マット植物用地盤軽量化部材及び屋上緑化工法
【課題】芝等のマット植物を屋上緑化するに際し、植栽地盤重の軽量化及びマット植物の順調な生育の両立を図ることが可能な手段の提供。
【解決手段】相互に離隔した複数の嵩上げ部と当該嵩上げ部の根元周囲に存在する溝部とが一体形成されたマット植物用地盤軽量化部材であって、前記複数の嵩上げ部の最も上に位置するいずれの地点に関しても、いずれかの前記溝部から当該地点までの最短距離が12cm以内であり、かつ、前記嵩上げ部の高さが3cm以上であるマット植物用地盤軽量化部材。
【解決手段】相互に離隔した複数の嵩上げ部と当該嵩上げ部の根元周囲に存在する溝部とが一体形成されたマット植物用地盤軽量化部材であって、前記複数の嵩上げ部の最も上に位置するいずれの地点に関しても、いずれかの前記溝部から当該地点までの最短距離が12cm以内であり、かつ、前記嵩上げ部の高さが3cm以上であるマット植物用地盤軽量化部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植栽地盤重の軽量化が求められる屋上緑化、特に芝等のマット植物の屋上緑化のために使用されるマット植物用地盤軽量化部材及びマット植物の屋上緑化工法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋上緑化においては、軽量化の観点から、植栽地盤重をできるだけ少なくすること、具体的には、芝を張る場合を想定すると、40kg/m2以下にすることが望まれている。即ち、張り芝用の切り芝の湿潤状態での重量は約15kg/m2であるので、地盤重を25kg/m2以下にする必要がある。そのため、各メーカは、土壌そのものを軽量化する(人工軽量土壌)、土壌厚を少なくする(面的に)、水分等を自動灌漑システムで日常頻繁に補う、という発想で軽量化のための開発を進めてきた。しかしながら、現在存在する優れたシステムでも、前述の要求には満たない、芝込みで60kg/m2というのが実情である。
【0003】
そこで、更なる解決手法として、ポット植物に関しては、トレイ内に充填土量を減らす嵩上げ部分を有する屋上緑化施工用パネルが提案されている(特許文献1)。この文献に記載されたパネルは、ポット苗を育成するためのパネルである。ここで、当該パネルは嵩上げ部分を複数有しており、嵩上げ部分間にポット苗が配設される。そして、これら嵩上げ部分上にはポット苗は配設されず、当該嵩上げ部分を見えなくするために杉皮等が薄く被せられる。
【特許文献1】特開2006−204291
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、日本原産のコウライシバやノシバは、乾燥、暑熱等の悪環境に強く、ヒートアイランド現象緩和に有効である。ここで、切り芝は、コウライシバやノシバが生育している圃場から厚さ約2cmとなるよう剥ぎ取ることにより生産される。したがって、切り芝の根は極めて浅く、しかも疎で、吸水力が極めて弱い。このため、張り付け直後1〜3ヶ月間は根を乾燥させないように、土壌を常に濡らしておく必要がある。しかしながら、このパネルを芝等のマット植物に転用した場合、当該嵩上げ部分上に存在する土壌が乾燥するため、この上に植え付けられたマット植物の生育が悪くなり枯死に至る場合があることを確認した。そこで、本発明は、芝等のマット植物を屋上緑化するに際し、植栽地盤重の軽量化及びマット植物の順調な生育の両立を図ることが可能な手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、マット植物生育用の土層を鉛直方向に深い部分と浅い部分を水平方向の位置をずらして混在させ、立体的に土層を配置することで土量を減らすことができることにまず着目した。その上で、単に深い部分と浅い部分を設ければよいという訳ではなく、深い部分が浅すぎると、降雨時や散水時に過湿になる土壌下面とすべての根が接触しているため根も過湿になり根腐れしてしまう一方、深い部分が深すぎると、溜まった水が上部まで移動せず根が乾燥してしまうので、マット植物を順調に生育させるためには浅い部分との関係で深い部分の深さを規定する必要があることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0006】
本発明(1)は、相互に離隔した複数の嵩上げ部と当該嵩上げ部の根元周囲に存在する溝部とが一体形成されたマット植物用地盤軽量化部材であって、前記複数の嵩上げ部の最も上に位置するいずれの地点に関しても、いずれかの前記溝部から当該地点までの最短距離が12cm以内であり、かつ、前記嵩上げ部の高さが3cm以上であるマット植物用地盤軽量化部材である。尚、本マット植物用地盤軽量化部材は、人工軽量土壌用として、また、地中潅水用として特に有効である。
【0007】
本発明(2)は、前記溝部が、貯水部となっている、前記発明(1)のマット植物用地盤軽量化部材である。
【0008】
本発明(3)は、前記溝部が、開口部を有している、前記発明(1)のマット植物用地盤軽量化部材である。
【0009】
本発明(4)は、前記部材が、前記部材の表側に位置する土壌充填用空間から前記嵩上げ部の裏面に位置する嵩上げ用空間へと根系を導くための根系誘導穴を有する、前記発明(1)〜(3)のいずれか一つのマット植物用地盤軽量化部材である。
【0010】
本発明(5)は、前記部材が、前記溝部より上に排水口を有しており、前記排水口から排出された水が前記嵩上げ用空間に供給されるよう構成されている、前記発明(4)のマット植物用地盤軽量化部材である。
【0011】
本発明(6)は、屋上に土壌を略平坦に敷き均す工程と、前記土壌上にマット植物を搭載する工程とを含む、マット植物の屋上緑化工法において、屋上に土壌を敷き均す際、屋上平面の複数箇所を凸状に嵩上げした状況下、当該嵩上げ部間と当該嵩上げ部上に土壌を充填することにより、土壌深度の大きい領域と土壌深度の小さい領域を形成することとし、かつ、前記複数の嵩上げ部の最も上に位置するいずれの地点に関しても、前記土壌深度の大きいいずれかの領域における最も深い地点から当該地点までの最短距離が12cm以内であり、前記嵩上げ部の高さが3cm以上であることを特徴とする工法である。尚、本工法は、上述した発明(1)〜(5)に係るマット植物用地盤軽量化部材を使用する場合のみならず、当該部材とは異なる部材、例えば、物理的に分離した嵩上げ部材(例えばブロック)を用いて実施した場合をも包含する。
【0012】
本発明(7)は、屋上に保水性部材を敷き、その上に前記嵩上げ部を配する、前記発明(6)のマット植物の屋上緑化工法である。
【0013】
本発明(8)は、前記嵩上げに際し、前記発明(1)〜(5)のいずれか一つのマット植物用地盤軽量化部材を用いる、前記発明(6)又は(7)のマット植物の屋上緑化工法である。
【0014】
本発明(9)は、前記発明(1)〜(5)のいずれか一つのマット植物用地盤軽量化部材と、前記マット植物用地盤軽量化部材の下に配置する保水性部材と、を含むマット植物の屋上緑化システムである。
【0015】
本発明の概要と原理
本発明は、複数の嵩上げ部の最も上に位置するいずれの地点に関しても、いずれかの溝部から当該地点までの最短距離が12cm以内(好適に10cm以内)であり、かつ、嵩上げ部の高さが3cm以上(好適には5cm以上)であることを特徴とする。そこでまず、図15を参照しながら、当該内容を概説する。図15は、以下で詳述する第六の最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(6)の断面図である。地盤軽量化トレイ100(6)は、複数の嵩上げ用凸部103(6)(図では4個)と当該嵩上げ用凸部103(6)の根元付近に形成された溝状の貯水部108(6)(図では5箇所)とを有する、射出成形により一体成形された樹脂である。尚、これら貯水部108(6)に貯水されるのは、部材内の過剰な水を排出するための排出口がこれら貯水部よりも高い位置に設置されているからである。ここで、本発明にいう「マット植物用地盤軽量化部材の複数の嵩上げ部の最も上に位置する地点」とは、当該例では、図中の「A」で示す平面と嵩上げ部とが接する地点である。この平面Aは、その上に実際の使用時に土壌が配される位置に相当する。そして、嵩上げ部の最も上に位置する地点(即ち、貯水部から最も遠いところに位置する地点)からいずれかの貯水部までの最短距離が12cm以内となるよう構成されている。具体的には、例えば、嵩上げ用凸部103(6)上の点a2に関しては、左下又は右下に存在する貯水部108(6)から当該地点までの最短距離が約94mmである。尚、最短距離は数学的に求められる。また、嵩上げ用凸部103(6)の高さ(貯水部から点a1までの距離)は65mmである。
【0016】
次に、本発明の原理(数値限定の理由)を説明する。まず、当該溝部に蓄えられた水(又は溝部の開口部から内部に侵入した水)は、毛細管力により土壌中を上昇する。つまり、水は、土壌の毛細管張力によって土壌中を垂直、水平、斜方向に移動し、各方向への移動速度、移動距離は殆ど同一である。したがって、ある地点までの最短距離がその土壌の毛細管上昇力の範囲内であるならば、その地点の土壌には水が供給されることになる。尚、屋上緑化の場合、水を周囲に飛散させないため、スプリンクラーによる散水潅水でなく、大部分の場合ドリップホースにより地中に部分的(例えば、1m2に約5箇所)に潅水が行われている。したがって、潅水時に水が下方移動するときに土壌層全体を濡らすことはなく、一旦底部に達した水が毛細管力により再分配され、土壌層全体を均一に濡らすことになる。また、植栽地盤を軽量化する場合、軽量土壌を用いざるをえず、それら土壌の保水力は低いので、植物の生育に必要な水を植栽地盤底部に貯め、毛細管力により土壌中を移動させ植物に供給させることになる。そして、一般に使われている粗粒質の人工軽量土壌の最大毛細管水上昇力は、約12cmである。したがって、当該溝部から最も遠いところに位置する嵩上げ用凸部の地点が12cm以内であれば、当該嵩上げ用凸部上のすべての平面A(土壌が搭載される平面)に水が行き渡ることになる。尚、本明細書にいう「人工軽量土壌」とは、当業界で認識されているものと同義であり、パーライトや軽石等を主原料とする粗粒の多孔質土壌を指す。
【0017】
この観点から、類似構造が開示されている引用文献1を検討すると、引用文献1に基づいて製品化されている屋上緑化地盤軽量化用の嵩上げパレット{R−パレット(商標)、東邦レオ(株)}に芝をはる場合は、溝部から最も遠いところに位置する嵩上げ用凸部の地点が8cm+7.3cm≒15cmとなる。そのため、前述のように、人工軽量土壌における毛細管力による水の移動距離は12cmであることから、水平面中央部の土壌は水で濡れないことになる。他方、図15に示すように、本発明に係るマット植物用地盤軽量化部材においては、嵩上げ用凸部103(6)の真上を含めた全領域(図15のAで示す平面)に関しては、その距離は12cm未満となる。そのため、当該領域(マット植物の根が存在する領域)に水が確実に供給され、乾燥部分が生じないため、マット植物の順調な生育が可能となる。
【0018】
以上がマット植物全体に水を供給するという観点からの数値規定であるが、余りに近すぎても、根が水を過剰吸収するために良好な生育は望めない。マット植物の順調な生育の観点からは、3cm以上(好適には5cm以上)であることが好適である。このように、マット植物の順調な生育のために、嵩上げ部(溝部と平面Aとの距離)を規定したのが本発明の本質である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、芝等のマット植物を屋上緑化するに際し、植栽地盤重の軽量化及びマット植物の順調な生育の両立を図ることが可能となるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の最良形態を説明する。尚、本発明の技術的範囲は本最良形態に限定されるものではない。また、一つの例について具体的に説明した事項に関しては、そうでないとの特記がある場合を除き、他の例にもそのまま適用されるものと理解すべきである。例えば、第一の最良形態についての根系誘導穴に関する記述は、他の例にも適用される。
【0021】
第一の最良形態
まず、図1を参照しながら、第一の最良形態に係る緑化システム(植栽地盤)の概要を説明する。はじめに、当該緑化システムは、コンクリート等の屋上やベランダの床面素材C上に配された保水性シート200と、当該保水性シート200上に搭載された地盤軽量化トレイ100(1)と、当該地盤軽量化トレイ100(1)の土壌充填用空間αに充填される土壌Sと、から構成される。以下、地盤軽量化トレイ100(1)及び保水性シート200について詳述する。
【0022】
はじめに、地盤軽量化トレイ100(1)は、少なくとも、土壌が収容される土壌充填用空間αと、当該トレイ100(1)の裏面に形成された、前記土壌の重量を軽減しつつ必要な土壌の厚さを確保する嵩上げ用空間βと、当該土壌充填用空間αで生育した根系が、当該嵩上げ用空間βへと伸張可能な根系誘導穴101a(1)と、土壌充填用空間α内部に過剰に存在する水を排水するための排水口104(1)と、を有する。尚、排水口104(1)の設置高さは、トレイ内に貯水される水量を少なくして植栽地盤を軽量化するという観点から、地盤軽量化トレイ101(1)の土壌充填空間αの最下部から0.5〜1.5cmとすることが好ましい。
【0023】
ここで、図1及び図2を参照しながら、本最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(1)の特徴部分をより詳細に説明する。尚、図2は、図1中のA−A’断面図である。当該地盤軽量化トレイ100(1)は、充填された土壌が外部にこぼれないようにするためにその外延に形成された枠体部102(1)と、当該枠体部102(1)よりも内側に複数設けられた、嵩上げ用凸部103(1)と、を有する。更に、図1から分かるように、当該地盤軽量化トレイ100(1)は、隣り合う嵩上げ用凸部103(1)との間に、嵩上げ用凸部103(1)の高さよりも低い中段部101(1)を有している。このように、枠体部102(1)、嵩上げ用凸部103(1)及び中段部101(1)の上部空間が、土壌や芝を収納可能な土壌充填用空間αに相当する。そして、これら枠体部102(1)、嵩上げ用凸部103(1)及び中段部101(1)は、好適には、プラスチック材料等で一体形成されている。以下、嵩上げ用凸部103(1)と中段部101(1)を更に詳述する。
【0024】
まず、嵩上げ用凸部103(1)は、前述した条件を充足する限り、大きさ、高さ、形状、数及び間隔等は何ら限定されず、当業者により適宜設定される。更に、嵩上げ用凸部103(1)の裏面に親水加工を施すとか使用するプラスチック材料として親水性プラスチックを用いる等して、当該嵩上げ用凸部103(1)の裏面を親水性にすることが好適である。このような性質を嵩上げ用凸部103(1)の裏面に付与することにより、根系誘導穴101a(1)を介して下部から土壌充填用空間α内に侵入した根が当該嵩上げ用凸部103(1)の裏面をつたって四方に伸長する結果、土壌充填用空間α内での当該根の効率的な生長が可能となる。
【0025】
次に、図1に示すように、中段部101(1)は、嵩上げ用凸部103(1)の高さより低く底部よりも高い位置で二つの嵩上げ用凸部103(1)間を水平方向から架橋する、略平坦で方形状の上部面101b(1)と、二つの嵩上げ用凸部103(1)間を鉛直方向から架橋する、当該上部面101b(1)の両端から垂下した側面101c(1)及び側面101d(1)と、から構成される。そして、これら上部面101b(1)、側面101c(1)及び側面101d(1)で囲まれた嵩上げ用凸部103(1)は、その囲まれた部分で開口している。その結果、上部面101b(1)、側面101c(1)及び側面101d(1)から形成される空間、即ち、中段部101(1)の裏側に形成された根系誘導用空間γは、二つの嵩上げ用凸部103(1)と空間導通している。
【0026】
ここで、中段部101(1)の上部面101b(1)には、複数の根系誘導穴101a(1)が形成されている。ここで、根系誘導穴101a(1)の形状及び大きさは、根系が当該穴を侵入可能であれば特に限定されず、植物の種類によって当業者により適宜設定されるが、多くの植物に対応可能とする場合には、直径1〜3mmの円形とすることが好ましい。1mm以下であれば、根系の生長後、根が細くくびれ、その地点より先の根の生育を阻害する場合があり、3mm以上とすると、土壌を流下する水が嵩上げ用空間βに漏出し貯水部に溜まる水量が少なくなったり土壌がこぼれ落ちやすくなってしまうからである。また、根系誘導穴の総面積は、地盤軽量化トレイ101の全表面積の1%以上であることが好ましい。上限は特に限定されないが、例えば15%以下である。その他、穴の個数には、特に限定されない。
【0027】
また、中段部101(1)の上部面101b(1)の高さは、以下の二点を考慮し、当業者により適宜設定される。まず、一点目が、上部面101b(1)の高さが排水口104(1)位置(水位面)よりも高い位置である必要があるという点である。これにより、排水口104(1)以外からの、中段部101(1)に形成された根系誘導穴101a(1)による過剰な排水を防止することができる。ここで、上部面101b(1)の高さが排水口104(1)位置よりも0.5cm以上高くすることが好適である。0.5cm以上高くすることにより、根の絡まりを通した毛細管サイフォン現象による根系誘導穴101a(1)からの排水が防止できる。二点目が、上部面101b(1)の高さ(或いは根系誘導用空間γの高さ)が、地盤軽量化トレイ101(1)の最下部から1cm以上とすることが好ましく、2cm以上とすることがより好ましい。1cm以上の高さがないと、根系誘導穴101a(1)から根系誘導用空間γに侵入した根が嵩上げ用空間βの方に向けて効果的に伸長しないからである。
【0028】
次に、地盤軽量化トレイ100(1)における中段部101(1)の位置及び間隔に関して詳述する。まず、中段部101(1)の位置について説明すると、中段部101(1)は、前述のように、二つの嵩上げ用凸部103(1)間に存在する。ここで、図1から理解できるように、一つの嵩上げ用凸部103(1)は、2個〜5個の嵩上げ用凸部103(1)と隣接している。しかしながら、これら隣接するすべての嵩上げ用凸部103(1)との間に中段部101(1)が形成されている必要は無く、少なくとも一つの隣接する嵩上げ用凸部103(1)との間に一つの中段部101(1)が形成されていればよい。少なくとも一つの中段部101(1)が存在していれば、当該嵩上げ用凸部103(1)の裏面に形成された嵩上げ用空間β内に根が入り込み、当該空間が根の生育空間として利用されるからである。しかも、図1に示すように、中段部101(1)は、嵩上げ用凸部103間の谷部の一つ置きに形成することが好適である。このように構成することにより、中段部101(1)が形成されていない嵩上げ用凸部103(1)間の谷部が存在することとなる結果、トレイ上のいずれの位置の土壌に注水しても、当該土壌に染みこんだ水は当該谷部をつたってトレイ全体に行き渡ることが可能となるからである。
【0029】
以上で地盤軽量化トレイ100(1)を説明したので、次に当該地盤軽量化トレイ100(1)とアスファルトCとの間に配される保水性シート200を詳述する。当該保水性シート200は、不織布等の布状物から構成される。このような素材の保水性シート200を配置することにより、根系誘導穴101a(1)から根系誘導用空間γに侵入した根が、当該保水性シート200中の養水分を吸収し生育しつつ、これをつたって嵩上げ用空間β内に向かって伸長し易くなると共に、適度な湿度に保つことが可能となる。他方、当該保水性シート200を配置しないと、根系誘導穴101a(1)から根系誘導用空間γに侵入した根が、嵩上げ用空間βに向けて伸長することなく、根系誘導用空間γ内でのみ生育する事態を招く場合もある。また、必要に応じて、保水性シート200とアスファルトCの間又は地盤軽量化トレイ100(1)と保水性シート200の間にパーライト等の保水性高い素材を薄く敷くことが好ましい。更に、溝部に穴が設けられている態様に関しては、保水シートは、当該穴を介して内部に水を供給する源として機能し得る(これについては後で詳述する)。
【0030】
次に、図3を参照しながら、本最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(1)を用いて植栽地盤を形成して芝を生育させた場合の様子を説明する。まず、図3に示すように、土壌充填用空間αに充填された土壌で芝が生育すると根が伸長する。そして、伸長に伴い、根の先端は、根系誘導穴101(1)を介して根系誘導用空間γに侵入し、更なる伸長により、嵩上げ用空間β内へと侵入する。ここで、地盤軽量化トレイ100(1)の下に不織布で構成された保水性シート200を敷くと、当該保水性シートの保水により芝に水分を提供するだけでなく、根が伸長しやすい環境とすることができる。更に、嵩上げ用空間β内まで到達した根はここで更に成長し、嵩上げ用空間内でその体積を増大させる。尚、嵩上げ用空間βの表面が親水性素材で構成されている場合、根は当該素材表面をつたって嵩上げ用空間β上部に伸長する等、嵩上げ用空間β内での効率的な伸長が達成される。
【0031】
第二の最良形態
本最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(2)は、第一の最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(1)と基本的に同様の構成を採るが、根系誘導穴の形成態様が相違する。具体的には、第一の最良形態では、中段部101(1)が存在し、当該中段部に根系誘導穴が形成されているが、第二の最良形態では、中段部は存在せず、嵩上げ用の凸部103(2)の側面部分に根系誘導穴101(2)が直接形成されている。したがって、第一の最良形態のような根系誘導用空間γを介することなく、伸長した根は土壌充填用空間αから嵩上げ用空間βに直接侵入する。図4は、このような、伸長した根が土壌充填用空間αから嵩上げ用空間βに直接侵入する様子を示した図である。
【0032】
第三の最良形態
本最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(3)は、第一の最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(1)と基本的に同様の構成を採るが、根系誘導穴の形状が相違する。具体的には、図5に示すように、第三の最良形態に係る根系誘導穴101a(3)は、中段部101(3)の上部面101b(3)に形成された、丸状に開口したものの上下左右に、十字状の土壌落下防止手段101a―1(3)を有する。このような構成を採ることにより、根系誘導穴を大きくすることによる土壌の落下を有効に防止できると共に、根系が太くなると当該土壌落下防止手段101a−1が破壊されるので根系の生長にも対応できる。
【0033】
第四の最良形態
本最良形態に係る地盤形成システムは、図6に示されるように、地盤軽量化メッシュ部材100(4)と、当該部材を収納するための水分保持用トレイ110とから構成される。このように、当該最良形態は、第一の最良形態乃至第三の最良形態と異なり、嵩上げ用凸部とトレイとが別体であることが一特徴である。更に、図7に示されるように、地盤軽量化メッシュ部材100(4)は、メッシュ状の部材により構成されていると共に、嵩上げ用凸部103(4)が多数形成されている。ここで、当該メッシュ状の部材の有する穴が、根系誘導穴103a(4)となる。溝底部を有孔にするとそこを通してトレイの水が土壌の毛細管力により上方移動するので好ましい。
【0034】
図8は、本最良形態に係る地盤形成システムを用いて、植栽地盤を形成して芝を生育させた場合の様子を示した図である。当該図に示されるように、土壌充填空間αに充填された土壌で芝が生育すると根が伸長する。そして、当該伸長した根は、根系誘導穴103a(4)を通って嵩上げ空間βへと更に伸長する。その後、当該嵩上げ空間β内で根は更に生長することとなる。
【0035】
第五の最良形態
本最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(5)は、第二の最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(2)と基本的に同様の構成を採るが、嵩上げ用凸部103(5)の形状が半円柱状である点で相違する。具体的には、図9〜図11に示すように、本最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(5)は、複数(図では8個)の半円柱状の嵩上げ用凸部103(5)が内部に形成された、樹脂等で一体成形(射出成形)されたトレイである。ここで、図10から分かるように、半円柱状(直径約10cm、立ち上がり部1.5cm)の嵩上げ用凸部103(5)間には、深さ約6.5cmの土壌充填空間が形成されており、半円柱状の嵩上げ用凸部103(5)上には、深さ約1.5cmの土壌充填空間が形成されている。嵩上げ用凸部の上部には、根系誘導穴103a(5)が設けられており、嵩上げ用空間βに根系を誘導できるように構成されている。また、図9に示されるように、当該トレイの略中央部には、底面部よりやや高い位置(例えば13mm)に排水口104(5)が備えられている。この位置に排水口を設置することで、トレイ100(5)内の土壌に給水された際、13mm以上の水は排出される一方、13mm以下の水は、嵩上げ用凸部103(5)間に形成された溝部である貯水部108(5)内に留まることになる。更には、図9から分かるように、当該排水口104(5)は、周囲に存在する嵩上げ用凸部103(5)の裏面の嵩上げ用空間βと連絡している。そのため、当該排水口104(5)から排出された水は、周囲(図では4個)の嵩上げ用空間β内に導入されることとなる。更には、図9及び図10に示されるように、嵩上げ用空間β内に導入された水を、隣接する嵩上げ用空間βや、当該トレイ外に排出するための外部排水口109(5)が設けられている(嵩上げ用空間βとそれに隣接する嵩上げ用空間βとを連絡する、又は、嵩上げ用空間βと当該トレイ外とを連絡するように、トンネル状の穴が形成されている)。これにより、トレイからの排水を利用して、すべての嵩上げ用空間βに水を供給できると共に、植物の生育に不要な余剰水分をトレイ外に排出することが可能となる。具体的には、図9に示すように、トレイ100(5)に水が供給された場合、余分な水分は、まず、排水口104(5)を介して隣接する4個の嵩上げ用凸部103(5)(図中、上段の左から2番目と3番目、下段の左から2番目と3番目)に供給される。そして、当該水分は、当該トレイ100(5)の下に設置された図示しない保水性シートに吸水される(ここに吸水された水が、当該嵩上げ用空間β内における根の生育の源となる)。また、当該保水シートで吸水しきれない余剰水分は、前述の外部排出口109(5)を介して、隣接する4個の嵩上げ用凸部103(5)(図中、上段の左から1番目と4番目、下段の左から1番目と4番目)に供給される。そして、当該水分も、前記同様、当該トレイ100(5)の下に設置された図示しない保水性シートに吸水される(ここに吸水された水が、当該嵩上げ用空間β内における根の生育の源となる)。更に、当該保水シートで吸水しきれない余剰水分は、前述の外部排出口109(5)を介して、外部に排出されることとなる。
【0036】
第六の最良形態
前述の第一の最良形態乃至第五の最良形態に係る地盤軽量化トレイは、根系誘導穴を有する態様であるが、本最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(6)は、根系誘導穴を有しない態様である。根系誘導穴を有する態様は、長期的な芝育成の観点から好適であるが、短期的(例えば2〜3年)な芝育成の観点からは根系誘導穴を有していなくとも十分である。ここで、第六の最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(6)は、根系誘導穴を有していない点を除き、基本的には第五の最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(5)と同様である。加えて、第五の最良形態では、嵩上げ用凸部103(5)の裏面で根を育成させるべく、当該部分に水を供給させる目的で、排水口104(5)を中央部に設け、当該排水口104(5)と嵩上げ用空間βとを液体導通可能に連絡すると共に、嵩上げ用空間βから他の嵩上げ用空間β或いはトレイ外部に排水するための外部排水口109(5)を設けるように構成されているが、本最良形態では、嵩上げ用凸部103(5)の裏面で根を育成させないため、このような特殊設備は必要ない。そのため、排水口104(6)は、通常のトレイ同様、直接トレイ外部に排水される位置に配置されている。
【0037】
尚、本発明に係るマット植物用地盤軽量化部材は、嵩上げ部及び溝部を必須的に有する。そして、当該部材がトレイ状になっているかは任意である。したがって、第一の最良形態のように、嵩上げ部及び溝部が一体化したトレイであってもよいし(この場合、この「トレイ」がマット植物用地盤軽量化部材に該当)、第四の最良形態のように、嵩上げ部と溝部が一体化したもの(この場合、この「一体化したもの」がマット植物用地盤軽量化部材に該当)とトレイが別体であってもよい。更には、本発明に係るマット植物用地盤軽量化部材の使用に際しては、トレイを使用しなくともよい。更には、本発明に係るマット植物用地盤軽量化部材の使用に際しては、保水シートを使用してもしなくともよい。そして、保水シートを使用する場合、嵩上げ部及び溝部が一体化したトレイを使用するときには当該トレイの下に配し、また、嵩上げ部と溝部が一体化したものとトレイが別体であるものを使用するときには当該一体化したものと当該トレイとの間に配して使用する。
【0038】
更に、第一の最良形態等では、嵩上げ用凸部間に形成された溝部は、外部と液体導通不能であるため、貯水部として機能している。しかしながら、当該溝部はこれに限定されず、当該溝部は、外部と液体導通可能な開口部を有していてもよい。このような構成とすることで、部材内部に貯水しておかなくても、部材の外部に存在する水を内部に導入することが可能となる。加えて、当該態様(開口部を有する態様)に関しては、マット植物用地盤軽量化部材の下に保水シートを使用することが好適である。保水シート中の水が当該開口部を介して当該部材の内部に侵入し、給水しなくとも長期に亘って水を当該部材内の土壌に供給できるからである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、第一の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの概観図である。
【図2】図2は、第一の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの断面図である。
【図3】図3は、第一の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの断面図である(使用時)。
【図4】図4は、第二の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの断面図である(使用時)。
【図5】図5は、第三の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの断面図である。
【図6】図6は、第四の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの概観図である。
【図7】図7は、第四の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの断面図である。
【図8】図8は、第四の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの断面図である(使用時)。
【図9】図9は、第五の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの上面図である。
【図10】図10は、第五の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの断面である(短軸方向)。
【図11】図11は、第五の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの断面である(長軸方向)。
【図12】図12は、第六の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの上面図である。
【図13】図13は、第六の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの断面である(短軸方向)。
【図14】図14は、第六の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの断面である(長軸方向)。
【図15】図15は、本発明の原理を説明した図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、植栽地盤重の軽量化が求められる屋上緑化、特に芝等のマット植物の屋上緑化のために使用されるマット植物用地盤軽量化部材及びマット植物の屋上緑化工法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋上緑化においては、軽量化の観点から、植栽地盤重をできるだけ少なくすること、具体的には、芝を張る場合を想定すると、40kg/m2以下にすることが望まれている。即ち、張り芝用の切り芝の湿潤状態での重量は約15kg/m2であるので、地盤重を25kg/m2以下にする必要がある。そのため、各メーカは、土壌そのものを軽量化する(人工軽量土壌)、土壌厚を少なくする(面的に)、水分等を自動灌漑システムで日常頻繁に補う、という発想で軽量化のための開発を進めてきた。しかしながら、現在存在する優れたシステムでも、前述の要求には満たない、芝込みで60kg/m2というのが実情である。
【0003】
そこで、更なる解決手法として、ポット植物に関しては、トレイ内に充填土量を減らす嵩上げ部分を有する屋上緑化施工用パネルが提案されている(特許文献1)。この文献に記載されたパネルは、ポット苗を育成するためのパネルである。ここで、当該パネルは嵩上げ部分を複数有しており、嵩上げ部分間にポット苗が配設される。そして、これら嵩上げ部分上にはポット苗は配設されず、当該嵩上げ部分を見えなくするために杉皮等が薄く被せられる。
【特許文献1】特開2006−204291
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、日本原産のコウライシバやノシバは、乾燥、暑熱等の悪環境に強く、ヒートアイランド現象緩和に有効である。ここで、切り芝は、コウライシバやノシバが生育している圃場から厚さ約2cmとなるよう剥ぎ取ることにより生産される。したがって、切り芝の根は極めて浅く、しかも疎で、吸水力が極めて弱い。このため、張り付け直後1〜3ヶ月間は根を乾燥させないように、土壌を常に濡らしておく必要がある。しかしながら、このパネルを芝等のマット植物に転用した場合、当該嵩上げ部分上に存在する土壌が乾燥するため、この上に植え付けられたマット植物の生育が悪くなり枯死に至る場合があることを確認した。そこで、本発明は、芝等のマット植物を屋上緑化するに際し、植栽地盤重の軽量化及びマット植物の順調な生育の両立を図ることが可能な手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、マット植物生育用の土層を鉛直方向に深い部分と浅い部分を水平方向の位置をずらして混在させ、立体的に土層を配置することで土量を減らすことができることにまず着目した。その上で、単に深い部分と浅い部分を設ければよいという訳ではなく、深い部分が浅すぎると、降雨時や散水時に過湿になる土壌下面とすべての根が接触しているため根も過湿になり根腐れしてしまう一方、深い部分が深すぎると、溜まった水が上部まで移動せず根が乾燥してしまうので、マット植物を順調に生育させるためには浅い部分との関係で深い部分の深さを規定する必要があることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0006】
本発明(1)は、相互に離隔した複数の嵩上げ部と当該嵩上げ部の根元周囲に存在する溝部とが一体形成されたマット植物用地盤軽量化部材であって、前記複数の嵩上げ部の最も上に位置するいずれの地点に関しても、いずれかの前記溝部から当該地点までの最短距離が12cm以内であり、かつ、前記嵩上げ部の高さが3cm以上であるマット植物用地盤軽量化部材である。尚、本マット植物用地盤軽量化部材は、人工軽量土壌用として、また、地中潅水用として特に有効である。
【0007】
本発明(2)は、前記溝部が、貯水部となっている、前記発明(1)のマット植物用地盤軽量化部材である。
【0008】
本発明(3)は、前記溝部が、開口部を有している、前記発明(1)のマット植物用地盤軽量化部材である。
【0009】
本発明(4)は、前記部材が、前記部材の表側に位置する土壌充填用空間から前記嵩上げ部の裏面に位置する嵩上げ用空間へと根系を導くための根系誘導穴を有する、前記発明(1)〜(3)のいずれか一つのマット植物用地盤軽量化部材である。
【0010】
本発明(5)は、前記部材が、前記溝部より上に排水口を有しており、前記排水口から排出された水が前記嵩上げ用空間に供給されるよう構成されている、前記発明(4)のマット植物用地盤軽量化部材である。
【0011】
本発明(6)は、屋上に土壌を略平坦に敷き均す工程と、前記土壌上にマット植物を搭載する工程とを含む、マット植物の屋上緑化工法において、屋上に土壌を敷き均す際、屋上平面の複数箇所を凸状に嵩上げした状況下、当該嵩上げ部間と当該嵩上げ部上に土壌を充填することにより、土壌深度の大きい領域と土壌深度の小さい領域を形成することとし、かつ、前記複数の嵩上げ部の最も上に位置するいずれの地点に関しても、前記土壌深度の大きいいずれかの領域における最も深い地点から当該地点までの最短距離が12cm以内であり、前記嵩上げ部の高さが3cm以上であることを特徴とする工法である。尚、本工法は、上述した発明(1)〜(5)に係るマット植物用地盤軽量化部材を使用する場合のみならず、当該部材とは異なる部材、例えば、物理的に分離した嵩上げ部材(例えばブロック)を用いて実施した場合をも包含する。
【0012】
本発明(7)は、屋上に保水性部材を敷き、その上に前記嵩上げ部を配する、前記発明(6)のマット植物の屋上緑化工法である。
【0013】
本発明(8)は、前記嵩上げに際し、前記発明(1)〜(5)のいずれか一つのマット植物用地盤軽量化部材を用いる、前記発明(6)又は(7)のマット植物の屋上緑化工法である。
【0014】
本発明(9)は、前記発明(1)〜(5)のいずれか一つのマット植物用地盤軽量化部材と、前記マット植物用地盤軽量化部材の下に配置する保水性部材と、を含むマット植物の屋上緑化システムである。
【0015】
本発明の概要と原理
本発明は、複数の嵩上げ部の最も上に位置するいずれの地点に関しても、いずれかの溝部から当該地点までの最短距離が12cm以内(好適に10cm以内)であり、かつ、嵩上げ部の高さが3cm以上(好適には5cm以上)であることを特徴とする。そこでまず、図15を参照しながら、当該内容を概説する。図15は、以下で詳述する第六の最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(6)の断面図である。地盤軽量化トレイ100(6)は、複数の嵩上げ用凸部103(6)(図では4個)と当該嵩上げ用凸部103(6)の根元付近に形成された溝状の貯水部108(6)(図では5箇所)とを有する、射出成形により一体成形された樹脂である。尚、これら貯水部108(6)に貯水されるのは、部材内の過剰な水を排出するための排出口がこれら貯水部よりも高い位置に設置されているからである。ここで、本発明にいう「マット植物用地盤軽量化部材の複数の嵩上げ部の最も上に位置する地点」とは、当該例では、図中の「A」で示す平面と嵩上げ部とが接する地点である。この平面Aは、その上に実際の使用時に土壌が配される位置に相当する。そして、嵩上げ部の最も上に位置する地点(即ち、貯水部から最も遠いところに位置する地点)からいずれかの貯水部までの最短距離が12cm以内となるよう構成されている。具体的には、例えば、嵩上げ用凸部103(6)上の点a2に関しては、左下又は右下に存在する貯水部108(6)から当該地点までの最短距離が約94mmである。尚、最短距離は数学的に求められる。また、嵩上げ用凸部103(6)の高さ(貯水部から点a1までの距離)は65mmである。
【0016】
次に、本発明の原理(数値限定の理由)を説明する。まず、当該溝部に蓄えられた水(又は溝部の開口部から内部に侵入した水)は、毛細管力により土壌中を上昇する。つまり、水は、土壌の毛細管張力によって土壌中を垂直、水平、斜方向に移動し、各方向への移動速度、移動距離は殆ど同一である。したがって、ある地点までの最短距離がその土壌の毛細管上昇力の範囲内であるならば、その地点の土壌には水が供給されることになる。尚、屋上緑化の場合、水を周囲に飛散させないため、スプリンクラーによる散水潅水でなく、大部分の場合ドリップホースにより地中に部分的(例えば、1m2に約5箇所)に潅水が行われている。したがって、潅水時に水が下方移動するときに土壌層全体を濡らすことはなく、一旦底部に達した水が毛細管力により再分配され、土壌層全体を均一に濡らすことになる。また、植栽地盤を軽量化する場合、軽量土壌を用いざるをえず、それら土壌の保水力は低いので、植物の生育に必要な水を植栽地盤底部に貯め、毛細管力により土壌中を移動させ植物に供給させることになる。そして、一般に使われている粗粒質の人工軽量土壌の最大毛細管水上昇力は、約12cmである。したがって、当該溝部から最も遠いところに位置する嵩上げ用凸部の地点が12cm以内であれば、当該嵩上げ用凸部上のすべての平面A(土壌が搭載される平面)に水が行き渡ることになる。尚、本明細書にいう「人工軽量土壌」とは、当業界で認識されているものと同義であり、パーライトや軽石等を主原料とする粗粒の多孔質土壌を指す。
【0017】
この観点から、類似構造が開示されている引用文献1を検討すると、引用文献1に基づいて製品化されている屋上緑化地盤軽量化用の嵩上げパレット{R−パレット(商標)、東邦レオ(株)}に芝をはる場合は、溝部から最も遠いところに位置する嵩上げ用凸部の地点が8cm+7.3cm≒15cmとなる。そのため、前述のように、人工軽量土壌における毛細管力による水の移動距離は12cmであることから、水平面中央部の土壌は水で濡れないことになる。他方、図15に示すように、本発明に係るマット植物用地盤軽量化部材においては、嵩上げ用凸部103(6)の真上を含めた全領域(図15のAで示す平面)に関しては、その距離は12cm未満となる。そのため、当該領域(マット植物の根が存在する領域)に水が確実に供給され、乾燥部分が生じないため、マット植物の順調な生育が可能となる。
【0018】
以上がマット植物全体に水を供給するという観点からの数値規定であるが、余りに近すぎても、根が水を過剰吸収するために良好な生育は望めない。マット植物の順調な生育の観点からは、3cm以上(好適には5cm以上)であることが好適である。このように、マット植物の順調な生育のために、嵩上げ部(溝部と平面Aとの距離)を規定したのが本発明の本質である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、芝等のマット植物を屋上緑化するに際し、植栽地盤重の軽量化及びマット植物の順調な生育の両立を図ることが可能となるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の最良形態を説明する。尚、本発明の技術的範囲は本最良形態に限定されるものではない。また、一つの例について具体的に説明した事項に関しては、そうでないとの特記がある場合を除き、他の例にもそのまま適用されるものと理解すべきである。例えば、第一の最良形態についての根系誘導穴に関する記述は、他の例にも適用される。
【0021】
第一の最良形態
まず、図1を参照しながら、第一の最良形態に係る緑化システム(植栽地盤)の概要を説明する。はじめに、当該緑化システムは、コンクリート等の屋上やベランダの床面素材C上に配された保水性シート200と、当該保水性シート200上に搭載された地盤軽量化トレイ100(1)と、当該地盤軽量化トレイ100(1)の土壌充填用空間αに充填される土壌Sと、から構成される。以下、地盤軽量化トレイ100(1)及び保水性シート200について詳述する。
【0022】
はじめに、地盤軽量化トレイ100(1)は、少なくとも、土壌が収容される土壌充填用空間αと、当該トレイ100(1)の裏面に形成された、前記土壌の重量を軽減しつつ必要な土壌の厚さを確保する嵩上げ用空間βと、当該土壌充填用空間αで生育した根系が、当該嵩上げ用空間βへと伸張可能な根系誘導穴101a(1)と、土壌充填用空間α内部に過剰に存在する水を排水するための排水口104(1)と、を有する。尚、排水口104(1)の設置高さは、トレイ内に貯水される水量を少なくして植栽地盤を軽量化するという観点から、地盤軽量化トレイ101(1)の土壌充填空間αの最下部から0.5〜1.5cmとすることが好ましい。
【0023】
ここで、図1及び図2を参照しながら、本最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(1)の特徴部分をより詳細に説明する。尚、図2は、図1中のA−A’断面図である。当該地盤軽量化トレイ100(1)は、充填された土壌が外部にこぼれないようにするためにその外延に形成された枠体部102(1)と、当該枠体部102(1)よりも内側に複数設けられた、嵩上げ用凸部103(1)と、を有する。更に、図1から分かるように、当該地盤軽量化トレイ100(1)は、隣り合う嵩上げ用凸部103(1)との間に、嵩上げ用凸部103(1)の高さよりも低い中段部101(1)を有している。このように、枠体部102(1)、嵩上げ用凸部103(1)及び中段部101(1)の上部空間が、土壌や芝を収納可能な土壌充填用空間αに相当する。そして、これら枠体部102(1)、嵩上げ用凸部103(1)及び中段部101(1)は、好適には、プラスチック材料等で一体形成されている。以下、嵩上げ用凸部103(1)と中段部101(1)を更に詳述する。
【0024】
まず、嵩上げ用凸部103(1)は、前述した条件を充足する限り、大きさ、高さ、形状、数及び間隔等は何ら限定されず、当業者により適宜設定される。更に、嵩上げ用凸部103(1)の裏面に親水加工を施すとか使用するプラスチック材料として親水性プラスチックを用いる等して、当該嵩上げ用凸部103(1)の裏面を親水性にすることが好適である。このような性質を嵩上げ用凸部103(1)の裏面に付与することにより、根系誘導穴101a(1)を介して下部から土壌充填用空間α内に侵入した根が当該嵩上げ用凸部103(1)の裏面をつたって四方に伸長する結果、土壌充填用空間α内での当該根の効率的な生長が可能となる。
【0025】
次に、図1に示すように、中段部101(1)は、嵩上げ用凸部103(1)の高さより低く底部よりも高い位置で二つの嵩上げ用凸部103(1)間を水平方向から架橋する、略平坦で方形状の上部面101b(1)と、二つの嵩上げ用凸部103(1)間を鉛直方向から架橋する、当該上部面101b(1)の両端から垂下した側面101c(1)及び側面101d(1)と、から構成される。そして、これら上部面101b(1)、側面101c(1)及び側面101d(1)で囲まれた嵩上げ用凸部103(1)は、その囲まれた部分で開口している。その結果、上部面101b(1)、側面101c(1)及び側面101d(1)から形成される空間、即ち、中段部101(1)の裏側に形成された根系誘導用空間γは、二つの嵩上げ用凸部103(1)と空間導通している。
【0026】
ここで、中段部101(1)の上部面101b(1)には、複数の根系誘導穴101a(1)が形成されている。ここで、根系誘導穴101a(1)の形状及び大きさは、根系が当該穴を侵入可能であれば特に限定されず、植物の種類によって当業者により適宜設定されるが、多くの植物に対応可能とする場合には、直径1〜3mmの円形とすることが好ましい。1mm以下であれば、根系の生長後、根が細くくびれ、その地点より先の根の生育を阻害する場合があり、3mm以上とすると、土壌を流下する水が嵩上げ用空間βに漏出し貯水部に溜まる水量が少なくなったり土壌がこぼれ落ちやすくなってしまうからである。また、根系誘導穴の総面積は、地盤軽量化トレイ101の全表面積の1%以上であることが好ましい。上限は特に限定されないが、例えば15%以下である。その他、穴の個数には、特に限定されない。
【0027】
また、中段部101(1)の上部面101b(1)の高さは、以下の二点を考慮し、当業者により適宜設定される。まず、一点目が、上部面101b(1)の高さが排水口104(1)位置(水位面)よりも高い位置である必要があるという点である。これにより、排水口104(1)以外からの、中段部101(1)に形成された根系誘導穴101a(1)による過剰な排水を防止することができる。ここで、上部面101b(1)の高さが排水口104(1)位置よりも0.5cm以上高くすることが好適である。0.5cm以上高くすることにより、根の絡まりを通した毛細管サイフォン現象による根系誘導穴101a(1)からの排水が防止できる。二点目が、上部面101b(1)の高さ(或いは根系誘導用空間γの高さ)が、地盤軽量化トレイ101(1)の最下部から1cm以上とすることが好ましく、2cm以上とすることがより好ましい。1cm以上の高さがないと、根系誘導穴101a(1)から根系誘導用空間γに侵入した根が嵩上げ用空間βの方に向けて効果的に伸長しないからである。
【0028】
次に、地盤軽量化トレイ100(1)における中段部101(1)の位置及び間隔に関して詳述する。まず、中段部101(1)の位置について説明すると、中段部101(1)は、前述のように、二つの嵩上げ用凸部103(1)間に存在する。ここで、図1から理解できるように、一つの嵩上げ用凸部103(1)は、2個〜5個の嵩上げ用凸部103(1)と隣接している。しかしながら、これら隣接するすべての嵩上げ用凸部103(1)との間に中段部101(1)が形成されている必要は無く、少なくとも一つの隣接する嵩上げ用凸部103(1)との間に一つの中段部101(1)が形成されていればよい。少なくとも一つの中段部101(1)が存在していれば、当該嵩上げ用凸部103(1)の裏面に形成された嵩上げ用空間β内に根が入り込み、当該空間が根の生育空間として利用されるからである。しかも、図1に示すように、中段部101(1)は、嵩上げ用凸部103間の谷部の一つ置きに形成することが好適である。このように構成することにより、中段部101(1)が形成されていない嵩上げ用凸部103(1)間の谷部が存在することとなる結果、トレイ上のいずれの位置の土壌に注水しても、当該土壌に染みこんだ水は当該谷部をつたってトレイ全体に行き渡ることが可能となるからである。
【0029】
以上で地盤軽量化トレイ100(1)を説明したので、次に当該地盤軽量化トレイ100(1)とアスファルトCとの間に配される保水性シート200を詳述する。当該保水性シート200は、不織布等の布状物から構成される。このような素材の保水性シート200を配置することにより、根系誘導穴101a(1)から根系誘導用空間γに侵入した根が、当該保水性シート200中の養水分を吸収し生育しつつ、これをつたって嵩上げ用空間β内に向かって伸長し易くなると共に、適度な湿度に保つことが可能となる。他方、当該保水性シート200を配置しないと、根系誘導穴101a(1)から根系誘導用空間γに侵入した根が、嵩上げ用空間βに向けて伸長することなく、根系誘導用空間γ内でのみ生育する事態を招く場合もある。また、必要に応じて、保水性シート200とアスファルトCの間又は地盤軽量化トレイ100(1)と保水性シート200の間にパーライト等の保水性高い素材を薄く敷くことが好ましい。更に、溝部に穴が設けられている態様に関しては、保水シートは、当該穴を介して内部に水を供給する源として機能し得る(これについては後で詳述する)。
【0030】
次に、図3を参照しながら、本最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(1)を用いて植栽地盤を形成して芝を生育させた場合の様子を説明する。まず、図3に示すように、土壌充填用空間αに充填された土壌で芝が生育すると根が伸長する。そして、伸長に伴い、根の先端は、根系誘導穴101(1)を介して根系誘導用空間γに侵入し、更なる伸長により、嵩上げ用空間β内へと侵入する。ここで、地盤軽量化トレイ100(1)の下に不織布で構成された保水性シート200を敷くと、当該保水性シートの保水により芝に水分を提供するだけでなく、根が伸長しやすい環境とすることができる。更に、嵩上げ用空間β内まで到達した根はここで更に成長し、嵩上げ用空間内でその体積を増大させる。尚、嵩上げ用空間βの表面が親水性素材で構成されている場合、根は当該素材表面をつたって嵩上げ用空間β上部に伸長する等、嵩上げ用空間β内での効率的な伸長が達成される。
【0031】
第二の最良形態
本最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(2)は、第一の最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(1)と基本的に同様の構成を採るが、根系誘導穴の形成態様が相違する。具体的には、第一の最良形態では、中段部101(1)が存在し、当該中段部に根系誘導穴が形成されているが、第二の最良形態では、中段部は存在せず、嵩上げ用の凸部103(2)の側面部分に根系誘導穴101(2)が直接形成されている。したがって、第一の最良形態のような根系誘導用空間γを介することなく、伸長した根は土壌充填用空間αから嵩上げ用空間βに直接侵入する。図4は、このような、伸長した根が土壌充填用空間αから嵩上げ用空間βに直接侵入する様子を示した図である。
【0032】
第三の最良形態
本最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(3)は、第一の最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(1)と基本的に同様の構成を採るが、根系誘導穴の形状が相違する。具体的には、図5に示すように、第三の最良形態に係る根系誘導穴101a(3)は、中段部101(3)の上部面101b(3)に形成された、丸状に開口したものの上下左右に、十字状の土壌落下防止手段101a―1(3)を有する。このような構成を採ることにより、根系誘導穴を大きくすることによる土壌の落下を有効に防止できると共に、根系が太くなると当該土壌落下防止手段101a−1が破壊されるので根系の生長にも対応できる。
【0033】
第四の最良形態
本最良形態に係る地盤形成システムは、図6に示されるように、地盤軽量化メッシュ部材100(4)と、当該部材を収納するための水分保持用トレイ110とから構成される。このように、当該最良形態は、第一の最良形態乃至第三の最良形態と異なり、嵩上げ用凸部とトレイとが別体であることが一特徴である。更に、図7に示されるように、地盤軽量化メッシュ部材100(4)は、メッシュ状の部材により構成されていると共に、嵩上げ用凸部103(4)が多数形成されている。ここで、当該メッシュ状の部材の有する穴が、根系誘導穴103a(4)となる。溝底部を有孔にするとそこを通してトレイの水が土壌の毛細管力により上方移動するので好ましい。
【0034】
図8は、本最良形態に係る地盤形成システムを用いて、植栽地盤を形成して芝を生育させた場合の様子を示した図である。当該図に示されるように、土壌充填空間αに充填された土壌で芝が生育すると根が伸長する。そして、当該伸長した根は、根系誘導穴103a(4)を通って嵩上げ空間βへと更に伸長する。その後、当該嵩上げ空間β内で根は更に生長することとなる。
【0035】
第五の最良形態
本最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(5)は、第二の最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(2)と基本的に同様の構成を採るが、嵩上げ用凸部103(5)の形状が半円柱状である点で相違する。具体的には、図9〜図11に示すように、本最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(5)は、複数(図では8個)の半円柱状の嵩上げ用凸部103(5)が内部に形成された、樹脂等で一体成形(射出成形)されたトレイである。ここで、図10から分かるように、半円柱状(直径約10cm、立ち上がり部1.5cm)の嵩上げ用凸部103(5)間には、深さ約6.5cmの土壌充填空間が形成されており、半円柱状の嵩上げ用凸部103(5)上には、深さ約1.5cmの土壌充填空間が形成されている。嵩上げ用凸部の上部には、根系誘導穴103a(5)が設けられており、嵩上げ用空間βに根系を誘導できるように構成されている。また、図9に示されるように、当該トレイの略中央部には、底面部よりやや高い位置(例えば13mm)に排水口104(5)が備えられている。この位置に排水口を設置することで、トレイ100(5)内の土壌に給水された際、13mm以上の水は排出される一方、13mm以下の水は、嵩上げ用凸部103(5)間に形成された溝部である貯水部108(5)内に留まることになる。更には、図9から分かるように、当該排水口104(5)は、周囲に存在する嵩上げ用凸部103(5)の裏面の嵩上げ用空間βと連絡している。そのため、当該排水口104(5)から排出された水は、周囲(図では4個)の嵩上げ用空間β内に導入されることとなる。更には、図9及び図10に示されるように、嵩上げ用空間β内に導入された水を、隣接する嵩上げ用空間βや、当該トレイ外に排出するための外部排水口109(5)が設けられている(嵩上げ用空間βとそれに隣接する嵩上げ用空間βとを連絡する、又は、嵩上げ用空間βと当該トレイ外とを連絡するように、トンネル状の穴が形成されている)。これにより、トレイからの排水を利用して、すべての嵩上げ用空間βに水を供給できると共に、植物の生育に不要な余剰水分をトレイ外に排出することが可能となる。具体的には、図9に示すように、トレイ100(5)に水が供給された場合、余分な水分は、まず、排水口104(5)を介して隣接する4個の嵩上げ用凸部103(5)(図中、上段の左から2番目と3番目、下段の左から2番目と3番目)に供給される。そして、当該水分は、当該トレイ100(5)の下に設置された図示しない保水性シートに吸水される(ここに吸水された水が、当該嵩上げ用空間β内における根の生育の源となる)。また、当該保水シートで吸水しきれない余剰水分は、前述の外部排出口109(5)を介して、隣接する4個の嵩上げ用凸部103(5)(図中、上段の左から1番目と4番目、下段の左から1番目と4番目)に供給される。そして、当該水分も、前記同様、当該トレイ100(5)の下に設置された図示しない保水性シートに吸水される(ここに吸水された水が、当該嵩上げ用空間β内における根の生育の源となる)。更に、当該保水シートで吸水しきれない余剰水分は、前述の外部排出口109(5)を介して、外部に排出されることとなる。
【0036】
第六の最良形態
前述の第一の最良形態乃至第五の最良形態に係る地盤軽量化トレイは、根系誘導穴を有する態様であるが、本最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(6)は、根系誘導穴を有しない態様である。根系誘導穴を有する態様は、長期的な芝育成の観点から好適であるが、短期的(例えば2〜3年)な芝育成の観点からは根系誘導穴を有していなくとも十分である。ここで、第六の最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(6)は、根系誘導穴を有していない点を除き、基本的には第五の最良形態に係る地盤軽量化トレイ100(5)と同様である。加えて、第五の最良形態では、嵩上げ用凸部103(5)の裏面で根を育成させるべく、当該部分に水を供給させる目的で、排水口104(5)を中央部に設け、当該排水口104(5)と嵩上げ用空間βとを液体導通可能に連絡すると共に、嵩上げ用空間βから他の嵩上げ用空間β或いはトレイ外部に排水するための外部排水口109(5)を設けるように構成されているが、本最良形態では、嵩上げ用凸部103(5)の裏面で根を育成させないため、このような特殊設備は必要ない。そのため、排水口104(6)は、通常のトレイ同様、直接トレイ外部に排水される位置に配置されている。
【0037】
尚、本発明に係るマット植物用地盤軽量化部材は、嵩上げ部及び溝部を必須的に有する。そして、当該部材がトレイ状になっているかは任意である。したがって、第一の最良形態のように、嵩上げ部及び溝部が一体化したトレイであってもよいし(この場合、この「トレイ」がマット植物用地盤軽量化部材に該当)、第四の最良形態のように、嵩上げ部と溝部が一体化したもの(この場合、この「一体化したもの」がマット植物用地盤軽量化部材に該当)とトレイが別体であってもよい。更には、本発明に係るマット植物用地盤軽量化部材の使用に際しては、トレイを使用しなくともよい。更には、本発明に係るマット植物用地盤軽量化部材の使用に際しては、保水シートを使用してもしなくともよい。そして、保水シートを使用する場合、嵩上げ部及び溝部が一体化したトレイを使用するときには当該トレイの下に配し、また、嵩上げ部と溝部が一体化したものとトレイが別体であるものを使用するときには当該一体化したものと当該トレイとの間に配して使用する。
【0038】
更に、第一の最良形態等では、嵩上げ用凸部間に形成された溝部は、外部と液体導通不能であるため、貯水部として機能している。しかしながら、当該溝部はこれに限定されず、当該溝部は、外部と液体導通可能な開口部を有していてもよい。このような構成とすることで、部材内部に貯水しておかなくても、部材の外部に存在する水を内部に導入することが可能となる。加えて、当該態様(開口部を有する態様)に関しては、マット植物用地盤軽量化部材の下に保水シートを使用することが好適である。保水シート中の水が当該開口部を介して当該部材の内部に侵入し、給水しなくとも長期に亘って水を当該部材内の土壌に供給できるからである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、第一の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの概観図である。
【図2】図2は、第一の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの断面図である。
【図3】図3は、第一の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの断面図である(使用時)。
【図4】図4は、第二の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの断面図である(使用時)。
【図5】図5は、第三の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの断面図である。
【図6】図6は、第四の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの概観図である。
【図7】図7は、第四の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの断面図である。
【図8】図8は、第四の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの断面図である(使用時)。
【図9】図9は、第五の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの上面図である。
【図10】図10は、第五の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの断面である(短軸方向)。
【図11】図11は、第五の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの断面である(長軸方向)。
【図12】図12は、第六の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの上面図である。
【図13】図13は、第六の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの断面である(短軸方向)。
【図14】図14は、第六の最良形態に係るマット植物用軽量化トレイの断面である(長軸方向)。
【図15】図15は、本発明の原理を説明した図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に離隔した複数の嵩上げ部と当該嵩上げ部の根元周囲に存在する溝部とが一体形成されたマット植物用地盤軽量化部材であって、前記複数の嵩上げ部の最も上に位置するいずれの地点に関しても、いずれかの前記溝部から当該地点までの最短距離が12cm以内であり、かつ、前記嵩上げ部の高さが3cm以上であるマット植物用地盤軽量化部材。
【請求項2】
前記溝部が、貯水部となっている、請求項1記載のマット植物用地盤軽量化部材。
【請求項3】
前記溝部が、開口部を有している、請求項1記載のマット植物用地盤軽量化部材。
【請求項4】
前記部材が、前記部材の表側に位置する土壌充填用空間から前記嵩上げ部の裏面に位置する嵩上げ用空間へと根系を導くための根系誘導穴を有する、請求項1〜3のいずれか一項記載のマット植物用地盤軽量化部材。
【請求項5】
前記部材が、前記溝部より上に排水口を有しており、前記排水口から排出された水が前記嵩上げ用空間に供給されるよう構成されている、請求項4記載のマット植物用地盤軽量化部材。
【請求項6】
屋上に土壌を略平坦に敷き均す工程と、前記土壌上にマット植物を搭載する工程とを含む、マット植物の屋上緑化工法において、屋上に土壌を敷き均す際、屋上平面の複数箇所を凸状に嵩上げした状況下、当該嵩上げ部間と当該嵩上げ部上に土壌を充填することにより、土壌深度の大きい領域と土壌深度の小さい領域を形成することとし、かつ、前記複数の嵩上げ部の最も上に位置するいずれの地点に関しても、前記土壌深度の大きいいずれかの領域における最も深い地点から当該地点までの最短距離が12cm以内であり、前記嵩上げ部の高さが3cm以上であることを特徴とする工法。
【請求項7】
屋上に保水性部材を敷き、その上に前記嵩上げ部を配する、請求項6記載のマット植物の屋上緑化工法。
【請求項8】
前記嵩上げに際し、請求項1〜5のいずれか一項記載のマット植物用地盤軽量化部材を用いる、請求項6又は7記載のマット植物の屋上緑化工法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項記載のマット植物用地盤軽量化部材と、前記マット植物用地盤軽量化部材の下に配置する保水性部材と、を含むマット植物の屋上緑化システム。
【請求項1】
相互に離隔した複数の嵩上げ部と当該嵩上げ部の根元周囲に存在する溝部とが一体形成されたマット植物用地盤軽量化部材であって、前記複数の嵩上げ部の最も上に位置するいずれの地点に関しても、いずれかの前記溝部から当該地点までの最短距離が12cm以内であり、かつ、前記嵩上げ部の高さが3cm以上であるマット植物用地盤軽量化部材。
【請求項2】
前記溝部が、貯水部となっている、請求項1記載のマット植物用地盤軽量化部材。
【請求項3】
前記溝部が、開口部を有している、請求項1記載のマット植物用地盤軽量化部材。
【請求項4】
前記部材が、前記部材の表側に位置する土壌充填用空間から前記嵩上げ部の裏面に位置する嵩上げ用空間へと根系を導くための根系誘導穴を有する、請求項1〜3のいずれか一項記載のマット植物用地盤軽量化部材。
【請求項5】
前記部材が、前記溝部より上に排水口を有しており、前記排水口から排出された水が前記嵩上げ用空間に供給されるよう構成されている、請求項4記載のマット植物用地盤軽量化部材。
【請求項6】
屋上に土壌を略平坦に敷き均す工程と、前記土壌上にマット植物を搭載する工程とを含む、マット植物の屋上緑化工法において、屋上に土壌を敷き均す際、屋上平面の複数箇所を凸状に嵩上げした状況下、当該嵩上げ部間と当該嵩上げ部上に土壌を充填することにより、土壌深度の大きい領域と土壌深度の小さい領域を形成することとし、かつ、前記複数の嵩上げ部の最も上に位置するいずれの地点に関しても、前記土壌深度の大きいいずれかの領域における最も深い地点から当該地点までの最短距離が12cm以内であり、前記嵩上げ部の高さが3cm以上であることを特徴とする工法。
【請求項7】
屋上に保水性部材を敷き、その上に前記嵩上げ部を配する、請求項6記載のマット植物の屋上緑化工法。
【請求項8】
前記嵩上げに際し、請求項1〜5のいずれか一項記載のマット植物用地盤軽量化部材を用いる、請求項6又は7記載のマット植物の屋上緑化工法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項記載のマット植物用地盤軽量化部材と、前記マット植物用地盤軽量化部材の下に配置する保水性部材と、を含むマット植物の屋上緑化システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−118770(P2009−118770A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295751(P2007−295751)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(390039907)株式会社クレアテラ (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(390039907)株式会社クレアテラ (16)
【Fターム(参考)】
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