説明

マグネトロン駆動用電源

【課題】高圧回路での放電などによって生じる半導体スイッチ素子の過電圧から小型な回路構成で半導体スイッチ素子を保護すること。
【解決手段】制御部は前記半導体スイッチ素子8を駆動する駆動回路部13とオンオフのタイミングを制御するスイッチング制御部12と過電圧保護部14を有し、過電圧保護部14は半導体スイッチ素子8に所定以上の電圧が印加すると駆動回路部13にオン信号を伝達する構成とした。これにより、過電圧検出時に駆動回路13によって半導体スイッチ素子8にオン信号を伝達することで過電圧の発生を吸収し、確実に半導体スイッチ素子8であるIGBTを過電圧による損傷から保護することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジなどのマグネトロンを負荷とするマグネトロン駆動用電源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のマグネトロン駆動用電源について図面を用いて説明する。図**は主に日本国内で販売されている所謂インバータ式電子レンジに搭載されている従来のマグネトロン駆動用電源の回路図である。
【0003】
従来のマグネトロン駆動用電源は交流である商用電源1を一旦ダイオードブリッジ2で直流電圧に変換し9、の直流電圧を半導体スイッチ素子5のオンオフによってインバータ回路は高圧トランス6の1次巻線に高周波電圧を発生し、高圧トランス6は2次巻線に高周波高電圧を励起する。
【0004】
この高周波高電圧は高圧整流回路8によって直流高電圧に整流され、マグネトロン9に印加される。マグネトロン9はこの直流高電圧で駆動され、2.45GHzの電波を発生する。
【0005】
半導体スイッチ素子5には一般的にIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が使用され、この素子を数10kHzの高周波でスイッチング動作させることで高圧トランス6に高周波電圧を発生している。
【0006】
マグネトロン9を駆動するためには高圧整流回路8は4kV以上の高電圧を出力しなければならないが、このような高電圧を発生すると放電現象が起こりやすくなる。これに対しては絶縁距離を十分に確保するとともに高電圧が印加される部分には異物が混入しにくいように設計するとともに異物が混入し放電が起こってしまっても、この異常を検知して回路動作を停止するよう制御される。
【0007】
また、IGBTを上記のような負荷異常や誘導雷のような電源電圧異常によって発生する異常電圧から保護するためにIGBTの保護素子としてバリスタなどによって過電圧を吸収する方法をとることや、IGBTの耐電圧を発生する異常電圧以上に設計することで電圧破壊を回避することが広く知られている。
【0008】
また、IGBTの耐圧保護にバリスタを用いず、過電圧発生時にIGBTを強制的に導通状態にすることでIGBTを過電圧から保護する方法が特許文献1に示されている。この特許文献1に開示されている方法ではIGBTのコレクタ−ゲート端子間に強制転流回路を設け、過電圧発生時に前記強制転流回路によって過電圧をクリップする構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−135076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の構成では、下記説明のように、IGBTが過電圧印加によって破損することを防止しつつ、小型化を図ることは難しいという課題を有していた。
【0011】
たとえば、IGBTが異常時に発生する過電圧にたいしても十分な耐電圧を有するように使用するIGBTを設計する場合、IGBTで生じる損失が大きなものとなってしまいその冷却のために大きなヒートシンクを必要としてしまう。
【0012】
これは耐電圧を高くすると導通損失に影響するオン時の飽和電圧Vce(sat)が高くなり、また、同時に電流を遮断する際に生じるテール電流や電流を遮断するスピードである降下時間tfが大きくなるなどIGBTでの発生損失を決定する素子の性能が耐電圧を高くすると悪化することに起因する。
【0013】
また、バリスタを挿入する場合、正常時にはバリスタに電流を流さず異常電圧が発生したときに確実にそのエネルギーをバリスタで吸収させ、吸収したエネルギーでバリスタが破壊しないように設計するためには吸収電力が十分大きな(形状が大きな)バリスタを選定する必要がある。
【0014】
一方、特許文献1に開示された強制転流によって過電圧を吸収させる方法ではIGBTのコレクタ−ゲート間にツェナダイオードを挿入しこのツェナダイオードが導通することでIGBTを強制転流させる。
【0015】
IGBTは数10kHzの高周波でスイッチング動作をするのでIGBTのスイッチングを高速に行わせるために駆動回路の抵抗成分はできるだけ低くすることが望ましいが、駆動回路の抵抗分を低くするとツェナダイオードを導通させてIGBTを強制転流させるために必要な電流がおおきくなる。このためツェナダイオードがこの電流に対して破損しないように大型の素子が必要になる。
【0016】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、過電圧が発生するとIGBTを強制的に導通状態にしてIGBTを過電圧による破壊から保護するIGBT保護回路を制御信号レベルで実現するとで、小型の回路素子で保護回路を構成できるので、IGBTが過電圧によって破壊することを防止しつつ、回路の小型化を実現できるマグネトロン駆動用電源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記従来の課題を解決するために、本発明のマグネトロン駆動用電源は、半導体スイッチ素子と高圧トランスを有する共振回路と高圧整流回路を有し、前記半導体スイッチ素子のオンオフにより、マグネトロンに電力供給するインバータ回路と、半導体スイッチ素子のオンオフを制御する制御部を備え、前記制御部は前記半導体スイッチ素子を駆動する駆動回路部とオンオフのタイミングを制御するスイッチング制御部と過電圧保護部を有し、前記過電圧保護部は前記半導体スイッチ素子に所定以上の電圧が印加すると前記駆動部にオン信号を伝達する構成としたものである。
【0018】
これによって、マグネトロンを駆動するための高圧回路での放電現象や、誘導雷などによって発生する半導体スイッチ素子への過電圧印加を過電圧保護回路によって吸収でき、また、過電圧保護回路を制御信号レベルの小信号素子で構成できるため、過電圧保護回路の小型を実現しつつ半導体スイッチ素子であるIGBTの過電圧による損傷を確実に回避させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のマグネトロン駆動用電源は、過電圧検出時に駆動回路によって半導体スイッチ素子にオン信号を伝達することで過電圧の発生を吸収し、確実に半導体スイッチ素子であるIGBTを過電圧による損傷から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1におけるマグネトロン駆動用電源のブロック構成図
【図2】本発明の実施の形態1における定常時の動作波形図
【図3】本発明の実施の形態1における過電圧保護時の動作波形図
【図4】本発明の実施の形態2におけるマグネトロン駆動用電源のブロック構成図
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1の発明は、半導体スイッチ素子と高圧トランスを有する共振回路と高圧整流回路を有し、前記半導体スイッチ素子のオンオフにより、マグネトロンに電力供給するインバータ回路と、半導体スイッチ素子のオンオフを制御する制御部を備え、前記制御部は前記半導体スイッチ素子を駆動する駆動回路部とオンオフのタイミングを制御するスイッチング制御部と過電圧保護部を有し、前記過電圧保護部は前記半導体スイッチ素子に所定以上の電圧が印加すると前記駆動部にオン信号を伝達する構成としたものである。
【0022】
これにより、半導体スイッチ素子に所定値以上の過電圧が印加すると過電圧保護部が半導体スイッチ素子を強制的にオン状態にするため発生しようとする過電圧を吸収し、半導体スイッチ素子に過電圧が印加することを防止できる。このため半導体スイッチ素子を過電圧による損傷から保護することができる。
【0023】
第2の発明は、過電圧保護部は半導体スイッチ素子に印加する電圧を検出する抵抗器で構成された分圧器とツェナダイオードとNPNトランジスタよって構成し、前記分圧器によって分圧された電圧がツェナダイオードのツェナ電圧を超えると前記NPNトランジスタをオンさせることによって駆動回路部にオン信号を伝達する構成としたものである。
【0024】
これにより、過電圧の検出を制御信号レベルで行うことができ、過電圧保護回路の小型化が可能となる。
【0025】
第3の発明は、過電圧保護部を構成するツェナダイオードとNPNトランジスタは前記ツェナダイオードのツェナ電圧と前記NPNトランジスタのベースエミッタ間電圧の温度依存性が互いに打ち消しあうよう構成したものである。
【0026】
これにより、ツェナダイオードの温度特性とNPNトランジスタの温度特性が互いに打ち消しあうように働くため、インバータ回路の雰囲気温度が変動した場合でも素子の保護回路の温度特性を安定させることができ、常に安定して半導体スイッチ素子を過電圧印加から保護することができる。
【0027】
第4の発明は、過電圧保護部を構成するツェナダイオードのツェナ電圧は6V以上となるように構成したものである。
【0028】
これにより、ツェナダイオードの温度特性とNPNトランジスタの温度特性が互いに打ち消しあうように働くため、インバータ回路の雰囲気温度が変動した場合でも素子の保護回路の温度特性を安定させることができ、常に安定して半導体スイッチ素子を過電圧印加から保護することができる。
【0029】
第5の発明は、制御部に半導体スイッチ素子の印加電圧を検出する電圧検出部を設け、過電圧保護部によって制限される電圧よりも低い所定の電圧でインバータ回路への過電圧印加を判定し、インバータ回路のスイッチング動作を停止する構成としたものである。
【0030】
これにより、過電圧が発生する動作条件が継続することなくインバータ回路を停止する
ことができるので過電圧保護動作によって発生する半導体スイッチ素子の発熱を小さく抑えることができる。
【0031】
第6の発明は、制御部に半導体スイッチ素子の印加電圧を検出する電圧検出部を設け、過電圧保護部によって制限される電圧よりも低い所定の電圧でインバータ回路への過電圧印加を判定し、インバータ回路のスイッチング動作を一旦停止し、所定時間が経過すると再起動する構成としたものである。
【0032】
これにより、過電圧が発生する動作条件が継続することなくインバータ回路を停止することができるので過電圧保護動作によって発生する半導体スイッチ素子の発熱を小さく抑えることができる。
【0033】
第7の発明は、電圧検出部によって検出されるインバータ回路への過電圧印加が所定時間内に所定回数に達するとインバータ回路はラッチ停止して再起動しない構成としたものである。
【0034】
これにより、過電圧が発生する動作条件が継続することなくインバータ回路を停止することができるので過電圧保護動作によって発生する半導体スイッチ素子の発熱を小さく抑えることができる。
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0036】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるマグネトロン駆動用電源のブロック構成図である。図1において、インバータ回路1は商用電源2から得られる交流電圧をダイオードブリッジ3によっていったん単方向電圧に整流し、チョークコイル4、平滑コンデンサ5で構成される平滑回路で平滑している。
【0037】
この平滑回路は商用電源の周波数である60Hzあるいは50Hzに対しては電圧を維持し平滑する能力は持たず、インバータ回路1のスイッチング周波数に対して直流電圧を保持できる程度の平滑能力として回路の小型化を果たしている。
【0038】
また、共振コンデンサ6と高圧トランス7で構成される共振回路を半導体スイッチ素子8のオンオフによって励振することで高圧トランス7の2次側に高周波高電圧を誘起する。高圧整流回路9はこの高周波高電圧を整流しマグネトロン10に直流高電圧を供給し、マグネトロン10はこの直流高電圧によって2450MHzのマイクロ波を発生するように構成されている。
【0039】
また、制御回路部11は半導体スイッチ素子8のオンオフのタイミングを制御するスイッチング制御部12と半導体スイッチ素子8を駆動する駆動回路部13を有しており、駆動回路部13はスイッチング制御部12の出力するパルス列に基づいて半導体スイッチ素子8をオンオフする。
【0040】
過電圧保護部14は半導体スイッチ素子8に印加する電圧を検出する抵抗器で構成された分圧器とツェナダイオード、NPNトランジスタから構成されており、半導体スイッチ素子8に所定値以上の過電圧が印加すると駆動回路部13が半導体スイッチ素子8をオンさせるように信号を伝達するよう構成している。
【0041】
以上のように構成されたマグネトロン駆動用電源について、以下その詳細な動作、作用
を説明する。
【0042】
図2はインバータ回路1が正常な状態での半導体スイッチ素子8に印加される電圧および通過電流を示した図である。説明を簡単にするために半導体スイッチ素子8がオンしている状態から説明を進める。
【0043】
図2において時刻T0から半導体スイッチ素子8がオン状態になると半導体スイッチ素子8を流れる電流I8は時間とともに三角波状に増加する。この傾きは平滑コンデンサ5にかかっている電圧V5と高圧トランス7の1次巻線のインダクタンスによって一意に求まるものである。
【0044】
そして所定時間が経過した時刻T1において駆動回路13の出力信号をLoレベルにすることで半導体スイッチ素子8をオフさせると、高圧トランス7と共振コンデンサ6によって共振回路が形成され、半導体スイッチ素子8にかかる電圧は、図中V8のように略正弦波状に増加し、共振電圧の最大値を超えると再び降下を始める。
【0045】
時刻T2において半導体スイッチ素子8にかかる電圧が略零になると半導体スイッチ素子8の逆導通ダイオードが点弧する。この逆導通ダイオードが点弧している期間(T2〜T3の間)にスイッチング制御部12は駆動回路部13にオン信号を送信することで、逆導通ダイオードの電流が零となった瞬間(時刻T3)から再び半導体スイッチ素子8の電流は三角波状に増加し始める。
【0046】
このようなスイッチング動作を繰り返すことでインバータ回路1は安定的にマグネトロン10に電力を供給することができる。
【0047】
また、半導体スイッチ素子8にかかる電圧V8と通過電流の最大値I8pの間には(数1)に示す関係が略成立する。
【0048】
【数1】

【0049】
ところでマグネトロン10はその動作にために約4kV程度の高電圧を供給する必要がある。このため高圧整流回路9において何らかの要因で放電が発生することを完全に回避することは非常に難しい。
【0050】
高圧整流回路9を含む高電圧回路で放電現象が生じるとインバータ回路1のスイッチング動作に大きな影響を及ぼす。高電圧回路で放電現象を生じてしまうと高圧トランスの1次側から見た1次巻線のインダクタンス値が著しく低下した状態と等価な回路動作となる。ここで半導体スイッチ素子8にかかる電圧を式(1)から解くと(数2)の関係を導くことができる。
【0051】
【数2】

【0052】
前述のように高圧回路において放電現象が生じ高圧トランス7の1次巻線のインダクタンス値が低下した場合、(式2)によると半導体スイッチ素子8にかかる電圧V8が上昇することが導き出せる。たとえば1次巻線のインダクタンスが1/2に低下した場合だと発生する電圧は√2倍にまで上昇することになる。
【0053】
本実施の形態のマグネトロン駆動用電源では過電圧保護部14がこの過電圧を検出すると駆動回路部13に半導体スイッチ素子8がオンする信号を伝送し、過電圧の発生を防止するように働き、半導体スイッチ素子8への過電圧印加を防止する。
【0054】
次にこの動作について図面を用いて説明する。図3は半導体スイッチ素子に過電圧が印加する動作モードとなったときの動作波形図であり、具体的には時刻T4において高圧回路での放電現象が生じた動作モードを想定している。
【0055】
時刻T4までは上述した定常的な動作を継続しているが、T4において高圧回路での放電現象が生じると1次巻線のインダクタンス値が見かけ上小さくなるため半導体スイッチ素子8を流れる電流の傾きが急になり、同じオン時間で制御していても遮断時の電流値は定常時と比較すると大きくなる。
【0056】
また、半導体スイッチ素子8にかかる共振電圧は(式2)から推測されるように定常状態の電圧よりも高い電圧がかかろうとする。この共振電圧がVCLPに到達すると過電圧保護部14を形成しているツェナダイオード141が点弧しNPNトランジスタ142をオンさせる。
【0057】
これによって駆動回路部13を構成するNPNトランジスタ131のベース電圧をLoレベルに引き落としNPNトランジスタ131のコレクタ電圧がHiレベルに引き上げられる。この結果NPNトランジスタ132とPNPトランジスタ133で構成されるプッシュプル出力段の出力はHiレベルとなり半導体スイッチ素子8を導通状態へと遷移させようとする。
【0058】
半導体スイッチ素子8が導通状態に遷移して電流を流し始めると、共振電圧はそれ以上上昇しないように押さえ込まれる。このとき半導体スイッチ素子8は完全な導通状態になるわけではなく、過電圧保護部14の設定電圧で共振電圧をクリップするように半導通の状態で自動的にフィードバック制御がかかることになる。
【0059】
一般的にマグネトロン駆動用電源に用いる半導体スイッチ素子8にはオン時の飽和電圧が低く、かつ高速スイッチング動作に適したIGBTが用いられている。
【0060】
IGBTは素子構造上耐圧を高くすると飽和電圧が高くなり、また同時にスイッチング
スピードが遅くなるという弱点を持っており、この特性が悪化するとIGBTでの損失が大きくなるため、電源の変換効率が低下したり、損失を放熱するための放熱器が大型化したりするなどの弊害を生じることになる。
【0061】
本実施の形態のマグネトロン駆動電源であればIGBTの耐圧は必要最小限で設計することが可能となるので、高い変化効率を維持し、IGBTの放熱も容易となる。また、本実施の形態の過電圧保護部14は過電圧の検出は分圧器によって制御信号レベルまで信号の振幅を減衰させて検出する構成となっている。
【0062】
このため電圧保護部を構成するツェナダイオード141やNPNトランジスタ142にも小型の素子を利用することが可能であり、回路の規模を非常に小さく構成することが可能である。
【0063】
また、ツェナダイオードのツェナ電圧の温度依存性は一般的に5V近辺で温度依存性が無くそれ以上の領域で温度上昇に対して正の特性、以下の領域で負の特性となることが知られている。
【0064】
一方、NPNトランジスタのベースエミッタ間電圧の温度依存性は負の特性であるので、ツェナダイオード141のツェナ特性を6V以上でNPNトランジスタのベースエミッタ間電圧の温度依存性と打ち消しあうように設定することで、周囲温度が変動しても安定した過電圧保護動作を実現することができる。
【0065】
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2のマグネトロン駆動電源を示すブロック構成図である。前述の実施の形態と異なる点は半導体スイッチ素子8の印加電圧を検出する電圧検出部15を設け、その検出信号によってスイッチング制御部12の動作停止をするようにしている点である。
【0066】
電圧検出部15は過電圧保護部14が保護動作をする電圧レベルよりも低い電圧レベルで半導体スイッチング素子8への過電圧印加を判定するようになっており、過電圧印加を判定するとスイッチング制御部12の動作を停止することで継続的に半導体スイッチ素子8に過電圧が印加し続けることを防止している。
【0067】
このように構成することで半導体スイッチ素子8に過電圧が印加し続けることがなくなるので半導体スイッチ素子8を確実に保護することが可能となる。
【0068】
また、スイッチング制御部12はある所定時間後に再起動し、高圧回路での放電などの異常状態が解除されていればその後は定常動作を継続することができるように構成してもよいし、定められた時間内に所定回過電圧を検出すると発振動作を完全に停止するように構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上のように、本発明にかかるマグネトロン駆動用電源はインバータ回路の半導体スイッチ素子を過電圧による損傷から保護する過電圧保護回路を有し、インバータ回路を過電圧発生による損傷を防止するマグネトロン駆動電源を提供できるので、電子レンジで代表されるような誘電加熱を利用した加熱装置や生ゴミ処理機、あるいは半導体製造装置であるプラズマ電源のマイクロ波電源などの用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 インバータ回路
7 高圧トランス
8 半導体スイッチ素子
9 高圧整流回路
10 マグネトロン
11 制御部
12 スイッチング制御部
13 駆動回路部
14 過電圧保護部
15 電圧検出部
141 ツェナダイオード
142 NPNトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体スイッチ素子と高圧トランスを有する共振回路と高圧整流回路を有し、前記半導体スイッチ素子のオンオフにより、マグネトロンに電力供給するインバータ回路と、半導体スイッチ素子のオンオフを制御する制御部を備え、前記制御部は前記半導体スイッチ素子を駆動する駆動回路部とオンオフのタイミングを制御するスイッチング制御部と過電圧保護部を有し、前記過電圧保護部は前記半導体スイッチ素子に所定以上の電圧が印加すると前記駆動回路部にオン信号を伝達する構成としたマグネトロン駆動用電源。
【請求項2】
過電圧保護部は半導体スイッチ素子に印加する電圧を検出する抵抗器で構成された分圧器とツェナダイオードとNPNトランジスタよって構成し、前記分圧器によって分圧された電圧がツェナダイオードのツェナ電圧を超えると前記NPNトランジスタをオンさせることによって駆動回路部にオン信号を伝達する構成とした請求項1に記載のマグネトロン駆動用電源。
【請求項3】
過電圧保護部を構成するツェナダイオードとNPNトランジスタは前記ツェナダイオードのツェナ電圧と前記NPNトランジスタのベースエミッタ間電圧の温度依存性が互いに打ち消しあうよう構成した請求項2に記載のマグネトロン駆動用電源。
【請求項4】
過電圧保護部を構成するツェナダイオードのツェナ電圧は6V以上となるように設定した請求項3に記載のマグネトロン駆動用電源。
【請求項5】
制御部に半導体スイッチ素子の印加電圧を検出する電圧検出部を設け、過電圧保護部によって制限される電圧よりも低い所定の電圧でインバータ回路への過電圧印加を判定し、インバータ回路のスイッチング動作を停止する構成とした請求項1から4のいずれか1項に記載のマグネトロン駆動用電源。
【請求項6】
制御部に半導体スイッチ素子の印加電圧を検出する電圧検出部を設け、過電圧保護部によって制限される電圧よりも低い所定の電圧でインバータ回路への過電圧印加を判定し、インバータ回路のスイッチング動作を一旦停止し、所定時間が経過すると再起動する構成とした請求項1から4のいずれか1項に記載のマグネトロン駆動用電源。
【請求項7】
電圧検出部によって検出されるインバータ回路への過電圧印加が所定時間内に所定回数に達するとインバータ回路はラッチ停止して再起動しない構成とした請求項6に記載のマグネトロン駆動用電源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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