説明

マットレス

【課題】体圧分散性、通気性、移送時の作業性、マットレスを起こす際の起床床部への追従性、洗濯耐久性について優れるマットレスの提供を目的とする。
【解決手段】表面層11と裏面層31間に中間層21を有する三層からなり、前記表面層11と裏面層31を軟質ポリウレタン発泡体とし、前記中間層21を硬綿で構成した。前記表面層11は、除膜された軟質ポリウレタン発泡体が好ましく、さらに、前記裏面層31は前記表面層11より低硬度の軟質ポリウレタン発泡体が好ましい。また、前記中間層21の裏面にはマットレス10の幅方向に沿って溝23を形成するのが好ましい。前記表面層11及び前記裏面層31と前記中間層21は、反応型ホットメルト接着剤により接着されるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護用として好適なマットレスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マットレスには、硬綿(固綿とも表示される)上にポリウレタンフォームを積層した二層構造のものや、上位位置部材と下位位置部材を硬綿で構成すると共に中間位置部材をポリウレタンフォームで構成した三層構造のもの、あるいは上位位置部材を硬綿で構成すると共に中間位置部材をポリウレタンフォーム、下位位置部材をポリエチレンフォームで構成した三層構造のものがある。前記硬綿は、合成繊維に低融点繊維を混在させた混在物をニードルパンチして賦形し、その後加熱して前記低融点繊維を溶融することにより繊維同士を固着したものであり、剛性が高い特徴がある。
【0003】
前記硬綿を構成部材として有するマットレスは、硬綿の存在によってマットレスの剛性が高くなっているため、介護用マットレスとして使用すれば、洗濯等の際の移送作業時にマットレスの中央部が撓むのを抑えることができ、移送作業がし易くなる利点がある。
【0004】
また、介護用マットレスにあっては、マットレスを起床式ベッドの起床式床部に載置し、要介護者等の食事等の際に起床式床部を起こして該床部と共にマットレスの一端側を起こすことが行われる。そのため、介護用マットレスにおいては、前記起床式床部を起こす際に該床部の上面からマットレスが部分的に浮き上がらず、起床式床部の作動に追従して屈曲可能なものが好ましい。もし、前記起床式床部を起こす際に該床部の上面からマットレスが部分的に浮き上がると、マットレス上の要介護者等が、不安や不快を感じる。
【0005】
さらに、介護用マットレスは、蒸れないように通気性に優れることや、褥瘡(床ずれ)を生じ難いように体圧分散性に優れることが求められる。また、介護用マットレスにあっては、マットレス上の要介護者等が誤って汚すことがあり、その場合に洗濯が必要となるため、洗濯時にマットレスの各層が剥離しないなどの洗濯耐久性が求められる。
【0006】
しかし、従来のマットレスにあっては、体圧分散性、通気性、移送時の作業性、マットレスを起こす際の起床床部への追従性、洗濯耐久性について十分に満足できるものではなく、改良が求められていた。
【特許文献1】特開2004−242798号公報
【特許文献2】実用新案登録第3089651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、体圧分散性、通気性、移送時の作業性、マットレスを起こす際の起床床部への追従性、洗濯耐久性について優れるマットレスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、表面層と裏面層間に中間層を有する三層からなり、前記表面層と裏面層が軟質ポリウレタン発泡体からなり、前記中間層が硬綿からなることを特徴とするマットレスに係る。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記表面層が除膜された軟質ポリウレタン発泡体からなり、前記裏面層が前記表面層より低硬度の軟質ポリウレタン発泡体からなることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記中間層の裏面には前記マットレスの幅方向に沿って溝が形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記表面層の表面がプロファイル加工されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1から4の何れか一項において、前記表面層及び前記裏面層と前記中間層が反応型ホットメルト接着剤により接着されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1から5の何れか一項において、前記マットレスが介護用であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、表面層と裏面層間に中間層を有する三層からなり、前記表面層と裏面層が軟質ポリウレタン発泡体からなり、前記中間層が硬綿からなるため、硬綿による剛性を備え、前記剛性により移送作業時にマットレスの中央部が撓みにくくなって作業性が良好となり、しかも表面層及び裏面層を構成する軟質ポリウレタン発泡体により体圧分散性が良好なマットレスが得られる。
【0015】
請求項2の発明によれば、表面層が除膜された軟質ポリウレタン発泡体からなるため、マットレス表面の通気性が良好となり、しかも裏面層が表面層より低硬度の軟質ポリウレタン発泡体からなるため、裏面層での圧縮変形が容易になって体圧分散性がさらに良好なマットレスが得られる。
【0016】
請求項3の発明によれば、硬綿からなる中間層の裏面にはマットレスの幅方向に沿って溝が形成されているため、起床式ベッドの起床式床部をマットレスの長手方向一端側で起こす際に、硬綿からなる剛性の高い中間層が、裏面の溝部の位置で屈曲し易いマットレスが得られる。しかも、中間層の裏面に軟質ポリウレタン発泡体からなる裏面層が存在するため、マットレスを起こす際に、マットレスがベッドの起床式床部の起き上がりに追従して屈曲し易くなり、ベッドの起床式床部における屈曲部からマットレスが浮き上がるのを防止でき、マットレス上の要介護者等にマットレスの浮き上がりによる不安感や不快感を与えるのを防ぐことができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、表面層の表面がプロファイル加工されていることによって、表面層の表面は凹凸形状からなるため、体圧分散がさらに優れたものとなるのみならず、通気性が良好になって蒸れを効果的に防止することのできるマットレスが得られる。
【0018】
請求項5の発明によれば、表面層及び裏面層と中間層が反応型ホットメルト接着剤により接着されているため、マットレスの洗濯時に接着剤が水分等によって接着性低下を生じ難く、各層が分離するのを防ぐことができ、優れた洗濯耐久性を有するマットレスが得られる。
【0019】
請求項6の発明によれば、介護用マットレスとしたことにより、体圧分散性、通気性、移送時の作業性、マットレスを起こす際の起床床部への追従性、洗濯耐久性について最も効果的に機能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明の一実施形態に係るマットレスの斜視図である。図示のマットレス10は、介護用のものであり、表面層11、中間層21及び裏面層31の三層が積層接着されたものからなる。
【0021】
前記表面層11は、軟質ポリウレタン発泡体からなる。軟質ポリウレタン発泡体は、連続気泡構造の割合が高く、通気性に優れる。特に前記表面層11は、スラブ発泡体から形成されたものが好ましい。スラブ発泡体は、コンベア上の離型紙に軟質ポリウレタン発泡原料を流して連続的に発泡させることにより常温、大気圧下で形成されたものであって横断面がかまぼこ状の発泡体からなり、そのスラブ発泡体を所要サイズに裁断して前記表面層11とされる。前記表面層11は、低反発性、すなわちボールリバウンドのない発泡体が好ましく、さらには除膜された軟質ポリウレタン発泡体が好ましい。除膜された軟質ポリウレタン発泡体は、軟質ポリウレタン発泡体の気泡膜が除去された三次元網状骨格構造からなり、連続気泡構造とされることから極めて通気性に優れ、蒸れを抑えることができる。なお、除膜された軟質ポリウレタン発泡体は、軟質ポリウレタン発泡体に公知の除膜処理を行うことにより得られる。除膜処理としては、溶解処理や爆破処理を挙げることができる。なお、前記低反発性は、除膜後も変わらない。さらに、前記表面層11の表面13はプロファイル加工されたものが好ましい。前記プロファイル加工は凹凸加工とも称されるものであり、例えば凹凸表面を有する上下のロール間に軟質ポリウレタン発泡体を通して圧縮し、その圧縮された軟質ポリウレタン発泡体を、前記上下のロール間に設けた刃によって二分割し、二分割体を復元させることにより、分割面に凹凸を形成する加工である。前記表面層11の表面13にプロファイル加工による凹凸を設けたことによって、マットレス10上の要介護者等を表面層11の表面13の凸部で支持することができるので体圧分散性が良好となる。しかも、前記表面層11の表面の凹部によって、マットレス10上の要介護者等と表面層11との間に通気空間が形成され、蒸れ防止性を高めることができる。
【0022】
前記表面層11の密度は、30〜45kg/mが好ましい。30kg/m未満では、マットレス10の使用時に表面層11の沈み込みが大きくなって、良好な体圧分散性が得難くなり、それに対して45kg/mを超えると表面層11が硬すぎて、使用者が快適感を得難くなる。前記表面層11の硬さは150〜225N(JIS K 6400準拠)が好ましい。150Nより低いと柔らかすぎて体圧分散性が悪くなり、それに対して225Nより高くなると硬すぎて使用者が不快に感じるようになる。また、前記表面層11のセル数は、13〜45/25mmが好ましい。13/25mmより少なくなると表面層11の表面に対する接触感が悪くなり、それに対して45/25mmより多くなると通気性が悪くなる。さらに、前記表面層11の厚みは、マットレス10の総厚み(全厚)によって異なるが、通常20〜55mm、好ましくは24〜48mmである。なお、マットレス10の総厚みは60〜120mmが好ましい。また、表面層11と中間層21と裏面層31の厚み比は4:4:2が好ましく、さらにマットレス10の総厚み(全厚)を100%とした場合に、表面層11が30〜50%、裏面層31が10〜30%の範囲が好ましい。前記範囲にすると体圧分散性が良好となるのみならず、前記マットレス10を起床式ベッドの起床式床部に載置し、要介護者等の食事等の際に起床式床部を起こす際に、起床式床部にマットレス10が追従し易くなる。
【0023】
前記中間層21は、硬綿からなる。硬綿は、前記のように合成繊維に低融点繊維を混在させた混在物をニードルパンチして賦形し、その後加熱して前記低融点繊維を溶融することにより繊維同士を固着したものであり、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維やこれらの複合繊維によって構成される。前記中間層21の裏面(裏面層31側の面)には、マットレス10の幅方向Kに沿って溝23が形成されている。前記溝23の存在によって、マットレス10が起床式ベッドの起床式床部の昇降(起こしたり寝させたりする作動)に追従して屈曲し易くなる。前記マットレス10の長さ方向Lに対する溝23の間隔及び本数は、マットレス10のサイズや起床式床部の屈曲位置に応じて決定されるが、少なくとも2以上の複数本とするのが好ましい。また、前記中間層21の厚みは、通常20〜55mm、好ましくは24〜48mmである。前記厚みを20mmより薄くすると、洗濯等のために移送する際、マットレス10の中央部の沈み込みが大きくなってマットレス10を扱い難くなり、それに対し55mmより厚くすると、マットレス10が重くなるのみならず、マットレス10の使用感が硬くなり過ぎる。
【0024】
前記裏面層31は、軟質ポリウレタン発泡体からなる。軟質ポリウレタン発泡体は、連続気泡構造の割合が高く、マットレス10の裏面側でも通気性が良好になり、蒸れを防止することができる。前記裏面層31の存在により、前記起床式ベッドの起床式床部を起こす際に、起床式床部上のマットレス10が起床式床部に追従し易くなって起床式床部からマットレス10が浮き上がり難くなる。前記裏面層31は、前記表面層11よりも低硬度のものが好ましい。前記裏面層31を前記表面層11よりも低硬度とすることによって、前記起床式床部に対する追従性がより良好となり、また体圧分散性がより良好となる。前記裏面層31の硬度は、30〜90N(JIS K 6400準拠)が好ましい。30Nより低い場合には、体圧分散性向上効果が少なくなり、それに対し90Nより高い場合には前記起床式床部に対する追従性が妨げられるようになる。前記裏面層31の密度は、10〜30kg/mが好ましい。10kg/m未満では、圧縮ひずみ、へたりを生じ易くなり、それに対して30kg/mを超えると硬すぎて、前記起床式床部に対する追従性が妨げられるようになる。
【0025】
また、前記裏面層31は、除膜処理のされていない通常タイプのものが好ましい。前記裏面層31を除膜された軟質ポリウレタン発泡体で構成すると、起床式床部を起こしたり寝かしたりを繰り返すうちに裏面層31が破損し易くなる。前記裏面層31の厚みは、マットレス10全体の厚みによって異なるが、通常10〜30mmが好ましい。前記裏面層31の厚みが10mmよりも薄くなると、裏面層31を用いる効果が得られなくなり、それに対して30mmより厚くなると、該裏面層31の硬度が低いことから使用者の腰部の沈み込みが大きくなってマットレス上で自然な姿勢が保てなくなる。
【0026】
前記表面層11、前記中間層21及び前記裏面層31は、接着により一体化されている。前記接着は、公知の反応型ホットメルト接着剤により行われるのが好ましい。前記反応型ホットメルト接着剤は、反応型ウレタン系のものであって、ウレタンプレポリマーを主成分とする湿気硬化型からなり、24〜48時間程度で空気中または被接着物中の湿気と反応して硬化し、しかも反応硬化後は水分によっても接着性低下を生じ難く、さらには通常のホットメルト接着剤以上の耐熱性が得られるため、マットレス10における優れた洗濯耐久性が得られる。
【実施例】
【0027】
以下、介護用のマットレスに関し、具体的な実施例について説明する。表1の構成からなる実施例1〜3及び比較例1〜7のマットレスを製造した。マットレスの平面寸法は、1950×850mmである。表1は、各実施例及び比較例における各層の密度、厚み、セル数、プロファイル加工の有無、厚み等を示している。実施例1は、厚み40mmの表面層Aと、厚み40mmの中間層と、厚み20mmの裏面層Fが反応型ホットメルト接着剤で接着一体化されたものからなり、表面層Aがプロファイル加工されたもの、裏面層Fがプロファイル加工の無いものである。実施例2は、厚み40mmの表面層Cと、厚み40mmの中間層と、厚み20mmの裏面層Fが反応型ホットメルト接着剤で接着一体化されたものからなり、表面層Cがプロファイル加工されたもの、裏面層Fがプロファイル加工の無いものである。実施例3は、厚み40mmの表面層Dと、厚み40mmの中間層と、厚み20mmの裏面層Fが反応型ホットメルト接着剤で接着一体化されたものからなり、表面層Dがプロファイル加工されたもの、裏面層Fがプロファイル加工の無いものである。比較例1は、プロファイル加工のある厚み80mmの表面層A単独の材質で構成された一層構造からなり、比較例2は実施例1〜3で用いた中間層のみを厚み80mmで用いた一層構造からなる。比較例3は、厚み40mmの表面層Bと、厚み40mmの中間層が反応型ホットメルト接着剤で接着一体化された二層構造からなって、表面層Bがプロファイル加工されたものであり、比較例4は、厚み50mmの表面層Aと、厚み50mmの中間層が反応型ホットメルト接着剤で接着一体化された二層構造からなって、表面層Aがプロファイル加工されたものである。比較例5は、厚み60mmの表面層Aと、厚み50mmの中間層と、厚み20mmの裏面層Eが反応型ホットメルト接着剤で接着一体化された三層構造からなって、表面層Aがプロファイル加工されたもの、裏面層Eがプロファイル加工の無いもの、比較例6は、厚み20mmの表面層Aと、厚み25mmの中間層と、厚み10mmの裏面層Fが無接着で積層された三層構造からなって、表面層Aがプロファイル加工されたもの、裏面層Fがプロファイル加工の無いもの、比較例7は、厚み40mmの表面層Aと、厚み40mmの中間層と、厚み20mmの裏面層Fが熱可塑型オレフィン系ホットメルト接着剤で接着された三層構造からなって、表面層Aがプロファイル加工されたもの、裏面層Fがプロファイル加工の無いものである。
【0028】
【表1】

【0029】
表1における表面層Aは、密度30kg/m、硬さ150N、セル数13/25mmの除膜された軟質ポリウレタン発泡体(スラブ発泡品、除膜処理品)、品番CFH−13,株式会社イノアックコーポレーション製をプロファイル加工したもの、表面層Bは、密度30kg/m、硬さ65N、セル数42/25mmの除膜された軟質ポリウレタン発泡体(スラブ発泡品、除膜処理品)、品番WF−17,株式会社イノアックコーポレーション製をプロファイル加工したもの、表面層Cは、密度45kg/m、硬さ105N、セル数45/25mmの除膜された軟質ポリウレタン発泡体(スラブ発泡品、除膜処理品)、品番CF−ERG−S,株式会社イノアックコーポレーション製をプロファイル加工したもの、表面層Dは、密度55kg/m、硬さ225N、セル数27/25mmの除膜された軟質ポリウレタン発泡体(スラブ発泡品、除膜処理品)、品番CFH−13,株式会社イノアックコーポレーション製をプロファイル加工したものである。
【0030】
表1における中間層は、密度40kg/m、裏面の溝間隔40mm、株式会社ファイン製の硬綿からなる。また、表1における裏面層Eは、密度30kg/m、硬さ150N、セル数13/25mmの軟質ポリウレタン発泡体(スラブ発泡品、除膜非処理品)、品番WF−17,グレード13,株式会社イノアックコーポレーション製からなり、裏面層Fは、密度30kg/m、硬さ65N、セル数42/25mmの軟質ポリウレタン発泡体(スラブ発泡品、除膜非処理品)、品番WF−17,グレード42,株式会社イノアックコーポレーション製からなる。
【0031】
表1の反応型ホットメルト接着剤は、ウレタン系からなる品番YR067−1、日立化成ポリマー株式会社製のものであり、この接着剤を120℃に加熱し、エアレス・スプレー塗布装置により、中間層の両面に40g/mの塗布量で塗布した。また、表1の熱可塑型オレフィン系ホットメルト接着剤は、品番YH149−1、日立化成ポリマー株式会社製のものであり、この接着剤を100℃に加熱し、エアレス・スプレー塗布装置により、中間層の接着面に50g/mの塗布量で塗布した。
【0032】
なお、比較例1は表面層Aのみで構成されたもの、比較例2は硬綿のみで構成されたもの、比較例3及び4は表面層と硬綿の二層で構成されたもの、比較例5〜7は表面層と中間層と裏面層の三層からなるものである。また、三層構造からなる比較例5〜7のうち、比較例6は各層が非接着のもの、比較例7は接着剤として熱可塑型オレフィン系ホットメルト接着剤を用いたものである。
【0033】
実施例1〜3及び比較例1〜7について、起床式ベッド(フランス・ベッド社製)の起床式床部に載置して、起床式床部を起こす動作を行い、起床式床部に対する追従性を調べたところ、実施例1〜3についてはいずれも、起こす際に起床式床部からマットレスが部分的に浮き上がらず、追従性が良好であった。それに対し、比較例1〜4は、裏面層がないことから、マットレスを起こす際に中間層の硬綿の剛性により撓むことなく起床式床部から部分的に浮き上がり、追従性に劣っていた。
【0034】
また、実施例及び比較例に対して1)通気性試験、2)体圧分散性試験、3)移送試験、4)洗濯耐久性試験を次のように行った。
【0035】
通気性試験については、通気度(L/min)を測定した(ASTM D3574に準拠)。試験結果は、実施例1で、280L/min、実施例2で、100L/min、実施例3で、190L/minであった。
【0036】
体圧分散性試験は、耐圧分散性測定器「ビジュアルマット」(ニッタ株式会社製)を利用して、各マットレスに身長175センチメートル、体重62kgの男性が10分間仰臥したときの底突き性について評価した。なお、測定器はマットレスにかかる圧力を測定するものであり、測定器のディスプレイに、5.39kPa以上の圧力が検出されたことを示す、赤く表示された領域が視認されたときに底突きがあると判断した。測定結果は表1の最下欄に示す通りであり、実施例1〜3では底突きがなかった。
【0037】
移送試験は、看護婦等のヘルパー10名に、マットレス、シーツ等を取り替えるベッドメイキングを依頼し、その感想を官能調査した。実施例1〜3においては、従来の硬綿同様の剛性があり、マットレスを長手方向に保持し移送した場合にあっても、他端がたわむことなく作業性に問題がないことを確認した。
【0038】
洗濯耐久試験は、接着剤の相違による洗濯耐久性を確認するため、接着剤のみが異なり、各層については同一構成からなる実施例1と比較例7に対して行った。試験方法は、実施例1と比較例7のマットレスを、縦100×横200×厚み100mmに切り出し、洗濯機(霧重力、三菱電機株式会社製)に、中性洗剤1/2カップ、水20リットルの条件で15分間洗浄し、洗濯水を排水し、すすぎとして20リットルの水を再度投入、15分間すすいだ後、5分間遠心脱水を行った。その後、120℃の循環式乾燥炉内に30分間放置して乾燥させた。以上の操作を1サイクルとし、1サイクル、5サイクルの試料について、それぞれの剥離強度を調べた。剥離強度は、表面層と硬綿層の一部を剥離し、表面層と硬綿層を180度の開きでチャックし、ヘッドスピード200mm/min.の条件で測定した。剥離強度の結果は、表2に示す通りであり、反応型ホットメルト接着剤を用いる実施例1では、すべて部材破壊であったのに対し、熱可塑型オレフィン系ホットメルト接着剤を用いる比較例7では、すべて界面剥離であった。マットレスは、洗濯後、乾燥させるのに通常120℃の雰囲気に置かれるが、熱可塑型オレフィン系ホットメルト接着剤によって各層が接着されたマットレスでは、接着剤のホットメルト樹脂が熱可塑性であることから、乾燥時の温度で接着層が型崩れを生じ、形状保持ができず、繰り返しの洗濯により、その強度が著しく低下する。
【0039】
【表2】

【0040】
以下、比較例の試験結果について述べる。比較例1は、厚み80mmの発泡体のみの一層で構成されており、底突きはないものの、移送する際の作業性が悪かった。比較例2は、厚み80mmの硬綿のみの一層で構成されており、底突きがあり、床擦れを防止できない。比較例3、4は、発泡体からなる表面層と、硬綿からなる中間層の二層により構成されており、底突きはないものの、起床式ベッドに使用し、起床した場合に、マットレスが浮き上がり安定して載置できなかった。また、比較例4のほうが、硬綿である中間層が厚く、マットレスの浮き上がりが激しかった。比較例5は、総厚みが130mmであって厚いため、重量が重くなり、移送作業性に悪影響を与える。また、総厚みが120mmを超えると、ヘルパー等の作業者の手のひらに余り、把持しにくくなり作業性に劣る。比較例6は、総厚みが55mmと薄く、中間層の硬綿が25mmの厚みでしかないため、体圧分散性が悪く、底突きがあった。比較例7は、接着剤に熱可塑性オレフィン系ホットメルト接着剤を使用しており、十分な剥離強度が得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係るマットレスの斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
10 マットレス
11 表面層
13 表面層の表面
21 中間層
23 溝
31 裏面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層と裏面層間に中間層を有する三層からなり、前記表面層と裏面層が軟質ポリウレタン発泡体からなり、前記中間層が硬綿からなることを特徴とするマットレス。
【請求項2】
前記表面層が除膜された軟質ポリウレタン発泡体からなり、前記裏面層が前記表面層より低硬度の軟質ポリウレタン発泡体からなることを特徴とする請求項1に記載のマットレス。
【請求項3】
前記中間層の裏面には前記マットレスの幅方向に沿って溝が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のマットレス。
【請求項4】
前記表面層の表面がプロファイル加工されていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のマットレス。
【請求項5】
前記表面層及び前記裏面層と前記中間層が反応型ホットメルト接着剤により接着されていることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のマットレス。
【請求項6】
前記マットレスが介護用であることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のマットレス。

【図1】
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【公開番号】特開2006−95082(P2006−95082A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284925(P2004−284925)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】