説明

マッサージ機

【課題】傾斜軸を利用して施療子にマッサージ動作を行わせるものにおいて複数種のマッサージ動作を得る。
【解決手段】回転駆動される駆動軸20と、駆動軸に装着された傾斜軸22と、上記傾斜軸22の外周面に遊転自在に連結されている揺動アーム51と、施療子50を備える上記揺動アームの上記傾斜軸の回転に伴う動きを規制して、駆動軸の回転による施療子の動きを20mm角四方の中で円状の軌跡を描く動きとしているマッサージ機である。施療子の位置を変更するための駆動手段を別途備え、上記駆動軸の回転による施療子の上記軌跡を描く動作に同期させて上記駆動手段を動作させて上記軌跡を変化させる制御部を備える。駆動軸のみを回転させた時には施療子は20mm角四方の中で円状の軌跡を描き、施療子の位置の変更のための駆動手段を同期させて駆動する時には、施療子の動く範囲が広がってもみマッサージを得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施療子にもみマッサージを与えることができるマッサージ機、殊に回転駆動される傾斜軸を利用して左右に施療子を揺らせることでもみマッサージを得るようにしたマッサージ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転駆動される傾斜軸を利用して施療子にもみマッサージを得られることになる軌跡を描かせるようにしたマッサージ機が知られている。
【0003】
上記もみマッサージは、ほぼ40mm角四方内に収まる楕円状の軌跡を施療子が描くものであり、この場合、施療子がツボ(圧痛点)に当接した場合は心地良く感じられるが、ツボから外れた場合、特に骨などに当接すると不快な痛みを感じる。
【0004】
一方、マッサージ師の施療で多用される手技に揉捏と称されるものがある。これは図8に示すように、拇指や掌を支持点(支持面)として人体を加圧しながら手首近傍部を円上や線状に動かすマッサージである。この揉捏マッサージであれば、施療子は人体との接触点を中心にほぼ「すりもみ運動」を行うことになるために、骨にあたってしまうようなことはなく、従って不快な痛みを感ずることはない。
【0005】
そして、本発明者らは、施療子に20mm角四方内で円状の軌跡を描く動きを行わせたならば、上記揉捏マッサージと同等の感覚が得られるマッサージ動作を得られることを見出した。すなわち、拇指などと同程度の大きさの施療子を20mm角四方の中で円状の軌跡を描く動きを行わせた時、施療子自体はすりもみ運動を行っているわけではないが、上記の範囲内で円状の軌跡を描く動きを行えば、感覚的に上記揉捏マッサージと同じマッサージとなることを見出した。
【0006】
この20mm角四方内で円状の軌跡を描く揉捏マッサージ動作は、上記傾斜軸を利用したものにおいても傾斜軸の傾斜角や傾斜軸から施療子までの長さを適宜設定することで得ることができる。しかし、このように設定したならば、逆に通常のもみマッサージ動作を得ることができないものとなる。
【特許文献1】特開2004−016514公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、傾斜軸を利用して施療子にマッサージ動作を行わせるものにおいて上記揉捏マッサージともみマッサージの両者を選択的に得ることができるマッサージ機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係るマッサージ機は、回転駆動される駆動軸と、駆動軸に対して傾いた軸を備えて駆動軸に装着された傾斜軸と、上記傾斜軸の外周面に遊転自在に連結されている揺動アームと、施療子を備える上記揺動アームの上記傾斜軸の回転に伴う動きを規制して、駆動軸の回転による施療子の動きを20mm角四方の中で円状の軌跡を描く動きとしているマッサージ機であって、施療子の位置を変更するための駆動手段を別途備えるとともに、上記駆動軸の回転による施療子の上記軌跡を描く動作に同期させて上記駆動手段を動作させて上記軌跡を変化させる制御部を備えていることに特徴を有している。駆動軸のみを回転させた時には施療子は20mm角四方の中で円状の軌跡を描く揉捏マッサージ動作を得られるものであり、施療子の位置の変更のための駆動手段を同期させて駆動すれば、施療子の動く範囲が広がってもみマッサージを得られるものである。
【0009】
上記制御部は駆動軸の回転による施療子の1回の円状軌跡を描く動きに施療子の上下方向位置を上下に1往復させる動きを重畳させるものを好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、傾斜軸を利用して施療子にマッサージ動作を行わせるものであって、施療子の動きは上記傾斜軸の傾斜によってほぼ決定されてしまうものであるにもかかわらず、揉捏マッサージと同じ感覚のマッサージとなる20mm角四方の中で円状の軌跡を描く動きに加えて、通常のもみマッサージ動作の動きも得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明すると、図2に示すマッサージ機構は椅子の背もたれ内に上下に自走自在に配されるもので、左右に位置する縦枠11,11と、縦枠11,11の上端間を連結するガイド軸13と、左右中程に配された一対の取付板14,14等で構成されたフレーム1に、もみ駆動モータユニット2と上下駆動モータユニット3とたたき駆動モータユニット4、左右一対の施療子ブロック5,5等を装着したものとして構成されている。
【0012】
縦枠11,11の下端間に架設されている走行軸30は、その両端にピニオン31が固定されているとともにガイドころ32,33が遊転自在に装着されており、また上記ガイド軸13も両端にガイドころ32,32を備えており、これらガイドころ32は上記背もたれ内の左右に配されたガイドレール内を転動し、更に上記ピニオン31がガイドレールに付設されたラックと噛合する。このために上記上下駆動モータユニット3がピニオン31を備えた走行軸30を回転駆動する時、このマッサージ機構1はガイドレールに沿って背もたれ内を上下に自走する。
【0013】
上記もみ駆動モータユニット2の回転は、取付板14,14の下部に配された駆動軸20に伝達される。この駆動軸20は、その両端に偏心軸部21,21を備えたものであるとともに、各偏心軸部21の外周に外周面の中心軸が駆動軸20の軸線に対して傾いている傾斜軸22,22を配したもので、駆動軸20と共に回転する2つの傾斜軸22,22には夫々施療子ブロック5,5が連結されている。
【0014】
この施療子ブロック5は、一端が傾斜軸22の外周に軸受54を介して遊転自在に連結される揺動アーム51と、揺動アーム51の他端に中央部が軸支された支持アーム52と、側面形状がく字形である支持アーム52の上下両端部に夫々軸支されるローラ状の施療子50,50とからなるもので、支持アーム52は上方側の施療子50が背もたれの前面側に突出する方向にばね付勢された状態で揺動アーム51に軸53で上下に回動自在に取り付けられている。
【0015】
そして取付板14,14の上部には前記たたき駆動モータユニット4によってベルト43を介して駆動されるたたき駆動軸40が架設されている。該たたき駆動軸40はその両端に偏心軸部を有するクランク軸として形成されたものであり、各偏心軸部と上記の両施療子ブロック5の揺動アーム51との間が夫々連結ロッド45によって連結されている。なお、連結ロッド45と揺動アーム51とは三次元的な動きが自在な継手で連結されており、連結ロッド45とたたき駆動軸40との間もたたき駆動軸40の軸回りの回転が自在で且つたたき駆動軸40の軸方向に連結ロッド45が揺動することが自在となるように連結されている。
【0016】
そして、このマッサージ機構1は、前述のように上下駆動モータユニット3の駆動によって背もたれ内を上下に自走して、施療子50の位置を上下に変化させる。この時、上下2つの施療子50,50を備える支持アーム52は揺動アーム51に対して上下に回動自在に連結されているとともにばね付勢されていることから、上下2つの施療子50,50が常に背もたれに持たれた人体背面に接している状態を得ることができる。
【0017】
また、もみ駆動モータユニット2を回転させる時、駆動軸20の両端の偏心軸部21,21に夫々配された傾斜軸22,22は、その軸の傾きが相互に逆になっていることから、各傾斜軸22,22の外周に揺動アーム51が装着されるとともに連結ロッド45,45によって揺動アーム51の動きが規制されている左右の施療子ユニット5,5は、互いに接近したり離れたりする動きを上下の施療子50,50に行わせるものであり、この時、傾斜軸22が装着されている偏心軸部21が偏心していることもあって、施療子50は前後にも動く。
【0018】
ここにおいて、上記偏心成分と傾斜成分とのために、駆動軸20を回転させた時の施療子50の動きは、前後左右上下方向の三次元的な円状の軌跡を描くのであるが、ここでは上記偏心成分と傾斜成分並びに揺動アーム51の長さを適宜設定することで、施療子50が描く円状軌跡は、20mm角四方の中に収まるようにしてある。
【0019】
拇指などと同程度の大きさの施療子を20mm角四方の中で円状の軌跡を描く動きを行わせれば、前述のように被施療者にしてみれば前記揉捏マッサージと同じ感覚のマッサージを得ることができるものである。
【0020】
図7に示すように、人体の肩甲骨K付近の肩側の筋肉イは斜めに筋束が走っており、背骨側の筋肉は縦方向に筋束が走っているが、円(や楕円)を描く動きはこれら筋束と直交する方向の動き成分を含んでいるために、筋肉を確実にほぐすことができるものであり、しかも筋束の幅は5〜10mmであることから、20mm角四方もしくはこれよりも狭い範囲内で内で施療子を動かす分には筋束を揺らすことができると同時に施療子50が骨に当たることはない。なお、これより大きい範囲、たとえば40mm四方内で施療子50を動かす動作は、肩の筋肉をもみほぐすといった点では有効であるが、上記の位置で行わせると、施療子50が骨に当たる虞が高くなる上に、被施療者にしてみれば揉捏マッサージとは異なった感覚のものとなってしまうものである。
【0021】
そして、本発明に係るマッサージ機では、図1に示すように、駆動軸20を回転させることによって得られる上記揉捏マッサージ動作αに、前記上下動作を同期させて上下方向の一往復動作βを重畳することで、上下方向が20mm以上の縦長楕円軌跡α+βを施療子50に描かせることができるようにして、通常のもみマッサージ動作も行えるようにしている。
【0022】
つまり、図2中の73は上下位置検出用のスリット円板であり、このスリット円板73に設けた複数種のスリットS1,S2,S3をフォトセンサ74で検知することで、例えば図4に示すように、施療子50の上下位置を検知できるようにしているとともに、上下駆動モータユニット3の回転方向から上方移動しているのか下方移動しているのかを検知できるようにしており、またもみ駆動モータユニット2で回転駆動される駆動軸20に取り付けたスリット円板のスリットS4,S5とフォトセンサとで、駆動軸20の回転によるところの上記揉捏マッサージ動作において、図5に示すようにその円状の軌跡のどの位置にあるかを検知すると同時に、もみ駆動モータユニット2の回転方向からどの方向に動いているのかを検知できるようにしている。
【0023】
そして上記各モータユニット2,3,4の駆動制御を司る制御回路(図示せず)においては、揉捏マッサージの指示があった時には駆動軸20のみを回転させるが、より広い範囲の動きを施療子50に行わせる指示があった時には、上記検知出力を利用して、駆動軸20を回転させると同時に、施療子50の動きに同期させて上下駆動モータユニット3を駆動して上下動を行わせることで、施療子50の動きのうちの上下方向成分を上記上下動によって上下に広げて縦長楕円の軌跡を施療子50に描かせるものである。
【0024】
図示例のマッサージ機構では左右一対の施療子ユニット5,5の間隔を調整する機能を有していないが、この機能を有しているものにおいては、揉捏マッサージ動作に間隔調整機能による左右方向の一往復動作γを同期重畳させることで、図4に示すように左右方向が20mm以上の横長楕円軌跡を施療子50に描かせることができ、更に該間隔調整機能と上記上下動作とを揉捏マッサージ動作に同期させることで、上下左右方向が共に20mm以上の円状軌跡を施療子50に描かせることができる。
【0025】
なお、駆動軸20の回転で施療子50が20mm角四方内に収まらない円状の軌跡を描くように傾斜軸22の傾斜角等を設定しているものにおいて、上下動動作や間隔調整機能の動きを同期重畳させて、施療子50が20mm角四方に収まる円状の軌跡を描くようにすることもできる。
【0026】
施療子50,50を備えた支持アーム52を図5に示すように、2片52a,52bで構成して上下に並ぶ施療子50,50の間隔を支持アーム52a,52bの夫々の回動で可変としておくとともに、支持アーム52a,52b間を引っ張りばね53で連結しておけば、施療子50が人体に当接する時、上下の施療子50,50は夫々上方及び下方に逃げることができる状態となり、これは施療子50の円状軌跡を縦長の軌跡に変化させることになる。
【0027】
そして、人体を施療子50に強く押し付けている状態で、駆動軸20を駆動すれば、支持アーム52a,52bは広がった状態で20mm角四方の中で円状軌跡を描いて人体に揉捏マッサージを与えるが、人体を施療子50に軽く押し付けている状態では、施療子50の動きに伴う施療子50と人体との接触圧の変化に応じて支持アーム52a,52bの間隔が変化するために、この時には縦長の軌跡を描くことになるとともにソフトなマッサージとなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態の一例の動作を示す説明図である。
【図2】同上のマッサージ機構の一例の斜視図である。
【図3】同上の他の動作を示す説明図である。
【図4】同上の上下位置の検知動作に関する説明図である。
【図5】同上の施療子の位置検知動作に関する説明図である。
【図6】同上の施療子ユニットにおける支持アームの他例の斜視図である。
【図7】同上の揉捏マッサージの説明図である。
【図8】マッサージ師による揉捏マッサージの説明図である。
【符号の説明】
【0029】
3 上下駆動モータユニット
20 駆動軸
22 傾斜軸
50 施療子
51 揺動アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動される駆動軸と、駆動軸に対して傾いた軸を備えて駆動軸に装着された傾斜軸と、上記傾斜軸の外周面に遊転自在に連結されている揺動アームと、施療子を備える上記揺動アームの上記傾斜軸の回転に伴う動きを規制して、駆動軸の回転による施療子の動きを20mm角四方の中で円状の軌跡を描く動きとしているマッサージ機であって、施療子の位置を変更するための駆動手段を別途備えるとともに、上記駆動軸の回転による施療子の上記軌跡を描く動作に同期させて上記駆動手段を動作させて上記軌跡を変化させる制御部を備えていることを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
制御部は駆動軸の回転による施療子の1回の円状軌跡を描く動きに施療子の上下方向位置を上下に1往復させる動きを重畳させるものであることを特徴とする請求項1記載のマッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−29426(P2008−29426A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203936(P2006−203936)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】