られたVHドメインおよびVLドメインを含む(WO 03/075840を参照のこと)。別の例において、ScFv 6.12は、可溶性の細胞表面に発現したFit−Iに結合する。ScFv 6.12は、マウスモノクローナル抗体MAb 6.12のVHドメインおよびVLドメインを含む。MAb 6.12を産生するハイブリドーマ細胞株は公知であり、Wangら、Blood 104(9),2893−2902(2004)に報告されている。
【0138】
このようなRTKの別の例は、インスリン様増殖因子受容体(IGFR)である。特定の腫瘍細胞において、RTK機能の阻害は、他の増殖因子受容体シグナル伝達経路のアップレギュレーションにより、特にRON刺激により補償できる。さらに、IGFRシグナル伝達の阻害は、特定の治療薬に対する腫瘍細胞の感度を増大させる。RONまたはIGFRのいずれかの刺激は、Aktおよびp44/42を含む、共通の下流シグナル伝達分子のリン酸化を生じるが、程度は異なる。したがって、本発明の実施形態において、IGFRアンタゴニスト(例えば、IGFまたはIGFRに結合し、その受容体を阻害する抗体)は、本発明の抗体と同時投与され、それによって、共通の下流シグナル伝達経路の二次インプットをブロックする(例えば、Aktおよび/またはp44/42の活性化を阻害する)。IGFRに特異的なヒト抗体の例は、IMC−A12である(WO 2005/016970号を参照のこと)。
【0139】
RONと組合せて標的化され得る別の受容体は、EGFRである。EGFRは、上記で記載されるようなErbitux(登録商標)のような抗体で、または有機小分子で、標的化され得る。小分子RTKアンタゴニストの一例は、IRESS A(商標)(ZD 1939)であり、それは、EGFRを阻害するためにATP擬態として機能するキノザリン誘導体である。米国特許番号第5616582号(Zeneca Limited);WO 96/33980(Zeneca Limited)の4頁を参照のこと;また、Rowinskyら、37th Annual Meeting of ASCO(サンフランシスコ,CA,2001年5月12−15日)で示されたAbstract 5を参照のこと;Anidoら、37th Annual Meeting of ASCO(サンフランシスコ,CA,2001年5月12−15日)で示されたAbstract 1712を参照のこと。小分子EGFRアンタゴニストの別の例は、TARCEVA(商標)(OSI−774)であり、それは4−(置換フェニルアミノ)キノザリン誘導体[6,7−ビス(2−メトキシ−エトキシ)−キナゾリン−4−イル]−(3−エチニル−フェニル)アミン塩酸塩]EGFR阻害剤である。WO 96/30347(Pfizer Inc.)の例えば2頁12行から4頁34行および19頁14−17行を参照のこと。また、Moyerら、Cancer Res.,57:4838−48(1997);Pollackら、J.Pharmacol,291:739−48(1999)を参照のこと。TARCEVA(商標)は、p27媒介細胞周期停止を生じるEGFR、ならびにその下流PI3/AktおよびMAP(マイトジェン活性化タンパク質)キナーゼシグナル伝達経路のリン酸化を阻害することによって機能し得る。Hidalgoら、37th Annual Meeting of ASCO(サンフランシスコ,CA,2001年5月12−15日)で示されたAbstract 281を参照のこと。上記有機小分子もまた、RONを阻害し得る。
【0140】
腫瘍形成に関連した増殖因子受容体の他の例は、血小板由来増殖因子(PDGF)、神経増殖因子(NGF)、および線維芽細胞増殖因子(FGF)の受容体である。これらの受容体は、RONと組み合わせて標的化され得る。
【0141】
別の実施形態において、抗RON抗体は、1種以上の好適なアジュバント、例えばサイトカイン(例えば、IL−10およびIL−13)、または限定されないが、ケモカイン、腫瘍関連抗原、およびペプチドのような他の免疫刺激因子と組合せて投与できる。
【0142】
併用療法において、抗RON抗体は、他の物質による治療の開始の前、治療中、実質的に治療と同時、または治療後、ならびにそれらの組合せ、すなわち抗新生物薬療法の開始の前および治療中、治療の開始の前および治療後、治療中および治療後、または治療の開始の前、治療中、および治療後に投与される。例えば、抗RON抗体は、放射線療法の開始前1〜30日、または3〜20日、または5〜12日の間投与できる。本発明の1つの実施形態において、化学療法は、抗体療法と同時に、または抗体療法に続けて施される。
【0143】
本発明は、標的部分またはレポーター部分が連結される本発明のRON抗体または抗体フラグメントをさらに意図する。標的部分は、結合対の第一のメンバーである。抗腫瘍薬は、例えば、そのような対の第二のメンバーに結合体化され、それによって、抗原結合タンパク質が結合される位置に向けられる。このような結合対の一般的な例は、アビジンおよびビオチンである。好ましい実施形態において、ビオチンは、本発明の抗原結合タンパク質に結合体化され、それによってアビジンもしくはストレプトアビジンに結合体化された抗腫瘍薬または他の部分に標的を提供する。あるいは、ビオチンまたは他のそのような部分は、本発明の抗原結合タンパク質に連結されて、そして、例えば、検出可能なシグナル産生物質がアビジンまたはストレプトアビジンに結合体化された診断システムでレポーターとして使用される。
【0144】
検出可能なシグナル生成物質は、診断目的のためにインビボおよびインビトロで有用である。シグナル生成物質は、通常、電磁気放射線照射の指標である、外部手段によって検出可能な測定可能なシグナルを生じる。シグナル生成物質は、大抵、酵素もしくは発色団であるか、または蛍光、リン光もしくは化学発光により光を放出する。発色団は、紫外または可視領域の光を吸収する色素を含み、基質または酵素触媒された反応物の分解産物であってよい。
【0145】
さらに、本発明の範囲内に、当該分野において周知である、研究方法または診断方法のためのインビボおよびインビトロでの本発明の抗体の使用が含まれる。診断方法は、本発明の抗体を含有するキットを含む。そのようなキットは、個体の細胞上のRONの過剰発現を検出して、特定の種類の癌の危険性のある個体を特定するのに有用である。さらに、本発明の抗体は、RONを同定する能力のゆえに研究用に実験室において使用され得る。
【0146】
本発明はまた、キット、例えば、治療的有効量のヒト抗EGFR抗体を含む、腫瘍成長および/または腫瘍関連血管形成を阻害するキットも含む。キットは、例えば、腫瘍形成または血管形成に関連した別の増殖因子受容体(例えば、上記で記載される、VEGFR−1/Flt−1、VEGFR−2、PDGFR、IGFR、NGFR、EGFR、FGFRなど)の任意の好適なアンタゴニストをさらに含有できる。あるいは、または加えて、本発明のキットは、抗新生物薬をさらに含むことができる。本発明の文脈において好適な抗新生物薬の例は、本明細書中に記載されている。本発明のキットは、アジュバントをさらに含むことができ、その例も上記に記載されている。
【0147】
本発明は、RON6またはRON8と同じ機能を有する抗体、またはそのフラグメントを同定および単離する方法をさらに提供し、ここで、ライブラリーのスクリーニングは、固形支持体に結合したリガンド結合機能を有するRONを含有する親和性マトリクスを提供すること、親和性マトリクスを抗体フラグメントのライブラリーと接触させること、および親和性マトリックスに結合しない抗体フラグメントから親和性マトリックスに結合した抗体フラグメントを分離することを含む。
【0148】
固形支持体は、RONが接着することができる非水性マトリクスを意味する。本明細書中に包含される固相の例は、ガラス(例えば、制御多孔性ガラス)、多糖(例えば、アガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、およびシリコンで一部または全体が形成されたものを含む。特定の実施形態において、状況に応じて、固相は、アッセイプレートのウェルを含むことができ、他の場合には精製カラム(例えば、親和性クロマトグラフィーカラム)である。この用語はまた、米国特許番号第4275149号に開示されたもののような、ばらばらの粒子の不連続固相も含む。
【0149】
本発明はまた、本発明において提供されるもの以外のRON抗体が使用される場合の処置の方法も提供する。
【0150】
本発明の特定の実施形態が、本明細書で詳細に述べられている。本発明は、これらの特定の実施形態と併せて記載されるが、本発明をそのような特定の実施形態に限定することが意図されていないことは理解されるだろう。反対に、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の精神および範囲内に含まれ得る代替物、変更物、および等価物をカバーすることが意図されている。この記載において、数多くの特定の詳細が本発明の完全な理解を提供するために記載されている。本発明は、これらの特定の詳細の一部または全てが無くても実施され得る。他の例では、周知のプロセス操作は、本発明を不必要に分かりにくくしないために、詳細には記載されていない。
【0151】
本明細書において参照される上記の米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、および外国の特許、外国の特許出願の全ては、その全体が参照によって組み込まれる。
【0152】
明細書中に引用された全ての刊行物は、本発明が属する当該分野における当業者のレベルを示す。これらの刊行物は、まるで各刊行物が参照によって組み込まれることを具体的かつ個別に示されているかのように、その全体が全て参照によって本明細書中に組み込まれる。
【実施例】
【0153】
下記実施例は、単に例証目的で提供され、決して本発明の範囲を限定することは意図されていない。この実施例は、ベクターおよびプラスミドの構築、そのようなベクターおよびプラスミドへのポリペプチドをコードしている遺伝子の挿入、またはプラスミドの宿主細胞への導入において利用される方法のような、従来の方法の詳細な説明は含まない。そのような方法は、当業者に周知であり、Sambrook,J.、Fritsch,E.F.およびManiatis,T.(1989)Molecular Cloning:A laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを含む、多くの刊行物に記載されている。
【0154】
(材料および方法)
(2種の抗RON抗体であるRON6およびRON8の開発および特徴)
(実施例1:抗RON抗体の産生)
ヒト抗RONモノクローナル抗体(本明細書においてRON6およびRON8とも呼ばれる)を、ヒト免疫グロブリンγ重鎖およびκ軽鎖を産生する、HuMAbマウス(Medarex,San Jose,Calif.)を用いて、標準的なハイブリドーマ技術(Harlow & Lane編,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,211−213(1998),参照によって本明細書中に組み込まれる)によって産生した。HuMAbマウスを、RON細胞外ドメインフラグメント、完全フロイントアジュバントにおいてヒトRON受容体を過剰発現するRE7細胞およびMDCK細胞で皮下に(s.c.)免疫処理した。動物を、融合の前に、不完全フロイントアジュバント中の同じRONタンパク質で3回腹腔内に(i.p.)追加抗原処理した。リン酸緩衝溶液(PBS)中の25μgRONタンパク質のi.p.追加抗原処理を最終的に行う前に、動物を1ヶ月間休息させた。4日後、免疫処理したマウスから脾細胞を回収し、ポリエチレングリコール(PEG、MW:1450KD)を使用してP3−X63−Ag8.653 Bcl−2形質転換体形質細胞腫細胞と融合させた。融合の後、細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)を補充したHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)培地に再懸濁し、ハイブリドーマ細胞の確立のために、1ウェルにつき200μlの密度で96ウェルプレートに分配した。融合の6日後に、培地の100μlを吸引し、100μlの新しい培地と置き換えた。
【0155】
180個のハイブリドーマクローンを、1つの融合物からrhu−RONタンパク質と反応性の抗体を産生した陽性クローンとして特定したことに注意すべきである。180個の結合陽性クローンのうち、たった5種のクローンのみをブロッキング活性を有すると特定した。これら5種のうち、たった2種、RON6およびRON8を、それらの優れた結合特性に基づいて、さらなる開発のために選択した。
【0156】
ブロッキング活性を示すこれらのハイブリドーマクローンのサブクローニングを、RONに対するmAbを産生するモノクローナルハイブリドーマ細胞株を確立するために3回実施した。
【0157】
ブロッキング活性を備えるクローンを、より強いブロッキング活性の選択のためにさらに確認した。RON6およびRON8として表わされるクローンは、ELISAおよび高親和性(KD値=それぞれ45および23pM)において測定されたように、2〜3nMのIC50のより強いブロッキング活性を有した。これら2種のクローンを、さらなる開発のために選択した。
【0158】
RON6抗体およびRON8抗体はIgG抗体であり、それぞれの重鎖および軽鎖は配列が決定されている。各抗体の構造は以下の図面および対応する配列から容易に理解される。
【0159】
(RON6の構造)
RON6抗体は、配列番号9のDNA配列によってコードされる、配列番号10として、それぞれ図2A、2B、および2Cによって一緒に示される、2つの重鎖を含む。図2Aの最初の19残基/コドントリプレットが、成熟抗体鎖には存在しない分泌シグナル配列を表すことに注意すべきである。
【0160】
RON6抗体はまた、配列番号11のDNA配列によってコードされる、配列番号12として、それぞれ図2D〜2Eによって一緒に示される、2つの軽鎖を含む。図2Dの最初の19残基/コドントリプレットが、成熟抗体鎖には存在しない分泌シグナル配列を表すことに注意すべきである。
【0161】
(RON8の構造)
RON8抗体は、配列番号13のDNA配列によってコードされる、配列番号14として、それぞれ図3A、3B、および3Cによって一緒に示される、2つの重鎖を含む。図3Aの最初の19残基/コドントリプレットが、成熟抗体鎖には存在しない分泌シグナル配列を表すことに注意すべきである。
【0162】
RON8抗体はまた、配列番号15のDNA配列によってコードされる、配列番号16として、それぞれ図3D〜3Eによって一緒に示される、2つの軽鎖を含む。図3Dの最初の19残基/コドントリプレットが、成熟抗体鎖には存在しない分泌シグナル配列を表すことに注意すべきである。
【0163】
(実施例2:実施例1からの抗RON抗体は、RONに結合し、かつそのリガンド(MSP)へのRON結合を阻害する)
結合ELISA:融合の10〜12日後に、ハイブリドーマを、ELISAベースの結合およびブロッキングアッセイで、抗体産生ならびにrh−RONタンパク質と培養上清の特異的結合活性についてスクリーニングした。Maxi−sorp 96−ウェルマイクロタイタープレート(Nunc)を、室温で1.5時間、(1μg/ml×100μlの)rh−RONタンパク質(R&D Systems)で被覆した。ウェルの洗浄後、それらを、3% PBS/ミルクでブロックした。ハイブリドーマ上清由来の抗RON抗体を、次いで、被覆されたウェルに添加し、1.5時間室温でインキュベートした。数回の洗浄後、陽性結合を検出するために、1:1000希釈の抗ヒトIgG−HRP結合体化抗体を、1.5時間室温でプレートに添加した。陽性ハイブリドーマを、モノクローナルハイブリドーマの確立のために、限界希釈培養によって3回サブクローニングした。
【0164】
MSP/RON相互作用をブロックする抗体を検出するためのELISA:Maxi−sorp 96−ウェルマイクロタイタープレート(Nunc)を、室温で1.5時間、(1μg/ml×100μlの)MSP(R&D Systems)で被覆した。ウェルの洗浄後、それらを、3% PBS/ミルクでブロックした。ハイブリドーマ上清由来の抗RON抗体を、まず、rh−RONと共に1時間室温でインキュベートし、次いで、MSP被覆ウェルに添加した。1.5時間室温でインキュベートした後、数回洗浄し、どの抗RON抗体がMSP/RON相互作用をブロックできたか検出するために、1:1000希釈の抗ヒトIgG−HRP結合体化抗体を、1.5時間室温でプレートに添加した。
【0165】
RONへのMSP結合のRON8ブロッキングを検出するためのELISA:ELISAプレートを、100ng/ウェルのキャリア不含MSP(R&D Systems)により、ロッカー(rocker)上で、4℃で一晩被覆した。プレートを、0.2% PBS/Tで1回洗浄し、150μL/ウェル 3%ミルクにより、37℃で2時間ブロックした。RON8の15μg/mL希釈物を調製して、別のELISAプレートを連続的に希釈した。RON8に、100ng/ウェル組換えヒトMSPR(R&D Systems)を添加した。RON8/rh−MSPR複合体を、ロッカー上で、室温で2時間形成させた。次に、MSP被覆ELISAプレートを、0.2%PBS/Tで1回洗浄し、100μLのRON8/rh−MSPR複合体をウェルごとに添加した。室温で1.5時間インキュベーションした後、プレートを、0.2% PBS/Tで5回洗浄し、組換えヒトMSPRタンパク質上でHisタグを認識する、1:2,000希釈の抗HisタグHRP抗体(Sigma)で、室温で1時間インキュベートした。プレートを、0.2% PBS/Tで5回洗浄し、黄色が現れるまで100−AL基質をウェルごとに添加した。反応を、50μLの1N HSOで停止し、450nmでの吸光度を標準的なプレートリーダーで測定した。その結果を、RON8の固相ブロッキング特性を描く図6Aによって示す。ELISAデータは、固定化組換えヒトMSPと組換えヒトRONタンパク質との相互作用をブロックするのに必要なRON8のIC50値を決定した。
【0166】
細胞移動:RON8が、MSPによって誘導されるH569肺癌細胞(ATCC,Manassas,VA)の移動をブロックできたかどうかを決定するために、本発明者らは、多孔性の半透明ポリエチレンテレフタレートトラックエッチング膜(8.0Am細孔径;Becton Dickinson Falcon)を含有する24ウェル細胞培養挿入物を使用した。アッセイが実施される前に、多孔性膜の裏面を、それらを700μlのVitrogen−100精製コラーゲン溶液(25μg/mL;Cohesion,Palo Alto,CA)で満たされた24ウェルFalconプレート中に入れることによって、コラーゲンで被覆した。挿入物を、4℃で1時間そのままにし、次いで、新しい24ウェルプレートに入れた。次に、24時間血清飢餓状態にした6×10個の生存細胞を、PBSで1回洗い流し、次いで、300μLの血清不含培地中の細胞培養挿入物の上部チャンバー中に播種した。MSPを、700μlの血清不含培地中の下部チャンバーに、37℃で24時間添加し、コラーゲン被覆多孔性膜を通る細胞移動を誘導した。0%血清を陰性コントロールとして使用し、10%血清を細胞移動についての陽性コントロールとして使用した。MSPの添加の前に、RON8を上部チャンバーのいくつかに1時間添加し、それがH596細胞のMSP誘導移動を阻害できたかどうか決定した。アッセイの終わりに、コラーゲン被覆膜の裏面に接着している移動した細胞を、ヘキスト色素(2μg/ml;Invitrogen−Molecular Probes,Carlsbad,CA)で染色し、100倍の拡大率で蛍光顕微鏡検査法によって撮像し、Image−Pro Plusソフトウェアを使用して計数した。図6Bは、RON8がH569肺癌細胞の細胞移動を阻害する能力を示す。
【0167】
RON8の、インビトロでの創傷治癒アッセイにおいて移動を阻害する能力:擦過傷を、H292肺癌細胞の単層に作成した。RON8を添加して、それが、創傷を満たす細胞の移動を誘導するMSPの能力を阻害できたかどうかを決定した。H292肺癌細胞を、Becton Dickinson Falcon 6ウェル細胞培養プレートに、2.5×10個の細胞/ウェルで播種し、コンフルエンスまで一晩増殖させた。細胞を、48時間血清飢餓状態にした。MSPの添加の前に、いくつかのウェルを、創傷を与える前に、1時間RON8抗体で前インキュベートした。アッセイの開始時に、小さな創傷を、200μlプラスチックピペットチップに与えた。次に、細胞を、血清不含培地+RON8抗体中のMSPの存在の有りまたは無しで、24時間インキュベートした。0%血清を陰性コントロールとして使用し、10%血清を創傷への細胞移動についての陽性コントロールとして使用した。24時間のインキュベーション後、細胞を40倍の拡大率で明視野顕微鏡法によって撮像した。100nMのRON8が、創傷を満たす細胞の移動を阻害したことが観察され、それによって、RON8の、インビトロモデルにおける細胞移動を阻害する能力を示した。
【0168】
RON8の、増殖を阻害する能力:図6Cは、BXPC3膵臓癌細胞におけるMSP誘導DNA合成のRON8阻害を示す。図6C(1)は、DNA合成の指標である[3H]−チミジン取り込みのMSP刺激を示す。腫瘍細胞(1ウェルにつき10,000個)を、96ウェル組織培養プレートに平板培養し、静止状態にした。細胞を、MSPで20時間刺激した。[3H]−チミジン(0.25mCi)を、各ウェルに添加し、さらに4時間インキュベートした。放射能を取り込んだDNAを、シンチレーション計数器で決定した。点は重複サンプルの平均、棒はSDである。図6C(2)は、細胞を、MSPの添加の前に、RON8で1時間前処理した系を示す。
【0169】
BIAcore分析:RONタンパク質への抗体の結合速度を、BIACORE 3000(BIAcore,Piscataway,NJ)を使用することによって決定した。組換えRON−Fcを、センサーチップ上に固定化し、抗体を様々な濃度で注入した。センサーグラム(Sensorgram)を得、速度定数を決定するためにBIA Evaluation 2.0ソフトウェアを使用して評価した。親和定数Kを、速度定数Koff/Konの比から計算した。相互作用の「Kon,M−1.S−1」および「Koff,S−1」速度を用いて、抗体/受容体相互作用の親和性(Kd,M)を決定した。RON6についてのK、Kon、およびKoff速度は、4.1e−11、2.2e6、および8.6e−5であった。RON8については、それらは3.2e−11、6.1e6、および2.0e−4であった。
【0170】
RON細胞表面発現のフローサイトメトリー:接着性癌細胞株由来の1,000,000個の細胞を、PBS+5%FCS中で、5μgのRON8と共に、4℃で30分間インキュベートした。PBS+5%FCSで洗浄後、細胞を、抗ヒトIgGフィコエリスリン結合体化二次抗体(Jackson Immuno Research)と共に4℃で30分間インキュベートした。PBS+5%FCSで洗浄後、細胞を、FACSvantage SEフローサイトメーター(Becton Dickinson)を使用する、フローサイトメトリーで分析した。
【0171】
ウエスタンブロッティングおよび免疫沈降:細胞を、10cmまたは6ウェル培養皿に平板培養し、70〜80%コンフルエンスになるまで増殖した。単層を、PBSで2回洗浄し、血清不含培地中で一晩培養した。次いで、抗体を添加し、37℃で60〜120分間インキュベートした。細胞を、MSPリガンドで10分間刺激し、次いで、氷上に配置し、氷冷したPBSで洗浄した。細胞を、50mM Tris−HCl(pH7.4)、150mM NaCl、1% Triton X−100、1mM EDTA、1mMフッ化フェニルメチルスルホニル、0.5mM NaVO、1μg/mlロイペプチン、1μg/mlペプスタチン、および1μg/mlアプロチニン中で、氷上で10分間溶解した。溶解液を、4℃での遠心分離により澄ませた。次いで、可溶化したRONを、この溶解液から免疫沈降した。抗体RON、クローンC−20(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)またはRON6およびRON8を、4μg/mlの溶解液400μlと共に4℃で一晩インキュベートした。プロテインA−アガロースビーズを4℃で2時間添加して免疫複合体を沈降させ、ペレット化し、溶解緩衝液で3回洗浄した。プロテインA−アガロースビーズに結合した免疫沈降物を、変性ゲルサンプル緩衝液に揮散した。溶解液または免疫沈降物を、変性ゲル電気泳動のために処理し、4〜12%アクリルアミドゲル上に流し、ウエスタンブロットによりニトロセルロース膜にブロッティングした。チロシンリン酸化タンパク質を、抗ホスホRON抗体(Biosource)および抗マウスホースラディッシュペルオキシダーゼ二次抗体を使用して、ブロット上で検出した。RONは、モノクローナル抗体RON C−20(Santa Cruz Biotechnology)により検出した。ホスホ−Aktおよび総Akt抗体は、PharMingen(BD Biosciences,San Diego,CA)から入手した。MAPKリン酸化について、ホスホ−p44/42および総p44/42抗体は、Cell Signaling Technologyから購入した。バンドは、X線フィルム(Eastman Kodak,Rochester,NY)上で、増強された化学発光試薬(Amersham Pharmacia Biotech)により視覚化した。
【0172】
(IC50値およびED50値の決定のためのELISA)
抗RON抗体であるRON6およびRON8の、組換えヒトRON受容体に結合する能力およびMSP/RON相互作用をブロックする能力を、ELISAを使用して測定した。ELISAプレート上に固定された受容体を用いた場合、RON6およびRON8のRONへの結合のED50値は、各々、4.2pMおよび2.1pMであった。同じELISAフォーマットを使用し、2種の抗体を、それらのMSP/RON相互作用をブロックする能力について試験した。測定されたIC50値は、RON6について46pM、RON8について62pMであった。
【0173】
ヒト腫瘍異種移植片モデル:腫瘍異種移植片を、マトリゲル(Collaborative Research Biochemicals,Bedford,MA)と混合した5×10個の細胞を、5〜6週齢のメス無胸腺(nu/nu)マウス(Charles River Laboratories,Wilmington,MA)の左側腹へ皮下注射することにより確立した。腫瘍を、150〜300mmの大きさまで大きくし、次いで、マウスを無作為に各群12匹の動物群に分けた。マウスを、コントロール抗体(ヒトIgG)またはRON6抗体およびRON8抗体により、3日毎の腹腔内注射により処置した。動物の処置は、研究の間継続した。腫瘍を、カリパーで毎週2回測定し、腫瘍体積を次式により計算した:(π/6(w1×w2×w2))。式中、w1は最大腫瘍直径を表し、w2は最小腫瘍直径を表す。腫瘍体積は、Mann−Whitney U検定を使用して解析し、SigmaStat(バージョン2.03;Jandel Scientific,San Rafeal,CA)の統計学的パッケージを用いてコンピュータ解析した。
【0174】
(実施例3:ヒト腫瘍異種移植片モデルにおける腫瘍阻害の確認)
インビボで、腫瘍成長を抑制するRON6およびRON8の有効性を、上記実施例2によって記載されるマウス異種移植片法を利用することによって4つの異なる腫瘍細胞において確認した。腫瘍細胞は以下の通りである。肺腫瘍に由来し、American Type Culture Collection(Manassas,VA)から得られるH−292細胞。結腸腫瘍に由来し、American Type Culture Collection(Manassas,VA)から得られるHT−29細胞。膵臓腫瘍に由来し、American Type Culture Collection(Manassas,VA)から得られるBxPC3細胞。胸部腫瘍に由来し、American Type Culture Collection(Manassas,VA)から得られるJIMT細胞。
【0175】
上記に記載される異種移植片法を使用して、H−292細胞を、合計24匹のマウスに注射した。12匹のマウスを、60mg/kgのRON6抗体で処置し、12匹のマウスを、コントロールとしての生理食塩水で処置した。図4Aに示されるように、コントロールに比べて、腫瘍体積の有意な阻害を観察した。実験を、生理食塩水、ならびに60mg/kg、20mg/kg、および2mg/kgのRON8抗体でそれぞれ処置した4群に分けた40匹のマウスでも実施した。図4Bに示されるように、コントロールに比べて、腫瘍体積の有意な阻害を観察した。図4Bからわかるように、この実験はまた、応答が抗体の投与量により増大されることを確認した。
【0176】
上記に記載される異種移植片法を使用して、HT−29細胞を、合計24匹のマウスに注射した。12匹のマウスを、60mg/kgのRON6抗体で処置し、12匹のマウスを、生理食塩水で処置した。図4Cに示されるように、コントロールに比べて、腫瘍体積の有意な阻害を観察した。同じ実験を、生理食塩水、または60mg/kg、20mg/kg、および2mg/kgのRON8抗体でそれぞれ処置した4群に分けた別の40匹のマウスでも実施した。図4Dに示されるように、コントロールに比べて、腫瘍体積の有意な阻害を観察した。図4Dからわかるように、この実験はまた、応答が抗体の投与量により増大されることを確認した。
【0177】
上記に記載される異種移植片法を使用して、BxPC3細胞を、合計60匹のマウスに注射した。マウスを、5群(12匹/群)に分け、以下のように処置した:生理食塩水、60mg/kgのRON8、60mg/kgのErbitux(登録商標)(ImClone Systems,Inc.から入手)、60mg/kgのRON8と60mg/kgのErbitux(登録商標)、および60mg/kgのErbitux(登録商標)と60mg/kgのhulgG(コントロールIgG、Meridian Life Sciencesから入手)。図4Eによって示される結果は、RON8が、膵臓BxPC3モデルにおけるセツキシマブの抗腫瘍効果を増大することを確認する(片側反復測定ANOVAを使用して、p値0.06)。
【0178】
上記に記載される異種移植片法を使用して、JIMT−1乳癌細胞を、ヌードマウスに皮下注射し、およそ250mmまで増殖させた。腫瘍体積を、コントロール(生理食塩水)、RON8(60mg/kg、2回/週)、ドセタキセル、またはドセタキセル+RON8の組み合わせで処置する間プロットした。平均+/−SEMがプロットされている。図4Fによって示される結果は、RON8が、胸部JIMT−1モデルにおいて、ヌードマウスおける胸部腫瘍異種移植片の成長を阻害することを確証した。
【0179】
引用文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、および配列番号39からなる群から選択されるCDRを含む、RONタンパク質に特異的に結合する抗体またはそのフラグメント。
【請求項2】
前記抗体またはそのフラグメントが、配列番号29、配列番号31、および配列番号33を含む、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項3】
前記抗体またはそのフラグメントが、配列番号35、配列番号37、および配列番号39を含む、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項4】
前記抗体またはそのフラグメントが、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、および配列番号39を含む、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項5】
前記抗体またはそのフラグメントが、配列番号6に少なくとも75%同一である可変領域を含む、請求項2に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項6】
前記抗体またはそのフラグメントが、配列番号8に少なくとも75%同一である可変領域を含む、請求項3に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項7】
前記抗体またはそのフラグメントが、配列番号6および配列番号8を含む、請求項4に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項8】
前記抗体またはそのフラグメントが、配列番号17、配列番号19、および配列番号21を含む、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項9】
前記抗体またはそのフラグメントが、配列番号23、配列番号25、および配列番号27を含む、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項10】
前記抗体またはそのフラグメントが、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、および配列番号27を含む、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項11】
前記抗体またはそのフラグメントが、配列番号2に少なくとも75%同一である可変領域を含む、請求項9に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項12】
前記抗体またはそのフラグメントが、配列番号4に少なくとも75%同一である可変領域を含む、請求項10に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項13】
前記抗体またはそのフラグメントが、配列番号2および配列番号4を含む、請求項11に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項14】
前記抗体またはそのフラグメントが、約1×10−9−1以下のKを有するRONに対して特異的である、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項15】
前記抗体またはそのフラグメントが、約1×10−10−1以下のKを有するRONに対して特異的である、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項16】
前記抗体またはそのフラグメントが、約1×10−11−1以下のKを有するRONに対して特異的である、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項17】
前記抗体またはそのフラグメントが、モノクローナル抗体、単鎖抗体、Fab、Fv、二重特異性抗体、および三重特異性抗体からなる群から選択される構造を含む、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項18】
前記抗体またはそのフラグメントが、RON6 VH、RON6 VL、RON8 VH、RON8 VLおよびその組み合わせからなる群から選択される少なくとも2つの抗体可変ドメインに由来するCDRを含む、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項19】
前記抗体またはそのフラグメントが、RON6 VH、RON6 VL、RON8 VH、RON8 VLおよびその組み合わせからなる群から選択される少なくとも3つの抗体可変ドメインに由来するCDRを含む、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項20】
前記抗体またはそのフラグメントが、IgG構造を含む、請求項2に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項21】
前記抗体またはそのフラグメントが、RON6またはRON8を含む、請求項20に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項22】
請求項1に記載の抗体またはそのフラグメントをコードする単離された核酸。
【請求項23】
請求項22に記載の単離された核酸を含む組換えベクター。
【請求項24】
前記核酸が、前記核酸の発現を可能にする制御配列に作動可能に連結される、請求項23に記載の組換えベクター。
【請求項25】
請求項24に記載の組換えベクターを含む宿主細胞。
【請求項26】
請求項25に記載の宿主細胞を、前記抗体の発現を可能にする条件下で培養することを含む、RON抗体を産生する方法。
【請求項27】
前記方法は前記抗体を精製することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
薬学的に許容され得るキャリア、および請求項1に記載の抗体またはそのフラグメントを含む医薬組成物。
【請求項29】
別の治療有効化合物をさらに含む、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント、および化学療法剤を含むキット。
【請求項31】
前記化学療法剤が、タキソール、ドキソルビシン、アクチノマイシン−D、メトトレキセート、イリノテカン(CPT−ll)、ゲムシタビン、オキシプラチン、フルオロウラシル(5−FU)、ロイコウリン(LU)、シスプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、エポチロン、シスプラチン/カルボプラチン、およびペグ化されたアドリアマイシンからなる群から選択される、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
哺乳動物において、血管形成、腫瘍成長、腫瘍細胞の増殖、腫瘍細胞の移動、腫瘍細胞の浸潤、RON活性化、あるいはRON、MAPK、および/またはAktのリン酸化を阻害する方法であって、それを必要とする哺乳動物に、有効量の請求項1に記載の抗体またはそのフラグメントを投与することを含む方法。
【請求項33】
哺乳動物において癌を処置する方法であって、哺乳動物に、有効量の請求項1に記載の抗体またはそのフラグメントを投与することを含む方法。
【請求項34】
別の抗癌処置を前記哺乳動物に施すことをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記抗癌処置が、抗血管形成剤、別のFGFR−3アンタゴニスト、化学療法剤、放射線、別の抗体、抗新生物薬、および小分子からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記抗癌処置が、化学療法剤である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記化学療法剤が、タキソール、ドキソルビシン、アクチノマイシン−D、メトトレキセート、イリノテカン(CPT−ll)、ゲムシタビン、オキシプラチン、フルオロウラシル(5−FU)、ロイコウリン(LU)、シスプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、エポチロン、シスプラチン/カルボプラチン、およびペグ化されたアドリアマイシンからなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記抗癌処置が放射線である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記抗癌処置が別の抗体である、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記抗体が、EGFR抗体、VEGFR抗体、IGF−IR抗体、PDGFRα抗体、およびPDGFRβ抗体からなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記抗体が、別の分子に結合体化される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記癌が、結腸、膵臓、前立腺、胃、肺、肝臓、卵巣、腎臓、胸部、および脳に由来する腫瘍細胞からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
前記腫瘍細胞が結腸に由来する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記腫瘍細胞が、上皮由来または神経内分泌由来である、請求項32に記載の方法。
【請求項45】
前記RONが、野生型RONまたは変異体RONである、請求項32に記載の方法。
【請求項46】
前記RONが変異体である、請求項32に記載の方法。
【請求項47】
サンプルにおいてRONを検出する方法であって、前記サンプルを、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメントと接触させて、特異的結合を得ること、およびそのような結合を検出することを含む方法。
【請求項48】
哺乳動物において炎症を予防または処置する方法であって、それを必要とする哺乳動物に、請求項1の抗体またはそのフラグメントを投与することを含む方法。
【請求項49】
哺乳動物において、肝臓、胆道、胆管、および胆嚢の疾患からなる群から選択される状態を予防または処置する方法であって、それを必要とする哺乳動物に、有効量の請求項1の抗体またはそのフラグメントを投与することを含む方法。
【請求項50】
前記抗体またはそのフラグメントが、注射、注入、経口、非経口、皮下、筋肉内、または静脈内に投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項51】
前記抗体またはそのフラグメントが、約1mg/kg〜約10mg/kgの投与量で前記哺乳動物に投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項52】
前記抗体またはそのフラグメントが、約3mg/kg〜約8mg/kgの投与量で投与される、請求項51に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公表番号】特表2011−504176(P2011−504176A)
【公表日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534977(P2010−534977)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/013130
【国際公開番号】WO2009/070294
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(508188662)イムクローン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (23)
【氏名又は名称原語表記】Imclone LLC
【Fターム(参考)】