説明

マナ板シート及びマナ板シートパック

【課題】 マナ板等の上にシートを敷いてマナ板代わりに用いた場合に、シートが包丁で切断されにくく、かつ調理者が任意の大きさで引き裂きやすいマナ板シート等を提供する。
【解決手段】 硬質樹脂からなるマナ板シートであって、少なくとも一方向に延伸されており、かつ厚みが40μm以上150μm以下であり、さらに、前記一方向に対して略直角方向の端辺に沿って易引き裂き加工部が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マナ板などの上に拡げて敷くことで、調理の際にマナ板を汚さずに使用できる使い捨てのマナ板シート等に関する。
【背景技術】
【0002】
マナ板は、包丁を用いた調理では必須の道具であるが、表面に包丁傷が生じやすく、生じた包丁傷に食材の一部が入り込み易い。そして、食材が包丁傷に入り込んだ場合は、洗浄しても落ちにくく雑菌の巣となりやすい。そのため、マナ板の表面に使い捨てフィルムを敷いた状態で調理を行い、マナ板表面を清潔に保つためのマナ板シートの発明が各種開示されている。
【0003】
例えば、熱可塑性合成樹脂からなるシートに包丁で切れないような強化材料を入れ、さらに、調理の際にシートと食材が滑らないようにすると同時に、シートとマナ板の間も滑らないようにするための凹凸や網目の滑り止め部を、シートの両面に設ける発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、熱可塑性合成樹脂や強化材料の具体的内容、滑り止めの具体的な構成等に関する、発明の実施に必要な具体的な記載はない。
【0004】
また、特定のポリプロピレンからなるシートを用いることで包丁でも簡単に切れない剛性を有し、かつその表面に特定形状の梨地処理を施すことで食材を滑りにくくし、かつ裏面にも特定形状の滑り止め処理を施すことでシートも滑りにくくする使い捨てマナ板そのものが開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、包丁でシートが切断されないようにするためにはシートの剛性を高くする必要があり、そのため、厚みが1mm以下、好ましくは0.2mm以上0.8mm以下の厚手であり、その結果、調理者が使用したい面積にあわせて好みの大きさにシートを引き裂いて使用しようとした場合に、シートが引き裂きにくいという問題点があった。また、食材の滑りにくさも不十分な問題点があった。
【特許文献1】特開2000−316734号公報
【特許文献2】特開2005−124897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、マナ板等の上にシートを敷いてマナ板代わりに用いた場合に、シートが包丁で切断されにくく、かつ調理者が使用者したい面積にあわせて任意の大きさに引き裂いて使用できるマナ板シート等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1は、硬質樹脂からなるマナ板シートであって、少なくとも一方向に延伸されており、かつ厚みが40μm以上150μm以下であり、さらに、前記一方向に対して略直角方向の端辺に沿って易引き裂き加工部が設けられていることを特徴とするマナ板シートである。ここで、片面にエンボス加工されていることは好ましい。
【0007】
本発明の第2は、少なくとも基材層と被覆層とが積層されたマナ板シートであって、前記被覆層は軟質樹脂からなり、前記基材層は硬質樹脂からなって少なくとも一方向に延伸された層であり、前記被覆層と前記基材層との厚みの合計が40μm以上150μm以下であり、さらに、前記一方向に対して略直角方向の端辺に沿って易引き裂き加工部が設けられていることを特徴とするマナ板シートである。
【0008】
ここで、前記被覆層の表面にエンボス加工されていることは好ましい。また、前記基材層の厚みと前記被覆層の厚みの比が、6:4〜99:1であることは好ましい。また、前記エンボス加工された面の反対側の面が、平滑面であることは好ましい。また、前記硬質樹脂は、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリスチレンからなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂であることは好ましい。また、前記軟質樹脂は、低密度ポリエチレン、低密度直鎖状ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、エチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂であることは好ましい。また、前記の易引き裂き加工部は、微細孔、微細スリット、微細傷痕、微細切り欠きの少なくともいずれかが多数設けられたものであることは好ましい。また、前記端辺の方向に長い長尺物であることは好ましい。
【0009】
発明の第3は、収納部と、前記収納部上部に開閉可能に一辺が接続された蓋部とを備え、前記蓋部における前記一辺の反対側端辺が略直線形状である収納箱の前記収納部に、請求項10に記載のマナ板シートがロール状で、かつ端部が引き出し可能に格納されたことを特徴とするマナ板シートパックである。
【発明の効果】
【0010】
マナ板シートが任意の長さに手指で容易に引き裂けるから、調理に必要な長さのシートだけを使用でき、使用後は抵抗感なく使い捨てることができる。シートの引き裂きが容易なため、ロール状のマナ板シートパックとして調理者に提供した場合に使い勝手がよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態例について、図面も用いて詳しく説明する。本発明のマナ板シートは、少なくとも硬質樹脂からなる基材層からなり、好ましくは基材層と被覆層とが積層されてなる。マナ板シートの積層構造例の概略断面構成を示した模式図を図1に示す。図1(1)のマナ板シート1は一定厚さの基材層だけからなり、図1(2)のマナ板シート2は、厚みが比較的大きい基材層10と厚みが比較的小さい被覆層20とが、接着剤層30を介して互いに積層されている。いずれも、マナ板シートの上面21にはエンボス加工が施されて凹凸面となっており、一方、マナ板シートの底面11は平滑面となっている。マナ板シート1、2は、いずれもマナ板が底面11に接し、食材が上面21に接するようにして用いる。
【0012】
基材層は、調理の際に包丁の刃でマナ板シートが切断されにくく、食材がマナ板にできるだけ触れないようにするための層であり、包丁に加えられる力によって切断されにくい剛性を有する(以下、防刃性という)。そのためには、基材層は、包丁の刃によってある程度の傷を受けるが、基材層を貫通する切断は生じにくい程度の剛性があればよい。
【0013】
基材層は、防刃性を確保するため比較的硬度が大きい硬質樹脂を用いて形成される。硬質樹脂としては、防刃性を確保できる硬度がある限り特に制限されず、例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリスチレン等が例示され、これらからなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂を選択して用いることが好ましい。また、これらから相溶性のある複数の樹脂を選択し混合して用いてもよい。防刃性の観点から好ましいのは、ポリプロピレンまたはポリエステルであり、ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレートが好ましい。製造の容易さと防刃性のバランスの観点から、もっとも好ましいのはポリプロピレンである。マナ板シートを基材層だけから構成する場合は、基材層の上面に後述のエンボス加工を施すようにするのが好ましい。これにより、食材の防滑性が得られ、さらに後述の包丁の滑り性が向上する。
【0014】
基材層の他の面(下面)はマナ板に接する。基材層のマナ板に接する面に滑り止めとなる凹凸を設けてもよいが、意外にも平滑面とするのが好ましい。これはマナ板の表面には、木製や合成樹脂製を問わず、もともと食材の滑りが防止できる細かい凹凸があるため、この凹凸と基材層の平滑面とが接することにより、マナ板シートとマナ板との間の滑りが生じにくくなるためではないかと考えられる。なお、ここに言う平滑面とは、フィルム又はシートの通常の製造方法により得られる平面を言い、マット加工やエンボス加工等の格別の表面加工を行っていないものを意味する。さらに、基材層を平滑面とすることにより、基材層として用いるフィルムまたはシートの製造が簡単になる。
【0015】
基材層の厚みは、防刃性を確保するために一定の厚さが必要であるが、一方でマナ板シートの使用時の引き裂き性などの取り扱い易さを担保する必要もあり、基材層だけからマナ板シートを構成する場合には、基材層の厚みは40μm以上150μm以下である。40μm以上で包丁による切断が生じにくく、150μm以下で、柔軟で取り扱いが容易であり、使用時にマナ板シートが手指で切り裂きやすくなる。より好ましくは50μm以上120μm以下である。
【0016】
基材層は、硬質樹脂が少なくとも一方向に延伸されたものである。これにより、マナ板シートを手指の力により任意の大きさで、延伸方向に沿って引き裂きやすくなる。基材層は、マナ板シートの防刃性を確保するための剛性を有する層であるから、調理者が必要な大きさにシートを引き裂こうとする場合の抵抗になりやすい。そこで、少なくとも一方向に対して延伸処理を行い、後述の易引き裂き部と合わせて、延伸方向に容易にマナ板シートが引き裂けるようにしている。このようにすることで、防刃性に必要な剛性を確保しつつ手指で引き裂きやすいという、相反する二つの性質を両立させることが可能になった。延伸は引き裂き方向としたい少なくとも一方向に沿って行われていればよいが(一軸延伸)、基材層の製造の容易さの観点から、引き裂き方向としたい一方向と合わせて、それに略直角の方向にも延伸する二方向に対して行われていることが好ましい(二軸延伸)。
【0017】
延伸は、マナ板シートがあらかじめ決められた大きさの矩形シートである場合は、常法に従ってテンターを用いて、基材層となるフィルム又はシートを一方向に引き延ばせばよい。また、長尺物を長さ方向に延伸したあと一定長さごとに切断することで、一方向に延伸された矩形シートを得るようにしても良い。後述のようにマナ板シートが長尺物である場合は、やはりテンターを用いて長尺物の幅方向に逐次延伸すればよい。長尺物の幅方向に延伸することで、使用時に必要な長さでマナ板シートを引き裂けるようになる。さらに生産性を高める観点からは、長尺物の基材層となるフィルム又はシートを円形ダイから円筒状に連続的に押し出していったん冷却し、しかるのちインフレーションにより延伸することで二方向に同時に延伸する方法を用いるのが好ましい。
【0018】
基材層となるフィルムまたはシートの製造方法は、常法の各種押出製膜法に従って行えば良く、少なくとも一方向に延伸することに関しても、上記した以外は常法に従って行えばよい。このような基材層からなるマナ板シートは、任意の長さに手指で容易に引き裂けるから、調理に必要な長さのシートだけを使用でき、使用後は抵抗感なく使い捨てることができる。
【0019】
次に、マナ板シートは、図1(2)に記載のように、好ましくは基材層の一面に被覆層が接着される。被覆層は、マナ板シートとして使用する場合に上になって、食材がその上に直接置かれる層であり、基材層より軟質にすることで、基材層だけの場合より調理の際の食材の滑りが生じにくくなり、調理がより安全に行える。
【0020】
被覆層は、比較的硬度が小さい軟質樹脂からなる。軟質樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、低密度直鎖状ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、エチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合樹脂等の樹脂が例示され、これらからなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂を用いるのが好ましい。また、二種以上の樹脂を混合して用いてもよい。
【0021】
被覆層を設けることで食材の防滑性がさらに向上する。一方で被覆層に刃が食い込んでガイドされることで、調理の際に包丁がマナ板シート上で摩擦のために滑りにくくなり、包丁に加えた力が集中しやすくなって、基材層が切断されやすくなる。そのために、被覆層は、食材に接する表面がエンボス加工されていることが好ましい。被覆層表面にエンボス加工することで被覆層のガイド性を低下せしめ、刃と被覆層間の摩擦力を低下せしめて滑りやすくすることで(以下、包丁滑り性という)、包丁にかけられた力が分散されて基材層がさらに切断されにくくなる、すなわち防刃性が向上する。
【0022】
これを図2を用いて説明する。図2は、図1(2)のマナ板シート2を用いて包丁40を使用した状態を示した模式図である(食材は簡単のため省略してある)。食材の切断に伴い、包丁の刃が被覆層20の表面21に達して、さらに被覆層20内に食い込むが、被覆層がエンボス加工されているため、接触面積が小さくて被覆層によるガイド性は小さく、刃と被覆層との摩擦力も小さくなる。そのため、刃が基材層10の表面で滑りやすくなる。これにより、力が分散されて基材層がさらに切断されにくくなる。なお、被覆層の表面がエンボス加工される形状は、上記の機能を達成できるように適宜設計すればよい。好ましくは、表面粗さRa5μm以上40μm以下、Raを越える山と山の間の平均距離が50μm以上300μm以下である。エンボス加工は常法に従って行えばよい。
【0023】
被覆層の厚みは、1μm以上60μm以下とするのが好ましい。1μm以上で食材の防滑性が良好となり、60μm以下とすることで、包丁の滑り性が確保され易くなる。より好ましくは5μm以上50μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上40μm以下である。
【0024】
次に、好ましいマナ板シートは、基材層と被覆層とが接着層を介して互いに接着されて形成される。好ましいマナ板シートの製造では、まず基材層となるフィルムまたはシートを用意し、これに被覆層を積層するのが好ましい。被覆層は、被覆層となるフィルムまたはシートを別途用意して、接着剤を介してドライラミネートしてもよいし、基材層となるフィルムまたはシートの接着面にアンカーコート剤等を塗布して接着層とし、被覆層とする軟質樹脂を基材層上に押出ラミネートしても良く、特に制限されない。接着に用いる接着剤やアンカーコート剤等は、マナ板シートの用途にあわせて適宜選択すればよいが、例えば、台所用等の耐水性を必要とする用途では、アンカーコート剤として2液硬化型ポリウレタンタイプを用い、これを基材層表面に塗布して接着層とした上で、押出ラミネートにより被覆層を積層するのが好ましい。
【0025】
マナ板シートには、基材層の延伸方向に対して略直角方向の端辺に沿って、易引き裂き加工部が設けられている。これにより、基材層が一定の剛性を有するにも係わらず、マナ板シートを延伸方向に沿って手指で引き裂きやすくなり、調理者が必要とする大きさにマナ板シートを切り取ることが可能となる。この例を図3に示す。図3は、長尺物のマナ板シート1が紙芯2にロール状に巻かれ、その先端3が引き出された状態を示した斜視図である。基材層の延伸方向は、両矢印6で示された幅方向である。なお、図3では、マナ板シートの表面はエンボス加工されているが図示されていない。
【0026】
図3から、マナ板シートの延伸方向6に略直角方向の端辺4と5とに沿って、易引き裂き加工部7が設けられていることがわかる。ちなみに、マナ板シートは長尺物のロール状であっても良いし、一定の長さに切断された矩形で枚様のシートであっても良い。使い勝手よく使用できるようにするには、長尺物のロール状とするのが好ましい。いずれであっても易引き裂き加工部は、延伸方向に略直角の端辺に沿って設ける。なお、略直角としているのは、延伸方向と端辺とが幾何学的に厳密な直角でなくともよく、製造誤差を許容する意味である。
【0027】
易引き裂き加工部は、微細孔、微細スリット、微細傷痕、微細切り欠き等の少なくともいずれかが、多数、端辺に沿って帯状に設けられて形成されたものである。易引き裂き加工部が設けられた端辺が引き裂きの力を受けると、微細孔等に集中して引き裂き力がかかり、その微細孔等が引き裂きの端緒となって延伸方向に沿って基材層が引き裂かれる。被覆層が積層されている場合は、被覆層は基材層の引き裂かれに追随して同様に引き裂かれ、かくしてマナ板シートは容易に引き裂かれることになる。易引き裂き加工部は、被覆層が設けられている場合であっても、基材層だけに設けられても良いし被覆層を含めて設けても良い。引き裂き感を良好とするには、被覆層も含めて易引き裂き加工部を設けることが好ましい。
【0028】
易引き裂き加工部は、上記の端辺に沿って設けるだけでなく、例えば、基材層の全面に設けることもできる。この場合、微細孔等を通して食材がマナ板に直接触れる可能性があるため、被覆層を積層し、被覆層には易引き裂き加工部を設けないようにするのが好ましい。または、基材層の下に微細孔等を有さない他の層を設けるようにしても良い。易引き裂き加工部を設けるには、微細な針や刃を複数並べた加工具を用意し、基材層となるフィルムまたはマナ板シートの端辺に沿って微細孔等を設けていけばよい。または、ロールに同様の微細針や微細刃を植えて加工用ロールを用意し、基材層となるフィルムまたはマナ板シートを加工用ロールを通すことで、連続的に易引き裂き加工部を設けるようにしてもよい。易引き裂き加工部を端辺に沿って設ける場合は、易引き裂き加工部を設ける幅は端辺から少なくとも0.1mmとするのが好ましい。より好ましくは2mm以上である。
【0029】
被覆層が積層された好ましいマナ板シートは、厚みが40μm以上150μm以下である。40μm以上であることにより防刃性が得られやすくなり、150μm以下であることで、易引き裂き性が得られて取り扱い性が良好となる。より好ましくは50μm以上120μm以下であり、さらに好ましくは60μm以上100μm以下である。
【0030】
被覆層が積層されたマナ板シートにおける基材層と被覆層との厚みの比は、6:4〜99:1であることが好ましい。厚みの比が6:4を含めて基材層をより厚めに構成することで基材層の防刃性を確保できると共に、引き裂きにおいて被覆層の粘りによる変型が生じにくくなり良好な引き裂き感が得られやすくなる。厚みの比が99:1を含めて被覆層にある程度の厚みを確保することで食材の防滑性がより良好となる。より好ましくは7:3〜15:1であり、さらに好ましくは7:3〜9:1である。
【0031】
基材層だけからなるマナ板シートや、被覆層が積層されたマナ板シートには、上記の層以外の他の層を積層しても良い。例えば、包丁の当たりを柔らかくするクッション層を基材層の下に積層しても良いし、各種の広告や調理者が好みそうなキャラクターまたは模様等を印刷した層を基材層の上や基材層と被覆層との間に挟むようにしても良い。また、基材層や被覆層等に、白、薄い青、薄い黄等の清潔感を与える色の顔料を混合しても良い。清潔感を与える色を着けてマナ板シートを不透明とすることで、マナ板自体が使用感のある不衛生な印象のものであっても、調理の際に清潔感をもって作業することができる。
【0032】
上記の被覆層を設けたマナ板シートは、食材がマナ板シート上で滑りにくく、マナ板シートもマナ板上で滑りにくい。また、マナ板の上に敷いて食材を調理する際に、包丁の刃が被覆層に部分的に食い込むが、エンボス加工を行うことで包丁滑り性がより確実に確保され、力が集中しにくくなることで、基材層が切断されにくくなる。しかも、任意の長さに手指で容易に引き裂ける。そのため、調理に必要な長さのシートだけを使用でき、使用後は抵抗感なく使い捨てることができる。
【0033】
次に、上記のマナ板シートを、調理者が使用しやすい形態で収納したマナ板シートパックについて説明する。図4は、長尺物のマナ板シート1または2等を紙芯2に巻回したロール状で、収納箱51に格納したマナ板シートパック50の例であり、マナ板シート1または2の先端3が収納箱51から引き出された状態を示した斜視図である。なお、マナ板シートの表面はエンボス加工されているが、図示されていない。
【0034】
収納箱51は、上部が開放されてロールを格納できる直方体形状の収納部51と、前記開放された上部を閉じるための蓋部52、54とからなる。蓋部52のロール軸に平行方向の一辺53は、収納箱の上部に開閉可能に接続されている。蓋部の一辺53の反対側端辺である引裂辺55は、直線状であり、特にシート引き裂き用の金属製ノコ刃等を設けていない。マナ板シート1または2を引き裂くには、先端3を必要長さだけ収納箱51から引き出し、蓋部52と54とを閉じて、マナ板シート1または2を蓋部52の方向(上側)に引っ張り、引裂辺55でマナ板シート1または2を引き裂けばよい。収納部51と引裂辺55は、紙製またはプラスチック製とするのが好ましい。
【0035】
マナ板シートのように比較的厚手で易開封加工がなされているシートの場合は、金属製ノコ刃等を用いずに直線状の引裂辺55を用いることで、理由は不明であるが、意外にも良好な引き裂き感が得られることがわかった。ここで、直線状とは、通常のフィルムパック等で使用されるノコ刃形状ではないことを意味し、引裂辺は緩やかな曲線をなしていてもよい。ただし、できるだけ直線に近い方が製造が容易で好ましい。なお、マナ板シートパックの引裂辺は、蓋部ではなく収納箱51の取り出し口にそった端辺56に設けるようにしてもよい。また、補強のために、引裂辺に沿って直線状のプラスチック板等を設けてもよい。また、引裂辺は無刃とするのが好ましいが、直線刃を設けるようにしてもよい。
【0036】
このように、上記のマナ板シートを格納したマナ板シートパックは、剛性のあるマナ板シートを、任意の長さで容易に切断できるように収納しているので、調理者が必要に応じて長さを決めて自由に使用することができ、使い勝手がよいうえに、必要長さだけ使用すればよいから、使用後には使い捨てすることに抵抗感がない。
【0037】
以下に、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は様々な変型が可能であり、以下に示す実施例の具体的態様に限定されるものではない。なお、各種物性を測定した測定方法は以下の通りである。
(1)防刃性
【0038】
マナ板シート上で、鶏の皮付きモモ肉を包丁で8等分に切り、マナ板シートの切断の有無を目視評価した。評価者は20歳台〜40歳台の女性10人とし、マナ板シートに下のマナ板まで貫通する切断が生じた人の数により、以下の基準に従ってマナ板シートの防刃性を評価した。
0〜1人・・・◎
2〜3人・・・○
4〜5人・・・△
6人以上・・・×
(2)引き裂き性
【0039】
マナ板シートの易引き裂き加工部を設けた端辺の任意の箇所を、手指の普通に用いる力で引き裂く動作を評価者に行ってもらい、マナ板シートの引き裂き性を官能評価した。評価者は20歳台〜40歳台の女性10人とし、引き裂きに伴うマナ板シートの変形が小さく、さらに困難性なく引き裂けた人の数により、以下の基準に従ってマナ板シートの引き裂き性を評価した。
10人〜8人・・・○
0人〜2人・・・・×
(3)マナ板シート防滑性
【0040】
マナ板シートをマナ板上に単に敷いた。このマナ板シートの上に鶏の皮付きモモ肉を鶏の皮がマナ板シートに接するように置き、包丁で切る要領で食材に力を加え、以下の基準で点数化してマナ板シートのマナ板に対する防滑性を官能評価した。
マナ板シートがマナ板上で全く滑らない・・・・・・・・・5点
マナ板シートがマナ板上で少し滑る・・・・・・・・・・・4点
マナ板シートがマナ板上で滑るが調理には問題ない程度・・3点
マナ板シートがマナ板上で結構滑り調理に支障を感じる・・2点
マナ板シートがマナ板上で滑って危険である・・・・・・・1点
【0041】
評価者は20歳台〜40歳台の女性10人とし、全員の単純平均点数を求めて、以下の基準でシートの防滑性を評価した。
5点〜4点・・・・・・◎
4点未満〜3点・・・・○
3点未満〜2点・・・・△
2点未満〜0点・・・・×
(4)食材防滑性
【0042】
マナ板シートをマナ板上に敷いて接着テープで固定した。このマナ板シートの上に鶏の皮付きモモ肉を鶏の皮がマナ板シートに接するように置き、包丁で切る要領で食材に力を加え、以下の基準で点数化して食材の防滑性を官能評価した。
食材が全く滑らない・・・・・・・・・5点
食材が少し滑る・・・・・・・・・・・4点
食材が滑るが調理には問題ない程度・・3点
食材が結構滑り調理に支障を感じる・・2点
食材が滑って危険である・・・・・・・1点
【0043】
評価者は20歳台〜40歳台の女性10人とし、全員の単純平均点数を求めて、以下の基準で食材の防滑性を評価した。
5点〜4点・・・・・・◎
4点未満〜3点・・・・○
3点未満〜2点・・・・△
2点未満〜0点・・・・×
(5)包丁滑り性
【0044】
マナ板の上にマナ板シートを敷いて接着テープで固定し、その上に人参の薄切り(厚さは5mm)を置き、包丁で拍子切りした。包丁の刃がマナ板シートに食い込む感覚と滑る感覚とを、以下の基準で官能評価した。
包丁の刃が硬い表面にあたってまったく食い込まない感じ・・・・・・・・4点
包丁の刃が若干食い込むものの、刃がほぼシート面を滑っている感じ・・・3点
包丁の刃がシート面に食い込むが、刃が滑るために加えた力が分散されている感じ・・・2点
包丁の刃がシート面に食い込み、加えた力がすべて吸収されている感じ・・・1点
【0045】
評価者は20歳台〜40歳台の女性10人とし、全員の単純平均点数を求めて、以下の基準で包丁滑り性を評価した。
4点・・・・・・・・◎
4点未満〜3点・・・○
3点未満〜2点・・・△
2点未満〜1点・・・×
【実施例1】
【0046】
基材層として、長尺物のポリエチレンテレフタレート樹脂製2軸延伸フィルム(フタムラ化学(株)社製、商品名:太閤FE2001、厚み25μm)を用意し、これの片面にアンカーコート剤(大日本インキ化学工業(株)社製、商品名:LX−63F/KP−90)を、約1μm厚みで塗布して接着層とし、続いて接着層の上に、溶融した低密度ポリエチレン(旭化成ケミカルズ(株)社製、商品名:1850A)を15μm厚みとなるように押し出して、押出ラミネーションにより被覆層を形成し、積層シートを得た。
【0047】
続いて、長尺方向に平行の両側端辺に沿って、直径500μmの微細孔形状の傷痕群を、片側が3列線状(3列の幅が0.25cm)になるように加工して易引き裂き加工部を設けた。続いて、易引き裂き加工部の外側のシート両端をスリットしてシート幅を25cmとし、さらに、表面が凹凸加工されたエンボス加工用ロールを被覆層表面に圧着してエンボス加工を行い、マナ板シートの試験品を得た。試験品の全体厚みは40μmであり、基材層の全体厚みに対する割合は63%であった。
【0048】
この試験品を用い、上記の方法に従って、防刃性、引き裂き性、マナ板シート防滑性、食材防滑性、包丁滑り性を評価した。結果を表1に示した。
【実施例2】
【0049】
長尺物のポリプロピレン製2軸延伸シート(フタムラ化学(株)社製、商品名:太閤FOS、厚み40μm)を用意し、長尺方向に平行の両側端辺に沿って、直径500μmの微細孔形状の傷痕群を、片側が3列線状(3列の幅が0.25cm)になるように加工して易引き裂き加工部を設けた。続いて、易引き裂き加工部の外側のシート両端をスリットしてシート幅を25cmとし、さらに、表面が凹凸加工されたエンボス加工用ロールを片面に圧着してエンボス加工を行い、表1に記載の試験品を得た。この試験品を用い、上記の方法に従って、防刃性、引き裂き性、マナ板シート防滑性、食材防滑性、包丁滑り性を評価した。結果を表2に示した。
【実施例3】
【0050】
ポリプロピレン製2軸延伸シートの厚みを40μmから150μmに変更した以外は、実施例2と同様にして、表1に記載の試験品を得た。これを用い、実施例2と同様にして評価した。結果を表2に示した。
【実施例4】
【0051】
基材層のフィルムを、厚み60μmのポリプロピレン製2軸延伸シート(フタムラ化学(株)社製、商品名:太閤FOS)に変更し、被覆層の厚みを20μmに増加した以外は、実施例1と同様にして表1に記載の試験品を得た。これを用いて、実施例1と同様にして評価し、結果を表2に示した。
【実施例5】
【0052】
基材層のフィルムを、厚み100μmのポリプロピレン製2軸延伸シート(フタムラ化学(株)社製、商品名:サンオリエントPB−262)に変更し、被覆層を基材層の両面に設け、それぞれの厚みを20μmと30μmにした以外は、実施例1と同様にして表1に記載の試験品を得た。これを用いて、実施例1と同様にして評価し、結果を表2に示した。
[比較例1]
【0053】
ポリプロピレン製2軸延伸シートを、ポリエチレンテレフタレート樹脂製2軸延伸フィルム(ユニチカ(株)社製、商品名:エンブレットSA、厚み188μm)に変更し、エンボス加工を行わなかった以外は、実施例2と同様にして、表1に記載の試験品を得た。これを実施例2と同様にして評価し、結果を表2に示した。試験品が厚くて剛性が高く、手指ではまったく引き裂くことができなかった。また、包丁の刃がシート表面に食い込んだ場合の滑り性が良くなかったうえ、食材の防滑性も低かった。
[比較例2]
【0054】
ポリプロピレン製2軸延伸シートを、低密度直鎖状ポリエチレンシート(東洋紡績(株)社製、商品名:L6102、厚み60μm)に変更した以外は、実施例2と同様にして、表1に記載の試験品を得た。これを実施例2と同様にして評価し、結果を表2に示した。シートが粘って変型してしまい、手指できれいに引き裂くことができなかった。また、まったく防刃性がなかった。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(1)マナ板シートの断面構成の例を示した模式図であり、(2)マナ板シートの断面構成の他の例を示した模式図である。
【図2】マナ板シート上で包丁を用いた場合の状態を示した模式図である。
【図3】長尺物のマナ板シートがロール状に巻かれた例を示した斜視図である。
【図4】マナ板シートパックの例を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
1 マナ板シート
2 紙芯
3 マナ板シートの先端
4、5 端辺
6 延伸方向
7 易開封加工部
10 基材層
11 下面(平滑面)
20 被覆層
21 表面(エンボス加工面)
30 接着層
40 包丁
50 マナ板シートパック
51 収納部
52 蓋部
53 接続辺
54 蓋部
55 引裂辺
56 取り出し口下辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質樹脂からなるマナ板シートであって、少なくとも一方向に延伸されており、かつ厚みが40μm以上150μm以下であり、さらに、前記一方向に対して略直角方向の端辺に沿って易引き裂き加工部が設けられていることを特徴とするマナ板シート。
【請求項2】
片面にエンボス加工されていることを特徴とする請求項1に記載のマナ板シート。
【請求項3】
少なくとも基材層と被覆層とが積層されたマナ板シートであって、前記被覆層は軟質樹脂からなり、前記基材層は硬質樹脂からなって少なくとも一方向に延伸された層であり、前記被覆層と前記基材層との厚みの合計が40μm以上150μm以下であり、さらに、前記一方向に対して略直角方向の端辺に沿って易引き裂き加工部が設けられていることを特徴とするマナ板シート。
【請求項4】
前記被覆層の表面にエンボス加工されていることを特徴とする請求項3に記載のマナ板シート。
【請求項5】
前記基材層の厚みと前記被覆層の厚みの比が、6:4〜99:1であることを特徴とする請求項3または4のいずれかに記載のマナ板シート。
【請求項6】
前記エンボス加工された面の反対側の面が、平滑面であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマナ板シート。
【請求項7】
前記硬質樹脂は、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリスチレンからなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のマナ板シート。
【請求項8】
前記軟質樹脂は、低密度ポリエチレン、低密度直鎖状ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、エチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂であることを特徴とする請求項3から7のいずれかに記載のマナ板シート。
【請求項9】
前記の易引き裂き加工部は、微細孔、微細スリット、微細傷痕、微細切り欠きの少なくともいずれかが多数設けられたものであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のマナ板シート。
【請求項10】
前記端辺の方向に長い長尺物であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のマナ板シート。
【請求項11】
収納部と、前記収納部上部に開閉可能に一辺が接続された蓋部とを備え、前記蓋部における前記一辺の反対側端辺が略直線形状である収納箱の前記収納部に、請求項10に記載のマナ板シートがロール状で、かつ端部が引き出し可能に格納されたことを特徴とするマナ板シートパック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−330465(P2007−330465A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165119(P2006−165119)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(390017949)旭化成ホームプロダクツ株式会社 (56)
【Fターム(参考)】