説明

マッサージ機

【課題】マッサージ時間終了の管理を行うことができ、かつ、効果的なマッサージを施すことのできるマッサージ機を提供する。
【解決手段】一連のマッサージコースが複数の動作ブロックにより構成されており、各動作ブロックに応じて揉み玉7を動作させマッサージコースを完了させる動作制御手段11を備えている。動作ブロックの設定時間は、施療マッサージ動作を行わせるための基本時間と、この基本時間の後に続く補正時間とからなる。動作制御手段11は、各動作ブロックにおいて、施療マッサージ動作を行わせた実動作時間が基本時間以内の場合は、次の動作ブロックへ移行させるためのマッサージ動作を補正時間が終了するまで行わせる。また、実動作時間が基本時間を超える場合は、補正時間において施療マッサージ動作の継続を許容させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定のマッサージコースに従って施療具を動作させてマッサージを施すことができるマッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
施療具として揉み玉を動作させることによって、使用者に対してマッサージを施すことのできるマッサージ機がある。このようなマッサージ機は、所定のマッサージコースに従って自動的に揉み玉を上下移動、揉み動作及び叩き動作させて、使用者に対してマッサージを施すことができる。つまり、使用者がマッサージ機の操作部の押しボタンなどによってマッサージコースを選択すると、マッサージ機の制御手段が、予め記憶させてある所定のプログラムに沿って揉み玉を動作させ、自動的に所定のマッサージを行うことができる。この場合、所望のコースを選択することで一連のマッサージが行われるため、使用者の操作に関して負担を低減させることができ、また、予め設定されている順番で所定の患部に対して揉み玉を動作させることができ、疲労回復などに効果の高いマッサージが可能となる。
以上のようなマッサージ機として従来知られているものに、例えば特許文献1がある。このマッサージ機は、複数のマッサージブロック(ステップ)が組み合わされて一連のマッサージコースが設定されており、このコースに従って施療具を動作させる動作制御手段を有している。
【0003】
【特許文献1】特開2004−321323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなマッサージ機において行われる一連のマッサージコースは、複数のマッサージブロックから構成されており、一つのブロックに着目しても、使用者によってそのブロックの終了時間(施療に必要なマッサージに要する時間)が異なる場合がある。
特許文献1のようにマッサージ機が椅子型であって、モータによって動作する揉み玉が背もたれ部に設けられている場合、この終了時間が異なる要因としては、使用者の体格差(座高差)によってマッサージ範囲が異なる点である。つまり、身長の高い使用者では首部から腰部までの揉み玉の移動ストロークが大きくなるため揉み玉の移動時間が多く必要となり、そのブロックに要する時間が長くなるからである。また別の要因としては、使用者の体格(体重)によって揉み玉に対する負荷(抵抗)が大きい場合、揉み玉の動作スピードが遅れ、設定回数の揉み動作をさせるためには多くの時間が必要となるからである。また、揉み玉を前後移動させて押圧するマッサージを施す場合、その前後往復移動を1動作として動作回数によりマッサージを施す長さを管理すると、揉み玉に対する負荷の大小によりその動作スピードが異なるため、時間差が生じる。
このように一つのマッサージブロックにおいて時間の遅れが生じた場合、他のブロックにおいても同様の要因により遅れが生じることが考えられる。そして、各ブロックにおいて遅れが生じると、その累積により一つのマッサージコースにおいて大きな遅れが発生するという問題点を有している。
逆に、使用者の身長が低かったり、体重が軽くて揉み玉への負荷が小さい場合、各ブロックにおいてマッサージ動作が早く終了し、マッサージコース全体での終了時間が予定よりも早くなる。これにより、複数台のマッサージ機を並べてそれぞれのマッサージ機において同じマッサージコースを行った場合に、早く終了した使用者は施療効果が低いのではないかという疑問を持たせてしまうおそれがある。
【0005】
特許文献1に記載されているマッサージ機によれば、使用者が自分の感覚を基に施療位置の省略、動作回数の減少または増加などの各種施療条件を変更することによって、マッサージ時間を短縮または延長させることができる。しかし、そのための操作は使用者が行うものであり、操作が煩雑となる。また、マッサージ動作の終了時間を一定とさせるようにマッサージ機が時間管理を行うものではない。さらに、使用者の判断によって所定の動作ブロックが省略されると、効果的な施療のために設定されたマッサージコースを完全に終えることができず、マッサージ効果を十分に得ることができないおそれがある。
【0006】
そこで、この発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、マッサージ終了についての時間管理を行うことができ、かつ、効果的なマッサージを施すことのできるマッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するためのこの発明のマッサージ機は、マッサージを施すための施療具と、複数の動作ブロックにより構成されている一連のマッサージコースが設定され各動作ブロックに応じて前記施療具を動作させ当該マッサージコースを完了させる動作制御手段とを備え、前記動作ブロックの設定時間が、施療に必要としている施療マッサージ動作を前記施療具に行わせるための基本時間と、この基本時間の後に続く補正時間とからなり、前記動作制御手段は、前記動作ブロックにおいて、前記施療マッサージ動作を前記施療具によって行わせた実動作時間が前記基本時間以内の場合は、次の動作ブロックへ移行させるためのマッサージ動作を前記補正時間が終了するまで行わせ、前記実動作時間が前記基本時間を超える場合は、前記補正時間において前記施療マッサージ動作の継続を許容させる基本動作制御手段を有していることを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、基本動作制御手段により、施療マッサージ動作の実動作時間が基本時間以内の場合は、次の動作ブロックへ移行させるためのマッサージ動作を補正時間が終了するまで行わせ、その動作ブロックを設定時間とおりに終えることができる。また、実動作時間が基本時間を超える場合は、補正時間を使って施療に必要な施療マッサージ動作をさせることができ、施療効果を得ることができる。
【0009】
また、前記動作制御手段は、前記実動作時間と前記設定時間との比較を行い当該実動作時間が当該設定時間を超えて超過時間が発生した場合に、後の動作ブロックにおける設定時間を短縮させる短縮演算手段を有している。
これによれば、実動作時間が設定時間を超えてその動作ブロックの終了が遅れた場合、短縮演算手段が後の動作ブロックの設定時間を短縮させることにより、その遅れを後の動作ブロックにおいて吸収(解消)させることができる。これにより、複数の動作ブロックにより構成されている一連のマッサージコース全体における遅れを抑えることができる。
【0010】
また、前記動作ブロックは、前記施療具によるマッサージ部位が異なる複数の小ブロックを有して設定されており、前記短縮演算手段は、前記小ブロックにおける時間を短縮させるのが好ましい。
これによれば、動作ブロックにおいて設定されている複数の異なる部位でのマッサージをすべて完了させることができ、かつ、前の動作ブロックで生じた遅れを吸収することができる。つまり、動作ブロックに含まれる小ブロックを省略するのではなく、その小ブロックにおける動作時間を短縮させ、設定されているすべてのツボ位置に対してマッサージを施すことにより施療効果を維持しつつ、動作ブロックの設定時間を短縮できる。
【0011】
また、前記動作制御手段は、前記超過時間と、予め定められた許容時間との比較を行って、当該超過時間が当該許容時間を超えていると、後の所定の動作ブロックを省略させる中間調整手段を有しているのが好ましい。
これによれば、動作ブロックにおいて超過時間が大きくなりすぎて、前記短縮演算手段が機能しても遅れの吸収ができないおそれが生じた場合であっても、中間調整手段によって、後の動作ブロックを省略することで、一連のマッサージコースの終了の遅れを抑えることができる。
この場合、一連のマッサージコースに、例えば施療効果よりも爽快感を与えるような付属的な動作ブロックを設けておき、中間調整手段によって省略される動作ブロックを、前記付属的な動作ブロックとするのがよい。
【0012】
また、最後の動作ブロックは余裕時間を有して設定されており、前記動作制御手段は、一連のマッサージコースの規定時間に達するとこの余裕時間内において最後の動作ブロックを終了させる最終調整手段を有しているのが好ましい。
これによれば、最後の動作ブロック開始の際に時間の遅れが生じていても、この余裕時間を使ってその遅れを吸収することができ、予定しているマッサージコースを規定時間とおりに終了させることが可能となる。さらに、大きな遅れが無くても最後の動作ブロックの開始時間が様々である場合、一連のマッサージコースの規定時間に達すると、余裕時間の途中で動作ブロックを終了させることにより、マッサージコースの終了時間を一定とできる。
なお、最後の動作ブロックにおいて、余裕時間に行うマッサージ動作は、施療効果の高いマッサージ動作ではなく、爽快感を与えるような付属的なマッサージ動作によるものが好ましい。
【0013】
また、前記施療具は使用者の身長方向に沿って上部位置と下部位置との間を移動してマッサージを施す揉み玉を有しており、前記動作制御手段は、一つの前記動作ブロックにおいて、前記揉み玉を前記上部位置と前記下部位置のうちの一方から他方へ向かって移動させ、次の動作ブロックにおいて、当該揉み玉を当該他方から当該一方へ移動させるのが好ましい。
これによれば、一つの動作ブロックにおいて、揉み玉は使用者に対して上部位置から下部位置の間の一面にわたってマッサージできる。そして、動作ブロックの境界において揉み玉を上部位置または下部位置とすることができる。これにより、前後動作ブロック間において不要な揉み玉の移動が発生しないため、次の動作ブロックへの移行が容易となり、時間の遅れを抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のマッサージ機によれば、動作ブロックを終える時間の調整が可能となる。さらに、動作ブロックにおいて所定の施療マッサージ動作を行わせることができ、施療効果の高いマッサージが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明の実施の一形態に係るマッサージ機を示す斜視図であり、このマッサージ機は椅子型として構成されたものである。この椅子型マッサージ機は、座部1と、脚載置部(フットレスト)2と、背もたれ部3と、座部1の左右両側の肘掛け部4とを備えている。脚載置部2は座部1の前部において水平方向の軸中心周りに回動可能に取り付けられており、図示しないが昇降機構によって、図1の降下状態から、前方へ突出した上昇状態へ動くことができる。背もたれ部3は座部1の後部において水平方向の軸中心周りに回動可能に取り付けられており、図示しないがリクライニング機構によって、図1の起立状態から、後方へ倒れたリクライニング状態へ動くことができる。
【0016】
背もたれ部3の内部には、マッサージを施すための揉み玉7を有しているマッサージユニット5が設けられている。マッサージユニット5は、背もたれ部3の内部に設けられた上下方向(使用者の身長方向)にまっすぐな左右一対のガイドレール(図示せず)に沿って移動可能とされており、図示しない移動機構によって、マッサージユニット5は背もたれ部3内を上下方向に移動できる。この移動機構は、図示しないが、モータと、モータにより回転する雄ねじ軸と、この雄ねじ軸に螺合するナット部とを有しており、ナット部がマッサージユニット5に取り付けられている。そして、モータの正逆回転により雄ねじ軸が正逆回転し、ナット部が取り付けられているマッサージユニット5が上下移動する。
【0017】
マッサージユニット5は、マッサージを施すための施療具としての揉み玉7と、この揉み玉7に揉みと叩きのマッサージ動作をさせることができるマッサージ機構(図示せず)を備えている。このマッサージ機構は、図示しないが、揉み動作用として、モータと、このモータによって揉み玉7に揉み動作をさせる揉み動作機構部とを有し、叩き動作用として、モータと、このモータによって揉み玉7に叩き動作をさせる叩き動作機構部とを有している。揉み動作機構部は揉み玉7を回転動作させることによって揉み動作させ、叩き動作機構部は揉み玉7を前後方向に動作させることによって叩き動作させる。
さらに、このマッサージ機には施療具として、エアの吸排気によって膨張収縮するエアセル6a,6b,6cが設けられている。これらエアセル6a,6b,6cは、座部1の下方に設けられたエアポンプを有するエアユニット(図示せず)と接続されており、エアポンプによるエアセル6a,6b,6cの膨張動作によって使用者に対してマッサージを施すことができる。さらに、図示しないが、バイブレータ機構を背もたれ部、座部などに設けて、これによりマッサージを施すこともできる。
【0018】
図2はこのマッサージ機における制御ブロックの概略を示す説明図であり、脚載置部2用の昇降機構21、背もたれ部3用のリクライニング機構22、マッサージユニット5を移動させる移動機構23、揉み用と叩き用のマッサージ機構24,25、エアセル6a,6b,6c用のエアユニット26、バイブレータ機構27(以下、それぞれを駆動機構ともいう)を動作させるための制御は、マイクロコンピュータなどからなる動作制御手段11によって行われる。この動作制御手段11は、例えば座部1の下方に設けられ、使用者が操作するための操作機8と接続されており、使用者が操作機8において操作ボタンなどを選択することで各種マッサージ動作が行われる。操作機8には、脚載置部2及び背もたれ部3を動作させるためのボタン(図示せず)や、マッサージコースの選択ボタンなどがある。マッサージコースとしては複数用意されており、そのマッサージコースを行うための動作プログラムが、動作制御手段11の記憶部16に記憶されている。そして、使用者によるコースの選択に応じて、動作制御手段11が動作プログラムに従って各種駆動機構を動作させている。記憶部16はRAM、ROMによって構成されている。
【0019】
本発明のマッサージ機において行われる一連のマッサージコースの具体的な例について説明する。
図3は、治療のためのマッサージコースを説明するためのブロック図である。この一連のマッサージコースは複数の動作ブロックにより構成されており、動作ブロックが順次実行されることによってコースは終了する。マッサージコースとしては、例えば全身マッサージコース(全身疲労回復コース)があり、このコースについて標準時間(規定時間12分)と短時間(規定時間5分)と長時間(規定時間18分)の複数の時間別設定がある。また、図4と図5は動作制御手段11によって行われる制御を説明するためのフローチャートである。
ブロック1から説明すると、使用者が椅子型マッサージ機に着座し、操作機8(図1と図2)においてコースを選択することにより(図4のステップS1)、コースが開始される(ステップS2)。動作制御手段11において予め設定されているこのマッサージコースは、最初のブロック1において使用者の肩位置検出を行う(ステップS3)。これが完了すると、動作制御手段11の内部処理によってブロックNo.が「2」から順番に指定されて、動作制御手段11は各動作ブロックに応じて施療具を動作させ(ステップS4)、ステップS4以降を繰り返すことによって一連のマッサージコースを完了させることとなる。
【0020】
ブロック1における肩位置検出は従来知られている手段によって行われており、概略を説明すると、背もたれ部3において、揉み玉7を自動的に上から下へ移動させ、揉み玉7が肩に当たった際に当該揉み玉7に作用する負荷を検出し、その負荷が検出された位置を肩位置として自動的に検出している。この肩位置は動作制御手段11の記憶部16に記憶される。さらに、肩位置が検出されると、動作制御手段11の演算機能により、その肩位置に基づいてマッサージを施すツボの位置を求めることができる。これについて簡単に説明すると、背中におけるツボの位置分布は体型(身長)によって個人差があるが、体型が異なっていても胸椎、腰椎、仙椎の位置を基準としてツボ位置を求めることができる。従って、使用者の胸椎、腰椎、仙椎の位置が求まればツボ位置を正確に求めることができる。そして、使用者の胸椎、腰椎、仙椎の位置は肩位置を求めることによって推定することができ、これによりツボ位置を演算することによって求めることができる。そして、このブロック1において、各ツボ位置が前記記憶部16に記憶される。なお、このツボ位置を求める具体的な手段は、例えば特開2003―52780号公報に開示されている。
肩位置検出を行うことによって、揉み玉7によるマッサージのための(マッサージに有効な)上限位置と下限位置とが設定される。
【0021】
そして、ブロック2以降に治療のためのマッサージを行う部分が含まれており、ブロック2から最終ブロックまでが順番に行われる。
図6はこのマッサージコースにおけるタイムチャートの一部を示すものである。図6は、時間経過による揉みや叩き動作をする揉み玉7の位置を示しており、横軸が時間、縦軸が前記ブロック1で求めたツボ位置a〜kを示している。揉み玉7によるマッサージのための上限位置がツボ位置aと設定され、マッサージのための下限位置がツボ位置kと設定されている。そして、揉み玉7は、使用者の身長方向に沿ってこの上限位置と下限位置との間を移動して、マッサージを施すことができる。
ブロック2では、揉み玉7が上(首部)から下(腰部)へ移動して、所定のツボ位置で所定時間について揉みや叩き動作を行っている。そして、ブロック3では、揉み玉7が下から上へ移動して、所定のツボ位置で揉みや叩き動作を行っている。
【0022】
各動作ブロックでは、施療に必要な施療マッサージ動作が行われるように予め設定されている。この「施療に必要な施療マッサージ動作」とは、各動作ブロックにおいて、予定されているツボ位置に対して揉みや叩きなどの所定のマッサージ動作を行って、施療効果を与えるために必要な最小限の動作を言う。言い換えれば、効果的な施療を行うためには、各動作ブロックにおいて「施療に必要な施療マッサージ動作」を行うことを要する。なお、各動作ブロックで予定されているツボ位置は、ブロック1で求めた複数のツボ位置a〜kのうちの少なくとも1つとされており、予め各動作ブロックごとに設定されて記憶部16に記憶されている。
つまり、各動作ブロックにおいて、各ツボ位置におけるマッサージ動作が小ブロックとして構成されている。これを言い換えると、各動作ブロックは、揉み玉7によるマッサージ部位(ツボ位置)が異なる複数の小ブロックを有して構成されている。具体的には、図6において、ブロック4では、ツボ位置a、ツボ位置b…ツボ位置j、ツボ位置kのそれぞれの位置における揉み玉7の各マッサージ動作が、小ブロックとして構成されている。従って、ブロック4ではツボ位置a〜ツボ位置kのすべてにおいてマッサージ動作することで「施療に必要な施療マッサージ動作」が完了するといえる。
【0023】
各動作ブロックにおける動作制御手段11の機能について具体的に説明する。
各動作ブロックにはそれぞれ設定時間が決められており、動作制御手段11の記憶部16において定められている。各設定時間は、その動作ブロックにおいて、前記施療マッサージ動作を施療具に行わせるための基本時間と、この基本時間の後に続く補正時間とからなる。これを説明しているのが図7であり図6に対応する部分を示している。
例えばブロック3について説明すると、その設定時間は25秒とされており、ブロック3の開始から20秒が基本時間とされ、その後の5秒が補正時間とされている。この基本時間において、前記施療マッサージ動作を行うようにマッサージ機は動作する。つまり、実際は使用者の体格差によって終了時間差が生じるが、この基本時間で前記施療マッサージ動作が完了するように設定されている。
【0024】
そして、ブロック3における施療マッサージ動作が完了すると、動作制御手段11が有する基本動作制御手段12としての機能によって、ブロック3における時間の調整を行う(ステップS6〜)。つまり、基本動作制御手段12の機能により、ブロック3において、前記施療マッサージ動作を揉み玉7によって実際に行わせた実動作時間(各動作ブロックで設定されている各ツボ位置でそれぞれマッサージした合計時間)が、前記基本時間以内の場合は〔ケース1〕、次の動作ブロックへ移行させるためのマッサージ動作を前記補正時間が終了するまで行わせ、前記実動作時間が前記基本時間を超える場合は〔ケース2〕及び〔ケース3〕、前記補正時間において前記施療マッサージ動作の継続を許容させている。
なお、〔ケース1〕での「次の動作ブロックへ移行させるためのマッサージ動作」は、施療に必要な施療マッサージ動作として補正時間においても施療マッサージ動作を継続させてもよいが、例えば図6のブロック2からブロック3への境界部分やブロック3からブロック4への境界部分に示しているように、現在の動作ブロックにおける揉み玉7の施療マッサージ動作終了位置と、次の動作ブロックにおける揉み玉7の施療マッサージ動作開始位置との間において、揉み玉7を昇降させながら揉み動作と叩き動作(又は一方の動作)をさせ、次の動作ブロックの施療マッサージ動作の開始位置へ揉み玉7を移動させていく動作(以下、移行マッサージ動作ともいう)とするのが好ましい。これにより、動作ブロック間の繋ぎが連続的となり違和感のないマッサージが可能となる。
【0025】
図7により前記〔ケース1〕の場合について具体的に説明すると、ブロック3において、施療に必要な施療マッサージ動作に要した実動作時間が18秒で完了すると、このタイミングで基本動作制御手段12は工程完了トリガを発し、基本時間の残り2秒と、補正時間の5秒すべてについて、前記移行マッサージ動作を行わせる。そして、その補正時間の5秒が経過すると、ブロック3を終了させ、ブロック4が開始される。この場合、ブロック3は設定時間とおりの25秒で終了する。
図8により前記〔ケース2〕の場合について説明すると、ブロック3において、施療マッサージ動作の実動作時間が、基本時間の20秒を超えて(設定時間以下の)23秒であると、補正時間の一部にはみだして施療マッサージ動作を継続させ、施療マッサージ動作を完了させる。そして、補正時間の5秒が経過するまで(補正時間の残り2秒について)移行マッサージ動作を継続させ、次にブロック4が開始される。この場合、ブロック3は設定時間とおりの25秒で終了する。
図9により前記〔ケース3〕の場合について説明すると、ブロック3において、施療マッサージ動作の実動作時間が、基本時間の20秒を超え、さらに補正時間の5秒を超えて(つまり設定時間を超えて)33秒であると、補正時間のすべてにおいて施療マッサージ動作を継続させ、さらに補正時間を超えて当該施療マッサージ動作を継続させて(8秒超えて)、必要な施療マッサージ動作を完了させる。この場合、ブロック3は設定時間の25秒を超えて終了することとなる。
【0026】
〔ケース1〕及び〔ケース2〕の場合、補正時間を有していることによって、ブロック3は設定時間(25秒)とおりに終了させることができ、マッサージコースに遅れを生じさせない。しかし、〔ケース3〕の場合、実動作時間が33秒でありブロック3の設定時間(25秒)を超えているため、8秒の遅れ(超過時間)が発生している。
なお、施療マッサージ動作が完了すると動作制御手段11において、前記工程完了トリガが発せられ、設定時間との比較によって超過時間の発生の有無及びその超過時間が得られる(ステップS8、ステップS10)。そして〔ケース3〕の場合、動作制御手段11が有する短縮演算手段13としての機能によって、この遅れ(超過時間)を解消させることができる。つまり、短縮演算手段13では、すでに済んだ実動作時間とその動作ブロックにおける設定時間との比較を行い、実動作時間が設定時間を超えて超過時間が発生した場合に、後の動作ブロックにおける設定時間を短縮させるように機能する。
これを具体的に説明すると、図9の〔ケース3−1〕に示しているように、次のブロック4での設定時間は変数A1を用いて規定{60−5×A1秒}されており、短縮演算手段13は、このブロック4の設定時間を短縮させる。つまり、短縮演算手段13は、前記超過時間が生じない場合、変数をA1=0とするが、前記超過時間が生じると変数をA1=2と指定する(ステップS11)。従って、遅れが生じていない〔ケース1〕と〔ケース2〕ではブロック4の設定時間が60秒{60−5×0=60秒}であるのに対して、〔ケース3〕ではブロック4の設定時間が50秒{60−5×2=50秒}となる。つまり、10秒についてブロック4の設定時間を短縮させることで、ブロック3での8秒の遅れを吸収するように機能する。
【0027】
そして、このブロック4においても、ブロック3において説明したのと同様に、ブロック4における補正時間を使用して施療マッサージ動作を完了させることができる。または実動作時間が設定時間(50秒)よりも遅れるおそれがあり、ブロック4において補正時間を使用しても超過時間が発生する場合、短縮演算手段13の前記機能によりその次のブロック5において設定時間をさらに短縮させ遅れを吸収させる。つまり、図6に示している変数B1を用いて(図示しないが)後のブロック5の設定時間を短縮させる。この場合でもブロック4及びブロック5において「施療に必要な施療マッサージ動作」は必ず完了させることとなる。なお、短縮演算手段13によって設定時間を短縮させる動作ブロックは次の動作ブロックに限らず、2つ後の動作ブロックなどであってもよい。
【0028】
短縮演算手段13によって行われる後の動作ブロックの設定時間の短縮は、以下の手段によって行われている。前述のとおり各動作ブロックは、揉み玉7によるマッサージ位置(ツボ位置)が異なる複数の小ブロックを有しており、短縮演算手段13は、この小ブロックにおける各時間を短縮させている。具体的には図6において、ブロック4の最初の3つの小ブロック(ツボ位置a、ツボ位置b、ツボ位置c)と、後の2つの小ブロック(ツボ位置i、ツボ位置j)の合計5つの小ブロック(※の小ブロック)のそれぞれにおいて、時間を短縮させている。つまり、小ブロックの設定時間を5秒としていたが各小ブロックについて2秒短縮させている。この短縮時間が前記変数A1=2に対応しており、ブロック4での設定時間を{60−5×A1秒}と規定していることを表す。この短縮演算手段13によれば、動作ブロックに含まれる小ブロックを省略するのではなく、その小ブロックにおける動作時間を短縮させ、設定されているすべてのツボ位置に対してマッサージを施すことにより施療効果を維持しつつ、動作ブロックの設定時間を短縮できる。
【0029】
次に図9の〔ケース3−2〕は、動作制御手段11が有する中間調整手段14が機能する場合である。中間調整手段14は、動作ブロックにおいて超過時間が大きくなりすぎて、短縮演算手段13が機能しても後の動作ブロックでその遅れの吸収ができないおそれが生じた場合に機能することができる。つまり、短縮演算手段13によって遅れの吸収ができないおそれがあっても、中間調整手段14は、後の動作ブロックを省略することで、一連のマッサージコースの終了の遅れを防止することができる。
具体的に説明すると、中間調整手段14は、ブロック3で生じた超過時間と、予め定められた許容時間との比較を行って(ステップS12)、超過時間が許容時間を超えていると、後の所定の動作ブロックを省略させるように機能する。つまり、〔ケース3−2〕の場合、ブロック3における許容時間が8秒と予め設定されており、超過時間が8秒を超えると、中間調整手段14は自動的に後のブロック8を省略するように指定し、それを記憶部16に記憶させる(ステップS13)。そして図3においてブロック4,5,6が行われ、ブロック7が終了すると、ステップS4でのブロックNo.の指定は「9」となり、ブロック7の後にブロック9が開始される。なお、許容時間は動作ブロックごとに予め設定されており、動作制御手段11の記憶部16に記憶されている。
なお、この一連のマッサージコースには、例えば施療効果よりも爽快感を与えるような(施療について優先順位の低い)付属的な動作ブロックを設けておき、前記ブロック8がこの付属的な動作ブロックとして設定されている。
【0030】
以上の動作制御手段11により、各動作ブロックごとに時間管理を行いながら、揉み玉7のマッサージ動作を行うことで、各動作ブロックでの早期終了を防止し、または遅れを抑えながら、最後の動作ブロック(最終ブロック)まで進むことができる(ステップS5)。
さらに、図3に示しているように最後の動作ブロックは基本動作時間と余裕時間とを有している。基本動作時間では例えば、揉み玉7をツボ位置aからツボ位置kまで上下往復移動させながら叩き動作をさせるといった爽快感を与えるような終了マッサージ動作を行い、余裕時間ではこの終了マッサージ動作をさらに繰り返し行わせるように設定している(ステップS14、S15)。
そして、動作制御手段11が有する最終調整手段15としての機能により、一連のマッサージコースの規定時間に達すると、この余裕時間内において最後の動作ブロックを終了させる(ステップS15)。つまり、最終ブロックまでの一連のマッサージコースの規定時間が12分とされている場合、最終調整手段15はその時間が経過した時点で最終ブロックを終了させ、脚載置部2や背もたれ部2を復帰させるための収容動作を行わせる。なお、一連のマッサージコースの規定時間は、ブロック1である肩位置検出動作を除く時間としており、ブロック2の開始から最終ブロックの終了までの時間としている。
【0031】
以上のようなマッサージ機の動作制御手段11によれば、基本動作制御手段12により、各動作ブロックにおいて実動作時間が設定時間よりも早く終わっても、補正時間を有していることにより、その動作ブロックを設定時間とおりに終了させることができる。これにより、一連のマッサージコースが規定時間よりも早く終わってしまうのを防止できる。
さらに、短縮演算手段13によれば、ある動作ブロックにおいて、実動作時間が設定時間を超えてその動作ブロックの終了が遅れた場合であっても、後の(次の)動作ブロックの設定時間を短縮させることにより、その遅れを後の(次の)動作ブロックにおいて吸収させることができる。これにより、複数の動作ブロックにより構成されている一連のマッサージコース全体における遅れを防止することができる。
【0032】
さらに、中間調整手段14によれば、ある動作ブロックにおいて超過時間が大きくなりすぎて、短縮演算手段13が機能してもその遅れの吸収ができないおそれが生じた場合であっても、後の付属的な動作ブロックを省略することで、一連のマッサージコースの終了の遅れを防止することができる。
さらに、これらを機能させても一連のマッサージコースの終了に遅れが生じそうになったり、大きな遅れが無くても最終ブロックの開始時間が使用者によって様々である場合は、最終調整手段15により、マッサージコースの規定時間に達すると、余裕時間の途中で動作ブロックを終了させることで、マッサージコースの終了時間(規定時間)を一定とできる。
なお、以上動作制御手段11によって行われる各マッサージ動作は、揉み玉7のみによるマッサージ以外にも、前記エアセル6a,6b,6cによるマッサージ動作、前記バイブレータ機構によるマッサージ動作を適宜組み合わせて行うものとできる。
【0033】
また、この動作制御手段11は、図6に示しているように、ブロック2において、揉み玉7をマッサージのための下限位置(ツボ位置k)へ移動させてから、次ぎのブロック3へ移行させ、このブロック3において、マッサージのための上限位置(ツボ位置a)へ移動させてから、次ぎのブロック4へ移行させている。そして、このブロック4において、揉み玉7を前記上限位置(ツボ位置a)から前記下限位置(ツボ位置k)へ移動させてから、次ぎのブロック5へ移行させ、以下同様に、一つの動作ブロックにおいて、揉み玉7を下部位置から上方へ、または、上部位置から下方へ移動させ施療マッサージ動作が完了してから次の動作ブロックへ移行させている。つまり、動作制御手段11は、一つの動作ブロックにおいて、揉み玉7を使用者の身長方向の上部位置と前記下部位置のうちの一方から他方へ向かって移動させ、次の動作ブロックにおいて、その揉み玉7を当該他方から当該一方となる反対向きへ移動させている。これにより、次の動作ブロックへの移行の際に、不要な揉み玉7の移動が発生しないため、次の動作ブロックへの移行が容易となる。つまり、ある動作ブロックにおける揉み玉7の施療マッサージ動作終了位置が、例えば上下方向中間位置であって、その次の動作ブロックにおける揉み玉の施療マッサージ動作開始位置が上限位置であるとした場合、これら動作ブロック間において揉み玉7を大きく移動させる必要が生じるため、時間ロスが生じてしまう。しかし、本発明のこの構成によれば、この時間ロスを防止できる。
【0034】
また、本発明のマッサージ機は、図示する形態に限らずこの発明の範囲内において他の形態のものであっても良く、揉み玉7により揉み動作と叩き動作の両方による複合動作を行ってもよい。また、揉み動作において揉み玉7の回転方向を各動作ブロックで正逆切り換えてもよく、上から下へまたは下から上への2種類の揉み動作が一つのマッサージコース内で得られる。さらに、揉み動作及び叩き動作のサイクル数、動作速度を各動作ブロックで変化させてもよい。また、マッサージ動作に、エアセル6a,6b,6cによるものを含ませたり、バイブレータ機構によるものを含ませたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の一形態に係るマッサージ機の全体を示す斜視図である。
【図2】マッサージ機における制御ブロックの概略を示す説明図である。
【図3】治療のためのマッサージコースを説明するためのブロック図である。
【図4】動作制御手段によって行われる制御を説明するためのフローチャートであり、前半部分を示している。
【図5】動作制御手段によって行われる制御を説明するためのフローチャートであり、後半部分を示している。
【図6】マッサージコースにおけるタイムチャートの一部を示す図である。
【図7】動作制御手段の機能を説明するための図であり〔ケース1〕を示している。
【図8】動作制御手段の機能を説明するための図であり〔ケース2〕を示している。
【図9】動作制御手段の機能を説明するための図であり〔ケース3〕を示している。
【符号の説明】
【0036】
1 座部
2 脚載置部
3 背もたれ部
5 マッサージユニット
7 揉み玉
11 動作制御手段
12 基本動作制御手段
13 短縮演算手段
14 中間調整手段
15 最終調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マッサージを施すための施療具と、
複数の動作ブロックにより構成されている一連のマッサージコースが設定され各動作ブロックに応じて前記施療具を動作させ当該マッサージコースを完了させる動作制御手段と、を備え、
前記動作ブロックの設定時間が、
施療に必要としている施療マッサージ動作を前記施療具に行わせるための基本時間と、この基本時間の後に続く補正時間とからなり、
前記動作制御手段は、
前記動作ブロックにおいて、前記施療マッサージ動作を前記施療具によって行わせた実動作時間が前記基本時間以内の場合は、次の動作ブロックへ移行させるためのマッサージ動作を前記補正時間が終了するまで行わせ、前記実動作時間が前記基本時間を超える場合は、前記補正時間において前記施療マッサージ動作の継続を許容させる基本動作制御手段を有していることを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
前記動作制御手段は、前記実動作時間と前記設定時間との比較を行い当該実動作時間が当該設定時間を超えて超過時間が発生した場合に、後の動作ブロックにおける設定時間を短縮させる短縮演算手段を有している請求項1に記載のマッサージ機。
【請求項3】
前記動作ブロックは、前記施療具によるマッサージ部位が異なる複数の小ブロックを有して設定されており、前記短縮演算手段は、前記小ブロックにおける時間を短縮させる請求項2に記載のマッサージ機。
【請求項4】
前記動作制御手段は、前記超過時間と、予め定められた許容時間との比較を行って、当該超過時間が当該許容時間を超えていると、後の所定の動作ブロックを省略させる中間調整手段を有している請求項2又は3に記載のマッサージ機。
【請求項5】
最後の動作ブロックは余裕時間を有して設定されており、前記動作制御手段は、一連のマッサージコースの規定時間に達するとこの余裕時間内において最後の動作ブロックを終了させる最終調整手段を有している請求項1〜4のいずれか一項に記載のマッサージ機。
【請求項6】
前記施療具は使用者の身長方向に沿って上部位置と下部位置との間を移動してマッサージを施す揉み玉を有しており、前記動作制御手段は、一つの前記動作ブロックにおいて、前記揉み玉を前記上部位置と前記下部位置のうちの一方から他方へ向かって移動させ、次の動作ブロックにおいて、当該揉み玉を当該他方から当該一方へ移動させる請求項1〜5のいずれか一項に記載のマッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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