説明

マスクブランクス用ガラス基板の製造方法、マスクブランクスの製造方法、転写マスクの製造方法、及び半導体装置の製造方法

【課題】高さが数nm、大きさが5μm〜20μm程度の凸状欠陥の発生を抑制できるマスクブランク用ガラス基板の製造方法等を提供する。
【解決手段】マスクブランクス用ガラス基板表面を、研磨砥粒を含む研磨液を用いて両面研磨する研磨工程を有するマスクブランクス用ガラス基板の製造方法において、前記研磨後の基板を、フッ酸、ケイフッ酸、またはフッ酸及びケイフッ酸を含む洗浄液で処理する洗浄工程を有すると共に、前記洗浄工程を行う前の基板を保管しておく純水槽内、または前記純水槽の純水循環経路に、紫外線を照射する手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面に高さが数nm程度、大きさが5μm〜20μm程度の凸状欠陥の発生を抑制するのに有効なマスクブランクス用ガラス基板の製造方法、マスクブランクスの製造方法、転写マスクの製造方法、及び半導体装置の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における超LSIデバイスの高密度化、高精度化により、マスクブランクス用ガラス基板の平坦度や表面欠陥に対する要求は年々厳しくなる状況にある。ここで、従来のマスクブランクス用ガラス基板の表面粗さを低減するための精密研磨方法としては、例えば、特開平1−40267号公報に記載されているものがある。この精密研磨方法は、酸化セリウムを主材とする研磨材を用いて研磨した後、コロイダルシリカを用いて仕上げ研磨するものである。この場合、上記公報によれば、一般的に市販されているコロイダルシリカは、安定性の点からpHが9〜10.5の範囲にあるが、希釈して使う場合にはpH値が低下するので、NaOH、KOH等の無機アルカリや、アミン等の有機アルカリを新たに添加し、pHを〜11と高めて使用する方がアルカリのガラスをエッチングする効果も相乗的に発揮されるので好ましいとされている。
【0003】
本願出願人は、上記コロイダルシリカを用いてpHを高めた状態で仕上げ研磨を行ったガラス基板の表面が、近年要求されている平坦度や表面欠陥に対する高いレベルの条件を満たすものであるか否かを克明に調査した。その結果、上記方法で仕上げ研磨を行ったガラス基板表面には、高さが数nm程度、大きさは数十nm〜2μmの凸状の突起が形成されることがあることが判明した。これは、従来の目視検査では確認できない小さい高さ(数nm程度)の凸状の突起で、上記近年要請されるようになった高いレベルの表面欠陥フリーの要請を確認するために開発された欠陥検査装置によってはじめて確認することができたものである。
【0004】
この高さが数nm程度の凸状の突起上に薄膜を形成し、マスクブランクス、転写マスクを作製した場合、高さが数nm程度の凸状の突起の大きさが拡大化されるため、次世代の基板として要求される0.3μm欠陥フリー(0.3μm以上の欠陥がないこと)、更には0.1μmフリー(0.1μm以上の欠陥がないこと)、0.05μm欠陥フリー(0.05μm以上の欠陥がないこと)であったとしてもマスクブランクス、マスクの欠陥検査を行った場合、問題となることがある。
【0005】
また、この高さが数nm程度の凸状の突起が形成されたガラス基板を使って位相シフトマスクブランクス、位相シフトマスクを作製した場合、露光光の波長が短波長になるにしたがって、高さが数nm程度の凸状の突起による位相角変化が大きくなり位相欠陥となる。この位相欠陥は、使用する露光波長が短くなるに従って、高さが数nm程度の凸状の突起による影響が大きくなり、特に、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV光源を露光光源とする次世代のリソグラフィーにおいてその問題は顕著になる。例えば、凸状の突起の高さが5nmの場合、露光波長がArF(193nm)の場合、位相角変化は4.6度、F(157nm)の場合、位相角変化は5.7度となり、また、この高さが数nm程度の凸状の突起が形成されたガラス基板を使ってEUV反射型マスクブランクス、EUV反射型マスクを作成した場合、凸状の突起の高さが5nmの場合、露光波長が13.5nmで20度を超え、これらの位相角変化によって、CD誤差不良となり、無視できない問題となる。
【0006】
上記のように、コロイダルシリカを用いる超精密研磨後のガラス基板の主表面に、高さが数nm程度、大きさが数十nm〜2μmの凸状の突起が発生することが確認されている。また、その発生原因として、コロイダルシリカ砥粒中に金属成分の不純物が混入していることが原因であることが本願出願人により解明されている。これは、基板主表面に金属成分を含んだゲル状のコロイダルシリカが付着し、それがマスクとなって、研磨レート差が生じ、凸状の突起が発生するというメカニズムであった。
この問題を解決するために、本願出願人は、有機ケイ素化合物を加水分解することで得られる高純度のコロイダルシリカを研磨砥粒に適用することなどを行い、改善を図る技術に関し先に出願を行っている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−98278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、これらの対策を施しても、高さが数nm、大きさが1μm〜20μm程度の巨大なシミ状の凸状欠陥(上述した「凸状の突起」と区別するため「凸状欠陥」と称する)の発生を抑制できない場合があった。
近年、研削工程、第1および第2研磨工程(粗研磨、精密研磨)を行った後、コロイダルシリカ砥粒とNaOH(基板をエッチングする効果を有する)を含有する研磨液を用いた超精密研磨工程(第3研磨工程)を行った後に、さらに研磨レ一トの低い(第3研磨工程の約1/10程度)、コロイダルシリカ砥粒とTMAH(テトラメチルアンモニア、基板をエッチングする効果が小さい)を含有する研磨液を用いた最終研磨工程(第4研磨工程)を行った高精度のガラス基板が製造され始めている。特に、この最終研磨工程で、本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥(巨大なシミ状の凸欠陥)が発生しており、問題となっていた。また、前記超精密研磨工程(第3研磨工程)が最終研磨工程である場合においても、本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥(巨大なシミ状の凸欠陥)が発生しており、問題となっていた。
【0009】
本発明は、コロイダルシリカを用いた研磨砥粒による精密研磨を行っても、基板表面に本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥が発生しないか又は発生率の低いマスクブランクス用ガラス基板の製造方法、及び本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥に起因する位相欠陥のないマスクブランクスの製造方法を提供することを第一の目的とする。
また、本発明は、基板表面に本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥があることに起因するパターン欠陥のない転写マスクの製造方法、及び半導体装置の製造方法を提供することを第二の目的とする。
さらに、基板表面に本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥のないマスクブランクス用ガラス基板、及び本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥による位相欠陥のないマスクブランクス及び転写マスクを提供することを第三の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は、上記最終研磨工程(上記第4研磨工程、または上記第3研磨工程が最終研磨工程の場合もある)で、本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥が発生している現象およびその原因を克明に調べた。その結果、以下のことを解明した。
(1)上記特許文献1と同様に、研磨液中の不純物が原因であることが疑われる。たいていの異物等は研磨により除去されると考えられるため、原因究明は容易でない。
(2)つぎに、本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥(巨大なシミ状の凸欠陥)は、砥粒としてセリウム用いる第1および第2研磨工程(粗研磨、精密研磨)及びそれらの洗浄工程を経た段階でのガラス基板では発生していないことを確認した。第1および第2研磨工程(粗研磨、精密研磨)及びそれらの洗浄工程と、第3および第4研磨工程及びそれらの洗浄工程との違いは、(i)砥粒としてセリウム用いるかコロイダルシリカを用いるか、(ii)取り代、(iii)アルカリ洗浄(非常に弱いエッチング作用あり)かフッ酸(弱いエッチング作用あり)洗浄か、である。
【0011】
(3)本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥は、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察したところ、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥(巨大なシミ状の凸欠陥)で、円形(楕円)タイプ(図2(1)参照)と不定形タイプ(図2(2)参照)の2種類に分類されることを解明した。
(4)つぎに、本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥(巨大なシミ状の凸欠陥)を分析したところ、TEM−EDX分析(透過型電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線分光装置)では、界面及び特異元素は確認できないことから石英の段差であることを解明した。AMF(原子間力顕微鏡)で分析したところ、高さは4nm程度であった。
ここで、EDX(エネルギー分散型X線分光法)は、電子線照射により発生する特性X線を検出し、エネルギーで分光することによって、元素分析や組成分析を行う手法である。多くの場合、SEM(走査型電子顕微鏡)またはTEM(透過型電子顕微鏡)に付属している。また、EDS: Energy Dispersive X-ray Spectroscopyとも呼ばれる。
【0012】
(5)つぎに、本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥(巨大なシミ状の凸欠陥)における不定形タイプの凸欠陥を1つずつSEM観察で詳しく調べたところ、大腸菌、球菌、棹菌などを連想させる多様な形状のシミが多数確認されたことから、バクテリア、原生生物などの微生物が不定形シミの原因と推定した。
(6)砥粒としてコロイダルシリカを用いる第3および第4研磨工程(超精密研磨工程、最終(超精密)研磨工程)では、主表面が研磨された後のマスクブランク用基板は、フッ酸浸漬による洗浄(エッチング作用を伴う洗浄)が行われるが、処理待ちの基板は純水槽に浸漬した状態で、一時待機状態におかれる。
この第3研磨工程(超精密研磨工程)および第4研磨工程(最終(超精密)研磨工程)で、本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥(シミ状の凸欠陥)が発生することがわかった。
詳しくは、第3研磨工程(超精密研磨工程)または第4研磨工程(最終(超精密)研磨工程)が終了したガラス基板5〜10枚をカセットに入れ、バンドシャワーをかけ、研磨工程に付随する純水槽に保管する。その後、カセットに入れたガラス基板を、基板搬送用の水槽(ため水のコンテナ)で搬送し、洗浄装置におけるローダー水槽(フッ酸洗浄前の保管水槽)にセットする。洗浄装置においては、ローダー水槽から、純水オバーフロー1分+メガソニック、フッ酸+ケイフッ酸+メガソニック1分、フッ酸+ケイフッ酸+メガソニック1分、純水スクラブ洗浄、純水オバーフロー+メガソニック、スピンすすぎ、スピン乾燥で処理する。以上の工程で本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥(シミ状の凸欠陥)が発生することがわかった。
基板搬送用の水槽(ため水のコンテナ)、洗浄装置におけるローダー水槽、等の純水(DIW)採取し、生菌培養キットで培養したところ多数のバクテリアが確認され、SEM観察(2万倍)した結果、大腸菌を確認した。
つぎに、基板搬送用のため水コンテナ、洗浄装置におけるローダー水槽、等の生菌数と、シミ状の凸欠陥発生との因果関係について、加速試験にて、検証した。加速試験は、多数のバクテリアが確認された、基板搬送用の水槽(ため水のコンテナ)および洗浄装置におけるローダー水槽にそれぞれ保管(浸漬)されたガラス基板(5〜10枚をカセット)を、それぞれ、フッ酸(濃度0.2wt%)に600秒浸漬して実施した。その結果、基板搬送用のため水コンテナ、フッ酸処理前のローダー水槽、等に生菌が多く含まれる場合に、本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥(シミ状の凸欠陥)が発生することがわかった。
【0013】
(7)上記のことから、以下のことがわかった。
洗浄装置におけるローダー水槽内の純水は、循環ろ過されているが、純水製造装置からの配管距離が長いこと、ローダー水槽内の純水を循環ろ過するための配管内は殺菌洗浄されていなかったこと、また、研磨が終了したガラス基板には作業者の皮膚接触と環境からのバクテリア持ち込み、などが原因で、バクテリアが発生増加していた。このため、ローダー水槽内のバクテリアが、基板表面に付着して繁殖してしまう場合があることを解明した。そして、バクテリアが付着した基板が保管水槽から取り出され、フッ酸槽に浸漬された場合、基板主表面のフッ酸洗浄(エッチング)において、バクテリアがマスクとなってしまい、基板主表面に本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥(シミ状の凸欠陥)が発生することを解明した。基板搬送用のため水コンテナにおいて、バクテリアが基板表面に付着して繁殖してしまう場合についても同様である。
【0014】
(8)本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥(シミ状の凸欠陥)は、砥粒としてセリウム用いる第1および第2研磨工程(粗研磨、精密研磨)及びそれらの洗浄工程(アルカリ洗浄を含む)を経たガラス基板では発生しない。この理由は以下のように考えられる。
1)バクテリアは酸性でガラス基板表面につきやすく(基板表面はSi−OHで、COO等のマイナス電荷とNH3+等のプラス電荷により等電位となったバクテリアとの間で反発作用は弱まるため)。
2)中性・アルカリ性ではガラス基板表面につきにくい(基板表面はSi−Oで、COO等を有するバクテリアとの間でマイナス電荷同士の反発作用があるため。
3)バクテリア(タンパク質)はフッ酸で侵されないため。
【0015】
(9)最終研磨工程が、第3研磨工程およびフッ酸処理の場合と、第4研磨工程およびフッ酸処理の場合とで比較した。その結果、第3研磨工程およびフッ酸処理の場合、第4研磨工程およびフッ酸処理の場合と比べ、本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥の発生率に目立った相違はないことがわかった。
なお、本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥(シミ状の凸欠陥)は、第3研磨工程およびフッ酸処理において発生しても、第4研磨工程である程度除去できるので、第3研磨工程(超精密研磨工程)に続いて第4研磨工程(最終超精密研磨工程)が実施される場合においては、第4研磨工程後およびフッ酸処理に対して、本発明に係る対策を実施することが好ましい。
第3研磨工程(超精密研磨工程)が、最終磨工程である場合においては、第3研磨工程後およびフッ酸処理に対して、本発明に係る対策を実施することが好ましい。
【0016】
(10)本発明者は、以下の対策では不都合があることを解明した。
1)バクテリア等の発生を抑制するため、塩素、殺菌剤などを使用する対策は、それらが付着した基板をフッ酸等で洗浄したときに化学反応を起こす恐れがあるため不可である。
2)最終研磨工程後のフッ酸処理なくすと本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥は発生しないが、しかしコロイダルシリカを除去できなくなる。
【0017】
本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)
マスクブランクス用ガラス基板表面を、研磨砥粒を含む研磨液を用いて両面研磨する研磨工程を有するマスクブランクス用ガラス基板の製造方法において、
前記研磨後の基板を、フッ酸、ケイフッ酸、またはフッ酸及びケイフッ酸を含む洗浄液で処理する洗浄工程を有すると共に、
前記洗浄工程を行う前の基板を保管しておく純水槽内、または前記純水槽の純水循環経路に、紫外線を照射する手段を有する、
ことを特徴とするマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
(構成2)
前記紫外線を照射する手段は、水銀ランプであることを特徴とする構成1に記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
(構成3)
前記純水槽の純水循環経路に、フィルタ手段を有することを特徴とする構成1または2に記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
(構成4)
前記洗浄工程を行う前の基板を保管しておく純水槽と、前記洗浄工程を行う洗浄槽との間に、純水処理と、超音波またはメガソニック処理とを組み合わせた処理を行う工程を設けることを特徴とする構成1〜3のいずれかに記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
(構成5)
前記研磨砥粒は、コロイダルシリカ砥粒を含むことを特徴とする構成1〜4のいずれかに記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
(構成6)
前記研磨液のpHが、9.6〜11.0であることを特徴とする構成1〜5のいずれかに記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
(構成7)
構成1〜6のいずれかに記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法で製造したマスクブランク用ガラス基板の主表面上に、露光光に対し光学的変化をもたらす薄膜を形成することを特徴とするマスクブランクスの製造方法。
(構成8)
構成7に記載のマスクブランクスの製造方法で製造したマスクブランクスにおける前記薄膜をパターニングして、前記ガラス基板上に薄膜パターンを形成することを特徴とする転写マスクの製造方法。
(構成9)
構成8に記載の転写マスクの製造方法で製造した転写マスクを用いて、半導体基板上にリソグラフィー技術により微細パターンを形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コロイダルシリカを用いた研磨砥粒による精密研磨を行っても、基板表面に本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥が発生しないマスクブランクス用ガラス基板及びその製造方法を提供することができる。また、基板表面に本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥のないマスクブランクス用ガラス基板を使用してマスクブランクスを作製することにより、位相欠陥のないマスクブランクス及びその製造方法を提供することができる。位相欠陥のないマスクブランクスを使用して転写マスクを作製することによりパターン欠陥のない転写マスクを製造することができる。さらに、パターン欠陥のない転写マスクを使用してリソグラフィー技術により半導体基板上に微細パターンを形成するので、パターン欠陥のない半導体装置を製造することができる。
特に、本発明は、高さ数nmレベルの凸状欠陥でも位相欠陥を生じてしまうような位相シフトマスク用のガラス基板の製造に有効である。また、高さ数十mnレベノレの凸状欠陥でもその上に多層反射膜が形成されたときにEUV露光光に対する反射率が低下してしまうような反射型マスクブランク用の基板の製造にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明で用いる洗浄装置の一態様を示す模式図である。
【図2】高さ数nm程度の凸状欠陥のSEM写真であり、(1)は円形タイプ、(2)は不定形タイプである。
【図3】両面研磨装置の概略構成例を示す図である。
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法は、マスクブランクス用ガラス基板表面を、研磨砥粒を含む研磨液を用いて両面研磨する研磨工程を有するマスクブランクス用ガラス基板の製造方法において、
前記研磨後の基板を、フッ酸、ケイフッ酸、またはフッ酸及びケイフッ酸を含む洗浄液で処理する洗浄工程を有すると共に、
前記洗浄工程を行う前の基板を保管しておく純水槽内、または前記純水槽の純水循環経路に、紫外線を照射する手段を有する、
ことを特徴とする。
上記構成によれば、バクテリア等が原因と考えられる本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥が発生しないか、発生率を低減できる。
本発明において、前記洗浄工程を行う前の基板を保管しておく純水槽としては、研磨工程に付随する純水槽(研磨後の基板を保管しておく純水槽)、基板搬送用の水槽(ため水のコンテナ)、洗浄装置におけるフッ酸処理前のローダー水槽、などが挙げられる。
本発明においては、基板にバクテリア等が付着していない状態で、基板をフッ酸、ケイフッ酸、またはフッ酸及びケイフッ酸を含む洗浄液で処理することが好ましい。
このためには、バクテリア等の無い状態(環境下)で基板を保管することが好ましい。例えば、研磨工程に付随する純水槽(研磨後の基板を保管しておく純水槽)、基板搬送用の水槽(ため水のコンテナ)、洗浄装置におけるフッ酸処理前のローダー水槽、などに純水製造装置から新しい(未使用の)純水を供給する手法や、これらの槽でバクテリア等が発生しない手段を講じる手法などが挙げられる。
また、フッ酸(エッチング)処理前に、基板にバクテリア等が付着していない状態にすることも効果的である。例えば、フッ酸(エッチング)処理前に、スクラブ処理、超音波・メガソニック処理、UV・オゾン処理、などの工程を入れる。これらの処理と、純水処理、アルカリ処理、界面活性剤(RBSなど)処理、などを適宜組み合わせる。これにより、基板に付着していたバクテリア等を除去することが可能となる。
本発明において、第3研磨工程(超精密研磨工程)に続いて第4研磨工程(最終超精密研磨工程)が実施される場合においては、前記研磨工程および前記洗浄工程は、第4研磨工程およびその後の洗浄工程、第3研磨工程およびその後の洗浄工程、のいずれか一方または双方であり、少なくとも第4研磨工程後およびその後の洗浄工程であることが好ましい。
本発明において、第3研磨工程(超精密研磨工程)が、最終磨工程である場合においては、前記研磨工程および前記洗浄工程は、第3研磨工程およびその後の洗浄工程である。
本発明において、純水としては、DIW(Deionized water)を使用することが好ましい。DIWは、金属イオンや微生物などの不純物をほとんど含まない、純度100%の理論的に水に限りなく近い高純度の純水である。
【0021】
本発明において、前記紫外線を照射する手段としては、紫外線(UV)照射装置が挙げられる。
本発明では、例えば、前記洗浄工程を行う前の基板を保管しておく純水槽内に紫外線照射装置を浸漬設置する。
本発明では、例えば、前記純水槽の純水循環経路(配管、ライン)に、紫外線(UV)照射装置を設ける。
本発明では、例えば、前記基板搬送用の水槽(ため水のコンテナ)に、紫外線(UV)照射装置を設ける。
本発明において、前記紫外線を照射する手段としては、紫外線殺菌灯、LED紫外線ライト、水銀ランプなどが挙げられる。
本発明において、前記紫外線を照射する手段としては、殺菌効果の高い水銀ランプが好ましい。また、酸化チタン等の紫外線によって光触媒反応を生じさせる構成と組み合わせるとより効果的である。例えば、紫外線が照射される領域の純水循環経路の内壁に酸化チタン等の光触媒材料をコーティングするなどが考えられる。
【0022】
本発明において、前記純水槽の純水循環経路(配管、ライン)に、フィルタ手段を有することが好ましい。
死滅したバクテリアや分解されたバクテリア等をフィルタで捕捉するためである。なお、死滅したバクテリアは、基板表面で繁殖することは無いと考えられる。
フィルタの捕捉粒径は、0.01〜0.05μm程度が好ましい。
【0023】
本発明において、前記洗浄工程を行う前の基板を保管しておく純水槽と、前記洗浄工程を行う洗浄槽との間に、純水処理と、超音波またはメガソニック処理とを組み合わせた処理を行う工程を設けることが好ましい。
前記洗浄工程を行う前の基板について、純水処理と、超音波またはメガソニック処理とを組み合わせた処理を行うことによって、基板に付着したバクテリア等を除去する効果があるからである。
純水処理と、超音波またはメガソニック処理とを組み合わせた処理としては、基板を純水槽に浸漬し純水槽(オーバーフロー)中で超音波またはメガソニック処理を行う態様や、基板に純水を吹きかける(シャワーなど)とともに超音波またはメガソニック処理を行う態様、などが挙げられる。
なお、メガソニック洗浄は、超音波洗浄より高周波(1MHz程度)の超音波で洗浄する洗浄法である。メガソニック洗浄は、高周波な分、振動が細かくマイルドなので、超音波洗浄に比べ洗浄力は若干落ちるが、相対的に汚れの少ない第3および第4研磨工程(超精密研磨工程、最終(超精密)研磨工程)後のガラス基板の洗浄などに向いている。メガソニック洗浄は浸漬式、枚葉スピン式のどちらの装置でも適用出来る。メガソニック洗浄と超音波洗浄を組み合わせることもできる。
【0024】
本発明では、前記研磨後の基板を、フッ酸、ケイフッ酸、またはフッ酸及びケイフッ酸を含む洗浄液で処理する工程を有する。
本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥は、前記研磨後の基板を、フッ酸、ケイフッ酸、またはフッ酸及びケイフッ酸を含む洗浄液で処理する場合に特に問題となる。
【0025】
本発明では、前記研磨後の基板を、フッ酸及び/又はケイフッ酸を含む洗浄液で洗浄する。通常、コロイダルシリカ砥粒を用いた研磨液によりガラス基板を精密研磨した後の洗浄としては、アルカリ洗浄や硫酸、塩酸等の洗浄が行われる。しかし、コロイダルシリカ砥粒には極微量のFe、Al、Ca、Mg、Ti、Cu、Ni、Cr等の不純物が含まれていることがあり、この不純物が精密研磨終了後にガラス基板表面に付着したことにより発生する高さ数nm程度、大きさが数十nm〜2μmの凸状の突起を従来の洗浄方法をそのまま適用したのでは効果的に防止することができない(特許文献1参照)。フッ酸及び/又はケイフッ酸を含む洗浄液で洗浄することにより、これらの不純物を効果的に溶解除去でき、これらの不純物が原因の特許文献1記載の高さ数nm程度、大きさが数十nm〜2μmの凸状の突起の発生を効果的に低減することができる。
前記研磨後の基板としては、例えば、前記最終研磨工程(第4研磨工程)実施後の基板や、前記超精密研磨工程(第3研磨工程)実施後の基板などが挙げられる。
本発明では、洗浄による表面粗さの悪化をなるべく防ぐために、フッ酸やケイフッ酸の濃度は、低い方が好ましい。すなわち、上述の不純物を溶解除去し、かつ、ガラス基板はあまりエッチングされない条件にすることにより、特許文献1記載の高さ数nm程度、大きさが数十nm〜2μmの凸状の突起の高さ、並びに、本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥の高さ、を抑えることができる。よって、ガラス基板に対して比較的エッチング作用が弱いケイフッ酸、ケイフッ酸+フッ酸、又は、低濃度のフッ酸を用いることによって、特許文献1記載の高さ数nm程度、大きさが数十nm〜2μmの凸状の突起の高さ、並びに、本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥の高さ、を低減することができるのである。
フッ酸、ケイフッ酸の濃度としては、両者とも、0.001〜0.5wt%が好ましい。
【0026】
本発明は、研磨砥粒はコロイダルシリカである場合に好適に適用できる。
本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥は、研磨砥粒としてコロイダルシリカを使用する研磨工程において問題となる。
コロイダルシリカは、例えば、第1および第2研磨工程(粗研磨、精密研磨)後の、超精密研磨工程(第3研磨工程)や、最終研磨工程(第4研磨工程)において研磨砥粒として使用される。
【0027】
本発明において、研磨砥粒は、有機ケイ素化合物を加水分解することで生成したコロイダルシリカであることが好ましい。これにより、特許文献1記載の高さ数nm程度、大きさが数十nm〜2μmの凸状の突起の発生が抑制される。
ここで、有機ケイ素化合物を加水分解することで生成したコロイダルシリカ砥粒とは、具体的には、例えば、金属不純物が除去された高純度アルコキシシランを原料にゾルゲル法で合成することによって、高純度なコロイダルシリカ砥粒としたもの等である。
上記の方法で合成、生成された高純度なコロイダルシリカ砥粒は、純度が99.99999%と極めて高く、しかも、Na、Kのアルカリ金属や、Fe、Al、Mg、Ti等の重金属といった不純物も極めて少ない。よって、後述するようなアルカリ金属によるゲル状物質や、重金属の不純物がガラス基板に付着し、付着した箇所がマスクとなって研磨速度の差やエッチングにより形成される特許文献1記載の高さ数nm程度、大きさが数十nm〜2μmの凸状の突起の発生を抑えることができる。
【0028】
本発明では、前記研磨工程で使用する前記研磨液のpHが、9.6〜11.0であることが好ましい。
前記研磨液のpHが、9.6〜11.0である研磨工程は、例えば、第1および第2研磨工程(粗研磨、精密研磨)後の、超精密研磨工程(第3研磨工程)や、超精密研磨工程(第4研磨工程)が挙げられる。
【0029】
本発明では、前記研磨工程における研磨の取り代が片面で10μm以下であることが好ましい。
前記研磨工程における研磨の取り代が片面で10μmである(研磨の取り代が小さい)工程は、例えば、第1および第2研磨工程(粗研磨、精密研磨)後の、超精密研磨工程(第3研磨工程)や、超精密研磨工程(第4研磨工程)が挙げられる。
【0030】
本発明では、前記研磨工程における研磨レートが20nm/min以下であることが好ましい。
前記研磨工程における研磨レートが20nm/min以下である(研磨の取り代が小さい)工程は、例えば、第1および第2研磨工程(粗研磨、精密研磨)後の、超精密研磨工程(第3研磨工程)や、超精密研磨工程(第4研磨工程)が挙げられる。
【0031】
本発明において、前記研磨工程で使用する研磨布は軟質であることが好ましい。
前記研磨工程で使用する研磨布が軟質である工程は、例えば、第1および第2研磨工程(粗研磨、精密研磨)後の、超精密研磨工程(第3研磨工程)や、超精密研磨工程(第4研磨工程)が挙げられる。
【0032】
本発明では、前記研磨液は、テトラメチルアンモニアを添加したものであることが好ましい。
前記研磨液がテトラメチルアンモニアを添加したものである研磨工程は、例えば、第1および第2研磨工程(粗研磨、精密研磨)、超精密研磨工程(第3研磨工程)後の、超精密研磨工程(第4研磨工程)が挙げられる。
本発明では、前記研磨液は、NaOHを添加したものであることが好ましい。
前記研磨液がNaOHを添加したものである研磨工程は、例えば、第1および第2研磨工程(粗研磨、精密研磨)、超精密研磨工程(第3研磨工程)(最終研磨工程)が挙げられる。
【0033】
精密研磨工程で使用されている研磨パッドは、基材である不織布の上に、発泡させた樹脂の表面をバフ研磨して開孔を露出させてナップ層を形成させたものが用いられる場合が多い。
本発明において、研磨パッド(研磨布)は、少なくとも、基材と、前記基材上に形成され、表面に開孔を有する発泡した樹脂からなるナップ層とからなる。
本発明において、発泡した樹脂としては、例えば、合成樹脂中にガスを細かく分散させ、内部に細かな泡を無数に含む、発泡状または多孔質形状に成形されたものを指し、固体である合成樹脂と気体の不均一分散系とも定義できる。
本発明において、発泡樹脂(ナップ層)としては、ウレタンが広く利用されている。
発泡樹脂(ナップ層)がポリウレタン樹脂である場合は、ポリウレタン樹脂を構成する原料樹脂として、ポリカーボネート系、ポリエステル系、ポリエーテル系などの樹脂や、これらの樹脂をブレンドした樹脂を用いることができる。
【0034】
本発明は、研磨対象物はガラス基板である場合に好適に適用できる。
本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥は、研磨対象物の材質がガラスである場合の研磨工程において問題となる。
本発明は、ガラス基板は両面同時に研磨する場合に好適に適用できる。
本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥は、ガラス基板を両面同時に研磨する研磨工程において問題となる。
【0035】
本発明において、ガラス基板の材料としては、例えば、合成石英ガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、アルミノボロシリケートガラス、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、などが挙げられる。また、本発明は、例えばアモルファスガラスであれば、SiO−TiO系ガラス、結晶化ガラスであれば、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス等の基板の研磨に適用できる。
【0036】
本発明において、マスクブランクスとしては、フォトマスクブランクス、位相シフトマスクブランクス(ArFエキシマレーザー露光用位相シフトマスクブランクス、Fエキシマレーザー露光用位相シフトマスクブランクス)、X線やEUV用反射型マスクブランクスなどが挙げられ、用途としてはLSI(半導体集積回路)用マスクブランクス、LCD(液晶表示板)用マスクブランクスなどが挙げられる。
【0037】
上述の通り、本実施の形態にかかるマスクブランクス用ガラス基板の製造方法は、本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥により発生する位相差変化(位相欠陥)を抑えることができるため、特に、露光波長の短いリソグラフィーに使用されるArFエキシマレーザー露光用位相シフトマスクブランクス用ガラス基板、Fエキシマレーザー露光用位相シフトマスクブランクス用ガラス基板、EUV反射型マスクブランクス用ガラス基板に特に効果がある。
【0038】
本発明のマスクブランクスの製造方法は、上記本発明のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法によって製造したマスクブランクス用ガラス基板の主表面上に、露光光に対し光学的変化をもたらす薄膜を形成することを特徴とする
基板表面に本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥がないマスクブランクス用ガラス基板を使用してマスクブランクスを製造するので、マスクブランクス表面に位相欠陥等の表面欠陥のないマスクブランクスが得られる。
【0039】
ここで、露光光に対し光学的変化をもたらす薄膜とは、位相シフト膜(多層の場合を含む)又は遮光膜(多層の場合を含む)、あるいは位相シフト膜と遮光膜とを積層した膜や、位相シフト機能と遮光機能を有するハーフトーン膜(多層の場合を含む)、位相シフト機能を有さず、所定の透過率で露光光を透過させる半透過膜、反射膜、吸収体膜などを指す。従って、本発明でいうマスクブランクは広義の意味で用い、遮光膜のみが形成されたフォトマスクブランクのほか、位相シフト膜やハーフトーン膜などが形成された位相シフトマスクブランク、半透過膜などが形成されたエンハンサー用マスクブランク、更には反射膜と吸収体膜などが形成された反射型マスクブランクスが含まれる。
【0040】
本発明の転写マスクの製造方法は、上記本発明のマスクブランクスの製造方法で製造したマスクブランクスにおける前記薄膜をパターニングして、前記ガラス基板上に薄膜パターンを形成することを特徴とする。
上記本発明のマスクブランクスの製造方法によって得られたマスクブランクス表面に位相欠陥等の表面欠陥のないマスクブランクスを使用して転写マスクを製造するので、パターン欠陥のない転写マスクが得られる。
【0041】
本発明の半導体装置の製造方法は、上記本発明の転写マスクの製造方法で製造した転写マスクを用いて、半導体基板上にリソグラフィー技術により微細パターンを形成することを特徴とする。
上記本発明の転写マスクの製造方法によって得られた転写マスク表面にパターン欠陥のない転写マスクを使用してリソグラフィー技術により半導体装置を製造するので、パターン欠陥のない半導体装置が得られる。
【0042】
本発明により得られるガラス基板は、ガラス基板の主表面内に主成分がSiとOとを含み、本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥が存在しないマスクブランクス用ガラス基板である。位相欠陥の要因となる高さ数nm程度の凸状欠陥が、ガラス基板の主表面内に存在しないので、ガラス基板上に薄膜を形成してマスクブランクスにしたときに、位相欠陥等の表面欠陥のないマスクブランクスを提供することができる。このようなマスクブランクス用ガラス基板は、上記本発明のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法によって製造することができる。
【0043】
本発明により得られるマスクブランクスは、本発明により得られるマスクブランクス用ガラス基板の主表面上に、露光光に対し光学的変化をもたらす薄膜を形成することを特徴とするマスクブランクスである。基板表面に本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥がないマスクブランクス用ガラス基板を使用してマスクブランクスを製造するので、マスクブランクス表面に位相欠陥等の表面欠陥のないマスクブランクスが得られる。
【0044】
本発明により得られる転写マスクは、本発明により得られるマスクブランクスにおける前記薄膜をパターニングして、前記ガラス基板上に薄膜パターンが形成されている転写マスクである。マスクブランクスの位相欠陥等の表面欠陥によるパターン欠陥がない転写マスクが得られる。
【0045】
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。以下の例では、マスクブランクス用ガラス基板として、位相シフトマスクブランクス用ガラス基板(以下、単にガラス基板と称する)を例に説明する。尚、本実施例における研磨の工程は、両面研磨装置を用いて行なう。図3は両面研磨装置の概略構成例を示す図である。図3に示した例は、遊星歯車方式の両面研磨装置である。この遊星歯車方式の両面研磨装置1は、太陽歯車2と、その外方に同心円状に配置される内歯歯車3と、太陽歯車2及び内歯歯車3に噛み合い、太陽歯車2や内歯歯車3の回転に応じて公転及び自転するキャリア4と、このキャリア4に保持された被研磨加工物5(ガラス基板)を研磨パッド6が貼着された挟持可能な上定盤7及び下定盤8と、上定盤7と下定盤8との間に研磨液を供給する研磨液供給部9とを備えている。
【0046】
研磨加工時には、キャリア4に保持された被研磨加工物5を上定盤7及び下定盤8に挟持するとともに、上下定盤の研磨パッド6と被研磨加工物5との間に研磨液を供給しながら太陽歯車2や内歯歯車3の回転に応じて、キャリア4が公転及び自転しながら、被研磨加工物5の上下両面を同時に研磨加工する。両面研磨装置1には、太陽歯車3、内歯歯車4、上定盤7、下定盤8、これらの回転数と回転時間、及び荷重シーケンス(研磨時間と荷重)を設定し、制御する動作制御部10(図示せず)が接続されており、予め設定した太陽歯車3、内歯歯車4、上定盤7、下定盤8の回転数と回転時間、及び加工荷重にしたがって、被研磨加工物5を研磨加工するようになっている。
【0047】
(実施例1〜2、比較例1〜4)
(マスクブランクス用ガラス基板の製造)
(1)粗研磨工程
合成石英ガラス基板(152.4mm×152.4mm)の端面を面取加工、及び両面ラッピング装置によって研削加工を終えたガラス基板を、両面研磨装置に10枚セットし、以下の研磨条件で粗研磨工程を行った。10枚セットを10回行い合計100枚のガラス基板の粗研磨工程を行った。尚、加工荷重、研磨時間は適宜調整して行った。
研磨液:酸化セリウム(平均粒径2〜3μm)+水
研磨パッド:硬質ポリシャ(ウレタンパッド)
粗研磨工程後、ガラス基板に付着した研磨砥粒を除去するため、ガラス基板を洗浄槽に浸漬(超音波印加)し、洗浄を行った。
【0048】
(2)精密研磨工程
両面研磨装置に10枚セットし、以下の研磨条件で精密研磨工程を行った。10枚セットを10回行い合計100枚のガラス基板の精密研磨工程を行った。尚、加工荷重、研磨時間は適宜調整して行った。
研磨液:酸化セリウム(平均粒径1μm)+水
研磨パッド:軟質ポリシャ(スウェードタイプ)
精密研磨工程後、ガラス基板に付着した研磨砥粒を除去するため、ガラス基板を洗浄槽に浸漬(超音波印加)し、洗浄を行った。
【0049】
(3)超精密研磨工程1(第3ポリシング)
両面研磨装置に10枚セットし、以下の研磨条件で超精密研磨工程を行った。
10枚セットを10回行い合計100枚のガラス基板の超精密研磨工程を行った。尚、加工荷重、研磨時間は位相シフトマスクブランクスに使用するガラス基板として必要な表面粗さ(所望の表面粗さ:二乗平均平方根粗さRqで0.2nm以下)となるように適宜調整して行った。
研磨液:アルカリ性(pH10.2);コロイダルシリカ(平均粒径30〜200nm)+水
研磨パッド:超軟質ポリシャ(スウェードタイプ);バフ処理発泡樹脂/不織布(基材)の構成のもの使用
超精密研磨工程1を実施後、ガラス基板に付着した研磨砥粒を除去するため、ガラス基板を、ケイフッ酸(0.2wt%)を含む洗浄液が入った洗浄槽に浸漬(超音波印加)し、洗浄を行った。
【0050】
(4)最終研磨工程(超精密研磨工程2、第4ポリシング)
両面研磨装置に10枚セットし、以下の研磨条件で超精密研磨工程を行った。
10枚セットを10回行い合計100枚のガラス基板の超精密研磨工程を行った。尚、加工荷重、研磨時間は位相シフトマスクブランクスに使用するガラス基板として必要な表面粗さ(所望の表面粗さ:二乗平均平方根粗さRqで0.2nm以下)となるように適宜調整して行った。
研磨液:アルカリ性(pH 10 );コロイダルシリカ(平均粒径80nm)+水(水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH:Tetramethyl ammonium hydroxide)添加)
研磨パッド:超軟質ポリシャ(スウェードタイプ);バフ処理発泡樹脂/フェルト(基材)の構成で、発泡樹脂は100%樹脂モジュラスで、20〜30MPa(軟質)のものを使用
加工荷重: 30g/cm
研磨時間: 20 分
基板回転数: 6rpm
研磨定盤回転数:12rpm
最終研磨工程(超精密研磨工程2)終了後、研磨が終了したガラス基板5〜10枚をカセットに入れ、バンドシャワーをかけ、研磨工程に付随する純水槽に保管した。その後、カセットに入れたガラス基板を、基板搬送用の水槽(ため水のコンテナ)で搬送し、洗浄装置におけるローダー水槽にセットした。洗浄装置においては、ローダー水槽から、純水オバーフロー+メガソニック1分、フッ酸+ケイフッ酸+メガソニック1分、フッ酸+ケイフッ酸+メガソニック1分、純水スクラブ洗浄、純水オバーフロー+メガソニック、スピンすすぎ、スピン乾燥で処理した。
図1に示すように、洗浄装置におけるローダー水槽10には、純水製造装置(図示せず)から配管15を介して新純水が供給される。ローダー水槽10においては、オーバーフローさせた純水は、純水循環経路11に設けたポンプ12によって、純水循環経路11を通って、ローダー水槽10に供給される。純水循環経路11には、紫外線照射手段13として、水銀ランプが設けられている。水銀ランプを設ける箇所の配管は透明とし、純水循環経路中を流れる純水に紫外線を照射する。純水循環経路11には、フィルタ14として、捕捉粒径0.2μmのフィルタが設けられている。
洗浄装置においては、ローダー水槽10、純水オバーフロー槽20、フッ酸+ケイフッ酸処理槽30、フッ酸+ケイフッ酸処理槽31、に順次浸漬され、処理される。純水オバーフロー槽20、フッ酸+ケイフッ酸処理槽30、フッ酸+ケイフッ酸処理槽31は、それぞれ、メガソニック処理が付加されている。
純水としては、DIW(Deionized water)を使用した。
【0051】
比較例1では、基板搬送用の水槽(ため水のコンテナ)は、生菌数2500(CFU/ml)、全有機炭素量1.3(mg/l)、0.3μm以下のパーティクル数546496(count/ml)であった。
比較例1では、上記基板搬送用の水槽(ため水のコンテナ)に浸漬されている基板を取り出し、直接(純水オバーフロー槽20は介在させないで)、前記フッ酸+ケイフッ酸処理槽30、31で洗浄を行った。
その結果、本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが5μm〜20μm程度の凸状欠陥は、極めて多数(具体的には200個/cm)検出された。
【0052】
比較例2では、基板搬送用の水槽(ため水のコンテナ)は、生菌数2500(CFU/ml)、全有機炭素量1.3(mg/l)、0.3μm以下のパーティクル数546496(count/ml)であった。
比較例2では、上記基板搬送用の水槽(ため水のコンテナ)に浸漬されている基板を取り出し、純水オバーフロー槽20(メガソニック有り)、フッ酸+ケイフッ酸処理槽30(メガソニック有り)、フッ酸+ケイフッ酸処理槽31(メガソニック有り)で洗浄を行った。
その結果、本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが5μm〜20μm程度の凸状欠陥は、150個/cmであった。
【0053】
比較例3では、ローダー水槽10は、生菌数1500(CFU/ml)、全有機炭素量1.1(mg/l)、0.3μm以下のパーティクル数74018(count/ml)であった。
比較例3では、上記ローダー水槽10に浸漬されている基板を取り出し、直接(純水オバーフロー槽20は介在させないで)、前記フッ酸+ケイフッ酸処理槽30、31で洗浄を行った。
その結果、本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが5μm〜20μm程度の凸状欠陥は、極めて多数(具体的には150個/cm)検出された。
【0054】
比較例4では、ローダー水槽10は、生菌数1500(CFU/ml)、全有機炭素量1.1(mg/l)、0.3μm以下のパーティクル数74018(count/ml)であった。
比較例4では、上記ローダー水槽10に浸漬されている基板を取り出し、純水オバーフロー槽20(メガソニック有り)、フッ酸+ケイフッ酸処理槽30(メガソニック有り)、フッ酸+ケイフッ酸処理槽31(メガソニック有り)で洗浄を行った。
その結果、本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが5μm〜20μm程度の凸状欠陥は、100個/cmであった。
【0055】
実施例1では、基板搬送用の水槽(ため水のコンテナ)は、純水製造装置から供給される新しい純水を使用し、生菌数は検出されず(CFU/ml)、全有機炭素量 検出下限値以下、0.3μm以下のパーティクル数 500(count/ml)であった。また、ローダー水槽10は、生菌数は検出されず(CFU/ml)、全有機炭素量0.1(mg/l)、0.3μm以下のパーティクル数12359〜13603(count/ml)であった。
実施例1では、上記ローダー水槽10に浸漬されている基板を取り出し、純水オバーフロー槽20(メガソニック有り)、フッ酸+ケイフッ酸処理槽30(メガソニック有り)、フッ酸+ケイフッ酸処理槽31(メガソニック有り)で洗浄を行った。
その結果、本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが5μm〜20μm程度の凸状欠陥は、発生なし(ゼロ)であった。
【0056】
実施例2では、基板搬送用の水槽(ため水のコンテナ)は、生菌数は検出されず(CFU/ml)、全有機炭素量 検出下限値以下、0.3μm以下のパーティクル数 500(count/ml)であった。また、ローダー水槽10は、生菌数は検出されず(CFU/ml)、全有機炭素量0.1(mg/l)、0.3μm以下のパーティクル数12359〜13603(count/ml)であった。
実施例1では、上記ローダー水槽10に浸漬されている基板を取り出し、直接(純水オバーフロー槽20は介在させないで)、前記フッ酸+ケイフッ酸処理槽30、31で洗浄を行った。
その結果、本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが5μm〜20μm程度の凸状欠陥は、ゼロ(発生なし)であった。
【0057】
なお、上述の実施例及び比較例で確認された本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが5μm〜20μm程度の凸状欠陥を分析したところ、TEM−EDX分析(透過型電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線分光装置)では、界面及び特異元素は確認できないことから石英(主成分がSi、Oを含むもの)の段差であることを解明した。AMF(原子間力顕微鏡)で分析したところ、高さは4μm程度であった。
【0058】
(実施例3)
上述の実施例1において、超精密研磨工程1、2で使用する研磨液を以下のようにした以外は実施例1と同様にしてマスクブランクス用ガラス基板を作製した。
研磨液:高純度コロイダルシリカ(平均粒径30〜100nm)+水
高純度コロイダルシリカ:有機ケイ素を加水分解することで生成したコロイダルシリカであって、金属不純物が除去された高純度アルコキシシランを原料にゾルゲル法により合成したもの。純度が99.99999%。コロイダルシリカ砥粒に含まれるアルカリ金属(Na,K)の含有量が0.1ppm以下。
超精密研磨工程1実施後、及び、超精密研磨工程2実施後に、それぞれ、得られたガラス基板の主表面をレーザー干渉コンフォーカル光学系による欠陥検査装置を用いて特許文献1記載の高さ数nm程度(約2〜7nm)、大きさが数十nm〜2μmの凸状の突起を調べたところ、いずれの場合においても、このような表面欠陥は全く確認できず、高さ数nm程度の凸状の突起の発生率は0%(100枚中0枚)であった。
【0059】
(マスクブランクスの製造)
また、上述の実施例1〜3にかかるマスクブランクス用ガラス基板の製造方法によって製造した本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥(実施例1、2)、さらには特許文献1記載の高さ数nm程度の凸状欠陥(実施例3)、のないマスクブランクス用ガラス基板、並びに、上述の比較例1〜4の製造方法によって製造した本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥のあるガラス基板の一主表面上に、モリブデンシリサイド窒化膜からなるハーフトーン膜をスパッタリング法により形成した。
【0060】
こうして作製したモリブデンシリサイド窒化膜からなるハーフトーン膜の欠陥検査を行ったところ、実施例1〜3にかかるマスクブランクス用ガラス基板の製造方法によって製造したマスクブランクス用ガラス基板を用いた位相シフトマスクブランクスには本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが5μm〜20μm程度の凸状欠陥(実施例1、2)、さらには特許文献1記載の凸状の表面欠陥(実施例3)は認められなかった。これに対し、本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥が確認されたマスクブランクス用ガラス基板(比較例1〜4)を使って作製した位相シフトマスクブランクスにおいては、ハーフトーン膜表面に本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状の表面欠陥が確認された。
【0061】
さらに、欠陥検査後の実施例1〜3および比較例1〜4にかかるマスクブランクス用ガラス基板におけるハーフトーン膜の上に、酸窒化炭化クロム、窒化クロム、酸窒化炭化クロムの3層積層構造の遮光膜をスパッタリング法により形成し、位相シフトマスクブランクスを作製した。
【0062】
(位相シフトマスクの製造)
上述の本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥(実施例1、2)、さらには特許文献1記載の凸状欠陥(実施例3)が認められなかった位相シフトマスクブランクス、及び本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥が確認された位相シフトマスクブランクス(比較例1〜4)上にレジスト膜を形成し、さらに、レジスト膜をパターニングしてレジストパターンとした。次に、このレジストパターンをマスクにして、遮光膜をドライエッチングによりパターニングした。次に、パターンが形成された遮光膜をマスクにして、ハーフトーン膜をドライエッチングによりパターニングした。さらに、遮光帯用のレジストパターンを形成し、そのレジストパターンをマスクにして、遮光膜をドライエッチングして遮光帯を形成した。以上の工程により、ガラス基板上にハーフトーン膜パターンと遮光帯が形成された位相シフトマスクを作製した。
【0063】
こうして作製した位相シフトマスクについて、表面欠陥を確認したところ、本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状欠陥(実施例1、2)、さらには特許文献1記載の凸状の表面欠陥(実施例3)のないガラス基板を使って作製した位相シフトマスクには、位相欠陥は確認されなかったが、比較例1〜4のガラス基板を使って作製した位相シフトマスクに、ガラス基板表面とハーフトーン膜パターンの境界に本発明に係る上記高さ数nm程度、大きさが1μm〜20μm程度の凸状の表面欠陥が確認され位相欠陥となった。
【0064】
(半導体装置の製造)
また、これら位相欠陥が確認された位相シフトマスク(比較例1〜4)を使って露光機により半導体基板上にリソグラフィー技術により微細パターンを形成したところ、位相シフトマスクの位相欠陥要因のパターン欠陥が確認されたが、位相欠陥が確認されなかった位相シフトマスク(実施例1〜3)を使って半導体基板上に微細パターンを形成した場合は、パターン欠陥はなかった。
【0065】
(EUV反射型マスクブランクスおよびマスクの製造)
上述の実施例1〜3、比較例1〜4にかかるマスクブランクス用ガラス基板の製造方法によって製造したガラス基板上に、Mo膜(2.8nm)とSi膜(4.2nm)の積層膜を40周期にわたり形成し、最後にSi膜を4nm形成して多層反射膜を形成した。次に、キャップ層としてRuNb膜を2.5nm形成した。さらに、RuNb膜上にTaBN膜からなる吸収体膜を形成してEUV反射型マスクブランクスを作製した。さらに、TaBN膜上にレジスト膜を形成し、パターニングしてレジストパターンとした後、このレジストパターンをマスクにしてTaBN膜をドライエッチングによりエッチング除去、レジストパターンを除去してEUV反射型マスクを作製した。
【0066】
(半導体装置の製造)
上述と同様にしてEUV反射型マスクブランクスの表面欠陥、EUV反射型マスクの位相欠陥、EUV反射型マスクを使ってリソグラフィー技術により作製した半導体基板上に形成された微細パターンのパターン欠陥について調べたところ、実施例1〜3のガラス基板を使った場合、上述の欠陥はなかったが、比較例1〜4のガラス基板を使った場合、EUV反射型マスクブランクス、EUV反射型マスク、半導体装置に上述の欠陥が確認された。
【0067】
尚、上述の実施例では、遊星歯車方式の両面研磨装置を使って研磨加工を行った例を示したが、これに限らず、他の方式の両面研磨装置や片面ずつ研磨を行う片面研磨装置を使い、コロイダルシリカ砥粒を用いた研磨液により精密研磨しても上述と同様の効果が得られる。
また、上述の実施例では、コロイダルシリカ砥粒を含む研磨液による研磨工程(超精密研磨工程)の前に、酸化セリウム砥粒を含む研磨液による粗研磨工程、精密研磨工程を行なった例をあげたが、これに限定されるものではない。コロイダルシリカ砥粒を含む研磨液による研磨工程を行なう前のガラス基板が十分に平坦で平滑であれば、酸化セリウム砥粒による粗研磨工程及び/又は精密研磨工程を行なわなくてもよい。
また、粗研磨工程、精密研磨工程を行なう場合であっても、酸化セリウム以外に、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等の研磨砥粒を使用してもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、近年における超LSIデバイスの高密度化、高精度化にも対応できるように基板表面に高さ数nm程度の凸状欠陥のないマスクブランクス用ガラス基板及びその製造方法、並びに該基板を用いたマスクブランクス、及びその製造方法、並びに、転写マスク及びその製造方法、及び半導体装置の製造方法を得る際等に利用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 両面研磨装置
2 太陽歯車
3 内歯歯車
4 キャリア
5 被研磨加工物(ガラス基板)
6 研磨パッド
7 上定盤
8 下定盤
9 研磨液供給部
10 ローダー水槽
11 純水循環経路
12 ポンプ
13 紫外線照射手段
14 フィルタ
15 配管
20 純水オバーフロー槽
30 フッ酸+ケイフッ酸処理槽
31 フッ酸+ケイフッ酸処理槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクブランクス用ガラス基板表面を、研磨砥粒を含む研磨液を用いて両面研磨する研磨工程を有するマスクブランクス用ガラス基板の製造方法において、
前記研磨後の基板を、フッ酸、ケイフッ酸、またはフッ酸及びケイフッ酸を含む洗浄液で処理する洗浄工程を有すると共に、
前記洗浄工程を行う前の基板を保管しておく純水槽内、または前記純水槽の純水循環経路に、紫外線を照射する手段を有する、
ことを特徴とするマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記紫外線を照射する手段は、水銀ランプであることを特徴とする請求項1に記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記純水槽の純水循環経路に、フィルタ手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
【請求項4】
前記洗浄工程を行う前の基板を保管しておく純水槽と、前記洗浄工程を行う洗浄槽との間に、純水処理と、超音波またはメガソニック処理とを組み合わせた処理を行う工程を設けることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
【請求項5】
前記研磨砥粒は、コロイダルシリカ砥粒を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
【請求項6】
前記研磨液のpHが、9.6〜11.0であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法で製造したマスクブランク用ガラス基板の主表面上に、露光光に対し光学的変化をもたらす薄膜を形成することを特徴とするマスクブランクスの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のマスクブランクスの製造方法で製造したマスクブランクスにおける前記薄膜をパターニングして、前記ガラス基板上に薄膜パターンを形成することを特徴とする転写マスクの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の転写マスクの製造方法で製造した転写マスクを用いて、半導体基板上にリソグラフィー技術により微細パターンを形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−212081(P2012−212081A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78548(P2011−78548)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】