説明

マグネシウムの回収方法およびマグネシウム回収装置

【課題】 安全に且つ連続的にマグネシウムを回収する方法およびその方法の実施に好適なマグネシウム回収装置を提供する。
【解決手段】 粉粒を振動、流動または移動が可能に収容できる容器、 該容器の上部に粉粒を供給する口、該容器の下部に粉粒を排出する口、および該容器にマグネシウム蒸気を導入する口があり、 且つ容器に収容された粉粒を振動、流動または移動させるための手段を有し、 導入されたマグネシウム蒸気を前記粉粒表面で凝結させることができる、マグネシウム回収装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウムの回収方法およびマグネシウム回収装置に関する。より詳細に、本発明は、連続的に且つ高効率でマグネシウムを回収する方法およびその方法の実施に好適なマグネシウム回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネシウムは、溶融電解法または熱還元法で製造される。溶融電解法では、アルミニウム、ケイ素、塩素、鉄、マンガン等を不純物として含有し、得られるマグネシウムの純度が低い。そのために、マグネシウムを蒸留して精製することがある。
一方、熱還元法は、ドロマイトをフェロシリコンで還元し、マグネシウム蒸気を凝結させる工程を含む。
また、マグネシウムは、マグネシウムを含有するスクラップを、精製することによっても製造されている。この精製には、蒸留が一般に用いられている。
【0003】
マグネシウムの製造または精製において発生するマグネシウム蒸気は、装置の内壁や蓋にマグネシウム微細粉として付着する。これが空気と接触すると発火、燃焼する恐れがある。さらに装置の蓋を開けて開放する時に、マグネシウム微細粉が系外に放出され、作業環境性を損ない、また発火、燃焼する恐れがある。さらに、従来の装置では、マグネシウム蒸気からのマグネシウム回収率が低いという問題があった。また、マグネシウム蒸気の凝結で得られるマグネシウム塊を凝結面から引き剥がすなどの作業を要する。そのため、凝結面からのコンタミ等でマグネシウムの純度が低くなったり、凝結面に取り残しなどが生じてマグネシウムの回収率が低くなったりすることがあった。
【0004】
このような状況において、特許文献1および特許文献2には、原料を収容する坩堝と、該坩堝内に収容した原料を加熱して溶解させる加熱装置と、前記坩堝の開放空間を覆って密閉する、内側密閉筒と外側密閉筒とからなる二重筒と、前記内側密閉筒内にあって前記坩堝の上方側に配置されたマグネシウム凝結器と、該マグネシウム凝結器の近傍に位置する冷却手段と、前記二重筒内を減圧する排気手段とを有することを特徴とするマグネシウム合金材の純マグネシウム回収装置が提案されている。
特許文献3には、マグネシウム微細片から純マグネシウム塊を製造する装置であって、内部を加熱する加熱手段を備えた密閉容器と、密閉容器内の加熱温度より低い温度に冷却することにより内壁に蒸気を凝結・付着させる回収容器と、前記密閉容器と回収容器とを連結し密閉容器内のマグネシウム蒸気を回収容器に導く連結通路と、密閉容器および回収容器を減圧する減圧手段と、回収容器の下部に接続され回収容器内からの油水分を貯留する貯留容器とを備えていることを特徴とするマグネシウム微細片からの純マグネシウム塊を製造する装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−348621号公報
【特許文献2】特開2005−126802号公報
【特許文献3】特開平6−88148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、連続的に且つ高効率でマグネシウムを回収する方法およびその方法の実施に好適なマグネシウム回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、容器に粉粒を収容し、該粉粒を振動、流動または移動させ、マグネシウム蒸気を前記容器に導入して前記粉粒表面で凝結させることによって、連続的に且つ高効率でマグネシウムを回収できることを見出した。
本発明は、この知見に基づいて、さらに検討を重ねることによって完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
〔1〕 容器に粉粒を収容し、 該粉粒を振動、流動または移動させ、 マグネシウム蒸気を前記容器に導入して前記粉粒表面で凝結させることを含む、マグネシウムの回収方法。
〔2〕 前記粉粒が金属マグネシウムからなるものである、前記〔1〕に記載のマグネシウムの回収方法。
〔3〕 容器内を非酸化性雰囲気にする、前記〔1〕または〔2〕に記載のマグネシウムの回収方法。
【0009】
〔4〕 粉粒を振動、流動または移動が可能に収容できる容器、 該容器の上部に粉粒を供給する口、該容器の下部に粉粒を排出する口、および該容器にマグネシウム蒸気を導入する口があり、 且つ容器に収容された粉粒を振動、流動または移動させるための手段を有し、 導入させたマグネシウム蒸気を前記粉粒表面で凝結させることができる、マグネシウム回収装置。
〔5〕 排出された粉粒を分級する手段をさらに有する、前記〔4〕に記載のマグネシウム回収装置。
〔6〕 前記粉粒が金属マグネシウムからなるものである、前記〔4〕または〔5〕に記載のマグネシウム回収装置。
〔7〕 容器内を非酸化性雰囲気にすることができる、前記〔4〕〜〔6〕のいずれか1項に記載のマグネシウム回収装置。
【0010】
本発明に係るマグネシウムの回収方法に好適に使用されるマグネシウム回収装置は、粉粒を振動、流動または移動が可能に収容できる容器を有する。該容器は、その上部に粉粒を供給する口、該容器の下部に粉粒を排出する口、および該容器にマグネシウム蒸気を導入する口がある。
このような容器は、移動層または流動層として知られる塔型または槽型の化学装置であってもよい。移動層装置としては、例えば、容器の上部に新しい粉粒を供給するためのホッパーやコンベヤーなどが設けられ、容器の下部に粉粒を一定量で排出するための振動フィーダー、ロータリーフィーダー、テーブルフィーダーなどが設けられていて、粉粒が容器内を上から下へ移動するようになったもの(図3参照)が挙げられる。移動層装置には、複数の固定層をバルブの切り替えで擬似的に移動した状況にする、所謂、擬似移動層装置を含むことができる。また流動層装置としては、例えば、容器の上部に新しい粉粒を供給するためのホッパーなどが設けられ、容器に容器内の粉粒を流動化させるに十分な振動を発生させる装置を設け、容器の下部に粉粒を一定量で排出するためのフィーダーを設けたもの(図1参照); 容器の上部に新しい粉粒を供給するためのホッパーなどが設けられ、容器の下部に容器内の粉粒を流動化させるに十分な気流を送り込む装置を設け、容器の下部に粉粒を一定量で排出するためのフィーダーを設けたもの(図2参照)が挙げられる。また、機械的振動による流動化と気流による流動化とを組み合わせて流動層を形成させる装置であってもよい。
【0011】
そして、マグネシウム蒸気を前記容器に導入し、振動、流動または移動させられている粉粒に接触させ、該粉粒の表面で凝結させる。導入させたマグネシウム蒸気が前記粉粒表面で凝結すると、粉粒がマグネシウムで被覆され、粉粒が大きくなっていく。なお、本明細書における「凝結」は、気相から液相に転位すること(狭義の凝縮)と、気相から固相に転位すること(狭義の凝結)との、両方を含意する。また、本明細書における「凝結」は、気相から液相に転位した後、液相から固相に転位することも含意する。
マグネシウム蒸気は、マグネシウム材を加熱溶融させることによって発生する蒸気であってもよいし、熱還元法で発生する蒸気などであってもよい。マグネシウム材としては、成形不良品、ビスケット、スプル、ランナ、オーバーフロー、バリ、切削粉、チップなどのマグネシウムを含有するスクラップが挙げられる。マグネシウム材は純マグネシウムであってもよいし、マグネシウム合金であってもよい。また、酸化マグネシウム蒸気を炉内に送り込み、そこにレーザーを照射することによって、マグネシウム蒸気を発生させることもできる。マグネシウム蒸気の温度は、マグネシウムの回収率、熱エネルギーや設備にかかるコストなどを考慮して適宜設定できる。なお、金属材料・加工プロセス辞典(川口ら編著、丸善、平成13年3月15日発行)によれば、マグネシウムは、融点が650℃、沸点が1120℃である。
マグネシウム蒸気は、粉粒に、向流接触させてもよいし、十字接触させてもよい。図3には、マグネシウム蒸気が下から上に流れ、粉粒が上から下に移動する、向流接触の場合を示した。
【0012】
本発明に係るマグネシウム回収装置に用いられる粉粒は、その表面にマグネシウムを凝結させることができるものであれば、特に限定されない。高純度のマグネシウムの回収が容易という観点から、粉粒は金属マグネシウムからなるものが好ましい。粉粒は、その形状において、特に限定されないが、上記の容器の中で、振動、流動または移動が容易になるという観点から、球形のものが好ましい。
粉粒の大きさは、振動、流動または移動させることができれば、特に制限されない。粉粒の大きさは、例えば、10μm〜10mm、好ましくは50μm〜1mmである。粉粒が大きすぎるとマグネシウムの回収率が低くなることがある。粉粒が小さすぎると、発火、燃焼等を起こすおそれが高くなり、また凝集したりして、容器の中での振動、流動または移動が困難になることがある。
粉粒は、その表面でマグネシウム蒸気が凝結しやすくするために、冷やされていることが好ましい。粉粒の冷却は公知の冷却手段によって行うことができる。例えば、図3に示した移動層装置や図1に示した流動層装置では、容器311または容器111の上部に熱交換器などを設けて、粉粒を冷やすことができる。また、図2に示した流動層装置では、流動化のために導入されるガスの温度を低くすることで、粉粒を冷やすことができる。
【0013】
容器内の雰囲気は特に制限されないが、非酸化性雰囲気であることが好ましい。酸化性雰囲気になるとマグネシウム蒸気の凝結で生成したマグネシウムが酸化されやすい。非酸化性雰囲気とするために、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスなどを容器内に導入することができる。また、容器内を減圧にすることで操作温度を低くすることができる。
【0014】
容器の下部に設けた粉粒排出口から、マグネシウムで被覆された粉粒を取り出す。粉粒の取り出し手段は特に制限されない。例えば、振動フィーダー、ロータリーフィーダー、テーブルフィーダー、スクリューフィーダーなどが挙げられる。そして、取り出された粉粒を分級することができる。分級手段は特に制限されない。例えば、篩、遠心分級器、重力分級器、慣性分級器などを挙げることができる。所定の大きさ以下の粉粒は、本発明に係るマグネシウム回収装置の上部から再度供給することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るマグネシウムの回収方法およびマグネシウム回収装置によれば、連続的に且つ高効率でマグネシウムを回収することができる。導入させたマグネシウム蒸気を前記粉粒表面で凝結させると、粉粒がマグネシウムで被覆され、粉粒が大きくなっていく。本発明に係るマグネシウムの回収方法は、従来法のようにマグネシウム蒸気の凝結で発生するマグネシウム微細粉を取り扱わなくて済むので、作業環境性に優れ、また発火や燃焼などの問題を回避できる。粉粒を用いることによって、マグネシウム蒸気との接触面積が増えるので、小型装置で高い凝結効率を得ることができる。マグネシウムで被覆された粉粒は振動フィーダー、ロータリーフィーダーなどを用いることで連続的に容器外に取り出すことができるので、マグネシウムの生産性を高めることができる。粉粒にマグネシウム粉粒を用いると、マグネシウム蒸気の凝結で得られるマグネシウムをマグネシウム粉粒から引き剥がす必要がない。そのため、高純度のマグネシウムを高効率で回収できる。
また、マグネシウムで被覆された粉粒を分級して、所定の大きさ以下のものを、マグネシウム回収装置の上部から再度供給して、所定の大きさになるまで、使用することで、製造コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係るマグネシウム回収装置を示す概念図。
【図2】実施形態2に係るマグネシウム回収装置を示す概念図。
【図3】実施形態3に係るマグネシウム回収装置を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明に係るマグネシウム回収装置の実施形態を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施形態によってその範囲が制限されるものではない。
【0018】
〔実施形態1〕
図1は、機械的振動による振動・流動層式のマグネシウム回収装置を示す概念図である。なお、図1では、容器中央部の粉粒の描画を省略している。
該回収装置は、容器111と、容器111の下部に取り付けられた振動機110を有する。容器111は、円筒形状の塔であり、塔の上部にマグネシウム粉粒の供給口113、塔の下部にマグネシウムで被覆された粉粒の排出口114、塔の下部にマグネシウム蒸気の導入口115、および塔の上部に排気口116を備えている。供給口113、排出口114、導入口115および排気口116は、フレキシブルチューブを介して、外部の配管等に繋がっている。フレキシブルチューブによって外部の配管等に振動が伝わらないようにしている。
【0019】
容器111はバネ117を介して基台に設置されている。振動機110によって容器111が振動する。この振動によって、供給口113から供給されたマグネシウム粉粒(粒径:約150μm)が容器111の中で振動・流動化する。なお、容器111の中に、螺旋状の板、十字形状の板などの振動板を設置し、振動機で発生した波動を該振動板に伝え、粉粒の振動・流動化が容器内全体で容易に起きるようにすることができる。
【0020】
導入口115から導入されたマグネシウム蒸気は、流動化されたマグネシウム粉粒に接触し、該粉粒の表面で凝結する。凝結によってマグネシウム粉粒表面がマグネシウムで被覆される。塔内において流動化されるマグネシウム粉粒の高さは、導入されたマグネシウム蒸気がほぼすべてマグネシウム粉粒表面で凝結され、排気口における排気にマグネシウム蒸気が含まれない程度になるに十分な高さにする。この高さは、流動層吸着装置や流動層ガス吸収装置などにおける設計手法と同様の方法で算出することができる。マグネシウムで被覆された粉粒は排出口114から排出される。排出量は排出装置112で調整される。また、マグネシウム蒸気の凝結を促進させるために、容器111の上部に熱交換器(図示せず。)等を設け、それを用いてマグネシウム粉粒を冷やすことができる。容器111の内壁面においてマグネシウム蒸気が凝結しないようにするために内壁はマグネシウム蒸気の凝結温度より高くしておくことができる。
【0021】
図1に示すマグネシウム回収装置を用いると、導入口115から導入したマグネシウム蒸気が気流中からほぼ完全に除去されるので、排気口116からマグネシウム蒸気はほとんど出てこない。マグネシウム粉粒表面で凝結したマグネシウムは、被膜状になっており、該粉粒から剥がれ落ち難い。排出口114から排出されるマグネシウムで被覆された粉粒は、適度な大きさを有するので、取扱が容易である。なお、導入口115は容器111内で下向きにマグネシウム蒸気が吹き出すように配置されているが、これに限定されない。
【0022】
マグネシウム蒸気は、次のようにして発生させる。酸化マグネシウムと窒素ガスとを一緒に炉内に送り込み、そこにレーザーを照射する。このレーザー照射された部分は約2万℃の高温になる。この高温下において酸化マグネシウムはマグネシウムと酸素とに分離し、純粋なマグネシウムになる。分離した酸素は窒素ガスによって分圧が下がるので、マグネシウムとの再結合は起きにくい。導入口115には該方法で発生した窒素ガスとマグネシウム蒸気との混合物が送り込まれる。
【0023】
〔実施形態2〕
図2は、気流による流動層式のマグネシウム回収装置を示す概念図である。なお、図2では、容器中央部の粉粒の描画を省略している。
該回収装置は、容器211を有する。容器211は、円筒形状の塔であり、塔の上部にマグネシウム粉粒の供給口213、塔の下部にマグネシウムで被覆された粉粒の排出口214、塔の下部にマグネシウム蒸気の導入口215、塔の上部に排気口216、およびガスを送り込むための送風口218を備えている。供給口213、排出口214、導入口215、排気口216および送風口218は、フレキシブルチューブを介して、外部配管に繋がっている。
【0024】
送風口218から送り込まれたガスは分散板219によって容器211内で均等な上昇気流が生じるように分散させられる。ガス量は、上昇気流が流動化開始速度以上で且つ粒子終末速度以下となるように調整する。この上昇気流によって、供給口213から供給されたマグネシウム粉粒(粒径:約150μm)が容器211の中で流動化する。送り込まれるガスは、マグネシウム蒸気の凝結を促進させるために、送風口の手前に設けた熱交換器(図示せず。)等で冷やすことができる。上昇気流を発生させるためのガスとしては窒素ガスを用いることができる。
【0025】
導入口215から導入されたマグネシウム蒸気は、流動化されたマグネシウム粉粒に接触し、該粉粒の表面で凝結する。凝結によってマグネシウム粉粒表面がマグネシウムで被覆される。塔内において流動化されるマグネシウム粉粒の高さは、マグネシウム蒸気がほぼすべてマグネシウム粉粒表面で凝結され、排気口における排気にマグネシウム蒸気が含まれない程度になるに十分な高さにする。この高さは、流動層吸着装置や流動層ガス吸収装置などにおける設計手法と同様の方法で算出することができる。なお、導入口215は容器211内で下向きにマグネシウム蒸気が吹き出すように配置されているが、これに限定されない。
そして、マグネシウムで被覆された粉粒は排出口214から排出される。排出量は排出装置212で調整される。排気口216には、上昇気流に同伴してマグネシウム粉粒が出ていかないように、金網などのフィルターや、サイクロンなどの分級装置を設けることができる。マグネシウム蒸気は実施形態1と同じ方法で発生させる。
【0026】
〔実施形態3〕
図3は、移動層式のマグネシウム回収装置を示す概念図である。なお、図3では、容器中央部の粉粒の描画を省略している。
該回収装置は容器311を有する。容器311は、円筒形状の塔であり、塔の上部にマグネシウム粉粒の供給口313、塔の下部にマグネシウムで被覆された粉粒の排出口314、塔の下部にマグネシウム蒸気の導入口315、および塔の上部に排気口316を備えている。
【0027】
供給口313から供給されたマグネシウム粉粒(粒径:約150μm)は、塔内に充填される。排出口314には、振動機310を有する振動フィーダー312が設置されていて、マグネシウムで被覆された粉粒を一定流量で排出できるようになっている。排出口からの粉粒の排出によって、供給口313から供給されたマグネシウム粉粒は、重力によって塔内を上部から下部に向かって順次移動する。容器311の上部に熱交換器(図示せず。)等を設け、それを用いてマグネシウム粉粒を冷やすことができる。供給口313におけるマグネシウム粉粒の供給量は、排出口314における粉粒の排出量に応じて調整される。
【0028】
一方、導入口315から導入されたマグネシウム蒸気は、下方に向かって移動してくるマグネシウム粉粒に向流接触し、該粉粒の表面で凝結する。凝結によってマグネシウム粉粒表面がマグネシウムで被覆される。塔内に充填されるマグネシウム粉粒の高さは、マグネシウム蒸気がほぼすべてマグネシウム粉粒表面で凝結され、排気口における排気にマグネシウム蒸気が含まれない程度になるに十分な高さにする。この高さは、移動層吸着装置や移動層ガス吸収装置などにおける設計手法と同様の方法で算出することができる。導入口315は容器311内で上向きにマグネシウム蒸気が吹き出すように配置されている。導入口315の出口には粉粒が導入口315に入り込まないように多孔板等が取り付けられている。そして、導入されたマグネシウム蒸気に含まれていた不活性ガスなどが排気口316から排出される。マグネシウムで被覆された粉粒は排出口314から排出される。マグネシウム蒸気は実施形態1と同じ方法で発生させる。
【0029】
上記の実施形態に係るマグネシウム回収装置によれば、連続的に且つ高効率でマグネシウムを回収することができる。本実施形態に係るマグネシウム回収装置を用いると、導入口から導入したマグネシウム蒸気が気流中からほぼ完全に除去されるので、排気口からマグネシウム蒸気はほとんど出てこない。導入させたマグネシウム蒸気を前記粉粒表面で凝結させると、粉粒がマグネシウムで被覆され、粉粒が大きくなっていく。マグネシウムで被覆された粉粒は連続的に容器外に取り出すことができるので、マグネシウムの生産性を高めることができる。また、マグネシウムで被覆された粉粒を分級して、所定の大きさ以下のものを、マグネシウム回収装置の上部から再度供給して、所定の大きさになるまで、使用することで、製造コストを下げることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に粉粒を収容し、
該粉粒を振動、流動または移動させ、
マグネシウム蒸気を前記容器に導入して前記粉粒表面で凝結させることを含む、マグネシウムの回収方法。
【請求項2】
前記粉粒が金属マグネシウムからなるものである、請求項1に記載のマグネシウムの回収方法。
【請求項3】
容器内を非酸化性雰囲気にする、請求項1または2に記載のマグネシウムの回収方法。
【請求項4】
粉粒を振動、流動または移動が可能に収容できる容器、
該容器の上部に粉粒を供給する口、該容器の下部に粉粒を排出する口、および該容器にマグネシウム蒸気を導入する口があり、
且つ容器に収容された粉粒を振動、流動または移動させるための手段を有し、
導入させたマグネシウム蒸気を前記粉粒表面で凝結させることができる、マグネシウム回収装置。
【請求項5】
排出された粉粒を分級する手段をさらに有する、請求項4に記載のマグネシウム回収装置。
【請求項6】
前記粉粒が金属マグネシウムからなるものである、請求項4または5に記載のマグネシウム回収装置。
【請求項7】
容器内を非酸化性雰囲気にすることができる、請求項4〜6のいずれか1項に記載のマグネシウム回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−21185(P2012−21185A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158870(P2010−158870)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000227087)日曹エンジニアリング株式会社 (33)
【Fターム(参考)】