説明

マスキングシステム

【課題】ブース内側に設定された会話空間における会話の邪魔にならず、ブース内側で発せられた音声がブース外側に対して漏出されることを防止しうるマスキングシステムを提供する。
【解決手段】一方の壁面方向からマスキング音を放音するスピーカ20aを備えた間仕切り用のパネル2を組み合わせて隣接するブース(区画)が形成されると共に、少なくとも一のブースにおいて、隣接するブースとの隔壁22と、共用通路4との間を仕切る隔壁21cとの間に出入口5を設け、隔壁22に対面し、隔壁21cに対して当該ブース内側に向けて通路形成パネル体23を設ける。当該ブースは、通路形成パネル体23を挟んで通路空間3aと会話空間3bを有し、当該会話空間3bに面しているパネル2には、当該会話空間3bの外側の方向に向けてマスキング音を放音するスピーカ20aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する複数のブースのブース構造におけるマスキングの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
間仕切り用のパネルを用いて空間を様々な形に仕切ることで、応接スペースや商談スペース等のブースを簡単に設置することができる。また、ブース内における会話音声が外部へ漏れないように音声をマスキングする技術として、下記特許文献1には、パネル上部にスピーカユニットを設置する技術が開示されている。また、下記特許文献2には、パネル内にボイスコイルを設けたパネルの背面を組み合わせ、各パネルのボイスコイルにマスキング音の信号を入力することで、パネル自体を振動させ、パネルからマスキング音を発するよう構成されたマスキングパーティションが開示されている。これらの技術は、パネルからマスキング音を放音することができるので、ブース内側で発せられた音声がブース外へ漏れにくくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−173368号公報
【特許文献2】特開平4−323697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、上述したマスキング音を放音するスピーカ200を配置したパネルを用いて、図9に示すような一般的なブースを形成する場合、ブース外側の外部空間との隔壁となるパネル200aにより、ブース内側で発せられた音声がブース外側に漏れないようマスキングすることはできるが、隣接ブースとの隔壁となるパネル200bによって、ブースの内側方向、即ち、ブース内の机や椅子等が設置された会話空間70に対してもマスキング音が放音されてしまう。そのため、マスキング音が放音される側に設けられているブースの会話空間70においては、マスキング音によって会話が聞こえにくい状態となる。
本発明は、放音されるマスキング音がブースの内側に設定された会話空間における会話の邪魔にならず、ブース内側で発せられた音声がブース外側に対して漏出されることを防止しうるマスキングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係るマスキングシステムは、間仕切り用のパネルを組み合わせて空間を仕切ることで、1つの区画と他の1以上の区画とが隣接する複数の区画を形成し、各区画において、前記複数の区画を除いた外部空間と当該区画との隔壁となる第1パネル体と、隣接する他の区画との隔壁となる第2パネル体とが形成されると共に、前記外部空間と当該区画との間を出入するための出入口が形成されたマスキングシステムであって、形成された前記複数の区画のうち少なくとも一の区画は、前記出入口の一端を形成する当該区画の前記第1パネル体の端部から当該区画内に向かって第3パネル体が配置され、当該第3パネル体と当該区画の前記第1パネル体、又は、当該第3パネル体と当該区画の前記第1パネル体及び第2パネル体とで囲まれた会話空間を有し、少なくとも当該会話空間に面する前記パネルには当該会話空間の外側の方向に向けてマスキング音を放音する放音部が設けられていることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の請求項2に係るマスキングシステムは、前記マスキングシステムにおいて、前記出入口の他端が他の前記第1パネル体で形成されている前記区画において、前記会話空間は、前記第3パネル体と、前記他の第1パネル体を除く前記第1パネル体と、前記第2パネル体とで囲まれ、前記他の第1パネル体には前記放音部が設けられていないこととしてもよい。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の構成によれば、会話空間の外側に向けてマスキング音を放音させることができるので、マスキング音によって会話空間における会話音声が邪魔されず、会話空間以外の空間にいる人に会話音声が漏れないようにすることができる。
【0008】
請求項2に記載の構成によれば、出入口の他端も第1パネル体で形成されている区画では、当該第1パネル体を除く第1パネル体と第3パネル体と第2パネル体から会話空間の外側の方向に向けてマスキング音が放音されるので、会話空間内の会話音声を聞こえにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係るブース構造の例を示す図である。
【図2】(a)は、実施形態に係るパネルの斜視図である。(b)は、実施形態に係るパネルの例を示す断面図である。
【図3】実施形態に係る放音システムの構成を示すブロック図である。
【図4】実施形態のブース構造におけるマスキング音の放音方向を説明する図である。
【図5】(a)及び(b)は、変形例1のパネル2の例を説明する図である。
【図6】(a)は、変形例6のブース構造の例を説明する図である。(b)は、変形例7のブース構造の例を説明する図である。(c)〜(e)は、変形例8のブース構造の例を説明する図である。
【図7】(a)は、変形例9のブース構造の例を説明する図である。(b)は、変形例10のブース構造の例を説明する図である。
【図8】変形例12に係るブース構造を説明する図である。
【図9】従来のマスキングシステムの例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態におけるブース構造の一例を示す上面図である。本実施形態におけるブース構造1は、図1に示すように、複数の間仕切り用のパネル2で空間を仕切ることにより、打ち合わせ等を行う空間としての矩形形状を有する複数の区画(以下、ブースと言う)3と、ブース3を除いた空間(以下、外部空間と言う)とが形成される。本実施形態におけるブース3は、ブース3内に設けられた通路空間3aと、会話がなされる空間3b(以下、会話空間と言う)とを有する。なお、通路空間3a及び会話空間3bの詳細については後述する。
【0011】
ここで、本実施形態における間仕切り用パネル2について説明する。図2(a)は、1枚のパネル2を示す斜視図である。本実施形態におけるパネル2は、幅の長さが約900mmと約1500mmの2種類あり、2種類の各パネル2の高さは約1800mm、厚さは約30mmで構成されている。なお、本実施形態では、パネル2の高さが1800mmのものを用いる例について説明するが、パネル2の高さは、床から天井までを仕切るものではなく、床から所定の高さまでを仕切る、いわゆるローパーティション用のパネルであればよい。従って、パネル2の各部の寸法は前記の数値に限定されない。
【0012】
図2(a)に示すように、各パネル2は、対向配置される壁面2a及び2bと、これら壁面2a、2bの各側端部をつなぐ側面2cと、壁面2a,2bおよび各側面2cの底部をつなぐ底面(図示略)を有して構成されている。また、図2(b)に示すように、パネル2は、壁面2aの高さに対して壁面2bの高さが高くなるように構成されると共に、パネル2の上部(上面および斜め上方の面)は開口されている。
また、パネル2の壁面2aと壁面2bの間には仕切りが設けられ、当該仕切りの上面に、所定の方向に向けてマスキング音を放音する2つのスピーカ20aが設けられている。この場合、スピーカ20aから放音されたマスキング音は壁面2a、2bで挟まれる空間に沿って誘導され、パネル2の上方の空間に放音されるとともに、壁面2bと壁面2aの高さの相違する部分により形成される開口部分から斜め上方の空間に放音される。
【0013】
本実施形態では、図2に示すように、スピーカ20aが壁面2aの上端部より床面に近い位置に配置される例であるが、壁面2aの上端部と同じ高さの位置にスピーカ20aが配置されていてもよい。また、本実施形態では、壁面2aと壁面2bの高さが異なるようにパネル2を構成し、壁面2aと壁面2bの間の所定位置にスピーカ20aを設ける例であるが、例えば、前記仕切りの上面にスピーカ20aを設けるのではなく、壁面2aと壁面2bのいずれか一方の側にスピーカ20aを設けるように構成してもよい。つまり、パネル2内のスピーカ20aの放音方向が一方の壁面側の方向となるようにスピーカ20aがパネル2内に設けられていればよい。
なお、各スピーカ20aには、後述の放音制御装置20bと接続するための接続ケーブル(図示略)が接続されており、各パネル2の底面(図示略)と、スピーカ20aの設置面には、接続ケーブルを通すための穴が設けられている。各接続ケーブルは、スピーカ20aの設置面からパネル2の底面を通り、パネル2の外部に設置されている所定の放音制御装置20bと接続されている。
【0014】
図1に戻り、上記したパネル2を用いたブース構造について説明を続ける。図1における右側のブース(以下、ブース3Rと言う)と左側のブース(以下、ブース3Lと言う)には、各ブース内で打合せ等を行う話者以外の不特定の者が利用する共用の通路や空間で構成される外部空間4と当該ブースとの間を出入するための出入口5が各々設けられている。
【0015】
各ブース3には、外部空間4との間を仕切る隔壁21a、21b、21c(第1パネル体)と、隣接するブース3L又は3Rとの間を仕切る隔壁22(第2パネル体)とが形成されている。また、各ブース3には、出入口5の一端に配置されている隔壁21cの端部211からブース3の内側方向に向かってパネル2を連結した通路形成パネル体23(第3パネル体)が形成されている。この通路形成パネル体23により、ブース3Rにおいては、ブース3R内の通路形成パネル体23の隔壁22側の面方向(図中左側)には通路空間3aが形成されると共に、通路形成パネル体23の隔壁22側とは反対側の面方向(図中右側)には会話空間3bが形成されている。一方、ブース3Lにおいては、ブース3L内の通路形成パネル体23の隔壁21b側の面方向(図中左側)には通路空間3aが形成されると共に、通路形成パネル体23の隔壁21b側とは反対側の面方向(図中右側)には会話空間3bが形成されている。
【0016】
つまり、ブース3Rの通路空間3aは、通路形成パネル体23、隔壁22、及び隔壁21aによって囲まれた空間であり、ブース3Lの通路空間3aは、通路形成パネル体23、隔壁21b、及び隔壁21aによって囲まれた空間である。
また、ブース3Rの会話空間3bは、通路形成パネル体23と隔壁21a、21b、21cによって囲まれた空間であり、ブース3Lの会話空間3bは、通路形成パネル体23と隔壁21a、21c、22によって囲まれた空間である。各通路空間3aは、出入口5から会話空間3bの間を行き来するための通路となっており、各会話空間3bには、机7aや椅子7b等の什器が配置され、会話がなされる空間となっている。
通路形成パネル体23は、通路空間3aと会話空間3bとの間を人が出入するための破線矢印で示す出入口が形成されるように隔壁21aとの間に間隔を設け、且つ、会話空間3bにおいて話者が発した会話音声の直接音が、出入口5の方向へ直線的に伝搬する経路を遮断する配置となるように、隔壁21cの端部211に所定の長さ分だけパネル2が連結されて構成されている。
【0017】
ブース3Rを構成する隔壁のうち、隔壁21a、21b、21cの各パネル2は、当該パネル2の壁面2aが外部空間4に面するように配置されており、通路形成パネル体23を構成する各パネル2と、ブース3Lとの隔壁22を構成する各パネル2は、当該パネル2の壁面2aがブース3Rの通路空間3aに面するように配置されている。
また、ブース3Lを構成する隔壁のうち、隔壁21a、21b、21cの各パネル2は、当該パネル2の壁面2aが外部空間4に面するように配置されており、通路形成パネル体23を構成する各パネル2は、当該パネル2の壁面2aがブース3Lの通路空間3aに面するように配置されている。
つまり、各ブースの会話空間3bに面するパネル2に設けられたスピーカ20の放音方向は、当該会話空間3bの外側となる空間、即ち外部空間4や当該ブースの通路空間3aの方向となっている。このように、会話空間3bと面しているパネル2のスピーカ20aの放音方向が当該会話空間3bの外側の方向であるため、スピーカ20aから放音されるマスキング音が当該会話空間3bの内側に伝搬して、会話空間3b内の話者が互いの音声を聞き取りにくくなることがない。また、会話空間3bにおいて発せられた音声は、会話空間3bの上方の天井面等を介したり、当該会話空間3bに面しているパネル2の上部を回折したりして会話空間3bの外側の方向に伝搬する。従って、会話空間3bの外側の方向に伝搬した音声は、減衰しながら会話空間3bの外側に向けて放音されたマスキング音と混ざり、会話空間3b内で発せられた音声が会話空間3bの外側にいる第三者に対して漏れにくくなる。
【0018】
次に、本実施形態におけるマスキングシステム1の放音制御装置20bについて説明する。本実施形態では、ブース3毎に放音制御装置20bが会話空間3bに設置されており、各ブース3の会話空間3bを囲うパネル2のスピーカ20aと当該ブース3の放音制御装置20bとが接続ケーブル(図示略)によって接続されている。
【0019】
図3は、一の放音制御装置20bと、当該放音制御装置20bと接続されたスピーカ20aとを含む放音システム20の構成を示すブロック図である。図3に示すように、放音制御装置20bは、音源221、操作部222、信号処理部223、及び制御部224を含んで構成されている。
【0020】
音源221は、制御部224の制御の下、予め定められたマスキング音を生成して音信号を出力する機能を有し、操作部222は、放音制御装置20bの電源のオンオフを切替える操作ボタン、スピーカ20aに放音させるマスキング音のボリューム値の変更操作等を行う操作ボタン等を有し、ユーザから受付けたスイッチ操作を示す操作信号を制御部224へ出力する機能を有する。
【0021】
信号処理部223は、制御部224の制御の下、音源221によって出力されたマスキング音を示す信号に所定の信号処理を施し、そのマスキング音の信号とマスキング音のボリューム値を示す情報とを各スピーカ20aに送出する機能を有する。
また、制御部224は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含んで構成されており、制御部224と接続されている各部を制御する機能を有する。スピーカ20aは、アンプを含んで構成されており、放音制御装置20bから送出されたマスキング音の音信号に所定の増幅処理を施して放音する。
【0022】
放音制御装置20bの制御部224は、ユーザが操作部222の電源ボタンをオンにする操作を行うと、音源221においてマスキング音を生成して信号処理部223へ出力し、信号処理部223において信号処理が施されたマスキング音の音信号を各スピーカ20aへ出力する。各スピーカ20aは、放音制御装置20bから出力されたマスキング音の音信号に所定の増幅処理を施してマスキング音を放音する。なお、このようにして、各スピーカ20aからマスキング音を放音させた場合の放音方向は図4のようになる。
つまり、ブース3Rとブース3Lの各会話空間3bと面しているパネル2に設けられているスピーカ20aからのマスキング音は、当該ブースの会話空間3bより外側の空間に向けて放音される。ブース3Rにおいては、マスキング音は、当該ブースの会話空間3bより外側の空間である、外部空間4に向けて放音されると共に当該ブースの通路空間3aに向けて放音される。また、ブース3Lにおいては、マスキング音は、当該ブースの会話空間3bより外側の空間である、外部空間4に向けて放音されると共に、当該ブースの通路空間3aの方向及び隣接するブース3Rの方向に向けて放音される。
【0023】
要するに、各ブースを形成するパネル2の配置とスピーカ20aの放音方向の関係が以下(1)〜(3)の条件を満たすようにパネル2が配置されていればよい。
(1)外部空間4に面するパネル2(隔壁21a、21b、21c)は、当該パネル2に設けられたスピーカ20aの放音方向が外部空間4の側となるように配置する。
(2)各ブースの通路空間3aに面するパネル2(通路形成パネル体23)は、当該パネル2に設けられたスピーカ20aの放音方向が、当該ブースの通路空間3aの側となるように配置する。
(3)隣接するブース間のパネル2(隔壁22)は、当該パネル2がいずれか一方のブースにおける会話空間3bに面している場合には、当該パネル2に設けられたスピーカ20aの放音方向が他方のブース側となるように配置する。
上記(1)〜(3)の条件を満たす配置により、各ブースの会話空間3aから外部空間4及び隣接するブースの側に伝搬される会話音声は、各パネル2のスピーカ20aから外部空間4及び隣接するブースの側に放音されたマスキング音によってマスキングされ、外部空間4及び隣接するブースの側にいる人は会話音声が聞き取りにくくなる。なお、パネル2の配置が(1)、(2)、(3)の優先順序で適用されていれば、各ブースのパネル2と放音方向との関係は上記全ての条件を満たしていなくてもよい。
【0024】
放音制御装置20bの制御部224は、ユーザによって操作部222の電源ボタンをオフにする操作が行われると、音源221におけるマスキング音の生成を停止し、信号処理部223から各スピーカ20aへの音信号の出力を停止する。
【0025】
上述した実施形態では、ブース3の会話空間3bを囲うパネル2に設けられたスピーカ20aからのマスキング音は、パネル2に設けられた開口部から当該会話空間3bの外側の方向に向かって放音されるため、会話空間3b内における話者の会話の邪魔にならないようにすることができる。また、会話空間3bにおいて発せられた音声が会話空間3bの外側の方向に伝搬しても、会話空間3bの外側に向けて放音されたマスキング音と混ざるため、会話空間3bの外側にいる第三者に会話空間3b内で発せられた会話音声が漏れないようにすることができる。
一方、ブース3に通路空間3aが設けられていない場合には、ブース3Lからブース3Rへ伝搬する会話音声をマスキングし、同時にブース3Rからブース3Lへ伝搬する会話音声をマスキングするために、隔壁22は、ブース3R及びブース3Lの両方向にマスキング音を放音するようにスピーカ20aが設けられたパネルで構成する必要がある。しかし、上記実施形態のように、ブース3に通路空間3bを設けることで、隔壁22には、外部空間4との隔壁21a、21b、21cと同様、スピーカ20aの放音方向が一方の壁面方向となるように構成されたパネル2だけを用いてブース3を形成することができる。
【0026】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではなく、以下の変形例も含まれる。
【0027】
(変形例1)上述した実施形態では、各パネル2に設置されたスピーカ20aは、図2(b)に示すようにパネル2の上部に設けられ、各パネル2は、スピーカ20aが設置された上面とスピーカ20aが設置された側の側面の一部が開口されている例について説明したが、パネル2の一方の側面からマスキング音が放音される構成であれば、スピーカ20aの設置位置及びパネル2の開口位置はこれに限定されない。このような一例を図5に示す。図5は、本変形例に係るパネル2を側面方向から見た図である。図5(a)に示すように、パネル2は、実施形態と同様の壁面2aと2bを有し、パネル2の上面を開口せずに塞ぐと共に、矢印Aで示すように壁面2aの上端部からスピーカ20aの設置位置(スピーカ20aの下面位置)の高さまで壁面2aが開口されている構成でもよい。
また、図5(b)に示すように、パネル2の壁面2aと壁面2bの高さが同じであり、パネル2の上面を開口せずに塞ぐと共に、パネル2内の壁面2a側において、壁面2aの上端部から下端部までの間の所定の領域にスピーカ20aを設置するための空間を内部に設け、矢印Aで示すようにスピーカ20aの設置位置(スピーカ20aの下面位置)から壁面2aの上端部の方向に向かって所定の高さだけ壁面2a側が開口されている構成でもよい。このような構成により、図5(a)及び図5(b)の矢印Aで示す開口部分からマスキング音が放音される。
この例では、開口部を壁面2a側に設ける例であるが、壁面2b側に設けてもよい。要するにパネル2を構成する一方の壁面側のみからマスキング音が放音されるようにパネル2の一方の壁面2a側または2b側のいずれかに開口部が設けられていればよい。また、この例では、スピーカ20aは、パネル2の上端側の位置(図5(a))や、パネル2の上端部と下端部との間の所定位置(図5(b))において、開口部の横に設置される例であるが、当該開口部の位置はそのままで、スピーカ20aをパネル2の底面部に設置するなど、スピーカ20aの設置位置のみを下方に設けるようにしてもよい。
【0028】
(変形例2)また、上述した実施形態では、各パネル2には2つのスピーカ20aが設けられている例について説明したが、各パネル2に設けられるスピーカ20aは、1つ以上であればこれに限定されない。
【0029】
(変形例3)また、上述した実施形態では、各パネル2に設けられたスピーカ20aと放音制御装置20bとは有線接続されている例について説明したが、各スピーカ20aと放音制御装置20bとが無線通信機能を備えている場合には、放音制御装置20bと各スピーカ20aとを無線接続し、各スピーカ20aは無線通信により放音制御装置20bからマスキング音の音信号を受信して放音するように構成してもよい。
【0030】
(変形例4)また、上述した実施形態では、放音制御装置20bは、ブース3毎に設けられている例について説明したが、全スピーカ20aの放音を制御する放音制御装置20bを設置するようにしてもよい。この場合には、放音制御装置20bの電源がオンに設定されると全てのスピーカ20aからマスキング音が放音されるようにしてもよい。
【0031】
(変形例5)また、上述した実施形態では、放音制御装置20bは、各ブース3の会話空間3bに設置されている例について説明したが、ブース3を構成するいずれかのパネル2に放音制御装置20bが設置されていてもよい。
【0032】
(変形例6)上述した実施形態では、2つのブースが形成されたブース構造の例について説明したが、隣接するブースが2つ以上であればブースの数はこれに限らない。このような一例を示す上面図を図6(a)に示す。図6(a)は3つのブース(31、32、33)が形成されている例である(スピーカ20aの図示略)。図6(a)のブース31、32のように、隣接するブースとの隔壁22の間に出入口5が形成され、通路形成パネル体23と隔壁22の間に通路空間3aが形成された構成や、ブース33のように、外部空間との隔壁21bの間に出入口5が形成され、通路形成パネル体23と隔壁21bとの間に通路空間3aが形成された構成であれば、ブースのレイアウトが同じでなくてもよい。
【0033】
(変形例7)また、上述した実施形態に係る通路空間3aは、ブース3の出入口5から隔壁21aまでの一直線状の経路を有する空間として形成される例であったが、通路空間3aは一直線状に限らない。このような一例を示す上面図を図6(b)に示す(スピーカ20aの図示略)。図6(b)の通路形成パネル体230は、実施形態と同様の通路形成パネル体23の先端部231にパネル2を連結して形成されており、出入口5から隔壁21aまでの空間3aと矢印31aで示す空間が通路空間となる。
【0034】
(変形例8)また、上述した実施形態では、各ブース3の出入口5の一方を形成する隔壁21cと直交するように当該ブース3の内側方向にパネル2を連結して通路形成パネル体23を設ける例について説明したが、隔壁21cの端部211に連結させるパネル2の角度は直交する場合に限らず、予め定めた一定の角度だけ隔壁21cに対して傾けるようにパネル2を隔壁21cに連結させてもよい。このような一例を示す上面図を図6(c)(d)(e)に示す(スピーカ20aの図示略)。図6(c)に係る通路形成パネル体23は、隔壁21cに対して鈍角となるようにブース3の内側方向へパネル2を連結させて形成されている。また、図6(d)に係る通路形成パネル体23は、隔壁21cに対して鋭角となるようにブース3の内側方向へパネル2を連結させて形成されている。また、図6(e)に係る通路形成パネル体23は、隔壁21cに対して一定の角度だけ傾けてブース3の内側方向に連結させたパネル2の先端部232に、パネル2を隔壁22又は隔壁21bと平行となるように連結して形成されている。
【0035】
(変形例9)また、上述した実施形態では、ブース3に形成される通路形成パネル体23は直線形状である例について説明したが、通路形成パネル体23は直線形状以外の形状でもよい。このような一例を示す上面図を図7(a)に示す(スピーカ20aの図示略)。図7(a)に係る通路形成パネル体23は、水平方向に湾曲したアーチ形状のパネルを隔壁21cの端部211に連結させて形成される。
【0036】
(変形例10)また、上述した実施形態では、平面状のパネル2を用いて矩形のブース3を形成する例であったが、ブース3の形状は矩形以外の形状でもよい。このような一例を示す上面図を図7(b)に示す。図7(b)に係るブース構造においてブース35、36は、内部にスピーカ20a(図示略)が設置された水平方向に湾曲したアーチ形状のパネルを、ブースの内側から外側方向へマスキング音が放音されるように円形状に連結して形成されている。また、ブース間に出入口5を形成するようにブース35、36を連結し、ブース35、36において、出入口5を構成する一の隔壁210cに円形状のパネルを連結し、隣接するブース36又は外部空間との間に通路空間3aを設けるように通路形成パネル体23を形成する。
【0037】
(変形例11)また、上述した実施形態では、各ブース3の通路形成パネル体23は隔壁21cに対して全て同じ角度、同じ長さで形成される例について説明したが、隔壁21cに対する通路形成パネル体23の角度や通路形成パネル体23の長さをブース毎に変えるように構成してもよい。
【0038】
(変形例12)また、上述した実施形態では、各ブース3を構成する全てのパネル2にスピーカ20aを設ける例について説明したが、以下のように構成してもよい。即ち、図1において、出入口5が隔壁21b(第1パネル体)と隔壁21cとの間に設けられているブース3Lは、通路形成パネル23から通路空間3aに向けてマスキング音が放音されるため、隔壁21bの外側にマスキング音を放音しなくても、ブース3Lの会話空間3bにおける会話が漏れにくくなっている。そのため、この場合には、図8に示すように、ブース3Lの隔壁21bはスピーカ20aが設けられていないパネル200を用いて形成するようにしてもよい。即ち、マスキング音の伝搬経路上に重複してパネル2が配置され、パネル2からのマスキング音が同一方向に放音される場合には、会話がなされる会話空間3bにより近い位置の通路形成パネル23にスピーカ20aを設置し、会話空間3bからより遠い位置にある隔壁21bのパネル2にはスピーカ20aを設置しないことで、スピーカ20a等の電気回路を簡略化することができる。また会話空間3bにより近い場所からマスキング音を放音するので、マスキング音と会話音声とが会話空間3bの外側の空間で混ざりやすくなり、マスキングシステムの効率化を図ることができる。
【符号の説明】
【0039】
1・・・マスキングシステム、2,200・・・パネル、2a,2b・・・パネルの壁面、20a・・・スピーカ、20b・・・放音制御装置、21a,21b,21c,22・・・隔壁、23・・・通路形成パネル体、3,31,32,33,35,36・・・ブース、3a・・・通路空間、3b・・・会話空間、4・・・共用通路(外部空間)、5・・・出入口、7a・・・机、7b・・・椅子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間仕切り用のパネルを組み合わせて空間を仕切ることで、1つの区画と他の1以上の区画とが隣接する複数の区画を形成し、各区画において、前記複数の区画を除いた外部空間と当該区画との隔壁となる第1パネル体と、隣接する他の区画との隔壁となる第2パネル体とが形成されると共に、前記外部空間と当該区画との間を出入するための出入口が形成されたマスキングシステムであって、
形成された前記複数の区画のうち少なくとも一の区画は、
前記出入口の一端を形成する当該区画の前記第1パネル体の端部から当該区画内に向かって第3パネル体が配置され、当該第3パネル体と当該区画の前記第1パネル体、又は、当該第3パネル体と当該区画の前記第1パネル体及び第2パネル体とで囲まれた会話空間を有し、少なくとも当該会話空間に面する前記パネルには当該会話空間の外側の方向に向けてマスキング音を放音する放音部が設けられていることを特徴とするマスキングシステム。
【請求項2】
前記出入口の他端が他の前記第1パネル体で形成されている前記区画において、前記会話空間は、前記第3パネル体と、前記他の第1パネル体を除く前記第1パネル体と、前記第2パネル体とで囲まれ、前記他の第1パネル体には前記放音部が設けられていないことを特徴とする請求項1に記載のマスキングシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate