マッサージ機
【課題】強弱調整を行うことができる上に、強いマッサージを得られるようにした時にも上下の施療子が共に人体に接触してソフトな当たりを得ることができる。
【解決手段】上下に並ぶ少なくとも2つの施療子1a,1bを備えるとともに、これら施療子の前方側への突出量を施療子支持部材10を回動させることで変化させる強弱駆動部を備える。上記施療子支持部材に回動自在に支持されて施療子支持部材に対して揺動自在となっているアーム12に上記施療子が配設されている。施療子支持部材10を回動させることで強弱調整を行うにもかかわらず、アーム12の揺動によって上下に並ぶ施療子が共に人体に接触してソフトな当たりとなる状態を強弱調整で強いマッサージとした時にも得ることができる。
【解決手段】上下に並ぶ少なくとも2つの施療子1a,1bを備えるとともに、これら施療子の前方側への突出量を施療子支持部材10を回動させることで変化させる強弱駆動部を備える。上記施療子支持部材に回動自在に支持されて施療子支持部材に対して揺動自在となっているアーム12に上記施療子が配設されている。施療子支持部材10を回動させることで強弱調整を行うにもかかわらず、アーム12の揺動によって上下に並ぶ施療子が共に人体に接触してソフトな当たりとなる状態を強弱調整で強いマッサージとした時にも得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施療子の駆動によって施療動作を行わせるマッサージ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子の背もたれなどに配した施療子を駆動することでマッサージを行うマッサージ機には、左右に夫々1個ずつの施療子を配したものと、上下に並ぶ2個以上の施療子を左右に夫々配したものとがある。前者は人体に対して左右2点で押圧力を加えるために比較的強いマッサージを行うことができ、後者においては人体との接触点が多くなるためにソフトなマッサージを行うことができる。
【0003】
もっとも、後者のマッサージ機において、ソフトなマッサージを行うことができるのは、上下に並ぶ施療子が共に人体に接触していなくてはならないことから、特開2001−198169号公報(特許文献1)に示されたものでは、上下に並ぶ施療子が人体に共に接触するように流体シリンダーによって上下の施療子の前後位置を能動的に変更するものが提供されている。
【0004】
一方、施療子の前方への突出量を変化させることでマッサージの強弱調整を行うことができるようにしたものが多々提供されているが、上記特許文献1に示されたものでは、上下に並ぶ2つの施療子のうちの一方のみが人体に接触するように上下の施療子の前後位置を変更するものであるために、上下の施療子の突出量を共に大きくした状態で人体に上下の施療子が共に接触する状態、つまり強いながらもソフトなマッサージとなる状態が得られない。
【特許文献1】特開2001−198169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは強弱調整を行うことができる上に、強いマッサージを得られるようにした時にも上下の施療子が共に人体に接触してソフトな当たりを得ることができるマッサージ機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係るマッサージ機は、上下に並ぶ少なくとも2つの施療子を備えるとともに、これら施療子の前方側への突出量を施療子支持部材を回動させることで変化させる強弱駆動部を備えたマッサージ機であって、上記施療子支持部材に回動自在に支持されて施療子支持部材に対して揺動自在となっているアームに上記施療子が配設されていることに特徴を有している。
【0007】
施療子支持部材を回動させることで強弱調整を行うにもかかわらず、施療子支持部材に施療子を備えたアームを揺動自在としているために、上下に並ぶ施療子が共に人体に接触してソフトな当たりとなる状態を強弱調整で強いマッサージとした時にも得ることができるものである。
【0008】
そしてアームの揺動に対して上方側に位置する施療子が前方側に突出する方向への付勢力を与える付勢手段を備えているとともに、該付勢手段はその付勢力を可変としたものであると、上下に並ぶ施療子が共に人体に接触する状態だけでなく、上方の施療子のみが人体に接触する状態も、強弱駆動部による強弱調整度合いに関係なく付勢手段による付勢力の変更で得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、強弱駆動部による施療子支持部材の回動によって強弱調整を行うことができるものであり、しかも施療子支持部材にアームを介して設けられた上下に並ぶ施療子は、施療子支持部材に対するアームの回動によって共に人体に接触する状態を強弱調整状態にかかわらず得ることができ、強くて且つ人体に余分な負荷をかけることがないソフトなマッサージも得ることができる。しかも付勢手段を設けたものでは、強弱駆動部による強弱調整度合いに関係なく付勢手段による付勢力の変更によって施療子の人体との当たり具合を調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明すると、図2に示すものは本発明に係るマッサージ機における機構ユニットで、この機構ユニットはたとえば図7に示す椅子9の背もたれ90内に配されて背もたれ90内を上下に自走するものであり、フレームを構成する左右の側板91,91間には上下駆動軸51と強弱駆動軸61とが架設されており、また図3に示すところの可動ユニットが両側板91,91間に配設されている。
【0011】
上記の上下駆動軸51は、図4にも示すように、一方の側板91に固定された上下駆動用モータ50の出力がギアボックス52内のギア群を介して伝達されることで回転駆動されるものであり、その両端にはピニオン53ところ54とが夫々取り付けられている。ころ54は図2に示すころ55と共に上記背もたれ90内に配されたレール(図示せず)内を転動し、ピニオン53は上記レールに付設されたラック(図示せず)と噛合する。
【0012】
上記の強弱駆動軸61は図5にも示すように他方の側板91に固定された強弱駆動用モータ60の出力がギアボックス62内のギア群を介して伝達されることで回転駆動されるものであり、その両端部には夫々上記可動ユニットを回転させるためのギア63,63が取り付けられている。
【0013】
可動ユニットは、左右一対のギアプレート30,30間に幅駆動軸31と2本のスライドガイド軸32,32及びたたき駆動軸41を架設するとともに、左右一対の施療子ユニット1,1(図2及び図3では一方の施療子ユニット1のみを示している)を取り付けたもので、両ギアプレート30,30に対して軸回りの回転が自在となっている幅駆動軸31,31の両端が上記一対の側板91,91で支持されることで上記両側板91,91間に配設され、ギアプレート30,30の外周面の歯部300,300を上記のギア63,63に噛合させる。なお、幅駆動軸31の一端は、一方の側板91に取り付けた幅駆動用モータ35の出力がプーリ36及びベルト37を介して伝達されるプーリ38に連結されるものであり、このために幅駆動軸31は幅駆動用モータ35の出力で軸回りの回転を行う。
【0014】
また可動ユニットにおける一方のギアプレート30上にはたたき駆動用のモータ40が取り付けられている。このモータ40の出力はプーリ42,44とベルト43とによって上記たたき駆動軸41に伝達される。なお、たたき駆動軸41は左右で偏心方向が異なるクランク軸として形成されている。
【0015】
施療子ユニット1は、図6に示すように、施療子支持部材としてのアームベースプレート10と、たたき板11、施療子アーム12、第1アーム13、第2アーム14、ローラ型の2つの施療子1a,1b等からなるもので、アームベースプレート10は上記幅駆動軸31のねじ部に螺合する送りナット33と、上記スライドガイド軸32,32にスライド自在に嵌合するスライダー34,34とを備えて、幅駆動軸31の回転によって幅駆動軸31及びスライドガイド軸32の軸方向位置を変化させるものであり、また、幅駆動軸31に形成されたねじ部は、片側が逆ねじで形成されていることから、左右一対の施療子ユニット1における各アームベースプレート10,10は、幅駆動軸31の回転によって、互いに接近したり離れたりするものである。
【0016】
そして上記たたき板11はアームベースプレート10に軸着され、たたき板11に施療子アーム12と第2アーム14とが軸100によって軸着され、施療子アーム12に第1アーム13が軸101によって軸着されている。また、たたき板11に設けた軸102と、クランク軸である前記たたき駆動軸41とがリンク45によって連結されている。
【0017】
さらに2つの施療子1a,1bのうちの主施療子である施療子1aが先端部に取り付けられた第1アーム13と、副施療子である施療子1bが先端部に取り付けられた第2アーム14とが連動リンク15によって結合されている。また、アームベースプレート10と施療子アーム12から突出させた突片121とが揺動連動リンク19,18によって連結されている。尚、対をなす他方の施療子ユニット1は図示の施療子ユニット1の対称形となっている。
【0018】
上下に並ぶ一対の施療子1a,1bに掴み動作を行わせる掴み駆動部は、エアによって伸縮動作を行うアクチュエータA1で構成されており、一対の受け板20,20と両受け板20,20間に配されたエアバッグ21とからなるアクチュエータA1は、一方の受け板20が上記連動リンク18に、エアバッグカバーを備えた他方の受け板20が第2アーム14の先端部から突出させた突片141に夫々連結されて配設されている。連動リンク18と突片141とを連結しているリニアスライドレール17は、アクチュエータA1を伸張させた時にエアバッグ21が座屈してしまうことを防ぐためのものである。
【0019】
また、施療子ユニット1は、アクチュエータA1と同じく一対の受け板20,20と両受け板20,20間に配されたエアバッグ21とから構成されてエアによって伸縮動作を行うアクチュエータA2を備えている。このアクチュエータA2は、一方の受け板20が前記たたき駆動用のリンク45上に固定され、他方の受け板20が前記軸102によって回動自在に支持されたレバー16に取り付けられたもので、レバー16は施療子アーム12の後縁に接触するころ160を備えている。なお、図2中の95は上記アクチュエータA1,A2を作動させるためのエアポンプや電磁弁を納めたエア駆動ユニットである。
【0020】
以上のように構成された機構ユニットの動作について説明すると、まず上下駆動用モータ50で上下駆動軸51を駆動する時、機構ユニットは前述の椅子の背もたれ内を上下に自走して施療子1a,1bの位置を上下に変更する。また、強弱駆動用モータ60で強弱駆動軸61を駆動すれば、強弱駆動軸61が備えるギア63がギアプレート30を幅駆動軸31の軸回りに回転させるために、ギアプレート30と一体にアームベースプレート10が回転するものであり、このために図11に示すように幅駆動軸11から見た施療子1aの背もたれ前方への突出量が小さい状態と、図1に示すように幅駆動軸11から見た施療子1aの前方突出量が大きい状態とを得ることができる。つまり、施療子1aの前方突出量を変化させることによる強弱調整を行うことができる。また、幅駆動用モータ35によって幅駆動軸31を回転させる時、前述のように左右一対の施療子ユニット1,1は幅方向(左右方向)において接近離反し、左右の施療子1a,1a、1b,1bの間隔を変更する。
【0021】
ちなみにこのマッサージ機は、上記3つのモータ50,60,35による上記各動作を組み合わせることで、いわゆる揉みマッサージを実現しているものであり、図27〜図29にその例を示す。各図(a)はモータの動作状態を、各図(b)は施療子1a,1bの幅方向及び上下方向の動きを、各図(c)は施療子1a,1bの前方突出方向及び上下方向の動きを示している。なお、このような駆動制御を可能とするために、上下位置センサーS2や幅位置センサーS1などのほか、図8に示すように、強弱位置、各モータの回転速度(回転角度)等を検出するセンサを設けて、フィードバック制御を行っている。図8中の8はマイクロコンピュータからなる制御回路である。
【0022】
たたき駆動用のモータ40でクランク軸であるたたき駆動軸41を回転させる時、リンク45がたたき板11を前後方向に揺動させるものであり、たたき板11に施療子アーム12とアーム13,14を介して取り付けられた施療子1aは、前後に細かく動くたたき動作を行う。
【0023】
そしてアクチュエータA1を伸張させたならば、図12に示すように、施療子ユニット1の第2アーム14が押されて軸100を中心に回動すると同時に、連動リンク15によって第1アーム13が軸101を中心に逆方向に回動するものであり、このために各アーム13,14に設けられた施療子1a,1bは相互に接近して掴み動作を行う。特に施療子1aは軸100よりも前方側に位置している軸101を中心に回動する第1アーム13の先端に取り付けられているために、図12に示すように、強弱調整を強に設定した状態で肩を掴む時、施療子1aが肩を斜め前方側から人体の肩に当たって後方側に押し込み、施療子1bは人体背面を前方側に押し込むという動作を得ることができるものであり、このために肩を掴む(摘む)という動作をきわめて的確に行うことができる。なお、強弱調整を弱にした状態では、施療子1a,1bの前後方向位置はほぼ同じところとなるために、人体背面を上下から掴むという動作を得ることができる。
【0024】
また、施療子ユニット1における第1アーム13を備えた施療子アーム8と第2アーム14は、軸100によってたたき板11に軸着されて、図11(a)(b)や図1(a)(b)に示す範囲内で揺動自在となっていることから、上記掴み動作を含む各種マッサージ動作に際して、施療子1a,1bが共に人体の背面に接するように倣い動作を行うものであり、このために掴み動作にあたって施療子1a,1bが確実に人体をつまむことになる。なお、第2アーム14がアクチュエータA1によってアームベースプレート10に連結されているが、アクチュエータA1はアームベースプレート10に直接連結されるのではなく、揺動連動リンク18,19を介して連結されているために、アクチュエータA1が上記揺動を阻害してしまうことはない。
【0025】
前記掴み動作は、前述の上下駆動や幅駆動や強弱駆動と組み合わせて行うこともできる。つまり、人体の肩をつまんだ状態の施療子1a,1bを上方に移動させたり、人体の首側に寄せたりすることができる。
【0026】
アクチュエータA1を伸張させることは、上下に並ぶ施療子1a,1bの間隔を変更することになるために、人体をつまむことだけでなく、ある間隔で固定してしまうことで、たとえば揉みマッサージに際しての人体の押圧感覚を異ならせることにも用いることができる。また、エアバッグ21内の空気圧を調整することにより、さらに上記押圧感覚を変化させることができる。
【0027】
ここにおいて、第2アーム14の動きを第1アーム13に伝えて第1アーム13を第2アーム14とは逆方向に回動させる連動リンク15であるが、この連動リンク15の両アーム13,14との2つの連結点は、アクチュエータA1を縮めた通常時、図12(a)に示すように、ほぼ一直線上に並ぶようにしていることから、施療子1aのみが人体に接触するようにしている時、施療子1a側からの負荷外力によって、第1アーム13が回転してしまうということはない。
【0028】
また、軸100から第2アーム14における施療子1bの支持軸までの距離よりも、軸100から第2アーム14におけるアクチュエータA1が連結されている点までの距離の方を長くしているために、アクチュエータA1を伸張させるためのエアポンプが100kPa以下のエア圧力の家庭用の小さなものであっても、施療子1b,1aにおいて十分な掴み力を発生させることができるものとなっている。アクチュエータA1の直線的伸張をサポートする前記リニアスライドレール17の存在もエア圧力の利用の点において有効である。
【0029】
このほか、アクチュエータA1によって押されて第2アーム14が回動することで施療子1bが力Fで人体を押圧する時、リンク15の存在によって第1アーム13が逆方向に回動して施療子1aが力Pで人体を押圧することになるが、上記力Pが力Fとほぼ等しく(0.7F<P<1.3F)なるように、アーム13,14の長さや連動リンク15の連結点の位置を定めており、人体を施療子1a,1bでつかんだ時、施療子アーム12が大きく回動して力を損失してしまうという事態が生じないようにしている。
【0030】
下方側に位置する施療子1bは図15に示すように施療子1aよりも幅が短いものとすることも好ましい。具体的には2〜3倍の差を両者の幅に持たせる。人体の肩部を手指で掴む時、拇指を背中側に、他の指を肩の上面側に当てることになるが、この点を模したものとすることができる。
【0031】
次にアクチュエータA2を伸張させた時の動作について説明すると、このアクチュエータA2の伸張で前方側に向けて回動するレバー16は、ころ160によって施療子アーム12の後縁を押して施療子アーム12を回動させることで施療子1aを前方に移動させるとともに、空気ばねとしても機能するアクチュエータA2によって施療子アーム12をばね付勢する。この結果、図11や図1に示した施療子ユニット1における第1アーム13を備えた施療子アーム8と第2アーム14との揺動自在な範囲が実質的に狭められるものであり、アクチュエータA2を最も伸張させた時には、上記揺動の範囲が実質的にほぼゼロとなって、前述の倣い動作を行わないものとなる。この場合、施療子1aによってより強いマッサージを得ることができる。また、揺動の範囲を狭くしたとはいえ、大きな荷重がかかった時にはアクチュエータA2が縮むために、安全性の点でも優れたものとなっている。
【0032】
さらに、アクチュエータA2の伸張状態に応じて、上記倣い動作はエア圧によるばね付勢で荷重が加えられたものとなるために、施療子1a,1bを上下に移動させてさすりマッサージを行う場合、施療子1a,1bの負担割合が異なるマッサージをエア圧に応じて得ることができる。また、前述の掴み動作時も、人体の肩を掴む時、この荷重が加えられることで、肩の上面側に接触する施療子1aが逃げたりすることがなくなるために、より確実な掴みマッサージを得ることができる。更に図14に示すように、施療子1a,1bを下方に移動させる時、エア圧に応じた荷重値を越えた時に施療子アーム12が揺動を開始し、この結果施療子1aだけでなく施療子1bでも人体背面を押すことになる。
【0033】
なお、アクチュエータA2を最大に伸張させた時、上記ころ160と施療子アーム12との当接部には、レバー16を圧縮する方向の力が働くように施療子アーム12の後縁の形状を定めておくことで、アクチュエータA2が発生する力以上の荷重が施療子1a,1b側から施療子アーム12に働いた時もアクチュエータA2を伸張状態に保つことができる。
【0034】
また、第1アーム13を備えた施療子アーム8と第2アーム14との揺動自在な範囲の最大値は、施療子アーム12に設けたストッパ120によって定めており、また第2アーム14の施療子アーム12に対する回動範囲は、ストッパ140によって定めている。さらに、第2アーム14と施療子アーム12との間にはねじりコイルばね(図示せず)を配して、施療子1a,1bの間隔が広くなる方向に付勢している。
【0035】
このほか、アクチュエータA2を伸張させる時、強弱駆動によって強に設定されているならば、いったん強弱設定を弱の状態として、この状態でアクチュエータA2を伸張させ(図13(a)参照)、その後、強弱設定を強に戻して図13(b)に示す状態になるように制御している。これはエア圧がさほど高くなくても確実にアクチュエータA2を伸張させることができるようにするためであり、このように制御することで、使用者の体重や体形や使用状態といった不確定要素を低減して切替動作を確実にすることができる。
【0036】
図9及び図10はアクチュエータA1の駆動用であるエア駆動ユニット95の構成例を示しており、図9はアクチュエータA1(エアバッグ21)からの排気を自然排気で行うものを、図10はエアポンプ96の吸気によってエアバッグ21からの排気を強制排気で行うのを示している。後者の場合、施療子1a,1bを離間させる動作をより確実に行うことができる。なお、マッサージとしては、伸張のための給気よりも排気の方を速くすることが好ましい。
【0037】
図16は施療者側から施療子アーム12にかかる圧力を検出するための圧力検出部98を設けたものを示している。この場合、圧力検出部98で検出した圧力信号に基づいて強弱駆動部や幅駆動部、あるいは上下駆動部のうちの少なくとも一つ以上の駆動部に関して、その位置制御乃至速度制御の少なくとも一方をフィードバック制御することで、施療子アーム12の負荷圧力が常に予め設定した負荷圧力となるようにすることができる。
【0038】
図17及び図18に他例を示す。ここでは掴み駆動用のアクチュエータA1における一方の受け板20を第2アーム14に設けるとともに、他方の受け板20を施療子アーム8に取り付けており、またアクチュエータA2における一方の受け板20をリンク45に、他方の受け板20を施療子アーム12に取り付けている。
【0039】
このものにおいても、アクチュエータA1を伸張させたならば、第2アーム14とこれにリンク15で連結された第1アーム13とが相互に接近する方向に回動するために、施療子1a,1bによって掴み動作を得ることができる。また、アクチュエータA2を伸張させたならば、施療子アーム8が軸100を中心に回動する。なお、本例の場合、施療子1aを備えた第1アーム13とこれが設けられている施療子アーム8及び施療子1bを備えた第2アーム14の揺動が、アクチュエータA2による規制を受けた状態での動作となる点で、前記のものと相違する。
【0040】
図19〜図24に更に他例を示す。これは上記の両例におけるたたき板11及び施療子アーム12を廃止して、施療子1aを備えた第1アーム13を第2アーム14と同じく軸100で直接アームベースプレート10に軸着するとともに、アクチュエータA1を第1アーム13と第2アーム14との間に介在させ、更にアクチュエータA2をリンク45と第1アーム13との間に介在させたものである。このものでは、施療子1aを備えた第1アーム13と第2アーム14との図20に示す揺動は、アクチュエータA2による規制を受けた状態での動作となり、アクチュエータA2のエアバッグ21の内部空間を外部に開放した状態では、施療子1aを備えた第1アーム13と第2アーム14はアクチュエータA2を伸縮させつつ揺動することになるとともに、アクチュエータA2に給気して伸張させた時にはアクチュエータA2が上記揺動の時の施療子1aの後退に関してばね荷重を加えるものとなる。尚、たたき駆動軸41に一端を連結したリンク45は、その他端を第1アーム13に連結しているのであるが、他端の軸48を第1アーム13に設けた長孔49に係合させることで上記揺動を妨げることがないようにしている。
【0041】
また、アクチュエータA1を伸張させた時には、図22に示すように第2アーム14が回動して施療子1bが施療子1a側に接近し、更にアクチュエータA2を伸張させれば、図23に示すように第1アーム13と第2アーム14とが回動する。図24はアクチュエータA1を伸張させて掴み動作を行っている時にアクチュエータA2を伸張させた状態を示している。
【0042】
このものでは、アクチュエータA1の伸張で施療子1bのみが施療子1a側に接近する方向に駆動されることになるが、この移動時、施療子1bが人体に当接して第2アーム14の回動が止められると、第1アーム13側がアクチュエータA1の伸張に伴って回動して施療子1aが施療子1b側に接近する方向に移動することになるために、このものにおいても支障なく人体を掴む動作を行うことができる。また、強弱調整を弱の状態にすれば、人体背面を背後から掴む動作を、強弱調整を強の状態にすれば、人体の肩を上面と背後から掴む動作を行うことができ、さらに掴み動作時にアクチュエータA2を図24に示すように伸張させることで、人体の負荷に対して施療子1aが逃げてしまうことがなくて、効果的な掴み動作を行うことができる。
【0043】
図25及び図26に更に他例を示す。これは最初に示した実施例におけるアクチュエータA2に代えて、施療子アーム12における軸100よりも下方側の部分と機構ユニットにおけるフレーム上部との間に引っ張りばね88を懸架して、施療子アーム12を前方側に回動させる付勢力を加えたものである。この付勢力は、強弱調整によって可動ユニット全体を前方側に回動させて図26に示す状態とすることで強くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すもので、(a)(b)は強弱調整が強の時の倣い動作のための揺動についての説明図である。
【図2】同上の機構ユニット全体の斜視図である。
【図3】同上の可動ユニットの斜視図である。
【図4】同上の上下駆動部の斜視図である。
【図5】同上の強弱駆動部の斜視図である。
【図6】同上の施療子ユニットの分解斜視図である。
【図7】同上の機構ユニットを背もたれに内蔵した椅子の斜視図である。
【図8】同上のブロック回路図である。
【図9】同上のエア配管の一例を示す配管図である。
【図10】同上のエア配管の他例を示す配管図である。
【図11】(a)(b)は強弱調整が弱の時の倣い動作のための揺動についての説明図である。
【図12】(a)(b)は掴み動作の説明図である。
【図13】(a)(b)は同上のアクチュエータによる付勢動作についての説明図である。
【図14】(a)は施療子を下降させる時の動作説明図、(b)は付勢力と揺動力との関係を示す説明図である。
【図15】(a)(b)は夫々施療子の断面図である。
【図16】他の例のブロック回路図である。
【図17】他の例の可動ユニットの斜視図である。
【図18】同上の施療子ユニットの分解斜視図である。
【図19】更に他例の可動ユニットの斜視図である。
【図20】同上の側面図である。
【図21】(a)(b)は夫々第1アームと第2アームの斜視図である。
【図22】同上の掴み動作を示す説明図である。
【図23】同上の付勢力変更についての説明図である。
【図24】同上の複合動作の説明図である。
【図25】別の例の断面図である。
【図26】同上の断面図である。
【図27】揉み駆動動作の一例を示すもので、(a)はタイムチャート、(b)は施療子の上下及び幅方向動作の説明図、(c)は施療子の上下及び前後突出方向動作の説明図である。
【図28】揉み駆動動作の他例を示すもので、(a)はタイムチャート、(b)は施療子の上下及び幅方向動作の説明図、(c)は施療子の上下及び前後突出方向動作の説明図である。
【図29】揉み駆動動作の更に他例を示すもので、(a)はタイムチャート、(b)は施療子の上下及び幅方向動作の説明図、(c)は施療子の上下及び前後突出方向動作の説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1a 施療子
1b 施療子
10 アームベースプレート
12 施療子アーム
13 第1アーム
14 第2アーム
A2 アクチュエータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、施療子の駆動によって施療動作を行わせるマッサージ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子の背もたれなどに配した施療子を駆動することでマッサージを行うマッサージ機には、左右に夫々1個ずつの施療子を配したものと、上下に並ぶ2個以上の施療子を左右に夫々配したものとがある。前者は人体に対して左右2点で押圧力を加えるために比較的強いマッサージを行うことができ、後者においては人体との接触点が多くなるためにソフトなマッサージを行うことができる。
【0003】
もっとも、後者のマッサージ機において、ソフトなマッサージを行うことができるのは、上下に並ぶ施療子が共に人体に接触していなくてはならないことから、特開2001−198169号公報(特許文献1)に示されたものでは、上下に並ぶ施療子が人体に共に接触するように流体シリンダーによって上下の施療子の前後位置を能動的に変更するものが提供されている。
【0004】
一方、施療子の前方への突出量を変化させることでマッサージの強弱調整を行うことができるようにしたものが多々提供されているが、上記特許文献1に示されたものでは、上下に並ぶ2つの施療子のうちの一方のみが人体に接触するように上下の施療子の前後位置を変更するものであるために、上下の施療子の突出量を共に大きくした状態で人体に上下の施療子が共に接触する状態、つまり強いながらもソフトなマッサージとなる状態が得られない。
【特許文献1】特開2001−198169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは強弱調整を行うことができる上に、強いマッサージを得られるようにした時にも上下の施療子が共に人体に接触してソフトな当たりを得ることができるマッサージ機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係るマッサージ機は、上下に並ぶ少なくとも2つの施療子を備えるとともに、これら施療子の前方側への突出量を施療子支持部材を回動させることで変化させる強弱駆動部を備えたマッサージ機であって、上記施療子支持部材に回動自在に支持されて施療子支持部材に対して揺動自在となっているアームに上記施療子が配設されていることに特徴を有している。
【0007】
施療子支持部材を回動させることで強弱調整を行うにもかかわらず、施療子支持部材に施療子を備えたアームを揺動自在としているために、上下に並ぶ施療子が共に人体に接触してソフトな当たりとなる状態を強弱調整で強いマッサージとした時にも得ることができるものである。
【0008】
そしてアームの揺動に対して上方側に位置する施療子が前方側に突出する方向への付勢力を与える付勢手段を備えているとともに、該付勢手段はその付勢力を可変としたものであると、上下に並ぶ施療子が共に人体に接触する状態だけでなく、上方の施療子のみが人体に接触する状態も、強弱駆動部による強弱調整度合いに関係なく付勢手段による付勢力の変更で得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、強弱駆動部による施療子支持部材の回動によって強弱調整を行うことができるものであり、しかも施療子支持部材にアームを介して設けられた上下に並ぶ施療子は、施療子支持部材に対するアームの回動によって共に人体に接触する状態を強弱調整状態にかかわらず得ることができ、強くて且つ人体に余分な負荷をかけることがないソフトなマッサージも得ることができる。しかも付勢手段を設けたものでは、強弱駆動部による強弱調整度合いに関係なく付勢手段による付勢力の変更によって施療子の人体との当たり具合を調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明すると、図2に示すものは本発明に係るマッサージ機における機構ユニットで、この機構ユニットはたとえば図7に示す椅子9の背もたれ90内に配されて背もたれ90内を上下に自走するものであり、フレームを構成する左右の側板91,91間には上下駆動軸51と強弱駆動軸61とが架設されており、また図3に示すところの可動ユニットが両側板91,91間に配設されている。
【0011】
上記の上下駆動軸51は、図4にも示すように、一方の側板91に固定された上下駆動用モータ50の出力がギアボックス52内のギア群を介して伝達されることで回転駆動されるものであり、その両端にはピニオン53ところ54とが夫々取り付けられている。ころ54は図2に示すころ55と共に上記背もたれ90内に配されたレール(図示せず)内を転動し、ピニオン53は上記レールに付設されたラック(図示せず)と噛合する。
【0012】
上記の強弱駆動軸61は図5にも示すように他方の側板91に固定された強弱駆動用モータ60の出力がギアボックス62内のギア群を介して伝達されることで回転駆動されるものであり、その両端部には夫々上記可動ユニットを回転させるためのギア63,63が取り付けられている。
【0013】
可動ユニットは、左右一対のギアプレート30,30間に幅駆動軸31と2本のスライドガイド軸32,32及びたたき駆動軸41を架設するとともに、左右一対の施療子ユニット1,1(図2及び図3では一方の施療子ユニット1のみを示している)を取り付けたもので、両ギアプレート30,30に対して軸回りの回転が自在となっている幅駆動軸31,31の両端が上記一対の側板91,91で支持されることで上記両側板91,91間に配設され、ギアプレート30,30の外周面の歯部300,300を上記のギア63,63に噛合させる。なお、幅駆動軸31の一端は、一方の側板91に取り付けた幅駆動用モータ35の出力がプーリ36及びベルト37を介して伝達されるプーリ38に連結されるものであり、このために幅駆動軸31は幅駆動用モータ35の出力で軸回りの回転を行う。
【0014】
また可動ユニットにおける一方のギアプレート30上にはたたき駆動用のモータ40が取り付けられている。このモータ40の出力はプーリ42,44とベルト43とによって上記たたき駆動軸41に伝達される。なお、たたき駆動軸41は左右で偏心方向が異なるクランク軸として形成されている。
【0015】
施療子ユニット1は、図6に示すように、施療子支持部材としてのアームベースプレート10と、たたき板11、施療子アーム12、第1アーム13、第2アーム14、ローラ型の2つの施療子1a,1b等からなるもので、アームベースプレート10は上記幅駆動軸31のねじ部に螺合する送りナット33と、上記スライドガイド軸32,32にスライド自在に嵌合するスライダー34,34とを備えて、幅駆動軸31の回転によって幅駆動軸31及びスライドガイド軸32の軸方向位置を変化させるものであり、また、幅駆動軸31に形成されたねじ部は、片側が逆ねじで形成されていることから、左右一対の施療子ユニット1における各アームベースプレート10,10は、幅駆動軸31の回転によって、互いに接近したり離れたりするものである。
【0016】
そして上記たたき板11はアームベースプレート10に軸着され、たたき板11に施療子アーム12と第2アーム14とが軸100によって軸着され、施療子アーム12に第1アーム13が軸101によって軸着されている。また、たたき板11に設けた軸102と、クランク軸である前記たたき駆動軸41とがリンク45によって連結されている。
【0017】
さらに2つの施療子1a,1bのうちの主施療子である施療子1aが先端部に取り付けられた第1アーム13と、副施療子である施療子1bが先端部に取り付けられた第2アーム14とが連動リンク15によって結合されている。また、アームベースプレート10と施療子アーム12から突出させた突片121とが揺動連動リンク19,18によって連結されている。尚、対をなす他方の施療子ユニット1は図示の施療子ユニット1の対称形となっている。
【0018】
上下に並ぶ一対の施療子1a,1bに掴み動作を行わせる掴み駆動部は、エアによって伸縮動作を行うアクチュエータA1で構成されており、一対の受け板20,20と両受け板20,20間に配されたエアバッグ21とからなるアクチュエータA1は、一方の受け板20が上記連動リンク18に、エアバッグカバーを備えた他方の受け板20が第2アーム14の先端部から突出させた突片141に夫々連結されて配設されている。連動リンク18と突片141とを連結しているリニアスライドレール17は、アクチュエータA1を伸張させた時にエアバッグ21が座屈してしまうことを防ぐためのものである。
【0019】
また、施療子ユニット1は、アクチュエータA1と同じく一対の受け板20,20と両受け板20,20間に配されたエアバッグ21とから構成されてエアによって伸縮動作を行うアクチュエータA2を備えている。このアクチュエータA2は、一方の受け板20が前記たたき駆動用のリンク45上に固定され、他方の受け板20が前記軸102によって回動自在に支持されたレバー16に取り付けられたもので、レバー16は施療子アーム12の後縁に接触するころ160を備えている。なお、図2中の95は上記アクチュエータA1,A2を作動させるためのエアポンプや電磁弁を納めたエア駆動ユニットである。
【0020】
以上のように構成された機構ユニットの動作について説明すると、まず上下駆動用モータ50で上下駆動軸51を駆動する時、機構ユニットは前述の椅子の背もたれ内を上下に自走して施療子1a,1bの位置を上下に変更する。また、強弱駆動用モータ60で強弱駆動軸61を駆動すれば、強弱駆動軸61が備えるギア63がギアプレート30を幅駆動軸31の軸回りに回転させるために、ギアプレート30と一体にアームベースプレート10が回転するものであり、このために図11に示すように幅駆動軸11から見た施療子1aの背もたれ前方への突出量が小さい状態と、図1に示すように幅駆動軸11から見た施療子1aの前方突出量が大きい状態とを得ることができる。つまり、施療子1aの前方突出量を変化させることによる強弱調整を行うことができる。また、幅駆動用モータ35によって幅駆動軸31を回転させる時、前述のように左右一対の施療子ユニット1,1は幅方向(左右方向)において接近離反し、左右の施療子1a,1a、1b,1bの間隔を変更する。
【0021】
ちなみにこのマッサージ機は、上記3つのモータ50,60,35による上記各動作を組み合わせることで、いわゆる揉みマッサージを実現しているものであり、図27〜図29にその例を示す。各図(a)はモータの動作状態を、各図(b)は施療子1a,1bの幅方向及び上下方向の動きを、各図(c)は施療子1a,1bの前方突出方向及び上下方向の動きを示している。なお、このような駆動制御を可能とするために、上下位置センサーS2や幅位置センサーS1などのほか、図8に示すように、強弱位置、各モータの回転速度(回転角度)等を検出するセンサを設けて、フィードバック制御を行っている。図8中の8はマイクロコンピュータからなる制御回路である。
【0022】
たたき駆動用のモータ40でクランク軸であるたたき駆動軸41を回転させる時、リンク45がたたき板11を前後方向に揺動させるものであり、たたき板11に施療子アーム12とアーム13,14を介して取り付けられた施療子1aは、前後に細かく動くたたき動作を行う。
【0023】
そしてアクチュエータA1を伸張させたならば、図12に示すように、施療子ユニット1の第2アーム14が押されて軸100を中心に回動すると同時に、連動リンク15によって第1アーム13が軸101を中心に逆方向に回動するものであり、このために各アーム13,14に設けられた施療子1a,1bは相互に接近して掴み動作を行う。特に施療子1aは軸100よりも前方側に位置している軸101を中心に回動する第1アーム13の先端に取り付けられているために、図12に示すように、強弱調整を強に設定した状態で肩を掴む時、施療子1aが肩を斜め前方側から人体の肩に当たって後方側に押し込み、施療子1bは人体背面を前方側に押し込むという動作を得ることができるものであり、このために肩を掴む(摘む)という動作をきわめて的確に行うことができる。なお、強弱調整を弱にした状態では、施療子1a,1bの前後方向位置はほぼ同じところとなるために、人体背面を上下から掴むという動作を得ることができる。
【0024】
また、施療子ユニット1における第1アーム13を備えた施療子アーム8と第2アーム14は、軸100によってたたき板11に軸着されて、図11(a)(b)や図1(a)(b)に示す範囲内で揺動自在となっていることから、上記掴み動作を含む各種マッサージ動作に際して、施療子1a,1bが共に人体の背面に接するように倣い動作を行うものであり、このために掴み動作にあたって施療子1a,1bが確実に人体をつまむことになる。なお、第2アーム14がアクチュエータA1によってアームベースプレート10に連結されているが、アクチュエータA1はアームベースプレート10に直接連結されるのではなく、揺動連動リンク18,19を介して連結されているために、アクチュエータA1が上記揺動を阻害してしまうことはない。
【0025】
前記掴み動作は、前述の上下駆動や幅駆動や強弱駆動と組み合わせて行うこともできる。つまり、人体の肩をつまんだ状態の施療子1a,1bを上方に移動させたり、人体の首側に寄せたりすることができる。
【0026】
アクチュエータA1を伸張させることは、上下に並ぶ施療子1a,1bの間隔を変更することになるために、人体をつまむことだけでなく、ある間隔で固定してしまうことで、たとえば揉みマッサージに際しての人体の押圧感覚を異ならせることにも用いることができる。また、エアバッグ21内の空気圧を調整することにより、さらに上記押圧感覚を変化させることができる。
【0027】
ここにおいて、第2アーム14の動きを第1アーム13に伝えて第1アーム13を第2アーム14とは逆方向に回動させる連動リンク15であるが、この連動リンク15の両アーム13,14との2つの連結点は、アクチュエータA1を縮めた通常時、図12(a)に示すように、ほぼ一直線上に並ぶようにしていることから、施療子1aのみが人体に接触するようにしている時、施療子1a側からの負荷外力によって、第1アーム13が回転してしまうということはない。
【0028】
また、軸100から第2アーム14における施療子1bの支持軸までの距離よりも、軸100から第2アーム14におけるアクチュエータA1が連結されている点までの距離の方を長くしているために、アクチュエータA1を伸張させるためのエアポンプが100kPa以下のエア圧力の家庭用の小さなものであっても、施療子1b,1aにおいて十分な掴み力を発生させることができるものとなっている。アクチュエータA1の直線的伸張をサポートする前記リニアスライドレール17の存在もエア圧力の利用の点において有効である。
【0029】
このほか、アクチュエータA1によって押されて第2アーム14が回動することで施療子1bが力Fで人体を押圧する時、リンク15の存在によって第1アーム13が逆方向に回動して施療子1aが力Pで人体を押圧することになるが、上記力Pが力Fとほぼ等しく(0.7F<P<1.3F)なるように、アーム13,14の長さや連動リンク15の連結点の位置を定めており、人体を施療子1a,1bでつかんだ時、施療子アーム12が大きく回動して力を損失してしまうという事態が生じないようにしている。
【0030】
下方側に位置する施療子1bは図15に示すように施療子1aよりも幅が短いものとすることも好ましい。具体的には2〜3倍の差を両者の幅に持たせる。人体の肩部を手指で掴む時、拇指を背中側に、他の指を肩の上面側に当てることになるが、この点を模したものとすることができる。
【0031】
次にアクチュエータA2を伸張させた時の動作について説明すると、このアクチュエータA2の伸張で前方側に向けて回動するレバー16は、ころ160によって施療子アーム12の後縁を押して施療子アーム12を回動させることで施療子1aを前方に移動させるとともに、空気ばねとしても機能するアクチュエータA2によって施療子アーム12をばね付勢する。この結果、図11や図1に示した施療子ユニット1における第1アーム13を備えた施療子アーム8と第2アーム14との揺動自在な範囲が実質的に狭められるものであり、アクチュエータA2を最も伸張させた時には、上記揺動の範囲が実質的にほぼゼロとなって、前述の倣い動作を行わないものとなる。この場合、施療子1aによってより強いマッサージを得ることができる。また、揺動の範囲を狭くしたとはいえ、大きな荷重がかかった時にはアクチュエータA2が縮むために、安全性の点でも優れたものとなっている。
【0032】
さらに、アクチュエータA2の伸張状態に応じて、上記倣い動作はエア圧によるばね付勢で荷重が加えられたものとなるために、施療子1a,1bを上下に移動させてさすりマッサージを行う場合、施療子1a,1bの負担割合が異なるマッサージをエア圧に応じて得ることができる。また、前述の掴み動作時も、人体の肩を掴む時、この荷重が加えられることで、肩の上面側に接触する施療子1aが逃げたりすることがなくなるために、より確実な掴みマッサージを得ることができる。更に図14に示すように、施療子1a,1bを下方に移動させる時、エア圧に応じた荷重値を越えた時に施療子アーム12が揺動を開始し、この結果施療子1aだけでなく施療子1bでも人体背面を押すことになる。
【0033】
なお、アクチュエータA2を最大に伸張させた時、上記ころ160と施療子アーム12との当接部には、レバー16を圧縮する方向の力が働くように施療子アーム12の後縁の形状を定めておくことで、アクチュエータA2が発生する力以上の荷重が施療子1a,1b側から施療子アーム12に働いた時もアクチュエータA2を伸張状態に保つことができる。
【0034】
また、第1アーム13を備えた施療子アーム8と第2アーム14との揺動自在な範囲の最大値は、施療子アーム12に設けたストッパ120によって定めており、また第2アーム14の施療子アーム12に対する回動範囲は、ストッパ140によって定めている。さらに、第2アーム14と施療子アーム12との間にはねじりコイルばね(図示せず)を配して、施療子1a,1bの間隔が広くなる方向に付勢している。
【0035】
このほか、アクチュエータA2を伸張させる時、強弱駆動によって強に設定されているならば、いったん強弱設定を弱の状態として、この状態でアクチュエータA2を伸張させ(図13(a)参照)、その後、強弱設定を強に戻して図13(b)に示す状態になるように制御している。これはエア圧がさほど高くなくても確実にアクチュエータA2を伸張させることができるようにするためであり、このように制御することで、使用者の体重や体形や使用状態といった不確定要素を低減して切替動作を確実にすることができる。
【0036】
図9及び図10はアクチュエータA1の駆動用であるエア駆動ユニット95の構成例を示しており、図9はアクチュエータA1(エアバッグ21)からの排気を自然排気で行うものを、図10はエアポンプ96の吸気によってエアバッグ21からの排気を強制排気で行うのを示している。後者の場合、施療子1a,1bを離間させる動作をより確実に行うことができる。なお、マッサージとしては、伸張のための給気よりも排気の方を速くすることが好ましい。
【0037】
図16は施療者側から施療子アーム12にかかる圧力を検出するための圧力検出部98を設けたものを示している。この場合、圧力検出部98で検出した圧力信号に基づいて強弱駆動部や幅駆動部、あるいは上下駆動部のうちの少なくとも一つ以上の駆動部に関して、その位置制御乃至速度制御の少なくとも一方をフィードバック制御することで、施療子アーム12の負荷圧力が常に予め設定した負荷圧力となるようにすることができる。
【0038】
図17及び図18に他例を示す。ここでは掴み駆動用のアクチュエータA1における一方の受け板20を第2アーム14に設けるとともに、他方の受け板20を施療子アーム8に取り付けており、またアクチュエータA2における一方の受け板20をリンク45に、他方の受け板20を施療子アーム12に取り付けている。
【0039】
このものにおいても、アクチュエータA1を伸張させたならば、第2アーム14とこれにリンク15で連結された第1アーム13とが相互に接近する方向に回動するために、施療子1a,1bによって掴み動作を得ることができる。また、アクチュエータA2を伸張させたならば、施療子アーム8が軸100を中心に回動する。なお、本例の場合、施療子1aを備えた第1アーム13とこれが設けられている施療子アーム8及び施療子1bを備えた第2アーム14の揺動が、アクチュエータA2による規制を受けた状態での動作となる点で、前記のものと相違する。
【0040】
図19〜図24に更に他例を示す。これは上記の両例におけるたたき板11及び施療子アーム12を廃止して、施療子1aを備えた第1アーム13を第2アーム14と同じく軸100で直接アームベースプレート10に軸着するとともに、アクチュエータA1を第1アーム13と第2アーム14との間に介在させ、更にアクチュエータA2をリンク45と第1アーム13との間に介在させたものである。このものでは、施療子1aを備えた第1アーム13と第2アーム14との図20に示す揺動は、アクチュエータA2による規制を受けた状態での動作となり、アクチュエータA2のエアバッグ21の内部空間を外部に開放した状態では、施療子1aを備えた第1アーム13と第2アーム14はアクチュエータA2を伸縮させつつ揺動することになるとともに、アクチュエータA2に給気して伸張させた時にはアクチュエータA2が上記揺動の時の施療子1aの後退に関してばね荷重を加えるものとなる。尚、たたき駆動軸41に一端を連結したリンク45は、その他端を第1アーム13に連結しているのであるが、他端の軸48を第1アーム13に設けた長孔49に係合させることで上記揺動を妨げることがないようにしている。
【0041】
また、アクチュエータA1を伸張させた時には、図22に示すように第2アーム14が回動して施療子1bが施療子1a側に接近し、更にアクチュエータA2を伸張させれば、図23に示すように第1アーム13と第2アーム14とが回動する。図24はアクチュエータA1を伸張させて掴み動作を行っている時にアクチュエータA2を伸張させた状態を示している。
【0042】
このものでは、アクチュエータA1の伸張で施療子1bのみが施療子1a側に接近する方向に駆動されることになるが、この移動時、施療子1bが人体に当接して第2アーム14の回動が止められると、第1アーム13側がアクチュエータA1の伸張に伴って回動して施療子1aが施療子1b側に接近する方向に移動することになるために、このものにおいても支障なく人体を掴む動作を行うことができる。また、強弱調整を弱の状態にすれば、人体背面を背後から掴む動作を、強弱調整を強の状態にすれば、人体の肩を上面と背後から掴む動作を行うことができ、さらに掴み動作時にアクチュエータA2を図24に示すように伸張させることで、人体の負荷に対して施療子1aが逃げてしまうことがなくて、効果的な掴み動作を行うことができる。
【0043】
図25及び図26に更に他例を示す。これは最初に示した実施例におけるアクチュエータA2に代えて、施療子アーム12における軸100よりも下方側の部分と機構ユニットにおけるフレーム上部との間に引っ張りばね88を懸架して、施療子アーム12を前方側に回動させる付勢力を加えたものである。この付勢力は、強弱調整によって可動ユニット全体を前方側に回動させて図26に示す状態とすることで強くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すもので、(a)(b)は強弱調整が強の時の倣い動作のための揺動についての説明図である。
【図2】同上の機構ユニット全体の斜視図である。
【図3】同上の可動ユニットの斜視図である。
【図4】同上の上下駆動部の斜視図である。
【図5】同上の強弱駆動部の斜視図である。
【図6】同上の施療子ユニットの分解斜視図である。
【図7】同上の機構ユニットを背もたれに内蔵した椅子の斜視図である。
【図8】同上のブロック回路図である。
【図9】同上のエア配管の一例を示す配管図である。
【図10】同上のエア配管の他例を示す配管図である。
【図11】(a)(b)は強弱調整が弱の時の倣い動作のための揺動についての説明図である。
【図12】(a)(b)は掴み動作の説明図である。
【図13】(a)(b)は同上のアクチュエータによる付勢動作についての説明図である。
【図14】(a)は施療子を下降させる時の動作説明図、(b)は付勢力と揺動力との関係を示す説明図である。
【図15】(a)(b)は夫々施療子の断面図である。
【図16】他の例のブロック回路図である。
【図17】他の例の可動ユニットの斜視図である。
【図18】同上の施療子ユニットの分解斜視図である。
【図19】更に他例の可動ユニットの斜視図である。
【図20】同上の側面図である。
【図21】(a)(b)は夫々第1アームと第2アームの斜視図である。
【図22】同上の掴み動作を示す説明図である。
【図23】同上の付勢力変更についての説明図である。
【図24】同上の複合動作の説明図である。
【図25】別の例の断面図である。
【図26】同上の断面図である。
【図27】揉み駆動動作の一例を示すもので、(a)はタイムチャート、(b)は施療子の上下及び幅方向動作の説明図、(c)は施療子の上下及び前後突出方向動作の説明図である。
【図28】揉み駆動動作の他例を示すもので、(a)はタイムチャート、(b)は施療子の上下及び幅方向動作の説明図、(c)は施療子の上下及び前後突出方向動作の説明図である。
【図29】揉み駆動動作の更に他例を示すもので、(a)はタイムチャート、(b)は施療子の上下及び幅方向動作の説明図、(c)は施療子の上下及び前後突出方向動作の説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1a 施療子
1b 施療子
10 アームベースプレート
12 施療子アーム
13 第1アーム
14 第2アーム
A2 アクチュエータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に並ぶ少なくとも2つの施療子を備えるとともに、これら施療子の前方側への突出量を施療子支持部材を回動させることで変化させる強弱駆動部を備えたマッサージ機であって、上記施療子支持部材に回動自在に支持されて施療子支持部材に対して揺動自在となっているアームに上記施療子が配設されていることを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
アームの揺動に対して上方側に位置する施療子が前方側に突出する方向への付勢力を与える付勢手段を備えているとともに、該付勢手段はその付勢力を可変としたものであることを特徴とする請求項1記載のマッサージ機。
【請求項1】
上下に並ぶ少なくとも2つの施療子を備えるとともに、これら施療子の前方側への突出量を施療子支持部材を回動させることで変化させる強弱駆動部を備えたマッサージ機であって、上記施療子支持部材に回動自在に支持されて施療子支持部材に対して揺動自在となっているアームに上記施療子が配設されていることを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
アームの揺動に対して上方側に位置する施療子が前方側に突出する方向への付勢力を与える付勢手段を備えているとともに、該付勢手段はその付勢力を可変としたものであることを特徴とする請求項1記載のマッサージ機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2006−34636(P2006−34636A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219300(P2004−219300)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]