説明

マスク

【課題】装着が目立たないマスクを提供する。
【解決手段】顔面の対象部位を覆う本体部2と、この本体部2を身体に係止するための係止部3とを有するマスク1において、少なくとも本体部2を通気性素材により形成し、かつ表裏方向におけるJIS P 8138に規定される不透明度を40%以下にする。また、少なくとも係止部3を肌色にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口許や鼻孔等の顔面の対象部位を覆うマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マスクとしては、ガーゼを複数枚重ねて矩形状となし、その左右両側に耳掛け用のゴム紐を環状に取り付けたものが汎用されてきた。
【0003】
また、使い捨て用としては、カップ状に成形された本体部の左右両側に耳掛け用のゴム紐を環状に取り付けたものや、矩形等に形成した発泡ウレタンシートの左右両側に耳掛け用の開孔を設けたものなどが用いられてきた。
【0004】
さらに近年では、不織布を使用したマスクが開発されており、平坦状のものの他、当初は平坦状であるものの幅方向に沿ってプリーツが形成されており、口元、鼻の膨らみに追従して形状変形するもの(例えば特許文献1参照)や、左側部分及び右側部分を重ねて幅方向中央線で接合し、左側部分と右側部分との間を広げてその間の部分を口元や鼻にあてがうポケット型のもの(例えば特許文献2参照)等が提供されている。
【0005】
しかしながら、従来のマスクにおいては、機能性は重視されているが、外見は軽視されており、装着していると非常に目立つものしかなく、装着するのに抵抗感があった。
【特許文献1】特開2003−275332号公報
【特許文献2】特開平7−275384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の主たる課題は、装着が目立たないマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
顔面の対象部位を覆う本体部と、この本体部を身体に係止するための係止部とを有するマスクにおいて、
少なくとも前記本体部は、通気性素材により形成され、かつ表裏方向におけるJIS P 8138に規定される不透明度が40%以下である、ことを特徴とするマスク。
【0008】
(作用効果)
このように、通気性素材により形成される本体部の不透明度が40%以下とされると、装着者の肌が透けて見えるようになり、肌との一体感が高まる結果、装着が目立たなくなる。また、装着者の口許を外部から視認できるため、聴覚障害者の読話等において話し手の口の動きや表情を読み取り易くなるという利点もある。
【0009】
なお、本体部の透明性の確保が困難になる場合、本体部を肌色にすることにより、肌との見分けをつき難くするのが好ましい。本発明において「肌色」とは、HSV表色系における色相「H」値が0〜30の色を意味する。
【0010】
<請求項2記載の発明>
前記係止部は、表裏方向におけるJIS P 8138に規定される不透明度が40%以下である、請求項1記載のマスク。
【0011】
(作用効果)
このように、係止部についても不透明度が40%以下とされていると、係止部において装着者の肌が透けて見えるようになり、肌との一体感が高まる結果、装着が目立たなくなる。なお、係止部は、ゴム等の存在により透明性が低下し易く、透明性の確保が困難になり易いため、本項記載のように、少なくとも係止部を肌色にすることにより、肌との見分けをつき難くするのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上のとおり、本発明によれば、装着が目立たなくなり、装着の抵抗感の少ないマスクとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら詳説する。
(第一の形状例)
図1は、ポケット型のマスク1を示している。このマスク1は、口許及び鼻腔を覆う本体部2と、この本体部2を身体に係止するための係止部3とを備えている。本体部2は、幅方向中央線に関して対称をなす左側部分2L及び右側部分2Rからなり、両部分2L,2Rは平坦な素材からなり、かつ幅方向中央側の縁部4で接合されている。また、この接合部分4は、上下両側よりも中間部が外側に膨出する湾曲状をなしている。
【0014】
一方、係止部3は、耳に掛けるための開口5を有する環状の平坦部材であり、本体部2の左右両側縁2e,2eに接合されている。
【0015】
本体部2及び係止部3は、左側部分2Lと右側部分2Rとを重ね合わせた非使用状態では平坦になる。これに対して、本体部2は、左側部分2Lと右側部分2Rとの間を広げた使用状態(図示状態)ではカップ状になる。この状態で着用者の口許や鼻腔を覆うようにあてがうと、口許や鼻腔のまわりに空間を残して被覆することができる。
【0016】
(第二の形状例)
第一の形状例では、本体部2と係止部3とを別の部材として形成し、両者を接合しているが、図2に示すように本体部2と係止部3とを単一の部材として一体的に形成することもできる。
【0017】
(第三の形状例)
また、図示しないが、ポケット型の形態において、接合線を上下方向に沿って形成する必要はなく、例えば幅方向に沿って形成することもできる。
【0018】
(第四の形状例)
図3及び図4は、平坦型のマスク11を示している、このマスク11は、口許及び鼻腔を覆う本体部2と、この本体部2を身体に係止するための係止部3とを備えている。本体部2は、幅方向に沿うプリーツ6(ジグザグ状に折り重ねて形成した襞)を複数有しおり、その両側部には、係止部3としての耳掛け用ゴム紐が環状に取り付けられている。プリーツの数は2〜3本が好ましい。
【0019】
本例では、本体部11の幅方向中間部において上端と下端とを離間させるように引っ張ると、中央部が外側に膨出すようにプリーツ6が拡開し、全体としてカップ状に変形する。よって、図5に示すように、この状態で着用者の口許や鼻腔を覆うようにあてがうと、口許や鼻腔のまわりに空間を残して被覆することができる。
【0020】
本体部2の形状としては、図示のような矩形の他、楕円形、菱形等、適宜の形状を採用することができる。
【0021】
(第五の形状例)
第五の形状例は図6に示すとおり、プリーツ6を有する第四の形状例に対して、プリーツを省略したものである。このような簡素な形態も採用することができる。
【0022】
(第六の形状例)
図1〜図4に示す示形態の係止部3は、環状部材を耳に掛け止めるタイプであるが、本体部の両側部を帯状部材で繋ぎ、この帯状部材を頭部または首部に掛け回して係止するタイプも採用することができる(図示略)。このタイプの係止部は例えば特開平9−313631号公報に示されている。
【0023】
(層構造)
本体部2は、一層構造であっても良いが、複数の層からなる構造とするのが好ましい。例えば、図2に示すように、外層2A及び内層2Bを有する2層構造としたり、図4や図6に示すように、外層2A、内層2Bおよびこれらの間に介在された中間層2Cを有する三層構造としたりすることができる。特に、図2に示すように、外層2A(内層でも良い)により、本体部2と係止部3とを単一の部材として一体的に形成し、その本体部相当部分の内面に、内層2Bを積層することにより、本体部2を二層構造とすることもできる。また、このような複数の層からなる層構造は、係止部3においても採用することができる。
【0024】
複数層とする場合、層相互は、全部または一部(上下端部、左右両端部、四隅部、散点状等)を他の隣接層や隣接部材に接合固定することも、また、そのような固定なしに、ある層を他の層間に挟む等により保持させることもできる。要は、層の脱落や剥離無に使用できれば良い。
【0025】
また、複数層とする場合、少なくとも一層、例えば図2に示すような二層構造における内層2B、あるいは図4、図6に示すような三層構造における中間層2Cが、塵埃等の濾過機能、芳香機能、ウイルス・アレルゲン不活化機能、抗菌機能、形状保持機能等の少なくとも一つの機能を有する機能層であるのが好ましい。
【0026】
さらに、複数層とする場合、少なくとも一層を他の層に対して着脱自在に取り付けるのも好ましい形態である。例えば、図6に示すように、三層構造における中間層2Cを、本体部2の端縁(あるいは外層2Aもしくは内層2Bに設けた開口でも良い)の隙間を介して出し入れ自在とすることができる。図示しないが、二層構造の場合、粘着材やメカニカルファスナー等の剥離及び際接着可能な接合手段を用い、一方の層を他方の層の外面に着脱自在に張り付けることもできる。着脱自在とする層の数は特に限定されるものではなく、一層でもまた複数層でも良い。
【0027】
このように着脱自在の層を設ける場合、その層は前述の機能層とすることができる。前述したもの以外の機能層としては、表面にエンボスやワイヤーによる凹凸を設けたシート状部材からなる通気性向上層を挙げることができる。この場合、当該通気性向上層と他の隣接層との間に凹凸による隙間が形成され、通気性が向上する。
【0028】
また、別の機能層としては、湿度変化を打ち消すように湿気の吸収及び放出を行う湿度調整層を挙げることができる。このような湿度調整層は、天然もしくは人工の多孔質無機物質もしくは多孔質有機物質、例えばゼオライトやセピオライト等の多孔質鉱物等を用いて構成することができる。
【0029】
湿度調整層の形態は特に限定されないが、湿度変化を打ち消すように湿気の吸収及び放出を行う粒子と、この粒子を保持する担体とを有するシート状部材とするのは一つの好ましい形態である。この形態に含まれる具体例としては、通気性を有する繊維集合体からなるシート状担体に湿度調整粒子を保持させたものや、通気性を有する袋状担体内に湿度調整粒子を封入させたものを挙げることができる。これらの場合、湿度調整粒子は、担体に対して自由に移動できるように構成しても良いが、必要に応じて担体にバインダー等を用いて接着することができる。繊維集合体の具体例は後述のとおりである。
【0030】
このような湿度調整層を設ける場合、本体部2における少なくとも眼窩下部(通常の形態では本体部の上端部)と対向する部分に設けるのは好ましい形態である。また、湿度調整層を本体部2における少なくとも鼻腔と対向する部分に設けるのも好ましい形態である。前者の場合、眼鏡着用者における眼鏡の曇りが抑制されるようになり、後者の場合、呼吸に伴って出入りする空気の湿度が調整され、喉等の乾燥が和らぐ又は多湿感が軽減されるようになる。
【0031】
(本体部の素材)
本体部2の(複数層の場合には各層の)素材としては、適宜定めることができるが、JIS Z 0208に規定される透湿度が300g/m2・hr以上の透湿素材を用いることができる。
【0032】
このような素材としては、多数の透過孔を有する多孔性シート、網材の他、織布、不織布等の短繊維若しくは長繊維集合体、ならびにこれらの積層体を挙げることができる。
【0033】
繊維集合体を用いる場合、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維などを例示することができる。
【0034】
さらに、不織布を用いる場合、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法等を例示することができる。また、花粉や細かな塵埃の遮断性能を高めるために、SMS不織布やSMMS不織不等のような、極細繊維(直径0.5〜5μm程度)からなる層を有する積層型不織布を用いることもできる。
【0035】
繊維集合体を用いる場合、目付け量は15〜70g/m2程度、特に20〜50g/m2程度とすることができる。目付け量が過度に少なくなると強度に問題が生じ易くなる。特に着脱を繰り返すと係止部等において破れが発生するおそれがある。また、目付け量が過度に多くなると、風合いが損なわれ、喋りづらくなったり、肌との摩擦が強くなったりするおそれがある。
【0036】
繊維集合体を構成する繊維の繊度としては、1.0〜8.0dtex、特に3.0〜7.0dtexであるのが好ましい。繊維が過度に細くなると、目が細かくなり過ぎて所定の透明度を確保できず、過度に太くなると風合いが損なわれるおそれがある。
【0037】
また、白色顔料を用いる場合には、その含有量が対繊維重量で1.0重量%以下、特に0%(不使用)であるのが好ましい。白色顔料が1.0重量%を超えると透明度の確保が困難になる。
【0038】
(係止部の素材)
係止部3の素材としては、本体部2と同様の素材から選択することもできるが、好ましくは伸縮性や弾性に富み、肌への刺激が少ない素材を選択するのが好ましい。
【0039】
例えば、ポケット型のマスク1の場合には、弾性伸縮性フィルムの表裏両側に不織布を貼り付け、必要に応じて針刺し加工等の伸縮性向上加工を施してなるラミネート不織布や、熱捲縮性の複合繊維からなるウエブを熱処理することによって得られる伸縮性不織布の他、一対の不織布を張り合わせるとともに、不織布間に糸ゴム等の弾性伸縮部材を挟んでなる伸縮性不織布等を好適に用いることができる。
【0040】
また、例えば、平坦型のマスク11の場合には、ポケット型のマスク1の場合と同様の素材から選択する他、平ゴム、丸ゴム等を用いることができる。
【0041】
さらに、これらの素材と、本体部2の項で述べた素材とを積層等により結合した素材を係止部3のとして用いることもできる。
【0042】
(本発明のポイント)
本発明は、前述のとおり、少なくとも本体部2の表裏方向におけるJIS P 8138に規定される不透明度を40%以下とするものである。本体部2のみならず、係止部3の不透明度も40%以下とすることができる。これらの場合において、特に好ましい不透明度は20%以下である。
【0043】
このような不透明度は、材質、繊度、目付け、層構造、白色顔料量等を適宜選択することにより達成することができる。
【0044】
また、本発明では、少なくとも係止部3を肌色にするのは好ましい形態である。この場合、係止部3のみならず、本体部2を含む全体を肌色にすることもできる。また、係止部3を肌色とせず、本体部2のみを肌色にすることもできる。
【0045】
(本体部のサイズ)
本体部2のサイズは適宜定めることができ、特に限定されるものではないが、例えば、ポケット型の場合で縦90〜150mm、横80〜160mmとすることができ、また平坦型の場合(プリーツ6を有する場合はプリーツ6を拡げない状態で)、縦60〜110mm、横80〜180mmとすることができる。
【0046】
(その他)
部材相互や層相互の接合は、ヒートシールやホットメルト接着、超音波溶着、粘着(剥離再接着可能又は不可能)、メカニカルファスナー等、公知の接合手段により行うことができる。
【0047】
また、上記ポケット型の形態の構成と平坦型の形態の構成とは、排他的なものではなく、相互に置換可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、花粉症等におけるアレルゲンの遮断や、風邪等における感染防止を目的として、鼻や口を覆うマスクの他、広範な用途に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第一の形状例を示す斜視図である。
【図2】第二の形状例を示す斜視図である。
【図3】第四の形状例を示す斜視図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】第四の形状例を示す側面図である。
【図6】第五の形状例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1…マスク、2…本体部、3…係止部、4…接合部分、5…開口、6…プリーツ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔面の対象部位を覆う本体部と、この本体部を身体に係止するための係止部とを有するマスクにおいて、
少なくとも前記本体部は、通気性素材により形成され、かつ表裏方向におけるJIS P 8138に規定される不透明度が40%以下である、ことを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記係止部は、表裏方向におけるJIS P 8138に規定される不透明度が40%以下である、請求項1記載のマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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