説明

マスターバッチとその製造方法、及びこのマスターバッチを用いた成形体並びに該成形体を用いた積層体

【課題】建築物の屋根材や壁材、自動車などの窓材等に広く適用されるアクリル樹脂成形材料において、6ホウ化物微粒子成分の分散性が改善されたマスターバッチとその製造方法、及びこれを用いた成形体並びに積層体を提供。
【解決手段】6ホウ化物微粒子(A)のアルコール分散液に、凝集防止剤(C)を添加した後、アルコールを揮散し、得られた粉状物をアクリル樹脂成形材料(D)と溶融混練することによりマスターバッチを製造する方法であって、6ホウ化物微粒子(A)は、フルオロアルキルシラン化合物(B)で表面被覆されており、一方、凝集防止剤(C)は、アルコールに可溶でアクリル樹脂成形材料(D)に対する相溶性を有し、かつ6ホウ化物微粒子(A)の表面に吸着する官能基を持たないアクリル系高分子化合物であることを特徴とするマスターバッチの製造方法などにより提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスターバッチとその製造方法、及びこのマスターバッチを用いた成形体並びに該成形体を用いた積層体に関し、より詳しくは、建築物の屋根材や壁材、自動車などの窓材等に広く適用されるアクリル樹脂成形材料において、6ホウ化物微粒子成分の分散性が改善されたマスターバッチとその製造方法、及びこれを用いた成形体並びに積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
各種建築物の屋根材、壁材、自動車、電車、航空機などの窓、ドア等のいわゆる開口部分から入射する太陽光線には、可視光線の他に紫外線や赤外線が含まれている。この太陽光線に含まれている赤外線のうち800〜2500nmの近赤外線は熱線と呼ばれ、開口部分から進入することにより室内の温度を上昇させる原因になる。これを解消するために、近年、各種建築物や車両の窓材、アーケード、天井ドーム、カーポート等の分野では、可視光線を十分に取り入れながら熱線を遮蔽し、明るさを維持しつつ室内の温度上昇を抑制する熱線遮蔽成形体の需要が急増しており、熱線遮蔽成形体に関する特許が多く提案されている。
【0003】
例えば、透明樹脂フィルムに金属、金属酸化物を蒸着してなる熱線反射フィルムを、ガラス、アクリル板、ポリカーボネート板等の透明成形体に接着した熱線遮蔽板が提案されている(例えば、特許文献1、2、及び3参照)。しかし、この熱線反射フィルム自体が非常に高価でかつ接着工程等の煩雑な工程を要するため、上記熱線遮蔽板は高コストとなっている。また、透明成形体と熱線反射フィルムの接着性が良くないので、経時変化によりフィルムの剥離が生じるといった欠点を有している。
また、透明成形体表面に、金属若しくは金属酸化物を直接蒸着してなる熱線遮蔽板も数多く提案されているが、この熱線遮蔽板の製造に際しては高真空で精度の高い雰囲気制御を要する装置が必要となるため、量産性が悪く、汎用性に乏しいという問題を有している。
【0004】
この他、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性透明樹脂にフタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物に代表される有機近赤外線吸収剤を練り込んだ熱線遮蔽板およびフィルムが提案されている(例えば、特許文献4及び5参照)。しかし、十分に熱線を遮蔽するためには多量の近赤外線吸収剤を配合しなければならず、多量に配合すると可視光線透過能が低下してしまうという課題を有している。また、有機化合物を使用しているため、直射日光に常時曝される建築物や車両の窓材等への適用は耐侯性に難があり、必ずしも好適であるとはいえなかった。
【0005】
更に、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の透明樹脂に、熱線反射能を有する酸化チタンあるいは酸化チタンで被覆されたマイカ等の無機粒子を練り込んだ熱線遮蔽板も提案されているが(例えば、特許文献6及び7参照)、該熱線遮蔽板では、熱線遮蔽能を高めるために熱線反射粒子を多量に添加する必要があり、熱線反射粒子の配合量の増大に伴って可視光線透過能が低下してしまうという課題を有している。また、熱線反射粒子の添加量を少なくすると可視光線透過能は高まるものの熱線遮蔽能が低下してしまい、熱線遮蔽能と可視光線透過能を同時に満足させることが困難であるという問題があった。また、熱線反射粒子を多量に配合すると、成形体である透明樹脂の物性、特に耐衝撃強度や靭性が低下するという強度面からの問題も有している。
【0006】
このような技術的背景の下、本出願人は、熱線遮蔽成分として6ホウ化物微粒子を各種バインダーに含有させた熱線遮蔽用塗布液、この塗布液を各種成形体に塗布後、硬化して得られる熱線遮蔽膜、及び熱可塑性樹脂中に6ホウ化物微粒子を溶融混錬し分散することで得られるマスターバッチを既に提案している(例えば、特許文献8〜10、及び11参照)。
上記のうち、6ホウ化物微粒子をポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂に分散させたマスターバッチの場合、通常、6ホウ化物微粒子に対し吸着効果のある官能基を有するアクリル系分散剤中に6ホウ化物微粒子を均一に分散させた粉状物と、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂を溶融混練することで、上記樹脂中に6ホウ化物微粒子が凝集体を形成することなく均一な分散性を保持したマスターバッチが得られるので、これを用いた成形体は優れた熱線遮蔽能を有し、ヘイズも低く良好であった。
一方、6ホウ化物微粒子をアクリル樹脂に分散させたマスターバッチの場合、上記と同様に、ホウ化物微粒子に対し吸着効果のある官能基を有するアクリル系分散剤中に6ホウ化物微粒子を均一に分散させた粉状物と、アクリル樹脂を溶融混練すると、アクリル樹脂中に6ホウ化物微粒子の凝集体を形成しやすく分散性が不十分となり、このマスターバッチを用いた成形体は優れた熱線遮蔽能を有しているものの、ヘイズ(曇り度)が高くなり意匠性が低下するといった、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂に分散させたマスターバッチの場合とは異なる固有の問題が見出されている。
【0007】
このため、アクリル樹脂中に6ホウ化物微粒子の凝集体を形成しにくく、6ホウ化物微粒子の分散性が十分であるマスターバッチ、これを用いることで優れた熱線遮蔽能を有しており、ヘイズ(曇り度)が低く、意匠性に優れた成形体が求められていた。
【特許文献1】特開昭61−277437号公報
【特許文献2】特開平10−146919号公報
【特許文献3】特開2001−179887号公報
【特許文献4】特開平6−256541号公報
【特許文献5】特開平6−264050号公報
【特許文献6】特開平2−173060号公報
【特許文献7】特開平5−78544号公報
【特許文献8】特開平11−181336号公報
【特許文献9】特開2000−96034号公報
【特許文献10】特開2000−169765号公報
【特許文献11】特開2004−59875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記課題を解決するために、建築物の屋根材や壁材、自動車などの窓材等に広く適用されるアクリル樹脂成形材料において、6ホウ化物微粒子成分の分散性が改善されたマスターバッチとその製造方法、及びこれを用いた成形体並びに積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題解決を目的とし鋭意検討を行った結果、ミクロンオーダーの6ホウ化物微粒子とアルコールを混合したスラリーに、フルオロアルキルシラン化合物を添加し媒体攪拌ミルで粉砕することで、フルオロアルキルシラン化合物被覆6ホウ化物微粒子分散液を調製し、これにアルコールに可溶でアクリル樹脂成形材料との相溶性を有し、且つ、6ホウ化物微粒子表面に対し吸着効果のある官能基を有さないアクリル樹脂凝集防止剤を添加混合した後、得られた混合液からアルコールを揮散し、得られた粉状物をアクリル樹脂成形材料と混合し、溶融混練することで、アクリル樹脂成形材料中で6ホウ化物微粒子の凝集体が形成されることなく分散性が改善されたマスターバッチが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、6ホウ化物微粒子(A)のアルコール分散液に、凝集防止剤(C)を添加した後、アルコールを揮散し、得られた粉状物をアクリル樹脂成形材料(D)と溶融混練することによりマスターバッチを製造する方法であって、6ホウ化物微粒子(A)は、フルオロアルキルシラン化合物(B)で表面被覆されており、一方、凝集防止剤(C)は、アルコールに可溶でアクリル樹脂成形材料(D)に対する相溶性を有し、かつ6ホウ化物微粒子(A)の表面に吸着する官能基を持たないアクリル系高分子化合物であることを特徴とするマスターバッチの製造方法が提供される。
【0011】
また、第2の発明によれば、第1の発明において、6ホウ化物微粒子(A)が、一般式XB(ただし、元素Xは、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Yb、Lu、SrまたはCaから選択される少なくとも1種以上である)で表される6ホウ化物であることを特徴とするマスターバッチの製造方法が提供される。
また、第3の発明によれば、第1の発明において、6ホウ化物微粒子(A)の平均粒径が、500nm以下であることを特徴とするマスターバッチの製造方法が提供される。
また、第4の発明によれば、第1の発明において、6ホウ化物微粒子(A)が、平均粒径1μm以上の6ホウ化物粒子をアルコールに分散させ、このスラリーにフルオロアルキルシラン化合物(B)を添加した後、媒体攪拌ミルで粉砕して得られることを特徴とするマスターバッチの製造方法が提供される。
また、第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、6ホウ化物微粒子(A)の含有量が、アクリル樹脂成形材料(D)100重量部に対して、0.01〜20重量部であることを特徴とするマスターバッチの製造方法が提供される。
【0012】
また、第6の発明によれば、第1の発明において、フルオロアルキルシラン化合物(B)が、次の一般式(1)で示されることを特徴とするマスターバッチの製造方法が提供される。
YRSiX ・・・(1)
(式中、Yは炭素数1〜12のフッ素化アルキル基、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、また、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基を示す。)
【0013】
また、第7の発明によれば、第1の発明において、フルオロアルキルシラン化合物(B)の添加量が、6ホウ化物粒子1重量部に対して、0.01〜5重量部であることを特徴とするマスターバッチの製造方法が提供される。
また、第8の発明によれば、第1の発明において、凝集防止剤(C)のアクリル系高分子化合物が、炭素数1〜8の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルと炭素数1〜13の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体であることを特徴とするマスターバッチの製造方法が提供される。
さらに、第9の発明によれば、第1の発明において、凝集防止剤(C)の添加量が、6ホウ化物粒子1重量部に対して、1.0〜50重量部であることを特徴とするマスターバッチの製造方法が提供される。
【0014】
一方、第10の発明によれば、第1〜9のいずれかの発明に係る製造方法で得られ、6ホウ化物微粒子(A)と凝集防止剤(C)を含む粉状物を、アクリル樹脂成形材料(D)と溶融混練してなるマスターバッチが提供される。
また、第11の発明によれば、第10の発明に係り、アクリル樹脂成形材料(D)を含むマスターバッチが、アクリル樹脂成形材料(D)と同種、または異種のアクリル系樹脂により希釈・溶融混練され、その後、所定の形状に成形されてなる成形体が提供される。
さらに、第12の発明によれば、第11の発明に係る成形体が、アクリル樹脂成形材料(D)以外の熱可塑性樹脂成形体に積層されてなる積層体が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のマスターバッチは、アルコールに可溶性を有し、アクリル樹脂成形材料との相溶性を有し、且つ、6ホウ化物微粒子表面に対し吸着効果のある官能基を有さないアクリル系高分子化合物の凝集防止剤中に、フルオロアルキルシラン化合物で被覆された6ホウ化物微粒子を均一に分散させた粉状物を、アクリル樹脂に溶融混練することで得られるので、アクリル樹脂中に6ホウ化物微粒子が十分に分散させられなかった従来のマスターバッチとは異なり、アクリル樹脂中に6ホウ化物微粒子の凝集体が形成されることなく分散性が改善されている。
このため、上記マスターバッチを使用した成形体は、優れた熱線遮蔽能を有し、ヘイズも低く良好である。加えて、前記のように分散性が良好であって、上記アクリル樹脂凝集防止剤を使用していることから、屋外で使用中に受ける雨水などに対する耐候性も良好である。したがって、建築物の屋根材、壁材、自動車、電車、航空機などの開口部に使用される窓材、アーケード、天井ドーム、カーポート等に広く利用されるアクリル樹脂成形体に優れた熱線遮蔽能と意匠性を付与することができるため、幅広い分野で利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のマスターバッチとその製造方法、及びこのマスターバッチを用いた成形体並びに該成形体を用いた積層体について、詳細に説明する
【0017】
1.マスターバッチの製造方法
本発明のマスターバッチの製造方法は、6ホウ化物微粒子(A)のアルコール分散液に、凝集防止剤(C)を添加した後、アルコールを揮散し、得られた粉状物をアクリル樹脂成形材料(D)と溶融混練することによりマスターバッチを製造する方法であって、6ホウ化物微粒子(A)は、フルオロアルキルシラン化合物(B)で表面被覆されており、一方、凝集防止剤(C)は、アルコールに可溶でアクリル樹脂成形材料(D)に対する相溶性を有し、かつ6ホウ化物微粒子(A)の表面に吸着する官能基を持たないアクリル系高分子化合物であることを特徴とする。
【0018】
(A)6ホウ化物粒子
本発明において、6ホウ化物微粒子は、熱線遮蔽効果を発現する成分であり、このような機能を有するものであれば制限されない。
【0019】
好ましい6ホウ化物は、一般式がXBで表されるものである。ここで、元素Xは、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Yb、Lu、SrおよびCaから選択される少なくとも1種以上であることが好ましい。具体的には、6ホウ化ランタンLaB、6ホウ化セリウムCeB、6ホウ化プラセオジムPrB、6ホウ化ネオジムNdB、6ホウ化ガドリニウムGdB、6ホウ化テルビウムTbB、6ホウ化ディスプロシウムDyB、6ホウ化ホルミウムHoB、6ホウ化イットリウムYB、6ホウ化サマリウムSmB、6ホウ化ユーロピウムEuB、6ホウ化エルビウムErB、6ホウ化ツリウムTmB、6ホウ化イッテルビウムYbB、6ホウ化ルテチウムLuB、6ホウ化ランタンセリウム(La,Ce)B、6ホウ化ストロンチウムSrB、6ホウ化カルシウムCaBなどがその代表的なものとして挙げられる。
【0020】
また、上記6ホウ化物微粒子としては、その表面が酸化していないことが好ましいが、通常は僅かに酸化していることが多く、また、微粒子の分散工程で表面の酸化が起こることはある程度避けられない。しかし、その場合でも熱線遮蔽効果を発現する有効性に変わりはなく、従って、表面が酸化された6ホウ化物微粒子も使用することが可能である。
また、上記6ホウ化物微粒子は、結晶としての完全性が高いほど大きい熱線遮蔽効果が得られるが、結晶性が低くX線回折でブロードな回折ピークを生じるようなものであっても、微粒子内部の基本的な結合が各金属とホウ素の結合から成り立っているものであるならば熱線遮蔽効果を発現するため、本発明において適用することが可能である。
【0021】
また、上記6ホウ化物微粒子は、灰黒色、茶黒色、緑黒色など有色の粉末であるが、粒径を可視光波長に比べて十分小さくしてアクリル樹脂成形体材料中に分散させた状態とすれば、得られる熱線遮蔽透明樹脂成形体に可視光透過性が生じるものの、赤外光遮蔽能は十分保持できる。この理由は詳細には解明されていないが、これ等微粒子中の自由電子の量が多く、微粒子内部および表面の自由電子によるバンド間間接遷移の吸収エネルギーが丁度可視から近赤外の付近にあるため、この波長領域の熱線が選択的に反射・吸収されることによるものと考えられる。
実際に、これ等微粒子を十分細かくかつ均一に分散した膜では、透過率が波長400nm〜700nmの間に極大値を持ち、かつ、波長700nm〜1800nmの間に極小値を持ち、更にこれ等の透過率の極大値と極小値の差が15ポイント以上であることが観察されている。可視光波長が380nm〜780nmであり、視感度が550nm付近をピークとする釣鐘型であることを考慮すると、このような熱線遮蔽透明樹脂成形体は、可視光を有効に透過し、それ以外の熱線を有効に反射・吸収する特性を有する。
【0022】
したがって、6ホウ化物微粒子の平均粒径は、500nm以下、好ましくは300nm以下であることが望ましい。平均粒径が500nmを超えると、このような6ホウ化物微粒子を含む熱線遮蔽透明樹脂成形体は、可視光を有効に透過しない場合があるので好ましくない。ただし、30nm未満では、アクリル樹脂への分散性が悪化し取り扱いが困難になる。
【0023】
(B)フルオロアルキルシラン化合物
上記の6ホウ化物微粒子は、フルオロアルキルシラン化合物(B)によって表面が被覆されている必要がある。
【0024】
本発明に用いるフルオロシラン化合物としては、例えば、一般式(1)で示されるものが挙げられる。
YRSiX (1)
式中、Yは炭素数1〜12のフッ素化アルキル基を、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を、Xは、炭素数1〜4のアルコキシ基を示す。ここで、Yはアクリル樹脂の凝集を抑制する機能を有しており、炭素数2〜10、特に炭素数3〜8のフッ素化アルキル基が好ましい。このようなYを有さないシランカップリング剤は使用することができない。
【0025】
具体的には、CF(CFCHCHSi(OCH、CFCHCHSi(OCH、CFCFCHCHSi(OC、CF(CFCHCHSi(OCH、(CFCF(CFCHCHSi(OCH、CF(CFCHCHSi(OC、CF(CFCHCHSi(OC、CF(CFCHCHSi(OC、CF(CFCHCHSiCH(OC、CF(CFCHCHSiCH(OC、CF(CFCHCHSiCH(OC、CF(CFCHCHSiCH(OC、CF(CFCHCHSiCH(OC、CF(CFCHCHSi(OC等が挙げられる。
【0026】
また、フルオロアルキルシラン化合物の添加量は、6ホウ化物粒子1重量部に対して、0.01〜5重量部であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜3重量部である。6ホウ化物微粒子の添加量が0.01重量部未満の場合は、6ホウ化物微粒子を均一に分散することができず好ましくない。また、5重量部を超えると、上記分散液に上記アクリル樹脂凝集防止剤を添加混合した後、アルコールを揮散しても粉状にはならないため、アクリル樹脂成形材料と均一に混合することが困難となるため好ましくない。
【0027】
(C)凝集防止剤
本発明で用いる凝集防止剤は、アルコールに可溶性を有し、アクリル樹脂成形材料との相溶性を有し、且つ、6ホウ化物微粒子表面に対し吸着効果のある官能基を有さないアクリル系高分子化合物である。
【0028】
この凝集防止剤が、アルコールに可溶性を有していないと、上記粉状物中において、6ホウ化物微粒子が凝集体を形成しやすく分散性が不十分となり好ましくない。また、アクリル樹脂凝集防止剤が、アクリル樹脂成形材料と相溶性を有していないと、上記マスターバッチを用いた成形体のヘイズ(曇り度)が高くなり意匠性が低下するので好ましくない。また、アクリル樹脂凝集防止剤が、6ホウ化物微粒子表面に対し吸着効果のある官能基を有していると、アクリル樹脂中に6ホウ化物粒子の凝集体を形成しやすく分散性が不十分となり、上記マスターバッチを用いた成形体のヘイズ(曇り度)が高くなり意匠性が低下するため好ましくない。
【0029】
上記凝集防止剤としては、具体的には、炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルと、炭素数が1〜13の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体などのアクリル系高分子化合物を挙げることができる。このようなアクリル系高分子化合物として、商品名:BR−105(三菱レイヨン社製)などを例示することができる。
炭素数が9以上の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルか、或いは、炭素数が14以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体である場合には、アルコールに可溶しにくくなり、アクリル樹脂中に6ホウ化物微粒子の凝集体を形成しやすく分散性が不十分となり、上記マスターバッチを用いた成形体は優れた熱線遮蔽能を有しているものの、ヘイズ(曇り度)が高くなり意匠性が低下することがある。
【0030】
凝集防止剤の添加量は、6ホウ化物微粒子1重量部に対して、1.0〜50重量部であることが好ましい。より好ましくは、2〜20重量部である。6ホウ化物微粒子の添加量が1.0重量部未満である場合は、上記粉状物中において6ホウ化物微粒子が凝集体を形成しやすく分散性が不十分となるため好ましくない。また、50重量部を超える場合は、成形体の機械的強度の低下、屋外で使用する際の耐候性の悪化が懸念されるため好ましくない。
【0031】
(D)アクリル樹脂成形材料
本発明に用いるアクリル樹脂成形材料としては、この分野で使用されているアクリル樹脂であれば特に制限されない。
【0032】
例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート等を主原料とし、必要に応じて炭素数炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を共重合成分として用いた重合体または共重合体を挙げることができる。また、更に多段で重合した(メタ)アクリル樹脂を用いることもできる。
【0033】
本発明において、マスターバッチを製造するには、まず、6ホウ化物微粒子(A)のアルコール分散液に、凝集防止剤(C)を添加した後、媒体攪拌ミルで粉砕して6ホウ化物微粒子を表面被覆し、次に、アルコールを揮散して粉状化し、引き続き、得られた粉状物をアクリル樹脂成形材料(D)と溶融混練する。
【0034】
(1)6ホウ化物微粒子の粉砕と表面被覆
ミクロンオーダーの6ホウ化物粒子に、アルコールを混合してスラリー化する。6ホウ化物微粒子の表面被覆方法は、特に限定されるわけではないが、6ホウ化物微粒子の粉砕と同時に行うことが好ましい。6ホウ化物微粒子を粉砕する際に、フルオロアルキルシラン化合物を添加し、媒体攪拌ミルで粉砕することができる。これによりフルオロアルキルシラン化合物で被覆された6ホウ化物微粒子を含む分散液が得られる。
アルコールとしては、2−メトキシエタノール、エタノール、メタノール、ジアセトンアルコール、又はイソプロピルアルコールなどを挙げることができる。好ましいのは、イソプロピルアルコールである。この他、N,N−ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、トルエンなどを本発明の目的を損なわない範囲内で配合することもできる。アルコール溶媒の使用量は、特に制限されるわけではないが、フルオロアルキルシラン化合物1重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜1.5重量部とすることができる。
【0035】
(2)粉状化
次に、凝集防止剤を、添加混合した後、得られた混合液からアルコールを揮散させる。この方法には各種の蒸留、蒸発操作が適用できる。すなわち、常圧又は減圧下でアルコールの沸点以上に加熱して留出させる方法、又は窒素、炭酸ガス、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを導入して留出させる方法などがある。工業的には、常圧で80〜200℃、好ましくは120〜180℃まで溶液で加熱、留去させる方法が適している。留出時間は、特に制限はないが通常1〜5時間とする。工業的には、この範囲まで昇温した後、その温度を維持して0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間保ち、反応を完結させればよく、これにより多量の均一な粉状物を効率的に得ることができる。
【0036】
(3)アクリル樹脂の混合
その後、得られた粉状物を、アクリル樹脂と混合し、これを粉粒体またはペレット化し、必要に応じて他の添加剤を配合する。
粉粒体またはペレット化に際しては、アクリル樹脂の原料となるメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレートなどに添加液を添加し、同様に公知の方法で均一に混合し、懸濁重合や塊状重合など公知の方法で重合させることもできる。これによって、アクリル樹脂に微粒子を均一に分散した混合物を調製することができる。
【0037】
配合しうる他の添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン系、サリチル酸系、HALS系、トリアゾール系、トリアジン系等の紫外線吸収剤、リン酸エステル系、フェノール系等の酸化防止剤、カップリング剤、界面活性剤、帯電防止剤、離型剤等がある。添加剤の配合量は、6ホウ化物微粒子とアクリル樹脂成分に対して10重量%以下とされる。
【0038】
次に、押出機等の溶融混練装置を使用し、溶融混練する。これら各成分の混合、および、溶融混練には、リボンブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサーなどの予備混合機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、一軸押出機、二軸押出機などの溶融混練装置を使用することができる。
また、溶融混練装置への原材料の供給は、予め各成分を混合した後でよく、それぞれの成分を独立した形で溶融混練装置に供給することも可能である。このようにして得られた溶融混練物を、ペレット状に加工することにより本発明に係るアクリル樹脂成形材料中への6ホウ化物微粒子の分散性が改善された、6ホウ化物微粒子含有マスターバッチを得ることができる。
【0039】
2.マスターバッチ
本発明において、マスターバッチは、上記製造方法で得られ、6ホウ化物微粒子(A)と凝集防止剤(C)を含む粉状物を、アクリル樹脂成形材料(D)と溶融混練してなるマスターバッチである。
【0040】
6ホウ化物微粒子(A)と凝集防止剤(C)を含む粉状物を、アクリル樹脂成形材料(D)と混合して得られた混合物は、ベント式一軸若しくは二軸の押出機で混練し、ペレット状に加工する。このペレットは、最も一般的な溶融押出されたストランドをカットする方法により得ることができる。従って、その形状としては円柱状や角柱状のものを挙げることができる。また、溶融押出物を直接カットするいわゆるホットカット法を採ることも可能である。かかる場合には球状に近い形状を取ることが一般的である。
このように本発明のマスターバッチは、いずれの形態、または形状を採り得るものであるが、熱線遮蔽透明樹脂成形体を成形するときに熱線遮蔽成分含有マスターバッチの希釈に使用される熱可塑性樹脂成形材料と同一の形態および形状が好ましい。
上記マスターバッチの6ホウ化物微粒子の含有量は、アクリル樹脂に対して0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%が良い。6ホウ化物微粒子の含有量が0.01重量%未満であると、成形する熱線遮蔽アクリル樹脂成形体の厚みにも依存するが、特に成形するアクリル樹脂成形体が100μm以下のフィルムでは、充分な熱線遮蔽能が得られないことがある。また、20重量%を超える場合は、6ホウ化物微粒子同士の凝集が生じ、アクリル樹脂中における6ホウ化物微粒子の分散性が不十分となるため、上記マスターバッチを用いた成形体のヘイズが上昇してしまい意匠性が低下するため好ましくない。
【0041】
3.成形体
本発明の成形体は、上記アクリル樹脂成形材料(D)を含むマスターバッチが、アクリル樹脂成形材料(D)と同種、または異種のアクリル系樹脂により希釈・溶融混練され、その後、所定の形状に成形されてなる成形体である。
【0042】
その成形方法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形、または、回転成形等の方法を用いることができる。特に、射出成形、押出成形によれば効率的に所望の形状に成形できるので好ましい。押出成形により板状(シート状)、フィルム状の成形体を得る方法としては、Tダイなどの押出機を用いて押し出した溶融アクリル樹脂を冷却ロールで冷却しながら引き取る方法が採用される。
成形温度は、使用するアクリル樹脂の組成等によって異なるが、十分な流動性が得られるように樹脂の融点或いはガラス転移温度より50〜150℃高い温度に加温する。例えば、200℃以上、好ましくは220℃〜300℃とする。200℃よりも低いと、高分子特有の粘度を低下させることができないので、6ホウ化物微粒子をアクリル樹脂中に均一に分散させることができないので好ましくない。300℃よりも高いとアクリル樹脂が分解し劣化することがあるので好ましくない。
【0043】
4.積層体
本発明の積層体は、上記成形体が、アクリル樹脂成形材料(D)以外の熱可塑性樹脂成形体に積層されてなる積層体である。この積層体は、それ自体で建築物の屋根材、壁材、自動車、電車、航空機などの開口部に使用される窓材、アーケード、天井ドーム、カーポート等に使用することができる。
【0044】
その他、無機ガラス、樹脂ガラス、樹脂フィルムなどの他の透明成形体に任意の方法で積層し、一体化した熱線遮蔽透明積層体として、構造材に使用することもできる。例えば、予めフィルム状に成形した熱線遮蔽アクリル樹脂成形体を無機ガラスに熱ラミネート法により積層一体化することで、熱線遮蔽機能、飛散防止機能を有する熱線遮蔽透明積層体を得ることができる。
また、熱ラミネート法、共押出法、プレス成形法、射出成形法等により、熱線遮蔽アクリル樹脂成形体の成形と同時に他の透明成形体に積層一体化することで、熱線遮蔽透明積層体を得ることも可能である。上記熱線遮蔽透明積層体は、相互の成形体の持つ利点を有効に発揮させつつ、相互の欠点を補完することで、より有用な構造材として使用することができる。
【0045】
以上のように、本発明の製造方法で得られるマスターバッチは、従来得られなかったアクリル樹脂中で6ホウ化物粒子が凝集することなく分散性が改善されているものである。このため、上記マスターバッチを使用した成形体は、優れた熱線遮蔽能を有し、ヘイズも低く良好である。加えて、分散性が良好であること及び、上記アクリル樹脂凝集防止剤を使用していることから、屋外で使用中に受ける雨水などに対する耐候性も良好である。したがって、建築物の屋根材、壁材、自動車、電車、航空機などの開口部に使用される窓材、アーケード、天井ドーム、カーポート等に広く利用されるアクリル樹脂成形体に優れた熱線遮蔽能に加えて意匠性を付与することができるため、幅広い分野で利用することができる。
【実施例】
【0046】
以下に本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら制限されることはない。
【0047】
ここで、得られた成形体の光学特性評価は、ヘイズ(H)(単位:%)に関しては、ヘイズメーター(村上色彩研究所製)を使用し、JIS K 7136に準じて行った。また、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)に関しては、分光光度計U−4000(日立製作所製)を使用した。
【0048】
(実施例1)
粒径1〜3μmの6ホウ化ランタン粉末260gと、2−プロパノール1688gを攪拌混合し、更に一般式YRSiX(式中、Yは炭素数1のフッ素化アルキル基、Rは炭素数2のアルキレン基、また、Xは炭素数1のアルコキシ基を示す。)で示されるフルオロアルキルシラン化合物(b1):KBM−7103(GE東芝シリコーン製)を52g添加し、スラリーを調製した。このスラリーをビーズとともに媒体攪拌ミルに投入し、スラリーを循環させて粉砕分散処理を行い、平均粒径が90nmのフルオロアルキルシラン化合物で被覆された6ホウ化ランタン分散液を得た。(以下A液と略称する)
2−プロパノールに対して可溶性を有し、アクリル樹脂成形材料との相溶性を有し、且つ、6ホウ化ランタン表面に対して吸着効果のある官能基を有さないアクリル樹脂凝集防止剤(c1):BR−105(三菱レイヨン製)を40重量%となるように溶解させることで得られた液(以下B液と略称する)を、上記A液10gに、9.75g添加混合した。その後、得られた混合液から2−プロパノールを揮散し、アクリル樹脂凝集防止剤中に、フルオロアルキルシラン化合物で被覆された6ホウ化ランタンを均一に分散させた粉状物を得た。この粉状物では、6ホウ化ランタン粉末1重量部に対して凝集防止剤を3重量部含有していた。
更に、アクリル樹脂(住友化学製)に対して6ホウ化ランタン含有量が0.27重量%になるように上記粉状物をアクリル樹脂に加え、均一に混合した後、二軸押出機(東洋精機製作所製)で溶融混練し、押し出された直径3mmのストランドをペレット状にカットし、6ホウ化ランタンとアクリル樹脂を主成分とするマスターバッチを得た。
更に、上記マスターバッチをアクリル樹脂(住友化学製)で6ホウ化ランタンの含有量が0.006重量%となるように、均一に混合した後、射出成形機(東洋精機製作所製)でTダイを使用して10cm×5cm厚さ2.0mmのシート状成形体を得た。
得られた成形体の光学特性:ヘイズ(H)、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)を評価した。評価結果は、表1に示す。また、得られた成形体中の6ホウ化ランタンの分散状態は、透過型電子顕微鏡(日立製作所製)を使用し観察を行った。観察結果を、図1に示す。シート状成形体中の六ホウ化ランタンは凝集することなく分散していることが確認できる。
【0049】
(実施例2)
上記A液10gに、上記B液を3.9g添加混合し、実施例1と同様の方法で粉状物を得た。この粉状物は、6ホウ化ランタン(A)1重量部に対して、凝集防止剤(C)を0.9重量部含有している。更に、上記粉状物を使用し、実施例1と同様の方法でシート状成形体を得た。評価結果は表1に示す。
【0050】
(実施例3)
上記A液10gに、上記B液を178g添加混合し実施例1と同様の方法で粉状物を得た。この粉状物は、6ホウ化ランタン(A)1重量部に対して、凝集防止剤(C)を55重量部含有している。更に、上記粉状物を使用し、実施例1と同様の方法でシート状成形体を得た。評価結果を表1に示す。
【0051】
(実施例4)
アクリル樹脂(住友化学製)に対して、6ホウ化ランタン含有量が0.01重量%になるように実施例1記載の粉状物を加えた以外は、実施例1と同様の方法でシート状成形体を得た。評価結果を表1に示す
【0052】
(実施例5)
アクリル樹脂(住友化学製)に対して、6ホウ化ランタン含有量が20重量%になるように実施例1記載の粉状物を加えた以外は、実施例1と同様の方法でシート状成形体を得た。評価結果を表1に示す
【0053】
(比較例1)
アクリル樹脂成形材料との相溶性を有し、且つ、6ホウ化ランタン表面に対して吸着効果のある官能基を有さないが、2−プロパノールに不溶であるアクリル樹脂凝集防止剤(c2)のBR−87(三菱レイヨン製)を使用した以外は、実施例1と同様の方法でシート状成形体を得た。
得られた成形体の光学特性の評価に関しては、実施例1と同様の機器を使用し評価した。評価結果を表1に示す。
【0054】
(比較例2)
フルオロアルキルシラン化合物(b1)を添加しない以外は、実施例1と同様の方法でシート状成形体を得た。
得られた成形体の光学特性に関しては、実施例1と同様の機器を使用し評価した。評価結果を表1に示す。
また、得られた成形体中の6ホウ化ランタンの分散状態も、実施例1と同様の機器を使用して観察を行った。観察結果を、図2に示す。フルオロアルキルシラン化合物を添加していないため、シート状成形体中の六ホウ化ランタンは一部凝集が見られることが確認できる。
【0055】
(比較例3)
フルオロアルキルシラン化合物(b1)の代わりにメチルメトキシシラン(b2)を添加した以外は、実施例1と同様の方法でシート状成形体を得た。
得られた成形体の光学特性に関しては、実施例1と同様の機器を使用し評価した。評価結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明で得られたシート状成形体中の六ホウ化ランタンの分散状態を示す透過型電子顕微鏡観察写真である。
【図2】フルオロアルキルシラン化合物未添加の比較用シート状成形体中における、六ホウ化ランタンの分散状態を示す透過型電子顕微鏡観察写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
6ホウ化物微粒子(A)のアルコール分散液に、凝集防止剤(C)を添加した後、アルコールを揮散し、得られた粉状物をアクリル樹脂成形材料(D)と溶融混練することによりマスターバッチを製造する方法であって、
6ホウ化物微粒子(A)は、フルオロアルキルシラン化合物(B)で表面被覆されており、一方、凝集防止剤(C)は、アルコールに可溶でアクリル樹脂成形材料(D)に対する相溶性を有し、かつ6ホウ化物微粒子(A)の表面に吸着する官能基を持たないアクリル系高分子化合物であることを特徴とするマスターバッチの製造方法。
【請求項2】
6ホウ化物微粒子(A)が、一般式XB(ただし、元素Xは、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Yb、Lu、SrまたはCaから選択される少なくとも1種以上である)で表される6ホウ化物であることを特徴とする請求項1に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項3】
6ホウ化物微粒子(A)の平均粒径が、500nm以下であることを特徴とする請求項1に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項4】
6ホウ化物微粒子(A)が、平均粒径1μm以上の6ホウ化物粒子をアルコールに分散させ、このスラリーにフルオロアルキルシラン化合物(B)を添加した後、媒体攪拌ミルで粉砕して得られることを特徴とする請求項1に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項5】
6ホウ化物微粒子(A)の含有量が、アクリル樹脂成形材料(D)100重量部に対して、0.01〜20重量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項6】
フルオロアルキルシラン化合物(B)が、次の一般式(1)で示されることを特徴とする請求項1に記載のマスターバッチの製造方法。
YRSiX ・・・(1)
(式中、Yは炭素数1〜12のフッ素化アルキル基、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、また、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基を示す。)
【請求項7】
フルオロアルキルシラン化合物(B)の添加量が、6ホウ化物粒子1重量部に対して、0.01〜5重量部であることを特徴とする請求項1に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項8】
凝集防止剤(C)のアクリル系高分子化合物が、炭素数1〜8の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルと炭素数1〜13の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項9】
凝集防止剤(C)の添加量が、6ホウ化物粒子1重量部に対して、1.0〜50重量部であることを特徴とする請求項1に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法で得られ、6ホウ化物微粒子(A)と凝集防止剤(C)を含む粉状物を、アクリル樹脂成形材料(D)と溶融混練してなるマスターバッチ。
【請求項11】
請求項10に記載のアクリル樹脂成形材料(D)を含むマスターバッチが、アクリル樹脂成形材料(D)と同種、または異種のアクリル系樹脂により希釈・溶融混練され、その後、所定の形状に成形されてなる成形体。
【請求項12】
請求項11に記載の成形体が、アクリル樹脂成形材料(D)以外の熱可塑性樹脂成形体に積層されてなる積層体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−222863(P2008−222863A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63214(P2007−63214)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】