説明

マッサージ機

【課題】被施療者の各部位に対して夫々適切な方向に力を加えてマッサージをすることができるものとする。
【解決手段】人体背面に接触する施療子22を少なくとも上下方向と前後方向とに駆動する駆動手段A1,A2と、上記施療子の上下方向位置及び前後方向位置を検出する検出手段E1,E2と、上記上記上下方向位置の検出手段で得られた上下方向位置に応じて人体背面に対する施療子の動作方向を人体の体表面に対してほぼ直交する方向に決定する動作方向決定手段と、前記駆動手段を駆動して上記動作方向決定手段で決定された動作方向に施療子を作動させる制御手段Cとを備える。マッサージを行おうとする人体部位がどこであろうと、体表面に対して常にほぼ直交する方向に力を加えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子の背もたれなどに配されて人体の背面の任意箇所に対してマッサージを行うマッサージ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から椅子の背もたれなどに上下動自在に配されて人体背面の任意箇所に対してマッサージを行うことができるようにしたマッサージ機が提供されているが、該マッサージ機における人体背面に接触する施療子を上下及び前後左右に動かすことでマッサージを行うにあたり、従来のものは予め定めた規定の前後方向を基に施療子を動かしているだけであるために、人体背面の部位によっては体表面に対して斜め方向からマッサージ力を与えるものとなっている。
【0003】
回転が自在となるように支持されたアームの先端に施療子を配して、アームが人体背面形状に追従する形で回転することで、人体背面に与える力の方向を変化させることができるようにしたものが特許文献1などに示されているが、動作制御としてはアームの回転支点が規定の方向に動くようにしているだけであるために、同じ動きをアームの回転支点に与えても、部位によっては施療子は人体に対して適切な力を加えることができない。
【特許文献1】特開2006−129906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、被施療者の各部位に対して夫々適切な方向に力を加えてマッサージをすることができるマッサージ機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明に係るマッサージ機は、人体背面に接触する施療子を少なくとも上下方向と前後方向とに駆動する駆動手段を備えるとともに、上記施療子の上下方向位置及び前後方向位置を検出する検出手段と、上記上記上下方向位置の検出手段で得られた上下方向位置に応じて人体背面に対する施療子の動作方向を人体の体表面に対してほぼ直交する方向に決定する動作方向決定手段と、前記駆動手段を駆動して上記動作方向決定手段で決定された動作方向に施療子を作動させる制御手段とを備えていることに特徴を有している。マッサージを行おうとする人体部位がどこであろうと、体表面に対して常にほぼ直交する方向に力を加えることができる。
【0006】
この時、人体に対して施療子が与える力を検出する力検出手段を備えており、前記制御手段は予め設定された目標マッサージ力と上記力検出手段で検出された力との偏差に基づいて施療子の作動量を制御するものであることが好ましい。力の方向だけでなく、力の大きさも制御することができる。
【0007】
更には、前記制御手段は施療子の前後方向位置と上記力検出手段で検出された力との相関に基づいて施療子の動作方向を修正するものであることが好ましい。動作方向決定手段での決定した動作方向が適切でなかった場合にこれを自動修正することができる。
【0008】
また、施療子が左右で対となっているとともに駆動手段は対の施療子の間隔を変更する間隔変更部を備えているものでは、前記制御手段は施療子の前後方向位置と上記力検出手段で検出された力との相関に基づいて対の施療子の間隔を修正するものであることが好ましい。肩と腰とにおける幅の差を自動で修正することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、被施療者の各部位に対して夫々体表面にほぼ直交する方向に力を加えてマッサージを行うことができるものであり、常に適切な方向に力が加えられるマッサージを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明すると、図2に示すマッサージ機1は、椅子の背もたれ10内に上下に配したフレーム11に沿って上下動が可能なマッサージ機構2を配したもので、このマッサージ機構2は前方側(背もたれの前面側)に上下に回動自在なアーム21を備え、該アーム21の先端に施療子22を備えている。また、上記マッサージ機構2は、図3に示すように上記上下動のためのアクチュエータA1と、上記アーム21を回動させるためのアクチュエータA2とを備えるとともに、これらアクチュエータA1,A2による上下動及びアーム21の回動による施療子22の位置変位を検出するためのエンコーダE1,E2を備えている。
【0011】
なお、上記マッサージ機構2は、上記アクチュエータA1,A2に加えて、施療子22に例えばもみマッサージ動作を行わせるための一つまたは複数のアクチュエータ(図示せず)を備えているのであるが、このアクチュエータに関しては説明を省略する。なお、上記アクチュエータA2がマッサージ動作を行わせるためのアクチュエータ(の一部)を兼ねているものであってもよい。
【0012】
今、背もたれに沿った上下方向を図2に示すようにy軸、背もたれと人体背面とを結ぶ方向をx軸と座標系を定義し、アクチュエータA1によって上下方向に駆動されるマッサージ機構2(におけるアーム21の回転中心)の上下方向変位量をq1、アクチュエータA2によって回動駆動されるアーム21のx軸からの回動変異量をq2、アーム21の回動中心から施療子22までの距離(アーム21の長さ)をL、施療子22の位置を(x,y)とすると、施療子22の位置(x,y)はエンコーダE1,E2の出力として得られる上記変位量q1,q2から次の演算
x=Lcosq2 y=q1+Lsinq2
で求めることができる。
【0013】
そして、上記アクチュエータA1,A2及びマッサージ用アクチュエータの動作制御を司る制御回路Cは、算出された施療子22の位置(x,y)を基にマッサージのための施療子20の動きの方向を制御する。すなわち、単純化のために上記マッサージが人体を押圧する指圧マッサージである場合を例にとれば、施療子22を前進させることで指圧マッサージを実施するわけであるが、アクチュエータA1,A2を共に動作させて上記x,yの2つの値を変化させることで前進方向を制御して、図1に示すように人体背面をその体表面に対してほぼ直交する方向に前進させるのである。この時、アーム21を回動させて施療子1のx位置を変化させる時にy位置も同時に変化してしまう点に対する修正も行うことが好ましい。
【0014】
どの方向に前進させるかについては、y位置に応じた動作方向を決定する動作方向決定手段を設けることで対応すればよく、この動作方向決定手段としては、予めy位置に応じて動作方向を定めたテーブルを用意して、得られたy位置に対応する動作方向を上記テーブルから読み出すものを好適に用いることができる。また、得られたy位置は図4に示すように、首位置か肩位置か背中位置か腰位置かにまず分類し、各位置に応じて設定された方向に施療子22を前進させるものであってもよい。
【0015】
人体の背面形状をセンシングする機能を備えたマッサージ機においては、このセンシング結果と上記y位置とに応じて前進方向を決定するものを好適に用いることができる。たとえばセンシングによって人体背面形状が図5に示すような曲線Tを描いていることが求まれば、施療子のy位置における曲線Tの接線とその傾きを求め、この接線と直交する方向を施療子22を前進させる方向とするのである。
【0016】
なお、上記センシングは、施療子22に人体との接触圧を検出するロードセルなどの圧力センサSを設け、施療子22を突出させた状態(前進させた状態)で上下動させた時の圧力センサの値の変化を見たり、施療子22を上下動させる際に施療子22と人体との接触圧が一定の圧力となるように施療子22の前進状態を変化させることで行うことができる。
【0017】
また、施療子22の前進方向が上述のようにy位置によって変化することから、アクチュエータA1,A2を速度制御で動作させる場合、次のような制御を行えばよい。すなわち、上記変位q1,q2と施療子22の位置(x,y)とは上記式で示される関係にあるが、この速度関係を求めると
dq1=−1/(tanq2)dx+dy dq2=1/(Lsinq2)dx)
となる。ただしdq1,dq2,dx,dyは夫々q1,q2,x,yの微分を表す。今、図6に示すようにx軸から45°の方向に施療子22の速度(dx,dy)を発生させたい場合、dx,dyの比率を1:1に設定して施療子22の方向を制御すればよい。つまり、上記dx,dyの比率を変えることで、施療子22の動作方向を任意に設定して速度制御を行うことができる。
【0018】
ここにおいて、施療子22に上述のように力センサSを配して、被施療者に対するマッサージ力を検出することができるようにしたものでは、図7に示すように、検出されるマッサージ力Fが予め設定した目標マッサージ力Fdとなるように目標マッサージ力Fd
と検出したマッサージ力Fとの偏差に基づいて各アクチュエータの駆動量を決定することで、上記制御回路Cは方向に加えてマッサージ力も制御するものとなり、被施療者に対して方向及び強さの両方を制御することができるものとなる。
【0019】
マッサージ機構2が施療子22の位置を左右方向にも変更することができるものであれば、施療子22の左右位置を検出することができるエンコーダを追加し、上記の上下及び前後方向に加えて左右方向も含めた方向制御を行うようにしてもよいのはもちろんであり、この場合、被施療者の背面に完全に直交する方向に施療子22から力を加えることができる。また、被施療者の首部に対するマッサージが可能なものであれば、前方向に押し出しながら上方向に持ち上げつつ、左右から挟むといったより効果的なマッサージを得ることができるものとなる。
【0020】
ところで、人体の肩の上面については、背後から押すのではなく上方から押さなくては有効なマッサージにならないが、前述のように人体の背面形状をセンシングしている場合は、肩の位置を判別して上方から押すように方向を制御することができる。しかし、単にy位置に応じて方向を制御している場合は、通常、平均的な体型の人の各部位の座標に対応させて方向を制御することになるために、被施療者の体格・体型によっては、肩に対する上方からのマッサージに適切に切り換えることができない。この場合、施療子22のx,y位置情報に加えて、力センサSの出力を併用し、図8に示すように施療子22を前進位置が所定位置Xa以上になっても力センサSの出力が所定値Faを越えない時には施療子22が肩の上方位置にあるとして、施療子22の動作方向を下方向けに修正することで、対応することができる。
【0021】
更には、施療子22が左右一対のもので構成されているとともに、対の施療子22の間隔(幅)を変更する間隔変更部をマッサージ機構部2が備えたものにおいては、図9に示すように、施療子22の前進位置が所定位置Xb以上になっても力センサSの出力が所定値Fbを越えない時、施療子22は肩などよりも幅の狭い腰や背中位置にあるとして、施療子22の上記間隔(幅)を狭くする動作を行わせるものとすれば、人体の各部位の幅の差や、個人差に自動対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態の一例の動作説明図である。
【図2】同上の概略断面図である。
【図3】同上のブロック回路図である。
【図4】同上の動作のフローチャートである。
【図5】他例の動作説明図である。
【図6】同上の他の動作説明図である。
【図7】同上のフィードバック制御の説明図である。
【図8】同上の別の動作のフローチャートである。
【図9】同上の更に別の動作のフローチャートである。
【符号の説明】
【0023】
1 マッサージ機
2 マッサージ機構
21 アーム
22 施療子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体背面に接触する施療子を少なくとも上下方向と前後方向とに駆動する駆動手段を備えるとともに、上記施療子の上下方向位置及び前後方向位置を検出する検出手段と、上記上記上下方向位置の検出手段で得られた上下方向位置に応じて人体背面に対する施療子の動作方向を人体の体表面に対してほぼ直交する方向に決定する動作方向決定手段と、前記駆動手段を駆動して上記動作方向決定手段で決定された動作方向に施療子を作動させる制御手段とを備えていることを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
人体に対して施療子が与える力を検出する力検出手段を備えており、前記制御手段は予め設定された目標マッサージ力と上記力検出手段で検出された力との偏差に基づいて施療子の作動量を制御するものであることを特徴とする請求項1記載のマッサージ機。
【請求項3】
前記制御手段は施療子の前後方向位置と上記力検出手段で検出された力との相関に基づいて施療子の動作方向を修正するものであることを特徴とする請求項2記載のマッサージ機。
【請求項4】
施療子が左右で対となっているとともに駆動手段は対の施療子の間隔を変更する間隔変更部を備えており、前記制御手段は施療子の前後方向位置と上記力検出手段で検出された力との相関に基づいて対の施療子の間隔を修正するものであることを特徴とする請求項2記載のマッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−50578(P2009−50578A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221859(P2007−221859)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】