マッサージ機
【課題】施療子に生じている当接力を求めることができるマッサージ機を提供する。
【解決手段】被施療者の身体に当接する施療子7a,7bを取り付けている支持アーム11と、この支持アーム11を駆動することによってマッサージ動作を行なわせる駆動部と、施療子7a,7bが身体に当接することによって当該施療子7a,7bに生じる加速度を計測する加速度センサ9と、加速度センサ9の計測結果に基づいて施療子に作用している当接力を求める制御装置10とを備えている。
【解決手段】被施療者の身体に当接する施療子7a,7bを取り付けている支持アーム11と、この支持アーム11を駆動することによってマッサージ動作を行なわせる駆動部と、施療子7a,7bが身体に当接することによって当該施療子7a,7bに生じる加速度を計測する加速度センサ9と、加速度センサ9の計測結果に基づいて施療子に作用している当接力を求める制御装置10とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
マッサージ機として、被施療者の身体に当接する施療子、この施療子を取り付けているアーム、及び、このアームを駆動することによって施療子にマッサージ動作を行なわせる駆動部を備えたものがある。駆動部は、モータ及びこのモータによって回転する回転軸を有しており、回転軸が回転することで前記アームを駆動させ、施療子にマッサージ動作を行なわせている。
特許文献1には、被施療者(使用者)に痛さや不快を感じさせないように、施療子によるマッサージ強さを調整する制御を行なうマッサージ機が開示されている。このマッサージ機は、施療子が被施療者の身体を押す際に当該施療子が受ける反力(当接力)を検出するためのセンサを備えており、このセンサの検出結果に基づいて被施療者の身体(被施療部)の硬さを判定し、この判定結果に基づいて施療子にマッサージ動作を行なわせる力(印加力)を変化させている。なお、特許文献1に、施療子が受ける反力(当接力)を検出するためのセンサについての具体的な構成は記載されていない。
【0003】
また、施療子を動作させる力を調整することができるマッサージ機として、特許文献2に記載のものがあり、このマッサージ機ではセンサとして歪みゲージが用いられている。すなわち、施療子が受ける反力が大きくなると駆動部の回転軸が捩れることから、この回転軸に歪みゲージを取り付け、この歪みゲージによって回転軸の捩れを検出し、この検出結果に応じてモータの出力を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−244855号公報
【特許文献2】特開平7−136225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2では、歪みゲージが駆動部の回転軸に取り付けられており、この回転軸が捩れることで当該回転軸の外周面に生じているせん断歪みを、検出対象としている。すなわち、施療子に生じている現象を検出対象としていない。
本発明は、施療子に生じている当接力を求めることができる新たな技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明のマッサージ機は、被施療者の身体に当接する施療子と、前記施療子を取り付けているアームと、前記アームを駆動することによって前記施療子にマッサージ動作を行なわせる駆動部と、前記施療子が前記身体に当接することによって当該施療子に生じる加速度を計測する加速度センサと、前記加速度センサの計測結果に基づいて前記施療子に作用している当接力を求める検出部とを備えているものである。
このマッサージ機によれば、施療子に生じている加速度に基づいて、当該施療子に作用している当接力を求めることができる。このように施療子の当接力を求めるために、当該施療子に生じている現象として加速度を、検出対象とすることができる。
【0007】
また、前記検出部は、前記加速度センサが計測する前記施療子の加速度と当該施療子に作用している当接力との関係についての対応情報を記憶している記憶部と、前記加速度センサが計測した加速度に応じて前記対応情報から前記当接力を取得する取得部とを有しているのが好ましい。
これによれば、加速度センサが加速度を計測すると、取得部は当該加速度に応じて、記憶部が記憶している対応情報から、当接力を求めることができる。
【0008】
また、前記マッサージ機は、被施療者が座る座部と、被施療者が凭れかつ左右方向の回動中心線回りに回動する背凭れ部とを更に備え、前記施療子は、被施療者の身体に対して後方から接触するように前記背凭れ部に設けられ、前記加速度センサは、前後方向に直交する左右方向の加速度成分を計測するのが好ましい。
これによれば、背凭れ部は回動することでリクライニング動作をする。なお、前記前後方向は、背凭れ部の厚さ方向であり、背凭れ部が後方へ倒れた状態では、前後方向は高さ方向を向くこととなる。そして、被施療者が凭れた状態にある背凭れ部がリクライニング動作をして倒れると、被施療者の体重が施療子に負荷され、当該施療子に作用する当接力の前後方向成分は増大する。しかし、前記マッサージ機の構成によれば、前記検出部が当接力を求めるために、加速度センサは、被施療者の体重を受ける方向である前後方向に直交する左右方向の加速度成分を計測することから、前記施療子に作用している当接力を求める際に、背凭れ部の回動角度の影響を受けにくい構成とすることができる。
【0009】
そこで、このマッサージ機において、前記検出部は、前記加速度センサが計測する前記施療子の加速度と当該施療子に作用している当接力との関係について、前記背凭れ部の所定の回動範囲で共通化させた対応情報を記憶している記憶部と、前記背凭れ部が前記所定の回動範囲内にある状態で前記加速度センサが計測した加速度に応じて、前記共通化された対応情報から前記当接力を取得する取得部とを有しているのが好ましい。
【0010】
前記のとおり、施療子をマッサージ動作させることによって当該施療子に作用している当接力を求める際に、背凭れ部の回動角度の影響を受けにくい構成とすることができるので、前記対応情報を、背凭れ部の所定の回動範囲で共通化させることができ、この共通化させた対応情報を記憶部が記憶していればよい。すなわち、記憶部は、回動角度毎の多数の対応情報を記憶していなくてよい。そして、背凭れ部が前記所定の回動範囲内にある状態で加速度センサが計測した加速度に応じて、共通化された対応情報から、当接力を求めることができる。
【0011】
さらに、この場合において、前記所定の回動範囲は、前記背凭れ部が起立した状態から、当該背凭れ部が倒伏した状態までの範囲であり、前記記憶部は、前記起立した状態から前記倒伏した状態までの全範囲で共通化させた対応情報を記憶しているのが好ましい。
この場合、背凭れ部が起立した状態から倒伏した状態までの回動範囲(全回動範囲)で、対応情報を共通化させた構成となる。すなわち、記憶部は、前記回動範囲で一つに共通化させた対応情報を記憶していればよい。
【0012】
又は、前記マッサージ機は、被施療者が座る座部と、被施療者が凭れかつ左右方向の回動中心線回りに回動する背凭れ部とを更に備え、前記検出部は、前記加速度センサが計測する前記施療子の加速度と当該施療子に作用している当接力との関係についての対応情報を、前記背凭れ部の回動角度毎に記憶している記憶部と、前記加速度センサが計測した加速度及び前記回動角度に応じて前記対応情報から前記当接力を取得する取得部とを有しているのが好ましい。
これによれば、加速度センサによって加速度が計測されると、取得部はこの加速度及び背凭れ部の回動角度に応じて、記憶部が記憶している対応情報から、当接力を求めることができる。このため、背凭れ部の回動角度に応じた当接力を求めることができる。
【0013】
また、このマッサージ機において、前記加速度センサは、左右方向に直交する方向の加速度成分について計測する機能を有し、前記加速度センサの計測結果に基づいて前記背凭れ部の回動角度を検出する角度検出部を更に備えているのが好ましい。これによれば、背凭れ部が回動すると、施療子に作用する左右方向に直交する方向の加速度成分(重力方向の成分)は変化する。したがって、角度検出部は、加速度センサの計測値に基づいて背凭れ部の回動角度を検出することが可能となる。
【0014】
また、前記マッサージ機の前記加速度センサは前記アームに固定されているのが好ましい。これによれば、センサを施療子に直接取り付けなくても施療子に生じる加速度を計測することができる。
また、前記マッサージ機は、前記施療子が被施療者の身体に当接すると前記アームが変位することができるように当該アームを変位自在として取り付けている取付部材を更に備え、前記加速度センサは、前記アームが変位自在となっている方向の加速度成分を計測するのが好ましい。
これによれば、施療子が被施療者の身体に当接すると、施療子はアームと共に変位することができる。そして、この変位によって生じた当該施療子の変位方向の加速度成分を、加速度センサが計測することができる。したがって、被施療者の身体に施療子が当接し、アームが変位すれば、当該アームが弾性変形していなくても、加速度センサが当該施療子に生じた変位方向の加速度成分を求め、これにより、前記検出部が前記当接力を求めることができる。なお、従来のようにセンサとして歪みゲージが用いられている場合では、当該歪みゲージが取り付けられている部材が弾性変形する必要がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明のマッサージ機によれば、施療子に作用している加速度を検出対象とすることができるので、実際に施療子に作用している当接力を精度良く求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のマッサージ機を側面から見た概略説明図である。
【図2】マッサージユニットを前方から見た斜視図である。
【図3】マッサージ機の要部のブロック図である。
【図4】施療子、支持アーム及び駆動アームを左右方向から見た説明図である。
【図5】支持アーム及び駆動アームを前後方向から見た説明図である。
【図6】力センサによる計測値と加速度センサによる計測値との説明図である。
【図7】力センサによる計測値と、当接力の推定値とを示している説明図である。
【図8】力センサによる計測値と、当接力の推定値とを示している説明図である。
【図9】関数の具体的な係数を説明している図である。
【図10】施療子が高位置にある場合において、加速度センサを用いて推定した当接力と、力センサによる計測値とを示している説明図である。
【図11】施療子が中間位置にある場合において、加速度センサを用いて推定した当接力と、力センサによる計測値とを示している説明図である。
【図12】施療子が低位置にある場合において、加速度センサを用いて推定した当接力と、力センサによる計測値とを示している説明図である。
【図13】施療子の位置の説明図である。
【図14】推定された施療子の当接力の説明図であり、(a)が1回目であり、(b)が2回目である。
【図15】推定された施療子の当接力の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明のマッサージ機を側面から見た概略説明図である。このマッサージ機は、被施療者(使用者)が座る座部1と、この座部1の後側に設けられた背凭れ部2と、座部1の前側に設けられた脚載せ部3とを備えており、椅子型である。座部1は脚体4により支持されている。被施療者が凭れる背凭れ部2は、座部1側にある左右方向の回動中心線回りに前後回動可能である。つまり、背凭れ部2はリクライニング動作をする。脚載せ部3は、座部1側にある左右方向の回動中心線回りに上下回動可能である。なお、以下では、背凭れ部2において、その幅方向(図1の紙面に直交する方向)が「左右方向」であり、その厚さ方向が「前後方向」であり、左右方向と前後方向とは直交する関係にある。
【0018】
背凭れ部2内には、被施療者の身体(被施療部)に当接する施療子(揉み玉)7a,7bを備えたマッサージユニット5が設けられている。マッサージユニット5は、背凭れ部2の内部に設けられたガイドレール(図示せず)にガイドされている。図2はマッサージユニット5を前方から見た斜視図である。マッサージユニット5は、昇降機構40が動作することによって前記ガイドレールに沿って上下方向に移動する(図1の矢印M)。
【0019】
図2において、上下の施療子7a,7bは、マッサージユニット5の左右にそれぞれ設けられている。上下の施療子7a,7bは、弧形状である支持アーム11の両端部に回転自在として取り付けられている。支持アーム11はその中間部において駆動アーム(取付部材)12に揺動可能として取り付けられている。
マッサージユニット5は、支持アーム11及び駆動アーム12を駆動することによって施療子7a,7bに揉み、叩き、指圧等のマッサージ動作をさせる駆動部を備えている。駆動部として、揉み駆動部16、叩き駆動部17及び押し引き駆動部18を有している。
揉み駆動部16は、施療子7a,7bに左右方向の成分を有する揉みマッサージ動作を行なわせる。叩き駆動部17は、施療子7a,7bに前後方向の成分を有する叩きマッサージ動作を行なわせる。押し引き駆動部18は、施療子7a,7b、支持アーム11及び駆動アーム12を含む機械ブロック19を前後方向に移動させる。これにより、施療子7a,7bに指圧によるマッサージ動作を行なわせることができる。
なお、昇降機構40、揉み駆動部16、叩き駆動部17及び押し引き駆動部18は、通常用いられているものを適宜採用することができ、図示した以外のものであってもよい。
【0020】
図3はこのマッサージ機の要部のブロック図である。前記マッサージユニット5は、マッサージ機が備えている制御装置10によって動作が制御される。制御装置10は、CPU及び記憶部13を有しているプログラマブルなマイコンからなる。記憶部13には所定の各機能を実行するプログラムが記憶されており、制御装置10は、前記プログラムが実行する機能部として取得部14を備えており、加速度センサ9の計測結果に基づいて、施療子7a,7bに作用している当接力を求める検出部としての機能を有している。また、制御装置10は機能部として角度検出部30を有している。これら機能部については後に説明する。また、制御装置10はマッサージ機が備えているコントローラ8の指令信号に基づいて動作する。コントローラ8には被施療者が操作する複数の押しボタンが設けられている。
【0021】
図4は施療子7a,7b、支持アーム11及び駆動アーム12を左右方向から見た説明図である。駆動アーム12は、施療子7a,7bが被施療者の身体Hに対して前後方向の後方から前方へ向かって当接するように支持アーム11を取り付けている。
また、本発明のマッサージ機は、支持アーム11と一体となっている対の施療子7a,7bに生じる加速度を計測する加速度センサ9を備えている。加速度センサ9は、施療子7a,7bと一体となって動く支持アーム11に、取り付け片20を介して固定されている。加速度センサ9は、計測した加速度を電圧値として出力する。これにより、加速度センサ9を施療子7a,7bに直接取り付けなくても、施療子7a,7bに生じる加速度が得られる。そして、制御装置10(図3参照)は、加速度センサ9による計測結果を受信することができる。加速度センサ9は静電容量型やピエゾ抵抗型とすることができる。
【0022】
図5は支持アーム11及び駆動アーム12を前後方向から見た説明図である。駆動アーム12はその先端部に左右で対の取付部12b,12bを有しており、これら取付部12b,12b間に左右方向を中心線とする軸12aが取り付けられている。支持アーム11の中間部には、軸12aを挿通させる孔11aが貫通して設けられている。そして、支持アーム11と取付部12b,12bとの間には隙間が形成されており、支持アーム11は、取付部12a,12b間を左右方向に直線的に移動することができる。さらに、孔11aは軸12aよりも直径が大きくなっていることから、支持アーム11は駆動アーム12に対して左右方向に傾くことができる。このように、支持アーム11は駆動アーム12に左右方向に変位可能として取り付けられた構成となる。
【0023】
この構成により、被施療者の身体に施療子7a,7bが後方から当接した状態で、被施療者の体重や、身体に対する施療子7a,7bの印加力(マッサージ力)によって、当該施療子7a,7bは支持アーム11と共に左右方向に変位することができる。そして、この変位によって生じた施療子7a,7bの左右方向の加速度成分を、加速度センサ9が計測する。したがって、支持アーム11が弾性変形していなくても、施療子7a,7bに生じた加速度を求めることができ、これにより、後に説明するが制御装置10によって、施療子7a,7bに作用している当接力を求めることが可能となる。したがって、支持アーム11の剛性が高く変形(弾性変形)が生じにくくても、施療子7a,7bに生じた加速度によって加速度センサ9は出力を得ることができ、当接力を求めることができる。なお、従来のようにセンサとして歪みゲージを用いた場合では、当該歪みゲージが取り付けられている部材が弾性変形する必要がある。
【0024】
また、支持アーム11は板部材からなり、板厚方向が左右方向にある。そして、支持アーム11は金属製からなる。したがって、施療子7a,7bに荷重(体重やマッサージ力)が加わると、この施療子7a,7bを取り付けている支持アーム11は、板厚方向に弾性変形する構成となっている。
【0025】
そして、図4において、加速度センサ9は、施療子7a,7bが身体Hに当接することによって当該施療子7a,7bに生じる加速度を計測する。つまり、施療子7a,7bが身体Hに当接すると、前記構成によれば、支持アーム11に変位及び変形の一方又は双方が生じ、これにより生じる加速度を加速度センサ9が計測し、加速度センサ9は加速度に応じた電圧値を出力する。なお、加速度センサ9は従来知られているものを採用することができ、この実施形態では前後左右上下の三軸方向の加速度を計測することができる三軸仕様のものである。また、加速度センサ9は、施療子7が移動した状態で生じている静加速度、及び、施療子7a,7bが支持アーム11と一体として移動する際に生じる動加速度を計測することができる。
【0026】
そして、図3において、加速度センサ9の計測結果に基づいて、制御装置(検出部)10が、施療子7a,7bに作用している当接力を求める。この場合の加速度センサ9によって計測される加速度は、静加速度と動加速度との内の一方又は双方である。制御装置10が有している前記記憶部13には、加速度センサ9が計測する施療子7a,7bの加速度(出力した電圧値)と、施療子7a,7bに作用している当接力との関係についての対応情報が記憶されている。この対応情報については後に説明する。
そして、制御装置10が有している機能部である前記取得部14は、加速度センサ9が計測した加速度(加速度センサ9から得られた電圧値)に応じて、前記対応情報から当接力を取得する。なお、この実施形態では、取得部14が当接力を取得するために、加速度センサ9は、左右方向の加速度成分を計測している。
【0027】
〔第一実施形態〕
対応情報について説明する。対応情報を関数とすることができ、この関数は、例えば下記の式(1)で表される。入力(xi)が加速度センサ9の計測値(電圧値)であり、出力が推定される前記当接力(fi)である。a0,a1,a2は係数である。この実施形態では、入力(xi)は加速度センサ9による左右方向成分の計測値である。なお、この関数の取得方法については、後に説明する。
【0028】
【数1】
【0029】
これにより、加速度センサ9が左右方向成分の加速度を計測すると、取得部14はこの計測値に応じて、前記対応情報(関数)から、当接力を演算により求めることができる。
以上のように、このマッサージ機によれば、施療子7a,7bに生じている左右方向の加速度に基づいて、当該施療子7a,7bに作用している当接力を求めることができる。このように施療子7a,7bの当接力を求めるために、施療子7a,7bに生じている現象として加速度を検出対象としている。このため、制御装置10は、実際に施療子7a,7bに作用している当接力を精度良く求めることができる。
【0030】
また、本発明の椅子型マッサージ機では、背凭れ部2は回動することでリクライニング動作をする。被施療者が凭れた背凭れ部2がリクライニング動作をして倒れると、施療子7a,7bには、当該施療子7a,7bがマッサージ動作することによって生じている被施療者の身体への印加力の他に、体重の一部が更に負荷される。これにより、施療子7a,7bに作用する前後方向成分の当接力は増大することとなる。なお、背凭れ部2が後方へ倒れた状態では、前後方向は高さ方向を向く。つまり、背凭れ部2が倒れると、施療子7a,7bに作用する高さ方向成分の当接力が変化する。
【0031】
そこで、この実施形態では、図4に示しているように、施療子7a,7bは、被施療者の身体Hに対して前後方向の後方から接触するように背凭れ部2に設けられている構成であり、さらに、制御装置10が施療子7a,7bに作用する当接力を求めるために、加速度センサ9は、この前後方向に直交する左右方向の加速度成分を計測する構成である。
したがって、背凭れ部2に凭れている被施療者の体重が施療子7a,7bに作用する方向と、加速度センサ9による計測方向(左右方向)とが直交することから、当該被施療者の体重による影響が、加速度センサ9による計測結果に影響を与え難い。このため、施療子7a,7bをマッサージ動作させることによって当該施療子7a,7bに作用している当接力を、制御装置10が求める際に、背凭れ部2のリクライニング動作(リクライニング角度)の影響を受けにくい構成とすることができる。
なお、このように、背凭れ部2のリクライニング動作の影響を受けにくい構成とできることによって得られる好ましい形態を、後の〔具体例(その2)〕で説明する。
【0032】
〔第二実施形態〕
本発明では、背凭れ部2のリクライニング動作(リクライニング角度)の影響を考慮して当接力を求めてもよい。この場合(第二実施形態)を説明する。この第二実施形態のマッサージ機は、前記第一の実施形態と比べると、背凭れ部2の回動角度を検出するための機能(角度センサ)を備えている点で異なり、また、前記対応情報が異なるが、その他の構成については同じである。なお、本発明において、背凭れ部2の回動角度は、背凭れ部2のリクライニング角度と同じ意味であり、以下では、リクライニング角度として説明する。
図3により説明すると、この実施形態の記憶部13は、加速度センサ9が計測する施療子7a,7bの加速度と、施療子7a,7bに作用する当接力との関係についての対応情報を、背凭れ部2のリクライニング角度毎に記憶している。
【0033】
すなわち、記憶部13は、前記式(1)と同様の関数を、背凭れ部2のリクライニング角度毎(回動角度毎)に、複数記憶している。例えば、起立状態から倒伏状態までの間について所定角度毎(例えば10ー毎)の関数を記憶している。
これによれば、加速度センサ9によって施療子7a,7bに生じている加速度(静加速度)が計測され、角度センサ9aによって背凭れ部2のリクライニング角度が検出されると、取得部14は、これら加速度及びリクライニング角度に応じて、記憶部13が記憶している前記対応情報から、当接力を求めることができる。したがって、背凭れ部2が回動することで被施療者の体重の影響を施療子7a,7bが受けていても、背凭れ部2のリクライニング角度毎の対応情報を記憶部13が記憶しているため、背凭れ部2のリクライニング角度に応じた当接力を求めることができる。
【0034】
そして、本発明では、加速度センサ9は三軸仕様のものであることから、加速度センサ9は、左右方向に直交する方向(前後方向及び上下方向)の加速度成分についても計測することができる。このため、加速度センサ9を角度センサ9aとして機能させることができる。すなわち、被施療者が凭れた状態にある背凭れ部2が倒れると、被施療者の体重が施療子7a,7bに負荷される。これにより、施療子7a,7bに作用する前後方向の成分の当接力が増大し、施療子7a,7bには前後方向の加速度が生じる。加速度センサ9は前後方向の加速度成分についても計測することから、制御装置10の角度検出部30は、リクライニング動作したことで増大(変化)した前後方向の加速度成分に基づいて、背凭れ部2のリクライニング角度の検出が可能となる。このように、角度センサ9aを、加速度センサ9によって兼用することで、別途角度センサを設ける必要が無くなる。
【0035】
〔第一実施形態及び第二実施形態における対応情報の取得方法〕
前記対応情報の取得方法の例について説明する。対応情報は、以下の方法によって得られる関数であり、得られた関数を予め記憶部13に記憶させている。
対応情報を取得するために、図4に示している施療子7a,7bと身体Hとの間に力センサ(フィルム型の力センサ)を取り付け(図示せず)、この力センサによって実際に施療子7a,7bに作用している接触力を計測する。この接触力は指圧によるマッサージのマッサージ力(指圧力)となる。なお、この力センサは対応情報を取得するため(得られた対応情報が正確なものであることを確認するため)に設置されるものであり、対応情報が得られると取り外される。この力センサの出力値を、図6において計測値Bとして示している。なお、力センサによる計測値は電圧値(V)として得られる。この図6では、開始(時間が0秒)から約7秒後に、背凭れ部2に凭れた被施療者の背中に対して、前記押し引き駆動部18(図2参照)によって、施療子7a,7bが指圧によるマッサージ動作を行なっている。
【0036】
そして、前記力センサによって出力値を取得すると同時に、図4に示している加速度センサ9によって出力値を取得する。この加速度センサ9の出力値を、図6において計測値Aとして示している。加速度センサ9の出力値は左右方向成分のものであり、その値は電圧値(V)として得られる。なお、加速度センサ9は前記のとおり三軸仕様であり、左右方向をX方向とすると、これに直交するY方向及びZ方向についても出力を得ることができる。しかし前記対応情報を求めるために、左右方向を使用している。これは、前記のとおり、支持アーム11が左右方向について変位可能であり、また、前後方向及び上下方向よりも左右方向に撓みが生じやすい構成となっていることから、施療子7a,7bの接触力は、左右方向の加速度成分の影響が顕著に表れるためである。さらに、前記のとおり、左右方向の加速度成分とすれば、背凭れ部2を回動させても被施療者の体重の影響を受けにくいためである。
【0037】
前記力センサ及び加速度センサ9の計測結果に基づいて、加速度センサ9の出力値から当接力(指圧力)の推定を行なうための対応情報としての関数を作成する。この作成方法としては、(a)物理的な機構や仕組みを解析して数式モデルを構築する方法、(b)進化的方法であるGP(Genetic Programming)を用いて数式モデルを構築する方法、がある。
【0038】
〔(b)GP(Genetic Programming)を用いて数式モデルを構築する方法〕
前記(b)の方法によって構築した数式モデルが、前記式(1)である。
式(1)の数式モデルが構築されると、実データ(図6の計測値A)に基づいて最小二乗法により、式(1)の係数a0,a1,a2を求める。実際に得られた値として、a0=0、a1=65.259、a2=26.674が得られる。なお、実データは、1Hzの低域通過フィルタによって高周波ノイズを除去する前処理が行なわれている。
【0039】
このようにして得られた関数を対応情報として記憶部13が記憶する。図7は、力センサによる前記計測値B(図6と同じもの)と、前記取得方法によって得られた関数に基づく当接力の推定値A1とを比較している説明図である。この図7によれば、力センサによる計測値Bと、推定値A1とが略一致している。なお、この図7では、推定された当接力を電圧値(V)によって表現しているが、対応情報に、この電圧値(V)と当接力(N)との関係を含ませておき、この関係を用いて取得部14が演算を行なうことにより、取得部14は当接力(N)を求めることができる。
【0040】
なお、前記第二実施形態とする場合は、この取得方法を、背凭れ部2のリクライニング角度を変えながら実行することによって、背凭れ部2のリクライニング角度毎の対応情報を得ることができ、これを記憶部13に記憶させる。
【0041】
〔(a)物理的な機構や仕組みを解析して数式モデルを構築する方法〕
対応情報としての関数の作成方法として、前記(a)物理的な機構や仕組みを解析して数式モデルを構築する方法について説明する。
数式モデルを二次多項式と設定し、その係数の決定に最小二乗法を用い、これによって得られたモデル出力を新たな入力としたバネ・ダンパ系の数式モデルを作成する。そして、最小二乗法によってバネ・ダンパ係数を決定し、これにより関数を得る。具体的に説明すると、加速度センサ9による計測値(電圧値)をxiとし、二次多項式として式(2)を設定する。なお、xiは、加速度センサ9の左右方向成分の計測値である。
【0042】
【数2】
【0043】
この式(2)により最初のフィッティング値として値yiを導出する。そして、式(2)の係数a0,a1,a2を、加速度センサ9による実際の計測値に基づいて、最小二乗法によって求める。そして、前記値yiを新たな入力として考え、バネ・ダンパ系の数式モデルとして、式(3)を得る。なお、Δtは、サンプリング時間間隔である。また、dはダンパ係数であり、kはバネ係数であり、これら係数d、kを、最小二乗法によって求めることができる。
【0044】
【数3】
【0045】
この式(3)により、当接力(fi)を求めることができる。このようにして得られた関数(式(3))を対応情報として記憶部13が記憶する。これによれば、前記GP(Genetic Programming)を用いて数式モデルを構築した方法と同様に、図8に示しているように、前記フィルム型の力センサによる計測値Bと、式(3)により推定した当接力の推定値A1とが一致している結果が得られる。なお、図8(a)は背凭れ部2を起立させた状態であり、図8(b)は背凭れ部2を後方へ倒した状態の結果を示している。
さらに、この作成方法では、バネ・ダンパ要素も含めた数式モデルを採用しているため、施療子7a,7b及び被施療者の身体(皮膚)の粘弾性を考慮したことと等価となる。このため、フィルム型の力センサによる計測値Bと、式(3)により求めた当接力(推定値A1)とをより一層精度良く一致させることができる。
【0046】
なお、前記第二実施形態とする場合は、この取得方法を、背凭れ部2のリクライニング角度を変えながら実行することによって、背凭れ部2のリクライニング角度毎の対応情報を得ることができ、これを記憶部13に記憶させる。
【0047】
〔具体例(その1)〕
背凭れ部2を起立させた場合(図8(a))と、背凭れ部2を後方へ倒した場合(図8(b))とにおいて、前記取得方法によって得られた関数(式(3))の、具体的な係数a0,a1,a2,d,kを、図9に示している。
【0048】
このように、背凭れ部2のリクライニング角度毎の関数を対応情報として記憶部13に記憶させた場合、制御装置10は、角度センサ9aによって検出されたリクライニング角度と、加速度センサ9による計測値に応じて、この対応情報から前記当接力を取得する。
なお、図9に示しているように、背凭れ部2の起立状態と倒伏状態とでは、各係数の値は似通っている。これは、前記のとおり、加速度センサ9は左右方向の加速度成分を計測する構成であり、背凭れ部2のリクライニング動作の影響(被施療者の体重の影響)を受けにくい構成となっているためであると考えられる。
したがって、背凭れ部2のリクライニング角度に関わらず、対応情報を一つの関数とすることができ、この対応情報を記憶部13に記憶させてもよい。すなわち、対応情報を、背凭れ部2の所定の回動範囲(以下、リクライニング範囲という)で共通化させた情報とすることができ、この共通化させた対応情報を記憶部13に記憶させてもよい。
【0049】
〔具体例(その2)〕
対応情報を共通化させた情報とする場合を説明する。
この場合、すでに説明したように、制御装置10は、プログラムが実行する機能部として取得部14を備えており、この取得部14は、加速度センサ9の計測結果に基づいて、施療子7a,7bに作用している当接力を求める検出部としての機能を有している。
【0050】
前記〔第一実施形態及び第二実施形態における対応情報の取得方法〕で説明したのと同様に、対応情報を取得するために、図4に示している施療子7a,7bと身体Hとの間に力センサ(フィルム型の力センサ)を取り付け(図示せず)、この力センサによって実際に施療子7a,7bに作用している接触力を計測する。力センサによって出力値を取得すると同時に、図4に示している加速度センサ9によって出力値を取得する。加速度センサ9の出力値は左右方向成分のものであり、その値は電圧値(V)として得られる。
そして、背凭れ部2に凭れた被施療者の背中に対して、前記押し引き駆動部18(図2参照)によって、施療子7a,7bが指圧によるマッサージ動作を行なう。
【0051】
加速度センサ9の計測結果に基づいて、加速度センサ9の出力値から当接力(指圧力)の推定を行なうための対応情報としての関数を作成する。対応情報を作成するために、背凭れ部2のリクライニング角度を、最大(最も倒れた状態)、最小(最も起立した状態)、中間(水平に対しておおよそ45度の角度で傾斜した状態)のそれぞれの状態として、加速度センサ9による計測結果を取得する。
対応情報の作成方法としては、既に説明した(a)物理的な機構や仕組みを解析して数式モデルを構築する方法、(b)進化的方法であるGP(Genetic Programming)を用いて数式モデルを構築する方法、のいずれであってもよいが、ここでは、(a)の方法による場合を説明する。
【0052】
さらに、この〔具体例(その2)〕では、背凭れ部2のリクライニング角度を、最大、最小、中間のそれぞれの状態とすると共に、それぞれの状態で、施療子7a,7bの上下方向の位置を、背凭れ部2に凭れた被施療者の首に対応する高位置、腰に対応する低位置、その中間の位置として、計測を行う。
すなわち、リクライニング角度が最大、最小、中間で、かつ、それぞれのリクライニング角度で、施療子7a,7bを高位置、低位置、中間位置とした、九つの条件で、計測を行う。
【0053】
各条件で得られた計測値に基づいて、前記式(2)の係数a0,a1,a2、前記式(3)の係数d、kを、最小二乗法によって求める。そして、前記九つの条件で得られた各係数を共通化する。具体的には単純平均を求めることで共通化する。そして、共通化されて求められた式(3)を、対応情報として記憶部13に記憶させる。すなわち、リクライニング角度を最大、最小、中間のそれぞれの場合として、各係数を求めているが、前記のとおり平均化処理(単純平均処理)を行なうことにより、記憶部13に記憶させる対応情報を、リクライニング角度に関して共通化させている。したがって、この対応情報には、背凭れ部2のリクライニング角度についてのパラメータ(変数)が含まれていない。
さらには、各リクライニング角度で施療子7a,7bを高位置、低位置、中間位置のそれぞれの場合として、各係数を求めているが、前記のとおり平均化処理(単純平均処理)を行なうことにより、記憶部13に記憶させる対応情報を、施療子7a,7bの上下方向の位置に関して共通化させている。
そして、共通化して、実際に得られた係数は、例えばa0=0、a1=−780.340、a2=278.127、d=0.0015、k=0.4998となる。
【0054】
図10、図11及び図12はそれぞれ、前記のようにして得られ記憶部13に記憶させた対応情報に基づいて、加速度センサ9の計測値から制御装置10(検出部)が推定した当接力(推定値A1)と、力センサによる計測値Bとを示している説明図である。図10は施療子7a,7bを高位置とした場合、図11は中間位置とした場合、図12は低位置とした場合である。また、各図の(a)は背凭れ部2のリクライニング角度が最大の場合、(b)はリクライニング角度が中間の場合、(c)はリクライニング角度が最小の場合を示している。
これらの図によれば、力センサによる計測値Bと、対応情報に基づいて推定した当接力の推定値A1とがほぼ一致している。なお、各条件で、推定値A1の計測値Bに対する二乗平均誤差は、0.5〜0.9程度であり(1未満であり)、計測値Bと推定値A1とはほぼ一致していると言える。
【0055】
以上より、加速度センサ9が計測する施療子7a,7bの加速度と当該施療子7a,7bに作用している当接力との関係について、背凭れ部2の所定のリクライニング範囲で一つに共通化させた対応情報を、記憶部13に記憶させ、この対応情報に基づいて当接力の推定を行なうことが可能となる。
特に、この形態では、前記「所定のリクライニング範囲」は、背凭れ部2が最も起立した状態(リクライニング角度が最小の状態)から、背凭れ部2が最も倒伏した状態(リクライニング角度が最大の状態)までの範囲である。すなわち、記憶部13は、背凭れ部2が最も起立した状態から最も倒伏した状態までの全範囲で一つに共通化させた対応情報を記憶していればよい。
【0056】
そして、制御装置10が有している機能部である前記取得部14は、背凭れ部2が「所定のリクライニング範囲」内にある状態で、加速度センサ9が計測した加速度に応じて、前記共通化された対応情報から当接力を取得する。
すなわち、背凭れ部2が所定のリクライニング範囲内であれば、当該背凭れ部2が第一のリクライニング角度にある状態であっても、第二のリクライニング角度にある状態であっても、加速度センサ9が計測した加速度に応じて、共通化された前記対応情報から当接力を推定することができる。
【0057】
〔具体例(その2)〕では、背凭れ部2の起立状態から倒伏状態までのリクライニング範囲で共通化させるのみならず、施療子7a,7bの上下方向の範囲についても共通化させた対応情報を用いた場合を説明したが、これ以外であってもよく、前記リクライニング範囲で共通化させた対応情報を、施療子7a,7bの上下方向の位置毎に、記憶部に記憶させてもよい。すなわち、施療子7a,7bが背凭れ部2に凭れた被施療者の首に対応する高位置、腰に対応する低位置、その中間の中間位置毎に、加速度センサが計測する施療子7a,7bの左右方向の加速度成分と当該施療子7a,7bに作用している当接力との関係についての対応情報を求め、これを記憶させてもよい。
しかし、〔具体例(その2)〕で説明したように、施療子7a,7bの上下方向の位置に関わらず、背凭れ部2のリクライニング範囲で共通化させた対応情報を用いても、精度のよい当接力を求めることができるため、このように、施療子7a,7bの上下方向の位置毎に、記憶部に記憶させていなくてもよい。
【0058】
背凭れ部2に凭れた被施療者の背中に対して、前記押し引き駆動部18(図2参照)によって施療子7a,7bを前後移動させながら、前記昇降機構40によって上下動させて行うマッサージ動作(ローリングによるマッサージ動作)の場合を説明する。なお、このマッサージ動作は、ローラからなる施療子7a,7bは被施療者の身体に当接した状態で転がる動作となる。
このマッサージ動作を行った際に、前記制御装置(検出部)10が当接力を推定する場合を説明する。
【0059】
0〜30秒の間に、被施療者の背中に当接させた状態とした施療子7a,7bを、先ず、上方へ(腰側から首側へ)移動させながら(図13(a))、所定の位置(0.02〔m〕)まで前方へ押し出し(図13(b))、その後(15秒経過後)、下方へ(首側から腰側へ)移動させながら(図13(a))、前後方向の初期位置まで後方へ退避させた(図13(b))。この動作を2回行い、制御装置10による当接力の推定をそれぞれにおいて行った。推定された当接力を、図14に示している。なお、図14(a)が1回目であり、図14(b)が2回目である。
これら2回の結果によれば、両者ともほぼ同様の結果が得られている。すなわち、本発明による当接力の推定に関して再現性があることが言える。
【0060】
また、このマッサージ動作では、ローラからなる施療子7a,7bは回転することから、当該施療子7a,7bに加速度センサ9を取り付けることは困難(不可能)であるが、本発明では加速度センサ9を支持アーム11に取り付けているので、加速度を測定することができ、当接力の推定が可能となる。
【0061】
さらに、被施療者が意図的に施療子7a,7bに対して力を付加して、当接力を大きくさせた場合を説明する。被施療者は背凭れ部に凭れた状態で、5秒後と、20秒後との2回にわたって、背中を施療子7a,7bに強く押し付けた。
前記制御装置10によって推定された施療子7a,7bの当接力を、図15に示している。この結果によれば、5秒後と、20秒後との2回ともにおいて、大きな当接力を推定している。この結果によれば、被施療者が意図的に施療子7a,7bに対して力を付加して、当接力を大きくさせた場合に、その当接力が制御装置10によって正確に推定されていることがわかる。
【0062】
また、前記説明では、指圧によるマッサージ動作及びローリングによるマッサージ動作について説明したが、これ以外に、揉みや叩きによるマッサージ動作についても同様にして、対応情報を得ることができる。そして、記憶部13は、マッサージ動作の種類毎に、対応情報を記憶していてもよい。
なお、施療子7a,7bが例えば叩きや揉みによるマッサージ動作をすることによって生じている加速度成分(施療子7a,7bが被施療者に当接していなくても叩きや揉みのために駆動することによって当該施療子7a,7bに生じている加速度成分)は、所定の周波数のフィルタによって加速度センサ9の計測値から除去されることで、求められる。
【0063】
また、前記〔具体例(その2)〕では、背凭れ部2の全リクライニング範囲で共通化させ、かつ、施療子7a,7bの上下方向の範囲についても共通化させた対応情報を用いた場合を説明した。しかし、対応情報はこれ以外であってもよく、施療子7a,7bの上下方向の範囲で対応情報を共通化させ、この共通化させた対応情報を、背凭れ部2のリクライニング角度毎で、記憶部13が記憶していてもよい。すなわち、リクライニング角度毎に、施療子7a,7bの上下方向の位置を変えて求めた計測値から最小二乗法によって、例えば前記式(2)の係数a0,a1,a2、前記式(3)の係数d、kを求め、この関数を、リクライニング角度毎に記憶部13が記憶していてもよい。
【0064】
以上の本発明の各形態によれば、施療子7a,7bに作用している加速度を検出対象としているので、実際に施療子7a,7bに作用している当接力を精度良く求めることができる。すなわち、被施療者の身体に接触することで施療子に作用する接触力を取得するためには、施療子に力センサを設けることが考えられるが、実際のマッサージ機では、施療子は回転するため、一意に力点を定めることができない。このため、実質的に力センサを設けることは困難である。しかし、本発明によれば、支持アーム11に取り付けた加速度センサ9によって、施療子7a,7bに生じている加速度を計測することができ、この計測結果に基づいて、施療子7a,7bに生じている当接力を精度良く取得することができる。
【0065】
また、本発明のマッサージ機は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであっても良い。例えば、前記実施形態では、対応情報を関数として説明したが、これ以外として対応情報は表(データベース)であってもよい。また、前記第一実施形態のマッサージ機の加速度センサ9においても、前記第二実施形態のように角度センサとして機能させてもよい。また、背凭れ部2の角度を、センサを用いないで背凭れ部2をリクライニング駆動する駆動部(モータ)の出力から求めてもよい。また、センサを用いる場合、加速度センサ9以外に別の角度センサが設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 座部
2 背凭れ部
7a,7b 施療子
9 加速度センサ
9a 角度センサ
10 制御装置(検出部)
11 支持アーム(アーム)
12 駆動アーム(取付部材)
13 記憶部
14 取得部
16 揉み駆動部
17 叩き駆動部
18 押し引き駆動部
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
マッサージ機として、被施療者の身体に当接する施療子、この施療子を取り付けているアーム、及び、このアームを駆動することによって施療子にマッサージ動作を行なわせる駆動部を備えたものがある。駆動部は、モータ及びこのモータによって回転する回転軸を有しており、回転軸が回転することで前記アームを駆動させ、施療子にマッサージ動作を行なわせている。
特許文献1には、被施療者(使用者)に痛さや不快を感じさせないように、施療子によるマッサージ強さを調整する制御を行なうマッサージ機が開示されている。このマッサージ機は、施療子が被施療者の身体を押す際に当該施療子が受ける反力(当接力)を検出するためのセンサを備えており、このセンサの検出結果に基づいて被施療者の身体(被施療部)の硬さを判定し、この判定結果に基づいて施療子にマッサージ動作を行なわせる力(印加力)を変化させている。なお、特許文献1に、施療子が受ける反力(当接力)を検出するためのセンサについての具体的な構成は記載されていない。
【0003】
また、施療子を動作させる力を調整することができるマッサージ機として、特許文献2に記載のものがあり、このマッサージ機ではセンサとして歪みゲージが用いられている。すなわち、施療子が受ける反力が大きくなると駆動部の回転軸が捩れることから、この回転軸に歪みゲージを取り付け、この歪みゲージによって回転軸の捩れを検出し、この検出結果に応じてモータの出力を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−244855号公報
【特許文献2】特開平7−136225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2では、歪みゲージが駆動部の回転軸に取り付けられており、この回転軸が捩れることで当該回転軸の外周面に生じているせん断歪みを、検出対象としている。すなわち、施療子に生じている現象を検出対象としていない。
本発明は、施療子に生じている当接力を求めることができる新たな技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明のマッサージ機は、被施療者の身体に当接する施療子と、前記施療子を取り付けているアームと、前記アームを駆動することによって前記施療子にマッサージ動作を行なわせる駆動部と、前記施療子が前記身体に当接することによって当該施療子に生じる加速度を計測する加速度センサと、前記加速度センサの計測結果に基づいて前記施療子に作用している当接力を求める検出部とを備えているものである。
このマッサージ機によれば、施療子に生じている加速度に基づいて、当該施療子に作用している当接力を求めることができる。このように施療子の当接力を求めるために、当該施療子に生じている現象として加速度を、検出対象とすることができる。
【0007】
また、前記検出部は、前記加速度センサが計測する前記施療子の加速度と当該施療子に作用している当接力との関係についての対応情報を記憶している記憶部と、前記加速度センサが計測した加速度に応じて前記対応情報から前記当接力を取得する取得部とを有しているのが好ましい。
これによれば、加速度センサが加速度を計測すると、取得部は当該加速度に応じて、記憶部が記憶している対応情報から、当接力を求めることができる。
【0008】
また、前記マッサージ機は、被施療者が座る座部と、被施療者が凭れかつ左右方向の回動中心線回りに回動する背凭れ部とを更に備え、前記施療子は、被施療者の身体に対して後方から接触するように前記背凭れ部に設けられ、前記加速度センサは、前後方向に直交する左右方向の加速度成分を計測するのが好ましい。
これによれば、背凭れ部は回動することでリクライニング動作をする。なお、前記前後方向は、背凭れ部の厚さ方向であり、背凭れ部が後方へ倒れた状態では、前後方向は高さ方向を向くこととなる。そして、被施療者が凭れた状態にある背凭れ部がリクライニング動作をして倒れると、被施療者の体重が施療子に負荷され、当該施療子に作用する当接力の前後方向成分は増大する。しかし、前記マッサージ機の構成によれば、前記検出部が当接力を求めるために、加速度センサは、被施療者の体重を受ける方向である前後方向に直交する左右方向の加速度成分を計測することから、前記施療子に作用している当接力を求める際に、背凭れ部の回動角度の影響を受けにくい構成とすることができる。
【0009】
そこで、このマッサージ機において、前記検出部は、前記加速度センサが計測する前記施療子の加速度と当該施療子に作用している当接力との関係について、前記背凭れ部の所定の回動範囲で共通化させた対応情報を記憶している記憶部と、前記背凭れ部が前記所定の回動範囲内にある状態で前記加速度センサが計測した加速度に応じて、前記共通化された対応情報から前記当接力を取得する取得部とを有しているのが好ましい。
【0010】
前記のとおり、施療子をマッサージ動作させることによって当該施療子に作用している当接力を求める際に、背凭れ部の回動角度の影響を受けにくい構成とすることができるので、前記対応情報を、背凭れ部の所定の回動範囲で共通化させることができ、この共通化させた対応情報を記憶部が記憶していればよい。すなわち、記憶部は、回動角度毎の多数の対応情報を記憶していなくてよい。そして、背凭れ部が前記所定の回動範囲内にある状態で加速度センサが計測した加速度に応じて、共通化された対応情報から、当接力を求めることができる。
【0011】
さらに、この場合において、前記所定の回動範囲は、前記背凭れ部が起立した状態から、当該背凭れ部が倒伏した状態までの範囲であり、前記記憶部は、前記起立した状態から前記倒伏した状態までの全範囲で共通化させた対応情報を記憶しているのが好ましい。
この場合、背凭れ部が起立した状態から倒伏した状態までの回動範囲(全回動範囲)で、対応情報を共通化させた構成となる。すなわち、記憶部は、前記回動範囲で一つに共通化させた対応情報を記憶していればよい。
【0012】
又は、前記マッサージ機は、被施療者が座る座部と、被施療者が凭れかつ左右方向の回動中心線回りに回動する背凭れ部とを更に備え、前記検出部は、前記加速度センサが計測する前記施療子の加速度と当該施療子に作用している当接力との関係についての対応情報を、前記背凭れ部の回動角度毎に記憶している記憶部と、前記加速度センサが計測した加速度及び前記回動角度に応じて前記対応情報から前記当接力を取得する取得部とを有しているのが好ましい。
これによれば、加速度センサによって加速度が計測されると、取得部はこの加速度及び背凭れ部の回動角度に応じて、記憶部が記憶している対応情報から、当接力を求めることができる。このため、背凭れ部の回動角度に応じた当接力を求めることができる。
【0013】
また、このマッサージ機において、前記加速度センサは、左右方向に直交する方向の加速度成分について計測する機能を有し、前記加速度センサの計測結果に基づいて前記背凭れ部の回動角度を検出する角度検出部を更に備えているのが好ましい。これによれば、背凭れ部が回動すると、施療子に作用する左右方向に直交する方向の加速度成分(重力方向の成分)は変化する。したがって、角度検出部は、加速度センサの計測値に基づいて背凭れ部の回動角度を検出することが可能となる。
【0014】
また、前記マッサージ機の前記加速度センサは前記アームに固定されているのが好ましい。これによれば、センサを施療子に直接取り付けなくても施療子に生じる加速度を計測することができる。
また、前記マッサージ機は、前記施療子が被施療者の身体に当接すると前記アームが変位することができるように当該アームを変位自在として取り付けている取付部材を更に備え、前記加速度センサは、前記アームが変位自在となっている方向の加速度成分を計測するのが好ましい。
これによれば、施療子が被施療者の身体に当接すると、施療子はアームと共に変位することができる。そして、この変位によって生じた当該施療子の変位方向の加速度成分を、加速度センサが計測することができる。したがって、被施療者の身体に施療子が当接し、アームが変位すれば、当該アームが弾性変形していなくても、加速度センサが当該施療子に生じた変位方向の加速度成分を求め、これにより、前記検出部が前記当接力を求めることができる。なお、従来のようにセンサとして歪みゲージが用いられている場合では、当該歪みゲージが取り付けられている部材が弾性変形する必要がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明のマッサージ機によれば、施療子に作用している加速度を検出対象とすることができるので、実際に施療子に作用している当接力を精度良く求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のマッサージ機を側面から見た概略説明図である。
【図2】マッサージユニットを前方から見た斜視図である。
【図3】マッサージ機の要部のブロック図である。
【図4】施療子、支持アーム及び駆動アームを左右方向から見た説明図である。
【図5】支持アーム及び駆動アームを前後方向から見た説明図である。
【図6】力センサによる計測値と加速度センサによる計測値との説明図である。
【図7】力センサによる計測値と、当接力の推定値とを示している説明図である。
【図8】力センサによる計測値と、当接力の推定値とを示している説明図である。
【図9】関数の具体的な係数を説明している図である。
【図10】施療子が高位置にある場合において、加速度センサを用いて推定した当接力と、力センサによる計測値とを示している説明図である。
【図11】施療子が中間位置にある場合において、加速度センサを用いて推定した当接力と、力センサによる計測値とを示している説明図である。
【図12】施療子が低位置にある場合において、加速度センサを用いて推定した当接力と、力センサによる計測値とを示している説明図である。
【図13】施療子の位置の説明図である。
【図14】推定された施療子の当接力の説明図であり、(a)が1回目であり、(b)が2回目である。
【図15】推定された施療子の当接力の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明のマッサージ機を側面から見た概略説明図である。このマッサージ機は、被施療者(使用者)が座る座部1と、この座部1の後側に設けられた背凭れ部2と、座部1の前側に設けられた脚載せ部3とを備えており、椅子型である。座部1は脚体4により支持されている。被施療者が凭れる背凭れ部2は、座部1側にある左右方向の回動中心線回りに前後回動可能である。つまり、背凭れ部2はリクライニング動作をする。脚載せ部3は、座部1側にある左右方向の回動中心線回りに上下回動可能である。なお、以下では、背凭れ部2において、その幅方向(図1の紙面に直交する方向)が「左右方向」であり、その厚さ方向が「前後方向」であり、左右方向と前後方向とは直交する関係にある。
【0018】
背凭れ部2内には、被施療者の身体(被施療部)に当接する施療子(揉み玉)7a,7bを備えたマッサージユニット5が設けられている。マッサージユニット5は、背凭れ部2の内部に設けられたガイドレール(図示せず)にガイドされている。図2はマッサージユニット5を前方から見た斜視図である。マッサージユニット5は、昇降機構40が動作することによって前記ガイドレールに沿って上下方向に移動する(図1の矢印M)。
【0019】
図2において、上下の施療子7a,7bは、マッサージユニット5の左右にそれぞれ設けられている。上下の施療子7a,7bは、弧形状である支持アーム11の両端部に回転自在として取り付けられている。支持アーム11はその中間部において駆動アーム(取付部材)12に揺動可能として取り付けられている。
マッサージユニット5は、支持アーム11及び駆動アーム12を駆動することによって施療子7a,7bに揉み、叩き、指圧等のマッサージ動作をさせる駆動部を備えている。駆動部として、揉み駆動部16、叩き駆動部17及び押し引き駆動部18を有している。
揉み駆動部16は、施療子7a,7bに左右方向の成分を有する揉みマッサージ動作を行なわせる。叩き駆動部17は、施療子7a,7bに前後方向の成分を有する叩きマッサージ動作を行なわせる。押し引き駆動部18は、施療子7a,7b、支持アーム11及び駆動アーム12を含む機械ブロック19を前後方向に移動させる。これにより、施療子7a,7bに指圧によるマッサージ動作を行なわせることができる。
なお、昇降機構40、揉み駆動部16、叩き駆動部17及び押し引き駆動部18は、通常用いられているものを適宜採用することができ、図示した以外のものであってもよい。
【0020】
図3はこのマッサージ機の要部のブロック図である。前記マッサージユニット5は、マッサージ機が備えている制御装置10によって動作が制御される。制御装置10は、CPU及び記憶部13を有しているプログラマブルなマイコンからなる。記憶部13には所定の各機能を実行するプログラムが記憶されており、制御装置10は、前記プログラムが実行する機能部として取得部14を備えており、加速度センサ9の計測結果に基づいて、施療子7a,7bに作用している当接力を求める検出部としての機能を有している。また、制御装置10は機能部として角度検出部30を有している。これら機能部については後に説明する。また、制御装置10はマッサージ機が備えているコントローラ8の指令信号に基づいて動作する。コントローラ8には被施療者が操作する複数の押しボタンが設けられている。
【0021】
図4は施療子7a,7b、支持アーム11及び駆動アーム12を左右方向から見た説明図である。駆動アーム12は、施療子7a,7bが被施療者の身体Hに対して前後方向の後方から前方へ向かって当接するように支持アーム11を取り付けている。
また、本発明のマッサージ機は、支持アーム11と一体となっている対の施療子7a,7bに生じる加速度を計測する加速度センサ9を備えている。加速度センサ9は、施療子7a,7bと一体となって動く支持アーム11に、取り付け片20を介して固定されている。加速度センサ9は、計測した加速度を電圧値として出力する。これにより、加速度センサ9を施療子7a,7bに直接取り付けなくても、施療子7a,7bに生じる加速度が得られる。そして、制御装置10(図3参照)は、加速度センサ9による計測結果を受信することができる。加速度センサ9は静電容量型やピエゾ抵抗型とすることができる。
【0022】
図5は支持アーム11及び駆動アーム12を前後方向から見た説明図である。駆動アーム12はその先端部に左右で対の取付部12b,12bを有しており、これら取付部12b,12b間に左右方向を中心線とする軸12aが取り付けられている。支持アーム11の中間部には、軸12aを挿通させる孔11aが貫通して設けられている。そして、支持アーム11と取付部12b,12bとの間には隙間が形成されており、支持アーム11は、取付部12a,12b間を左右方向に直線的に移動することができる。さらに、孔11aは軸12aよりも直径が大きくなっていることから、支持アーム11は駆動アーム12に対して左右方向に傾くことができる。このように、支持アーム11は駆動アーム12に左右方向に変位可能として取り付けられた構成となる。
【0023】
この構成により、被施療者の身体に施療子7a,7bが後方から当接した状態で、被施療者の体重や、身体に対する施療子7a,7bの印加力(マッサージ力)によって、当該施療子7a,7bは支持アーム11と共に左右方向に変位することができる。そして、この変位によって生じた施療子7a,7bの左右方向の加速度成分を、加速度センサ9が計測する。したがって、支持アーム11が弾性変形していなくても、施療子7a,7bに生じた加速度を求めることができ、これにより、後に説明するが制御装置10によって、施療子7a,7bに作用している当接力を求めることが可能となる。したがって、支持アーム11の剛性が高く変形(弾性変形)が生じにくくても、施療子7a,7bに生じた加速度によって加速度センサ9は出力を得ることができ、当接力を求めることができる。なお、従来のようにセンサとして歪みゲージを用いた場合では、当該歪みゲージが取り付けられている部材が弾性変形する必要がある。
【0024】
また、支持アーム11は板部材からなり、板厚方向が左右方向にある。そして、支持アーム11は金属製からなる。したがって、施療子7a,7bに荷重(体重やマッサージ力)が加わると、この施療子7a,7bを取り付けている支持アーム11は、板厚方向に弾性変形する構成となっている。
【0025】
そして、図4において、加速度センサ9は、施療子7a,7bが身体Hに当接することによって当該施療子7a,7bに生じる加速度を計測する。つまり、施療子7a,7bが身体Hに当接すると、前記構成によれば、支持アーム11に変位及び変形の一方又は双方が生じ、これにより生じる加速度を加速度センサ9が計測し、加速度センサ9は加速度に応じた電圧値を出力する。なお、加速度センサ9は従来知られているものを採用することができ、この実施形態では前後左右上下の三軸方向の加速度を計測することができる三軸仕様のものである。また、加速度センサ9は、施療子7が移動した状態で生じている静加速度、及び、施療子7a,7bが支持アーム11と一体として移動する際に生じる動加速度を計測することができる。
【0026】
そして、図3において、加速度センサ9の計測結果に基づいて、制御装置(検出部)10が、施療子7a,7bに作用している当接力を求める。この場合の加速度センサ9によって計測される加速度は、静加速度と動加速度との内の一方又は双方である。制御装置10が有している前記記憶部13には、加速度センサ9が計測する施療子7a,7bの加速度(出力した電圧値)と、施療子7a,7bに作用している当接力との関係についての対応情報が記憶されている。この対応情報については後に説明する。
そして、制御装置10が有している機能部である前記取得部14は、加速度センサ9が計測した加速度(加速度センサ9から得られた電圧値)に応じて、前記対応情報から当接力を取得する。なお、この実施形態では、取得部14が当接力を取得するために、加速度センサ9は、左右方向の加速度成分を計測している。
【0027】
〔第一実施形態〕
対応情報について説明する。対応情報を関数とすることができ、この関数は、例えば下記の式(1)で表される。入力(xi)が加速度センサ9の計測値(電圧値)であり、出力が推定される前記当接力(fi)である。a0,a1,a2は係数である。この実施形態では、入力(xi)は加速度センサ9による左右方向成分の計測値である。なお、この関数の取得方法については、後に説明する。
【0028】
【数1】
【0029】
これにより、加速度センサ9が左右方向成分の加速度を計測すると、取得部14はこの計測値に応じて、前記対応情報(関数)から、当接力を演算により求めることができる。
以上のように、このマッサージ機によれば、施療子7a,7bに生じている左右方向の加速度に基づいて、当該施療子7a,7bに作用している当接力を求めることができる。このように施療子7a,7bの当接力を求めるために、施療子7a,7bに生じている現象として加速度を検出対象としている。このため、制御装置10は、実際に施療子7a,7bに作用している当接力を精度良く求めることができる。
【0030】
また、本発明の椅子型マッサージ機では、背凭れ部2は回動することでリクライニング動作をする。被施療者が凭れた背凭れ部2がリクライニング動作をして倒れると、施療子7a,7bには、当該施療子7a,7bがマッサージ動作することによって生じている被施療者の身体への印加力の他に、体重の一部が更に負荷される。これにより、施療子7a,7bに作用する前後方向成分の当接力は増大することとなる。なお、背凭れ部2が後方へ倒れた状態では、前後方向は高さ方向を向く。つまり、背凭れ部2が倒れると、施療子7a,7bに作用する高さ方向成分の当接力が変化する。
【0031】
そこで、この実施形態では、図4に示しているように、施療子7a,7bは、被施療者の身体Hに対して前後方向の後方から接触するように背凭れ部2に設けられている構成であり、さらに、制御装置10が施療子7a,7bに作用する当接力を求めるために、加速度センサ9は、この前後方向に直交する左右方向の加速度成分を計測する構成である。
したがって、背凭れ部2に凭れている被施療者の体重が施療子7a,7bに作用する方向と、加速度センサ9による計測方向(左右方向)とが直交することから、当該被施療者の体重による影響が、加速度センサ9による計測結果に影響を与え難い。このため、施療子7a,7bをマッサージ動作させることによって当該施療子7a,7bに作用している当接力を、制御装置10が求める際に、背凭れ部2のリクライニング動作(リクライニング角度)の影響を受けにくい構成とすることができる。
なお、このように、背凭れ部2のリクライニング動作の影響を受けにくい構成とできることによって得られる好ましい形態を、後の〔具体例(その2)〕で説明する。
【0032】
〔第二実施形態〕
本発明では、背凭れ部2のリクライニング動作(リクライニング角度)の影響を考慮して当接力を求めてもよい。この場合(第二実施形態)を説明する。この第二実施形態のマッサージ機は、前記第一の実施形態と比べると、背凭れ部2の回動角度を検出するための機能(角度センサ)を備えている点で異なり、また、前記対応情報が異なるが、その他の構成については同じである。なお、本発明において、背凭れ部2の回動角度は、背凭れ部2のリクライニング角度と同じ意味であり、以下では、リクライニング角度として説明する。
図3により説明すると、この実施形態の記憶部13は、加速度センサ9が計測する施療子7a,7bの加速度と、施療子7a,7bに作用する当接力との関係についての対応情報を、背凭れ部2のリクライニング角度毎に記憶している。
【0033】
すなわち、記憶部13は、前記式(1)と同様の関数を、背凭れ部2のリクライニング角度毎(回動角度毎)に、複数記憶している。例えば、起立状態から倒伏状態までの間について所定角度毎(例えば10ー毎)の関数を記憶している。
これによれば、加速度センサ9によって施療子7a,7bに生じている加速度(静加速度)が計測され、角度センサ9aによって背凭れ部2のリクライニング角度が検出されると、取得部14は、これら加速度及びリクライニング角度に応じて、記憶部13が記憶している前記対応情報から、当接力を求めることができる。したがって、背凭れ部2が回動することで被施療者の体重の影響を施療子7a,7bが受けていても、背凭れ部2のリクライニング角度毎の対応情報を記憶部13が記憶しているため、背凭れ部2のリクライニング角度に応じた当接力を求めることができる。
【0034】
そして、本発明では、加速度センサ9は三軸仕様のものであることから、加速度センサ9は、左右方向に直交する方向(前後方向及び上下方向)の加速度成分についても計測することができる。このため、加速度センサ9を角度センサ9aとして機能させることができる。すなわち、被施療者が凭れた状態にある背凭れ部2が倒れると、被施療者の体重が施療子7a,7bに負荷される。これにより、施療子7a,7bに作用する前後方向の成分の当接力が増大し、施療子7a,7bには前後方向の加速度が生じる。加速度センサ9は前後方向の加速度成分についても計測することから、制御装置10の角度検出部30は、リクライニング動作したことで増大(変化)した前後方向の加速度成分に基づいて、背凭れ部2のリクライニング角度の検出が可能となる。このように、角度センサ9aを、加速度センサ9によって兼用することで、別途角度センサを設ける必要が無くなる。
【0035】
〔第一実施形態及び第二実施形態における対応情報の取得方法〕
前記対応情報の取得方法の例について説明する。対応情報は、以下の方法によって得られる関数であり、得られた関数を予め記憶部13に記憶させている。
対応情報を取得するために、図4に示している施療子7a,7bと身体Hとの間に力センサ(フィルム型の力センサ)を取り付け(図示せず)、この力センサによって実際に施療子7a,7bに作用している接触力を計測する。この接触力は指圧によるマッサージのマッサージ力(指圧力)となる。なお、この力センサは対応情報を取得するため(得られた対応情報が正確なものであることを確認するため)に設置されるものであり、対応情報が得られると取り外される。この力センサの出力値を、図6において計測値Bとして示している。なお、力センサによる計測値は電圧値(V)として得られる。この図6では、開始(時間が0秒)から約7秒後に、背凭れ部2に凭れた被施療者の背中に対して、前記押し引き駆動部18(図2参照)によって、施療子7a,7bが指圧によるマッサージ動作を行なっている。
【0036】
そして、前記力センサによって出力値を取得すると同時に、図4に示している加速度センサ9によって出力値を取得する。この加速度センサ9の出力値を、図6において計測値Aとして示している。加速度センサ9の出力値は左右方向成分のものであり、その値は電圧値(V)として得られる。なお、加速度センサ9は前記のとおり三軸仕様であり、左右方向をX方向とすると、これに直交するY方向及びZ方向についても出力を得ることができる。しかし前記対応情報を求めるために、左右方向を使用している。これは、前記のとおり、支持アーム11が左右方向について変位可能であり、また、前後方向及び上下方向よりも左右方向に撓みが生じやすい構成となっていることから、施療子7a,7bの接触力は、左右方向の加速度成分の影響が顕著に表れるためである。さらに、前記のとおり、左右方向の加速度成分とすれば、背凭れ部2を回動させても被施療者の体重の影響を受けにくいためである。
【0037】
前記力センサ及び加速度センサ9の計測結果に基づいて、加速度センサ9の出力値から当接力(指圧力)の推定を行なうための対応情報としての関数を作成する。この作成方法としては、(a)物理的な機構や仕組みを解析して数式モデルを構築する方法、(b)進化的方法であるGP(Genetic Programming)を用いて数式モデルを構築する方法、がある。
【0038】
〔(b)GP(Genetic Programming)を用いて数式モデルを構築する方法〕
前記(b)の方法によって構築した数式モデルが、前記式(1)である。
式(1)の数式モデルが構築されると、実データ(図6の計測値A)に基づいて最小二乗法により、式(1)の係数a0,a1,a2を求める。実際に得られた値として、a0=0、a1=65.259、a2=26.674が得られる。なお、実データは、1Hzの低域通過フィルタによって高周波ノイズを除去する前処理が行なわれている。
【0039】
このようにして得られた関数を対応情報として記憶部13が記憶する。図7は、力センサによる前記計測値B(図6と同じもの)と、前記取得方法によって得られた関数に基づく当接力の推定値A1とを比較している説明図である。この図7によれば、力センサによる計測値Bと、推定値A1とが略一致している。なお、この図7では、推定された当接力を電圧値(V)によって表現しているが、対応情報に、この電圧値(V)と当接力(N)との関係を含ませておき、この関係を用いて取得部14が演算を行なうことにより、取得部14は当接力(N)を求めることができる。
【0040】
なお、前記第二実施形態とする場合は、この取得方法を、背凭れ部2のリクライニング角度を変えながら実行することによって、背凭れ部2のリクライニング角度毎の対応情報を得ることができ、これを記憶部13に記憶させる。
【0041】
〔(a)物理的な機構や仕組みを解析して数式モデルを構築する方法〕
対応情報としての関数の作成方法として、前記(a)物理的な機構や仕組みを解析して数式モデルを構築する方法について説明する。
数式モデルを二次多項式と設定し、その係数の決定に最小二乗法を用い、これによって得られたモデル出力を新たな入力としたバネ・ダンパ系の数式モデルを作成する。そして、最小二乗法によってバネ・ダンパ係数を決定し、これにより関数を得る。具体的に説明すると、加速度センサ9による計測値(電圧値)をxiとし、二次多項式として式(2)を設定する。なお、xiは、加速度センサ9の左右方向成分の計測値である。
【0042】
【数2】
【0043】
この式(2)により最初のフィッティング値として値yiを導出する。そして、式(2)の係数a0,a1,a2を、加速度センサ9による実際の計測値に基づいて、最小二乗法によって求める。そして、前記値yiを新たな入力として考え、バネ・ダンパ系の数式モデルとして、式(3)を得る。なお、Δtは、サンプリング時間間隔である。また、dはダンパ係数であり、kはバネ係数であり、これら係数d、kを、最小二乗法によって求めることができる。
【0044】
【数3】
【0045】
この式(3)により、当接力(fi)を求めることができる。このようにして得られた関数(式(3))を対応情報として記憶部13が記憶する。これによれば、前記GP(Genetic Programming)を用いて数式モデルを構築した方法と同様に、図8に示しているように、前記フィルム型の力センサによる計測値Bと、式(3)により推定した当接力の推定値A1とが一致している結果が得られる。なお、図8(a)は背凭れ部2を起立させた状態であり、図8(b)は背凭れ部2を後方へ倒した状態の結果を示している。
さらに、この作成方法では、バネ・ダンパ要素も含めた数式モデルを採用しているため、施療子7a,7b及び被施療者の身体(皮膚)の粘弾性を考慮したことと等価となる。このため、フィルム型の力センサによる計測値Bと、式(3)により求めた当接力(推定値A1)とをより一層精度良く一致させることができる。
【0046】
なお、前記第二実施形態とする場合は、この取得方法を、背凭れ部2のリクライニング角度を変えながら実行することによって、背凭れ部2のリクライニング角度毎の対応情報を得ることができ、これを記憶部13に記憶させる。
【0047】
〔具体例(その1)〕
背凭れ部2を起立させた場合(図8(a))と、背凭れ部2を後方へ倒した場合(図8(b))とにおいて、前記取得方法によって得られた関数(式(3))の、具体的な係数a0,a1,a2,d,kを、図9に示している。
【0048】
このように、背凭れ部2のリクライニング角度毎の関数を対応情報として記憶部13に記憶させた場合、制御装置10は、角度センサ9aによって検出されたリクライニング角度と、加速度センサ9による計測値に応じて、この対応情報から前記当接力を取得する。
なお、図9に示しているように、背凭れ部2の起立状態と倒伏状態とでは、各係数の値は似通っている。これは、前記のとおり、加速度センサ9は左右方向の加速度成分を計測する構成であり、背凭れ部2のリクライニング動作の影響(被施療者の体重の影響)を受けにくい構成となっているためであると考えられる。
したがって、背凭れ部2のリクライニング角度に関わらず、対応情報を一つの関数とすることができ、この対応情報を記憶部13に記憶させてもよい。すなわち、対応情報を、背凭れ部2の所定の回動範囲(以下、リクライニング範囲という)で共通化させた情報とすることができ、この共通化させた対応情報を記憶部13に記憶させてもよい。
【0049】
〔具体例(その2)〕
対応情報を共通化させた情報とする場合を説明する。
この場合、すでに説明したように、制御装置10は、プログラムが実行する機能部として取得部14を備えており、この取得部14は、加速度センサ9の計測結果に基づいて、施療子7a,7bに作用している当接力を求める検出部としての機能を有している。
【0050】
前記〔第一実施形態及び第二実施形態における対応情報の取得方法〕で説明したのと同様に、対応情報を取得するために、図4に示している施療子7a,7bと身体Hとの間に力センサ(フィルム型の力センサ)を取り付け(図示せず)、この力センサによって実際に施療子7a,7bに作用している接触力を計測する。力センサによって出力値を取得すると同時に、図4に示している加速度センサ9によって出力値を取得する。加速度センサ9の出力値は左右方向成分のものであり、その値は電圧値(V)として得られる。
そして、背凭れ部2に凭れた被施療者の背中に対して、前記押し引き駆動部18(図2参照)によって、施療子7a,7bが指圧によるマッサージ動作を行なう。
【0051】
加速度センサ9の計測結果に基づいて、加速度センサ9の出力値から当接力(指圧力)の推定を行なうための対応情報としての関数を作成する。対応情報を作成するために、背凭れ部2のリクライニング角度を、最大(最も倒れた状態)、最小(最も起立した状態)、中間(水平に対しておおよそ45度の角度で傾斜した状態)のそれぞれの状態として、加速度センサ9による計測結果を取得する。
対応情報の作成方法としては、既に説明した(a)物理的な機構や仕組みを解析して数式モデルを構築する方法、(b)進化的方法であるGP(Genetic Programming)を用いて数式モデルを構築する方法、のいずれであってもよいが、ここでは、(a)の方法による場合を説明する。
【0052】
さらに、この〔具体例(その2)〕では、背凭れ部2のリクライニング角度を、最大、最小、中間のそれぞれの状態とすると共に、それぞれの状態で、施療子7a,7bの上下方向の位置を、背凭れ部2に凭れた被施療者の首に対応する高位置、腰に対応する低位置、その中間の位置として、計測を行う。
すなわち、リクライニング角度が最大、最小、中間で、かつ、それぞれのリクライニング角度で、施療子7a,7bを高位置、低位置、中間位置とした、九つの条件で、計測を行う。
【0053】
各条件で得られた計測値に基づいて、前記式(2)の係数a0,a1,a2、前記式(3)の係数d、kを、最小二乗法によって求める。そして、前記九つの条件で得られた各係数を共通化する。具体的には単純平均を求めることで共通化する。そして、共通化されて求められた式(3)を、対応情報として記憶部13に記憶させる。すなわち、リクライニング角度を最大、最小、中間のそれぞれの場合として、各係数を求めているが、前記のとおり平均化処理(単純平均処理)を行なうことにより、記憶部13に記憶させる対応情報を、リクライニング角度に関して共通化させている。したがって、この対応情報には、背凭れ部2のリクライニング角度についてのパラメータ(変数)が含まれていない。
さらには、各リクライニング角度で施療子7a,7bを高位置、低位置、中間位置のそれぞれの場合として、各係数を求めているが、前記のとおり平均化処理(単純平均処理)を行なうことにより、記憶部13に記憶させる対応情報を、施療子7a,7bの上下方向の位置に関して共通化させている。
そして、共通化して、実際に得られた係数は、例えばa0=0、a1=−780.340、a2=278.127、d=0.0015、k=0.4998となる。
【0054】
図10、図11及び図12はそれぞれ、前記のようにして得られ記憶部13に記憶させた対応情報に基づいて、加速度センサ9の計測値から制御装置10(検出部)が推定した当接力(推定値A1)と、力センサによる計測値Bとを示している説明図である。図10は施療子7a,7bを高位置とした場合、図11は中間位置とした場合、図12は低位置とした場合である。また、各図の(a)は背凭れ部2のリクライニング角度が最大の場合、(b)はリクライニング角度が中間の場合、(c)はリクライニング角度が最小の場合を示している。
これらの図によれば、力センサによる計測値Bと、対応情報に基づいて推定した当接力の推定値A1とがほぼ一致している。なお、各条件で、推定値A1の計測値Bに対する二乗平均誤差は、0.5〜0.9程度であり(1未満であり)、計測値Bと推定値A1とはほぼ一致していると言える。
【0055】
以上より、加速度センサ9が計測する施療子7a,7bの加速度と当該施療子7a,7bに作用している当接力との関係について、背凭れ部2の所定のリクライニング範囲で一つに共通化させた対応情報を、記憶部13に記憶させ、この対応情報に基づいて当接力の推定を行なうことが可能となる。
特に、この形態では、前記「所定のリクライニング範囲」は、背凭れ部2が最も起立した状態(リクライニング角度が最小の状態)から、背凭れ部2が最も倒伏した状態(リクライニング角度が最大の状態)までの範囲である。すなわち、記憶部13は、背凭れ部2が最も起立した状態から最も倒伏した状態までの全範囲で一つに共通化させた対応情報を記憶していればよい。
【0056】
そして、制御装置10が有している機能部である前記取得部14は、背凭れ部2が「所定のリクライニング範囲」内にある状態で、加速度センサ9が計測した加速度に応じて、前記共通化された対応情報から当接力を取得する。
すなわち、背凭れ部2が所定のリクライニング範囲内であれば、当該背凭れ部2が第一のリクライニング角度にある状態であっても、第二のリクライニング角度にある状態であっても、加速度センサ9が計測した加速度に応じて、共通化された前記対応情報から当接力を推定することができる。
【0057】
〔具体例(その2)〕では、背凭れ部2の起立状態から倒伏状態までのリクライニング範囲で共通化させるのみならず、施療子7a,7bの上下方向の範囲についても共通化させた対応情報を用いた場合を説明したが、これ以外であってもよく、前記リクライニング範囲で共通化させた対応情報を、施療子7a,7bの上下方向の位置毎に、記憶部に記憶させてもよい。すなわち、施療子7a,7bが背凭れ部2に凭れた被施療者の首に対応する高位置、腰に対応する低位置、その中間の中間位置毎に、加速度センサが計測する施療子7a,7bの左右方向の加速度成分と当該施療子7a,7bに作用している当接力との関係についての対応情報を求め、これを記憶させてもよい。
しかし、〔具体例(その2)〕で説明したように、施療子7a,7bの上下方向の位置に関わらず、背凭れ部2のリクライニング範囲で共通化させた対応情報を用いても、精度のよい当接力を求めることができるため、このように、施療子7a,7bの上下方向の位置毎に、記憶部に記憶させていなくてもよい。
【0058】
背凭れ部2に凭れた被施療者の背中に対して、前記押し引き駆動部18(図2参照)によって施療子7a,7bを前後移動させながら、前記昇降機構40によって上下動させて行うマッサージ動作(ローリングによるマッサージ動作)の場合を説明する。なお、このマッサージ動作は、ローラからなる施療子7a,7bは被施療者の身体に当接した状態で転がる動作となる。
このマッサージ動作を行った際に、前記制御装置(検出部)10が当接力を推定する場合を説明する。
【0059】
0〜30秒の間に、被施療者の背中に当接させた状態とした施療子7a,7bを、先ず、上方へ(腰側から首側へ)移動させながら(図13(a))、所定の位置(0.02〔m〕)まで前方へ押し出し(図13(b))、その後(15秒経過後)、下方へ(首側から腰側へ)移動させながら(図13(a))、前後方向の初期位置まで後方へ退避させた(図13(b))。この動作を2回行い、制御装置10による当接力の推定をそれぞれにおいて行った。推定された当接力を、図14に示している。なお、図14(a)が1回目であり、図14(b)が2回目である。
これら2回の結果によれば、両者ともほぼ同様の結果が得られている。すなわち、本発明による当接力の推定に関して再現性があることが言える。
【0060】
また、このマッサージ動作では、ローラからなる施療子7a,7bは回転することから、当該施療子7a,7bに加速度センサ9を取り付けることは困難(不可能)であるが、本発明では加速度センサ9を支持アーム11に取り付けているので、加速度を測定することができ、当接力の推定が可能となる。
【0061】
さらに、被施療者が意図的に施療子7a,7bに対して力を付加して、当接力を大きくさせた場合を説明する。被施療者は背凭れ部に凭れた状態で、5秒後と、20秒後との2回にわたって、背中を施療子7a,7bに強く押し付けた。
前記制御装置10によって推定された施療子7a,7bの当接力を、図15に示している。この結果によれば、5秒後と、20秒後との2回ともにおいて、大きな当接力を推定している。この結果によれば、被施療者が意図的に施療子7a,7bに対して力を付加して、当接力を大きくさせた場合に、その当接力が制御装置10によって正確に推定されていることがわかる。
【0062】
また、前記説明では、指圧によるマッサージ動作及びローリングによるマッサージ動作について説明したが、これ以外に、揉みや叩きによるマッサージ動作についても同様にして、対応情報を得ることができる。そして、記憶部13は、マッサージ動作の種類毎に、対応情報を記憶していてもよい。
なお、施療子7a,7bが例えば叩きや揉みによるマッサージ動作をすることによって生じている加速度成分(施療子7a,7bが被施療者に当接していなくても叩きや揉みのために駆動することによって当該施療子7a,7bに生じている加速度成分)は、所定の周波数のフィルタによって加速度センサ9の計測値から除去されることで、求められる。
【0063】
また、前記〔具体例(その2)〕では、背凭れ部2の全リクライニング範囲で共通化させ、かつ、施療子7a,7bの上下方向の範囲についても共通化させた対応情報を用いた場合を説明した。しかし、対応情報はこれ以外であってもよく、施療子7a,7bの上下方向の範囲で対応情報を共通化させ、この共通化させた対応情報を、背凭れ部2のリクライニング角度毎で、記憶部13が記憶していてもよい。すなわち、リクライニング角度毎に、施療子7a,7bの上下方向の位置を変えて求めた計測値から最小二乗法によって、例えば前記式(2)の係数a0,a1,a2、前記式(3)の係数d、kを求め、この関数を、リクライニング角度毎に記憶部13が記憶していてもよい。
【0064】
以上の本発明の各形態によれば、施療子7a,7bに作用している加速度を検出対象としているので、実際に施療子7a,7bに作用している当接力を精度良く求めることができる。すなわち、被施療者の身体に接触することで施療子に作用する接触力を取得するためには、施療子に力センサを設けることが考えられるが、実際のマッサージ機では、施療子は回転するため、一意に力点を定めることができない。このため、実質的に力センサを設けることは困難である。しかし、本発明によれば、支持アーム11に取り付けた加速度センサ9によって、施療子7a,7bに生じている加速度を計測することができ、この計測結果に基づいて、施療子7a,7bに生じている当接力を精度良く取得することができる。
【0065】
また、本発明のマッサージ機は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであっても良い。例えば、前記実施形態では、対応情報を関数として説明したが、これ以外として対応情報は表(データベース)であってもよい。また、前記第一実施形態のマッサージ機の加速度センサ9においても、前記第二実施形態のように角度センサとして機能させてもよい。また、背凭れ部2の角度を、センサを用いないで背凭れ部2をリクライニング駆動する駆動部(モータ)の出力から求めてもよい。また、センサを用いる場合、加速度センサ9以外に別の角度センサが設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 座部
2 背凭れ部
7a,7b 施療子
9 加速度センサ
9a 角度センサ
10 制御装置(検出部)
11 支持アーム(アーム)
12 駆動アーム(取付部材)
13 記憶部
14 取得部
16 揉み駆動部
17 叩き駆動部
18 押し引き駆動部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施療者の身体に当接する施療子と、前記施療子を取り付けているアームと、前記アームを駆動することによって前記施療子にマッサージ動作を行なわせる駆動部と、前記施療子が前記身体に当接することによって当該施療子に生じる加速度を計測する加速度センサと、前記加速度センサの計測結果に基づいて前記施療子に作用している当接力を求める検出部と、を備えていることを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
前記検出部は、
前記加速度センサが計測する前記施療子の加速度と当該施療子に作用している当接力との関係についての対応情報を記憶している記憶部と、
前記加速度センサが計測した加速度に応じて前記対応情報から前記当接力を取得する取得部とを有している請求項1に記載のマッサージ機。
【請求項3】
被施療者が座る座部と、被施療者が凭れかつ左右方向の回動中心線回りに回動する背凭れ部とを更に備え、
前記施療子は、被施療者の身体に対して後方から接触するように前記背凭れ部に設けられ、
前記加速度センサは、前後方向に直交する左右方向の加速度成分を計測する請求項1又は2に記載のマッサージ機。
【請求項4】
前記検出部は、
前記加速度センサが計測する前記施療子の加速度と当該施療子に作用している当接力との関係について、前記背凭れ部の所定の回動範囲で共通化させた対応情報を記憶している記憶部と、
前記背凭れ部が前記所定の回動範囲内にある状態で前記加速度センサが計測した加速度に応じて、前記共通化された対応情報から前記当接力を取得する取得部と、を有している請求項3に記載のマッサージ機。
【請求項5】
前記所定の回動範囲は、前記背凭れ部が起立した状態から、当該背凭れ部が倒伏した状態までの範囲であり、
前記記憶部は、前記起立した状態から前記倒伏した状態までの全範囲で共通化させた対応情報を記憶している請求項4に記載のマッサージ機。
【請求項6】
被施療者が座る座部と、被施療者が凭れかつ左右方向の回動中心線回りに回動する背凭れ部と、を更に備え、
前記検出部は、
前記加速度センサが計測する前記施療子の加速度と当該施療子に作用している当接力との関係についての対応情報を、前記背凭れ部の回動角度毎に記憶している記憶部と、
前記加速度センサが計測した加速度及び前記回動角度に応じて前記対応情報から前記当接力を取得する取得部と、を有している請求項請求項1又は2に記載のマッサージ機。
【請求項7】
前記加速度センサは、左右方向に直交する方向の加速度成分について計測する機能を有し、
前記加速度センサの計測結果に基づいて前記背凭れ部の回動角度を検出する角度検出部を更に備えている請求項6に記載のマッサージ機。
【請求項8】
前記加速度センサは前記アームに固定されている請求項1〜7のいずれか一項に記載のマッサージ機。
【請求項9】
前記施療子が被施療者の身体に当接すると前記アームが変位することができるように当該アームを変位自在として取り付けている取付部材を更に備え、
前記加速度センサは、前記アームが変位自在となっている方向の加速度成分を計測する請求項1〜8のいずれか一項に記載のマッサージ機。
【請求項1】
被施療者の身体に当接する施療子と、前記施療子を取り付けているアームと、前記アームを駆動することによって前記施療子にマッサージ動作を行なわせる駆動部と、前記施療子が前記身体に当接することによって当該施療子に生じる加速度を計測する加速度センサと、前記加速度センサの計測結果に基づいて前記施療子に作用している当接力を求める検出部と、を備えていることを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
前記検出部は、
前記加速度センサが計測する前記施療子の加速度と当該施療子に作用している当接力との関係についての対応情報を記憶している記憶部と、
前記加速度センサが計測した加速度に応じて前記対応情報から前記当接力を取得する取得部とを有している請求項1に記載のマッサージ機。
【請求項3】
被施療者が座る座部と、被施療者が凭れかつ左右方向の回動中心線回りに回動する背凭れ部とを更に備え、
前記施療子は、被施療者の身体に対して後方から接触するように前記背凭れ部に設けられ、
前記加速度センサは、前後方向に直交する左右方向の加速度成分を計測する請求項1又は2に記載のマッサージ機。
【請求項4】
前記検出部は、
前記加速度センサが計測する前記施療子の加速度と当該施療子に作用している当接力との関係について、前記背凭れ部の所定の回動範囲で共通化させた対応情報を記憶している記憶部と、
前記背凭れ部が前記所定の回動範囲内にある状態で前記加速度センサが計測した加速度に応じて、前記共通化された対応情報から前記当接力を取得する取得部と、を有している請求項3に記載のマッサージ機。
【請求項5】
前記所定の回動範囲は、前記背凭れ部が起立した状態から、当該背凭れ部が倒伏した状態までの範囲であり、
前記記憶部は、前記起立した状態から前記倒伏した状態までの全範囲で共通化させた対応情報を記憶している請求項4に記載のマッサージ機。
【請求項6】
被施療者が座る座部と、被施療者が凭れかつ左右方向の回動中心線回りに回動する背凭れ部と、を更に備え、
前記検出部は、
前記加速度センサが計測する前記施療子の加速度と当該施療子に作用している当接力との関係についての対応情報を、前記背凭れ部の回動角度毎に記憶している記憶部と、
前記加速度センサが計測した加速度及び前記回動角度に応じて前記対応情報から前記当接力を取得する取得部と、を有している請求項請求項1又は2に記載のマッサージ機。
【請求項7】
前記加速度センサは、左右方向に直交する方向の加速度成分について計測する機能を有し、
前記加速度センサの計測結果に基づいて前記背凭れ部の回動角度を検出する角度検出部を更に備えている請求項6に記載のマッサージ機。
【請求項8】
前記加速度センサは前記アームに固定されている請求項1〜7のいずれか一項に記載のマッサージ機。
【請求項9】
前記施療子が被施療者の身体に当接すると前記アームが変位することができるように当該アームを変位自在として取り付けている取付部材を更に備え、
前記加速度センサは、前記アームが変位自在となっている方向の加速度成分を計測する請求項1〜8のいずれか一項に記載のマッサージ機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−261901(P2009−261901A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23905(P2009−23905)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【出願人】(000112406)ファミリー株式会社 (175)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【出願人】(000112406)ファミリー株式会社 (175)
【Fターム(参考)】
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