説明

マルチウェルプレート用アダプタ

【課題】 従来に比してマルチウェルプレートの消費量を抑制する。
【解決手段】
マルチウェルプレート用アダプタ1は、試料を収容するための複数のウェルを有するマルチウェルプレートの上面に着脱可能である。このマルチウェルプレート用アダプタ1は、マルチウェルプレートの複数のウェルの少なくとも一部に対応する位置に、試料の光学的測定に用いられる孔部が設けられており、少なくとも上面が白色又は黒色である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学発光又は蛍光測定用のマルチウェルプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査及びバイオテクノロジーの分野において、多数の試料を収容可能なマルチウェルプレートを用いて、複数の試料における化学発光又は蛍光発光を同時に測定する方法が知られている。
【0003】
化学発光測定及び蛍光発光測定においては、通常、黒色又は白色に着色されたマルチウェルプレートが使用されている。特許文献1に記載されているように、化学発光測定では、黒色よりも白色の方が発光強度が高まり測定感度が上がるため、通常白色プレートが使用される。一方、蛍光発光測定では、白色プレートを用いて測定すると自家蛍光によるバックグラウンド蛍光が発生し測定精度が下がるので、通常黒色プレートが使用される。このように、従来測定に応じてプレートが使い分けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−40818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、測定の都度プレートを使い分けることは、プレートの消費量が増えることになりコストの観点から好ましくない。また、マルチウェルプレートは使い捨てであるため、多数のマルチウェルプレートを廃棄する必要が生じる。さらに、測定によっては化学発光測定と蛍光発光測定との両方が必要な場合がある。このとき、適切な測定を行うためには、化学発光測定用に黒色プレートを使用し、蛍光測定用に白色プレートを使用して測定が行われる。このように、化学発光測定と蛍光発光測定の両方を行う場合には、白色プレートと黒色プレートとの両方を使用するため、操作が煩雑であり、資源が無駄であった。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、従来に比してマルチウェルプレートの消費量を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様のマルチウェルプレート用アダプタは、試料を収容するための複数の収容部を有するマルチウェルプレートの上面に着脱可能なマルチウェルプレート用アダプタであって、前記マルチウェルプレートの前記収容部の少なくとも一部に対応する位置に、試料の光学的測定に用いられる孔部が設けられており、少なくとも上面が白色又は黒色の板状部を備える。
【0008】
この態様において、前記板状部は、表面全体が白色又は黒色であってもよい。
【0009】
また、上記態様において、前記マルチウェルプレートは白色又は黒色であり、前記マルチウェルプレートが黒色である場合、板状部が白色であり、前記マルチウェルプレートが白色である場合、板状部が黒色であってもよい。
【0010】
また、上記態様において、前記板状部には、前記マルチウェルプレートにおいて隣り合う収容部の間隔と同じ間隔で、隣り合う前記孔部が設けられていてもよい。
【0011】
また、上記態様において、前記板状部には、前記マルチウェルプレートに設けられている収容部と同数の前記孔部が設けられていてもよい。
【0012】
また、上記態様において、前記板状部の孔部の周囲から筒状に突出し、少なくとも内周面が白色又は黒色であり、前記マルチウェルプレートの前記収容部に挿入される筒状部をさらに備えていてもよい。
【0013】
また、上記態様において、前記マルチウェルプレートは白色又は黒色であり、前記マルチウェルプレートが黒色である場合、少なくとも筒状部の内周面が白色であり、前記マルチウェルプレートが白色である場合、少なくとも筒状部の内周面が黒色であってもよい。
【0014】
また、上記態様において、前記板状部の前記孔部の内周面は、雌螺状に形成されており、前記筒状部の一端は、雄螺状に形成されており、前記筒状部と前記孔部の内周面とが螺合することによって前記筒状部が前記板状部に取り付けられてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るマルチウェルプレート用アダプタによれば、従来に比してマルチウェルプレートの消費量を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係るマルチウェルプレート用アダプタの構成を示す平面図。
【図2】実施の形態に係るマルチウェルプレート用アダプタの構成を示す正面図。
【図3】実施の形態に係るマルチウェルプレート用アダプタの構成を示す左側面図。
【図4】実施の形態に係るマルチウェルプレート用アダプタの構成を示す右側面図。
【図5】実施の形態に係るマルチウェルプレート用アダプタの構成を示す背面図。
【図6】実施の形態に係るマルチウェルプレート用アダプタの構成を示す底面図。
【図7】図1におけるA−A線による部分拡大断面図。
【図8】板状部の孔部の部分拡大断面図。
【図9】筒状部の側面図。
【図10】マルチウェルフィルタプレートの構成を示す斜視図。
【図11】マルチウェルフィルタプレートに装着された状態のマルチウェルプレート用アダプタを示す斜視図。
【図12】白色マルチウェルフィルタプレートに黒色アダプタを装着しなかった場合、白色マルチウェルフィルタプレートに実施の形態に係るアダプタを装着した場合、及び白色マルチウェルフィルタプレートに板状のアダプタを装着した場合における蛍光発光測定のバックグラウンド値を比較したグラフ。
【図13】白色マルチウェルフィルタプレートに黒色アダプタを装着しなかった場合、白色マルチウェルフィルタプレートに実施の形態に係るアダプタを装着した場合、及び白色マルチウェルフィルタプレートに板状のアダプタを装着した場合における蛍光発光測定のS/N比を比較したグラフ。
【図14】白色マルチウェルフィルタプレートに黒色アダプタを装着しなかった場合における実験結果を示すグラフ。
【図15】白色マルチウェルフィルタプレートに実施の形態に係るアダプタを装着した場合における実験結果を示すグラフ。
【図16】蛍光イメージャによる実験結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0018】
[マルチウェルプレート用アダプタの構成]
本実施の形態に係るマルチウェルプレート用アダプタは、96穴のマルチウェルプレートの上面に装着され、プレートリーダ又はイメージャ等の測定装置におけるマルチウェルプレートに収容された試料の光学的測定に使用される。
【0019】
図1は、本実施の形態に係るマルチウェルプレート用アダプタの構成を示す平面図、図2はその正面図、図3はその左側面図、図4はその右側面図、図5はその背面図、図6はその底面図である。
【0020】
図に示すように、本実施の形態に係るマルチウェルプレート用アダプタ1は、平面視において一つの角が欠落した長方形の板状をなす板状部2を備えている。板状部2の一つの角部、即ち図1中において左下の角部は欠落した形状をなしており、X方向に対して45度に傾斜した直線による面取り部が形成されている。
【0021】
かかる板状部2には、複数の孔部21,21,21,…が設けられている。孔部21,21,21,…は、等間隔にマトリックス状に並設されており、板状部2の短辺方向(図1中X方向)及び長辺方向(Y方向)のそれぞれにおいて隣り合う任意の2つの孔部21,21の間隔(孔部21の中心間の距離)は何れも9mmである。孔部21,21,21,…は、X方向に9個、Y方向に12個それぞれ並設されており、板状部2に合計98個の孔部21,21,21,…が設けられている。
【0022】
板状部2は、黒色のポリアセタール樹脂により構成されている。即ち、板状部2の表面全体は黒色に着色されている。
【0023】
板状部2の底面からは、各孔部21,21,21,…の周囲から突出するように筒状部3,3,3…が設けられている。筒状部3,3,3…は板状部2の全ての孔部21,21,21…に対応して設けられており、つまり96個の筒状部3,3,3,…が設けられている。
【0024】
図7は、図1におけるA−A線による部分拡大断面図である。図7に示すように、筒状部3は円筒状をなしている。かかる筒状部3の先端には、2つの矩形状の欠落部31が互いに対向して設けられている。
【0025】
かかる筒状部3は、黒色のポリアセタール樹脂により構成されている。即ち、筒状部3の表面全体は黒色に着色されている。
【0026】
図8は、板状部2の孔部21の部分拡大側面断面図であり、図9は、筒状部3の側面図である。図8に示すように、板状部2の孔部21の内周面22は雌螺状に形成されている。一方、筒状部3の基端部は鍔状に外側へ突出しており、当該鍔状部32の外周面は雄螺状に形成されている。筒状部3の鍔状部32が板状部の孔部21に螺合されることにより、筒状部3は板状部に取り付けられる。
【0027】
図10は、マルチウェルフィルタプレートの構成を示す斜視図であり、図11は、マルチウェルフィルタプレートに装着された状態のマルチウェルプレート用アダプタを示す斜視図である。マルチウェルフィルタプレート4は、平面視において一つの角が欠落した長方形の台状をなしており、その上面に複数のウェル41,41,41,…が設けられている。即ち、マルチウェルフィルタプレート4の上面の形状は、本実施の形態に係るアダプタ1の形状に対応しており、図11に示すように、マルチウェルフィルタプレート4の上面にアダプタ1を装着したとき、アダプタ1の板状部2はマルチウェルフィルタプレート4の上面よりも若干小さく、平面視において、マルチウェルフィルタプレート4の上面が一様な幅で板状部2の周囲にはみ出るようになっている。換言すれば、アダプタ1をマルチウェルフィルタプレート4の状面に載置したとき、アダプタ1の板状部2がマルチウェルフィルタプレート4の上面からはみ出ることがないようになっている。
【0028】
マルチウェルフィルタプレート4には、その上面の短辺方向に8個、長辺方向に12個のウェル41,41,41,…が等間隔に並べて設けられている。つまり、マルチウェルフィルタプレート4には、合計96個のウェル41,41,41,…がマトリックス状に並設されている。ウェル41,41,41,…が並べられる間隔は、板状部2の孔部21,21,21,…が並べられる間隔と同一となっている。即ち、アダプタ1をマルチウェルフィルタプレート4に装着したとき、各孔部21,21,21,…の位置が、ウェル41,41,41,…の位置と一致するようになっている。
【0029】
アダプタ1の筒状部3,3,3,…のそれぞれは、ウェル41,41,41,…の内部に挿入される。板状部2の底面からの筒状部3,3,3,…の突出量は、ウェル41,41,41,…の深さよりも若干小さく、このためアダプタ1をマルチウェルフィルタプレート4に装着したときに、筒状部3,3,3,…の先端がウェル41,41,41,…の底(フィルタ)に当接して板状部2がマルチウェルフィルタプレート4の上面から離れることはない。
【0030】
図10に示すマルチウェルフィルタプレート4は白色であり、かかる白色のマルチウェルフィルタプレート4は化学発光の測定に適しているが、蛍光発光の測定には適していない。これは以下のような理由による。化学発光の場合には、白色のマルチウェルフィルタプレート4のウェルの側面において化学発光による光が反射し、微弱な化学発光の測定を行いやすい。この場合、マルチウェルフィルタプレート4から微弱な蛍光が発せられ、ノイズ成分として化学発光の測定結果に若干の影響を及ぼすが、このノイズ成分の影響よりも、上述した反射による効果の方が一般的に大きいため、化学発光の測定には白色のマルチウェルフィルタプレートが使用される。
【0031】
一方、蛍光発光の場合には、ウェルを照射する光により白色のマルチウェルプレート4から蛍光が発せられ、この蛍光がノイズ成分として試料から発せられる蛍光と共に測定されるため、一般的にS/N比が低くなる。黒色のマルチウェルフィルタプレートであれば、マルチウェルフィルタプレートから実質的に蛍光が発生することがなく、試料から発せられる蛍光を感度よく測定することができる。このため、蛍光発光の測定には黒色のマルチウェルフィルタプレートが使用される。
【0032】
本実施の形態に係るアダプタ1は、白色のマルチウェルプレートに装着して使用される。マルチウェルフィルタプレート4にアダプタ1を装着すると、黒色のアダプタ1によってマルチウェルフィルタプレート4の上面が覆われる。したがって、蛍光発光を測定するときに、マルチウェルフィルタプレート4からの蛍光がノイズ成分として混入することがなく、測定結果のS/N比が向上する。
【0033】
また、アダプタ1に筒状部3,3,3…を設けることにより、マルチウェルフィルタプレート4のウェル41,41,41,…の側面が筒状部3,3,3,…によって隠され、ウェル41,41,41,…の側面から生じる蛍光がノイズ成分として測定されることを防止することができる。したがって、より一層S/N比を向上させることができる。
【実施例1】
【0034】
[アダプタの装着による効果の検証]
(1)測定用プレートの作製
<メンブレンの前処理及び洗浄>
疎水性PVDFメンブレンを備え、白色のアクリルで成型された96穴のマルチウェルフィルタプレート(Millipore社製)の各ウェル内に70%エタノール溶液を分注した。分注後、フィルタ下部から溶液を吸引除去した。次に各ウェル内に精製水及びTBS緩衝液(Tris25mM, 生理食塩水150mM, pH7.4)を分注した。分注後、フィルタ下部から溶液を吸引除去した。
【0035】
<測定試料CDK2の調製>
測定試料として、リコンビナントCDK2溶液(サンタクルズ社製)を、TBS緩衝液で希釈し、CDK2の濃度が7.5U/mL(2.71μg/mL=1U)となるように調製したものを準備した。また、CDK2の濃度が0U/mL(TBS緩衝液のみ)のものも測定試料として準備した。
【0036】
<CDK2の固定化>
調製した各測定試料を各ウェル内に100μLずつ分注した。分注後フィルタ下部から吸引し、測定試料に含まれるCDK2をメンブレンに吸着固定化させた。CDK2を固定化させた後、各ウェル内に300μLのTBS緩衝液を分注し、分注後フィルタ下部から緩衝液を吸引除去することにより、洗浄を行った。
【0037】
<ブロッキング処理>
上記TBS緩衝液に濃度が4%となるようにBSA(ウシ血清アルブミン)を添加したブロッキング溶液を調製した。調製したブロッキング溶液を各ウェル内に100μLずつ分注した。分注後フィルタ下部からブロッキング溶液を吸引除去し、ブロッキング処理を行った。
【0038】
<CDK2と抗CDK2抗体との反応>
4μg/mL抗CDK2ウサギポリクローナル抗体溶液(サンタクルズ社)を各ウェル内に100μLずつ分注し、CDK2と抗CDK2抗体とを反応させた。分注後、抗体溶液をフィルタ下部から吸引除去した。抗体溶液を吸引除去した後、各ウェル内に300μLのTBS緩衝液を分注し、分注後フィルタ下部から緩衝液を吸引除去することにより、フィルタの洗浄を行った。
【0039】
<抗CDK2抗体と二次抗体との反応>
二次抗体である4μg/mLビオチン化抗ウサギIgGポリクローナル抗体溶液(サンタクルズ社)を各ウェル内に100μLずつ分注し、抗CDK2抗体とビオチン化抗ウサギIgGポリクローナル抗体とを反応させた。分注後、フィルタ下部から抗体溶液を吸引除去した。抗体溶液を吸引除去した後、各ウェル内に300μLのTBS緩衝液を分注し、分注後フィルタ下部から緩衝液を吸引除去することにより、フィルタの洗浄を行った。
【0040】
<標識物質の結合>
蛍光標識試薬として、10μg/mL FITC−ストレプトアビジン溶液(ベクター社製)を各ウェル内に100μLずつ分注し、ビオチン化抗ウサギIgGポリクローナル抗体に蛍光標識物質を結合させた。分注後、フィルタ下部から溶液を吸引除去した。溶液を吸引除去した後、各ウェル内に300μLのTBS緩衝液を分注し、分注後フィルタ下部から緩衝液を吸引除去することにより、フィルタの洗浄を行った。洗浄後、プレートを乾燥(室温で20分静置)させた。
【0041】
(2)蛍光測定
作製した測定プレートに、「プレート上部及びウェル内壁を覆う黒色のアダプタ(上記の実施の形態に係るアダプタ)を装着したもの」、「測定プレートにプレート上部のみを覆う黒色の板状アダプタを装着したもの」、「アダプタを装着しなかったもの」の各条件における蛍光発光を測定した。
【0042】
蛍光発光測定には、プレートリーダInfiniteF200(TECAN社製)を用いた。測定方法はInfiniteF200の取扱説明書に従い、Ex(励起光):535nm、Em(発光):485nmの条件で測定を行った。
【0043】
また、参考例として、プレートリーダの代わりに蛍光イメージャであるpharosFX(Bio-Rad社製)を用いて蛍光発光測定を行った。測定は、pharosFXの取扱説明書に従い、Ex(励起光):530nm、Em(発光):488nmの条件で行った。なお、蛍光イメージャでの測定においては、アダプタを装着していない測定プレートを用いた。
【0044】
(3)結果
図12は、各条件における蛍光発光測定の結果から、バックグラウンド値を求めグラフ化したものである。白色の測定プレート(マルチウェルフィルタプレート)にアダプタを装着しなかった場合の結果を「PL」、白色の測定プレートにプレート上部及びウェル内壁を覆う黒色のアダプタを装着した場合の結果を「PL+A」、白色の測定プレートにプレート上部のみを覆う黒色のアダプタを装着した場合の結果を「PL+B」で示す。
【0045】
図12より、PLのバックグラウンド値と比較してPL+Aでは、大幅にバックグラウンド値が下がることがわかる。このことから、プレート上部及びウェル内壁を覆う黒色のアダプタを用いることにより、バックグラウンド値を抑え測定感度が高まることが示唆された。
【0046】
図13は、各条件における蛍光発光測定の結果から、S/N比を求めグラフ化したものである。白色の測定プレートにアダプタを装着しなかった場合の結果を「PL」、白色の測定プレートにプレート上部及びウェル内壁を覆う黒色のアダプタを装着した場合の結果を「PL+A」、蛍光イメージャで測定した結果を「Im」で示す。
【0047】
図12及び図13より、PLのS/N比と比較してPL+Aでは大幅にS/N比が向上し、蛍光イメージャの測定のS/N比以上の結果が得られた。このことから、プレート上部及びウェル内壁を覆う黒色のアダプタを用いることにより、S/N比が向上し測定感度が高まることが示唆された。
【実施例2】
【0048】
[検出限界(最小検出感度)の測定]
各条件(プレート上部及びウェル内壁を覆う黒色のプレートアダプタを用いてプレートリーダで測定した場合、プレートアダプタを用いずにプレートリーダで測定した場合、及び蛍光イメージャを用いて測定した場合)で測定したときの検出限界(最小検出感度)について調べた。
【0049】
(1)測定プレートの作製
実施例1の測定試料CDK2の調製及びCDK2の固定化において、測定試料として、リコンビナントCDK2溶液(サンタクルズ社製)をTBS緩衝液で希釈し、CDK2の濃度が0.5, 1.0, 2.5, 5.0, 7.5U/mLの5段階の濃度のものを調製し、調製した各測定試料を各ウェル内に100μLずつ分注した以外は、実施例1と同様の方法で作製したものを用いた。
【0050】
(2)蛍光測定
実施例1と同様の方法にて蛍光測定を行った。
【0051】
(3)結果
得られた各条件における蛍光測定の結果から、検出限界のCDK2の濃度を2SD法(検出限界測定方法)により算出した。算出した結果を示すグラフを図14〜図16に示す。図14は、白色マルチウェルフィルタプレートに黒色アダプタを装着しなかった場合における実験結果を示すグラフであり、図15は、白色マルチウェルフィルタプレートに上記の実施の形態に係るアダプタを装着した場合における実験結果を示すグラフであり、図16は、参考として実施した蛍光イメージャによる実験の結果を示すグラフである。なお、検出限界はCDK2の濃度が0U/mLのときの2SD値の範囲が重ならないときのCDK2の濃度とした。
【0052】
図14〜16より、アダプタを用いることにより、アダプタを用いないときよりも検出限界が向上し、蛍光イメージャで測定したときと同程度の検出限界を得ることが出来る。このことから、アダプタを用いることにより、検出感度が高まることが示唆された。
【0053】
(その他の実施の形態)
上記の実施の形態においては、アダプタ1が筒状部3,3,3,…を備える構成について述べたが、これに限定されるものではない。筒状部3,3,3,…を設けず、複数の孔部が設けられた板状のアダプタとしてもよい。
【0054】
また、上述した実施の形態においては、表面全体を黒色としたアダプタ1について述べたが、これに限定されるものではない。アダプタの表面全体を白色としてもよい。この場合、黒色のマルチウェルプレートを用いて化学発光を測定する場合に、当該マルチウェルプレートに白色のアダプタを装着することで、精度よく化学発光の測定を行うことができる。
【0055】
また、アダプタの上面を黒色とし、その他の部分は他の色にすることも可能である。少なくとも上面を黒色としていれば、蛍光測定においてアダプタから発せられる蛍光がノイズ成分として測定結果に含まれることを抑制することができる。
【0056】
また、上述した実施の形態においては、黒色の材料を用いてアダプタ1を形成した場合について述べたが、これに限定されるものではない。例えば白色等、黒色以外の色の材料を用いてアダプタ1を形成し、その表面に黒色の塗料等を塗布することも可能である。
【0057】
また、上述した実施の形態においては、アダプタ1がマルチウェルプレートの上面の概ね全面を覆う場合について述べたが、これに限定されるものではない。アダプタ1は種々のサイズのマルチウェルプレートに使用することができ、例えば384穴のマルチウェルプレートに使用することも可能である。この場合、マルチウェルプレートの上面の一部がアダプタによって覆われ、他の部分は露出する。個のようにすることで、アダプタを使用した部分では蛍光発光の測定を行い、マルチウェルプレートが露出した部分では化学発光の測定を行うことができるなど、さらに多様な方法で測定を行うことができる。
【0058】
また、アダプタ1を上記の実施の形態で説明したサイズ以外のサイズとすることも可能である。例えば、板状部2を半分の大きさとし、48個の孔部を設けた構成のアダプタとする等、96穴のマルチウェルプレートの上面の一部を覆うようにアダプタを構成することもできる。この場合においても、マルチウェルプレートの上面の一部がアダプタによって覆われ、他の部分は露出するため、多様な測定が可能となる。
【0059】
また、上述した実施の形態においては、板状部2と筒状部3とを別個の部品として構成し、板状部2に筒状部3を取り付けることによりアダプタを製造する構成について述べたが、これに限定されるものではない。板状部2と筒状部3とを備えるアダプタを射出成形等により一体成形で製造してもよい。また、板状部2に雌螺を設け、筒状部に雄螺を設け、両者を螺合することにより接合する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、他の接合方法、例えば、筒状部の基端を板状部に嵌合することにより、筒状部を板状部に接合する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係るマルチウェルプレート用アダプタは、化学発光又は蛍光測定用のマルチウェルプレートに用いられるアダプタ等として有用である。
【符号の説明】
【0061】
1 マルチウェルプレート用アダプタ
2 板状部
21 孔部
22 内周面(雌螺部)
3 筒状部
31 欠落部
32 鍔状部(雄螺部)
4 マルチウェルフィルタプレート
41 ウェル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収容するための複数の収容部を有するマルチウェルプレートの上面に着脱可能なマルチウェルプレート用アダプタであって、
前記マルチウェルプレートの前記収容部の少なくとも一部に対応する位置に、試料の光学的測定に用いられる孔部が設けられており、少なくとも上面が白色又は黒色の板状部を備える、
マルチウェルプレート用アダプタ。
【請求項2】
前記板状部は、表面全体が白色又は黒色である、
請求項1に記載のマルチウェルプレート用アダプタ。
【請求項3】
前記マルチウェルプレートは白色又は黒色であり、
前記マルチウェルプレートが黒色である場合、板状部が白色であり、
前記マルチウェルプレートが白色である場合、板状部が黒色である、
請求項1又は2に記載のマルチウェルプレート用アダプタ。
【請求項4】
前記板状部には、前記マルチウェルプレートにおいて隣り合う収容部の間隔と同じ間隔で、隣り合う前記孔部が設けられている、
請求項1乃至3の何れかに記載のマルチウェルプレート用アダプタ。
【請求項5】
前記板状部には、前記マルチウェルプレートに設けられている収容部と同数の前記孔部が設けられている、
請求項1乃至4の何れかに記載のマルチウェルプレート用アダプタ。
【請求項6】
前記板状部の孔部の周囲から筒状に突出し、少なくとも内周面が白色又は黒色であり、前記マルチウェルプレートの前記収容部に挿入される筒状部をさらに備える、
請求項1乃至5の何れかに記載のマルチウェルプレート用アダプタ。
【請求項7】
前記マルチウェルプレートは白色又は黒色であり、
前記マルチウェルプレートが黒色である場合、少なくとも筒状部の内周面が白色であり、
前記マルチウェルプレートが白色である場合、少なくとも筒状部の内周面が黒色である、
請求項6に記載のマルチウェルプレート用アダプタ。
【請求項8】
前記板状部の前記孔部の内周面は、雌螺状に形成されており、
前記筒状部の一端は、雄螺状に形成されており、
前記筒状部と前記孔部の内周面とが螺合することによって前記筒状部が前記板状部に取り付けられている、
請求項6又は7に記載のマルチウェルプレート用アダプタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−73187(P2012−73187A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219838(P2010−219838)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】