マリンホース用フロータ
【課題】断面の真円度にばらつきがあるマリンホースや異なる外径サイズのマリンホースであっても、そのマリンホースに適合する環状形状を容易に形成できるようにしたマリンホース用フロータを提供する。
【解決手段】マリンホース10の外径に応じた数のフロートブロック2どうしを連結ピン7aにより回転自在に連結した帯状のフロータ1を、その内周側に設けた嵌合溝をマリンホース10の外周面上に突設したロケーションカラー11に嵌合させつつ、マリンホース10の外周面に沿わせ、終端部どうしを終端連結部材7bにより連結して円環状に形成してマリンホース10に外嵌する。
【解決手段】マリンホース10の外径に応じた数のフロートブロック2どうしを連結ピン7aにより回転自在に連結した帯状のフロータ1を、その内周側に設けた嵌合溝をマリンホース10の外周面上に突設したロケーションカラー11に嵌合させつつ、マリンホース10の外周面に沿わせ、終端部どうしを終端連結部材7bにより連結して円環状に形成してマリンホース10に外嵌する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マリンホース用フロータに関し、さらに詳しくは、断面の真円度にばらつきがあるマリンホースや異なる外径サイズのマリンホースであっても、そのマリンホースに適合する環状形状を容易に形成できるようにしたマリンホース用フロータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
海上のタンカーと陸上施設との間を連結して原油等を海上輸送するマリンホースには、適切なホースラインを形成する等の目的のため、所定位置に所定浮力を有する環状のフロータを外嵌することがある。従来、このフロータは半円環状の浮体の一端部どうしをヒンジ機構等で連結し、他端部どうしを終端連結部材により連結して円環状にする構成になっていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、マリンホースは断面を真円に製造しようとしても、真円に近づけて精度よく製造することが困難であり、同一の仕様のマリンホースであってもマリンホースごとに真円度のばらつきがあり、また、一つのマリンホースであっても位置によって真円度のばらつきがある。そのため、従来のように円環状にした際の形状が予め決まっている2分割タイプのフロータでは、マリンホースの真円度が一定水準以下の場合には外嵌することができないことがあり、取付けるために終端連結部材を改造するなど、煩雑な作業が必要になるという問題があった。また、このようなフロータでは、マリンホースの外径に適合させるため、マリンホースの外径サイズごとに専用のフロータを用意する必要があり、製造および維持管理に莫大なコストがかかるという問題があった。
【特許文献1】特開昭53−89023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、断面の真円度にばらつきがあるマリンホースや異なる外径サイズのマリンホースであっても、そのマリンホースに適合する環状形状を容易に形成できるようにしたマリンホース用フロータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明のマリンホース用フロータは、マリンホースに外嵌する環状のマリンホース用フロータであって、互いを直接または連結部材を介して連結および分離可能なフロートブロックを複数連結して環状を形成し、該環状の隣り合うフロートブロックどうしの相対位置を変更可能に構成することを特徴とするものである。
【0006】
ここで、前記フロートブロックをすべて同じ形状にすることもでき、前記フロートブロックの内、浮力の異なる少なくとも2種類のフロートブロックが混在するように構成することもできる。また、前記フロートブロックの少なくとも1個に、前記マリンホースの外周面に突設されたロケーションカラーに嵌合する嵌合溝を設けることもでき、前記フロートブロックの少なくとも1個に、灯火装置、センサ等の付加装置を設けることもできる。また、前記フロートブロックを、その浮力に応じて決められた色、模様または印を付すことにより浮力を外観で識別可能に構成することもでき、前記環状のマリンホース用フロータのマリンホース軸方向断面における外縁を円弧状に形成することもできる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のマリンホース用フロータによれば、互いを直接または連結部材を介して連結および分離可能なフロートブロックを複数連結して環状を形成し、この環状の隣り合うフロートブロックどうしの相対位置を変更可能に構成するので、形成する環状形状を容易に変形することができるとともに、連結するフロートブロックの数や大きさ等を変えるだけで、形成する環状のサイズを変更することが可能になり、マリンホースの真円度の程度や外径サイズに影響を受けることなく、多種のマリンホースに適合する環状形状を容易に形成することができる。これによりマリンホースの外径サイズごとに専用のフロータを用意する必要もなくなり、製造および維持管理のためのコストを大幅に削減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のマリンホース用フロータを図に示した実施形態に基づいて説明する。
図1〜3に例示するように、本発明のマリンホース用フロータ1(以下、フロータ1という)は、互いに連結および分離可能なフロートブロック2を基本モジュールとし、これらを連結して構成される。この実施形態では同じ形状、かつ同じ浮力の9個のフロートブロック2を連結して環状に形成することにより、外嵌するマリンホース10の外周形状に適合するフロータ1が構成されている。
【0009】
このフロートブロック2は、図4(a)に例示するように連結方向の両端部にそれぞれ幅方向に間隔をあけて2つの突部を有し、それぞれの突部には貫通孔6が設けられている。これら突部は両端部どうしで互いにオフセットして配置されている。このフロートブロック2は図4(b)に示すように、側面視で円弧状に形成され、円弧状内周面には嵌合溝5が形成されている。
【0010】
フロートブロック2は図4(c)に示すように、例えばポリエチレン樹脂等からなる中空状の外殻3の内部に硬質ウレタンフォーム等の充填材4を充填した構造になっている。外殻3および充填材4の材質は上記に例示したものに限定されることはなく、種々の材質を採用することができる。また、フロートブロック2の構造も、例えば、複数種類の充填材4を充填した構造や、外殻3を中実体にして充填材4のない構造など他の構造にすることもできる。また、フロートブロック2の横断面における内周側の角部はテーパ状に形成され、マリンホース10の曲げを阻害しないようになっている。
【0011】
これらのフロートブロック2は、図1に例示するように隣り合うフロートブロック2を、互いの突部を相手の突部の間の凹部に組み合わせ、それぞれの突部に設けられた貫通孔6に連結ピン7aを連通することにより回転自在に連結される。フロートブロック2を連結した帯状のフロータ1は、図2、3に例示するように、その内周側の嵌合溝5をマリンホース10の外周面上に円周方向に連続して突設されたリング状のロケーションカラー11に嵌合させつつ、マリンホース10の外周面に沿わせて円環状に形成して、終端部どうしが終端連結部材7bにより連結される。
【0012】
この終端連結部材7bは、終端部となるそれぞれのフロートブロック2の貫通孔6に一端部を挿通し、他端部にネジ溝を有する金具と、このネジ溝に螺合する連結金具で構成されている。尚、終端連結部材7bは終端部どうしを確実に連結できるものであればよく、その構造は特に限定されるものではない。
【0013】
このフロータ1は、それぞれのフロートブロック2が連結ピン7aを中心に回転するので、環状で隣り合うフロートブロック2、2どうしの相対位置が変更可能な構成になり、形成する環状形状(内径形状)を容易に変形することできる。そのため、同一の仕様のマリンホースの間で真円度のばらつきがあり、若しくは、一つのマリンホースであっても位置によって真円度にばらつきがあり、真円度の低いマリンホース10であっても、そのマリンホース10の外周断面形状に適合する環状形状を容易に形成することができ、煩雑な作業をすることなく効率的にフロータ1をマリンホース10に外嵌することができる。
【0014】
また、連結ピン7aの着脱によって連結するフロートブロック2の数の増減やフロートブロック2の大きさを変えるだけで、形成するフロータ1の環状のサイズを変更することが可能になるため、マリンホース10の外径サイズごとに専用のフロータ1を用意する必要もなくなり、製造および維持管理のためのコストを大幅に削減することができる。
【0015】
このように、マリンホース10の真円度の程度や外径サイズに影響を受けることなく、多種のマリンホース10に適合する汎用性の高いフロータ1となる。さらに、連結しているフロートブロック2をそれぞれ分離した状態にすれば、占有スペースが非常に小さくできるので、運搬や保管する際の効率も向上させることができる。
【0016】
また、このフロータ1は、本体自体がすべて同じ形状かつ同じ浮力のフロートブロック2により構成されているので、1種類のフロートブロック2を用意すればよく、コスト負担を著しく抑えることができる。より一層、多様なサイズのマリンホース10に対応し、より精度よくマリンホース10に対する要求浮力に対応するには、代表的な仕様(形状、大きさ、浮力等)の基本モジュールとなるフロートブロック2を数種類用意しておき、これらフロートブロック2を組み合わせることにより多様なフロータ1を形成できるようにしておくことが好ましい。
【0017】
フロータ1のマリンホース10への取付け作業は、予め陸上や船上で行なうが、既に海上、海中に配置されているマリンホース10の浮力が不足した場合などには、浮力の異なるフロートブロック2に組み換えることで、現地作業場での浮力調整が容易にできる。
【0018】
連結するフロートブロック2の数は上記の実施形態に示した9個に限らず、例えば3個以上であり、マリンホース10の外周面に設けられたロケーションカラー11に沿うように環状のフロータ1を形成できる数であればよく、ロケーションカラー11の外径サイズ等により適宜決定する。例えば、ロケーションカラー11の外径が500mm〜800mm程度の場合、5〜8個程度のフロートブロック2を環状に連結してフロータ1を構成し、個々のフロートブロック2の浮力は0〜30kg程度に設定する。
【0019】
フロートブロック2の浮力を0kgにするのは、例えば、サブマリンタイプのマリンホース10にデバイス(付加機能部)を追加したいが、既にホースライン形状が決定しており、デバイスの追加によってホースラインを崩さないようにする場合など、マリンホース10に余計な浮力を与えたくない場合である。このような場合は、追加するデバイスの重量を踏まえて浮力が0kgになるようにする。
【0020】
また、フロートブロック2の形状は、上記の実施形態に例示した形状に限らず、種々の形状を採用することができる。また、環状に連結した際に、隣り合うフロートブロックどうしの相対位置が変更可能であれば、異なる形状のフロートブロック2を混在させてフロータ1を構成することもできる。
【0021】
すべてのフロートブロック2に嵌合溝5を設けると、安定よくフロータ1をマリンホース10に固定でき好ましいが、十分な固定強度が確保できる場合は、環状を形成するフロートブロック2の1個置きまたは2個置き等、適度な間隔をあけて嵌合溝5を設けることもでき、最小限の1個のフロートブロック2にのみ嵌合溝5を設けるようにすることもできる。
【0022】
図5に例示するように、環状のフロータ1のマリンホース軸方向断面における外縁は、なだらかな円弧状にすることが好ましい。これにより波、潮流等により受ける水の抵抗が小さくなるため、マリンホース10が流されにくくなりホースラインの乱れを抑えることができる。
【0023】
また、図6に例示するフローティングホース、図7に例示するサブマリンホースのように、フロートブロック2に、灯火装置12a、位置や圧力等を検知する各種センサ(送信装置を含む)12b、併走ラインを保持するラインサポート12c等の浮力機能とは異なる別の機能を有する付加機能部を設けることもできる。これら付加機能部は、1個のフロートブロック2に1つ設けるようにしてもよく、複数設けるようにしてもよい。これら付加機能部を備えたフロートブロック2を予め用意しておくことにより、マリンホース10への付加機能の実装を容易かつ低コストに行なうことができる。
【0024】
図8に別の実施形態を示す。このフロータ1は、図1〜3に示したフロータ1と基本構造は同じであるので、相違点のみを説明する。
【0025】
このフロータ1では、終端部となるフロートブロック2どうしを、互いの突部を相手の突部の間の凹部に組み合わせ、それぞれの突部に設けられた貫通孔6に連結ピン7aを連通することにより連結している。このように、特別な終端連結部材7bを用いずに、連結ピン7aを終端連結部材7bとして用いることもできる。
【0026】
また、このフロータ1は、同じ形状で浮力の異なる2種類のフロートブロック2a、2bを混在して連結することにより構成されている。このように、浮力の異なる2種類以上のフロートブロック2a、2bを用意しておけば、これらを組み合わせることにより、フロータ1の浮力の調節を簡単に行なうことができる。
【0027】
これにより、所定のホースラインを形成するために、数値解析等により算出した必要な浮力を有するフロータ1を迅速に形成することが可能になり、図11に例示するように、海上のブイ13から海底に延びるマリンホース(サブマリンホース)10の所定の位置に所定の浮力のフロータ1を外嵌することで所望のホースラインを形成することができる。
【0028】
これらフロートブロック2a、2bは、その浮力に応じて色、模様、刻印等の印を予め決めておき、浮力ごとに色、模様、印あるいはこれらの組み合わせからなる識別マークMを付すようにするとよい。図8の実施形態では、浮力の異なるフロートブロック2a、2bに、それぞれ四角形、三角形の刻印を識別マークMとして付設している。このように、フロートブロック2a、2bのそれぞれの浮力を外観で識別可能に構成すれば、浮力の異なるフロートブロック2a、2bを混在させてフロータ1を構成した場合であっても、一見してフロータ1の総浮力を把握することができる。
【0029】
図9にさらに別の実施形態を示す。このフロータ1は図1〜3に示したフロータ1と技術的思想は同様であり相違点のみを説明する。このフロータ1を構成するそれぞれのフロートブロック2は、帯状の環状連結部材8が貫通することにより連結されている。終端部となる環状連結部材8の両端部には、終端連結部材7が設けられ、この終端連結部材7bを連結することにより環状のフロータ1が形成されている。これらのフロートブロック2は、貫通している環状連結部材8を引き抜けば、それぞれ分離することができる。
【0030】
このように、環状に連結する際に、隣り合うフロートブロック2どうしを直接連結するのではなく、環状連結部材等を介在させて連結する構成にすることもできる。このフロータ1は、フロートブロック2、2の間で環状連結部材8が自由に曲げ変形できるので、環状で隣り合うフロートブロック2、2どうしの相対位置が変更可能な構成になり、マリンホース10の外周断面形状に適合する環状形状を容易に形成することができる。
【0031】
このフロータ1も、図1〜3に例示したフロータ1と同様の効果を有し、マリンホース10の真円度の程度や外径サイズに影響を受けずに取付けが可能で汎用性が高く、また、運搬や保管する際の効率にも優れている。さらに、連結ピン7bを用いたフロータ1よりも構造が簡素になり、また、回転摺動部がないので耐久性を向上させ易いという利点がある。
【0032】
環状連結部材8としては、例えばステンレス鋼などの金属製の帯状体やポリアミド系樹脂などの樹脂製の帯状体等を用いることができる。また、上記の実施形態に例示したような、マリンホース10の外周長以上の長さを有する1本の環状連結部材8ではなく、隣り合う2個もしくは数個のフロートブロック2どうしを連結する環状連結部材8にすることもできる。
【0033】
図10に例示するように、隣り合うフロートブロック2、2の間にスペーサ9を介在させて構成することもできる。このスペーサ9は、環状連結部材8を貫通させることによりフロートブロック2、2の間に設置されている。このスペーサ9は、隣り合うフロートブロック2どうしを所定間隔あけて配置できるものであればよく、特に仕様が限定されるものではない。スペーサ9と環状連結部材8との取付け構造も他の様々な構造を採用することができる。
【0034】
この構成によれば、スペーサ9の有無やスペーサ9の大きさを変えることによりフロートブロック2、2間の間隔を簡単に調整することができ、浮力の調整も容易に行なうことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のフロータを展開した状態を例示する側面図である。
【図2】図1のフロータを環状に形成した状態を例示する側面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図1のフロータを構成するフロートブロックを例示し、図4(a)は平面図、図4(b)は側面図、図4(c)は図4(a)のB−B断面図である。
【図5】図3の変形例を示すフロータのマリンホース軸方向断面図である。
【図6】図2の変形例を示すフロータの側面図である。
【図7】図2の別の変形例を示すフロータの側面図である。
【図8】フロータの別の実施形態を例示する側面図である。
【図9】フロータのさらに別の実施形態を例示する側面図である。
【図10】図9のフロータの変形例を例示する側面図である。
【図11】フロータの使用例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 フロータ
2、2a、2b フロートブロック
3 外殻
4 充填材
5 嵌合溝
6 貫通孔
7a 連結ピン 7b 終端連結部材
8 環状連結部材
9 スペーサ
10 マリンホース
11 ロケーションカラー
12a 灯火装置 12b センサ 12c ラインサポート
13 ブイ
M 識別マーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、マリンホース用フロータに関し、さらに詳しくは、断面の真円度にばらつきがあるマリンホースや異なる外径サイズのマリンホースであっても、そのマリンホースに適合する環状形状を容易に形成できるようにしたマリンホース用フロータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
海上のタンカーと陸上施設との間を連結して原油等を海上輸送するマリンホースには、適切なホースラインを形成する等の目的のため、所定位置に所定浮力を有する環状のフロータを外嵌することがある。従来、このフロータは半円環状の浮体の一端部どうしをヒンジ機構等で連結し、他端部どうしを終端連結部材により連結して円環状にする構成になっていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、マリンホースは断面を真円に製造しようとしても、真円に近づけて精度よく製造することが困難であり、同一の仕様のマリンホースであってもマリンホースごとに真円度のばらつきがあり、また、一つのマリンホースであっても位置によって真円度のばらつきがある。そのため、従来のように円環状にした際の形状が予め決まっている2分割タイプのフロータでは、マリンホースの真円度が一定水準以下の場合には外嵌することができないことがあり、取付けるために終端連結部材を改造するなど、煩雑な作業が必要になるという問題があった。また、このようなフロータでは、マリンホースの外径に適合させるため、マリンホースの外径サイズごとに専用のフロータを用意する必要があり、製造および維持管理に莫大なコストがかかるという問題があった。
【特許文献1】特開昭53−89023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、断面の真円度にばらつきがあるマリンホースや異なる外径サイズのマリンホースであっても、そのマリンホースに適合する環状形状を容易に形成できるようにしたマリンホース用フロータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明のマリンホース用フロータは、マリンホースに外嵌する環状のマリンホース用フロータであって、互いを直接または連結部材を介して連結および分離可能なフロートブロックを複数連結して環状を形成し、該環状の隣り合うフロートブロックどうしの相対位置を変更可能に構成することを特徴とするものである。
【0006】
ここで、前記フロートブロックをすべて同じ形状にすることもでき、前記フロートブロックの内、浮力の異なる少なくとも2種類のフロートブロックが混在するように構成することもできる。また、前記フロートブロックの少なくとも1個に、前記マリンホースの外周面に突設されたロケーションカラーに嵌合する嵌合溝を設けることもでき、前記フロートブロックの少なくとも1個に、灯火装置、センサ等の付加装置を設けることもできる。また、前記フロートブロックを、その浮力に応じて決められた色、模様または印を付すことにより浮力を外観で識別可能に構成することもでき、前記環状のマリンホース用フロータのマリンホース軸方向断面における外縁を円弧状に形成することもできる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のマリンホース用フロータによれば、互いを直接または連結部材を介して連結および分離可能なフロートブロックを複数連結して環状を形成し、この環状の隣り合うフロートブロックどうしの相対位置を変更可能に構成するので、形成する環状形状を容易に変形することができるとともに、連結するフロートブロックの数や大きさ等を変えるだけで、形成する環状のサイズを変更することが可能になり、マリンホースの真円度の程度や外径サイズに影響を受けることなく、多種のマリンホースに適合する環状形状を容易に形成することができる。これによりマリンホースの外径サイズごとに専用のフロータを用意する必要もなくなり、製造および維持管理のためのコストを大幅に削減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のマリンホース用フロータを図に示した実施形態に基づいて説明する。
図1〜3に例示するように、本発明のマリンホース用フロータ1(以下、フロータ1という)は、互いに連結および分離可能なフロートブロック2を基本モジュールとし、これらを連結して構成される。この実施形態では同じ形状、かつ同じ浮力の9個のフロートブロック2を連結して環状に形成することにより、外嵌するマリンホース10の外周形状に適合するフロータ1が構成されている。
【0009】
このフロートブロック2は、図4(a)に例示するように連結方向の両端部にそれぞれ幅方向に間隔をあけて2つの突部を有し、それぞれの突部には貫通孔6が設けられている。これら突部は両端部どうしで互いにオフセットして配置されている。このフロートブロック2は図4(b)に示すように、側面視で円弧状に形成され、円弧状内周面には嵌合溝5が形成されている。
【0010】
フロートブロック2は図4(c)に示すように、例えばポリエチレン樹脂等からなる中空状の外殻3の内部に硬質ウレタンフォーム等の充填材4を充填した構造になっている。外殻3および充填材4の材質は上記に例示したものに限定されることはなく、種々の材質を採用することができる。また、フロートブロック2の構造も、例えば、複数種類の充填材4を充填した構造や、外殻3を中実体にして充填材4のない構造など他の構造にすることもできる。また、フロートブロック2の横断面における内周側の角部はテーパ状に形成され、マリンホース10の曲げを阻害しないようになっている。
【0011】
これらのフロートブロック2は、図1に例示するように隣り合うフロートブロック2を、互いの突部を相手の突部の間の凹部に組み合わせ、それぞれの突部に設けられた貫通孔6に連結ピン7aを連通することにより回転自在に連結される。フロートブロック2を連結した帯状のフロータ1は、図2、3に例示するように、その内周側の嵌合溝5をマリンホース10の外周面上に円周方向に連続して突設されたリング状のロケーションカラー11に嵌合させつつ、マリンホース10の外周面に沿わせて円環状に形成して、終端部どうしが終端連結部材7bにより連結される。
【0012】
この終端連結部材7bは、終端部となるそれぞれのフロートブロック2の貫通孔6に一端部を挿通し、他端部にネジ溝を有する金具と、このネジ溝に螺合する連結金具で構成されている。尚、終端連結部材7bは終端部どうしを確実に連結できるものであればよく、その構造は特に限定されるものではない。
【0013】
このフロータ1は、それぞれのフロートブロック2が連結ピン7aを中心に回転するので、環状で隣り合うフロートブロック2、2どうしの相対位置が変更可能な構成になり、形成する環状形状(内径形状)を容易に変形することできる。そのため、同一の仕様のマリンホースの間で真円度のばらつきがあり、若しくは、一つのマリンホースであっても位置によって真円度にばらつきがあり、真円度の低いマリンホース10であっても、そのマリンホース10の外周断面形状に適合する環状形状を容易に形成することができ、煩雑な作業をすることなく効率的にフロータ1をマリンホース10に外嵌することができる。
【0014】
また、連結ピン7aの着脱によって連結するフロートブロック2の数の増減やフロートブロック2の大きさを変えるだけで、形成するフロータ1の環状のサイズを変更することが可能になるため、マリンホース10の外径サイズごとに専用のフロータ1を用意する必要もなくなり、製造および維持管理のためのコストを大幅に削減することができる。
【0015】
このように、マリンホース10の真円度の程度や外径サイズに影響を受けることなく、多種のマリンホース10に適合する汎用性の高いフロータ1となる。さらに、連結しているフロートブロック2をそれぞれ分離した状態にすれば、占有スペースが非常に小さくできるので、運搬や保管する際の効率も向上させることができる。
【0016】
また、このフロータ1は、本体自体がすべて同じ形状かつ同じ浮力のフロートブロック2により構成されているので、1種類のフロートブロック2を用意すればよく、コスト負担を著しく抑えることができる。より一層、多様なサイズのマリンホース10に対応し、より精度よくマリンホース10に対する要求浮力に対応するには、代表的な仕様(形状、大きさ、浮力等)の基本モジュールとなるフロートブロック2を数種類用意しておき、これらフロートブロック2を組み合わせることにより多様なフロータ1を形成できるようにしておくことが好ましい。
【0017】
フロータ1のマリンホース10への取付け作業は、予め陸上や船上で行なうが、既に海上、海中に配置されているマリンホース10の浮力が不足した場合などには、浮力の異なるフロートブロック2に組み換えることで、現地作業場での浮力調整が容易にできる。
【0018】
連結するフロートブロック2の数は上記の実施形態に示した9個に限らず、例えば3個以上であり、マリンホース10の外周面に設けられたロケーションカラー11に沿うように環状のフロータ1を形成できる数であればよく、ロケーションカラー11の外径サイズ等により適宜決定する。例えば、ロケーションカラー11の外径が500mm〜800mm程度の場合、5〜8個程度のフロートブロック2を環状に連結してフロータ1を構成し、個々のフロートブロック2の浮力は0〜30kg程度に設定する。
【0019】
フロートブロック2の浮力を0kgにするのは、例えば、サブマリンタイプのマリンホース10にデバイス(付加機能部)を追加したいが、既にホースライン形状が決定しており、デバイスの追加によってホースラインを崩さないようにする場合など、マリンホース10に余計な浮力を与えたくない場合である。このような場合は、追加するデバイスの重量を踏まえて浮力が0kgになるようにする。
【0020】
また、フロートブロック2の形状は、上記の実施形態に例示した形状に限らず、種々の形状を採用することができる。また、環状に連結した際に、隣り合うフロートブロックどうしの相対位置が変更可能であれば、異なる形状のフロートブロック2を混在させてフロータ1を構成することもできる。
【0021】
すべてのフロートブロック2に嵌合溝5を設けると、安定よくフロータ1をマリンホース10に固定でき好ましいが、十分な固定強度が確保できる場合は、環状を形成するフロートブロック2の1個置きまたは2個置き等、適度な間隔をあけて嵌合溝5を設けることもでき、最小限の1個のフロートブロック2にのみ嵌合溝5を設けるようにすることもできる。
【0022】
図5に例示するように、環状のフロータ1のマリンホース軸方向断面における外縁は、なだらかな円弧状にすることが好ましい。これにより波、潮流等により受ける水の抵抗が小さくなるため、マリンホース10が流されにくくなりホースラインの乱れを抑えることができる。
【0023】
また、図6に例示するフローティングホース、図7に例示するサブマリンホースのように、フロートブロック2に、灯火装置12a、位置や圧力等を検知する各種センサ(送信装置を含む)12b、併走ラインを保持するラインサポート12c等の浮力機能とは異なる別の機能を有する付加機能部を設けることもできる。これら付加機能部は、1個のフロートブロック2に1つ設けるようにしてもよく、複数設けるようにしてもよい。これら付加機能部を備えたフロートブロック2を予め用意しておくことにより、マリンホース10への付加機能の実装を容易かつ低コストに行なうことができる。
【0024】
図8に別の実施形態を示す。このフロータ1は、図1〜3に示したフロータ1と基本構造は同じであるので、相違点のみを説明する。
【0025】
このフロータ1では、終端部となるフロートブロック2どうしを、互いの突部を相手の突部の間の凹部に組み合わせ、それぞれの突部に設けられた貫通孔6に連結ピン7aを連通することにより連結している。このように、特別な終端連結部材7bを用いずに、連結ピン7aを終端連結部材7bとして用いることもできる。
【0026】
また、このフロータ1は、同じ形状で浮力の異なる2種類のフロートブロック2a、2bを混在して連結することにより構成されている。このように、浮力の異なる2種類以上のフロートブロック2a、2bを用意しておけば、これらを組み合わせることにより、フロータ1の浮力の調節を簡単に行なうことができる。
【0027】
これにより、所定のホースラインを形成するために、数値解析等により算出した必要な浮力を有するフロータ1を迅速に形成することが可能になり、図11に例示するように、海上のブイ13から海底に延びるマリンホース(サブマリンホース)10の所定の位置に所定の浮力のフロータ1を外嵌することで所望のホースラインを形成することができる。
【0028】
これらフロートブロック2a、2bは、その浮力に応じて色、模様、刻印等の印を予め決めておき、浮力ごとに色、模様、印あるいはこれらの組み合わせからなる識別マークMを付すようにするとよい。図8の実施形態では、浮力の異なるフロートブロック2a、2bに、それぞれ四角形、三角形の刻印を識別マークMとして付設している。このように、フロートブロック2a、2bのそれぞれの浮力を外観で識別可能に構成すれば、浮力の異なるフロートブロック2a、2bを混在させてフロータ1を構成した場合であっても、一見してフロータ1の総浮力を把握することができる。
【0029】
図9にさらに別の実施形態を示す。このフロータ1は図1〜3に示したフロータ1と技術的思想は同様であり相違点のみを説明する。このフロータ1を構成するそれぞれのフロートブロック2は、帯状の環状連結部材8が貫通することにより連結されている。終端部となる環状連結部材8の両端部には、終端連結部材7が設けられ、この終端連結部材7bを連結することにより環状のフロータ1が形成されている。これらのフロートブロック2は、貫通している環状連結部材8を引き抜けば、それぞれ分離することができる。
【0030】
このように、環状に連結する際に、隣り合うフロートブロック2どうしを直接連結するのではなく、環状連結部材等を介在させて連結する構成にすることもできる。このフロータ1は、フロートブロック2、2の間で環状連結部材8が自由に曲げ変形できるので、環状で隣り合うフロートブロック2、2どうしの相対位置が変更可能な構成になり、マリンホース10の外周断面形状に適合する環状形状を容易に形成することができる。
【0031】
このフロータ1も、図1〜3に例示したフロータ1と同様の効果を有し、マリンホース10の真円度の程度や外径サイズに影響を受けずに取付けが可能で汎用性が高く、また、運搬や保管する際の効率にも優れている。さらに、連結ピン7bを用いたフロータ1よりも構造が簡素になり、また、回転摺動部がないので耐久性を向上させ易いという利点がある。
【0032】
環状連結部材8としては、例えばステンレス鋼などの金属製の帯状体やポリアミド系樹脂などの樹脂製の帯状体等を用いることができる。また、上記の実施形態に例示したような、マリンホース10の外周長以上の長さを有する1本の環状連結部材8ではなく、隣り合う2個もしくは数個のフロートブロック2どうしを連結する環状連結部材8にすることもできる。
【0033】
図10に例示するように、隣り合うフロートブロック2、2の間にスペーサ9を介在させて構成することもできる。このスペーサ9は、環状連結部材8を貫通させることによりフロートブロック2、2の間に設置されている。このスペーサ9は、隣り合うフロートブロック2どうしを所定間隔あけて配置できるものであればよく、特に仕様が限定されるものではない。スペーサ9と環状連結部材8との取付け構造も他の様々な構造を採用することができる。
【0034】
この構成によれば、スペーサ9の有無やスペーサ9の大きさを変えることによりフロートブロック2、2間の間隔を簡単に調整することができ、浮力の調整も容易に行なうことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のフロータを展開した状態を例示する側面図である。
【図2】図1のフロータを環状に形成した状態を例示する側面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図1のフロータを構成するフロートブロックを例示し、図4(a)は平面図、図4(b)は側面図、図4(c)は図4(a)のB−B断面図である。
【図5】図3の変形例を示すフロータのマリンホース軸方向断面図である。
【図6】図2の変形例を示すフロータの側面図である。
【図7】図2の別の変形例を示すフロータの側面図である。
【図8】フロータの別の実施形態を例示する側面図である。
【図9】フロータのさらに別の実施形態を例示する側面図である。
【図10】図9のフロータの変形例を例示する側面図である。
【図11】フロータの使用例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 フロータ
2、2a、2b フロートブロック
3 外殻
4 充填材
5 嵌合溝
6 貫通孔
7a 連結ピン 7b 終端連結部材
8 環状連結部材
9 スペーサ
10 マリンホース
11 ロケーションカラー
12a 灯火装置 12b センサ 12c ラインサポート
13 ブイ
M 識別マーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マリンホースに外嵌する環状のマリンホース用フロータであって、互いを直接または連結部材を介して連結および分離可能なフロートブロックを複数連結して環状を形成し、該環状の隣り合うフロートブロックどうしの相対位置を変更可能に構成するマリンホース用フロータ。
【請求項2】
前記フロートブロックがすべて同じ形状である請求項1に記載のマリンホース用フロータ。
【請求項3】
前記フロートブロックの内、浮力の異なる少なくとも2種類のフロートブロックが混在する請求項1または2に記載のマリンホース用フロータ。
【請求項4】
前記フロートブロックの少なくとも1個に、前記マリンホースの外周面に突設されたロケーションカラーに嵌合する嵌合溝を設けた請求項1〜3のいずれかに記載のマリンホース用フロータ。
【請求項5】
前記フロートブロックの少なくとも1個に、灯火装置、センサ等の付加機能部を設けた請求項1〜4のいずれかに記載のマリンホース用フロータ。
【請求項6】
前記フロートブロックを、その浮力に応じて決められた色、模様または印を付すことにより浮力を外観で識別可能に構成する請求項1〜5のいずれかに記載のマリンホース用フロータ。
【請求項7】
前記環状のマリンホース用フロータのマリンホース軸方向断面における外縁を円弧状に形成する請求項1〜6のいずれかに記載のマリンホース用フロータ。
【請求項1】
マリンホースに外嵌する環状のマリンホース用フロータであって、互いを直接または連結部材を介して連結および分離可能なフロートブロックを複数連結して環状を形成し、該環状の隣り合うフロートブロックどうしの相対位置を変更可能に構成するマリンホース用フロータ。
【請求項2】
前記フロートブロックがすべて同じ形状である請求項1に記載のマリンホース用フロータ。
【請求項3】
前記フロートブロックの内、浮力の異なる少なくとも2種類のフロートブロックが混在する請求項1または2に記載のマリンホース用フロータ。
【請求項4】
前記フロートブロックの少なくとも1個に、前記マリンホースの外周面に突設されたロケーションカラーに嵌合する嵌合溝を設けた請求項1〜3のいずれかに記載のマリンホース用フロータ。
【請求項5】
前記フロートブロックの少なくとも1個に、灯火装置、センサ等の付加機能部を設けた請求項1〜4のいずれかに記載のマリンホース用フロータ。
【請求項6】
前記フロートブロックを、その浮力に応じて決められた色、模様または印を付すことにより浮力を外観で識別可能に構成する請求項1〜5のいずれかに記載のマリンホース用フロータ。
【請求項7】
前記環状のマリンホース用フロータのマリンホース軸方向断面における外縁を円弧状に形成する請求項1〜6のいずれかに記載のマリンホース用フロータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−75700(P2008−75700A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253273(P2006−253273)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
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