説明

マッサージ機の施療子移動機構

【課題】施療子とその駆動機構部の上下移動を、ワイヤを用いた簡略な構造で実行可能とし、動作の信頼性や安全性を確保しつつコストダウンが図れ、また静粛性も向上させられるマッサージ機の施療子移動機構を提供する。
【解決手段】背もたれ部93内部に施療子の駆動機構部を上下移動可能に配設する一方、この駆動機構部に配置したドラムに、ワイヤを巻付けると共にワイヤの端部を背もたれ部93内に保持し、ワイヤの緊張を確保しつつドラムを回転させ、ワイヤ巻付き状態を変化させてドラムを移動させ、このドラムと一体の施療子とその駆動機構部も移動させることから、ワイヤで施療子と駆動機構部の重量を確実に支持しつつこれらをスムーズに上下移動させることができ、施療子と駆動機構部の支持構造を簡略化してコストダウンが図れると共に、静粛性を高められ、騒音がマッサージによるリラックス状態の妨げとなるのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揉み玉等の施療子の位置を背もたれ部で上下に調整可能なマッサージ機に関し、特に施療子とその駆動機構をワイヤにより上下動させる機構に関する。
【背景技術】
【0002】
被施療者の身体を支持しつつマッサージ動作を実行する椅子型のマッサージ機では、通常、その背もたれ部に設けられる揉み玉等の施療子を背もたれ部の上下方向に移動可能とし、被施療者の所望する施療位置への施療動作を可能にする構成を有している。こうしたマッサージ機で、施療子を背もたれ部で上下に移動させる機構としては、施療子の駆動機構部を背もたれ部に内蔵されるガイドレールで上下移動可能に支持しつつ、駆動機構部側に配設され回転駆動される歯車と、ガイドレール側に多数レール長手方向に並べて固定配設された歯(ラック)との噛み合いで、駆動機構部及び施療子の背もたれ部上下方向への移動及び停止状態の維持を可能にする仕組みが一般的に用いられていた。このような移動用機構を採用したマッサージ装置の一例として、特開平10−211246号公報に開示されるものがある。
【0003】
また、椅子型のマッサージ機において施療子を移動させる他の機構として、背もたれ部内の上下に配置したフレーム間に渡したワイヤを巻付けたドラムを回動させ、ワイヤの巻付き状態を変化させてドラム位置を上下に移動させて、ドラムと一体となっている施療子とその駆動機構部を背もたれ部上下方向に移動させるものも提案されていた。こうした移動用機構を採用したマッサージ装置の一例として、特公昭59−34375号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−211246号公報
【特許文献2】特公昭59−34375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のマッサージ機における施療子を上下に移動させる機構は前記各特許文献に示される構成とされ、従来前者の機構は、施療子とその駆動機構部を適切に上下移動させつつ、停止時には可動部分を上下へのずれなく保持できるものであったが、移動の際に歯同士の噛合いが生じるため、施療子の上下移動と同時に噛合い音が発生し、背もたれ部外に騒音として伝わってしまう上、歯車と歯の加工精度を適度に設定しないと発生音が大きくなるという課題を有していた。また、駆動機構部をスムーズに上下移動させるためには、左右のガイドレールの両方に歯を設け、これに噛合う駆動用歯車をそれぞれ設けて、上下移動の力を背もたれ部横方向においてバランスよく生じさせる構造を要し、こうした複雑な構造に加えて、各歯の加工精度も確保しなければならないことは、製造コスト高を招いてしまうという課題も有していた。
【0006】
一方、従来後者のマッサージ機における施療子の上下移動機構は、ワイヤを用いることで比較的簡略な構造にでき、噛合い音の発生もないものの、ドラムへのワイヤの巻付き状態を整列状態とすることは難しいため、ワイヤとドラムが互いに滑らないようにワイヤのドラムへの巻付け回数をある程度確保すると、ドラム上で巻付いたワイヤ同士が接触しやすく、この接触に伴って異音が発生したり、ワイヤが摩耗して劣化するおそれがあるという課題を有していた。
【0007】
また、ワイヤは、駆動機構部と施療子の荷重を支えているが、ワイヤのドラムより上側の部分で駆動機構部と施療子の荷重が加わって緊張状態となる分、ドラムより下側では逆に弛む状態となって、ドラムとワイヤの滑りや駆動機構部の上下位置の変動を生じやすくなっており、背もたれ部に体をあずけて施療子に体重が加わった際に、駆動機構部の予期せぬ動きを生じて施療子のがたつきを招く場合があるという課題を有していた。
【0008】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、施療子とその駆動機構部の上下移動を、ワイヤを用いた簡略な構造で実行可能とし、動作の信頼性や安全性を確保しつつコストダウンが図れ、また騒音も生じにくく、静粛性を向上させられるマッサージ機の施療子移動機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るマッサージ機の施療子移動機構は、背もたれ部に配置される所定の施療子を当該施療子の駆動機構部ごと背もたれ部に対し上下位置調整可能とするマッサージ機の施療子移動機構において、前記背もたれ部内部に配設され、前記駆動機構部を背もたれ部上下方向に移動可能とし且つ他方向への動きは拘束して支持する複数のガイドレールと、前記駆動機構部の背もたれ部上下方向への移動の向きに直交する軸を中心に回動可能として駆動機構部と一体に配設され、所定の駆動源により回転駆動されるドラムと、当該ドラムに所定回数巻付けられつつ、少なくとも一端を背もたれ部内部の上下方向の端部に保持されて、背もたれ部内部に上下に張り渡され、ドラムの回転に応じてドラムへの巻付き状態を変化させるのに伴って、ドラムを背もたれ部に対し上下方向に移動させるワイヤと、当該ワイヤの端部に取付けられ又はワイヤの中間部に接して、弾性力に基づいてワイヤを弛み無く張った状態に維持する緊張手段とを備えるものである。
【0010】
このように本発明によれば、背もたれ部内部に施療子の駆動機構部を上下方向移動可能に配設する一方、この駆動機構部に配置したドラムに、ワイヤを巻付けると共にワイヤの端部を背もたれ部内に保持し、緊張手段でワイヤの緊張を確保しつつドラムを回転させて、ドラム上のワイヤ巻付き状態を変化させてドラムを移動させ、このドラムと一体の施療子とその駆動機構部も上下方向に移動させることにより、ワイヤで施療子とその駆動機構部の重量を確実に支持しつつこれらをスムーズに上下方向に移動させることができ、施療子と駆動機構部の支持構造を簡略化して大幅なコストダウンが図れると共に、上下移動に歯車機構を用いないことで歯車の噛合い音が発生せず、静粛性を高められ、騒音がマッサージによるリラックス状態の妨げとなるのを防止できる。また、施療子と駆動機構部を支えるワイヤの弛緩を緊張手段で防ぐことができ、ドラムとワイヤとの接触を確実なものとして滑り無く移動させられ、且つドラム停止時にもドラムとワイヤを密着させてドラムとワイヤ間の滑りを抑え、施療子と駆動機構部の移動停止状態を維持でき、移動動作や停止時の施療動作の信頼性や安全性を高められる。
【0011】
また、本発明に係るマッサージ機の施療子移動機構は必要に応じて、前記ドラムとして、駆動機構部の上方向移動用の第一ドラムと、下方向移動用の第二ドラムとがそれぞれ配設され、前記ワイヤが、一端部を前記背もたれ部内部の上端部に連結されると共に他端部を前記第一ドラムに巻付けた状態とされる第一ワイヤと、一端部を背もたれ部内部の下端部に連結されると共に他端部を前記第二ドラムに巻付けた状態とされる第二ワイヤとからなり、前記第一ドラムと第二ドラムが、同時に同じ回転方向に回転駆動されて一方がワイヤを巻取り、他方がワイヤを送出す状態とされ、背もたれ部上下方向に同様に移動して施療子及び駆動機構部の上下位置を変化させるものである。
【0012】
このように本発明によれば、端部を背もたれ部内部の上端部に連結された第一ワイヤを巻付けられ、ワイヤの巻取りに伴って上方に移動する第一ドラムと、端部を背もたれ部内部の下端部に保持された第二ワイヤを巻付けられ、ワイヤの巻取りに伴って下方に移動する第二ドラムとをそれぞれ配設し、施療子及びその駆動機構部の上方への移動に用いるドラムと下方への移動に用いるドラムをそれぞれ独立させることにより、各ワイヤの端部をドラムに固定した上でワイヤをドラムに巻付けた状態とすることができ、ドラムとこれに巻付けたワイヤとの間の滑りを無くすことができ、ドラムを回転させた分だけ確実にワイヤを巻取り又は送出して施療子及び駆動機構部を上下に移動させることができ、施療子の移動の精度を高めて所望の位置で確実にマッサージ動作を実行させられる。
【0013】
また、本発明に係るマッサージ機の施療子移動機構は必要に応じて、前記ガイドレールが、背もたれ部内部の左右に一対配設され、前記駆動機構部を一対のガイドレール間に位置させた状態で支持し、前記第一ドラムと第二ドラムが、一対のガイドレール間の中央位置を挟んだ両側にドラム同士が互いに離隔した配置としてそれぞれ配設されるものである。
【0014】
このように本発明によれば、左右一対のガイドレール間に支持される駆動機構部に対し、第一ドラムと第二ドラムが左右のガイドレール間の中央位置を挟んだ両側に互いに離隔させて配置され、ワイヤの張力に基づく引張力を、第一ドラムが上方向に、第二ドラムが下方向にと、それぞれ逆向きに受けることにより、ドラム間の中心位置周りについては各ドラムに加わる引張力が同じ向きとなる、すなわち、施療子及び駆動機構部の上下いずれの移動においても、駆動機構部にはドラムに加わる引張力によるモーメントが同じ向きに生じることとなり、駆動機構部と各ガイドレールとの接触を、一方向のモーメントに伴う抵抗力のみを緩和するものとすれば、ガイドレールに対し駆動機構部を上下いずれの移動についてもスムーズに移動可能とすることができ、他の向きへのモーメント発生に伴う抵抗を考慮せずに済み、駆動機構部のガイドレールに対する上下への円滑な移動を簡略な構造で実現できる。また、一般に背もたれ部の中央に位置させる揉み玉等の施療子とその駆動機構を、ガイドレール間の中央でドラム及びワイヤとの物理的干渉も無く適切な位置に無理なく支持できると同時に、互いに離隔させて配置した第一ドラムと第二ドラム並びにこれらに巻付けるワイヤを、施療子等との重なりを避けて適切にレイアウトでき、支障なく各ドラムへのワイヤ巻付き状態を変化させて施療子及び駆動機構部を上下に移動させられる。
【0015】
また、本発明に係るマッサージ機の施療子移動機構は必要に応じて、前記ワイヤが、前記ガイドレールにおける、背もたれ部の背中に接する面に対し反対側を向いた所定面に沿った配置とされてなり、前記ドラムが、ガイドレール近傍に配置され、ワイヤの巻付け状態を変化させつつガイドレールの前記所定面に沿って背もたれ部上下方向に移動するものである。
【0016】
このように本発明によれば、ワイヤをガイドレールの所定面に沿わせた状態で配置すると共に、ワイヤを巻付けるドラムもガイドレール近傍に配置し、ドラムを回転させてワイヤの巻付け状態を変化させる中、ドラム位置に応じて変位しようとするワイヤがガイドレールの拘束を受けることにより、施療子と駆動機構部の位置に関わりなくワイヤがガイドレール近傍に存在する状態を維持でき、ワイヤにおける背もたれ部内部に保持された端部とドラムに巻付けられた部分との間の部分が、緊張で直線状となってガイドレール位置から大きく外れて飛出した状態となるのを防いで、施療子と駆動機構部がどの位置であっても、ワイヤと背もたれ部内部の他部材との物理的干渉を避けられ、ワイヤを背もたれ部内に無理なく内蔵できると共に、施療子と駆動機構部をスムーズに上下移動させられる。
【0017】
また、本発明に係るマッサージ機の施療子移動機構は必要に応じて、前記ドラムが、ワイヤと接触する円筒面状の巻胴部に、巻付けられたワイヤの一列分が入り込む大きさの螺旋状の溝を設けられるものである。
【0018】
このように本発明によれば、ドラムの巻胴部に溝を設け、ワイヤが溝に入り込んだ状態でドラムに巻付くことにより、ドラム上で巻付いたワイヤが溝に規制されて溝に沿って整列状態で配置されることとなり、ワイヤが無秩序にドラムに巻付いてワイヤ同士が互いに接触したままドラムが回転することで異音が発生したり、ワイヤが摩耗、損傷したりするのを防止でき、施療子と駆動機構部の移動動作に係り静粛性を確保できると共に、用いるワイヤの耐久性を向上させられる。
【0019】
また、本発明に係るマッサージ機の施療子移動機構は必要に応じて、前記緊張手段が、ワイヤのドラムより下側部分の端部と背もたれ部内部の下端部との間に介設されて弾性変形する弾性体であるものである。
【0020】
このように本発明によれば、緊張手段として、ワイヤの端部と背もたれ部内部の下端部との間に弾性体を設け、ワイヤを弾性力で下方に引張って緊張させることにより、ワイヤのドラムより下側部分を確実に緊張させてワイヤの弛みを防ぎ、ワイヤのドラムへの巻付き状態を適切にして滑りをなくし、施療子と駆動機構部を確実に移動及び停止状態に制御できる。
【0021】
また、本発明に係るマッサージ機の施療子移動機構は必要に応じて、前記緊張手段が、駆動機構と共にガイドレールに対し移動可能に配設され、ワイヤのドラムより下側部分に当接する回動可能なローラと、当該ローラをワイヤに所定の弾性力で押付ける弾性部材とを有してなるものである。
【0022】
このように本発明によれば、緊張手段として、回動するローラとこれをワイヤに押付ける弾性部材を設け、ワイヤのドラムより下側部分にローラを当接させてワイヤを押圧し、ワイヤのドラムとローラとの間、及びローラとワイヤ下端部との間の各部分でワイヤが引張られるようにし、ワイヤを緊張させることにより、ワイヤのドラムより下側部分を確実に緊張させてワイヤの弛みを防ぎ、ワイヤのドラムへの巻付き状態を適切にして滑りをなくし、施療子とその駆動機構部を確実に移動及び停止状態に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る施療子移動機構を用いるマッサージ機の斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る施療子移動機構の正面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る施療子移動機構と組合わされるメカユニットの正面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る施療子移動機構と組合わされるメカユニットの背面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る施療子移動機構と組合わされるメカユニットの左側面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る施療子移動機構を用いるマッサージ機のブロック図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る施療子移動機構によるメカユニットの移動状態説明図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る施療子移動機構の正面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る施療子移動機構と組合わされるメカユニットの正面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る施療子移動機構と組合わされるメカユニットの左側面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る施療子移動機構におけるドラムのワイヤ巻付け状態説明図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る施療子移動機構の正面図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る施療子移動機構と組合わされるメカユニットの正面図である。
【図14】本発明の第3の実施形態に係る施療子移動機構と組合わされるメカユニットの背面図である。
【図15】本発明の第3の実施形態に係る施療子移動機構と組合わされるメカユニットの左側面図である。
【図16】本発明の第4の実施形態に係る施療子移動機構の正面図である。
【図17】本発明の第4の実施形態に係る施療子移動機構と組合わされるメカユニットの背面図である。
【図18】本発明の第4の実施形態に係る施療子移動機構と組合わされるメカユニットの底面図である。
【図19】本発明の第4の実施形態に係る施療子移動機構によるメカユニットの移動状態説明図である。
【図20】本発明の他の実施形態に係る施療子移動機構におけるワイヤガイドの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係るマッサージ機の施療子移動機構を前記図1ないし図7に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係るマッサージ機の施療子移動機構は、マッサージ機90の背もたれ部93に配置される所定の施療子をこの背もたれ部93に対し上下位置調整可能とするものであり、詳細には、背もたれ部93内部に配設され、施療子の駆動機構部を背もたれ部93上下方向に移動可能とし且つ他方向への動きは拘束して支持する二つのガイドレール11、12と、前記駆動機構部の背もたれ部93上下方向への移動の向きに直交する軸を中心に回動可能として駆動機構部に配設され、所定の駆動源により回転駆動される二つのドラム13、14と、これらドラムに所定回数巻付けられつつ、一端を背もたれ部93内部の上下端部に保持されて、これら上下端部と各ドラム間に張り渡される二つのワイヤ15、16と、一方のワイヤ16の端部に取付けられ、弾性力に基づいてワイヤを弛み無く張った状態に維持する前記緊張手段としてのばね17とを備える構成である。
【0025】
本実施形態に係る施療子移動機構を有するマッサージ機90は、着座した被施療者を支える椅子状のものであり、詳細には、図1に示すように、床面上に載置されて椅子全体を安定的に支持する基台部91と、この基台部91の上方で被施療者の臀部を支える座部92と、この座部92の後側で被施療者の背中を支える背もたれ部93と、座部92の左右両側で被施療者の肘や前腕部を支える肘掛部94と、座部92の前側で被施療者の脚を支える脚支持部95と、マッサージ動作に係る各種操作入力を受付けるリモコン81と、搭載されている複数の施療機構によるマッサージ動作を操作入力内容に基づいて制御する制御部82とを備える構成である。
【0026】
前記基台部91は、椅子各部をなす前記座部92、背もたれ部93、肘掛部94、及び脚支持部95を一体に取付けられてこれらを支持するものである。また、前記座部92は、基台部91に対し座面の傾斜角度を調整可能として取付けられ、座面にて被施療者の臀部を支えつつ内蔵の施療機構でマッサージを実行するものであり、この施療機構として、空気の給排で動作する臀部用エアセル71、及び太腿用エアセル72を備える構成である。これらエアセルを空気の給排で動作させるエアポンプ70が座部92下側のスペースに配設される。
【0027】
前記背もたれ部93は、前記基台部91及び座部92に対し傾斜角度を調整可能として配設され、その内部に、前記施療子移動機構をなすガイドレール11、12、ドラム13、14、ワイヤ15、16、及びばね17を備える一方、この他に、施療子としての揉み玉61とこれを動作させる前記駆動機構部が一体となったメカユニット60と、前記エアポンプ70による空気の給排で動作する背中用エアセル73及び腰用エアセル74と、背もたれ部内部にそれぞれ配置されて背もたれ部の形状を維持する枠状のフレーム97とを備える構成であり(図1参照)、このうちメカユニット60、背中用エアセル73、及び腰用エアセル74が、それぞれマッサージを実行する施療機構をなす。
【0028】
また、背もたれ部93の左右両側部には一対の側壁部99が突出配設され、その被施療者に面する内面側にもエアセル(図示を省略)が設けられ、被施療者の上腕部に対してもマッサージを行える構成である。
【0029】
前記ガイドレール11、12は、略コ字状の断面形状を有すると共に、人の背中形状に合せた背もたれ部93の表面に沿う長手方向形状とされてなり、図2に示すように、背もたれ部93内部のフレーム97のうち右フレーム97cと左フレーム97dにそれぞれ固定され、一対を背もたれ部内部左右にそれぞれ配設される構成である。この対をなす二つのガイドレール11、12に挟まれる配置で、前記メカユニット60がガイドレール11、12に沿って移動可能に配設される。
【0030】
前記メカユニット60は、背もたれ部93上で揉み、叩き等の刺激を被施療者に与える施療子としての左右一対の揉み玉61と、この揉み玉61を揉み、叩き等のマッサージ動作に対応させて駆動する揉み玉駆動部62と、この揉み玉駆動部62を傾動可能に支持するベース部63とを備える構成であり(図3参照)、これら揉み玉駆動部62とベース部63が前記駆動機構部をなしている。このメカユニット60のベース部63に、二つのドラム13、14が回動自在に支持され、各ドラム13、14がワイヤ15、16を巻付けられた状態で回転駆動される。
【0031】
前記揉み玉駆動部62は、揉み玉61に揉み動作を行わせるための駆動力を与える揉みモータ64と、揉み玉61に叩き動作を行わせるための駆動力を与える叩きモータ65とを備え(図4参照)、揉み玉61を可動状態で支持する構成である。この揉み玉駆動部62は、メカユニット60の下部側でベース部63に傾動可能に取付けられ、揉み玉61の背中側への突出量を調整できる仕組みである。
【0032】
前記ベース部63は、ドラム13、14を回転駆動する昇降モータ66と、揉み玉駆動部62を傾動させて揉み玉61を被施療者の背中に対し進退させ、施療の強さを調整する進退モータ67とを備える構成である(図4参照)。揉み玉駆動部62の揉みモータ64と叩きモータ65、並びにベース部63の昇降モータ66と進退モータ67が、それぞれ制御部82から出力される制御信号を受けて作動し、背もたれ部93において揉み玉61による各種マッサージ機能を被施療者に対して提供することとなる。
【0033】
また、図2ないし図5に示すように、ベース部63の側端部にはガイドローラ68a、68b、68c、68dがそれぞれ回動可能に取付けられている。これらのガイドローラ68a、68b、68c、68dがガイドレール11、12に挿嵌されてガイドレール11、12長手方向以外の動きを拘束されることで、メカユニット60全体が一対のガイドレール11、12に沿って上下に移動可能に支持される仕組みである。
【0034】
前記ドラム13、14は、メカユニット60の上方向移動用となる第一ドラム13と、メカユニット60の下方向移動用となる第二ドラム14とからなり、ガイドレール11、12間の中央に配置される揉み玉61及び揉み玉駆動部62を挟む両側に、ドラム同士を互いに離隔させた配置として、それぞれベース部63に回動可能として固定支持され(図3参照)、昇降モータ66で駆動されて回転し、ワイヤ15、16を巻取り又は送出すことに伴ってワイヤに対し相対移動し、同時に一体のメカユニット60全体をガイドレール11、12に沿って背もたれ部93の上下に移動させ、揉み玉61による被施療部位を上下に変えるものである。
【0035】
前記第一ドラム13と第二ドラム14は、円筒面状の巻胴部を同一径として形成され、同一の駆動軸上に配設されて昇降モータ66により同時に同じ回転方向へ回転駆動され、各ワイヤ15、16の巻付け状態を変化させて背もたれ部93に対し上下方向に同様に移動し、同時にメカユニット60の上下位置を変化させる。いずれの回転方向においても、一方のドラムでワイヤが引出され、他方のドラムでワイヤが巻取られる状態となる。
【0036】
これら第一ドラム13と第二ドラム14を回転させてメカユニット60を上下移動させる際、ワイヤの張力に基づいて上方向へ引張力を受ける第一ドラム13と、ワイヤの張力に基づいて下方向へ引張力を受ける第二ドラム14とが、左右のガイドレール11、12間の中央位置を挟んだ両側に、ほぼ左右対称となるようにしてそれぞれ配置されていることで、各ワイヤから加わる力がメカユニット60におけるドラム間の中心位置について回転対称の関係となり、メカユニット60には同じ向き(図2、図3上で時計回り方向)にほぼ同じ大きさのモーメントが生じる。これに対し、各ガイドローラ68a、68b、68c、68dにおいては、そのガイドレール11、12との接触状態を適切にしてモーメントに伴う余分な力を緩和し、ガイドレール11、12に対するメカユニット60のスムーズな上下の動きを維持できるようにしている。ただし、メカユニット60の上下いずれの移動においても、モーメントの向きは一方向のみで他の向きについては考慮せずに済むことから、比較的簡略な構造でメカユニット60のスムーズな動きを実現できる。なお、各ワイヤから加わる力によるモーメントの向きが同じであれば、その大きさは異なっていてもよく、ガイドレール11、12間の中央位置から第一ドラム13と第二ドラム14までの各距離が異なるように各ドラムを配置する構成としてもかまわない。
【0037】
前記第一ドラム13と第二ドラム14は、揉み玉61及び揉み玉駆動部62がガイドレール11、12間の中央に配置される関係から、これらを避けた形でガイドレール11、12間の中央以外に配設されるが、各ドラム位置は中央を挟んでドラム同士を離隔させて配置するものに限られず、各ドラムをガイドレール11、12間の中央に対し一方に偏らせてドラム同士を近接させる配置とすることもできる。
【0038】
前記ワイヤ15、16は、図2に示すように、一端部を背もたれ部93内部の上端部に位置する上部フレーム97aに保持されると共に、他端部を前記第一ドラム13に固定され且つ所定長さ分巻付けた状態とされる第一ワイヤ15と、一端部を背もたれ部93内部の下端部に位置する下部フレーム97bに保持されると共に、他端部を前記第二ドラム14に固定され且つ所定長さ分巻付けた状態とされる第二ワイヤ16とからなり、ドラム13、14の停止時はワイヤ張力でドラム位置を保持して、ドラム13、14と一体のメカユニット60の上下位置を維持する一方、ドラム13、14の回転時はドラムへの巻付き状態を変化させるのに伴って、ドラム13、14を上下方向に相対移動させ、ドラム13、14と共にメカユニット60の背もたれ部93に対する上下方向への移動を許容するものである。
【0039】
前記ばね17は、緊張手段をなす弾性体として、図2に示すように、第二ワイヤ16下端部と背もたれ部内下端部の下部フレーム97bとの間に介在させて配設されるものであり、第二ワイヤ16下端部を保持しつつこの第二ワイヤ16を下向きに引張ることで第二ワイヤ16を緊張させ、その弛みを防いでいる。このばね17は、外力の加わらない自然長から所定寸法引き伸して、元に戻ろうとする弾性力を生じさせた状態で、緊張させた第二ワイヤ16の下端部と一方の端部を連結させて配設されることで、第二ワイヤ16に対し弾性力に基づく引張力を与え、第二ワイヤ16を弛み無く張った状態に維持する仕組みである。
【0040】
また、ばね17は、背中を背もたれ部93に載せた際などの揉み玉61に加わる外力でメカユニット60が上又は下に動いた場合に、ばねが変形することで、衝撃を吸収し、ワイヤが過剰に引張られる状態となるのを防ぐ働きも有しており、ワイヤへの負荷を減らして耐久性を高めることができる。
なお、上側の第一ワイヤ15には、メカユニット60の重量が荷重として加わるので、特に緊張用の手段を用いなくても自然に緊張状態となっており、弛みは生じない。
【0041】
前記肘掛部94は、座部92の両側に位置して基台部91と一体に連結し、背もたれ部93がリクライニング角度を変化させたり、座部92が傾動しても、被施療者の前腕を安定的に支持するよう形成される構成である。この肘掛部94にも、前記エアポンプ70による空気の給排で動作するエアセルを配設して、被施療者の前腕部に対しマッサージを行える構成としてかまわない。
【0042】
前記脚支持部95は、座部92の前側に位置し、座部92前端付近を中心として傾動可能に配設され、内蔵のアクチュエータ(図示を省略)により傾斜角度を調整されるものである。この脚支持部95には、前記エアポンプ70による空気の給排で動作する脚用エアセル75、76が配設される。
【0043】
前記リモコン81は、マッサージ機に対する各種操作入力を受付ける多数のスイッチや表示部を備え、マッサージ機90の側部におけるスタンド96(図1参照)に着脱自在に設置され、マッサージに係る操作入力を制御部82に送信するものである。なお、リモコン81のスイッチや表示部の位置を被施療者にとって最適位置とするために、スタンド96の位置は調整可能となっている。
【0044】
前記制御部82は、リモコン操作やあらかじめ設定されたマッサージ内容に基づいて、施療機構やマッサージ機の他の各可動部分を被施療者に対応した状態に調整すると共に、施療機構や他の各可動部分に対し適切なマッサージの実行のための動作制御を行うものである。
【0045】
この制御部82は、そのハードウェア構成として、CPUやメモリ、入出力インターフェース等を備えるコンピュータとなっており、メモリ等に格納されるプログラムにより、コンピュータを制御部82として動作させる仕組みである。この制御部82をなすコンピュータは、CPUやメモリ、ROM等を一体的に形成されたマイクロコンピュータとしてもかまわない。
【0046】
この制御部82をなすコンピュータのユニットは、座部92直下等のマッサージ機90内部の所定のスペースに配設され、図6に示すように、リモコン81と通信可能な状態とされると共に、メカユニット60や、背もたれ部93や脚支持部95の各アクチュエータ(図示を省略)、エアポンプ70とそれぞれ電気的に接続され、マッサージ実行の際には、設定されたマッサージのデータに基づく制御信号出力によりこれらの駆動機構を動作させる。さらに制御部82は、メカユニット60や各アクチュエータの変位量を出力するエンコーダ等の信号出力手段とも電気的に接続されており、メカユニット60の状態や、背もたれ部93及び脚支持部95の傾斜等の状態を把握しつつこれらの動作制御を行うこととなる。
【0047】
次に、本実施形態に係るマッサージ機の施療子移動機構の動作について説明する。前提として、マッサージ機90の主電源が入状態とされてマッサージ機90が待機状態で起動し、被施療者によるマッサージコース等の動作状態指示入力を受けて各施療機構によるマッサージ動作が開始した状態にあるものとする。
【0048】
揉み玉61を上方へ動かす必要が生じた場合、制御部82は、昇降モータ66を駆動させて各ドラムを所定方向に回転させ、第一ドラム13では第一ワイヤ15を巻取り、第二ドラム14では第二ワイヤ16を送出すことで、両ドラムを各ワイヤの巻取り及び送出しの各長さ分だけ上方へ移動させる。これにより、これらドラム13、14と一体に上下移動するメカユニット60もガイドレール11、12に沿って上方へ移動し、揉み玉61位置を上方に変化させることとなる(図7(A)参照)。
【0049】
各ドラム13、14の回転量は揉み玉61の上下移動量に対応するワイヤ15、16の巻取り又は送出し長さと、ドラム13、14におけるワイヤ15、16の巻付き径から求められ、与えられた移動量が実現するよう回転駆動される。
【0050】
一方、揉み玉61を下方へ動かす必要が生じた場合、制御部82は、昇降モータ66を駆動させて各ドラムを前記上方の場合とは逆方向に回転させ、前記と逆に第一ドラム13では第一ワイヤ15を送出し、第二ドラム14では第二ワイヤ16を巻取って、両ドラムを各ワイヤの送出し及び巻取りの各長さ分だけ下方へ移動させる。これにより、これらドラム13、14と一体に上下動するメカユニット60もガイドレール11、12に沿って下方へ移動し、揉み玉61位置を下方に変化させる(図7(B)参照)。
【0051】
揉み玉61の上下位置を動かす必要がない場合、昇降モータ66を停止させていれば、各ドラム13、14が回転することもなく、またワイヤ15はメカユニットの重量で、ワイヤ16はばね17による付勢でそれぞれ緊張状態にあり、各ワイヤ15、16の張力が釣合っていることから、メカユニット60は停止状態を保持でき、揉み玉61もそのままの上下位置を維持する。
【0052】
このように、本実施形態に係るマッサージ機の施療子移動機構は、揉み玉61を備えたメカユニット60を背もたれ部93のガイドレール11、12間に上下方向移動可能に配設する一方、メカユニット60のベース部63に配置したドラム13、14に、ワイヤ15、16をそれぞれ巻付けると共にワイヤ15、16の端部を背もたれ部93内に保持し、ばね17で第二ワイヤ16の緊張を確保しつつドラム13、14を回転させて、ドラム上のワイヤ巻付き状態を変化させてドラム13、14を移動させ、このドラム13、14と一体のメカユニット60を上下方向に移動させることから、ワイヤ15、16でメカユニット60の重量を確実に支持しつつこれらをスムーズに上下方向に移動させることができ、メカユニット60の支持構造を簡略化して大幅なコストダウンが図れると共に、上下移動に歯車機構を用いないことで歯車の噛合い音が発生せず、静粛性を高められ、騒音がマッサージによるリラックス状態の妨げとなるのを防止できる。また、二つのドラム13、14及びワイヤ15、16を用い、各ワイヤ15、16の端部をドラム13、14に固定した上でワイヤ15、16をドラム13、14に巻付けると共に、メカユニット60を支えるワイヤ16の弛緩をばね17で防ぐことで、ドラム13、14とこれに巻付けたワイヤ15、16との間の滑りを無くすことができ、ドラム13、14を回転させた分だけ確実にワイヤ15、16を巻取り又は送出して移動させられ、メカユニット60の移動精度を高められ、且つドラム停止時にもドラム13、14とワイヤ15、16間の滑りなくメカユニット60の移動停止状態を維持でき、移動動作や停止時の施療動作の信頼性や安全性を高められる。
【0053】
なお、本実施形態に係るマッサージ機の施療子移動機構においては、緊張手段をなす弾性体としてばね17を用いる構成としているが、これに限らず、弾性体として、ゴム等のエラストマーを使用する構成とすることもでき、前記実施形態同様、第二ワイヤ16下端部と背もたれ部内下端部の下部フレーム97bとの間に介在して第二ワイヤ16を下向きに引張ることで、第二ワイヤ16を弛み無く張った緊張状態に維持できる。
【0054】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るマッサージ機の施療子移動機構を前記図8ないし図11に基づいて説明する。
【0055】
前記各図において本実施形態に係るマッサージ機の施療子移動機構は、前記第1の実施形態同様、ガイドレール21、22と、ドラム23と、ワイヤ24とを備える一方、異なる点として、ドラム23とワイヤ24がそれぞれ一つのみ配設され、ワイヤ24は上下両端を背もたれ部93内の上下端部にそれぞれ保持されて、その中間でドラム23に所定回数巻付けた状態とされ、さらに、緊張手段として、ワイヤ24に当接するローラ25及びこのローラ25をワイヤ24に押付ける弾性部材26を備える構成を有するものである。
なお、マッサージ機90におけるメカユニット60の昇降に係る機構以外の各部の構成は、前記第1の実施形態と同様のものであり、説明を省略する。
【0056】
前記ガイドレール21、22は、前記第1の実施形態同様、略コ字状の断面形状及び背もたれ部93の表面に沿う長手方向形状を有して、図8に示すように背もたれ部93内部の右フレーム97cと左フレーム97dにそれぞれ固定され、一対を背もたれ部内部左右にそれぞれ配設される構成である。
【0057】
このガイドレール21、22に対し、メカユニット60のベース部63側端部における各ガイドローラ68a、68b、68c、68dが挿嵌状態となって、メカユニット60全体が一対のガイドレール21、22に沿って上下に移動可能に支持される仕組みも、前記第1の実施形態と同様である。
【0058】
前記ドラム23は、ベース部63における、ガイドレール21、22間の中央に位置する揉み玉61及び揉み玉駆動部62と重ならない箇所に、回動可能として支持され(図9参照)、昇降モータ66で駆動されて回転し、ワイヤ24を巻取り且つ送出すことに伴ってワイヤに対し相対移動し、同時に一体のメカユニット60全体をガイドレール21、22に沿って背もたれ部93の上下に移動させ、揉み玉61による被施療部位を上下に変えるものである。
【0059】
ドラム23は、昇降モータ66による回転でワイヤ24の巻付け状態を変化させ、背もたれ部93に対し上下方向に移動するが、どの回転方向においても、ドラム23上でワイヤ24の上下いずれかの側が引出され、ワイヤの他方の側が巻取られることとなる。
【0060】
このドラム23でワイヤ24を巻付けられる円筒面状の巻胴部には、図11に示すように、螺旋状に連続する一つの溝23aが設けられ、巻取られたワイヤ24がこの溝23aに収ることで、ワイヤ24をドラム23の軸方向へ不用意に移動させず、且つ巻取られたワイヤ24を軸方向に整列させてワイヤ24同士が互いに重ならないようにしている。
【0061】
このドラム23を回転させてメカユニット60を上下移動させる際、上方向と下方向の各移動においてワイヤから相対的に加わる力は、メカユニット60の中心について互いに逆向きの関係となり、メカユニット60には異なる向きにモーメントが生じるので、各方向の移動において、各ガイドローラ68a、68b、68c、68dのガイドレール21、22との接触状態を適切にしてモーメントに伴う余分な力を緩和し、スムーズな上下の動きを維持できるようにしている。
【0062】
前記ワイヤ24は、図8に示すように、一端部を背もたれ部93内部の上端部に位置する上部フレーム97aに保持されると共に、他端部を背もたれ部93内部の下端部に位置する下部フレーム97bに保持され、中間部を前記ドラム23に巻付けた状態とされて配設され、ドラム23の停止時はワイヤ張力でドラム位置を保持して、ドラム23と一体のメカユニット60の上下位置を維持する一方、ドラム23の回転時はドラム23への巻付き状態を変化させるのに伴って、ドラム23を上下方向に相対移動させ、ドラムと共にメカユニット60の上下動を許容するものである。
【0063】
前記ローラ25は、図9及び図10に示すように、メカユニット60のベース部63に傾動可能に配設されるアーム27の先端部に回動可能に取付けられて、メカユニット60と共にガイドレール21、22に対し移動可能とし、且つワイヤ24のドラム23より下側部分に当接可能として配設されるものである。また、弾性部材26は、弾性力でローラ25をワイヤ24に押付けるものであり、具体的には、ローラ25が取付けられたアーム27を、ローラ25でワイヤ24を押圧する向きに傾動させる仕組みとなっている。これにより、ローラ25は、弾性部材26の弾性力に基づいてワイヤ24を押圧し、ワイヤ24を緊張させてその弛みを防ぐことができる。なお、弾性部材26には、ばねの他、ゴム等のエラストマーを使用することもできる。
【0064】
このローラ25は、背中を背もたれ部93に載せた際などの揉み玉61に加わる外力でメカユニット60が上又は下に動いた場合に、弾性部材26の付勢力に抗して動けることで、衝撃を吸収し、ワイヤ24が過剰に引張られる状態となるのを防ぐ働きも有しており、ワイヤ24への負荷を減らして耐久性を高めることができる。
【0065】
なお、ワイヤ24のドラム23より上側の部分は、メカユニット60の重量が荷重として加わるので、特に緊張用の手段を用いなくても自然に緊張状態となっており、弛みは生じない。
【0066】
次に、本実施形態に係るマッサージ機の施療子移動機構の動作について説明する。前提として、前記第1の実施形態と同様、マッサージ機90が起動し、被施療者による指示入力を受けて各施療機構によるマッサージ動作が開始した状態にあるものとする。
【0067】
揉み玉61を上方へ動かす必要が生じた場合、制御部82は、昇降モータ66を駆動させてドラム23を所定方向に回転させ、ワイヤ24のドラム23より上側部分については巻取り、ワイヤ24のドラム23より下側部分については送出すことで、ドラム23をワイヤ24の巻取り及び送出しの各長さ分だけ巻取り側である上方へ移動させる。これにより、このドラム23と一体に上下移動するメカユニット60もガイドレール21、22に沿って上方へ移動して、揉み玉61位置を上方に変化させることとなる。
【0068】
ドラム23の回転量は、前記第1の実施形態同様、揉み玉61の上下移動量に対応するワイヤ24の巻取り及び送出し長さと、ドラム23におけるワイヤ24の巻付き径から求められ、与えられた移動量が実現するよう回転駆動される。
【0069】
一方、揉み玉61を下方へ動かす必要が生じた場合、制御部82は、昇降モータ66を駆動させてドラム23を前記上方の場合とは逆方向に回転させ、前記と逆にワイヤ24のドラム23より上側部分については送出し、ワイヤ24のドラム23より下側部分について巻取ることで、ドラム23をワイヤ24の巻取り及び送出しの各長さ分だけ巻取り側である下方へ移動させる。これにより、このドラム23と一体に上下移動するメカユニット60もガイドレール21、22に沿って下方へ移動し、揉み玉61位置を下方に変化させる。
【0070】
ドラム23が回転して上方又は下方へ移動する間、ローラ25及び弾性部材26もメカユニット60と共にドラム23に追随して移動し、弾性部材26で付勢されたローラ25が、ワイヤ24におけるドラム23より下側部分をドラム23の近傍で押圧し(図10参照)、ワイヤ24を緊張させることで、確実にドラム23とワイヤ24の滑りを抑制して、ドラム23を所望の移動量だけ移動させられる。
【0071】
そして、ドラム23が回転してワイヤ24がドラム23に巻取られる際、ドラム23の巻胴部には溝23aが形成されていることから、ワイヤ24を整列状態で巻取り、且つ整列状態を維持して巻取られたワイヤ同士が重ならない状態に保持でき(図11参照)、ワイヤ24をスムーズに巻取り且つ送出すことができると共に、ドラム23の巻胴部上でのワイヤ24同士の接触を抑えて、ワイヤ24の摩擦音等の騒音発生を防止でき、移動機構の静音化が図れる。
【0072】
揉み玉61の上下位置を動かす必要がない場合、前記第1の実施形態と同様、昇降モータ66を停止させていれば、ドラム23が回転することはなく、またワイヤ24はローラ25による押圧で緊張状態にあり、ワイヤ24のドラム23を挟んだ上側部分と下側部分の張力が釣合っていることから、メカユニット60は停止状態を保持でき、揉み玉61もそのままの上下方向位置を維持する。
【0073】
このように、本実施形態に係るマッサージ機の施療子移動機構においては、背もたれ部93内に上下に張り渡したワイヤ24の中間部を巻付けた唯一のドラム23を用いると共に、このドラム23のワイヤ24を巻付けられる巻胴部に溝23aを設け、巻取ったワイヤ24を溝23aに沿わせることから、ドラム23とワイヤ24との摩擦を確保するために巻付け回数を十分増やした場合でも、巻取られたワイヤ24同士が接触し重なり合うことがなく、ドラム23の回転に対応させてスムーズにワイヤ24の巻取り、送出しが行え、ドラム23を一つだけ用いても確実に動作させられ、メカユニット60の移動に係る機構を大幅に簡略化できると共に、この移動機構を必要最小限のスペースに抑えてマッサージ機の他の機構に影響を与えることなく配設でき、背もたれ部93内における各機構のレイアウトの自由度を高くして様々な形状・用途のマッサージ機に対応させられる。
【0074】
なお、本実施形態に係るマッサージ機の施療子移動機構においては、緊張手段として、ローラ25をワイヤ24のドラム23より下側部分に接触させ、弾性部材26の弾性力に基づいてローラ25でワイヤ24を押圧し、ワイヤ24を緊張させる構成としているが、この他、前記第1の実施形態と同様に、ワイヤの下端部と背もたれ部内部の下端部における下部フレームとの間にばね等の弾性体を介在させる構成とすることもできる。
【0075】
(本発明の第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係るマッサージ機の施療子移動機構を前記図12ないし図15に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係るマッサージ機の施療子移動機構は、前記第1の実施形態同様、ガイドレール31、32と、ドラム33と、ワイヤ34と、ばね35とを備える一方、異なる点として、ドラム33とワイヤ34がそれぞれ一つのみ配設され、ワイヤ34は上下両端を背もたれ部93内の上下端部(フレーム)にそれぞれ連結されて、その中間でドラム33に所定回数巻付けた状態とされ、さらに、ガイドレール31、32が円管状とされ、ガイドレール31、32によるメカユニット60の支持形態を異ならせた構成を有するものである。
なお、マッサージ機90におけるメカユニット60の昇降に係る機構以外の各部の構成は、前記第1の実施形態と同様のものであり、説明を省略する。
【0076】
前記ガイドレール31、32は、略円断面形状を有する円管状体とされ、人の背中形状に合せた背もたれ部93の表面に沿う長手方向形状とされてなり、図12に示すように、上下両端を背もたれ部93内部の上部フレーム97aと下部フレーム97bにそれぞれ固定され、一対を背もたれ部内部左右に左右フレーム97c、97dの間隔より狭い間隔として配設される構成である。この一対のガイドレール31、32の間隔は、メカユニット60の全体の幅よりも狭いものとなっている。
【0077】
一方、メカユニット60のベース部63には、ガイドローラ69a、69b、69c、69d、69e、69f、69g、69hがそれぞれ回動可能に取付けられている(図13、図14参照)。各ガイドローラ69a、69b、69c、69d、69e、69f、69g、69hは、二つ一組でガイドレール31、32を挟み込む配置とされ、詳細には、ガイドローラ69a、69bの間、及びガイドローラ69c、69dの間にガイドレール31を挟み込む(図15参照)一方、ガイドローラ69e、69fの間、及びガイドローラ69g、69hの間にガイドレール32を挟み込んで、各ガイドローラがそれぞれガイドレール31、32に沿って転動することで、ガイドレール31、32長手方向に移動する以外の動きを拘束されることとなり、これによりメカユニット60全体が一対のガイドレール31、32に沿って上下に移動可能に支持される仕組みである。
【0078】
メカユニット60は、このガイドレール31、32に当接する各ガイドローラ69a、69b、69c、69d、69e、69f、69g、69hを配設され、各ガイドローラの配置に対応するベース部63形状を採用した点以外は、前記第1及び第2の実施形態と同様の構成を有しており、詳細な説明を省略する。
【0079】
前記ドラム33は、前記第2の実施形態と同様、ベース部63における、ガイドレール31、32間の中央から外れた箇所に回動可能として固定支持され、昇降モータ66で駆動されて回転し、ワイヤ34を巻取り且つ送出すことに伴ってワイヤに対し相対移動し、同時に一体のメカユニット60全体をガイドレール31、32に沿って背もたれ部93の上下に移動させるものであり、詳細な説明を省略する。なお、このドラム33でワイヤ34を巻付けられる円筒面状の巻胴部にも、前記第2の実施形態と同様に、螺旋状に連続する溝が設けられる構成である。
【0080】
このドラム33を回転させてメカユニット60を上下移動させる際、ワイヤ34から相対的に加わる力が、メカユニット60の中心から離れているドラム33に作用することで、メカユニット60にはモーメントが生じるが、ガイドレール31、32の間隔を狭くしていることで、ガイドレール31、32に当接する各ガイドローラ69a、69b、69c、69d、69e、69f、69g、69hのガイドローラ31上での移動におけるモーメントの影響は小さく、各ガイドローラをスムーズにガイドレール31、32上で動かせ、メカユニット60の上下移動に滞り等の影響が及ぶことはない。
【0081】
前記ワイヤ34は、前記第2の実施形態と同様、一端部を背もたれ部93内部の上端部に位置する上部フレーム97aに保持されると共に、他端部を背もたれ部93内部の下端部に位置する下部フレーム97bに保持され、中間部を前記ドラム33に巻付けた状態とされて配設される構成である(図12参照)。
【0082】
前記ばね35は、緊張手段として、図12に示すように、ワイヤ34下端部と背もたれ部93内部下端部の下部フレーム97bとの間に介在させて配設されるものであり、ワイヤ34を下向きに引張ることでワイヤ34を緊張させ、その弛みを防いでいる。
【0083】
このばね35は、背中を背もたれ部93に載せた際などの揉み玉61に加わる外力でメカユニット60が上又は下に動いた場合に、ばねが変形することで、衝撃を吸収し、ワイヤ34が過剰に引張られる状態となるのを防ぐ働きも有しており、ワイヤ34への負荷を減らして耐久性を高めることができる。
【0084】
なお、ワイヤ34のドラム33より上側部分には、メカユニット60の重量が荷重として加わるので、特に緊張用の手段を用いなくても自然に緊張状態となっており、弛みは生じない。
【0085】
次に、本実施形態に係るマッサージ機の施療子移動機構の動作について説明する。前提として、前記第1の実施形態と同様、マッサージ機90が起動し、被施療者による指示入力を受けて各施療機構によるマッサージ動作が開始した状態にあるものとする。
【0086】
揉み玉61を上方へ動かす必要が生じた場合、制御部82は、昇降モータ66を駆動させてドラム33を所定方向に回転させ、ワイヤ34のドラム33より上側部分については巻取り、ワイヤ34のドラム33より下側部分については送出すことで、ドラム33をワイヤ34の巻取り及び送出しの各長さ分だけ上方へ移動させる。これにより、このドラム33と一体に上下移動するメカユニット60もガイドレール31、32に沿って上方へ移動して、揉み玉61位置を上方に変化させることとなる。
【0087】
ドラム33の回転量は、前記第1の実施形態同様、揉み玉61の上下移動量に対応するワイヤ34の巻取り及び送出し長さと、ドラム33におけるワイヤ34の巻付き径から求められ、与えられた移動量が実現するよう回転駆動される。
【0088】
一方、揉み玉61を下方へ動かす必要が生じた場合、制御部82は、昇降モータ66を駆動させてドラム33を前記上方の場合とは逆方向に回転させ、前記と逆にワイヤ34のドラム33より上側部分については送出し、ワイヤ34のドラム33より下側部分について巻取ることで、ドラム33をワイヤ34の巻取り及び送出しの各長さ分だけ下方へ移動させる。これにより、このドラム33と一体に上下移動するメカユニット60もガイドレール31、32に沿って下方へ移動し、揉み玉61位置を下方に変化させる。
【0089】
ドラム33が回転してワイヤ34がドラム33に巻取られる際、ドラム33の巻胴部には溝が形成されていることから、ワイヤ34を整列状態で巻取り、且つ整列状態を維持して巻取られたワイヤ同士が重ならない状態に保持でき、ワイヤ34をスムーズに巻取り且つ送出すことができると共に、ドラム33の巻胴部上でのワイヤ34同士の接触を抑えて、ワイヤ34の摩擦音等の騒音発生を防止できる。
【0090】
揉み玉61の上下位置を動かす必要がない場合、前記第1の実施形態と同様、昇降モータ66を停止させていれば、ドラム33が回転することはなく、またワイヤ34のドラム33より上側部分はメカユニット60の重量で、ワイヤ34のドラム33より下側部分はばね35による付勢で、それぞれ緊張状態にあり、ワイヤ34のドラム33を挟んだ上側部分と下側部分の張力が釣合っていることから、メカユニット60は停止状態を保持でき、揉み玉61もそのままの上下方向位置を維持する。
【0091】
このように、本実施形態に係るマッサージ機の施療子移動機構においては、背もたれ部93内でワイヤ34が巻付けられるドラム33を一つ用いると共に、このドラム33の巻胴部に溝を設け、巻取ったワイヤ34を溝に沿わせることから、ドラムへのワイヤ巻付け回数を増やした場合でもワイヤ34同士が接触し重なり合うことがなく、スムーズにワイヤ34の巻取り、送出しが行え、ドラム33を一つだけ用いてもドラム33とワイヤ34との摩擦を適切に確保してメカユニット60の移動動作を確実なものにでき、メカユニット60の移動に係る機構を大幅に簡略化、省スペース化できる。また、一対のガイドレール31、32の間隔をメカユニット60の幅より狭くして配設することで、メカユニット60の移動時に生じるモーメントによるメカユニット60をガイドレール31、32上でふらつかせたりがたつかせたりする悪影響を緩和でき、メカユニット60をガイドレール31、32に沿わせて確実に移動させられる。
【0092】
(本発明の第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係るマッサージ機の施療子移動機構を前記図16ないし図19に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係るマッサージ機の施療子移動機構は、前記第1の実施形態同様、前記第1の実施形態同様、ガイドレール41、42と、ドラム43、44と、ワイヤ45、46と、ばね47、48とを備える一方、異なる点として、ドラム43、44がメカユニット60のベース部63側端部に配設され、ワイヤ45、46は上下端部をガイドレール41、42上下端部にそれぞれ連結されて略コ字状断面形状のガイドレール41、42の内周面に沿って配設され、ドラム43、44もそれぞれガイドレール41、42内を通る配置とされる構成を有するものである。
なお、マッサージ機90におけるメカユニット60の昇降に係る機構以外の各部の構成は、前記第1の実施形態と同様のものであり、説明を省略する。
【0093】
前記ガイドレール41、42は、前記第1の実施形態同様、略コ字状の断面形状及び背もたれ部93の表面に沿う長手方向形状を有して、背もたれ部93内部の右フレーム97cと左フレーム97dにそれぞれ固定され(図16参照)、一対を背もたれ部内部左右に配設される構成である。
【0094】
一方、メカユニット60のベース部63端縁部には、図16ないし図18に示すように、二つのドラム43、44が回動自在に支持され、ガイドローラを兼ねてガイドレール41、42の内周面に接触して転動する。また、同じベース部63の端縁部にはガイドローラ68e、68fもそれぞれ回動可能に取付けられている(図16、図17参照)。これらのドラム43、44及びローラ68e、68fが、ガイドレール41、42に挿嵌されてそれぞれガイドレール41、42の内周面に当接し、これに沿って転動することで、ガイドレール41、42長手方向に移動する以外の動きを拘束されることとなり、これによりメカユニット60全体が一対のガイドレール41、42に沿って上下に移動可能に支持される仕組みである。
【0095】
メカユニット60は、このガイドレール41、42に当接するドラム43、44及びガイドローラ68e、68fを配設される点以外は、前記第1の実施形態と同様の構成を有しており、詳細な説明を省略する。
【0096】
前記ドラム43、44は、一方のワイヤ45を巻付けられた状態で一方のガイドレール41に挿嵌されて配設される第一ドラム43と、他方のワイヤ46を巻付けられた状態で他方のガイドレール42に挿嵌されて配設される第二ドラム44とからなり、ベース部63端縁部にそれぞれ回動可能として固定支持され、昇降モータ66で駆動されて回転し、ワイヤ45、46を巻取り且つ送出すことに伴ってワイヤに対し相対移動し、同時に一体のメカユニット60全体をガイドレール41、42に沿って背もたれ部93の上下に移動させ、揉み玉61による被施療部位を上下に変えるものである。
【0097】
これらドラム43、44は、ガイドレール41、42に接してメカユニット60の上下移動を案内するガイドローラを兼ねたものとなっており、ドラムの巻胴部と独立して回動可能とされる大径の外周部分がこのガイドローラとしてガイドレール41、42の内周面に接触して転動し(図18参照)、その移動をガイドレール内のみに制限されることとなる。
【0098】
前記第一ドラム43と第二ドラム44は、同じ形状とされ、同一の駆動軸上に配設されて昇降モータ66により同時に同じ回転方向へ回転駆動され、各ワイヤ45、46の巻付け状態を変化させて背もたれ部93に対し上下方向に同様に移動し、同時にメカユニット60の上下位置を変化させる。どの回転方向においても、各ドラム43、44上ではワイヤ45、46の上下いずれかの側が引出され、ワイヤ45、46の他方の側が巻取られる状態となる。
【0099】
前記ワイヤ45、46は、一端部を一方のガイドレール41の上部に保持されると共に、他端部を同じガイドレール41の下部に保持され、中間部を前記第一ドラム43に巻付けた状態とされて、ガイドレール41内周面のうち、背もたれ部93の背中に接する面に対し反対側を向いた裏側の面41a(図18参照)に沿って配設される第一ワイヤ45と、一端部を他方のガイドレール42の上部に保持されると共に、他端部を同じガイドレール42の下部に保持され、中間部を前記第二ドラム44に巻付けた状態とされて、ガイドレール42内周面のうち、背もたれ部93の背中に接する面に対し反対側を向いた裏側の面42a(図18参照)に沿って配設される第二ワイヤ46とからなり、ドラム43、44の回転停止時はワイヤ張力でドラム位置を保持して、ドラム43、44と一体のメカユニット60の上下位置を維持する一方、ドラム43、44の回転時はドラムへの巻付き状態を変化させるのに伴って、ドラム43、44をそれぞれ上下方向に相対移動させ、各ドラムと共にメカユニット60の上下動を許容するものである。
【0100】
前記ばね47、48は、図16に示すように、第一ワイヤ45下端部とガイドレール41下部との間に介在させて配設される第一ばね47と、第二ワイヤ46下端部とガイドレール42下部との間に介在させて配設される第二ばね48とからなり、緊張手段をなす弾性体として、第一ワイヤ45及び第二ワイヤ46下端部をそれぞれ保持しつつこれら各ワイヤ45、46をそれぞれ下向きに引張ることで各ワイヤ45、46を緊張させ、その弛みを防ぐものである。これら各ばね47、48は、前記第1の実施形態と同様、外力の加わらない自然長から所定寸法引き伸して、元に戻ろうとする弾性力を生じさせた状態で、緊張させた各ワイヤ45、46の下端部と一方の端部をそれぞれ連結させて配設されることで、各ワイヤ45、46に対し弾性力に基づく引張力を与え、各ワイヤ45、46を弛み無く張った状態に維持する仕組みである。
【0101】
次に、本実施形態に係るマッサージ機の施療子移動機構の動作について説明する。前提として、前記第1の実施形態と同様、マッサージ機90が起動し、被施療者による指示入力を受けて各施療機構によるマッサージ動作が開始した状態にあるものとする。
【0102】
揉み玉61を上方へ動かす必要が生じた場合、制御部82は、昇降モータ66を駆動させて各ドラム43、44を所定方向に回転させ、第一ドラム43では、第一ワイヤ45のドラムより上側部分については巻取り、第一ワイヤ45のドラムより下側部分については送出すことで、第一ドラム43を第一ワイヤ45の巻取り及び送出しの各長さ分だけガイドレール41内で上方へ移動させる。同時に、第二ドラム44では、第二ワイヤ46のドラムより上側部分については巻取り、第二ワイヤ46のドラムより下側部分については送出すことで、第二ドラム44を第二ワイヤ46の巻取り及び送出しの各長さ分だけガイドレール42内で上方へ移動させる。こうして、同じ形状である両ドラムを同じ移動量だけ上方へ移動させられることとなり、これらドラム43、44と一体に上下移動するメカユニット60もガイドレール41、42に沿って上方へ移動し、揉み玉61位置を上方に変化させる(図19(A)参照)。
【0103】
各ドラム43、44の回転量は、前記第1の実施形態同様、揉み玉61の上下移動量に対応するワイヤ45、46の巻取り又は送出し長さと、ドラム43、44におけるワイヤ45、46の巻付き径から求められ、与えられた移動量が実現するよう昇降モータ66が回転駆動される。
【0104】
一方、揉み玉61を下方へ動かす必要が生じた場合、制御部82は、昇降モータ66を駆動させて各ドラム43、44を前記上方の場合とは逆方向に回転させ、前記と逆に第一ドラム43では第一ワイヤ45のドラム43より上側部分については送出し、第一ワイヤ45のドラム43より下側部分については巻取ることで、第一ドラム43を第一ワイヤ45の送出し及び巻取りの各長さ分だけガイドレール41内で下方へ移動させる。同時に、第二ドラム44では、第二ワイヤ46のドラム44より上側部分については送出し、第二ワイヤ46のドラム44より下側部分については巻取ることで、第二ドラム44を第二ワイヤ46の送出し及び巻取りの各長さ分だけガイドレール42内で下方へ移動させる。こうして、両ドラムを同じ移動量だけ下方へ移動させられることとなり、これらドラム43、44と一体に上下移動するメカユニット60もガイドレール41、42に沿って下方へ移動し、揉み玉61位置を下方に変化させる(図19(B)参照)。
【0105】
なお、各ドラム43、44が移動する際、第一ドラム43はガイドレール41内面を、第二ドラム44はガイドレール42内面を、それぞれガイドローラとして転動しながら移動することとなり、他のガイドローラ68e、68fと共に、メカユニット60に不要な動きが生じないように案内する役割を果す。
【0106】
また、ドラム43、44が移動する中、緊張状態にある各ワイヤ45、46のドラムを挟んだ上側部分と下側部分は、ワイヤ上端部又は下端部とドラム間の各ワイヤ長を最短とするように張力の作用を受けるが、各ワイヤ45、46はガイドレール41、42内に収められた状態となっていることから、ガイドレール41、42における前記裏側の面41a、42aによる拘束でガイドレール41、42から大きく外れて飛出すようなことはなく、背もたれ部93内部の各部材、特にガイドレール41、42より背もたれ部93表面側に位置する部材と、各ワイヤ45、46との物理的干渉を考慮せずに済む(図19参照)。
【0107】
揉み玉61の上下位置を動かす必要がない場合、前記第1の実施形態と同様、昇降モータ66を停止させていれば、各ドラム43、44が回転することはなく、また第一ワイヤ45の第一ドラム43より上側部分はメカユニット60の重量で、第一ワイヤ45の第一ドラム43より下側部分は第一ばね47による付勢で、それぞれ緊張状態にあり、第一ワイヤ45の第一ドラム43を挟んだ上側部分と下側部分の張力が釣合っていることに加え、第二ワイヤ46の第二ドラム44より上側部分はメカユニット60の重量で、第二ワイヤ46の第二ドラム44より下側部分は第二ばね48による付勢で、それぞれ緊張状態にあり、第二ワイヤ46の第二ドラム44を挟んだ上側部分と下側部分の張力も釣合っていることから、メカユニット60は停止状態を保持でき、揉み玉61もそのままの上下位置を維持する。
【0108】
このように、本実施形態に係るマッサージ機の施療子移動機構においては、ワイヤ45、46をガイドレール41、42の所定面41a、42aに沿わせた状態で配置すると共に、各ワイヤ45、46を巻付けるドラム43、44もガイドレール41、42近傍に配置し、ドラム43、44を回転させてワイヤ45、46の巻付け状態を変化させる中、ドラム位置に応じて変位しようとする各ワイヤ45、46がそれぞれガイドレール41、42の拘束を受けることから、メカユニット60の位置に関わりなくワイヤ45、46がガイドレール41、42近傍に存在する状態を維持でき、ワイヤ45、46における背もたれ部93内部に保持された端部とドラム43、44に巻付けられた部分との間の部分が、緊張で直線状となってガイドレール位置から大きく外れて飛出した状態となるのを防いで、メカユニット60がどの位置であっても、ワイヤ45、46と背もたれ部93内部の他部材との物理的干渉を避けられ、ワイヤ45、46を背もたれ部93内に無理なく内蔵できると共に、メカユニット60をスムーズに上下移動させられる。
【0109】
なお、前記実施形態に係るマッサージ機の施療子移動機構においては、各ワイヤ45、46はガイドレール41、42内に収められ、各ワイヤ45、46はガイドレール41、42から外れた位置に達しないよう拘束される構成としているが、この他、図20に示すように、ワイヤをガイドレール内に収める代りに、ガイドレール51の外に露出させて配設されるワイヤ55に対し、ドラム53から離れた位置でワイヤ55を押えて、緊張するワイヤ55がガイドレール51よりも被施療者の背中に近い側に極端に飛出した状態となるのを防ぐワイヤガイド57を、ドラム53と共に移動可能としてベース部63等のメカユニット60に配設する構成とすることもでき、前記実施形態同様、背もたれ部93内部の各部材とワイヤ55との物理的干渉を考慮せずに済み、背もたれ部内における各部材のレイアウトの自由度を高くできる。
【符号の説明】
【0110】
11、12 ガイドレール
13、43 第一ドラム
14、44 第二ドラム
15、45 第一ワイヤ
16、46 第二ワイヤ
17、35 ばね
21、22 ガイドレール
23、33 ドラム
23a 溝
24、34 ワイヤ
25 ローラ
26 弾性部材
27 アーム
31、32 ガイドレール
41、42 ガイドレール
41a、42a 面
47 第一ばね
48 第二ばね
51 ガイドレール
53 ドラム
55 ワイヤ
57 ワイヤガイド
60 メカユニット
61 揉み玉
62 揉み玉駆動部
63 ベース部
64 揉みモータ
65 叩きモータ
66 昇降モータ
67 進退モータ
68a、68b、68c、68d、68e、68f ガイドローラ
69a、69b、69c、69d ガイドローラ
69e、69f、69g、69h ガイドローラ
70 エアポンプ
71 臀部用エアセル
72 太腿用エアセル
73 背中用エアセル
74 腰用エアセル
75、76 脚用エアセル
81 リモコン
82 制御部
90 マッサージ機
91 基台部
92 座部
93 背もたれ部
94 肘掛部
95 脚支持部
96 スタンド
97 フレーム
97a 上部フレーム
97b 下部フレーム
97c 右フレーム
97d 左フレーム
99 側壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれ部に配置される所定の施療子を当該施療子の駆動機構部ごと背もたれ部に対し上下位置調整可能とするマッサージ機の施療子移動機構において、
前記背もたれ部内部に配設され、前記駆動機構部を背もたれ部上下方向に移動可能とし且つ他方向への動きは拘束して支持する複数のガイドレールと、
前記駆動機構部の背もたれ部上下方向への移動の向きに直交する軸を中心に回動可能として駆動機構部と一体に配設され、所定の駆動源により回転駆動されるドラムと、
当該ドラムに所定回数巻付けられつつ、少なくとも一端を背もたれ部内部の上下方向の端部に保持されて、背もたれ部内部に上下に張り渡され、ドラムの回転に応じてドラムへの巻付き状態を変化させるのに伴って、ドラムを背もたれ部に対し上下方向に移動させるワイヤと、
当該ワイヤの端部に取付けられ又はワイヤの中間部に接して、弾性力に基づいてワイヤを弛み無く張った状態に維持する緊張手段とを備えることを
特徴とするマッサージ機の施療子移動機構。
【請求項2】
前記請求項1に記載のマッサージ機の施療子移動機構において、
前記ドラムとして、駆動機構部の上方向移動用の第一ドラムと、下方向移動用の第二ドラムとがそれぞれ配設され、
前記ワイヤが、一端部を前記背もたれ部内部の上端部に連結されると共に他端部を前記第一ドラムに巻付けた状態とされる第一ワイヤと、一端部を背もたれ部内部の下端部に連結されると共に他端部を前記第二ドラムに巻付けた状態とされる第二ワイヤとからなり、
前記第一ドラムと第二ドラムが、同時に同じ回転方向に回転駆動されて一方がワイヤを巻取り、他方がワイヤを送出す状態とされ、背もたれ部上下方向に同様に移動して施療子及び駆動機構部の上下位置を変化させることを
特徴とするマッサージ機の施療子移動機構。
【請求項3】
前記請求項2に記載のマッサージ機の施療子移動機構において、
前記ガイドレールが、背もたれ部内部の左右に一対配設され、前記駆動機構部を一対のガイドレール間に位置させた状態で支持し、
前記第一ドラムと第二ドラムが、一対のガイドレール間の中央位置を挟んだ両側にドラム同士が互いに離隔した配置としてそれぞれ配設されることを
特徴とするマッサージ機の施療子移動機構。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載のマッサージ機の施療子移動機構において、
前記ワイヤが、前記ガイドレールにおける、背もたれ部の背中に接する面に対し反対側を向いた所定面に沿った配置とされてなり、
前記ドラムが、ガイドレール近傍に配置され、ワイヤの巻付け状態を変化させつつガイドレールの前記所定面に沿って背もたれ部上下方向に移動することを
特徴とするマッサージ機の施療子移動機構。
【請求項5】
前記請求項1ないし4のいずれかに記載のマッサージ機の施療子移動機構において、
前記ドラムが、ワイヤと接触する円筒面状の巻胴部に、巻付けられたワイヤの一列分が入り込む大きさの螺旋状の溝を設けられることを
特徴とするマッサージ機の施療子移動機構。
【請求項6】
前記請求項1ないし5のいずれかに記載のマッサージ機の施療子移動機構において、
前記緊張手段が、ワイヤのドラムより下側部分の端部と背もたれ部内部の下端部との間に介設されて弾性変形する弾性体であることを
特徴とするマッサージ機の施療子移動機構。
【請求項7】
前記請求項1ないし5のいずれかに記載のマッサージ機の施療子移動機構において、
前記緊張手段が、駆動機構部と共にガイドレールに対し移動可能に配設され、ワイヤのドラムより下側部分に当接する回動可能なローラと、当該ローラをワイヤに所定の弾性力で押付ける弾性部材とを有してなることを
特徴とするマッサージ機の施療子移動機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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