説明

マスチック接着剤

【課題】 発泡剤を含有したマスチック接着剤を塗布した後に放置したとしても、吸湿により発泡を阻害することなく、しかも、架橋反応を阻害することがない、耐デント性に優れた高発泡のマスチック接着剤を提供する。
【解決手段】 部分架橋又は未架橋型の合成ゴム100質量部に対して、充填剤50〜500質量部、加硫剤3〜20質量部、加硫促進剤5〜20質量部、表面に撥水処理が施された発泡剤と、表面に撥水処理が施されていない発泡剤とから構成される発泡剤3〜20質量部、可塑剤50〜300質量部及び酸化カルシウム4〜10質量部を含有し、前記発泡剤における表面に撥水処理が施された発泡剤と、表面に撥水処理が施されていない発泡剤との配合の割合を1:0.25〜1:0.67とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル防振を目的に、自動車のボンネット、トランクリッド、ドア、ルーフ等の外パネルと内パネルとの間の接着剤及び緩衝剤として機能するマスチック接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスチック接着剤は、加熱硬化可能な合成ゴムや熱可塑性樹脂等の材料を主体として構成され、自動車のボディーを構成するアウターパネルやインナーパネル等の部材と他のパネル等の部材を接合するために、加熱硬化して使用される(特許文献1や特許文献2)。
このマスチック接着剤には、パネル等へ塗布し、更に加熱硬化後に発生するパネル等の歪防止の目的で発泡剤が添加されているが、部分架橋又は未架橋型の合成ゴムに発泡剤を添加して構成されたマスチック接着剤を、塗布後に硬化させることなく輸送したり、或いは、製造ラインを停止させたりして放置すると、発泡剤が水分を吸収して十分な発泡をしないために歪を発生させるという問題があった。また、このマスチック接着剤に含有させる発泡剤として発泡率が低いものを使用すれば吸湿の問題を防ぐことはできるが、低発泡率を補うために多量に塗布する必要があり、接合部位に歪みが生じるという問題があった。
これに対して、発泡剤を含有するマスチック接着剤に、吸湿を目的として酸化カルシウムを多量に添加して上記問題を解決することも考えられるが、添加された酸化カルシウムが吸湿するために架橋反応が阻害されて、マスチック接着剤が固化しゴム本来の特性が発揮されないという問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開2000−96026号公報
【特許文献2】特開2007−291247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、発泡剤を含有したマスチック接着剤を塗布した後に放置して吸湿したとしても、発泡が阻害されることなく、しかも、ゴム自体が固化することがない、耐デント性に優れた高発泡のマスチック接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討の結果、表面に撥水処理を施した発泡剤と同処理が施されていない発泡剤とを併用し、発泡剤と酸化カルシウムの配合量を所定のものとすることにより、ゴム本来の機能を備えた高発砲のマスチック接着剤が得られることを知見し、以下の通り解決手段を見出した。
本発明のマスチック接着剤は、請求項1に記載の通り部分架橋又は未架橋型の合成ゴム100質量部に対して、充填剤50〜500質量部、加硫剤3〜20質量部、加硫促進剤5〜20質量部、表面に撥水処理が施された発泡剤と、表面に撥水処理が施されていない発泡剤とから構成される発泡剤3〜20質量部、可塑剤50〜300質量部及び酸化カルシウム4〜10質量部を含有し、前記発泡剤における表面に撥水処理が施された発泡剤と、表面に撥水処理が施されていない発泡剤との配合の割合を1:0.67〜1:0.25とすることを特徴とする。
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のマスチック接着剤において、前記酸化カルシウムの平均粒径を7μm〜12μmとしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のマスチック接着剤によれば、塗布部位に塗布した後に、高温多湿の雰囲気下に放置しても、発泡剤の吸湿を抑えることができるため高い発泡率を得ることができるとともに、架橋反応がスムーズに行われるため、優れたゴム弾性と耐デント性を有しつつ歪の発生を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明における部分架橋又は未架橋型の合成ゴムとしては、単独又は混合して使用することができる。部分架橋型の合成ゴムとしては、アクリロニトリル−イソプレン共重合体ゴム(NIR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム及びこれらのうちの少なくとも2種類を混合したゴム等のジエン系ゴムであって、予めジビニルベンゼン又は硫黄等の架橋剤を用いて部分的に加熱架橋したゴムを使用することができる。また、未架橋型の合成ゴムとしては、例えば、前記した部分架橋型の合成ゴムと同様のものを使用することができる。
【0008】
上記充填剤の具体例としては、例えば、木粉、パルプ、木綿チップ、アスベスト、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、クルミ殻粉、もみ殻粉、グラファイト、珪藻土、白土、ヒュームシリカ、沈降性シリカ、無水珪酸、カーボンブラック、炭酸カルシウム、クレー、タルク、酸化チタン、炭酸マグネシウム、石英、アルミニウム微粉末、フリント粉末、亜鉛末等が挙げられる。これらは小粒径充填剤の2次凝集を防ぐ目的で、表面処理を施したものでも良い。これら充填剤のなかでも、炭酸カルシウムを使用することが好ましい。この充填剤の配合量は、合成ゴム100質量部に対して、50〜500質量部とする。50質量部未満であると、組成物のチクソ性が低下し、塗布後に接着剤が垂れてしまうため好ましくない。また、500質量部を超えると、組成物の粘度を塗布可能な粘度にする為に、可塑剤、軟化剤、溶剤などの液状分を多量に添加する必要があるため、接着剤が被着する部位であるパネルとの密着が悪くなり、パネルの動きや振動などで接着剤が剥れてしまうおそれがある。
【0009】
加硫剤としては、例えば、硫黄、テトラメチルチラリウムジスルフィドやジペンタメチレンチラリウムテトラサルファイド等のチラリウムポリサルファイド化合物、4,4−ジチオモルフォリン、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾキノンジオキシム、環式硫黄イミド、過酸化物を使用することができる。この加硫剤の配合量は、合成ゴム100質量部に対して、3〜20質量部とする。3質量部未満であると、組成物中のゴムの加硫が充分に行われず、パネルの動きや振動などによってマスチック接着剤が変形した後に回復しづらい為、耐デント性や緩衝性が損なわれてしまうおそれがある。20質量部を超えると、組成物の加熱硬化後のゴム弾性が失われ、パネルの動きや振動などで割れてしまうおそれがある。また、硬すぎる為に歪を発生させてしまうおそれもある。
【0010】
加硫促進剤としては、例えば、チウラム系、置換ジチオカルバミン酸塩系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、キサンテート系などが挙げられ、これらの中から選ばれる少なくとも一種を配合することができる。この加硫促進剤の配合量は、合成ゴム100質量部に対して、3〜20質量部とする。3質量部未満であると、組成物中のゴムの加硫が充分に行われず、パネルの動きや振動などによって変形した後に回復しづらい為、耐デント性や緩衝性が損なわれてしまうおそれがある。20質量部を超えると組成物の加熱硬化後のゴム弾性が失われ、パネルの動きや振動などで割れてしまうおそれがある。また硬すぎる為に歪を発生させてしまうおそれもある。
【0011】
可塑剤としては、フタル酸エステルや石油系分溜精製物、例えば、DOP、DBP、DIDP、BBP、DINP、DHP、スルホン酸系、リン酸系、高級アルコールフタレート等が挙げられる。この可塑剤の配合量は、合成ゴム100質量部に対して、50〜300質量部とする。
50質量部未満であると組成物の粘度が高すぎて塗布ができなくなり、また、塗布することができたとしても加熱硬化後の組成物が脆化しやすくなり、パネルの振動や動きによって割れてしまうおそれがある。300質量部を超えると塗布後に垂れてしまうおそれがある。
【0012】
また、発泡剤は、表面に撥水処理が施された発泡剤と同処理が施されていない発泡剤とを併用することとしている。
表面に撥水処理が施された発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)に撥水処理のコーティングを施したものを使用することができ、具体的な製品名としては、ビニホールST#70(永和化成工業株式会社製)を挙げることができる。また、同処理が施されていない発泡剤としては、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)やDPT等を使用することができる。
尚、本明細書において、撥水処理されたとは、疎水性処理されたものまでも含む広い概念で使用しており、具体的には、メチル基、エチル基等のCn2n+1の構造式で表されるアルキル基やトリエチル基、ジメチルシリコーンオイル等のその構造式の一部にCn2n+1の構造式で表されるアルキル基、シリコーンオイル等のシリコーン系化合物、パーフルオロアルキル基含有化合物に代表されるフッ素系化合物の少なくとも何れかにより、上記発泡剤に対して、コーティング乃至水分に対してブロック処理したものをいうものとする。
そして、本発明において、発泡剤における表面に撥水処理が施された発泡剤と、表面に撥水処理が施されていない発泡剤との配合の割合は1:0.25〜1:0.67とする。表面に撥水処理が施された発泡剤1に対して、表面に撥水処理が施されていない発泡剤の配合の割合が0.25未満であると、低温で加熱発泡させた際に、充分な発泡倍率が得られないからであり、これに対して、処理及至未処理の発泡剤を多量に添加する方法もあるが、均一な発泡セルを得ることができず、歪や錆の原因になってしまうおそれがある。表面に撥水処理が施された発泡剤1に対して、表面に撥水処理が施されていない発泡剤の配合の割合が0.67を超えると、マスチック接着剤を吸湿するような状態で放置した場合に、表面に撥水処理が施されていない発泡剤が吸水することによって失活し、充分な発泡が得られないからであり、これに対して、表面に撥水処理が施された発泡剤を多量に添加する方法が考えられるが、吸湿放置前に均一な発泡セルを得ることができず、歪や錆の原因になるおそれがある。
【0013】
更に、本発明では、酸化カルシウムを4〜10質量部添加する。4質量部未満であると吸湿効果が不十分であり、10質量部を超えると合成ゴムの架橋に支障が生じるためである。この酸化カルシウムの平均粒径については特に制限するものではないが、平均粒径を7μm〜12μmとすることが好ましい。平均粒径を7μm未満とすると、合成ゴムの架橋反応を阻害するため、加熱発泡硬化後の組成物は、パネルに対して充分なゴム弾性を付与することができず、耐デント性が得られなくなるおそれがある。また、平均粒径が12μmを超えると、発泡剤が均一に発泡せず、硬化後のマスチック接着剤が均一なゴム弾性を有するものとはならず、同様に耐デントが得られなくなるおそれがあるからである。
【0014】
また、本発明のマスチック接着剤には、必要に応じて、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や、その硬化剤、水酸化アルミなどの難燃剤、樹脂バルーンやガラスバルーンなどの比重低減剤、安定剤、密着剤、有機充填剤などを加えるようにしてもよい。
【実施例】
【0015】
次に、本発明の実施例を比較例とともに説明する。
1.組成物の調整
スチレンーブタジエンゴム100質量部、表面処理炭酸カルシウム充填剤200質量部及び可塑剤20質量部をロールにて10分間混合混練し、ゴム充填剤混合物とし、これに、以下の配合の材料をオープンニーダーにて30分間混合混練後、20分間脱泡攪拌を行い、それぞれ、実施例1〜6及び比較例1〜7のマスチック接着剤とした。尚、「表面処理炭酸カルシウム」とは、2次凝集を防ぐ目的で、脂肪酸とその塩、樹脂酸、その他の有機カルボン酸とその塩及び界面活性剤等を単独又は併用し、炭酸カルシウムに表面処理を行ったものをいうものとする。
【0016】
(実施例1)
加硫剤として硫黄を8.0質量部、加硫促進剤Aとしてオキシム系の加硫促進剤4.0質量部、加硫促進剤Bとしてチアゾール系の加硫促進剤2.0質量部、発泡剤Aとして表面に撥水処理が施されたアゾジカルボンアミド3.0質量部、発泡剤Bとして表面に撥水処理が施されていないアゾジカルボンアミド2.0質量部、可塑剤としてフタレート系可塑剤180.0質量部及び平均粒径7μmの酸化カルシウム7.0質量部を混合したものを前記ゴム充填剤混合物に添加した。
各材料として、具体的には以下のものを使用した。
加硫促進剤Aとして、「バルノックGM」(大内振興化学社製)、加硫促進剤Bとして、「ノクセラーDM」(大内振興化学社製)、発泡剤Aとして、「ビニホールST#70」(永和化成工業株式会社製)、発泡剤Bとして、「セルマイクCAP500」(三協化学社製)、可塑剤として、「DINP」(ジェイプラス社製)を使用した。
【0017】
(実施例2)
加硫剤として硫黄を8.0質量部、加硫促進剤Aとしてオキシム系の加硫促進剤4.0質量部、加硫促進剤Bとしてチアゾール系の加硫促進剤2.0質量部、発泡剤Aとして表面に撥水処理が施されたアゾジカルボンアミド4.0質量部、発泡剤Bとして表面に撥水処理が施されていないアゾジカルボンアミド1.0質量部、可塑剤としてフタレート系可塑剤180.0質量部及び平均粒径7μmの酸化カルシウム7.0質量部を混合したものを前記ゴム充填剤混合物に添加した。
【0018】
(実施例3)
加硫剤として硫黄を8.0質量部、加硫促進剤Aとしてオキシム系の加硫促進剤4.0質量部、加硫促進剤Bとしてチアゾール系の加硫促進剤2.0質量部、発泡剤Aとして表面に撥水処理が施されたアゾジカルボンアミド1.8質量部、発泡剤Bとして表面に撥水処理が施されていないアゾジカルボンアミド1.2質量部、可塑剤としてフタレート系可塑剤180.0質量部及び平均粒径7μmの酸化カルシウム7.0質量部を混合したものを前記ゴム充填剤混合物に添加した。
【0019】
(実施例4)
加硫剤として硫黄を8.0質量部、加硫促進剤Aとしてオキシム系の加硫促進剤4.0質量部、加硫促進剤Bとしてチアゾール系の加硫促進剤2.0質量部、発泡剤Aとして表面に撥水処理が施されたアゾジカルボンアミド12.0質量部、発泡剤Bとして表面に撥水処理が施されていないアゾジカルボンアミド8.0質量部、可塑剤としてフタレート系可塑剤180.0質量部及び平均粒径7μmの酸化カルシウム7.0質量部を混合したものを前記ゴム充填剤混合物に添加した。
【0020】
(実施例5)
加硫剤として硫黄を8.0質量部、加硫促進剤Aとしてオキシム系の加硫促進剤4.0質量部、加硫促進剤Bとしてチアゾール系の加硫促進剤2.0質量部、発泡剤Aとして表面に撥水処理が施されたアゾジカルボンアミド3.0質量部、発泡剤Bとして表面に撥水処理が施されていないアゾジカルボンアミド2.0質量部、可塑剤としてフタレート系可塑剤180.0質量部及び平均粒径7μmの酸化カルシウム4.0質量部を混合したものを前記ゴム充填剤混合物に添加した。
【0021】
(実施例6)
加硫剤として硫黄を8.0質量部、加硫促進剤Aとしてオキシム系の加硫促進剤4.0質量部、加硫促進剤Bとしてチアゾール系の加硫促進剤2.0質量部、発泡剤Aとして表面に撥水処理が施されたアゾジカルボンアミド3.0質量部、発泡剤Bとして表面に撥水処理が施されていないアゾジカルボンアミド2.0質量部、可塑剤としてフタレート系可塑剤180.0質量部及び平均粒径7μmの酸化カルシウム10.0質量部を混合したものを前記ゴム充填剤混合物に添加した。
【0022】
(比較例1)
加硫剤として硫黄を8.0質量部、加硫促進剤Aとしてオキシム系の加硫促進剤4.0質量部、加硫促進剤Bとしてチアゾール系の加硫促進剤2.0質量部、発泡剤Aとして表面に撥水処理が施されたアゾジカルボンアミド0.3質量部、発泡剤Bとして表面に撥水処理が施されていないアゾジカルボンアミド0.2質量部、可塑剤としてフタレート系可塑剤180.0質量部及び平均粒径7μmの酸化カルシウム7.0質量部を混合したものを前記ゴム充填剤混合物に添加した。
【0023】
(比較例2)
加硫剤として硫黄を8.0質量部、加硫促進剤Aとしてオキシム系の加硫促進剤4.0質量部、加硫促進剤Bとしてチアゾール系の加硫促進剤2.0質量部、発泡剤Aとして表面に撥水処理が施されたアゾジカルボンアミド18.0質量部、発泡剤Bとして表面に撥水処理が施されていないアゾジカルボンアミド12.0質量部、可塑剤としてフタレート系可塑剤180.0質量部及び平均粒径7μmの酸化カルシウム7.0質量部を混合したものを前記ゴム充填剤混合物に添加した。
【0024】
(比較例3)
加硫剤として硫黄を8.0質量部、加硫促進剤Aとしてオキシム系の加硫促進剤4.0質量部、加硫促進剤Bとしてチアゾール系の加硫促進剤2.0質量部、発泡剤Aとして表面に撥水処理が施されたアゾジカルボンアミド1.0質量部、発泡剤Bとして表面に撥水処理が施されていないアゾジカルボンアミド4.0質量部、可塑剤としてフタレート系可塑剤180.0質量部及び平均粒径7μmの酸化カルシウム7.0質量部を混合したものを前記ゴム充填剤混合物に添加した。
【0025】
(比較例4)
加硫剤として硫黄を8.0質量部、加硫促進剤Aとしてオキシム系の加硫促進剤4.0質量部、加硫促進剤Bとしてチアゾール系の加硫促進剤2.0質量部、発泡剤Aとして表面に撥水処理が施されたアゾジカルボンアミド5.0質量部、発泡剤Bとして表面に撥水処理が施されていないアゾジカルボンアミド1.0質量部、可塑剤としてフタレート系可塑剤180.0質量部及び平均粒径7μmの酸化カルシウム7.0質量部を混合したものを前記ゴム充填剤混合物に添加した。
【0026】
(比較例5)
加硫剤として硫黄を8.0質量部、加硫促進剤Aとしてオキシム系の加硫促進剤4.0質量部、加硫促進剤Bとしてチアゾール系の加硫促進剤2.0質量部、発泡剤Aとして表面に撥水処理が施されたアゾジカルボンアミド2.9質量部、発泡剤Bとして表面に撥水処理が施されていないアゾジカルボンアミド2.1質量部、可塑剤としてフタレート系可塑剤180.0質量部及び平均粒径7μmの酸化カルシウム7.0質量部を混合したものを前記ゴム充填剤混合物に添加した。
【0027】
(比較例6)
加硫剤として硫黄を8.0質量部、加硫促進剤Aとしてオキシム系の加硫促進剤4.0質量部、加硫促進剤Bとしてチアゾール系の加硫促進剤2.0質量部、発泡剤Aとして表面に撥水処理が施されたアゾジカルボンアミド3.0質量部、発泡剤Bとして表面に撥水処理が施されていないアゾジカルボンアミド2.0質量部、可塑剤としてフタレート系可塑剤180.0質量部及び平均粒径7μmの酸化カルシウム1.0質量部を混合したものを前記ゴム充填剤混合物に添加した。
【0028】
(比較例7)
加硫剤として硫黄を8.0質量部、加硫促進剤Aとしてオキシム系の加硫促進剤4.0質量部、加硫促進剤Bとしてチアゾール系の加硫促進剤2.0質量部、発泡剤Aとして表面に撥水処理が施されたアゾジカルボンアミド3.0質量部、発泡剤Bとして表面に撥水処理が施されていないアゾジカルボンアミド2.0質量部、可塑剤としてフタレート系可塑剤180.0質量部及び平均粒径7μmの酸化カルシウム20.0質量部を混合したものを前記ゴム充填剤混合物に添加した。
【0029】
2.性能試験
次に、上記実施例1〜6及び比較例1〜7のマスチック接着剤を使用し、以下の条件及び評価方法で性能試験を行った。
1)試料の作成
焼き付けた後の状態を観察及び発泡率を測定するための試料としては、厚さ0.8mm、幅25mm、長さ50mmのアルミ鋼板上に、上記各マスチック接着剤を、直径10mm、長さ40mmの半円のビード状に塗布したものを試料とした。
また、せん断強度を測定するための試料として、厚さ1.0mm、幅25mm、長さ100mmのSPCC−SD鋼板に上記各マスチック接着剤を厚さ1.0mmにて幅25mm、長さ25mmラップさせたものを試料とした。
2)放置条件
試料作成後、室温環境下(室温23℃、湿度50%)にて放置し、12時間以内に焼き付けを実施する場合を「放置前」という条件とした。
また、試料作成後、温度50℃、湿度95%中に8時間放置後に、温度23℃、湿度50%中に16時間放置することを1サイクルとし、これを30サイクル繰り返した後に焼き付けを実施する場合を「放置後」という条件とした。
3)焼き付け
上記2)の条件で放置された後の試料を、160℃にて20分間加熱することを「アンダーベーク」とした。また、180℃にて20分間加熱することを「標準ベーク」とした。また、210℃にて20分間加熱することを「オーバーベーク」とした。
4)評価方法
各試料のマスチック接着剤の発泡率、発泡状態及びせん断強度を以下の方法で評価した。
発泡率:
アルミニウム鋼板の質量、焼き付け前の試料の質量及び焼き付け後の試料の質量を測定して下記式に基づいて発泡率を測定した。尚、試験結果として、3個の試料を測定してその平均値を使用した。
発泡率(%)=100×{(W5−W6)−(W3−W4)}/{(W3−W4)−(W1−W2)}
尚、W1:アルミニウム鋼板の空気中での質量(g)
W2:アルミニウム鋼板の蒸留水中での質量(g)
W3:焼き付け前のマスチック接着剤とアルミニウム鋼板の空気中での質量(g)
W4:焼き付け前のマスチック接着剤とアルミニウム鋼板の蒸留水中での質量(g)
W5:焼き付け後のマスチック接着剤とアルミニウム鋼板の空気中での質量(g)
W6:焼き付け後のマスチック接着剤とアルミニウム鋼板の蒸留水中での質量(g)
発泡状態:
焼き付け後の発泡状態は定規及び目視にて観察する。
せん断強度:
インストロン型引っ張り試験機を用いて、引っ張り速度50mm/分にて引っ張り、最大強度(kPa)を測定した。尚、試験結果として3個の試料を測定して、その平均値を使用した。
5)判定基準
発泡率、発泡状態及びせん断強度の判定基準を以下の通りとした。
発泡率:
アンダーベーク 発泡率が50±20%の範囲内にある場合を○、そうでない場合を×とした。
標準ベーク 発泡率が60±20%の範囲内にある場合を○、そうでない場合を×とした。
オーバーベーク 発泡率が60±20%の範囲内にある場合を○、そうでない場合を×とした。
発泡状態:
焼き付け後のマスチック接着剤の表面に3mm以上の凸凹がなく、ひび割れがない場合を○、そうでない場合を×とした。
せん断強度:
150kPa以上の場合を○、そうでない場合を×とした
【0030】
実施例1〜6及び比較例1〜7のマスチック接着剤を用いた各試料の性能試験の結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
実施例1〜6のマスチック接着剤は、放置後に焼き付けを行っても発泡率、発泡状態及びせん断強度はいずれも基準を満たしていた。
これに対して、比較例1では、放置前と放置後のアンダーベークにおいて発泡率が基準を満たさないものとなった。これは、表面に撥水処理が施された発泡剤と同処理が施されていない発泡剤とから構成される発泡剤が、合成ゴム100質量部に対して0.5質量部しか含まれておらず、3質量部を下回ったためである。
また、比較例2では、放置前と放置後のいずれにおいても、標準ベーク及びオーバーベークにおいて各評価項目は基準を満たさないものとなった。これは、表面に撥水処理が施された発泡剤と同処理が施されていない発泡剤とから構成される発泡剤が、合成ゴム100質量部に対して30質量部含まれており、20質量部を上回ったためである。また、アンダーベークにおいてせん断強度は、放置後に基準を満たさなくなった。放置している間に酸化カルシウムの吸湿量が多かったために合成ゴムの架橋が不十分となったためと考えられる。
また、比較例3では、放置前では各評価項目が基準を満たしていたが、放置後には、いずれの焼き付け条件においても発泡率が基準を満たさなくなった。表面に撥水処理が施された発泡剤1に対して、同処理が施されていない発泡剤が4と多量に含まれていたために、放置している間に発泡剤が吸湿し、発泡が十分に行われなかったためと考えられる。
また、比較例4では、放置前と放置後のいずれにおいてもアンダーベークにおいて発泡率が基準を満たさないものとなった。また、標準ベークにおいて、放置前において発泡率が基準を満たしていたが、放置後には基準を満たさないものとなった。表面に撥水処理が施された発泡剤1に対して、同処理が施されていない発泡剤が0.25を下回っていたためである。
また、比較例5では、標準ベーク及びアンダーベークにおいて、放置前には発泡率が基準を満たしていたが、放置後に基準を満たさないものとなった。表面に撥水処理が施された発泡剤1に対して、同処理が施されていない発泡剤が0.67を上回る0.72としたためである。
また、比較例6では、標準ベークにおいて、発泡率及び発泡状態が放置前には基準を満たしていたが、放置後に基準を満たさなくなった。また、放置前と放置後のいずれもオーバーベークにおいて発泡率及び発泡状態が基準を満していなかった。放置前にオーバーベークにおいてせん断強度が基準を満たしていたが、放置後にせん断強度が基準を満たさないものとなった。合成ゴム100質量部に対して、酸化カルシウムが4質量部を下回る1質量部含有していたためである。
また、比較例7では、放置前において、いずれの焼き付け条件においても発泡率が基準を満たさなかった。また、放置後には、標準ベークにおいて発泡率が基準を満たさなかった。また、放置後のオーバーベークにおいて、いずれの評価項目についても基準を満たさなかった。合成ゴム100質量部に対して、酸化カルシウムが10質量部を下回る20質量部含有していたためである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のマスチック接着剤は、自動車等の構造物を始めとして広く産業上利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分架橋又は未架橋型の合成ゴム100質量部に対して、充填剤50〜500質量部、加硫剤3〜20質量部、加硫促進剤5〜20質量部、表面に撥水処理が施された発泡剤と、表面に撥水処理が施されていない発泡剤とから構成される発泡剤3〜20質量部、可塑剤50〜300質量部及び酸化カルシウム4〜10質量部を含有し、前記発泡剤における表面に撥水処理が施された発泡剤と、表面に撥水処理が施されていない発泡剤との配合の割合を1:0.25〜1:0.67とすることを特徴とするマスチック接着剤。
【請求項2】
前記酸化カルシウムの平均粒径を7μm〜12μmとしたことを特徴とする請求項1に記載のマスチック接着剤。

【公開番号】特開2010−143956(P2010−143956A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319423(P2008−319423)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(598109187)アサヒゴム株式会社 (27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】