説明

マグネシウムシリサイドの製造方法、マグネシウムシリサイド、電極部材および熱電素子

【課題】高純度のマグネシウムシリサイドを高効率に製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るマグネシウムシリサイドの製造方法は、Siを主成分とする処理対象物を準備する工程(S10)と、上記処理対象物が加熱された状態で、上記処理対象物にMg蒸気を接触させる工程(S20)とを備える。Mg蒸気を接触させる工程(S10)を行なう際の、処理対象物の加熱温度が500℃以上1500℃以下であることが好ましい。Mg蒸気を接触させる工程において、Ar、Heからなる群から選択される少なくとも1種以上のガスを含む雰囲気中に処理対象物を載置することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマグネシウムシリサイドの製造方法、マグネシウムシリサイド、電極部材および熱電素子に関するものである。より具体的にはマグネシウムシリサイドの製造方法、マグネシウムシリサイド、および上記マグネシウムシリサイドを用いた電極部材、熱電素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化抑制のためにエコ発電を行なう方法に関する研究が進められている。一例として、ゼーベック効果を利用して起電力を発生させる、環境調和型の熱電変換半導体を利用した熱電素子が挙げられる。
【0003】
上記の熱電素子とは具体的には、たとえば熱電変換半導体材料の長手方向に関する一方の端部と他方の端部との間に温度差を設けたときに、当該半導体材料に発生する起電力を外部へ取り出すことができるデバイスである。すなわち半導体材料の一方の端部に、外部の熱源から廃熱される熱を吸収させる。このようにすれば上記一方の端部は高温となる。また当該半導体材料が吸収した熱を、当該半導体材料の他方の端部から放熱させる。このようにすれば上記他方の端部は低温となる。このようにすれば、半導体材料の一方の端部と他方の端部との間に温度差を設けることができる。
【0004】
ここで熱電変換半導体材料に、たとえばマグネシウム(Mg)とシリコン(Si)との化合物であるマグネシウムシリサイドを用いることが検討されている。これはマグネシウムシリサイドは熱的に安定であり、高温の熱源を用いた廃熱発電に利用することが可能であるためである。さらにマグネシウムシリサイドは、材料中の温度勾配を電気エネルギに変換する熱電変換の効率が高い。このためマグネシウムシリサイドは熱電変換半導体材料に適する半導体材料であるといえる。なおマグネシウムシリサイドの製造方法としては、たとえば特開2005−112653号公報(特許文献1)に開示される、Si塊と金属Mgとを、液体状の塩化マグネシウム(MgCl)中で加熱することにより両者を合成する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−112653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に開示されるマグネシウムシリサイドの製造方法は、安価で簡便にマグネシウムシリサイドを合成する方法とされる。しかしながら特許文献1の製造方法は、たとえばMgClの液相中で合成させる金属Mg中に金属アルミニウム(Al)が含有されていたとしても、MgClの液相中や金属Mg中からAlが脱離しない。つまりこの場合、MgClの液相中や金属Mg中にAlなどの不純物が残存する。このため合成されるマグネシウムシリサイド中にもAlなどの不純物が残存することがある。したがって形成されるマグネシウムシリサイドの純度が低下することがある。
【0007】
また特許文献1のマグネシウムシリサイドの製造方法は、MgClの液相中に金属Mgの塊やSiの塊を投入し、Siの塊の表面上にマグネシウムシリサイドを合成させる。このため形成されたマグネシウムシリサイドの固相を上記MgClの液相中から引き上げ、マグネシウムシリサイドをクリーニングする後処理を行なう必要が生じる。したがって工程数の増加に伴うコスト高を招く可能性がある。
【0008】
本発明は以上の問題に鑑みなされたものである。その目的は、高純度のマグネシウムシリサイドを高効率に製造する方法を提供することである。また当該製造方法を用いて形成されたマグネシウムシリサイド、当該マグネシウムシリサイドを含む電極部材、および当該マグネシウムシリサイドを含む熱電素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るマグネシウムシリサイドの製造方法は、Siを主成分とする処理対象物を準備する工程と、上記処理対象物が加熱された状態で、上記処理対象物にMg蒸気を接触させる工程とを備える。
【0010】
上述したように、本発明に係る製造方法においては、Siを主成分とする処理対象物である固体物質の表面上にMg蒸気を接触させる。すると処理対象物がMg蒸気と反応できる温度に加熱されていれば、Mg蒸気が処理対象物の内部に浸漬するような反応を起こす。このため、たとえMg蒸気を発生する元となる固体や液体の原料物質中にAlなどの多数の不純物を含んでいたとしても、原料物質中のMgの蒸気のみを処理対象物と反応させることができる。したがって、処理対象物中のSiとMg蒸気とが反応してなるマグネシウムシリサイドを、元の原料物質中に含まれた不純物を含まない、極めて純度の高いものとすることができる。したがって本発明の製造方法を用いれば、高純度のマグネシウムシリサイドを形成することができる。
【0011】
また本発明においては上記のように、Mgの気相を用いてマグネシウムシリサイドを形成する。このためたとえばMgClの液相中にてマグネシウムシリサイドを形成する場合のように、形成されたマグネシウムシリサイドの固相をクリーニングする後処理を行なう必要がない。したがって本発明においては、液相中にて処理を行なう場合に比べて、工程数を削減し、工程を高効率にすることができる。
【0012】
上述したマグネシウムシリサイドの製造方法においては、Mg蒸気を接触させる工程を行なう際の、上記処理対象物の加熱温度が500℃以上1500℃以下であることが好ましい。
【0013】
処理対象物の載置される周辺の空間領域の温度が500℃以上であれば、当該空間領域内に存在するマグネシウムを揮発させて蒸気とすることができる。ただし処理対象物の温度が1500℃を超えれば、処理対象物の主成分であるSiの融点を越えて融解することがある。処理対象物の内部にMg蒸気を浸漬させてマグネシウムシリサイドを形成する処理は、Mgが蒸気で存在し、Siが固体で存在する温度にて行なうことが好ましい。このため、処理対象物を500℃以上1500℃以下に加熱した状態でMg蒸気を処理対象物の表面上に接触させることが好ましい。
【0014】
上述したマグネシウムシリサイドの製造方法においては、Mg蒸気を接触させる工程において、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)からなる群から選択される少なくとも1種以上のガスを含む雰囲気中に処理対象物を載置することが好ましい。たとえばArやHeなどの不活性ガスは、加熱された処理対象物と反応しない。このため、Mg蒸気を接触させて処理対象物と反応させる工程を行なう雰囲気中にArやHeのガスが含まれていても、これらのガスはMg蒸気と処理対象物中のSiとの反応を阻害しない。したがって、ArやHeのガスを蒸気雰囲気中に含ませておけば、これらのガスは、たとえばMgの蒸気を処理対象物の載置される周辺の空間領域へと導くために流通するガスとして用いることができる。
【0015】
上述したマグネシウムシリサイドの製造方法においては、Mg蒸気を接触させる工程において、真空中に処理対象物を載置してもよい。真空中には、Mg蒸気と処理対象物中のSiとの反応を阻害するガスが含まれていない。したがって真空中においては、Mg蒸気と処理対象物中のSiとの反応をスムーズに行なうことができる。
【0016】
上述したマグネシウムシリサイドの製造方法においては、Mg蒸気を接触させる工程において、Mgを含む材料を加熱することにより、Mg蒸気を供給することが好ましい。上述したように、マグネシウムシリサイドを形成する反応を起こす際には、Siを主成分とする処理対象物を加熱し、MgとSiとの反応を促進することが好ましい。しかしここで、Mg蒸気を供給する材料を加熱することがより好ましい。このようにすれば、たとえばMgを含む固体材料や液体材料が加熱により蒸気となるため、Mg蒸気を多量に生成することができる。また、Mg蒸気を加熱すれば、Mg蒸気の有する蒸気圧を高くすることができる。このため当該蒸気圧を利用して、Mg蒸気が処理対象物の内部に浸漬する反応をより促進することができる。したがって、以上の加熱を行なえば、処理対象物中のSiと、Mg蒸気との反応をよりスムーズにし、マグネシウムシリサイドの形成をよりスムーズにすることができる。
【0017】
以上に述べたマグネシウムシリサイドの製造方法を用いて形成されたマグネシウムシリサイドは、Mg蒸気とSiとの反応により発生するものであるため、Mg以外の不純物である金属原料の含有する割合が少ない、高純度なものとなる。当該マグネシウムシリサイドは粉末形状であってもよいし、基板の表面上に形成される薄膜形状であってもよい。
【0018】
上述したマグネシウムシリサイドは、たとえば上述した環境調和型の熱電素子を構成する熱電変換半導体として用いることができる。あるいは上述したマグネシウムシリサイドは、たとえば2次電池の電極部材(特に負極)を構成する材料として用いることができる。本発明に係るマグネシウムシリサイドは高純度であるため、これを用いた電極部材や熱電素子の性能をより高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のマグネシウムシリサイドの製造方法によれば、高純度なマグネシウムシリサイドを高効率に提供することができる。また、当該マグネシウムシリサイドを用いた電極部材や熱電素子などの性能をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係るマグネシウムシリサイドの製造方法における各工程を説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態1における、図1の工程(S20)の具体的な態様を示す概略断面図である。
【図3】図2の処理を行なうことにより形成される、薄膜形状のマグネシウムシリサイドの態様を示す概略断面図である。
【図4】本発明の実施の形態2の変形例における、図1の工程(S20)の具体的な態様を示す概略断面図である。
【図5】図4のSi粉末とSUS基板との境界近傍の領域の断面を概略的に示す拡大図である。
【図6】図4のSi粉末が焼結されたマグネシウムシリサイドとSUS基板との境界近傍の領域の断面を概略的に示す拡大図である。
【図7】本発明の実施の形態2の更なる変形例における、SUS基板のうちSi粉末を供給する表面の態様を示す上面図である。
【図8】図7の線分VIII−VIIIにおける断面と、当該SUS基板上にSi粉末が供給された態様を示す概略断面図である。
【図9】図8のSi粉末が焼結されたマグネシウムシリサイドとSUS基板との境界近傍の領域の態様を示す概略断面図である。
【図10】本発明の実施の形態3における、図1の工程(S10)の具体的な態様を示す概略断面図である。
【図11】図10のSi薄膜が焼結されることにより、マグネシウムシリサイドの薄膜がSUS基板上に形成された態様を示す概略断面図である。
【図12】本発明の実施の形態4に係るマグネシウムシリサイドの製造方法における各工程を説明するためのフローチャートである。
【図13】形成されたマグネシウムシリサイドに対するX線回折の結果を示すグラフである。
【図14】本発明に係るマグネシウムシリサイドを用いて形成された、マグネシウムイオン2次電池の電極の態様を説明するための概略断面図である。
【図15】図14の負極と集電体とが接着された領域の態様を示す概略図である。
【図16】本発明に係るマグネシウムシリサイドを用いて形成された、熱電変換モジュールの外観を示す概略斜視図である。
【図17】図16の線分XVII−XVIIにおける概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の各実施の形態について説明する。なお、各実施の形態において、同一の機能を果たす要素には同一の参照符号を付し、その説明は、特に必要がなければ繰り返さない。
【0022】
(実施の形態1)
図1のフローチャートに示すように、本発明の実施の形態1に係るマグネシウムシリサイドの製造方法は、処理対象物を準備する工程(S10)と、Mg蒸気を接触させる工程(S20)とを備える。
【0023】
実施の形態1においては、処理対象物中に含まれるSiにMg蒸気を接触させ、処理対象物やMg蒸気の熱を利用して両者を反応させる。このようにして、処理対象物の表面上にマグネシウムシリサイド(MgSi、ただし1≦x≦3)からなる薄膜を形成する。ここで処理対象物としては、たとえばSiを主成分とするバルク状の固体部材を準備することが好ましい。
【0024】
処理対象物としてのバルク状の固体部材の形状は、たとえば直方体に近い平板形状であってもよいし、あるいは円柱形状であってもよい。ここでは、形成しようとするマグネシウムシリサイドの固体部材とほぼ同じ形状を有する処理対象物を準備することが好ましい。たとえばSiからなる処理対象物は、チョクラルスキ法(CZ法)や浮遊帯域融解法(FZ法)などの一般公知の結晶成長法を用いて形成することが好ましい。なお、形成される処理対象物の固体部材の形状を調整するためには、チョクラルスキ法に用いる種結晶や、浮遊帯域融解法に用いる試料棒の形状として、形成したい処理対象物の形状に応じたものを選択することが好ましい。以上の手順にて、たとえばSiを主成分とする(Siからなる)処理対象物の固体部材が形成される。
【0025】
ここで処理対象物の固体部材全体に対するSiの粒子の含有割合(充填密度)が60質量%以下となるように、Siの固体部材を形成することが好ましく、50質量%以下とすることがより好ましい。あるいは当該充填密度を40質量%以下、さらには25質量%以上35質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0026】
後述するように、後の工程において当該Siを主成分とする固体部材を加熱する際に、SiがMgと反応してMgSiを形成することにより、元のSi粒子に対して体積膨張する。すると当該固体部材の内部において大きな熱応力などの内部応力が加わるため、当該固体部材が損壊を起こす可能性がある。これを抑制するため、処理対象物に用いる材料は、反応の主体となるSiを主成分とするものの、Siの含有割合(充填密度)を比較的低くすることが好ましい。このようにすれば、Mgと反応することによりMgSiの粒子へと体積膨張するSiの粒子の割合が少ないため、当該反応後において焼結体全体の体積が大幅に膨張し、内部応力による損壊を起こす可能性を抑制することができる。
【0027】
次にMg蒸気を接触させる工程(S20)が実施される。これは具体的には、工程(S10)にて準備された処理対象物を構成するSiと、Mg蒸気とを接触させることにより、両者を反応させ、処理対象物がMgSi(1≦x≦3)すなわちマグネシウムシリサイドへと変換される工程である。
【0028】
より具体的には、たとえば図2の断面図に示す態様にて工程(S20)の処理が行なわれる。図2に示すカーボン容器1は、加熱することができる部品を内部に備える、加熱処理用の装置である。カーボン容器1の外枠をカーボンを用いて形成することにより、カーボン容器1の内部を加熱した場合の当該容器の耐熱性を高めることができる。
【0029】
その内部には、処理対象物を載置するための試料台3を備えている。また図2には図示されないが試料台3には、試料台3上に載置されたSi平板5を加熱するためのヒータが含まれていることが好ましい。なおここでSi平板5とは、工程(S10)にて準備した、Siを主成分とする処理対象物である。そして試料台3の下部には、加熱によりMg蒸気を発生させるためのMg金属7が配置されている。Mg金属7はMgを主成分とする金属材料であり、Mg金属7中には50質量%以上のMgが含まれることが好ましい。なお、Mg金属7中には90質量%以上のMgが含まれることがさらに好ましい。
【0030】
ただしMgよりも沸点が低い亜鉛(Zn)や水銀(Hg)、カドミウム(Cd)などをMg金属7の不純物として含むと、その不純物が活発に蒸気となる。そのためMgSi中に当該不純物が混入してMgの純度が下がることがある。したがって上述した不純物がMg金属7中に含まれる割合は5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0031】
図2においてはMg金属7は試料台3の下部に配置されている。しかしMg金属7を配置する場所は図2に示す場所に限られず、カーボン容器1の内部の任意の場所とすることができる。
【0032】
図2に示すように工程(S20)の処理を行なう準備ができたところで、Si平板5を加熱する。この加熱は、Si平板5をMgの蒸気と反応させるためのものである。ここでSi平板5の加熱温度は、500℃以上1500℃以下とすることが好ましい。Si平板5の表面近傍、すなわちSi平板5の載置される周辺の空間領域の温度が500℃未満であれば、Mg金属7からSi平板5の表面近傍に供給されるMg蒸気の量が不十分になる可能性がある。またSi平板5の加熱温度が1500℃を超えると、Si平板5の加熱温度がSiの大気圧下における融点よりも高くなるため、Si平板5が溶融して所望の形状を有するマグネシウムシリサイドが形成できなくなることがある。したがってSi平板5の加熱温度は上述した500℃以上1500℃以下とすることが好ましい。
【0033】
ただしSi平板5の表面近傍の領域からSi平板5の表面上もしくはSi平板5の内部に、Mg蒸気を高効率に供給してSiとMgとを高効率に反応させるためには、Si平板5の加熱温度は650℃以上であることがより好ましい。Si平板5の加熱温度が650℃以上であれば、Si平板5の表面近傍に到達したMg蒸気の蒸気圧を高めることができるため、Si平板5の表面上もしくはSi平板5の内部に、Mg蒸気が高効率に供給される。また、たとえばマグネシウムシリサイドの一形態であるMgSiの、大気圧下における融点が1102℃であるため、形成されるマグネシウムシリサイドの形状を安定させる観点から、Si平板5の加熱温度は900℃以下であることがより好ましい。したがってSi平板5の加熱温度を650℃以上900℃以下とすることがより好ましい。
【0034】
またMg蒸気を接触させる工程(S20)においては、Si平板5のみならず、Mg金属7を加熱して気化させることがより好ましい。このようにすれば、Mgの蒸気をより高効率に発生させることができるとともに、Mgの蒸気圧を利用してMgの蒸気をより高効率にSi平板5の方へ供給することができる。
【0035】
Mg金属7の加熱温度や加熱時間により、形成されるMgSiの膜厚を調整することができる。ここで形成するMgSiの厚みは10μm以上5000μm以下であることが好ましい。
【0036】
当該厚みが10μmに満たない場合、形成される薄膜がMgSiの構造体として十分に機能しなくなることがある。また当該厚みが5000μmを超えると、Si平板5の表面近傍のうちMg蒸気と反応する領域が広くなり、SiがMgSiへと体積膨張する領域が広くなる。このため体積膨張によるMgSiの内部応力の増加により、Si平板5が損壊する可能性がある。これはSiがMg蒸気と反応してMgSiを形成する際に、反応した粒子全体の体積が約3.3倍に膨張するためである。このような体積膨張による損壊を抑制するために、上述したようにSi平板5を構成するSiの充填密度の割合が比較的低くなるよう調整する場合においても、形成するマグネシウムシリサイドの厚みが5000μmを超えないようにすることがより好ましい。このようにすればより確実に、形成される組織の損壊を抑制することができる。ただし形成するMgSiにおけるSiの充填密度の割合が非常に低い(たとえば35質量%に満たない)場合は、MgSiの厚みが5000μmを超えてもよい。
【0037】
マグネシウムシリサイドの膜厚を上述した範囲内とするためには、Mg金属7の加熱温度を700℃以上900℃以下にすることが好ましく、Mg金属7やSi平板5の加熱による反応時間を30分以上10時間以下とすることが好ましい。
【0038】
以上に述べた反応によりSi平板5の表面から一定の深さの領域において、SiがMgSiに変化する。具体的には図3に示すように、Si平板5の表面から一定の深さ分の領域に存在するSiが、Mg蒸気11を吸収する。このときSi平板5とMg蒸気11との加熱により反応して、MgSi(1≦x≦3)の結晶からなるMgSi薄膜10が形成される。
【0039】
なお工程(S20)において、Ar、Heからなる群から選択される少なくとも1種以上のガスを含む雰囲気中にSi平板5を載置することが好ましい。つまりカーボン容器1の内部をAr、Heからなる群から選択される少なくとも1種以上のガスを含む雰囲気に満たすことが好ましい。ArとHeとは不活性ガスであるため、カーボン容器1の内部で加熱されても、Si平板5やMg蒸気11などと反応することはない。このためこれらの不活性ガスは、形成されるMgSi薄膜10の内部に不純物を混入させることなく、カーボン容器1の内部に発生するMg蒸気11をSi平板5の表面近傍の領域へ導き、Si平板5の内部へMg蒸気11を吸収させる。このようにして、Si平板5のSi原子とMg蒸気11のMg原子とを高効率に接触させ、これらの各原子の反応を促進する。その結果、高純度なMgSi薄膜10を形成することができる。また上記の不活性ガスの中でも特にArガスは安価であるため、工程のコストを削減することができる。
【0040】
なお、たとえばArガスとHeガスとをカーボン容器1の内部に導入する場合においても、これらのガスの分圧比は高純度なMgSi薄膜10の形成に特に影響を与えない。つまり上記分圧比は任意の値とすることができる。
【0041】
あるいは上述した工程(S20)において、カーボン容器1の内部に上述した不活性ガスなどを導入する代わりに、Si平板5が載置されたカーボン1の内部を真空状態にしてもよい。具体的にはカーボン容器1の内部を1000Pa以下の高真空状態とすることが好ましく、100Pa以下とすることがより好ましい。このように真空状態とすれば、カーボン容器1の内部には、Mg金属7の蒸発により発生するMg蒸気11のほかに気体がほとんど存在しないことになる。したがってMg蒸気11とSiとの反応を妨げる気体が存在しない分だけ、当該反応を高効率に行なうことができる。つまり形成されるMgSi薄膜10の内部における不純物の存在を排除し、高純度なMgSi薄膜10を形成することができる。
【0042】
ただしカーボン容器1の内部を真空状態とするためには、図2や図3に示すカーボン容器1に真空ポンプを接続する必要がある。このため処理を行なう装置の構成が複雑となることがある。したがって当該処理を行なう装置の構成を簡単にするためには、カーボン容器1の内部を大気圧ないしは大気圧に近い圧力とした上で処理を行なうことが可能な構成とすることがより好ましい。
【0043】
以上に述べた処理を行なうことにより、図3に示す、Si平板5の表面から一定の深さの領域に形成されるMgSi薄膜10を高純度のものとすることができる。これはMg蒸気11をSiと反応させることによりMgSi薄膜10を形成させているためである。また上述したようにカーボン容器1の内部には不活性ガスを導入するか、あるいはカーボン容器1の内部を真空状態として処理を行なう。このため、形成されるMgSi薄膜10の純度をより高めることができる。
【0044】
さらに本実施の形態1においては、Mg蒸気11つまり気相を用いてMgSi薄膜10を形成する。このため、たとえば液相中にMgSiの結晶を合成させた場合のように、形成されたMgSiの固相をクリーニングするなどの後処理を行なう必要がない。したがって、必要な工程数を削減し、MgSi薄膜10の製造コストを削減することができる。その結果、MgSi薄膜10をより高効率に形成することができる。
【0045】
以上においては、Si平板5の表面から一定の深さの領域に存在するSi原子を、Mg蒸気11のMg原子と反応させることにより、当該領域にMgSiの結晶を発生させ、MgSi薄膜10を形成するというものである。したがって、たとえば上記の反応を行なう時間を長く設定したり、Mg金属7やSi平板5の加熱温度を調整したりすることにより、Si平板5の内部のほぼ全体の領域にMgSiの結晶を発生させることもできる。この場合、Si平板5のバルクがMgSiのバルクに変化することになる。つまり本実施の形態1においては、MgSi薄膜10のみならず、MgSiのバルクを形成することもできる。これはMgSi薄膜10の厚みを、Si平板5の厚みに限りなく近づけた結果形成される構造物であるといえる。
【0046】
たとえばSi平板5の内部の全体に存在するSi原子をMg蒸気11のMg原子と反応させ、MgSiの結晶を形成する場合、最終的にはSi平板5と同様の形状の、MgSiの結晶の構造物が形成されることになる。したがって処理対象物のほぼ全体を反応させてMgSiの結晶の構造物を構成する場合には、工程(S10)において準備する処理対象物の形状を、形成させたいMgSiの結晶の形状とほぼ同一とすることが好ましい。
【0047】
ただし上述したように、本実施の形態1の製造方法において形成されるMgSi薄膜10を厚くしすぎると、反応時の体積膨張によりSi平板5が損壊を起こす可能性がある。これを抑制しつつ、Si平板5の内部のより広い(厚い)領域をMgSiの結晶とする反応を起こさせるためには、上述したようにたとえば工程(S10)にて準備する処理対象物中に含まれるSiの充填密度を、工程(S20)にて最終的に形成されるMgSiの結晶の緻密度を十分なものとすることができる程度に低く(具体的にはたとえば25質量%以上35質量%以下となるように)することが好ましい。
【0048】
(実施の形態2)
上述した本発明の実施の形態1においては、たとえば平板形状を有するSi平板5や、その他円柱形状などの形状を有する、Siを主成分とする処理対象物の構造物をMg蒸気11と反応させることによりMgSi薄膜10などを形成する。しかし本実施の形態2においては、処理対象物として、Siを主成分とする粉末を用いる。この粉末を実施の形態1と同様にMg蒸気11と接触させることにより、SiとMgとを反応させ、MgSiを形成する。したがって実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、図1のフローチャートに示す製造工程に従い、MgSiの薄膜を形成する。
【0049】
つまり実施の形態2では、図2のSi平板5がSiの粉末から構成される構造物に置き換えられている。あるいは図2のSi平板5を粉砕して粉末形状にしたものを、実施の形態2の処理対象物としてもよい。つまり図1の処理対象物を準備する工程(S10)において、たとえば25質量%以上35質量%以下の充填密度のSiを含む当該粉末を準備することが好ましい。
【0050】
あるいは、後工程における焼結時にSiの粉末粒子が高い割合で反応してMgSiへと変換するため、過度に体積膨張することを抑制するために、当該粉末としてSiの粉末粒子のみならずMgSiの粉末粒子を含むものを準備してもよい。つまりここでは、Siの粉末粒子とMgSiの粉末粒子とを併用することになる。MgSiの粉末粒子としては、たとえば本発明の実施の形態に係る製造方法を用いて形成したMgSiの薄膜や構造物を粉砕することにより形成されるものを用いてもよい。
【0051】
このようにすれば、後工程における焼結時にMg蒸気と反応してMgSiを形成し、体積膨張を起こすSiの充填密度をより小さくすることができる。その結果、焼結後にMgSiの焼結体としての十分な緻密度を有し、かつ体積膨張による損壊などの不具合の発生が抑制された高品質のMgSiの薄膜を形成することができる。
【0052】
このことは、特に500μm以上の厚みを有するMgSiの薄膜や、MgSiの構造物を形成する際に有効となる。ここで準備する処理対象物としてのSiを主成分とする粉末中に添加するMgSiの粉末の割合(充填密度)は、工程(S10)にて準備するSiの粉末全体に対して10質量%以上99質量%以下の任意の値とすることができる。上述した重点密度の範囲内で、最終的に形成するMgSiの薄膜(構造物)の大きさに応じて最適な充填密度を選択することができる。
【0053】
このSiを主成分とする粉末は、所望の形状に加工することが容易である。具体的には、たとえば当該粉末を成形型の内部に投入し、プレス加工を行なうことにより、所望の形状を有する粉末の構造物に加工することができる。あるいは当該粉末にバインダ等を加えて粘土状にした状態で、成形型の内部に注ぎ込んで乾燥し、成形するスリップキャスト成形法を用いてもよい。さらに成形型の内部にSiを主成分とする粉末を流し込み、機械振動等を利用してSiの充填率を高める方法であるタッピング法を用いて、当該粉末を所望の形状に加工してもよい。上記のいずれの方法を用いても、粉末からなる処理対象物としての構造物を、高い形状精度となるよう加工することができる。
【0054】
そして実施の形態1と同様にMg蒸気を接触させる工程(S20)を行ない、ここでSiの粉末がMgSiの結晶に変換される。具体的には、実施の形態1と同様に工程(S20)においてはSiの粉末(図2におけるSi平板5に相当)やMg金属7が加熱される際にMg金属7の気化により発生するMg蒸気11が、Siの粉末の表面や内部に接触する。つまりMg原子がSiの粉末を構成するSi粒子の集合体の内部に浸漬する。このときの加熱によりSiとMgとが反応して、Siの粉末がMgSiの結晶に変換される。
【0055】
このときの加熱により、Siの粉末は体積が膨張する。このためSiの粉末を構成するSi粒子同士がより緻密に結合する。したがってSiの粉末は焼結され、1つの連続した組織としての緻密な焼結体が形成される。この焼結体はSiの粉末が焼結されることによる構造物であり、当該構造物中にはMg蒸気11中のMg原子が含まれる。したがってMgとSiとが反応することにより発生するMgSiの結晶からなる構造物とすることができる。
【0056】
この場合、Siの粉末のほぼ全体に存在するSi原子が、Mg原子と反応してMgSiに変換される。したがってSiの粉末を焼結する直前の、たとえばプレス加工により形成された構造物形状とほぼ同一の形状を有する、MgSiの結晶からなる構造物が形成される。したがって処理対象物のほぼ全体を反応させてMgSiの結晶の構造物を構成する場合には、工程(S10)において準備する処理対象物の形状を、形成させたいMgSiの構造物の形状とほぼ同一とすることが好ましい。つまりSiの粉末を加工する形状次第で、形成するMgSiの構造物を任意の形状とすることができる。
【0057】
また加熱時の焼結により形成される構造物(焼結体)は、Si粒子やMg粒子同士が強固に結合された緻密な組織となっている。このため、形成されるMgSiの構造物は、導電性に優れ、かつ組織内部の空隙が少ないものとなる。したがって当該MgSiの構造物をたとえば電極材料に用いることができる。
【0058】
実施の形態2においては、以上のようにSiの粉末からなる構造物をそのままMgSiの焼結体からなる構造物となるように加工がなされてもよい。しかし実施の形態2においては、一の変形例として、Siの粉末を他の所望の材質の構造物、たとえばSUSの構造物の表面上に塗布したものを用いた加工がなされてもよい。
【0059】
図4に示すカーボン容器1の内部の態様は、図2に示すカーボン容器1の内部の態様と、大筋において同様である。しかし図4においては、Si平板5の代わりに、SUS基板6の一の表面上に一定の厚みとなるようにSi粉末8が塗布されたものが載置されている。SUS基板6はSUS304やSUS316などのステンレス鋼からなる、たとえば直方体形状を有する構造物である。図4においてはこのSUS基板6の上側の表面上に、Siを主成分とする粉末粒子の集合物であるSi粉末8が塗布されている。Si粉末8を塗布する方法は、一般公知の任意の方法を用いることができる。たとえばSiを主成分とする粉末粒子にバインダ等を加えてペースト状にしたものを、SUS基板6の一の表面上にほぼ均一の厚みとなるように塗布してもよい。あるいはSiの粉末粒子をスプレーしたものをSUS基板6の一の表面上に、ほぼ均一の厚みとなるように供給してもよい。
【0060】
図1の処理対象物を準備する工程(S10)において図4のSUS基板6上にSi粉末8が塗布されたものを準備した状態で、図1のMg蒸気を接触させる工程(S20)において、上述した各形態における工程(S20)と同様に加熱によるMg蒸気11(図3参照)とSiとの反応がなされ、MgSiが形成される。つまりここではSi粉末8が図1のSi平板5に相当すると考え、Si粉末8を加熱する。このときMg金属7も加熱してMg蒸気11を供給する。このMg蒸気11中のMg原子をSi粉末8の表面や内部に浸漬させれば、Si粉末8などの加熱により、SiとMgとが反応して、Si粉末8がMgSiの結晶となる。同時にSi粉末8を構成するSiなどの粉末粒子同士が焼結により結合され、一体の構造物としてのMgSiの結晶が形成される。
【0061】
なおここで、図5に示すように、工程(S10)においてSi粉末8を準備する際に、たとえばSUS基板6のうち、塗布されるSi粉末8との境界面6a上に、凹形状6bや凸形状6cが複数存在していてもよい。このようになっていれば、工程(S20)においてSi粉末8中のSiとMg蒸気11(図3参照)中のMgとが接触して反応する際に、結合されたSi原子とMg原子や、焼結により結合されたSi粉末粒子同士などが、凹形状6bの窪んだ形状の領域の内部に入り込んだり、凸形状6cの凸部分の側面近傍の領域に入り込んだりする。すると入り込んだ部分においてはアンカー効果により、Si粉末8とSUS基板6との境界面6aにおける、Si原子とMg原子とが結合されたものや、Si粉末粒子同士の結合されたものが、SUS基板6と強固に接着される。したがって図6に示すように、Si粉末8が焼結、反応することにより形成されるMgSi薄膜20は、境界面6aにおけるSUS基板6との接合強度を高くすることができる。
【0062】
同様に、実施の形態2の更なる変形例として、たとえば図7に示すように、SUS基板6のSi粉末8が供給される表面(図5、6における境界面6a)が全領域においてほぼ平面となっておらず、格子凸形状6dおよび格子凸形状6eを複数備える構成となっていてもよい。これらは互いに格子形状を形成する、凸状に隆起した領域である。この場合においても、図8の断面図から、たとえば格子凸形状6eの側面近傍の領域に、結合された粒子や原子などが入り込み、アンカー効果により強固にSUS基板6と接合される。つまり図9に示すように、図8のSi粉末8が焼結、反応することにより形成されるMgSi薄膜20の、SUS基板6との接合強度をより高くすることができる。
【0063】
なお図7から図9においては、SUS基板6の一の表面のベースとなる平面に対して凸形状を有する格子凸形状6dおよび格子凸形状6eを備える構成としている。しかしこれらは、SUS基板6の一の表面のベースとなる平面に対して凹形状を有する格子状の凹形状であってもよい。あるいは一の表面上に、複数の格子凸形状と格子凹形状とが混在していてもよい。
【0064】
また図6および図9においては、Si粉末8のほぼ全体をMgSi薄膜20の焼結体に反応させた態様を示している。しかしたとえば図4のSi粉末8のうち上側の表面に近い領域のみ、Mg蒸気を浸漬させてMgSiの結晶を形成させ、上側の表面から遠い(SUS基板6に近い)領域についてはSi原子を反応させずに焼結のみさせることにより、より薄いMgSi薄膜20を形成させてもよい。
【0065】
図4〜図9に示す、実施の形態2の各変形例を用いれば、実施の形態1と同様に、高純度のMgSi薄膜20(図6、図9参照)を高効率に形成することができる。このMgSi薄膜20は、焼結時の体積膨張により緻密な焼結体となっている。つまりMgSi薄膜20の内部組織は、空隙の少ないものとなっている。したがって、たとえば上述したように当該MgSi薄膜20をSUS基板6の表面上に形成すれば、SUS基板6の表面の防食膜(腐食を抑制する膜)として利用することができる。
【0066】
本発明の実施の形態2は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態2について、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、全て本発明の実施の形態1に順ずる。
【0067】
(実施の形態3)
上述した本発明の実施の形態2においては、SUS基板6の一の表面上に塗布されたSi粉末8を処理対象物として、SiにMg蒸気を接触させて反応させている。しかし本実施の形態3においては、処理対象物として、SUS基板の一の表面上に成膜したSi薄膜を用いる。このSi薄膜を実施の形態1や2と同様にMg蒸気11と接触させることにより、SiとMgとを反応させ、MgSiを形成する。この場合、特にSi薄膜の膜厚が薄ければ、同様に薄いMgSiの薄膜を形成することができる。
【0068】
実施の形態3においても、実施の形態1や2と同様に、図1のフローチャートに示す製造工程に従い、MgSiの薄膜を形成する。具体的には、処理対象物を準備する工程(S10)において、実施の形態2と同様のSUS基板6の一方の主表面上に、Siを主成分とする、処理対象物として用いる薄膜が形成される。
【0069】
薄膜を形成する方法としては、たとえばスパッタリング、CVD法、PLD法、MBE法などの一般公知の方法を用いることができる。一例としてスパッタリングを用いてSiの薄膜を成膜する場合の態様を図10に示している。
【0070】
スパッタリングは図10に示すスパッタリング装置31を用いて行なうことが好ましい。スパッタリング装置31の内部には、成膜を行なおうとする、たとえば基板などの試料を載置するための試料台32が備えられている。つまり実施の形態3においては、試料台32上にSUS基板6を載置する。
【0071】
スパッタリング装置31の内部の下方に備えられている試料台32に対向するように、つまりスパッタリング装置31の内部の上方にはターゲット基板34が備えられている。そしてターゲット基板34の一の表面、特に試料台32やSUS基板6と対向する表面上にはターゲット材料35の薄膜が形成されている。ターゲット材料35は、スパッタリングにより形成しようとする薄膜とほぼ同一の材料からなることが好ましい。したがってここでは、ターゲット材料35を構成する物質は、Siを主成分とする材料であることが好ましい。
【0072】
試料台32を支持する試料台支持部36と、ターゲット基板34との間に直流の高電圧を加える。このため試料台支持部36とターゲット基板34とは導電性に優れた金属材料により形成されており、両者間に直流電圧を印加することが可能な構成となっていることが好ましい。このとき同時に真空ポンプ37を用いてスパッタリング装置31の内部を真空状態にしながら、Arガス供給源38からスパッタリング装置31の内部にArガスを供給する。スパッタリング装置31の内部の空間に上記の高電圧が印加された状態でArガスが供給されるため、Ar原子がイオン化される。Arイオンがターゲット材料35の表面上に衝突することにより、ターゲット材料35からターゲット物質であるSiの粒子などが弾き飛ばされる。弾き飛ばされたターゲット物質が、ターゲット材料35に対向するように配置されたSUS基板6の表面上に付着し、堆積する。このようにして図10に示すように、ターゲット物質であるSiを主成分とする物質がSUS基板6の表面上にSi薄膜9が形成される。
【0073】
以上のように成膜されたSi薄膜9を処理対象物として、Mg蒸気を接触させる工程(S20)が実施される。ここでは図4におけるSi粉末8がSi薄膜9に置き換えられている。つまりSi薄膜9の表面や内部に存在するSiの粒子を、Mg蒸気11(図3参照)のMgと接触させ、当該MgをSi薄膜9の内部に浸漬させる。このときのSi薄膜9やMg蒸気11の加熱を利用して、Si薄膜9のSiがMgSiとなるように反応させる。このときの加熱などの各条件は、実施の形態1や2に準ずる。このようにすれば、SUS基板6上のSi薄膜9は、図11に示すMgSi薄膜20となる。この場合においても、Mg蒸気11を利用してMgSi薄膜20を形成している。このため、たとえば図4のMg金属7中にAlなどの他の金属材料が含まれていたとしても、上述したように形成されるMgSi薄膜を高純度のものとすることができる。また後工程としてクリーニングなどの処理を行なう必要がないため、高効率に所望のMgSi薄膜20を形成することができる。
【0074】
Si薄膜9は、たとえば上述した処理対象物としてSiを主成分とする平板や粉末を用いる場合のように、必ずしもSi薄膜9中のSiの含有密度が25質量%以上35質量%以下である必要はない。これはSi薄膜9は厚みが薄いため、これを用いて形成するMgSi薄膜20が損壊するなどの不具合を起こす可能性が低いためである。つまり当該Siの含有密度は任意の値とすることができる。
【0075】
本発明の実施の形態3は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態1や2と異なる。すなわち、本発明の実施の形態3について、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、全て本発明の実施の形態1や2に順ずる。
【0076】
(実施の形態4)
上述した実施の形態1〜3においては、いずれもSiを主成分とする処理対象物中には、Si以外の成分も含まれるものの、当該処理対象物中に酸素原子を含まないことを前提としている。これはSiがMgと反応する際に、酸素原子によりマグネシウムの酸化物(MgO)を発生することを抑制するためである。しかし本実施の形態4においては、処理対象物がSiを主成分とするとともに、処理対象物中に酸素原子が含まれる。
【0077】
実施の形態4においても、実施の形態1〜3と同様に、基本的には図1のフローチャートに示す製造工程に従い、MgSiの薄膜や構造物が形成される。ただし行なうことが好ましい処理の関係上、図12のフローチャートを用いて実施の形態4に係る製造方法を説明することがより好ましい。
【0078】
図12に示すように、まずSiを含有する処理対象物を準備する工程(S11)が実施される。これは図1の処理対象物を準備する工程(S10)と基本的に同様の工程である。しかしたとえばSiを含有するSiO(酸化ケイ素)やシリコーン、水ガラスなどのSiと酸素原子とを含有する材料の粉末や構造物を処理対象物として準備する点において、図1の工程(S10)と異なる。あるいはたとえばシリコーンと水ガラスと、Siの粒子とが混合された材料の粉末や構造物を処理対象物として準備してもよい。
【0079】
次に図12に示すように、Mg蒸気を接触させる工程(S20)が実施される。これは図1のMg蒸気を接触させる工程(S20)と基本的に同様の工程である。ただしここで、処理対象物中に酸素原子が含まれるため、これがMg蒸気のMgと接触して反応すると、MgSiの薄膜や構造物の内部にMgOを発生することがある。MgOが発生すると、たとえば電極として用いるMgSiの導電性が低下したり、SUS基板表面への防食膜として用いるMgSiの薄膜の耐食性が低下することがある。すなわちMgSiの薄膜や構造物の内部にMgOが発生しないことが好ましい。
【0080】
したがって、Mg蒸気を接触させる工程(S20)の際に、図12に示すように処理対象物を還元する工程(S21)が実施されることが好ましい。これは具体的には、処理対象物中に含まれる酸素原子とMg蒸気中のMgとが反応することによりMgOが生成されることを抑制するために、処理対象物を還元する工程である。
【0081】
処理対象物を還元する工程(S21)は、工程(S20)にて生成されるMg蒸気11(図3参照)を工程(S10)で形成した処理対象物の表面近傍に供給する処理と同時に行ない、処理対象物中のSiとMg蒸気中のMgとが反応してMgSiが形成される前に行なうことが好ましい。あるいはMgとOとが反応して生成されたMgOを還元してMgに戻す措置を行なってもよい。なお工程(S21)を行なうためには、たとえば一酸化炭素(CO)、メタン(CH)、カルシウム(Ca)などの還元剤を処理対象物に対して供給することが好ましい。
【0082】
このようにすれば、処理対象物中に酸素原子が含有していても、所望のMgSiの結晶を形成することができる。このため処理対象物として準備する材料の選択肢を広げることができる。
【0083】
本発明の実施の形態4は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態1〜3と異なる。すなわち、本発明の実施の形態4について、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、全て本発明の実施の形態1〜3に順ずる。
【0084】
(参考例)
以上に述べた各実施の形態に係る製造方法は、Mg蒸気を用いたMgSiの結晶の製造方法である。しかしたとえば図4に示すSUS基板6などの一の表面上に、Mgの薄膜とSiの薄膜とを形成した物に対して、熱処理を行ないMgとSiとを反応させてMgSiの薄膜を形成する方法もある。
【0085】
この場合、Mgの薄膜とSiの薄膜を形成する工程において、たとえば上述した図10に示すようなスパッタリング装置31を用いて、SUS基板6上に成膜を行なう。ここでもSiは薄膜であるため、実施の形態3と同様に、形成するSi薄膜中のSiの含有割合は任意の値とすることができる。
【0086】
これらの薄膜が形成されたところで、当該薄膜の温度が400℃以上1000℃以下、特に好ましくは550℃以上650℃以下に加熱され、この加熱温度で10分以上3時間以下の時間保持されることが好ましい。この熱処理によりMgSiの薄膜や構造物が形成される。
【0087】
このように、Mgの蒸気を用いる代わりに、Mgの薄膜とSiの薄膜とを形成することによりMgSiの結晶を形成すれば、Mgの蒸気を用いる場合に比べて低温の熱処理にて、MgとSiとを良好に反応させることができる。
【0088】
またこの場合においても、Mgの薄膜中にたとえばAlなどの不純物としての金属材料が含まれていたとしても、上記の熱処理温度であれば、これらの不純物材料とSiとが反応を起こすことを抑制することができる。その結果、形成されるMgSiの結晶中に不純物が混在することを抑制することができる。
【0089】
なおここでMgの薄膜とSiの薄膜とを形成する順序は任意である。すなわち、たとえばMgの薄膜を先に形成して、形成されたMgの薄膜の上にSiの薄膜を形成してもよい。あるいはSiの薄膜を先に形成して、形成されたSiの薄膜の上にMgの薄膜を形成してもよい。さらに、SUS基板の表面に対して、MgとSiとを同時に供給することにより、MgとSiとの両方を含有する薄膜を一時に形成してもよい。いずれの場合においても、後工程である熱処理によりMg原子とSi原子とを互いに接触させることができる。このためMg原子とSi原子とを反応させてMgSiを形成することができる。
【0090】
上述した薄膜の形成順序のうち、たとえばMgの薄膜を先に、Siの薄膜を後から形成する場合には、当該Mgの薄膜の上に形成されるSiの薄膜が、Mgの薄膜を酸化から保護する。つまりMg原子が酸化されてMgOが形成されることを抑制することができる。このため、熱処理によるMgとSiとの反応を起こさせる前の段階において、たとえばMgが酸化されることを抑制するための措置を行なう必要がなくなる。したがって、熱処理前における当該形成物の管理が容易になる。
【0091】
また、たとえばSiの薄膜を先に、Mgの薄膜を後から形成する場合には、当該Siの薄膜とSUS基板との密着性が良好となるため、結果としてMgSiとSUS基板との密着性が良好になる。このため、熱処理においてSiとMgとをより容易に接触させて反応させることができる。
【0092】
さらに、SiとMgとの両方を含む薄膜を形成する場合には、形成される薄膜中においてMgの原子が拡散する距離を小さくすることができる。これはMgとSiとを同時に成膜しているために、形成される薄膜中におけるMg原子とSi原子との距離が、上記の各薄膜形成順序の場合に比べてさらに短くなるためである。このため、熱処理の温度を低下させ、熱処理を行なう時間を短縮することができる。つまり工程のコストを削減することができる。またSiとMgとの両方を含有するように成膜するため、形成される薄膜中におけるSiの充填密度が実質的に容易に50質量%以下となる。このため熱処理において、当該薄膜中のSiがMgと反応して体積膨張を起こす割合を実質的に低下させ、形成されるMgSiの薄膜(構造物)の異常膨張による損壊などの不具合が発生することを確実に抑制することができる。また、形成されるMgSiの薄膜(構造物)の膨張量が少ないため、当該薄膜の内部における歪みが少なくなり、より結晶性に優れるMgSiの薄膜を形成することができる。薄膜の結晶性が優れていることにより、これを用いた熱電変換素子や電極の性能が向上する、曲げ応力に強くなるなどのメリットがある。
【0093】
以上の各実施の形態や上述した参考例により形成されるMgSiの薄膜は、たとえば図3のMgSi薄膜10、図6のMgSi薄膜20、図9のMgSi薄膜20および図11のMgSi薄膜20である。これらはいずれも、MgとSi以外の元素をほとんど含まない、純度が99.95質量%以上ときわめて高いものとなっている。またこれらのMgSi薄膜はいずれも、薄膜内部における最表面から、これらの基板の、MgSi薄膜が形成された表面に交差する方向に沿って基板(Si平板5またはSUS基板6)に向かうにつれて、Mgの分布が減少する。つまりMgSiの最表面近傍が最もMgの含有割合が高く、最表面から離れるにつれてMgの含有割合が漸次低くなる。これはMgSiが焼結形成される際に、Siの処理対象物の外部(すなわち最表面側)からMg蒸気が供給されるためである。
【0094】
また、たとえば上述した4種類のMgSi薄膜のうち、図3のMgSi薄膜10は、Siを主成分とするSi平板5の表面上に形成されており、その他のMgSi薄膜20はSUS基板6の表面上に形成されている。このためSi平板やSUS基板の表面を保護する防食膜としての役割を有している。またMgSi薄膜は、Mg金属や、Mg基複合材料からなる基板などの防食膜として利用することもできる。
【0095】
これらのMgSi薄膜の相を同定するため、MgSi薄膜に対してX線回折を行なった結果が図13のグラフに示されている。図13のグラフにおいて、横軸はX線の入射を行なった表面に対する、X線の入射角と反射角との和を2θで表わし、縦軸は各入射角のX線に対する回折X線の強度を示す。図13より、2θが約40°のところで、回折強度が最大となっている。この結果を分析することにより、単相のMgSiがMgSi薄膜10、20として形成されていることを確認した。グラフ中の各ピークの横に記載された数字は、当該ピークが観測された結晶面のミラー指数を表わす。
【0096】
以上の各実施の形態にて形成されるMgSi薄膜や、図示されていないが、基板などの表面上に形成された薄膜としてではなく、一定の厚みを有する構造物としてのMgSiのバルクは、導電性や熱電変換効率が優れており、マグネシウムイオン2次電池の電極材料や、熱電素子などに用いられる。
【0097】
たとえば図14および図15は、マグネシウムイオン2次電池の電極部材、特に負極の部材として、本発明の各実施の形態に係るMgSiの構造物を用いた例を示している。なお図14は説明を容易にするための模式図であり、実在する電池を構成する各部材の位置関係を示すものとは異なる。
【0098】
当該マグネシウムイオン2次電池は、具体的な態様によらず、電極として正極101と負極102とを備える。正極101と負極102との間にはセパレータ103が配置されている。また正極101と負極102とのそれぞれは、集電体104と密着するように接着されている。
【0099】
正極101は放電時に電流が、当該マグネシウムイオン2次電池に接続される回路(負荷)側に流れ出す側の電極である。また負極102は放電時に電流が、当該マグネシウムイオン2次電池に接続される回路(負荷)側から流れ込む側の電極である。またセパレータ103は、正極101と負極102とが接触することにより電流の短絡が起こることを抑制するために、正極101と負極102との間に挟まれるように配置された絶縁性の部材である。集電体104は、正極101から負極102へと電流(電子)を流すために、正極101から負極102から端子までの電流(電子)の流路として配置される部材である。たとえば図15に示すように、負極102と集電体104とは物理的に接続されている。このため負極102と集電体104との間で電流を流すことが可能となる。
【0100】
正極101はたとえば硫化モリブデンMo(シェブレル相)などの、還元されやすく(酸化力が強く)、かつ電池容器の内部の電解液により腐食しない材料から形成されることが好ましい。セパレータ103はたとえばポリエチレン、ポリプロピレンなどの絶縁性に優れており、かつ電池容器の内部の電解液により腐食しない材料から形成されることが好ましい。また集電体104はたとえばアルミニウムなどの導電性に優れており、かつ電池容器の内部の電解液により腐食しない材料から形成されることが好ましい。
【0101】
そして負極102としては従来よりたとえばMgが、酸化されやすく(還元力が強く)、かつ電池容器の内部の電解液により腐食しない材料として用いられている。しかし上述したように、負極102としてMgの代わりにMgSiを用いてもよい。このようにすれば、負極102としてMgを用いた場合よりも、MgがOと結合、反応することによりMgOが形成され、負極102の導電性が低下することを抑制することができる。これは負極102中にSi原子が含まれるために、Mgの酸化物が生成することを抑制することができるためである。その結果、負極102の導電性を維持し、起電力の大きいマグネシウムイオン2次電池を提供することができる。
【0102】
次に図16および図17は、本発明に係るMgSiの構造物を熱電素子に用いた例を示している。これは環境調和型の発電用素子であり、その具体的な態様は図16および図17に示すとおりである。具体的には、図16および図17に示す、熱電素子としての熱電変換モジュール50は、絶縁基板51と絶縁基板52とに挟まれた領域において、複数のp型MgSi部材53とn型MgSi部材54とが、絶縁基板51、52の互いに対向する平面に沿う方向に関して交互に並んでいる。互いに隣接する1対のp型MgSi部材53とn型MgSi部材54とを跨ぐように、外部の負荷と接続するための電極55が配置されている。
【0103】
ここで絶縁基板51、52は絶縁性を有するたとえばアルミナ(Al)、窒化アルミ(AlN)、酸化マグネシウム(MgO)、炭化珪素(SiC)で形成され、電極55はたとえば銅(Cu)、銅を主とする合金、銀(Ag)、銀を主とする合金、アルミニウム(Al)、アルミニウムを主とする合金のいずれかの材料で形成されることが好ましい。また隣り合うp型MgSi部材53とn型MgSi部材54とに挟まれた領域は、絶縁性を有するたとえばアルミナ(Al)、窒化アルミ(AlN)、酸化マグネシウム(MgO)、炭化珪素(SiC)により形成され、p型MgSi部材53とn型MgSi部材54とが電気的に短絡することを抑制している。
【0104】
このような状態で、たとえば絶縁基板51を低温に、絶縁基板52を高温に設定する。このようにすれば、各絶縁基板に挟まれた各p型MgSi部材53とn型MgSi部材54は、絶縁基板51側(図17の下側)が比較的低温になり、絶縁基板52側(図17の上側)が比較的高温になる。したがって図17の上下方向に関して、各p型MgSi部材53とn型MgSi部材54の内部で温度勾配が生じる。このため各p型MgSi部材53とMgSi部材54の内部で起電力が生じる。この起電力を電極55から取り出すことにより、電力を外部に供給することができる。
【0105】
MgSiは、上述した温度勾配により起電力を発生するゼーベック効果を有する材質である。このため、上述した熱電変換モジュール50において起電力を発生する部材として用いることができる。
【0106】
なお、図14〜図17に示す電極部材や熱電素子に用いるMgSiについても、薄膜のMgSiと同様に、X線回折を行なえば図13に示す結果を示す。したがって当該MgSiは単相のMgSiであるといえる。
【0107】
今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した各実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、高純度なマグネシウムシリサイドの結晶を高効率に製造する技術として、特に優れている。
【符号の説明】
【0109】
1 カーボン容器、3,32 試料台、5 Si平板、6 SUS基板、6a 境界面、6b 凹形状、6c 凸形状、6d,6e 格子凸形状、7 Mg金属、8 Si粉末、9 Si薄膜、10,20 MgSi薄膜、11 Mg蒸気、31 スパッタリング装置、34 ターゲット基板、35 ターゲット材料、36 試料台支持部、37 真空ポンプ、38 Arガス供給源、50 熱電変換モジュール、51,52 絶縁基板、53 p型MgSi部材、54 n型MgSi部材、55 電極、101 正極、102 負極、103 セパレータ、104 集電体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Siを主成分とする処理対象物を準備する工程と、
前記処理対象物が加熱された状態で、前記処理対象物にMg蒸気を接触させる工程とを備える、マグネシウムシリサイドの製造方法。
【請求項2】
前記Mg蒸気を接触させる工程を行なう際の、前記処理対象物の加熱温度が500℃以上1500℃以下である、請求項1に記載のマグネシウムシリサイドの製造方法。
【請求項3】
前記Mg蒸気を接触させる工程において、Ar、Heからなる群から選択される少なくとも1種以上のガスを含む雰囲気中に前記処理対象物を載置する、請求項1または2に記載のマグネシウムシリサイドの製造方法。
【請求項4】
前記Mg蒸気を接触させる工程において、真空中に前記処理対象物を載置する、請求項1または2に記載のマグネシウムシリサイドの製造方法。
【請求項5】
前記Mg蒸気を接触させる工程において、Mgを含む材料を加熱することにより、前記Mg蒸気を供給する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のマグネシウムシリサイドの製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載のマグネシウムシリサイド。
【請求項7】
粉末形状を有する、請求項6に記載のマグネシウムシリサイド。
【請求項8】
請求項6に記載のマグネシウムシリサイドを含む電極部材。
【請求項9】
請求項6に記載のマグネシウムシリサイドを含む熱電素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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