説明

マクロライド

【課題】安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシン、及び、例えば安定した一水和物の形態におけるアジスロマイシンの調製方法の提供。
【解決手段】アジスロマイシンをホウ素化水素で処理する工程、(ii)ポリヒドロキシル化化合物の存在下において、形成された中間ホウ酸エステル化合物を加水分解する工程、及び所望の場合には(iii)反応混合物からアジスロマイシン化合物を単離する工程、を含む、上記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マクロライド、例えばアジスロマイシン及び類似の化合物に関する。化学式
【0002】
【化1】

のアジスロマイシン(9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA)は、例えばMerck Index、第12版(1996年)、157頁(946)に記載されている広く知られた抗菌物質であり、例えば、
・化学式
【0003】
【化2】

の9−デオキソ−6−デオキシ−6,9−エポキシ−9,9a−ジデヒドロ−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンAを得る、エリスロマイシンA9オキシムのベックマン転位、
・化学式
【0004】
【化3】

の9−デオキソ−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンAを得る、化学式IIの化合物の還元、
・例えば化学式Iのアジスロマイシンを得る、化学式IIIの化合物のN−メチル化、
により製造される。化学式IIIの化合物を得る化学式IIの化合物の還元は、例えば、水素の使用下で触媒的に、または、代わりに、例えば水素化ホウ素ナトリウム等の水素化ホウ素の存在下で、いずれかにより得ることができるが、水素化ホウ素の使用は、例えば化学式IIIの化合物の1つもしくはそれ以上のヒドロキシ基とホウ酸のエステル等、中間ホウ酸エステル化合物をもたらし得る。生じた中間ホウ酸エステル化合物の化学的性状は使用される還元条件に依存し、異なる中間ホウ酸エステル化合物及びそれらの混合物がもたらされ得る。例えばデータ(MS、11B及び13C NMR)によれば、例えば化学式:
【0005】
【化4】

の中間ホウ酸エステル化合物がもたらされ得る。化学式IIIの化合物を得るための中間ホウ酸エステル化合物の加水分解は、酸性条件下で実施することができるが、そのような条件は、マクロライド構造に対する分解条件を含み得る。中間ホウ酸エステル化合物の加水分解の結果生じる反応混合物からの化学式IIIの化合物の単離は、中性または塩基性条件下で実施することができるが、中性及び塩基性条件下では中間ホウ酸エステル化合物の再形成が起こり得るので複雑になり得て、それらのホウ酸エステル化合物からの化学式IIIの化合物の分離は例えばクロマトグラフィーをもたらそう。従って、工業的な規模では、化学式IIで表される化合物の還元は、好適には、水素の使用下で触媒的に実施される。
【0006】
今や、中間ホウ酸エステル化合物の加水分解から生じる反応混合物における化学式IIIの化合物の単離を驚くほど容易にし、且つ、工業的な規模で実施し得るプロセスが発見された。
【0007】
一つの態様では、本発明は、化学式IIIの化合物の製造方法であって、
(i)化学式IIの化合物をホウ素化水素で処理する工程、
(ii)ポリヒドロキシル化化合物の存在下において、形成された中間ホウ酸エステル化合物を加水分解する工程、及び所望の場合には
(iii)反応混合物から化学式III化合物を単離する工程、
を含む前記方法を提供する。
【0008】
別の態様では、本発明は、化学式IIIの化合物の製造方法であって、
(i)ポリヒドロキシル化化合物の存在下において、化学式IIの化合物とホウ素化水素とから形成された中間ホウ酸エステル化合物を加水分解する工程、及び所望の場合には
(ii)反応混合物から化学式IIIで表される化合物を単離する工程、
を含む前記方法を提供する。
【0009】
驚くべきことに、中間ホウ酸エステル化合物の加水分解中に存在するポリヒドロキシル化化合物は、加水分解中に発生するホウ酸とポリヒドロキシル化化合物のヒドロキシ基との反応に由来するホウ酸エステルの形成をもたらし得ることが発見された。従って、マクロライド、例えば化学式IIIの化合物との中間ホウ酸エステル化合物の再形成は抑制ないし回避され、化学式IIIの化合物の単離を容易にしうる。
【0010】
本発明による方法は、以下のようにして実施することができる。
既知の化合物である化学式IIの化合物を、例えば化学式IIの化合物の溶液にホウ素化水素を加えることにより(あるいは、逆に、ホウ素化水素に化学式IIの化合物の溶液を加えることにより)、ホウ素化水素の存在下において、溶媒中で処理、例えば攪拌、例えば溶解する。溶液は、化学式IIの化合物が少なくとも部分的に溶解した懸濁液を含む。溶媒は、還元プロセスに適した溶媒、好適には、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、及びテトラヒドロフラン等のエーテル、及び例えば以上で挙げた個々の溶媒の混合物、を含む。酸が存在していてもよく、例えば化学式IIで表される化合物の溶液に酸を加えてもよい。例えば酸は、例えばイミニウムイオンの形成によりイミンの還元を加速するのに適したものである。酸は、有機酸(好適にはギ酸または酢酸)、及び無機酸(好適には塩酸または硫酸)、並びに例えば以上で挙げた個々の酸の混合物を含む。例えば、水溶液中における酸を化学式IIの化合物の溶液に加えてもよい。「ホウ素化水素」は、還元剤として作用するのに適したホウ素及び水素原子を包含する化合物を含み、例えば:
・例えば安定な錯体の形態におけるボランまたはジボラン、例えば、テトラヒドロフラン、硫化メチル、ピリジン、モルホリン、4−メチルモルホリン、1,4−オキサチアンとの錯体等;例えばアンモニア、tert−ブチルアミン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルアミン、(4−ジメチルアミノ)−ピリジン、4−エチルモルホリン、2,6−ルチジン、トリエチルアミン、トリメチルアミンを含むアミンとのボラン錯体;及び、ホスフィンとのボラン錯体、例えばジフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンとのボラン錯体;
・水素化ホウ素ナトリウム及び水素化ホウ素カリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム及びシアノ水素化ホウ素カリウム、並びに水素化ホウ素リチウム等の水素化ホウ素金属;
・アルキル水素化ホウ素、例えばトリアルキル水素化ホウ素、例えば、トリメチル−及びトリエチル水素化ホウ素リチウムまたはナトリウム等のトリ(C1−4)アルキル水素化ホウ素、
・アルコキシ水素化ホウ素、例えばトリ(C1−4)アルコキシ水素化ホウ素等のトリアルコキシ水素化ホウ素、例えばトリメトキシ水素化ホウ素ナトリウム等、
・アシルオキシホウ素化水素、例えばアシルが(C2−6)アシルを含むトリアシルオキシホウ素化水素、例えばトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム等、
などであり、好適には、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、及び水素化ホウ素リチウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム及びシアノ水素化ホウ素リチウム、及び例えば以上で挙げた個々のホウ素化水素の混合物、であり、そして、例えば粉末状、ペレット状、顆粒状等の固体、例えば2−メトキシエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、水溶液、例えば水酸化ナトリウム溶液等の溶液、例えばアルミナ等の担体に固定された形態、等、あらゆる適当な形態であってよい。
【0011】
中間ホウ酸エステル化合物、例えばホウ酸エステル、例えば以上で記載したもの、例えば化学式IVの化合物は、反応混合物中において形成されよう、また、例えば通常の手段で、例えば溶媒(系)を蒸発させることにより、あるいは、例えば反応混合物中の過剰なホウ素化水素を加水分解することにより、例えば得られる混合物のpHを塩基性のpHに調節する水性の酸例えば無機酸でその反応混合物を処理することにより、単離してもよく、そして、沈殿し得る中間ホウ酸エステル化合物を例えば濾過により単離してもよく、もしくは、中間ホウ酸エステル化合物を、水と二相系を形成することができ、且つ、水との二相系に中間ホウ酸エステル化合物を溶解することができるハロゲン化炭化水素等の溶媒、例えば塩化メチレン等の溶媒中に抽出してもよく、そして、所望の場合には、その溶媒を蒸発させて取り除いてもよい。
【0012】
化学式IIの化合物に関するホウ素化水素の量は重要ではない。予備試験を行うことにより適切な量を容易に決定することができよう。
【0013】
得られた、例えば単離された、中間ホウ酸エステル化合物は、例えば酸の存在下において、例えば塩酸、硫酸等の無機酸の存在下において、及び、例えば、中間ホウ酸エステル化合物の(懸濁液を含む)溶液にポリヒドロキシル化化合物を付加することによるポリヒドロキシル化化合物の存在下において、例えば溶媒中で、例えば水、または、その反応条件下において不活性であり、且つ、水を含む有機溶媒などの水溶液等の溶液中で加水分解されてよい。水と二相系を形成する溶媒の溶液中で得られる中間ホウ酸エステル化合物は、例えば酸性の水性溶媒中に抽出されてよく、そして、得られたその酸性混合物にポリヒドロキシル化化合物を加えることができる。
【0014】
ポリヒドロキシル化化合物は、2つもしくはそれ以上のヒドロキシル基を有する有機化合物、例えば:
・エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、またはペンタエリトリトール等の直鎖状の多価アルコール、ジエタノールアミンまたはトリエタノールアミン等の、少なくとも2つのヒドロキシル基のほかに更なる官能基、例えば1つもしくは複数のアミン基を有する例えば以上で挙げた直鎖状の多価アルコール、
・環状の多価アルコール、例えばエキソ−2,3−ノルボルナンジオール等の環外多価アルコール、
・糖型の多価アルコール、例えば単糖類、例えばあらゆる異性体(D−体、L−体、またはDL−体)の形態におけるグリセルアルデヒド、エリトロース、エリトルロース、アラビノース、リキソース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、アロース、アルトロース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、タガトース、及びタロース等、
・エリトロール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、アドニトール、ソルビトール、ズルシトール、マンニトール等の、対応する糖の還元により得られる糖型の多価アルコール、
・グルカミンまたはN−メチルグルカミン等の、少なくとも2つのヒドロキシ基のほかに更なる官能基、例えばアミンを有する糖型の多価アルコール、
・樹脂、例えばヒドロキシ基を含有するイオン交換樹脂、例えばCatalogue Handbook of Fine Chemicals(1996−1997)に記載されている例えばAmberlite IRA−743樹脂、
を含み、それらの化合物は、例えば固形、溶液状、担体に固定された形態等、あらゆる適当な形態を為していてよい。
【0015】
中間ホウ酸エステル化合物に関するポリヒドロキシ化合物の量は重要ではない。予備試験を行うことにより適切な量を容易に決定することができよう。
【0016】
化学式IIIの化合物は、反応混合物から得られよう、また、その反応混合物から、例えば通常の手段で、例えば濾過により単離してもよく、あるいは、例えば、水と二相系を形成することができ、且つ、水との二相系に化学式IIIの化合物を溶解することができる溶媒中に抽出してもよく、例えば、二相系を得、それらの相を分離し、有機相の溶媒を、例えば蒸発により、例えば乾燥するまで蒸発させることにより取り除いてもよく、もしくは、例えばアジスロマイシンを得るため、化学式IIIで表される化合物の溶液をそのまま、例えばさらに単離や精製を行うことなく、メチル化反応で使用してもよい。
【0017】
更なる態様では、本発明は、例えば化学式Iの、例えば溶媒和の形態におけるアジスロマイシンの製造方法であって、
(i)化学式IIで表される化合物をホウ素化水素で処理すること、
(ii)ポリヒドロキシル化化合物の存在下において、形成された中間ホウ酸エステル化合物を加水分解して、化学式IIIの化合物を得ること、及び
(iii)工程(ii)で得られた化学式IIIの化合物を、エリスロマイシン環構造の位置9aにおけるアミン基においてメチル化すること、及び所望の場合には
(iv)アジスロマイシンを単離すること、例えば溶媒和の形態において、例えば二水和物または一水和物等の水和物の形態において単離すること、
を含む、前記方法を提供する。
【0018】
別の態様では、本発明は、例えば化学式Iの、例えば溶媒和の形態におけるアジスロマイシンの製造方法であって、
(i)ポリヒドロキシル化化合物の存在下において、化学式IIの化合物とホウ素化された水素化物とから形成された中間ホウ酸エステル化合物を加水分解する工程、
(ii)工程(ii)で得られた化学式IIIの化合物をエリスロマイシン環構造の位置9aにおけるアミン基においてメチル化する工程、及び
(iii)アジスロマイシンを単離する工程、例えば溶媒和の形態において、例えば二水和物または一水和物等の水和物の形態において単離する工程、
を含む、前記方法を提供する。
【0019】
更なる態様では、本発明は、例えば溶媒和の形態での、例えば二水和物または一水和物等の水和物の形態でのアジスロマイシンの製造における、ポリヒドロキシル化化合物の存在下において、化学式IIで表される化合物とホウ素化水素から形成された中間ホウ酸エステル化合物を加水分解することにより得られる、化学式IIIの化合物の使用を提供する。
【0020】
エリスロマイシン環構造の位置9aにおけるアミン基での化学式IIIの化合物のメチル化は、適当な例えば通常の方法で、例えば、酢酸エチル等の溶媒中における化学式IIIの化合物の溶液をギ酸及び水性ホルムアルデヒドで処理し、得られたアジスロマイシンを単離することにより実施されてよい。
【0021】
本発明による方法は、アジスロマイシンの製造に有用である。本方法の利点は、所望の化合物、例えば化学式IIIの化合物及びアジスロマイシンの化合物を例えば高収量で製造できることを含み、また、化学式IIIの化合物は、純粋な形態で得ることができ、更なる精製工程を伴うことなく、あるいは、単離行程さえも伴うことなく、以降の反応で、例えばメチル化工程でそのまま使用することができ、更に、本方法は、工業規模で使用することもできる。
【0022】
アジスロマイシン、例えば本発明のプロセスに従って得られるアジスロマイシンは、溶媒和の形態であり得、例えば一水和物等の水和物の形態、あるいは、例えば二水和物の形態であり得る。一水和物の形態におけるアジスロマイシンは不安定で、例えば、一水和物の形態におけるアジスロマイシンの結晶構造は、通常の空気湿度条件下において数時間以内に分解し得ることが知られている。従って、通常の方法、例えばエタノール溶液からの水による沈殿により得られる一水和物の形態におけるアジスロマイシンは、取り扱いが容易でないことが文献に記載されている。これが、現在市場に出回っているアジスロマイシンが二水和物の形態を為していることの一つの理由であろう。二水和物の形態におけるアジスロマイシンは通常の空気湿度条件下において安定していることが知られており、例えば、二水和物の形態におけるアジスロマイシンの結晶構造は、通常の空気湿度条件下において数時間以内に分解しないことが知られている。
【0023】
既知の方法、例えばエタノール溶液からの水による沈殿により生成される一水和物の形態におけるアジスロマイシンは、上記の不安定性のほかに、高含量の残留溶媒、例えば1.0%もしくはそれ以上の残留溶媒を含み得、これは、医薬として使用するには適当でないであろう。
【0024】
驚くべきことに、今や、アジスロマイシン、例えば化学式Iで表されるアジスロマイシンを、安定で容易に取り扱い得る例えば結晶性の一水和物の形態で入手し得ることが発見された。本明細書で使用する場合、「安定な一水和物」という用語は、結晶で、通常の条件下、例えば通常の空気湿度条件下において少なくとも24時間、例えば数週間、その結晶構造を維持する一水和物の形態における化学式Iで表される化合物を含む。一水和物の形態におけるアジスロマイシンのその結晶構造は、それの(既知の)X線粉末回折パターンにより決定することができる。
【0025】
別な態様では、本発明は、安定な、例えば結晶性の一水和物の形態におけるアジスロマイシン、例えば化学式Iのアジスロマイシンを提供する。
【0026】
また、本発明による安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンは、その結晶構造を変えることなく、且つ、顕著に更なる水分を取り込むことなく、例えば2.0%等例えば約1.5%及びそれ以上から、例えば6.0%w/w等例えば5.5%及びそれ以上まで、例えば1.5%から5.5%w/wまで等2.0%から6.0%w/wまでの水分を含有し得ることも発見された。2.0%から6.0%w/wまでの含水量は、アジスロマイシン一水和物を形成するのに必要な水分を含む。
【0027】
別の態様では、本発明は、安定な一水和物の形態における、例えば結晶のアジスロマイシン、例えば化学式Iのアジスロマイシンであって;通常の空気湿度条件下において例えば24時間後であっても一水和物の形態におけるアジスロマイシンに相応する、例えばX線粉末回折パターンを示す、アジスロマイシンおよび、2.0%から6.0%w/wまでの水分、を含む組成物、例えば本質的にそれらからなる組成物を提供する。
【0028】
また、安定な、例えば結晶の一水和物の形態におけるアジスロマイシンを、有機溶媒中のアジスロマイシンの溶液から有機溶媒を除去することにより製造することができ、一方、例えば先行技術により製造されるアジスロマイシン、例えばエタノール溶液からの水による沈殿により製造されるアジスロマイシンは、不安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンをもたらし得ることも判明した。
【0029】
別の態様では、本発明は、安定な一水和物の形態における例えば結晶のアジスロマイシンの製造方法であって、有機溶媒中のアジスロマイシンの溶液から有機溶媒を除去することを含む製造方法を提供する。
【0030】
本発明による方法は、以下のようにして実施することができる。
あらゆる形態、例えば遊離塩基の形態、及び塩の形態、例えば塩酸塩の形態、例えば二塩化水素化物、酢酸塩の形態、及び/又は溶媒和の形態、例えば(不安定な)一水和物の形態あるいは二水和物の形態、及び非溶媒和の形態、例えば無水の形態、におけるアジスロマイシンを開始材料として使用してよく、そして、そのアジスロマイシンを有機溶媒中に溶解、例えば懸濁させることができる。有機溶媒中におけるアジスロマイシンの溶液を得てよい。「溶液」という用語は、アジスロマイシンの少なくとも一部がそこに溶解している懸濁液を含む。有機溶媒は、アジスロマイシンを溶解するのに適した溶媒を含み、好適には水混和性の有機溶媒である。水混和性の有機溶媒は、水と一相系を形成し得る有機溶媒を含み、好適には、アセトン等の水混和性ケトン、低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等の(C1−4)アルコール、酢酸メチル、酢酸エチル等の低級アルキル酢酸塩、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の酢酸及びギ酸アミド、あるいは、例えば以上で挙げた個々の有機溶媒の混合物である。有機溶媒中に水分が存在していてよい。有機溶媒中におけるアジスロマイシンの溶液を製造するのに適した温度は、アジスロマイシンが分解しない温度を含み、例えば0℃から50℃まで等の−20℃から70℃までの範囲の温度を含む。開始材料としてアジスロマイシンが塩の形態で使用される場合には、例えば適当なpHのアジスロマイシンの溶液を得るべく、例えばアジスロマイシンが遊離塩基の形態になるようなpHを得るべく、例えば通常の方法に従って、例えば塩の形態におけるアジスロマイシンと有機溶媒との混合物に塩基を加えることにより、遊離塩基の形態の溶液中におけるアジスロマイシンを提供するために塩基を使用し得る。有機溶媒中におけるアジスロマイシンの溶液の濃度は重要ではない。好適には、飽和溶液、もしくは、殆ど飽和した溶液を使用し得る。その有機溶媒中には、一水和物の形態におけるアジスロマイシンを形成するのに必要な量の水が存在していてよい。有機溶媒中のアジスロマイシンの溶液がアジスロマイシン一水和物を形成するのに必要な量未満の水分を含んでいる場合には、水を加えてよく、例えばアジスロマイシン一水和物を形成するのに十分な量の水を加えてよい。有機溶媒中のアジスロマイシンの溶液がアジスロマイシン一水和物を形成するのに必要な量より多くの水分、例えば過剰な水分を含んでいる場合には、必ずしも必要ではないが、所望の場合には、過剰な水分を取り除いてもよい。過剰な水分を取り除くための適当な方法は、通常の方法、例えば、有機溶媒中のアジスロマイシンの溶液から水分と共に、有機溶媒、例えば好適には低級アルコール、低級アルキル酢酸塩、あるいは、酢酸及びギ酸アミドを取り除く方法、例えば蒸留により取り除く方法、もしくは、有機溶媒中、好適には低級ケトン中におけるアジスロマイシンの溶液に含まれている有機溶媒を除去する前に、乾燥剤、例えば有機化学において通常用いられるもの、例えば硫酸ナトリウム等を付加する方法、を含む。有機溶媒中のアジスロマイシンの溶液から、例えば通常の方法、例えば蒸発等の蒸留により、有機溶媒を例えば部分的に、あるいは(殆ど)完全に取り除いてよい。
【0031】
代わりに、少なくとも一水和物の形態におけるアジスロマイシンの範囲内にある含水量を有する一水和物の形態におけるアジスロマイシン、あるいはもっと高次の、例えば一水和物の形態における不安定なアジスロマイシン、もしくは、二水和物の形態におけるアジスロマイシンを、有機溶媒中、例えば低級アルコール中において例えば以上で説明したような適当な温度にまで温めてアルコール中におけるアジスロマイシンの溶液を形成してもよく、そして、その溶液を冷却することにより、安定な一水和物の形態における例えば結晶性のアジスロマイシンを得ることができる。収量を高めるため、応じて得られるアルコール中の安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンの結晶懸濁液からアルコールを除去してもよい。
【0032】
安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンを、例えば結晶の形態において沈殿させてもよく、そして、例えば通常の方法で、例えば濾過あるいは遠心分離により単離することができる。収量を高めるため、有機溶媒の除去により得られた残分に、水以外の抗−溶媒(anti−solvent)、例えば、有機溶媒溶液中におけるアジスロマイシンの溶解度を減少させる有機溶媒を加えてもよい。
【0033】
別の態様では、本発明は、安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンの製造方法であって、アジスロマイシンをアルコールに溶解すること、及び、そのアルコール溶液から安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンを結晶化させることを含む前記方法を提供する。
【0034】
別の態様では、本発明は、安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンの製造方法であって、二水和物の形態におけるアジスロマイシンを有機溶媒中(例えばエタノール、イソプロパノール、酢酸メチル)あるいは以上で挙げた例えば個々の溶媒の混合物中に溶解すること、水混和性有機溶媒、及び所望の場合には、例えば、存在している場合には、過剰な水分を蒸留により取り除くこと、及び安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンを単離することを含む前記方法を提供する。
【0035】
別の態様では、本発明は、安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンの製造方法であって、二水和物の形態におけるアジスロマイシンを有機溶媒中、例えばアセトン中に溶解し、例えば、所望の場合には、例えば乾燥剤を加えることにより、その得られた溶液を乾燥させること、及び、水混和性の有機溶媒を蒸留により取り除き、そして、安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンを単離することを含む、前記方法を提供する。
【0036】
更なる態様では、本発明は、例えば固体の、例えば結晶の、例えば安定な、一水和物の形態におけるアジスロマイシン、及び、酢酸メチル、アセトン、またはイソプロパノール、を含む組成物、例えば本質的にそれらからなる組成物を提供する。
【0037】
また、驚くべきことに、アジスロマイシン、例えば化学式Iのアジスロマイシンを、例えば結晶の、例えば安定で取り扱い易い一水和物の形態で、そして、低含量の(残留)有機溶媒を有し得る一水和物の形態、例えばある含量の有機溶媒、例えば低毒性ポテンシャルの有機溶媒(例えば、クラス3の溶媒)を含むある含量の有機溶媒、0.5%w/w及びそれ以下、例えば分析により検出可能な下限のある量、例えば0.001%、例えば0.002%、例えば0.003%、例えば0.1%から0.5%まで等、例えばそれ未満、例えば欧州薬局方規格を満たす量の有機溶媒を含有する一水和物の形態で得られることも判明した。0.5%まで、例えばそれよりもっと少ない量の分析により検出可能な下限のある量における低有機溶媒含量を有する、例えば安定な、例えば結晶の一水和物の形態における例えばアジスロマイシンを、例えば上記の如くにして得ることができ、あるいは、例えばもっと詳細に以下のようにして得ることができる。
あらゆる形態のアジスロマイシン、例えば安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンを製造するための開始材料として以上で説明された形態におけるアジスロマイシンを開始材料として使用することができる。例えば溶媒中の塩の形態におけるアジスロマイシンを溶解することにより、あるいは、例えば溶媒中のアジスロマイシンに酸を加えて、溶媒中の遊離型のアジスロマイシンをアジスロマイシンの塩の形態に転化することにより、溶媒中の塩の形態におけるアジスロマイシンの溶液を生成することができる。「溶液」という用語は、少なくとも一部の塩の形態におけるアジスロマイシンが溶解している懸濁液を含む。適当な酸は、例えば有機酸、例えばギ酸または酢酸、及び、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、または硫酸、好適には塩酸または硫酸を含む。溶媒は、例えば水性溶媒を含む、塩の形態におけるアジスロマイシンを溶解するのに適した溶媒を含む。水性溶媒は、水、または、水と有機溶媒の混合液、例えば1つもしくはそれ以上の有機溶媒、例えば水混和性有機溶媒及び水と不混和性の有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、アルキルエステル、例えば(C1−4)アルキル等のアルキルエステル、ギ酸または酢酸のアルキルエステル、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン、メチルt−ブチルエーテル等のエーテル、塩化メチレン等の塩素化炭化水素、及び、モノアルキルアミド及びジアルキルアミド等のアミド、例えばN−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、等を含み、好適には、水、あるいは、水と1つもしくはそれ以上のアルコール、ケトン、酢酸アルキルとの混合液、例えば水、もしくは、水、または、1%から15%v/vまで等、0.5%から20%v/vまでの有機溶媒を含有する水等の水性溶媒である。
【0038】
本発明による塩の形態におけるアジスロマイシンの溶液を製造するための適当な反応条件は、例えば、以下の条件を含む。
(i)例えば0℃から70℃まで等、−20℃から90℃までの温度範囲を含む、アジスロマイシンが分解しない温度、
(ii)適当な圧力、例えば大気圧、及び、大気圧以上または大気圧以下のある圧力、
(iii)適当な希釈度、例えば、溶媒1リットル当たり、開始材料として使用される1gから500gまでのアジスロマイシンに相当する希釈範囲。
【0039】
不純物を取り除くために、得られた溶媒中の塩の形態におけるアジスロマイシンの溶液を、適切な手段、例えば濾過、チャコール処理等により精製してもよい。塩の形態における、例えば精製された、アジスロマイシンの溶液のpHを、例えば溶媒中の塩の形態におけるアジスロマイシンの溶液に塩基を加えることにより、例えば、9.0から12.0まで、例えば10.0から11.0まで等、約8.0から13.0までのあるpHを含む、アジスロマイシンが遊離型で存在するあるpHに調整してもよい。遊離型のアジスロマイシンの「溶液」という用語は、少なくとも一部の遊離型のアジスロマイシンが溶解している懸濁液を含む。適当な塩基は、pHを調整するのに適した塩基、例えば、アンモニア、または、アルカリの(例えばナトリウム、カリウム)、土類アルカリの(例えばカルシウム、マグネシウム)及び、アンモニウムの、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩等の無機塩基、及びアミン(例えばアルキルアミン等)の有機塩基、あるいは、例えば以上で挙げた個々の塩基の混合物を含む。塩基は、好適には水溶液中における、好適には水酸化物、例えばナトリウムまたはアンモニアであってよい。
【0040】
遊離型のアジスロマイシン、及び、例えば安定な、例えば結晶の、一水和物の形態におけるアジスロマイシンは、その溶液から沈殿させ、例えば通常の手段、例えば遠心分離または濾過により単離し、そして、例えば適当な温度、例えば約30℃から80℃までの範囲を含む温度で乾燥させてもよい。例えば安定な一水和物の形態における、例えば結晶のアジスロマイシンは、例えば、例えば安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンと0.5%w/w未満の有機溶媒の組成物として、例えば、安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンと、0%より多く0.5%w/wまでの有機溶媒、例えば、0.5%w/wまでの分析により検出可能な量の有機溶媒、例えば、及び、2.0%から6.0%w/wまでの水分、を含む組成物、例えば本質的にそれらからなる組成物として得ることができる。
【0041】
別の態様では、本発明は、例えば安定な、例えば結晶性の一水和物の形態におけるアジスロマイシンの製造方法であって、
(i)塩の形態におけるアジスロマイシンの溶液のpHを調整する工程、及び
(ii)例えば安定な一水和物の形態における化学式Iのアジスロマイシンを単離する工程、
を含み、工程(i)のアジスロマイシンの溶液が水溶液であり、溶媒が、水、または、水と有機溶媒の混合液から選択されることを特徴とする前記方法を提供する。
【0042】
別の態様では、本発明は、例えば結晶の、例えば安定な一水和物の形態における、例えば化学式Iのアジスロマイシン、及び、0.5%w/w及びそれ以下の量の有機溶媒、例えば、及び、0%w/wより多くのある量、例えば、0.5%w/wまでの分析により検出可能なある量、例えば、欧州薬局方規格を満たすある量の有機溶媒、を含む組成物、例えば本質的にそれらからなる組成物を提供する。
【0043】
本発明による溶媒として水のみを用いるときには、例えば安定な、例えば結晶性の一水和物の形態におけるアジスロマイシンを、実質的に有機溶媒を含まずに得ることができる。
【0044】
別の態様では、本発明は、実質的に有機溶媒を含まない一水和物の形態におけるアジスロマイシンを提供する。
【0045】
本発明による安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシン、例えば、及び、例えば安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンと0.5%w/wまでの分析により検出可能な量の有機溶媒からなる組成物、及び、実質的に有機溶媒を含まない例えば安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンは、活性成分としてアジスロマイシンを含有する医薬組成物の製造に有用である。
【0046】
別の態様では、本発明は、少なくとも1つの薬剤学的担体または薬剤学的希釈剤との組み合わせにおいて、
・安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシン、または
・例えば安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンと0.5%w/wまでの分析により検出可能な量の有機溶媒からなる組成物、または
・実質的に有機溶媒を含まない、例えば安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシン、
を含み、例えば実質的にそれらからなる医薬組成物を提供する。
【0047】
本発明による、
・活性成分としての安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシン、または
・例えば安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンと0.5%w/wまでの分析により検出可能な量の有機溶媒からなる組成物、または
・実質的に有機溶媒を含まない、例えば安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシン、
を含む医薬組成物、例えば実質的にそれらからなる医薬組成物は、例えば現在市場に出回っている、活性成分として二水和物の形態におけるアジスロマイシンを含有する既知の医薬組成物と同じ濃度のアジスロマイシンを含んでいてよく、そして、その既知の医薬組成物と同じ用量範囲で同じ適応症に使用することができる。
【0048】
以下の実施例は、本発明を例証するものである。すべての温度は摂氏温度で与えられており、校正されていない。
【0049】
以下の実施例により得られる一水和物の形態におけるアジスロマイシンのX線粉末回折パターン及びIRスペクトルは、一水和物の形態における既知の(不安定な)アジスロマイシンのX線粉末回折パターン及びIRスペクトルと相応する。
【0050】
以下の実施例により得られる一水和物の形態におけるアジスロマイシンは、通常の空気湿度条件下で数週間保管したときにも、その結晶性並びにX線粉末回折パターンを維持する。
【0051】
含水率(%w/w)はK.Fischer法で決定され、指示が為されている場合には、アジスロマイシン一水和物の形成に必要な水分も含んでいる。
【0052】
残留溶媒(%w/w)は、GCヘッドスペース法で決定されている。
【実施例1】
【0053】
−10/−15°に冷却した180mlのメタノール中における35.62gの化学式IIで表される化合物(検定、92.8%)の溶液に、約2時間かけて14.25gの水素化ホウ素ナトリウムを加える。得られた反応混合物を更に約2時間、−10/−15°に保持し、55°に加熱した後、20°に冷却し、溶媒を蒸発させて除去する。得られた残分(108.9g)を塩化メチレンと水の混合液に溶解し、室温で約30分間攪拌する。二相系が得られる。その有機相を分離して除去し、その水性相を塩化メチレンで抽出する。硫酸ナトリウム上でその有機相を乾燥させ、溶媒を蒸発により除去する。
【0054】
31.15gの残分が得られる。得られたその残分は、中間ホウ酸エステル化合物であり、化学式IVで表される化合物であると考えられ、例えば、以下のデータにより実証される:
元素分析:理論値:B:0.7%;Na:1.0%。実測値:B:0.6%;Na:1.1%。
【0055】
MS−FAB(−):1476(M−Na+H)。11B−NMRスペクトルは、4つの酸素原子への四配位ホウ素結合の想定範囲にppmシグナルを示す。
【実施例2】
【0056】
実施例1により得られた1.98gの中間ホウ酸エステル化合物を34mlの水に懸濁させる。得られたその懸濁液に20%硫酸を加え、pHを2.8に調整する。得られた混合液にヒドロキシ基を包含する22gのイオン樹脂(Amberlite IRA−743)を加え、得られたその混合液を約30分間攪拌し、濾過して前述の樹脂を取り除き、水で洗浄する。得られた濾液のpHを20%水酸化ナトリウムで塩基性のpHに調整する。得られた混合液を酢酸エチルで抽出し、その有機相を乾燥させ、蒸発させて取り除く。収量:純粋な形態における1.22gの化学式IIIの化合物。
【実施例3】
【0057】
10.22gのAmberlite IRA−743樹脂の代わりに1.82gのN−メチル−D−グルカミンを用いる点を除き、実施例2に記載されている方法に従って実施する。収量:1.33gの化学式IIIの化合物。
【実施例4】
【0058】
実施例1により得られた中間ホウ酸エステル化合物を1.98gの代わりに10.02g使用し、34mlの水の代わりに170mlの水を使用し、そして、10.22gのAmberlite IRA−743樹脂の代わりに8.60gのソルビトールを用いる点を除き、実施例2に記載されている方法に従って実施する。収量:8.50gの化学式IIIの化合物。
【実施例5】
【0059】
実施例4により得られた6.48gの化学式IIIの化合物を、58mlの酢酸エチルに溶解し、得られた溶液に、0.6mlのギ酸と1.30mlの37%ホルムアルデヒド水溶液を加える。得られた混合液を約2時間還流する。HPLC分析はアジスロマイシンの形成を示す。収量:理論値の77%。
【実施例6】
【0060】
70.0gのアジスロマイシン二水和物を25°で280mlの酢酸メチルに溶解する。結果として得られた溶液を55−60°に加熱し、225mlの酢酸メチルを蒸留により取り除く。その蒸留残分を20°に冷却する。一水和物の形態におけるアジスロマイシンが結晶化し、それを濾過して取り出し、乾燥させる。収量:47.5g。含水率:2.5%。
【実施例7】
【0061】
15.0gのアジスロマイシン二水和物を75mlのアセトンに溶解し、無水硫酸ナトリウムを加え、得られた混合液を約10分間攪拌した後、その固形物を濾過して取り出し、15mlのアセトンで洗浄する。得られた溶液から57mlのアセトンを蒸留により取り除き、得られた懸濁液を室温にまで冷却する。一水和物の形態におけるアジスロマイシンが結晶化し、それを濾過して取り出し、乾燥させる。収量:7.3g。含水率:2.6%。
【実施例8】
【0062】
10.0gのアジスロマイシン二水和物を10mlの無水エタノールに懸濁させ、その混合物を加熱する。透明な溶液が得られ、それをゆっくり室温にまで冷却し、約25°で約1時間攪拌する。一水和物の形態におけるアジスロマイシンが結晶化する。エタノールを蒸発させて取り除き、一水和物の形態におけるアジスロマイシンを濾過して取り出し、乾燥させる。収量:5.26g。含水率:1.9%。
【実施例9】
【0063】
10mlの無水エタノールの代わりに10mlのイソプロパノールを用いる点を除き、実施例8を繰り返す。一水和物の形態における結晶性のアジスロマイシンが得られる。収量:6.0g、含水率:2.5%。
【実施例10】
【0064】
40mlの水中に懸濁させた二水和物の形態における20gのアジスロマイシンを2NのHClで処理する。溶液が得られ、その溶液を濾過し、得られた濾液を、約55°の温度で、0.5Nの水酸化ナトリウムを加えることにより10から11までの範囲のpHに保たれている80mlの水に滴下させながら加える。得られた懸濁液を室温にまで冷却し、約30分間攪拌する。得られた固形の沈殿物を濾過して取り出し、水で洗浄した後、乾燥させる。一水和物の形態における18.2gのアジスロマイシンが得られる。含水率:3.7%。残留溶媒:アセトン;0.01%。無水ベースでのアジスロマイシン検定(HPLC):98.6%。
【実施例11】
【0065】
上述の沈殿プロセスにおいて、80mlの水の代わりに80mlの水と4mlのエタノールとの混合液を用いる点を除き、実施例10を繰り返す;一水和物の形態における19.5gのアジスロマイシンが得られる。含水率:2.9%。残留溶媒:アセトン;0.003%、エタノール;0.002%。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式
【化1】

の化合物の製造方法であって、
(i)化学式
【化2】

の化合物をホウ素化水素で処理する工程、
(ii)ポリヒドロキシル化化合物の存在下において、形成された中間ホウ酸エステル化合物を加水分解する工程、及び所望の場合には
(iii)反応混合物から化学式IIIの化合物を単離する工程、
を含む、上記方法。
【請求項2】
請求項1で定義された化学式IIIの化合物の製造方法であって、
(i)ポリヒドロキシル化化合物の存在下において、請求項1で定義された化学式IIの化合物とホウ素化水素とから形成された中間ホウ酸エステル化合物を加水分解する工程、及び所望の場合には
(ii)反応混合物から化学式IIIの化合物を単離する工程、
を含む、上記方法。
【請求項3】
アジスロマイシンの製造方法であって、
(i)請求項1で定義された化学式IIの化合物をホウ素化水素で処理すること、
(ii)ポリヒドロキシル化化合物の存在下において、形成された中間ホウ酸エステル化合物を加水分解して、請求項1で定義された化学式IIIの化合物を得ること、
(iii)エリスロマイシン環構造の位置9aにおけるアミン基において、工程(ii)で得られた化学式IIIの化合物をメチル化すること、及び所望の場合には
(iv)例えば溶媒和の形態において、アジスロマイシンを単離すること、
を含む、上記方法。
【請求項4】
アジスロマイシンの製造方法であって、
(i)ポリヒドロキシル化化合物の存在下において、請求項1で定義された化学式IIの化合物とホウ素化水素とから形成された中間ホウ酸エステル化合物を加水分解する工程、
(ii)エリスロマイシン環構造の位置9aにおけるアミン基において、請求項1で定義通りの化学式IIIの化合物をメチル化する工程、及び
(iii)アジスロマイシンを単離する工程、
を含む、上記方法。
【請求項5】
アジスロマイシンが溶媒和の形態において単離されることを含む、請求項4または5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ポリヒドロキシル化化合物の存在下において請求項1で示されたように化学式IIの化合物とホウ素化水素とから形成された中間ホウ酸エステル化合物を加水分解することにより得られる化学式III化合物の、アジスロマイシンの製造における使用。
【請求項7】
安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシン。
【請求項8】
安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンと2.0%から6.0%w/wまでの範囲の水分を含む組成物。
【請求項9】
有機溶媒中におけるアジスロマイシンの溶液から有機溶媒を取り除くことを含む、安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンの製造方法。
【請求項10】
アジスロマイシンをアルコールに溶解すること、及び、このアルコール溶液から安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンを結晶化させることを含む、安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンの製造方法。
【請求項11】
二水和物の形態におけるアジスロマイシンをエタノール、イソプロパノール、または酢酸メチルに溶解すること、有機溶媒、及び所望の場合には過剰な水分を蒸留により除去すること、並びに安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンを単離することを含む、安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンの製造方法。
【請求項12】
二水和物の形態におけるアジスロマイシンをアセトンに溶解すること、水混和性の有機溶媒を蒸留により取り除くこと、及び安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンを単離することを含む、安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシンの製造方法。
【請求項13】
一水和物の形態におけるアジスロマイシンと、酢酸メチル、アセトンまたはイソプロパノールを含む組成物。
【請求項14】
(i)塩の形態におけるアジスロマイシンの溶液のpHを調整する工程、及び
(ii)一水和物の形態における化学式Iのアジスロマイシンを単離する工程を含み、工程(i)におけるアジスロマイシンの溶液が水溶液であり、ここでその溶媒が水、または水と有機溶媒の混合物から選択されることを特徴とする一水和物の形態におけるアジスロマイシンの製造方法。
【請求項15】
一水和物の形態におけるアジスロマイシンと0.5%w/wまでの分析により検出可能な量の有機溶媒を含む組成物。
【請求項16】
実質的に有機溶媒を含まない、一水和物の形態におけるアジスロマイシン。
【請求項17】
少なくとも1つの薬剤学的担体または薬剤学的希釈剤との組み合わせにおいて、
・安定な一水和物の形態におけるアジスロマイシン、または
・一水和物の形態におけるアジスロマイシンと0.5%w/wまでの分析により検出可能な量の有機溶媒からなる組成物、または
・実質的に有機溶媒を含まない一水和物の形態におけるアジスロマイシン、
を含む医薬組成物。
【請求項18】
結晶の、請求項7、8、13、15、16、及び17のいずれか一項に記載の一水和物の形態におけるアジスロマイシンまたは請求項9、10、11、12、または14のいずれか一項に記載の方法により得られるアジスロマイシン。
【請求項19】
安定な一水和物の、請求項13、15、または16のいずれか一項に記載の一水和物の形態におけるアジスロマイシンまたは請求項14に記載のプロセスにより得られるアジスロマイシン。

【公開番号】特開2011−126894(P2011−126894A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−17553(P2011−17553)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【分割の表示】特願2001−507048(P2001−507048)の分割
【原出願日】平成12年6月27日(2000.6.27)
【出願人】(305008042)サンド・アクチエンゲゼルシヤフト (54)
【Fターム(参考)】