説明

マッサージ機

【課題】足裏保持部を有するマッサージ機であっても脚の伸縮によるマッサージの効果を下げることなくマッサージ行うことができるマッサージ機を提供する。
【解決手段】被施療者Mが着座する座部1と、前記被施療者Mの脚を狭持する脚狭持手段を有し、前記座部1に回動可能に接続されて当該座部1から離れる方向または当該座部1に近づく方向にスライド移動する脚載部3と、前記脚載部3に接続され前記被施療者Mの足裏を支持する足裏支持体4を備えるマッサージ機であって、前記足裏支持体4を前記被施療者Mの足裏から離れる方向に移動後、前記脚載部3を下方向に回動させて施療を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被施療者の脚を伸縮するストレッチによりマッサージを行うマッサージ機に関し、特に足裏を保持する手段を設けたマッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術となるマッサージ機としては、特許文献1に示すものがある。特許文献1に示す技術は、肩、背中、首などのマッサージに比べてマッサージ効果の低い脚載部における脚マッサージをより効果的に行えるようにしたマッサージ機に関する技術であり、具体的には図10を用いて説明する。
【0003】
図10(a)の○で示したのは、エアセルSの略中心位置であり、この中心位置をエアセルSによる施療位置とする。一方、×で示したのは、脚載部1が略水平となるまで上方へ回動した位置(実線αで示す位置)においてのエアセルSによる脚M1の施療個所である。脚載部1が略水平位置(実線αで示す位置)にあるときは、エアセルSの略中心位置(エアセルSによる施療位置)○と、脚M1から見た実際の施療個所Xは当然重なっている。しかし、脚載部1が降下方向へ回動して、例えば図10(a)における脚載部1と座部2との連結角度が小さい位置(実線βで示す位置)に至った場合、施療位置○は脚M1に対して相対的にずれており、脚M1に対して大腿部側から足首側へ相対的に移動していることが分かる。
【0004】
すなわち、脚載部1と座部2との連結角度が小さくなる(脚が曲がる状態)につれて(矢印f1)、エアセルSは、脚M1に対して実質的に大腿部側から足首側へ相対的に移動する。逆に、脚載部1と座部2との連結角度が大きくなる(脚が伸びる状態)につれて(矢印f2)、エアセルSは、脚M1に対して実質的に足首側から大腿部側へ相対的に移動することになる。このように、エアセルSによるマッサージ中に、前記脚載部1の位置を変動可能とすることによって、エアセルSが脚M1に対して実施的に移動するために、より広範囲にわたる脚マッサージが可能となるとともに、脚M1は屈伸運動を行う結果となって血行促進が図られることになり、より効果的な脚マッサージが行えるというものである。
【0005】
また、図中の実線αで示す位置でエアセルSを膨らませ、脚M1をしっかりとホールド状態として、その後に脚載部1を図中の実線βで示す位置に移動させた場合、脚M1はエアセルSで両側からしっかりとホールドされており、なおかつ同エアセルSの位置は足首側へと実施的に移動しようとすることから、脚M1の伸ばし効果が生起されることになる。
【0006】
さらに、図10(b)においては、脚載部1を前後スライド可能としたものである。この場合も、エアセルSを膨らませて脚M1をホールド状態として、その後に脚載部1を前後スライドさせることで、脚M1の伸ばし効果を生起させることができる。
【特許文献1】特開2004−41383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、脚載部を有するマッサージ機において、膝下から足裏までを支持するようなものや、足裏を支持できるステップ(以下、足裏支持体とする)を備えるマッサージ機がある。このようなマッサージ機では、被施療者の足裏をマッサージしたり、被施療者の体型に合わせて脚載部と座部との適正距離や適正角度を測り、効果的に脚マッサージを行うことができる。つまり、足裏保持部を有することは、被施療者にとって様々なメリットがある。
【0008】
しかしながら、特許文献1に示すような効果的な脚マッサージを行う場合に、脚を伸縮することによりストレッチを行うことは大変効果的なマッサージであるが、足裏支持体を有する場合は、上記技術においては逆に脚マッサージの自由度を制限することになり、脚の伸縮によるマッサージ効果を十分に得ることができない。例えば、被施療者の身長が高い(脚が長い)場合は、被施療者が着座した際に足裏支持体があることで大腿部の裏側と座部との間に空間が生じてしまい、脚の伸縮を適正に行うことができない。また、足裏支持体を有する場合は被施療者の足裏を足裏支持体に当接させる必要があり、一般的に被施療者の膝が適正に伸びていない状態となる傾向がある。従って、足裏支持体を有しつつ、脚の伸縮によるストレッチにより効果的なマッサージを行うことは困難な課題を有する。
【0009】
一方、特許文献1に示した技術のように足裏支持体を備えていない場合、脚載部のスライド移動及び/または回動の際に被施療者のかかとが地面に接触してしまう場合があるため、それを避けるために、脚載部の移動範囲が制限され、被施療者十分なマッサージを受けられない場合がある。これは、足裏支持体を備えていないために被施療者の脚の長さを把握することができず、脚載部がどの程度のスライド移動及び/または回動をすればよいかを被施療者ごとに設定できないために起こってしまう問題である。
【0010】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、足裏保持部を有するマッサージ機であっても脚の伸縮によるマッサージの効果を下げることなくマッサージ行うことができるマッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1 脚載部のスライド移動)
本発明に係るマッサージ機は、被施療者が着座する座部と、前記被施療者の脚を狭持する脚狭持手段を有し、前記座部に回動可能に接続されて当該座部から離れる方向または当該座部に近づく方向にスライド移動する脚載部と、前記脚載部に接続され前記被施療者の足裏を支持する足裏支持体を備えるマッサージ機であって、前記足裏支持体を前記被施療者の足裏から離れる方向に移動後、上記脚狭持手段により被施療者の脚を狭持した状態で前記脚載部を下方向に回動させて施療を行うことを特徴とする。
【0012】
このように、本発明においては足裏支持体を備えるマッサージ機であるため、例えば、被施療者の脚が長い場合に、脚載部を回動させたりスライド移動させたりしてストレッチを行う場合であっても被施療者のかかとが床に当たってしまうことがない。また、足裏支持体を備える場合は被施療者の膝が曲がってしまうことで、十分なストレッチを行えない可能性があるが、足裏支持体を被施療者の足裏から離れる方向に移動して被施療者の膝を伸ばす余裕空間を形成後、脚載部を下方向に回動させて施療を行うため、被施療者は自ら膝を伸ばしてから又は強制的に伸ばし、その後に脚狭持手段により被施療者の脚を狭持した状態で前記脚載部を下方向に回動させるストレッチを行うことができる。これにより、被施療者の脚を十分にストレッチすることができ、効果的なマッサージを行うことができる。
【0013】
また、足裏支持体がない場合は、上記で述べたように被施療者のかかとが床に当たってしまう可能性があるため、脚載部を下方向に回動させて行う施療は安全性を考慮して、従来は強制的に脚載部が地面に対して十分高い位置で脚載部の回動を行っていた。また、脚載部が下方向に回動できる角度も制限されてしまうため、ストレッチ効果を十分に発揮できない場合もあった。しかし、足裏支持体を備えることで、例えば脚載部にスライド移動量や回動量等の検出手段を設けて、足裏支持体の位置を把握することが可能となり自動的にスライド移動量や回動量を調整出来る。したがって、足裏支持体の底面が床に当たらないぎりぎりの位置まで下降させることが可能となり、脚狭持手段により被施療者の脚を狭持した状態で前記脚載部を下方向に回動させる施療の開始位置や回動量の自由度が増す。
【0014】
(2 脚を狭持して脚載部のスライド移動)
本発明に係るマッサージ機は、前記足裏支持体の移動が前記脚載部の脚狭持手段により被施療者の脚を狭持した状態で実行されることを特徴とする。
この場合、脚の挟持は完全な固定にはなりえないので、上述の発明ほどではないものの、脚載部のスライド移動にともなって、足裏支持体と足裏の間には脚を伸ばすための余裕空間が形成されるわけであるが、本発明においては足裏支持体の移動が前記脚載部の脚狭持手段により被施療者の脚、望ましい具体例では脹脛部を狭持した状態で実行されるため、被施療者の脚を引っ張ることによる伸びのストレッチを行うことが可能となる。
【0015】
また、前記発明でも同様であるが足裏支持体は被施療者の足裏から離れる方向に移動可能なため、被施療者が脚の長さに応じて足裏支持体の施療開始位置を調整することができる。
さらに、足裏支持体を座部から遠ざかる方向に移動させる際は、足裏支持体が地面に接触しないように角度を調整しながら自動で回動することもできる。
【0016】
(3 被施療者の昇降)
本発明に係るマッサージ機は、前記被施療者の身体を昇降させる昇降手段を備えることを特徴とする。
このように、本発明においては足裏支持体を備えることで被施療者の膝が曲がった状態となった場合でも、昇降手段により被施療者の身体を上昇させることで被施療者の膝を伸ばすことができ、効果的な伸びのストレッチを行うことができる。
【0017】
(4 大腿部の昇降)
本発明に係るマッサージ機は、前記被施療者の大腿部の裏に対応する位置において昇降動作をする昇降手段を備えることを特徴とする。
このように、本発明においては被施療者大腿部の裏に対応する位置において昇降手段が昇降動作を行うため、大腿部を持ち上げたり、足裏支持体を備えることで生じてしまった被施療者の大腿部の裏の空間を埋めることができる。従って、その状態で脚載部を回動させたりスライド移動させたりしてストレッチを行うことで効果的なストレッチを行うことができる。
【0018】
(5 ストレッチと昇降の組み合わせ)
本発明に係るマッサージ機は、前記脚載部の回動及び/またはスライド移動に応じて前記昇降手段が昇降動作を行うことを特徴とする。
このように、本発明においては昇降手段が昇降動作を行うので、昇降手段の上昇により足裏を足裏支持体から遠ざけることが可能であり、脚載部のスライド移動によるストレッチに合わせて昇降手段を上昇させれば被施療者の脚が長い場合でも、足裏支持体と足裏の間に被施療者の膝を伸ばす余裕空間が形成されやすくなり膝を伸ばした状態での効果的なストレッチを行うことができる。
【0019】
また、脚載部の回動及び/またはスライド移動によるストレッチと同時に昇降手段による昇降動作を行うようにすれば、前記ストレッチに加えて昇降手段の昇降動作によるストレッチ効果も得ることができ、マッサージ効果を上げることができる。
なお、被施療者の脚を脚載部に狭持する場合はエアバッグ等の施療手段を用いることができる。そうすることで、脚の狭持と同時に脚のエアマッサージを行うことが可能となる。
【0020】
(6 昇降手段が上昇する条件)
本発明に係るマッサージ機は、前記昇降手段が、スライド移動により設定された足裏支持体の施療開始位置に応じて上昇する動作をすることを特徴とする。
一般的に脚載部のスライド移動量には機構的に限界がある。上述のように本発明では被施療者が脚の長さに応じて足裏支持体の施療開始位置を調整することができるが、脚が特に長い場合、施療開始位置が限界もしくは限界に近い位置で調整される可能性がある。この場合、足裏支持体を前記被施療者の足裏から離れる方向に移動させようとすると、規定しているスライド移動の移動前に限界位置となってしまい、期待されたストレッチ効果が得られないという懸念がある。本発明においては昇降手段が、スライド移動により設定された足裏支持体の施療開始位置に応じて、上昇する動作をするため、施療開始位置が想定された所定位置より座部から離れている場合に、昇降手段により身体もしくは大腿部が上昇し、これによりスライド移動及び/又は回動によるストレッチ施療を効果的なものとし、想定された移動量を得られない欠点を補う。
【0021】
このように、昇降手段の動作は、施療開始位置と予め設定された所定位置(限界位置から規定移動量を差し引いた位置)との比較により決定される。具体例を挙げると、例えば、座部から20cm離れた位置を足裏支持体の最も座部に近い位置とし、38cm離れた位置が最も遠い限界位置だとすれば、被施療者は20cmから38cmの間で施療開始位置を自在に調整し、設定された位置が自分の施療開始位置となる。一方本発明の脚載部の足裏支持体は被施療者の足裏から離れる方向に移動するものであるが、その移動量は規定移動量として規定されており、固定値でも施療開始位置の値に応じて変化させた値でも良いが、例えば7cmとする。つまり、この例では、所定位置が限界位置(38cm)から規定移動量(7cm)を差し引いた位置である31cmという値であり、この値と施療開始位置が比較される。被施療者の脚が短く、施療開始位置を25cmに設定した場合は昇降手段は上昇せず、被施療者の脚が長く、施療開始位置を35cmに設定した場合は3cmしか移動出来ないので昇降手段が上昇してストレッチ効果を補うことになる。なお、昇降手段の動作は上昇する/しないだけでなく上昇量を施療開始位置に応じて細かく決定しても良い。
【0022】
また、昇降手段の上昇の判断材料は、必ずしも上記のような規定移動量移動出来るか否かだけではなく、被施療者が自分の脚の長さに応じて予め設定した施療開始位置から被施療者自身の脚の長さと使用状態を推測して判断をしても良い。つまり、施療開始位置が座部に近い場合は脚が長くない被施療者であると判断し、足裏支持体と足裏との間に膝を伸ばす余裕空間が簡単に得られ、昇降手段による上昇を行わなくても十分に効果的なストレッチを行うことができると見做し、逆に、設定した施療開始位置が座部から離れている場合は脚が長い被施療者であると判断し、足裏支持体4と足裏との間に膝を伸ばす余裕空間が簡単に得られず昇降手段で上昇させないと効果的なストレッチを行えないと見做して上昇動作を制御することも出来る。
【0023】
(7 一旦縮めてからのストレッチ)
本発明に係るマッサージ機は、脚載部の足裏支持体が被施療者の足裏から離れる方向に移動する前に、前記座部に近づく方向にスライド移動することを特徴とする。
このように、本発明においては、脚載部の足裏支持体が被施療者の足裏から離れる方向に移動する前に、前記座部に近づく方向にスライド移動するため、被施療者の脚を伸ばす(または被施療者の脚が伸びる)前に一旦脚を縮ませる動作が入ることで、脚の伸びの動作にアクセントをつけることができ、ストレッチにメリハリをつけることで被施療者は効果的なマッサージを体感することができる。
【0024】
(8 縮めながら昇降手段を上昇)
本発明に係るマッサージ機は、前記脚載部の足裏支持体が、前記座部に近づく方向にスライド移動する際に、前記昇降手段が上昇することを特徴とする。 このように、本発明においては、脚載部の足裏支持体が、座部に近づく方向にスライド移動する際に、昇降手段が上昇するため、その後のストレッチを効果的なものとすることができる。
【0025】
(9 伸縮限界値の場合に一旦縮めてからのストレッチ)
本発明に係るマッサージ機は、スライド移動により設定された足裏支持体の施療開始位置が、前記座部から離れる方向にスライド移動することができる限界位置にほぼ等しい場合にのみ、当該脚載部が前記座部に近づく方向にスライド移動することを特徴とする。
【0026】
このように、本発明においては、スライド移動により設定された足裏支持体の施療開始位置が、前記座部から離れる方向にスライド移動することができる限界位置にほぼ等しい場合にのみ、当該脚載部が前記座部に近づく方向にスライド移動するため、例えば被施療者の脚が極端に長く、脚載部のスライド機構上伸びのストレッチをすることができない場合であっても、一旦縮めた状態にしてストレッチの距離を確保することで伸びのストレッチを体感することができる。
【0027】
(10 エアバッグによる昇降)
本発明に係るマッサージ機は、前記昇降手段が、エアバッグで形成され、当該エアバッグの給排気により昇降動作を行うことを特徴とする。
このように、本発明においては、昇降手段がエアバッグ形成されているため被施療者を押圧によりマッサージすることができる。また、昇降手段によるエアマッサージ、足裏支持体のエアによるマッサージ、脚載部による脚伸ばしのストレッチ、及びエアマッサージ、並びに昇降手段の昇降動作によるストレッチ等を組み合わせることで、より多様で効果的なマッサージを行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(本発明の第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るマッサージ機について、図に基づき説明する。図1は本実施形態に係るマッサージ機の全体斜視図、図2は本実施形態に係るマッサージ機の側面断面図である。
(1.マッサージ機全体の構成)
本実施形態におけるマッサージ機の基本的構成要素は、被施療者Mの背中を支持する背もたれ部2と、この背もたれ部2の下端と接し被施療者が着座した際に被施療者の臀部を支持する座部1と、当該座部1を支持する基台部5と、基台部5に接合し被施療者の肘を支持する肘置部10と、座部1の先端下側に枢設され被施療者Mの脚が載置される脚載部3と、脚載部3の下端に被施療者Mが着座した場合に足裏を包むように支持する足裏支持体4と、背もたれ部2の内部に揉み玉93及び揉み玉93を動作させる揉み玉機構を有するメカユニット70とを備える構成である。また、制御部であるマイクロコンピュータの素子が配置された基板が座部1直下の空間部に配置されている。
【0029】
(2.背もたれ部)
背もたれ部2は、リクライニングでき、被施療者Mとの接触面の両端側にクッション材を配設し、被施療者Mが着座して背もたれ部2にもたれると背中が背もたれ部2の中心に位置するようになっている。背もたれ部2の正面側であって、両側縁近傍の位置にはそれぞれ左右に対をなす背中部用エアバッグa6及び腰部用エアバッグa7が、背中部及び腰部の高さ位置に応じて埋設してある。座部1と背もたれ部2は枢軸を介して連結されており、リクライニングの際はこの枢軸を中心に背もたれ部2を傾動させることで適度な角度でリクライニングを行う。リクライニング機能は、背もたれ部2の下端近傍にリニア動作を行うリクライニングアクチュエータ(図示しない)が架設されており、当該リクライニングアクチュエータの進退動作によって、前記背もたれ部2を、枢軸を中心に傾動させることで実現される。リクライニングアクチュエータはリクライニング用モータ(図示しない)から駆動力が与えられるようになっており与えられた駆動力によって進退動作を行う。また、前記枢軸の近傍には背もたれ部2の傾動角度を検出するリクライニング角度検出センサ(図示しない)が配設されており、リクライニング角度の調整を行っている。
【0030】
(3.肘置部)
肘置部10は、座部1の両側に位置し基台部5と接合している。背もたれ部2がリクライニングすることで座部1が傾動した場合でも、被施療者の前腕を安定的に支持できるようにカーブを有して形成されている。
【0031】
(4.脚載部)
脚載部3は、座部1の前端側に位置しており、内部に2つの半円筒状の脚受11を互いに平行に設けて、脚受11の各両内側には、脚挟持手段としての左右に対をなす脚上部用エアバッグa1及び脚下部用エアバッグa2が、それぞれ脚受11の中心軸の軸長方向へ所定の距離を隔てて配設してある。
【0032】
脚載部3は、座部1に回動可能に接続されている。脚載部3の回動動作は、基台部5内に配設されたリニア動作するフットレストアクチュエータ(図示しない)の進退動作によって、脚載部3を枢支連結部材(図示しない)の枢軸回りに傾動させて実現している。フットレストアクチュエータにはフットレスト駆動用モータ(図示しない)から駆動力が与えられるようになっており、与えられた駆動力によって進退動作をする。また、前記枢支連結部材の近傍に、脚載部3の回動量の検出手段としての回動角度を検出するフットレスト角度検出センサ(図示しない)が配設してある。
【0033】
また、脚載部3は座部1から離れる方向または近づく方向にスライド移動することが可能となっている。脚載部3のスライド移動は、基台部5内に配設されたリニア動作するスライド専用アクチュエータ(図示しない)の進退動作によって、脚載部3の回動位置を維持したまま枢支連結部材も追従して進退動作をし、脚載部3をスライド移動させている。また、前記枢支連結部材の近傍に、脚載部3のスライド移動量を検出する脚載部距離検出センサ(図示しない)が配設してある。
【0034】
(5.足裏支持体)
足裏支持体4は脚載部3の先端部に位置しており、脚載部3に連結して配設されている。被施療者Mが着座した場合は、被施療者Mの足裏を左右方向、下方向、及び後方向から覆うようにして支持する。足裏支持体4には足裏部用エアバッグa5が底部及び左右に対をなすように配設されている。
【0035】
被施療者Mが着座した場合に、被施療者の脚の状態に応じてリモートコントロールからの指示により脚載部3の足裏支持体4の施療開始位置を調整して設定することができる。例えば、脚が窮屈に感じた場合は、リモートコントロールからの指示により脚載部3の足裏支持体4を伸ばす方向にスライド移動させて窮屈感を取り除くことができ、足裏が足裏支持体4に適切に当接してない場合は、脚載部3の足裏支持体4を縮める方向にスライド移動させて、適切に当接するように調整することができる。このように調整して設定された位置が施療開始位置である。
【0036】
本実施形態においては、脚載部3はスライド専用アクチュエータの進退動作によって、足裏支持体4が座部前端から20cmの位置を最も短い状態とし、その状態から18cmの距離だけスライド移動させた位置を限界位置としている。したがって、被施療者は、座部前端を基準として足裏支持体4を20cmから38cmの間で自在に調整し、設定された位置が自分の施療開始位置となる。一方、本発明の脚載部の足裏支持体は、被施療者の足裏から離れる方向に移動するものであるが、その移動量は規定移動量として規定されており、固定値でも施療開始位置の値に応じて変化させた値でも良いが、本実施例では7cmとする。
【0037】
(6.座部)
前記座部1には、当該座部1の幅より少し短い長さを有する横長の臀部用エアバッグa3と大腿部の裏に対応する位置にある腿部用エアバッグa4が所定の間隔を空けて並ぶように併設されている。これらの各エアバッグは、基台部5内に格納された給排気部によってそれぞれ給排気されるようになっている。
【0038】
(7.各エアバッグの機能)
各エアバッグa1、a2、・・・は空気の給排気により伸縮したり、膨張、収縮することでそれぞれのエアバッグが配置された位置における体の各所を刺激してマッサージを行う。
また、揉み玉によるマッサージと組み合わせることで、より効果的なマッサージを行うことができる。脚上部用エアバッグa1、及び脚下部用エアバッグa2にはエアによる直接的なマッサージ機能以外にも脚を狭持する機能も有する。脚上部用エアバッグa1、及び脚下部用エアバッグa2は被施療者の脚を狭持した状態で脚載部3を被施療者から離れる方向にスライドさせることで伸びによるストレッチ効果を得ることができる。また、脚載部3を下方に回動させることで同じように伸びによるストレッチ効果が得られる。
【0039】
また、腿部用エアバッグa4、臀部用エアバッグa3はエアによる直接的なマッサージ機能以外にも、被施療者の身体を昇降させる機能や被施療者の大腿部の裏側と座部の間に生じた空間を埋める機能を有する。つまり、被施療者Mが着座した際に膝が曲がった状態であった場合でも、腿部用エアバッグa4で被施療者の大腿部を上昇させたり、空間を埋めたりすることでストレッチ効果を向上させることができる。なお、臀部用エアバッグa3も同時に上昇させれば身体を上昇させることも可能である。
【0040】
(8.給排気部)
図3は、本実施形態に係るマッサージ機に設けた給排気部の構成を示すブロック図である。図中、118は各エアバッグa1、a2、・・・に給気するためのエアポンプである。エアポンプ118には、当該エアポンプ118から圧入される大気を一時的に貯留すると共に、各エアバッグa1、a2、・・・に分流する分流器119が連結してある。分流器119には、複数の吐気口が各エアバッグa1、a2、・・・に対応して設けてあり、各吐気口には当該吐気口の開口を開閉する電磁弁B1、B2、・・・がそれぞれ設けてある。この分流器119の各吐気口と、対応するエアバッグa1、a2、・・・とは耐圧ホースによってそれぞれ連結してある。そして、これらの電磁弁B1、B2、・・・の開閉動作を制御することによって所要のエアバッグa1、a2、・・・に対して給排気して、エアバッグa1、a2、・・・を膨張、収縮させる。これによって、被施療者に対してエアマッサージ及びその他の動作が行われる。
【0041】
(9.脚載部のスライド及び回動)
図4は、本実施形態に係るマッサージ機の脚載部の動作を示した図である。図4(a)はマッサージ開始前の状態である。被施療者Mの脚が長い場合は、足裏支持体4を備えたことにより、図に示すように被施療者Mの膝が曲がってしまう可能性がある。また、脚が長い場合に限らず、浅く腰掛けている場合も膝が曲がってしまう可能性がある。さらに、足裏を足裏支持体4に当接するために被施療者Mは膝を曲げた状態で着座してしまう傾向がある。
【0042】
図4(a)に示すように膝が曲がった状態で脚載部3を下方向に回動させても効果的なストレッチをすることができない。そこで、本実施形態に係るマッサージ機は、まず脚載部3の足裏支持体4を被施療者の足裏から離れる方向にスライド移動させてから、脚狭持手段である脚上部用エアバッグa1及び脚下部用エアバッグa2により被施療者の脚を狭持した状態で下方向に回動させて施療を行う。そうすることで、被施療者Mの膝が伸びた状態での効果的なストレッチを行うことができる。図4(b)は、脚載部3をスライド移動させた状態を示した図である。
【0043】
なお、脚載部3をスライド移動させる場合は、脚上部用エアバッグa1、及び脚下部用エアバッグa2を給気して被施療者Mの脚を狭持した状態で移動させるのが好ましい。そうすることで、脚を伸ばす余裕空間を確保しつつ強制的に被施療者の脚を伸ばすことができる。また、狭持しない場合においても、脚載部3をスライド移動させることで、被施療者Mが脚を伸ばす余裕空間を確保出来るため、効果的なストレッチを行うことができる。
また、足裏支持体4のみを脚載部3から遠ざかるようにスライド移動させてもよい。この場合、足裏部用エアバッグa5で被施療者の足首部を狭持しておけば、足首の伸ばし効果を得ることができる。
【0044】
(10.座部のエアバッグを利用)
図5は本実施形態に係るマッサージ機の座部1に備えたエアバッグを利用してマッサージを行う様子を示した模式図である。図5(a)は座部1に備えられたエアバッグ(臀部用エアバッグa3、腿部用エアバッグa4)を利用していない場合である。この場合はエアバッグを利用しなくても被施療者Mの膝は伸びた状態となっており、脚載部3のスライド移動や回動を利用したストレッチを効果的に行うことができる。
【0045】
図5(b)は臀部用エアバッグa3、腿部用エアバッグa4の両方を利用して被施療者Mの身体を上昇させている図である。図5(b)に示した被施療者Mの大腿部の裏側と座部1との間に空間が生じ、膝が曲がった状態になっている。これは本実施形態に係るマッサージ機が足裏保持部4を備えているため、足裏支持体4の調整の好みにより生じてしまう。この状態で脚載部3の脚上部用エアバッグa1及び脚下部用エアバッグa2により被施療者Mの脚を狭持して、脚載部3を座部1から遠ざかる方向にスライド移動させたり、下方向に回動させても、被施療者Mは脚のストレッチを効果的に受けることはできない。したがってこの場合は図5(b)に示すように臀部用エアバッグa3、及び腿部用エアバッグa4により被施療者Mの身体を上昇させることで、大腿部の裏側と座部1との間に生じた空間を埋め、前記ストレッチを効果的に行うことができる。
【0046】
図5(c)は腿部用エアバッグa4を給気して被施療者Mの大腿部の裏側と座部1との間に生じた空間を埋めている図である。図5(b)の場合とは異なり、臀部用エアバッグa3は給気されないため、被施療者Mの上半身が上昇することはないが、被施療者Mの大腿部の裏側と座部1との間に生じた空間が埋められているため、被施療者Mの膝裏に押圧力が加わり、膝の前面部は伸びた状態となる。この状態で脚載部3の脚上部用エアバッグa1及び脚下部用エアバッグa2により被施療者Mの脚を狭持して、脚載部3を座部1から遠ざかる方向にスライドさせると、被施療者Mは脚の伸びを十分に感じることができ効果的なストレッチを行うことができる。そして、スライド移動させた位置で脚載部3を下方向に回動させると、より効果的なストレッチを行うことができる。
なお、図5(b)において被施療者Mの身体を上昇させる際は、腿部用エアバッグa4は給気せずに臀部用エアバッグa3のみを給気して上昇させるようにしてもよい。
【0047】
(11.ストレッチ)
図6は、本実施形態に係るマッサージ機によりマッサージを行う様子を示した模式図である。まず、脚載部3に備える脚上部用エアバッグa1と脚下部用エアバッグa2により被施療者Mの脚を狭持する。その状態で脚載部3の足裏保持部4を座部1から遠ざかる方向に(被施療者Mの足裏から離れる方向)に規定移動量(7cm)だけスライド移動する(矢印I)。この移動により、被施療者の脚をスライド移動方向に伸ばしてストレッチ(以下、シングルストレッチとする)を行うことができる。なお、この規定移動量は、脚が長く、施療開始位置が脚載部4のスライド移動量の限界位置に近い場合は規定通りの移動は出来ないものである。
【0048】
前記の脚載部3がスライド移動した状態で脚載部3及び足裏保持部4を下方向に回動する(矢印II)ことにより、被施療者Mの脚の前面部を伸ばしてストレッチ(以下、フットストレッチとする)を行うことができる。脚載部3がシングルストレッチを行った時に規定移動量まで移動出来なかった場合は、フットストレッチを行う前に腿部用エアバッグa4を給気する。腿部用エアバッグa4を給気して移動量不足を補う(矢印III)ことで、前記のような効果的なフットストレッチを行うことができる。
【0049】
昇降手段の動作となる腿部用エアバッグa4の給気の判断は、本実施形態においては、施療開始位置と比較される所定位置を、限界位置(座部前端から38cm)から規定移動量(7cm)を差し引いた位置である31cmという値としている。したがって、被施療者の脚が短く、被施療者自身で施療開始位置を25cmに設定した場合は、昇降手段は上昇しない。また、被施療者の脚が長く、施療開始位置を35cmに設定した場合は3cmしか移動出来ないので、昇降手段が上昇してストレッチ効果を補うことになる。なお、昇降手段の動作は上昇する/しないだけでなく上昇量を施療開始位置に応じて細かく決定しても良い。
【0050】
なお、腿部用エアバッグa4の給気に際しては、被施療者が自分の脚の長さに応じて予め設定した施療開始位置から施療者自身の脚の長さを推測して動作させても良い。つまり、施療開始位置が座部に近い場合は、脚が長くない被施療者であると判断し、足裏支持体4と足裏との間に膝を伸ばす余裕空間が簡単に得られるため、腿部用エアバッグa4を給気しなくても十分に効果的なストレッチを行うことができると見做す。かかる場合は、腿部用エアバッグa4に給気を行わない。逆に、設定した座部から離れている場合は、脚が長い被施療者であると判断し、足裏支持体4と足裏との間に膝を伸ばす余裕空間が簡単に得られず腿部用エアバッグa4を給気しないと効果的なストレッチを行えないと見做す。かかる場合は、腿部用エアバッグa4に給気を行う。
【0051】
前記シングルストレッチとフットストレッチを組み合わせたストレッチ(以下、ダブルストレッチとする)を行う場合は、シングルストレッチ後にフットストレッチを行ってもよいし、フットストレッチ後にシングルストレッチを行ってもよい。また、同時に行ってもよい。2つのストレッチを組み合わせることにより単独で行うストレッチより効果があるストレッチを実現することができる。
【0052】
なお、腿部用エアバッグa4を給気するタイミングは上記のタイミング(シングルストレッチとフットストレッチの間)に限定せず、例えばそれぞれのストレッチを行いながら同時に腿部用エアバッグa4を給気すれば、給気によるストレッチ効果も加えることができる。
また、例えば、一旦は膝が曲がった状態でダブルストレッチを行い、その結果十分なマッサージ効果が得られなかった場合に腿部用エアバッグa4を給気するようにしてもよい。
【0053】
さらに、例えば、脚載部3及び足裏保持部4を最大限にスライド移動させて伸ばした状態でも被施療者の脚のほうがさらに長い場合は、最大限に伸ばした脚載部3を所定の距離だけ縮めながら腿部用エアバッグa4に給気する。そして、再び脚載部3をスライド移動させたり回動させたりすることにより、前記各ストレッチを実現することができる。
【0054】
さらにまた、腿部用エアバッグa4は被施療者が任意に給排気できるようにしてもよい。そうすることで、腿部用エアバッグa4を給気しなくても十分にダブルストレッチの効果を得ることができる被施療者であっても、さらにストレッチ効果を高めたい場合に、腿部用エアバッグa4の給気によるストレッチ効果でマッサージ効果を上げることができる。
【0055】
(12.シングルストレッチの動作)
図7は、シングルストレッチの動作を示すフローチャートである。まず、被施療者Mが設定した施療開始位置を制御部に設定し(ステップS701)、その後脚上部用エアバッグa1と脚下部用エアバッグa2に給気をする。(ステップS702)。脚上部用エアバッグa1と脚下部用エアバッグa2への給気は、被施療者Mの脚を狭持するためである。次に、施療開始位置と予め記憶されている所定位置を比較して(ステップS703)、その結果に応じて腿部用エアバッグa4の給気量を制御する。腿部用エアバッグa4への給気は、被施療者Mの大腿部の裏側に腿部用エアバッグa4からの圧力を加えてマッサージを行うためである。ここでは、ステップS701で設定した施療開始位置に応じて腿部用エアバッグa4を制限なく膨張するかどうかを判断する。施療開始位置が所定位置より遠く、腿部用エアバッグa4をストレッチの時に大腿部の昇降手段として利用する必要があると判断した場合は、完全膨張を行わず膨張に制限を加え(ステップS705)、残余給気量を大腿部の昇降に利用する。施療開始位置が所定位置より近く、大腿部の昇降は不要であると判断した場合には制限なく希望通りの膨張を行って押圧力を強くしてマッサージ効果を高める(ステップS704)。
【0056】
なお、この時、大腿部の昇降は不要であると判断した場合であっても、完全膨張を行わないようにし、ストレッチの時に残余給気量の給排気によりマッサージ動作を行うようにしてもよい。
【0057】
被施療者Mの脚が脚載部3に狭持されたら、脚載部3の足裏支持体4を被施療者の足裏から離れる方向に規定移動量だけスライド移動させようとするが、上述のステップS703の結果、施療開始位置が所定位置より遠いと判断された場合は、「限界位置が近く規定移動量だけの移動が出来ない」、または「脚の長い被施療者が使用している可能性が高く座部と大腿部の裏に空間がある虞が高い」と判断し、限界位置までスライド移動すると同時に腿部用エアバッグa4に給気して(ステップS707)その後2秒間状態を保持する(ステップS708)。施療開始位置が所定位置より近い場合は、腿部用エアバッグa4に給気せずにスライド移動させ(ステップS706)、その後2秒間状態を保持する(ステップS708)。そして、前記で給気した各エアバッグのエアを排気して(ステップS709)、処理を終了する。
【0058】
なお、腿部用エアバッグa4の給気は、完全膨張する前に予め停止させ、残余給気量の給排気をすることにより押圧によるマッサージ動作を行うことが可能となり、また押圧によるマッサージ動作を行わない場合は、完全膨張をして被施療者Mの脚を最大限に伸ばすことができるようにしてもよい。
【0059】
また、上記所定位置は限界位置から規定移動量を差し引いた値として施療開始位置と比較する他、自由に設定出来、更には所定位置との比較をすることなく必要に応じて、又は常に大腿部を上昇させることも可能である。
【0060】
さらに、上記スライド移動時(ステップS706、S707)にはスライド移動に先立って座部に近づく方向にスライド移動させても良い。さらにまた、上記ステップS703の結果、施療開始位置が限界位置とほぼ等しい場合にのみスライド移動に先立って座部に近づく方向にスライド移動させても良い。このように構成すれば、例えばスライド移動すべき状況で限界位置のために本来の動作が出来ない場合であっても、一旦縮めた状態にすることでスライド移動が実現出来、ストレッチを体感することができる。なお、座部に近づく方向にスライド移動させる場合にも、ほぼ同時に腿部用エアバッグa4の給気を行っても良い。すなわち、上記した実施例においてはスライド移動と腿部用エアバッグa4の給気は連係している。
【0061】
(13.第1のダブルストレッチの動作)
図8は、第1のダブルストレッチの動作を示すフローチャートである。まず、被施療者Mが設定した施療開始位置を制御部に設定し(ステップS801)、その後脚上部用エアバッグa1と脚下部用エアバッグa2に給気をする。(ステップS802)。脚上部用エアバッグa1と脚下部用エアバッグa2への給気は、被施療者Mの脚を狭持するためである。次に、施療開始位置と予め記憶されている所定位置を比較して(ステップS803)その結果に応じて腿部用エアバッグa4を給気量を制御する。腿部用エアバッグa4への給気は、被施療者Mの大腿部の裏側に腿部用エアバッグa4からの圧力を加えてマッサージを行うためである。ここではステップS801で設定した施療開始位置に応じて腿部用エアバッグa4を制限なく膨張するかどうかを判断する。施療開始位置が所定位置より遠く、腿部用エアバッグa4をストレッチの時に大腿部の昇降手段として利用する必要があると判断した場合は、完全膨張を行わず膨張に制限を加え(ステップS805)、残余給気量を大腿部の昇降に利用する。施療開始位置が所定位置より近く、大腿部の昇降は不要であると判断した場合には制限なく希望通りの膨張を行って押圧力を強くしてマッサージ効果を高める(ステップS804)。
【0062】
なお、この時大腿部の昇降は不要であると判断した場合であっても、完全膨張を行わないようにし、ストレッチの時に残余給気量の給排気によりマッサージ動作を行うようにしてもよい。
【0063】
被施療者Mの脚が脚載部3に狭持されたら、脚載部3の足裏支持体4を被施療者の足裏から離れる方向に規定移動量だけスライド移動させようとするが、上述のステップS803の結果、施療開始位置が所定位置より遠いと判断された場合は、「限界位置が近く規定移動量だけの移動が出来ない」、または「脚の長い被施療者が使用している可能性が高く座部と大腿部の裏に空間がある虞が高い」と判断し、限界位置までスライド移動すると同時に腿部用エアバッグa4に給気して(ステップS807)その後2秒間状態を保持する(ステップS808)。施療開始位置が所定位置より近い場合は、腿部用エアバッグa4に給気せずにスライド移動させ(ステップS806)、その後2秒間状態を保持する(ステップS808)。ここまでの処理がシングルストレッチであり、図7の場合と全く同じ処理である。そして、現状のまま脚載部3を下方向に回動させて(ステップS809)、1秒間状態を保持する(ステップS810)。そして、前記で給気した各エアバッグのエアを排気して(ステップS811)、処理を終了する。シングルストレッチをした状態でさらにフットストレッチを行うため、単独のストレッチよりも効果をあげることができる。
【0064】
(14.第2のダブルストレッチの動作)
図9は、第2のダブルストレッチの動作を示すフローチャートである。ここでは、脚が長い被施療者に対する効果的なダブルストレッチの動作を示す。まず、被施療者Mが設定した施療開始位置を制御部に設定し(ステップS901)、脚上部用エアバッグa1と脚下部用エアバッグa2と腿部用エアバッグa4を給気する(ステップS902)。被施療者Mの脚が脚載部3に狭持されたら、脚載部3を座部1から遠ざかる方向にスライド移動させる(ステップS903)。施療開始位置と所定値とを比較して(ステップS904)施療開始位置が所定値より遠い場合は、脚載部3を座部1に近づく方向に所定の距離だけスライド移動させながら腿部用エアバッグa4に給気する(ステップS905)。
なお、この時腿部用エアバッグa4への給気は必須ではない。
【0065】
脚載部3を座部1に近づく方向に所定の距離だけ戻す動作が終わると脚載部3を座部1から遠ざかる方向に、ステップS905で戻した距離以上スライド移動させる(ステップS906)。これにより、脚が長い被施療者であっても効果的なシングルストレッチを体感することができる。その後は図10の場合と同様に、2秒間状態を保持して(ステップS907)、フットストレッチを行って(ステップS908〜ステップS910)処理を終了する。
【0066】
なお、上記所定値は任意に設定できる値であるが、上記で説明した所定位置と異なり、脚載部3が機構上スライド移動できる限界位置にほぼ等しい値に設定することが望ましい。このように設定すれば、被施療者の脚が極端に長く、施療開始位置が脚載部3のスライド移動の限界位置とほぼ同じ場合であっても、一旦縮めることで伸びのストレッチを体感でき、その他の場合は縮める動作がなく、通常の被施療者に対しては処理の効率化を図ることができる。また、それ以外の値であっても、一旦縮めてから伸ばす動作を行うことでアクセントのある伸びを実現でき、ストレッチにメリハリをつけることができる。さらに、所定値をゼロに設定することで、ストレッチを行う場合には必ず一旦縮めてからストレッチが開始されるため、施療開始位置の設定値によりマッサージ動作が変化することなく、装置としての動作が画一的となり、被施療者にとっては非常に使いやすいものとなる。
【0067】
また、ストレッチ状態の保持時間は前記の時間に限定しない。また、被施療者Mが任意に時間設定できるようにしてもよい。
また、リクライニングにより座部1を傾動させることで被施療者Mの臀部を下降させて膝を伸ばした状態にしてもよい。
このように、本発明に係るマッサージでは足裏保持部4を備える場合であっても被施療者Mの脚を伸縮により効果的にストレッチすることができる。
【0068】
以上の前記実施形態により本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は実施形態に記載の範囲には限定されず、これら各実施形態に多様な変更又は改良を加えることが可能である。そして、かような変更又は改良を加えた実施の形態も本発明の技術的範囲に含まれる。このことは、特許請求の範囲及び課題を解決する手段からも明らかなことである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係るマッサージ機の全体斜視図である。
【図2】本発明に係るマッサージ機の側面断面図である。
【図3】本発明に係るマッサージ機に設けた給排気部の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明に係るマッサージ機の脚載部の動作を示した図である。
【図5】本発明に係るマッサージ機の座部に備えたエアバッグを利用してマッサージを行う様子を示した模式図である。
【図6】本発明に係るマッサージ機によりマッサージを行う様子を示した模式図である。
【図7】本発明に係るマッサージ機のシングルストレッチの動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係るマッサージ機の第1のダブルストレッチの動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明に係るマッサージ機の第2のダブルストレッチの動作を示すフローチャートである。
【図10】従来技術を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
a1 脚上部用エアバッグ
a2 脚下部用エアバッグ
a3 臀部用エアバッグ
a4 腿部用エアバッグ
a5 足裏部用エアバッグ
a6 背中部用エアバッグ
a7 腰部用エアバッグ
a8 腿臀部用エアバッグ
1 座部
2 背もたれ部
3 脚載部
4 足裏支持体
5 基台部
10 肘置部
11 脚受
118 エアポンプ
119 分流器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施療者が着座する座部と、
前記被施療者の脚を狭持する脚狭持手段を有し、前記座部に回動可能に接続されて当該座部から離れる方向または当該座部に近づく方向にスライド移動する脚載部と、
前記脚載部に接続され前記被施療者の足裏を支持する足裏支持体を備えるマッサージ機であって、
前記足裏支持体を前記被施療者の足裏から離れる方向に移動後、上記脚狭持手段により被施療者の脚を狭持した状態で前記脚載部を下方向に回動させて施療を行うことを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
請求項1に記載のマッサージ機において、
前記足裏支持体の移動が前記脚載部の脚狭持手段により被施療者の脚を狭持した状態で実行されることを特徴とするマッサージ機。
【請求項3】
請求項1または2に記載のマッサージ機において、
前記被施療者の身体を昇降させる昇降手段を備えることを特徴とするマッサージ機。
【請求項4】
請求項1または2に記載のマッサージ機において、
前記被施療者の大腿部の裏に対応する位置において昇降動作をする昇降手段を備えることを特徴とするマッサージ機。
【請求項5】
請求項3または4に記載のマッサージ機において、
前記脚載部の回動及び/またはスライド移動に応じて前記昇降手段が昇降動作を行うことを特徴とするマッサージ機。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれかに記載のマッサージ機において、
前記昇降手段が、スライド移動により設定された足裏支持体の施療開始位置に応じて上昇する動作をすることを特徴とするマッサージ機。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のマッサージ機において、
脚載部の足裏支持体が被施療者の足裏から離れる方向に移動する前に、前記座部に近づく方向にスライド移動することを特徴とするマッサージ機。
【請求項8】
請求項7に記載のマッサージ機において、
前記脚載部の足裏支持体が、前記座部に近づく方向にスライド移動する際に、前記昇降手段が上昇することを特徴とするマッサージ機。
【請求項9】
請求項7または8に記載のマッサージ機において、
スライド移動により設定された足裏支持体の施療開始位置が、前記座部から離れる方向にスライド移動することができる限界位置にほぼ等しい場合にのみ、当該脚載部が前記座部に近づく方向にスライド移動することを特徴とするマッサージ機。
【請求項10】
請求項3ないし6のいずれかに記載のマッサージ機において、
前記昇降手段が、エアバッグで形成され、当該エアバッグの給排気により昇降動作を行うことを特徴とするマッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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