説明

マッサージ機

【課題】使用者の左半身と右半身とのそれぞれにおいて、身長方向についての各部位に応じて施療子の動作方向を変化させることができるマッサージ機を提供する。
【解決手段】左側の施療子3,4を動作させる第一駆動手段と、この施療子3,4の動作方向を変更する第一動作方向変更手段とを有している左側の第一施療機構1と、右側の施療子3,4を動作させる第二駆動手段と、この施療子3,4の動作方向を変更する第二動作方向変更手段とを有している右側の第二施療機構1と、第一施療機構1を搭載した第一マッサージユニット44aと、第二施療機構1を搭載した第二マッサージユニット44bとをそれぞれ独立して昇降させる昇降手段とを備えている。昇降手段によって第一及び第二マッサージユニット44a,44bをそれぞれ昇降させた位置に応じて、左側の施療子3,4の動作方向と右側の第二施療子3,4の動作方向とを変更させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のマッサージ機として知られているものに、施療子を有した左側のマッサージユニットと、施療子を有した右側のマッサージユニットとを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のマッサージ機は、左側のマッサージユニットと右側のマッサージユニットとを個別に昇降させたり、左側の施療子と右側の施療子とのそれぞれに相互で異なるマッサージ運動を行わせたりすることができる。すなわち、左側のマッサージユニットでは肩を、右側のマッサージユニットでは背中や腰をマッサージすることができ、また、左右で異なるマッサージ運動として、左側のマッサージユニットでは揉み運動を行い、右側のマッサージユニットでたたき運動を行うことができる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−144505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のマッサージ機では、例えば左側のマッサージユニットにおいて、施療子を上位置として所定のマッサージ運動させた場合と、その施療子を下位置としてそれと同じマッサージ運動させた場合とで、施療子の動作軌跡(動作方向)は変化しない構成である。例えば、左側のマッサージユニットにおいて、肩部を揉み運動させる場合と、腰部を揉み運動させる場合とで、施療子の動作軌跡は同じである。したがって、この揉み運動のための施療子の動作軌跡は、肩部に対しては施療効果の高い有効な動作であっても、腰部においては不十分となることも考えられる。また、使用者の好みによっては、左右それぞれの肩部に対して同じマッサージを行う場合、例えば、左右それぞれの肩部に対して揉みマッサージを行う場合であっても、左肩と右肩とで施療子の動作軌跡(動作方向)を変化させたいと思うことも考えられる。
【0005】
そこで、この発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、使用者の左半身と右半身とのそれぞれにおいて、身長方向についての各部位に応じて施療子の動作方向を変化させることができるマッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するためのこの発明は、左側の施療子と、この施療子を動作させる第一駆動手段と、前記施療子の動作方向を変更する第一動作方向変更手段とを有している左側の第一施療機構と、右側の施療子と、この施療子を動作させる第二駆動手段と、前記施療子の動作方向を変更する第二動作方向変更手段とを有している右側の第二施療機構と、前記第一施療機構を搭載した第一マッサージユニットと前記第二施療機構を搭載した第二マッサージユニットとをそれぞれ独立して昇降させる昇降手段と、この昇降手段によって前記第一及び第二マッサージユニットをそれぞれ昇降させた位置に応じて、前記第一動作方向変更手段と前記第二動作方向変更手段とを利用して前記左側の施療子の動作方向と前記右側の施療子の動作方向とを変更させる制御手段とを備えているものである。
【0007】
このマッサージ機によれば、左側の第一施療機構と右側の第二施療機構とにおいて同じマッサージ動作を行う場合であっても、制御手段は、第一及び第二マッサージユニットがそれぞれ昇降した位置に応じて、左側の第一施療機構と右側の第二施療機構とのそれぞれにおいて、施療子の動作方向を変更することができる。すなわち、使用者の左半身において身長方向の各部位に対して適した方向に、第一施療機構の施療子を動作させることができ、かつ、右半身において身長方向の各部位に対して適した方向に、第二施療機構の施療子を動作させることができる。
【0008】
また、前記マッサージ機において、前記第一施療機構及び前記第二施療機構のそれぞれは、前記施療子を先端部に取り付けているアームを有した施療本体部を備え、前記第一動作方向変更手段及び第二動作方向変更手段のそれぞれは、前記施療本体部を使用者側に延びる回転軸心回りに回転させる旋回手段であるのが好ましい。これにより、第一施療機構において、施療本体部を使用者側に延びる回転軸心回りに回転させることで施療子の動作方向を変更でき、第二施療機構において、施療本体部を使用者側に延びる回転軸心回りに回転させることで施療子の動作方向を変更できる。
【0009】
また、前記マッサージ機において、左右方向に二つに振り分けられかつ上下方向に沿って延びるように設けられた左右のガイド通路を有し、左側の前記ガイド通路に前記第一マッサージユニットが設けられ、右側の前記ガイド通路に前記第二マッサージユニットが設けられ、一つのガイド通路にある前記第一マッサージユニットと前記第二マッサージユニットとのうちの一方の前記施療機構を他のガイド通路側へ進入させて当該施療機構による左右方向のマッサージ領域を切り換える領域変更手段を、前記第一マッサージユニットと前記第二マッサージユニットとはそれぞれ備えているのが好ましい。これによれば、第一施療機構を左側から中央部や右側へ移動させることができ、また、第二施療機構を右側から中央部や左側へ移動させることができる。これにより、マッサージユニットのそれぞれにおいて、マッサージ可能な範囲を左右方向で広げることができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明のマッサージ機によれば、使用者の左半身において身長方向の各部位に対して適した方向に、第一施療機構の施療子を動作させることができ、かつ、右半身において身長方向の各部位に対して適した方向に、第二施療機構の施療子を動作させることができる。したがって、使用者の左半身と右半身とで筋繊維の方向は異なり、また、身長方向の各部位で筋繊維の方向は異なるが、このマッサージ機によれば、左半身と右半身とのそれぞれにおいて、身長方向の各部位に対して施療効果の高いマッサージが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
〔マッサージ機の全体構成〕
図1はこの発明のマッサージ機の実施の一形態を示す斜視図である。このマッサージ機は、使用者の身体を支持する身体支持体として、使用者がもたれる背もたれ部41と、使用者が着座する座部42と、脚を載せるフットレスト43とを備えており、椅子型のものである。そして、背もたれ部41内に左右一対のマッサージユニット44が設けられており、各マッサージユニット44は一つの施療機構1を備えている。各マッサージユニット44はフレーム8を備えており、このフレーム8に一つの施療機構1が取り付けられている。各施療機構1において、使用者の身体側に施療子3,4が設けられており、これら施療子3,4が動作することによって、使用者の身体(被施療部)に対してマッサージを行うことができる。なお、座部42、フットレスト43についても、使用者に対してマッサージを行う別の施療機構46,47が設けられている。
【0012】
背もたれ部41内において、上下方向に三本のガイドレール31が設けられており、これらガイドレール31により、左右一対のガイド通路45a,45bが設けられている。ガイド通路45a,45bは、左右方向に振り分けられかつ背もたれ部41の長手方向(上下方向)に沿って延びるようにして設けられている。そして、左右のガイド通路45a,45bのそれぞれにおいてマッサージユニット44が一つずつ独立して、使用者の身長方向(背もたれ部41の長手方向)に移動可能に設けられており、昇降手段(移動手段:図示せず)が第一マッサージユニット44aと第二マッサージユニット44bとをそれぞれ独立して昇降させる。
【0013】
つまり、左側のガイド通路45aに一つのマッサージユニット44aが設けられており、右側のガイド通路45bに一つのマッサージユニット44bが設けられている。そして、昇降手段の駆動力によって左側のガイド通路45aに沿って一つのマッサージユニット44aが上下に移動し、この左側のマッサージユニット44aとは独立して、昇降手段の駆動力により右側のガイド通路45bに沿ってマッサージユニット44bが上下に移動する。
【0014】
〔施療機構及びマッサージユニット〕
左側のマッサージユニット44aに搭載している施療機構1と右側のマッサージユニット44bに搭載している施療機構1とは構成が同じである。図2は一つの施療機構1の実施の一形態を示す斜視図であり、図3はこの施療機構1の本体側の部分を側方から見た断面図であり、図4はこの施療機構1を側方から見た側面図である。図5は図3と図4との施療機構1の背面図である。図6は施療機構1の正面図であり、使用者側から施療機構1を見た図である。なお、図5(a)〜(d)と図6(a)〜(d)とは施療機構1の動作を説明する図である。
【0015】
図2と図3と図4とにおいて、施療機構1は、先端部11aに施療子(第一施療子)3が取り付けられた第一アーム11と、先端部12aに別の施療子(第二施療子)4が取り付けられた第二アーム12と、これら第一アーム11と第二アーム12とを動作させるための駆動手段5と、この駆動手段5の動力を第一アーム11と第二アーム12とに伝える偏心カム7と、第一アーム11と第二アーム12とを連結しているリンク部材13とを備えている。この施療機構1において、施療子3,4が設けられている側(図の上側)が前方の使用者側であり、その反対側(図の下側)が後方側となる。また、この発明において、右側とは、背もたれ部41にもたれて座った使用者の右側であり、左側とは、この使用者の左側である。また、図1において、背もたれ部41における下側は座部42側であり、上側は使用者の頭部乃至首部を支持する側である先端部側である。なお、説明を容易とするために図4の側面図では第二アーム12と施療子4とを二点鎖線で示しており、図3の断面図ではさらに第一アーム11と施療子3とを一点鎖線で示し、リンク部材13を破線で示している。
【0016】
施療子3,4はゴム製や樹脂製等のモミ玉(ローラ)であり、それぞれの中心線回りに回転自在として各アーム11,12に取り付けられている。第一施療子3と第二施療子4とは同じものであってもよいが、両者の形状(大きさ)を相異させている。第二施療子4を第一施療子3よりも小さくしていることで、第二施療子4を人の手の親指に見立てることができ、第一施療子3を親指以外の他の複数本の指に見立てることができる。
【0017】
図3と図4とにおいて、駆動手段5は、ボディ部材9と、このボディ部材9に取り付けられたモータ5b及びウォーム減速器からなる減速部5dと、ボディ部材9内に回転自在に設けられたギア付きの単一の駆動軸5aとを有している。モータ5bによる回転は減速部5dで減速され駆動軸5aに伝わる。なお、図示していないが、モータ5bの出力軸と減速部5dの入力軸との間には動力伝達用のベルトが架けられている。駆動軸5aはモータ5bの回転によって使用者側へ延びる軸心C2回りに回転駆動する。そして、後に詳しく説明するが、この単一の駆動軸5aの回転動力が第一アーム11と第二アーム12との両者に伝達する。すなわち、この施療機構1は、第一アーム11と第二アーム12とを動作させるための単一の駆動手段5を備えており、この駆動手段5は回転駆動する単一の駆動軸5aを有している構成となる。また、ボディ部材9には揺動軸10が取り付けられている。揺動軸10の軸心C1と駆動軸5aの軸心C2とは平行であり、揺動軸10は軸心C1回りに回転自在としてボディ部材9に取り付けられている。また、図3において、揺動軸10は、その一端部10aにピン10dが設けられており、他端部10bに取付部材10cを固定している。
【0018】
図3と図5とにおいて、偏心カム7は、駆動軸5aの一端部5cに外嵌固定した円板形状の第一部材7aと、この第一部材7aの外周側に軸受(ころがり軸受)14を介して設けた略円環形状の第二部材7bとを有している。第一部材7aの中心線C4は駆動軸5aの軸心C2と平行であるが偏心している。第二部材7bは第一部材7aの中心線C4を中心として当該第一部材7aに対して回転自在である。第二部材7bは円環形状の部分から突出している取付部7cを有している。
【0019】
図3と図4と図6とにおいて、第一アーム11は、一対の対向する側壁部材15a,15aと、これら側壁部材15a,15aを先端部側において連結している連結部材15bとを有しており、この連結部材15bに単一の第一施療子3が取り付けられている。そして、第一アーム11は、その基端部11bにおいて、偏心カム7の取付部7cに設けたピン7dにより回動自在に取り付けられている。また、第一アーム11は、その途中部11cにおいて、前記揺動軸10の一端部10aに設けたピン10dにより回動自在に取り付けられている。
【0020】
第二アーム12は、一対の対向する側壁部材16a,16aと、これら側壁部材16a,16aを先端部側において連結している連結部材16bとを有しており、この連結部材16bに単一の第二施療子4が取り付けられている。そして、第二アーム12は、その基端部12bにおいて、前記揺動軸10の取付部材10cに設けたピン10eにより回動自在に取り付けられている。そして、第二施療子4と第一施療子3とは対向した配置となる。
【0021】
リンク部材13は板状の部材であり、第一アーム11の側壁部材15aと第二アーム12の側壁部材16aとの間に設けられており(図6参照)、両アーム11,12を連結している部材である。図3と図4とにおいて、リンク部材13の一端部13aは、第一アーム11の別の途中部11dと、ピン13cにより回動自在に取り付けられており、リンク部材13の他端部13bは、第二アーム12の途中部12cと、ピン13dにより回動自在に取り付けられている。
【0022】
以上の構成により、リンク部材13によって繋がっている第一アーム11と第二アーム12とは、揺動軸10の使用者側へ延びる軸心(揺動軸心)C1回りに一体的に揺動可能となる。
さらに、第一アーム11は前記ピン10dの軸心(第一揉み軸心C5)回りに回動可能となり、かつ、第二アーム12は前記ピン10eの軸心(第二揉み軸心C6)回りに回動可能となる。第一揉み軸心C5と第二揉み軸心C6とは平行であり、また、これら揉み軸心C5,C6は、揺動軸心C1に直交する仮想直線(図示せず)に平行である。そして、第一アーム11を第一揉み軸心C5回りに回動させて第二アーム12に対して接近離反させると、リンク部材13により、第二アーム12を第二揉み軸心C6回りに回動させて第一アーム11に対して接近離反させることができる。これにより、第一アーム11と第二アーム12とは同時に相互が接近する動作を行ったり、同時に相互が離反する動作を行ったりすることができ、両アーム11,12の先端部11a,12aに取り付けた施療子3,4同士が接近離反する。
【0023】
したがって、駆動手段5の駆動軸5aが軸心C2回りに回転すると、図5(a)〜(d)に示しているように、偏心カム7の第二部材7bは自転することなく軸心C2回りに偏心した状態で公転する偏心運動が生じる。この偏心運動は、図5(a)と図5(c)とに示しているように、第二部材7bをこの図の左右方向に往復動させる成分を有している。そして、図3と図4とに示しているように、この往復動する第二部材7bの一部にある取付部7cに、第一アーム11と第二アーム12とのうちの一方である第一アーム11のみが取り付けられているため、この第一アーム11を第一揉み軸心C5回りに往復回動させることができる。これにより、図6(a)と図6(c)とに示しているように、第一アーム11の施療子3は第二アーム12の施療子4に対して接近したり離反したりする。そして、この第一アーム11が第一揉み軸心C5回りに往復回動することで、リンク部材13により、第二アーム12を第二揉み軸心C6回りに往復回動させることができる。これにより、第二アーム12の施療子4は第一アーム11の施療子3に対して接近したり離反したりする。
【0024】
さらに、偏心カム7の第二部材7bの偏心運動により、図5(a)(b)(c)(d)に示しているように、第二部材7bは軸心C2回りに一方向に回る円運動を行っている。この円運動を行っている第二部材7bの取付部7cに、第一アーム11が取り付けられているため、この第一アーム11を揺動軸心C1回りに往復揺動させることができる。これにより、図6(a)(b)(c)(d)に示しているように、第一アーム11の施療子3を揺動軸心C1回りに往復揺動させることができる。そして、この第一アーム11が揺動軸心C1回りに往復揺動することで、リンク部材13により、第二アーム12についても揺動軸心C1回りに往復揺動させることができる。これにより、第二アーム12の施療子4を揺動軸心C1回りに往復揺動させることができる。つまり、第一アーム11と第二アーム12とは揺動軸心C1の回りを同じ方向に一体的に往復揺動する。
【0025】
すなわち、偏心カム7は、駆動軸5aの回転運動を、第一アーム11と第二アーム12とを使用者側へ延びる揺動軸心C1回りに揺動させる運動と、第一アーム11と第二アーム12との先端部11a,12a同士を接近離反させる運動とに変換する変換部材として機能している。
【0026】
以上のように、この施療機構1によれば、駆動手段5において単一のモータ5bによって単一の駆動軸5aを回転駆動させることで、偏心カム7により、第一アーム11の施療子3と第二アーム12の施療子4とを使用者側へ延びる揺動軸心C1回りに揺動させる運動と、この揺動に合わせてこれら施療子3,4を接近離反させる運動とを同時に行うことができる。これにより、使用者の被施療部に対して、対向して配設した両施療子3,4は接近離反すると同時に、使用者側へ延びる揺動軸心C1回りに揺動する「捏ね挟み揉みマッサージ」が可能となる。そして、単一の駆動手段5によって両施療子3,4に捏ね挟み揉みを行わせる構成が得られるため、施療機構1を小型化することができる。
【0027】
さらに、リンク部材13によれば、単一の偏心カム7が第一アーム11を動作させることによって第二アーム12を同時に動作させることができる。このため、施療機構1の構成を簡素化することができ、施療機構1を小型化することができる。また、駆動軸5aの軸心C2と揺動軸10の揺動軸心C1とは平行であるため、軸心C2と揺動軸心C1とが同じ方向を向く。これにより、偏心カム7によって、駆動軸5aの回転運動を、第一アーム11と第二アーム12との揺動軸心C1回りの揺動運動に変換しやすい構造となり、施療機構1の構成の簡素化及び小型化が図れる。
そして、図1に示しているように、この椅子型マッサージ機の背もたれ部41内において、二機のマッサージユニット44a,44bが昇降可能として設けられているものであるが、施療機構1を小型化することができるため、背もたれ部41内にこの施療機構1を有するマッサージユニット44を二機設けやすくなる。
【0028】
また、図2に示しているように、この施療機構1は施療本体部2として、第一施療子3と、第二施療子4と、第一アーム11と、第二アーム12と、駆動手段5と、リンク部材13とを有している。さらに、施療機構1は、この施療本体部2を取り付けている支持部材17を備えている。支持部材17は、前記揺動軸心C1(図3、図4参照)に直交する仮想直線(図示せず)に平行な角度変更用の軸心C7回りに揺動可能として、施療本体部2を取り付けている。なお、この角度変更用の軸心C7は、前記第一揉み軸心C5と第二揉み軸心C6とに平行である。
【0029】
支持部材17は、施療子3,4と反対側の後方側にある平盤状の基端部17aと、この基端部17aの両縁部から対向するように立設した一対の側壁部17b,17bと、基端部17aよりもさらに後方側にあるベース部材17cとを有している。側壁部17b,17bは施療本体部2(第二アーム12)を挟む配置にある。そして、側壁部17b,17bの先端部間にピン18が設けられており、このピン18に、施療本体部2が当該ピン18の軸心回りに揺動自在として取り付けられている。具体的に説明すると、駆動手段5のボディ部材9に取付部9bが設けられており、この取付部9bにおいて施療本体部2がピン18により揺動自在として取り付けられている。そして、このピン18の軸心が前記角度変更用の軸心C7である。これにより、施療本体部2は支持部材17に対してピン18の軸心C7回りに揺動自在となる。
【0030】
そして、この施療機構1は、角度変更用の軸心C7を中心として施療本体部2の角度を調整する角度調整手段26をさらに備えている。角度調整手段26は、施療本体部2側に設けられたラック部材19と、支持部材17側に設けられた歯部材20と、この歯部材20と共に支持部材17側に設けられた(第一の)アクチュエータ21とを有している。ラック部材19は、ボディ部材9の後方側において複数の歯が連続して形成されている部材である。このラック部材19は前記ピン18の軸心C7を中心とする円の一部(円弧)に沿って複数の歯を有している。なお、ラック部材19の複数の歯は、軸心C7を中心とする円の少なくとも一部に設けられていればよい。一方、歯部材20は、支持部材17の基端部17aに取り付けられており、ラック部材19の歯に噛合することができる。アクチュエータ21はこの歯部材20を動作させるものである。
【0031】
図2に示している歯部材20は、ラック部材19に噛合する位置と、その噛合が解除される位置とに位置変化可能として基端部17aに設けられている。そして、支持部材17に取り付けたアクチュエータ21によって、歯部材20をラック部材19に対して位置変化させる。アクチュエータ21は種々の形式を採用できるが、例えば、図16に示しているように、アクチュエータ21を、突出部材21aを進退駆動させるソレノイド式のものとし、歯部材20に取り付けた動作部材20aをアクチュエータ21が動作させることにより、歯部材20を位置変化させる構成とすることができる。具体的には、図16(a)のように、歯部材20をラック部材19から離反させる方向へ弾性力を付与する弾性部材(図示せず)を歯部材20と共に設け、アクチュエータ21が動作しない状態では突出部材21aが動作部材20aを押圧せず、歯部材20とラック部材19とが離反した状態になっている。そして、図16(b)のように、アクチュエータ21が動作して突出部材21aが動作部材20aを押すことにより、前記弾性部材の弾性力に抗して歯部材20をラック部材19に接近させ、両者が噛み合った状態に切り換えることができる。なお、アクチュエータ21を支持部材17のうちの側壁部17bに取り付けることができるが、この図16では説明のためにその側壁部を省略している。
【0032】
これによれば、ソレノイド式によるアクチュエータ21が歯部材20を移動させてラック部材19との噛合を解除すれば、施療本体部2は支持部材17に対して軸心C7回りに自由に揺動できる。これにより、施療本体部2の角度を自由に変更、調整することができる。なおこの場合において、施療本体部2の角度の変更は図示しない別の駆動手段を利用して行うことができる。そして、施療本体部2を支持部材17に対して任意の揺動位置(揺動角度)とし、アクチュエータ21を機能させない状態にすると、前記弾性部材により歯部材20をラック部材19に噛合させることができる。これにより支持部材17に対する施療本体部2の揺動を規制することができる。このように、角度調整手段26を利用することで、軸心C7を中心として施療本体部2の角度を調整することができ、使用者の被施療部に対する施療子3,4の接触状態(接触角度)を変更できる。そして、アクチュエータ21をソレノイド式のものとすれば、歯部材20の位置変化を迅速に行うことができ、かつ、施療機構1の小型化が図れる。この形態の角度調整手段26は、支持部材17に対する施療本体部2の揺動を許容するロック解除状態と、所定の揺動位置にある施療本体部2の揺動を規制するロック状態とに切り換えるロック手段として機能することができる。
【0033】
また、歯部材20の変形例としては、図示省略するが、ラック部材19に噛合するピニオンとできる。この場合、支持部材17には、このピニオンを正逆回転駆動させる駆動手段(減速機付きモータ)を設け、この駆動手段の回転により前記ピニオンを回転させ、ラック部材19を有する施療本体部2を前記ピン18の軸心C7回りに揺動させることができる。これにより、施療本体部2を任意の角度に変更、調整することができ、駆動手段を停止させ、その状態を維持することにより、施療本体部2を所定の角度に保持することができる。これにより、使用者の被施療部に対する施療子3,4の接触状態(接触角度)を変更でき、施療子3,4を所望の姿勢とすることができる。
【0034】
図7は施療機構1の側面図であり、図8はこの施療機構1の背面図(後面図)である。施療機構1の前記支持部材17は、第一アーム11と第二アーム12とを有している前記施療本体部2を使用者側へ延びる回転軸心C3回りに旋回自在に取り付けている。そして、施療機構1は、この施療本体部2を支持部材17において回転軸心C3回りに旋回駆動する旋回手段6をさらに備えている。これを具体的に説明する。支持部材17において、ベース部材17cは、基端部17a及び側壁部17b,17bを回転軸心C3回りに回転自在に取り付けている。図8において、基端部17aは後方側へ突出し回転軸心C3を中心とした軸部22を有しており、この軸部22はベース部材17cに形成した孔(図示せず)を貫通している。そして、この軸部22に、回転軸心C3を中心とする円の一部(円弧)に沿って複数の歯が形成された第一の歯部材(歯車部材)23が取り付けられている。なお、この第一の歯部材23の複数の歯は、回転軸心C3を中心とする円の少なくとも一部に沿って設けられていればよく、図示しないが、円の全周にわたって設けてもよい。これにより、支持部材17の基端部17a及び側壁部17b,17bに支持されている施療本体部2と、第一の歯部材23とは共に回転軸心C3回りに旋回することができる。そして、ベース部材17cには、第一の歯部材23に噛合する第二の歯部材(以下、ラック部材という)24と、このラック部材24を動作させる(第二の)アクチュエータ25とが設けられている。
【0035】
アクチュエータ25は、ベース部材17cに固定のモータ25aと、ベース部材17cに設けられモータ25aの正逆回転により正逆回転駆動するネジ軸25bと、このネジ軸25bに螺合しているナット部材25cとを有している。モータ25aの出力軸とネジ軸25bの端部との間には動力伝達用のベルト25dが介在している。ベース部材17cにはネジ軸25bに平行な方向に延びるガイド部(図示せず)が設けられており、ナット部材25cはこのガイド部に誘導される。したがって、ネジ軸25bの正逆回転によりナット部材25cは当該ネジ軸25bに沿って直線的に往復移動することができる。そして、ナット部材25cに前記ラック部材24が固定されており、ナット部材25cが往復直線移動することでラック部材24が往復直線移動し、このラック部材24に噛合する第一の歯部材23と軸部22とが回転軸心C3回りに略90°往復回転する。これにより、支持部材17の基端部17a及び側壁部17b,17bは回転軸心C3回りに往復回転し、この側壁部17b,17bによって支持されている施療本体部2は、回転軸心C3回りに往復回転することができる。このように旋回手段6を、歯部材23と、ラック部材24と、アクチュエータ25とを備えた構成とすることができる。
【0036】
この旋回手段6によれば、第一アーム11と第二アーム12とを有している施療本体部2を回転軸心C3回りに旋回させることで、第一アーム11と第二アーム12とが相互に接近離反する方向(挟み揉みの方向)を変更できる。すなわち、図7において、第一施療子3と第二施療子4との接近離反方向は左右方向であったが、施療本体部2を90°旋回させた場合、第一施療子3と第二施療子4との接近離反方向を、図7において90°変更することができる。
なお、この旋回手段6では、旋回角度を360°とすることができる。この場合、第一の歯部材23において全周に歯を形成し、ラック部材24及びネジ軸25bを長くすればよい。
また、旋回手段6の変形例として、図示しないが、全周歯の第一の歯部材23と、この歯部材23に噛合する第二の歯部材として全周歯の歯車を用い、この第二の歯部材をアクチュエータ(減速機付きモータ)によって回転駆動させればよい。この場合、旋回角度を0°〜360°さらには360°以上とすることもできる。
【0037】
また、このマッサージ機は、前記施療機構1を備えたマッサージユニット44(図1参照)を昇降させる昇降手段(図示せず)を備えている。マッサージユニット44は、背もたれ部41内においてガイド通路45を構成するガイドレール31に沿って、上下に移動自在であり、昇降手段がマッサージユニット44を昇降させる。昇降手段はモータなどを有する駆動部を備えており、椅子型マッサージ機が備えている制御手段からの動作信号に基づいて昇降手段は動作する。図1の形態では、左右に二機のマッサージユニット44a,44bが設けられているが、これらマッサージユニット44a,44bのそれぞれが昇降手段を有している。これにより、マッサージユニット44a,44bのそれぞれは独立して昇降することができる。
【0038】
図9はマッサージユニット44の正面図である。昇降手段は種々の形式を採用することができるが、例えば図9に示しているように、マッサージユニット44のフレーム8に、モータ(図示せず)を有する昇降手段27を搭載させ、マッサージユニット44がガイド通路45を自走する構成とすることができる。つまり、図9において、略矩形状のフレーム8の左右両側のそれぞれに上下一対のローラ30を回転可能として取り付け、これらローラ30がガイドレール31に沿って転動する。そして、合計4個のローラ30の少なくとも一つ(図9では2つのローラ30a)を、フレーム8に搭載したモータ(図示せず)によって回転駆動させる。この駆動ローラ30aが前記ガイドレール31を走行駆動することによって、マッサージユニット44は移動することができる。この場合において、駆動ローラ30aの外周面に歯を形成し、また、ガイドレール31にこの駆動ローラ30aの歯が噛み合うラック部を形成するのが好ましい。
【0039】
さらに、各マッサージユニット44は、施療機構1を左右方向に移動させ施療子3,4による左右方向のマッサージ領域を変更できる領域変更手段29を備えている。領域変更手段29は、フレーム8に対して施療機構1を左右方向に移動させることができる左右方向の移動手段であり、図示しないが、例えば、フレーム8に設けられ施療機構1を左右方向に移動可能に支持している支持部材と、この支持部材に誘導させて施療機構1を左右方向に移動させるアクチュエータとを有している構成とすることができる。なお、支持部材は施療機構1を左右方向に真っ直ぐに移動させる構成であってもよく、又は使用者側へ延びる軸心回りに施療機構1を揺動させることで当該施療機構1の左右方向の位置を変更するものであってもよい。この領域変更手段29は、マッサージ機が備えている制御手段の動作信号に基づいて施療機構1を左右方向に移動させ、施療機構1の左右方向の位置を変更することができる。
【0040】
以上の構成により、左右のマッサージユニット44a,44bのそれぞれにおいて、施療機構1は対向して配設した施療子3,4によって被施療部を挟む、挟み揉み(捏ね挟み揉み)を行うことができる。そして、角度調整手段26は施療機構1内において施療本体部2の傾斜角度を変更することによって施療子3,4の姿勢を変更することができ、また、旋回手段6は施療本体部2を旋回させることによって施療子3,4によるマッサージ動作の方向を変更することができる。さらに、領域変更手段29は施療機構1の左右方向の位置を変更することによって、施療子3,4によってマッサージを行うマッサージ対象部位を左右方向について変更することができる。また、昇降手段27はこの施療機構1を搭載しているマッサージユニット44a,44bのそれぞれを独立して昇降させることができ、施療子3,4によってマッサージを行うマッサージ対象部位を上下方向について変更することができる。
【0041】
〔マッサージ動作〕
図15はこの発明の椅子型マッサージ機のブロック図である。第一マッサージユニット44a及び第二マッサージユニット44bのそれぞれにおいて、施療子3,4による捏ね挟み揉みによるマッサージ及び後述するその他のマッサージは、この椅子型マッサージ機が備えている制御手段28からの動作信号に基づいて行われる。つまり、制御手段28は、駆動手段5、旋回手段6、角度調整手段26、昇降手段27及び領域変更手段29の各動作を制御している。この制御手段28はマイコンからなり、所定の各機能を実行するプログラムを格納した記憶部(メモリ)を備えている。制御手段28は、使用者が操作するコントローラ32の指令信号を受け、これに基づいて各機能を実行する。
【0042】
図1に示しているように、背もたれ部41に、施療機構1をそれぞれ有している二機のマッサージユニット44a,44bが昇降可能として設けられており、マッサージユニット44a,44bのそれぞれが独立して昇降することができることから、二機のマッサージユニット44a,44bの高さ方向についての位置をそれぞれ異ならせることができる。これにより、使用者の高さ方向(身長方向)で異なる部位に対してマッサージが可能となる。例えば、制御手段28の動作信号に基づき、左側の第一マッサージユニット44aの施療機構1が使用者の左側腰部に対して捏ね挟み揉みによるマッサージを行い、これと同時に、右側の第二マッサージユニット44bの施療機構1が使用者の右側肩部に対して捏ね挟み揉みによるマッサージを行うことができる。
【0043】
また、左側の第一マッサージユニット44aは第一の施療機構1を搭載しており、既に説明したように(例えば図7参照)、この第一の施療機構1は、施療子3及び施療子4を先端部にそれぞれ取り付けた第一アーム11及び第二アーム12等を有している施療本体部2と、この施療本体部2を使用者側に延びる左側の回転軸心C3回りに旋回させる旋回手段6とを備えている。そして、第一アーム11の施療子3と第二アーム12の施療子4とが相互で接近離反する方向を、左側の旋回手段6は変更できることから、左側の施療子3,4の動作方向を変更させる第一の動作方向変更手段として機能している。
【0044】
これと同様に、右側の第二マッサージユニット44bは、第一の施療機構1と同じ構成である第二の施療機構1を搭載している。そして、この第二の施療機構1においても、施療本体部2と、この施療本体部2を使用者側に延びる右側の回転軸心C3回りに旋回させる旋回手段6とを備えている。そして、第一アーム11の施療子3と第二アーム12の施療子4とが相互で接近離反する方向を、右側の旋回手段6は変更できることから、右側の施療子3,4の動作方向を変更させる第二の動作方向変更手段として機能している。
【0045】
これにより、左側の第一施療機構1において、施療本体部2を使用者側に延びる左側の回転軸心C3回りに回転させることで左側の一対の施療子3,4の動作方向を変更でき、また、右側の第二施療機構1において、施療本体部2を使用者側に延びる右側の回転軸心C3回りに回転させることで右側の一対の施療子3,4の動作方向を変更でき、制御手段28は、左側及び右側それぞれの施療子3,4の動作方向を任意に設定できる。
【0046】
そして、左右のマッサージユニット44a,44bをそれぞれ前記昇降手段27によって昇降させた位置に応じて、制御手段28は、左側の前記第一動作方向変更手段(旋回手段6)と右側の前記第二動作方向変更手段(旋回手段6)とを利用して、左側の一対の施療子3,4の動作方向と右側の一対の施療子3,4の動作方向とを変更させることができ、また、左側の第一施療子3,4の動作方向と右側の第二施療子3,4の動作方向とを相異させることができる。
【0047】
これについて具体的に説明する。第一マッサージユニット44aの昇降手段27は、当該第一マッサージユニット44aの高さ方向の位置についての情報を制御手段28に与えることができる。さらに、制御手段28からの動作信号に基づいてこの昇降手段27は所定量について動作し第一マッサージユニット44aを所定の高さ位置とする制御が可能である。また、第一動作方向変更手段となる旋回手段6のアクチュエータ25(図8参照)は、回転軸心C3を中心とする施療本体部2の旋回角度(旋回位置)についての情報を制御手段28に与えることができる。つまり、制御手段28では施療子3,4の動作方向(挟み方向)についての情報がわかる。さらに、制御手段28からの動作信号に基づいてこの旋回手段6は所定量について動作し施療本体部2を所定の旋回角度とする制御が可能である。同様に、第二マッサージユニット44bにおいても、制御手段28は、当該第二マッサージユニット44bの昇降手段27及び旋回手段6を制御することが可能である。このような構成は、例えば、昇降手段27及び旋回用のアクチュエータ25が、駆動用のモータ(図示せず)をサーボモータとしているサーボ機構を備えていることにより実現できる。
【0048】
これにより、左側の第一マッサージユニット44aと右側の第二マッサージユニット44bとで例えば同じマッサージ動作(例えば捏ね挟み揉み)を行う場合であっても、制御手段28は、左右のマッサージユニット44a,44bをそれぞれ昇降手段27によって昇降させた位置に応じて、左側の施療子3,4の動作方向と右側の施療子3,4の動作方向とを変更し、両者の動作方向を相異させることができる。なお、左右のマッサージユニット44a,44bのそれぞれにおいて、施療子3,4によるマッサージのための動作方向の変更については、捏ね挟み揉みの動作方向の変更以外に、後述するその他のマッサージ動作の動作方向の変更についても行うことができる。
【0049】
これによれば、左側と右側とで同じマッサージ動作(例えば捏ね挟み揉み)を行う場合であっても、使用者の左半身と右半身とのそれぞれにおいて身長方向の各部位に応じて施療子の動作方向を変更することで、左半身に接触させた施療子3,4の動作軌跡の形状や向きと、右半身に接触させた施療子3,4の動作軌跡の形状や向きとを変化させることができる。これにより、使用者の左半身の身長方向の各部位に対して適した方向に左側の施療子3,4を動作させることができ、かつ、右半身の身長方向の各部位に対して適した方向に右側の施療子3,4を動作させることができる。
【0050】
そして、使用者の左半身と右半身とで筋繊維の方向は異なり(左右対称である)、また、身長方向の各部位で筋繊維の方向は異なる。しかし、この椅子型マッサージ機によれば、左右のマッサージユニット44a,44bのそれぞれにおいて、制御手段28が、旋回手段6を利用することで、施療子3,4によってマッサージを行う対象とする部位における筋繊維の方向に応じて施療本体部2を回転させて当該施療子3,4の動作方向を変更することができる。したがって、右半身と左半身との身長方向の各部位のそれぞれに施療効果の高いマッサージが可能となる。
【0051】
なお、このマッサージのためには、この椅子型マッサージ機に着座した使用者の体型の検出が必要である。この体型の検出は、従来知られている肩位置検出の手段によって行うことができる。これを説明すると、背もたれ部41において、左右のマッサージユニット44a,44bを上から下へ移動させることにより、施療子3,4を上から下へ移動させる。そして、施療子3,4のいずれか一方が肩に当たった際に、その一方に作用する負荷を検出し、その負荷が検出された位置を肩位置として自動的に検出している。この肩位置は制御手段28が有している記憶部に記憶される。さらに、肩位置が検出されると、制御手段28は、その肩位置に基づいて、マッサージを施す使用者の筋肉の位置や、ツボの位置を求めることができる。これについて簡単に説明すると、使用者の身体(背中)における筋肉の位置分布及びツボの位置分布は体型(身長)によって個人差があるが、体型が異なっていても胸椎、腰椎、仙椎の位置を基準として筋肉の位置やツボ位置を求めることができる。したがって、使用者の胸椎、腰椎、仙椎の位置が求まれば筋肉の位置やツボ位置を正確に求めることができる。そして、使用者の胸椎、腰椎、仙椎の位置は肩位置を求めることによって演算により推定することができ、これにより筋肉の位置やツボ位置を演算することによって求めることができる。そして、制御手段28の記憶部が、肩位置検出を行った使用者の各筋肉の位置や各ツボ位置を記憶する。なお、ツボ位置を求める具体的な手段は、例えば特開2003―52780号公報に開示されている。また、この肩位置検出を行うことによって、施療子3,4によるマッサージのための(マッサージに有効な)上限位置と下限位置とが設定される。なお、この肩位置の検出は制御手段28によって(制御手段28に記憶させたプログラムにしたがって)行わせることができる。
【0052】
そして、使用者の筋繊維の方向に応じて施療子3,4の動作方向を変更して行うマッサージ動作について具体的に説明する。なお、左側のマッサージユニット44aと右側のマッサージユニット44bとは構成が同じである。そこで、代表として左のマッサージユニット44aにおいて行うマッサージ動作を説明する。
【0053】
既に説明したが、左側のマッサージユニット44aは一つの施療機構1を有しており、背もたれ部41内において昇降手段27によって昇降可能に設けられている。この施療機構1は、施療子3,4及びこれら施療子3,4を動作させる駆動手段5を有している施療本体部2と、この施療本体部2を使用者側に延びる回転軸心C3回りに回転させる旋回手段6とを有している。そして、制御手段28は、昇降手段27によってマッサージユニット44aを昇降させた位置に応じて、旋回手段6によって施療本体部2を回転させることで施療子3,4の動作方向を変更することができる。
【0054】
そこで、この左側のマッサージユニット44aにおいて、当該マッサージユニット44aの昇降位置に応じて施療子3,4によって挟み揉みの方向を変更させて行う、挟み揉みのマッサージについて説明する。施療本体部2は対向して配設した一対の施療子3,4を有しており、この一対の施療子3,4は前記のとおり相互に接近離反する動作を行う。すなわち、この施療機構1は、その機能の一つとして一対の施療子3,4を相互に接近離反させる挟み揉み機構を有している。そして、制御手段28は、昇降手段27によるマッサージユニット44aの昇降位置に応じて、旋回手段6によって施療本体部2を回転させることで、前記挟み揉み機構による一対の施療子3,4による挟み揉み方向を変更することができる。
【0055】
そして、図10は、このようにマッサージユニット44aの昇降位置に応じて、施療子3,4の動作方向を変更させて行う挟み揉みのマッサージを説明する説明図である。図10に示している矢印は施療本体部2の施療子3,4による挟み揉み方向を示している。
使用者の身長方向の各部位で筋繊維の方向は異なる。そこで、制御手段28は、マッサージユニット44aの高さ方向の各位置に応じて旋回手段6を利用することで筋肉に対する挟み揉みの方向を変化させる。つまり、筋繊維の長手方向に交差(直交)する方向に施療子3,4が接近離反して挟み揉みを行うように、制御手段28は、マッサージユニット44aの高さ方向の各位置に応じて施療子3,4(施療本体部2)の挟み揉み方向を設定する。そして、制御手段28は、使用者の背中に対して上下方向に順にマッサージユニット44aを移動させながら、施療子3,4の挟み揉み方向を変化させている。
【0056】
例えば背骨に近い左右両側の領域Aにおいて、マッサージユニット44aが肩部にある場合、一対の施療子3,4のうちの一方の施療子3を左上から右下へ向かう方向へ他方の施療子4に接近させ、他方の施療子4を右下から左上へ向かう反対方向へ一方の施療子3に接近させる動作を行う。そして、マッサージユニット44aが肩部より下及び腰部にある場合、一対の施療子3,4のうちの一方の施療子3を右上から左下へ向かう方向へ他方の施療子4に接近させ、他方の施療子4をその反対である左下から右上へ向かう他方向へ一方の施療子3に接近させる動作を行う。このように、使用者の身長方向の各部位に応じて一対の施療子3,4による挟み揉み方向を変えてマッサージを行うことが可能となる。
【0057】
さらに、マッサージユニット44aは、施療機構1によるマッサージ領域を左右方向について切り換える領域変更手段29を備えていることから、この領域変更手段29が、使用者の左半身において施療機構1の左右方向の位置を変更することによって、前記領域Aよりも右側の領域や左側の領域についても施療子3,4によってマッサージを行うことができる。例えば、前記領域Aの右側にある背骨に直ぐ近い領域に対してマッサージを行うことができ、この領域に対して施療子3,4を上下方向に接近離反させる挟み揉みによるマッサージや、後に説明するが施療子3,4によって上下方向に擦るマッサージとするのがよい。また、前記領域Aの左側にある側部寄りの領域に対してもマッサージを行うことができる。
【0058】
さらに、肩部については、角度調整手段26を利用して施療本体部2を傾けることによって、施療子3,4に前後方向の動作成分を有する挟み揉み動作を行わせるのが好ましい。つまり、肩部を前後方向に挟んで揉むマッサージが好ましい。
また、使用者の身長方向のある領域に対してマッサージする際、昇降手段27によるマッサージユニット44aの上下方向の移動を、他の領域を移動させる場合よりも遅くして、丁寧にマッサージを行ってもよい。
以上より、各部位のそれぞれに施療効果の高い挟み揉みマッサージが可能となる。
【0059】
さらに、この施療機構1は、別の機能として、施療子3,4によって使用者の被施療部を押す押圧機構を有している。これは、前記角度調整手段26を利用することで施療本体部2を傾け、一対の施療子3,4のうちの一方を他方よりも前側(使用者の被施療部側)の位置とし、この一方を被施療部に接触させた状態で、前記挟み揉み(捏ね挟み揉み)の動作を行わせることによって、当該一方の施療子が被施療部を押す押圧機構とすることができる。
なお、押圧機構の他の形態としては、前記施療機構1において、前記角度調整手段26を駆動させることで施療本体部2を傾け、一対の施療子3,4のうちの一方を他方よりも前側(使用者の被施療部側)へ移動させることによって、当該一方の施療子が被施療部に接触しさらに被施療部を押す押圧機構とすることができる。なお、この場合、角度調整手段26の構成は、図示した形態(図2)ではなく、歯部材20をラック部材19に噛合するピニオンとし、このピニオンを正逆回転駆動させる駆動手段(減速機付きモータ)を設けた構成とする。この駆動手段の回転によりピニオンを回転させ、ラック部材19を有する施療本体部2を前記ピン18の軸心C7回りに揺動させ、一方の施療子が被施療部を押すこととなる。
そして、制御手段28は、昇降手段27によるマッサージユニット44aの昇降位置、及び領域変更手段29による施療機構1の左右位置に応じて、旋回手段6によって施療本体部2を回転させることで、施療子3,4が被施療部を押す方向を変更することができる。
【0060】
そして、図11はマッサージユニット44aの昇降位置に応じて施療子3,4の動作方向を変更させて行う押圧のマッサージを説明する説明図である。図11に示している矢印は(施療子4よりも前側とした)施療子3によって被施療部を押す方向を示している。昇降手段27及び領域変更手段29によって、図11に示しているように、前方とした施療子3を所定の被施療部の位置に対応させ、その位置に応じて当該施療子3がその被施療部を押す方向を旋回手段6によって変更する。例えば、ある被施療部に対しては施療子3による押す方向を下から上へ向かう方向とし、他の被施療部に対しては施療子3による押す方向を上から下へ向かう方向としたりできる。
【0061】
このように、使用者の身長方向の各部位に応じて施療子3による押す方向(指圧方向)を変えてマッサージを行うことができ、各部位のそれぞれに施療効果の高い指圧マッサージが可能となる。なお、押圧機構の構成は別の形態であってもよく、例えば施療機構1が施療本体部2を支持部材17に対して使用者側へ移動させる駆動手段(図示せず)を備え、施療機構1を使用者側へ移動させることで施療子3,4が被施療部を押す構成としてもよい。
【0062】
さらに、この施療機構1は、別の機能として、施療子3,4の少なくとも一方によって使用者の被施療部を擦るサスリ機構を有している。これは、施療子3,4の少なくとも一方の施療子を被施療部に接触させた状態で、昇降手段27と旋回手段6と角度調整手段26と領域変更手段29とうちの少なくとも1つを機能させることで、前記施療子を使用者の身体に沿って移動させることにより、当該施療子が被施療部を擬似的に擦るサスリ機構とすることができる。または、施療子3,4の少なくとも一方を被施療部に接触させた状態で、挟み揉み(捏ね挟み揉み)の動作を行わせることによって、当該施療子が被施療部を擬似的に擦るサスリ機構とすることができる。この擦るマッサージを行う際、施療子を動作させる方向は、筋繊維(の長手方向)に沿った方向、つまり筋繊維に平行な方向が好ましく、さらに、身体の左右方向中央側から外側へ向かう方向に擦るのが好ましい。
【0063】
そして、制御手段28が、マッサージユニット44aの昇降位置に応じて旋回手段6によって施療本体部2を回転させることで、施療子3が被施療部を擦る方向を変更する。このサスリ機構として好ましいのは、押圧機構の場合と同様に、前記角度調整手段26を利用することで施療本体部2を傾け、一対の施療子3,4のうちの一方(施療子3)を他方(施療子4)よりも前側(使用者の被施療部側)の位置とし、その一方の施療子3を被施療部に接触させた状態で、前記挟み揉み(捏ね挟み揉み)の動作を行わせる。これによって、施療子3が被施療部を擦ることができる。
【0064】
そして、図12はマッサージユニット44aの昇降位置に応じて施療子3,4の動作方向を変更させて行う擦りのマッサージを説明する説明図である。図12に示している矢印は施療子3によって被施療部を擦る方向を示している。図12に示しているように、前方とした施療子3を昇降手段27によって所定の被施療部の位置に対応させ、その位置に応じて施療子3がその被施療部を擦る方向を旋回手段6によって変更する。そして、施療子3による擦る方向は、筋繊維に沿って内側(背骨側)から左外側へ向かう方向とするのが好ましい。そして、使用者の身長方向の各部位で筋繊維の方向は異なることから、このマッサージ位置の変更(マッサージユニット44aの高さ位置の変更)と共に施療本体部2を旋回手段6によって回転させることで、使用者の身長方向の各部位に応じて施療子の擦り方向(さすり方向)を変える。このように、使用者の身長方向の各部位に応じて施療子3による擦る方向を変えてマッサージを行うことができ、各部位のそれぞれに施療効果の高い擦りマッサージが可能となる。
【0065】
また、サスリ機構の構成は別の形態であってもよく、サスリ機構の他の形態としては、施療機構1の施療子3,4は使用者の被施療部に対して転がり自在なローラであることから、これら施療子3,4の少なくとも一方を被施療部に接触させた状態で、前記領域変更手段29と前記昇降手段27の一方又は双方が、使用者側へ延びる軸心C3に交差する面(仮想面)に沿って施療機構1を移動させ、ローラからなる施療子3(4)を被施療部に対して転がすことにより、これをサスリ機構としてもよい。この場合、一対の施療子3,4のうちの一方を前とするのが好ましい。そして、制御手段28は、マッサージユニット44aの昇降位置に応じて旋回手段6によって施療本体部2を回転させることでローラからなる施療子3の転がり方向を変更する。これによれば、使用者の身長方向に沿った各部位に応じて施療本体部2を回転軸心C3回りに回転させることでローラからなる施療子3の転がり方向を変更し、昇降手段27及び領域変更手段29を動作させることで当該施療子3を被施療部に対して転がすことができる。したがって、各部位に応じて施療子3の転がり方向を変えて、被施療部に対して擦るマッサージを行うことが可能となる。
【0066】
次に、前記領域変更手段29による機能を利用して行う他のマッサージについて説明する。図13は背もたれ部41内のガイド通路45a,45b及びマッサージユニット44a,44bを使用者側から見た説明図である。なお、この図において背もたれ部41にもたれている使用者を一点鎖線で示している。図1と図13の背もたれ部41において、左側のガイド通路45aに第一マッサージユニット44aが設けられ、右側のガイド通路45bに第二マッサージユニット44bが設けられており、ガイド通路45a,45bは、左右方向に二つに振り分けられかつ上下方向に沿って延びるように設けられている。
【0067】
そして、図13に示しているように、右側のガイド通路45bにある第二マッサージユニット44bが備えている領域変更手段29は、右側の施療機構1を左側のガイド通路45a側へ進入させて当該施療機構1による左右方向のマッサージ領域を左右方向の中央部に切り換えている。さらに、図示していないが、左側のガイド通路45aにある第一マッサージユニット44aが備えている領域変更手段29は、左側の施療機構1を右側のガイド通路45b側へ進入させて当該施療機構1による左右方向のマッサージ領域を左右方向の中央部に切り換えることができる。
【0068】
図13において、右側の第二マッサージユニット44bを使用者の肩部乃至首部の位置とし、領域変更手段29が施療機構1を使用者側へ延びる軸心C8回りに回動させることによって、右側にあった施療機構1の左右方向位置を左寄りに変更し、この施療機構1の施療子3,4を使用者の左右方向中央部である首部の位置に対応させ、これら施療子3,4によって首部を左右両側から挟むようにして捏ね挟み揉み(挟み揉み)している。この際、左側の第一マッサージユニット44aの施療機構1は、第二マッサージユニット44bの施療機構1と緩衝しない位置(下方位置)に存在している。
【0069】
そして、制御手段28の働きにより、図示しないが、第一マッサージユニット44aと第二マッサージユニット44bとの上下位置を入れ替えるとともに、第二マッサージユニット44bにおいて領域変更手段29が施療機構1を初期位置(二点鎖線で示している位置)に戻し、第一マッサージユニット44aにおいて領域変更手段29が施療機構1を使用者側へ延びる軸心C8回りに回動させることによって、左側にあった施療機構1の左右方向位置を右寄りに変更し、その施療機構1の施療子3,4を使用者の左右方向中心部である首部の位置に対応させ、これら施療子3,4によって首部を左右両側から挟むようにして捏ね挟み揉み(挟み揉み)することができる。そして、制御手段28はこの動作を左右のマッサージユニット44a,44bとの間で交互に切り換えて行うことにより、使用者の首部に対して左右両側から交互に捏ね挟み揉み(挟み揉み)ができる。これにより、あたかも人(マッサージ師)が左右の手を交互に切り換えて使用者(被施療者)の首部をマッサージするような動作が可能となる。
【0070】
さらに、左側の第一マッサージユニット44aにおいて領域変更手段29は施療機構1を使用者の左右方向中央部のみならず、右側のガイド通路45bの領域にまで進入させることができる。これと同様に、右側の第二マッサージユニット44bにおいて領域変更手段29は施療機構1を使用者の左右方向中央部のみならず、左側のガイド通路45aの領域にまで進入させることができる。このように、第一マッサージユニット44aの第一施療機構1を左側から中央部や右側へ移動させることができ、また、第二マッサージユニット44bの第二施療機構2を右側から中央部や左側へ移動させることができる。これにより、マッサージ可能な範囲を左右方向について広くすることができる。
【0071】
〔マッサージプログラム〕
図15において、制御手段28は、左右マッサージユニット44a,44b、それぞれの施療機構1及び昇降手段27などの各機構を所定のマッサージプログラムにしたがって動作させることができる。このマッサージプログラムは、制御手段28の記憶部(メモリ)に予め記憶させてある。そして、コントローラ32に設けた押しボタン(図示せず)を使用者が操作することで、当該コントローラ32からの指令信号に基づいて制御手段28はマッサージプログラムを選択して実行する。なお、使用者がコントローラ32を操作することで、マッサージプログラムに因ることなく、制御手段28によって各機構を動作させることができる機能も、このマッサージ機は備えている。例えば、使用者がコントローラ32を操作することで、左右それぞれの施療機構1において、旋回手段6により施療子3,4の動作方向を使用者の要求に応じて変更させることもできる。
【0072】
マッサージプログラムとしては、例えば前記のように、昇降手段27によってマッサージユニット44a,44bをそれぞれ昇降させた位置に応じて、左側のマッサージユニット44aの第一施療子3,4の動作方向と、右側のマッサージユニット44bの第二施療子3,4の動作方向とを変更させながら、腰部から背中及び肩部、さらに首部に対して行うステップを有しているマッサージプログラムがある。具体的には、左右のマッサージユニット44a,44bをそれぞれ昇降させながら、左右それぞれにおいて使用者の身長方向の各部位に応じて一対の施療子3,4による挟み揉み方向を変えて行うマッサージステップ(例えば図10)や、左右のマッサージユニット44a,44bをそれぞれ昇降させながら、左右それぞれにおいて使用者の身長方向の各部位に応じて施療子3,4による押す方向(指圧方向)を変えて行うマッサージステップ(例えば図11)や、左右のマッサージユニット44a,44bをそれぞれ昇降させながら、左右それぞれにおいて使用者の身長方向の各部位に応じて施療子3,4による擦る方向を変えて行うマッサージステップ(例えば図12)などを有しているプログラムがある。
【0073】
また、制御手段28は、ある被施療部に対するマッサージ動作の時間を、そのマッサージ動作中に変更する時間変更機能を有している。これは、あるマッサージ動作中において、使用者がコントローラ32を操作することによって、現在行っているマッサージ動作の時間を制御手段28が延長したり短縮したりすることができるものである。図14(a)と(b)とがこの機能を説明する説明図である。この説明図は施療子3,4が使用者の肩部に対して押圧(指圧)マッサージを行っている場合であり、グラフの縦軸は指圧マッサージの力(施療子による指圧圧力)を示しており、横軸はそのマッサージ動作の時間を示している。
【0074】
通常のマッサージプログラム(ステップ)では指圧マッサージ(施療子による一回の指圧ストローク)の時間がt0秒と設定されているところ、この指圧マッサージ(指圧マッサージステップ)の途中で使用者がコントローラ32を操作することにより、制御手段28は、この指圧マッサージの時間を図14(a)に示しているように時間t0から時間t1に延長することができる。これにより、使用者がそのマッサージが気持ちよく感じている場合に、この時間変更を機能させマッサージ時間を延長することができる。
逆に、指圧マッサージの途中で使用者がコントローラ32を操作することにより、制御手段28が、この指圧マッサージの時間を図14(b)に示しているように通常の時間t0を時間t2に短縮することができる。これにより、使用者がそのマッサージは不快であると感じている場合に、この時間変更を機能させマッサージ時間を短縮し、次の部位や、次のマッサージ動作(次のステップ)に移ることができる。
なお、施療子による1回の指圧ストロークを、指圧圧力を高め、指圧圧力を高い状態に所定時間について維持し、その後指圧圧力を低下させるという動作としており、図14では2回の指圧ストロークを示している。また、1回の指圧マッサージステップにおいて、指圧ストロークを1回としてもよく、又は、2回以上としてもよい。
また、図14に示しているように、施療子によって指圧を開始し指圧圧力を高める際の単位時間当りの指圧圧力の変化量の絶対値(変化率の絶対値)は、指圧圧力を下げる際の変化量の絶対値(変化率の絶対値)よりも小さくするのが好ましい。つまり、被施療部に対してゆっくりと指圧圧力を高め、迅速に指圧圧力を下げるのが好ましく、これにより、人手に近いマッサージ感が得られる。
【0075】
なお、この発明のマッサージ機は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、この発明のマッサージ機は椅子型に限らずその他の形態のものであってもよく、ベッド型のものであってもよい。また、施療機構1は背もたれ部41にのみ設けられる以外に、座部等のように身体を支持する他の身体支持体内に設けることができる。
また、一つの施療機構1の施療本体部2において、少なくとも一対の施療子3,4が対向して配設されているのが好ましく、図示しないが、一方の第一アーム及び他方の第二アームのいずれか又は双方において、複数の施療子を取り付けたものであってもよい。
【0076】
また、椅子型マッサージ機の背もたれ部41において、複数のマッサージユニット44が昇降可能として設けられていればよく、図示した形態では、ガイド通路を左右で2つとして二機のマッサージユニット44a,44bを設けたが、ガイド通路を3つ以上として三機以上のマッサージユニットを設けたもの(図示せず)であってもよい。つまり、マッサージユニットの数に応じてガイド通路を左右方向に複数に振り分けて設け、ガイド通路のそれぞれにマッサージユニットを一つずつ独立して移動可能として設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】この発明のマッサージ機の実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】この発明のマッサージ機が備えている施療機構の実施の一形態を示す斜視図である。
【図3】この施療機構の本体側の部分を側方から見た断面図である。
【図4】この施療機構を側方から見た側面図である。
【図5】図3と図4との施療機構の背面図である。
【図6】施療機構の正面図である。
【図7】施療機構の側面図である。
【図8】施療機構の背面図である。
【図9】マッサージユニットの正面図である。
【図10】マッサージユニットの昇降位置に応じて施療子の動作方向を変更させて行う具体的なマッサージを説明する説明図である。
【図11】マッサージユニットの昇降位置に応じて施療子の動作方向を変更させて行う別のマッサージを説明する説明図である。
【図12】マッサージユニットの昇降位置に応じて施療子の動作方向を変更させて行うさらに別のマッサージを説明する説明図である。
【図13】背もたれ部内のガイド通路及びマッサージユニットを使用者側から見た説明図である。
【図14】制御手段が有している時間変更機能を説明する説明図である。
【図15】マッサージ機のブロック図である。
【図16】図2の施療機構の側面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 施療機構
2 施療本体部
3 施療子
4 施療子
5 駆動手段
5a 駆動軸
6 旋回手段(動作方向変更手段)
11 第一アーム
12 第二アーム
27 昇降手段
28 制御手段
29 領域変更手段
41 背もたれ部
42 座部
44,44a,44b マッサージユニット
45,45a,45b ガイド通路
C3 回転軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左側の施療子と、この施療子を動作させる第一駆動手段と、前記施療子の動作方向を変更する第一動作方向変更手段と、を有している左側の第一施療機構と、
右側の施療子と、この施療子を動作させる第二駆動手段と、前記施療子の動作方向を変更する第二動作方向変更手段と、を有している右側の第二施療機構と、
前記第一施療機構を搭載した第一マッサージユニットと前記第二施療機構を搭載した第二マッサージユニットとをそれぞれ独立して昇降させる昇降手段と、
この昇降手段によって前記第一及び第二マッサージユニットをそれぞれ昇降させた位置に応じて、前記第一動作方向変更手段と前記第二動作方向変更手段とを利用して前記左側の施療子の動作方向と前記右側の施療子の動作方向とを変更させる制御手段と、
を備えていることを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
前記第一施療機構及び前記第二施療機構のそれぞれは、前記施療子を先端部に取り付けているアームを有した施療本体部を備え、
前記第一動作方向変更手段及び第二動作方向変更手段のそれぞれは、前記施療本体部を使用者側に延びる回転軸心回りに回転させる旋回手段である請求項1に記載のマッサージ機。
【請求項3】
左右方向に二つに振り分けられかつ上下方向に沿って延びるように設けられた左右のガイド通路を有し、
左側の前記ガイド通路に前記第一マッサージユニットが設けられ、右側の前記ガイド通路に前記第二マッサージユニットが設けられ、
一つのガイド通路にある前記第一マッサージユニットと前記第二マッサージユニットとのうちの一方の前記施療機構を他のガイド通路側へ進入させて当該施療機構による左右方向のマッサージ領域を切り換える領域変更手段を、前記第一マッサージユニットと前記第二マッサージユニットとはそれぞれ備えている請求項1又は2に記載のマッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−136575(P2008−136575A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323895(P2006−323895)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000112406)ファミリー株式会社 (175)
【Fターム(参考)】