説明

マルチキャストで送信する基地局を無線端末によって切り替えるデータ配信方法及びシステム

【課題】無線端末が、大容量の帯域候補データを配信している周辺基地局へ切り替えることができるデータ配信方法及びシステムを提供する。
【解決手段】配信サーバが、基地局毎に応じた複数の帯域候補データ全てを、当該基地局へ配信する。次に、複数の基地局が、当該無線端末との間の通信利用帯域に応じて選択したいずれか1つの帯域候補データを、無線端末へ配信すると共に、その帯域候補データの識別子を配信サーバへ通知する。次に、無線端末が、現在通信中の基地局の基地局IDと、通信可能な周辺基地局の基地局IDとを、配信サーバへ送信する。次に、配信サーバが、その周辺基地局の中で、最もマルチキャストデータの容量が大きい帯域候補データを配信する基地局における基地局IDを、無線端末へ送信する。次に、無線端末が、配信サーバから受信した基地局IDに基づく基地局へ、現在通信中の基地局から切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配信サーバから配信されるマルチキャストデータを、基地局から無線端末へ送信する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基地局と無線端末との間の無線ネットワークに、マルチキャストとユニキャストとが混在するような通信環境が提供されてきている。「マルチキャスト」とは、複数の宛先装置を指定して同じデータを送信することをいう。これに対し、「ユニキャスト」とは、単一のアドレスを指定して特定の宛先装置のみへデータを送信することをいう。尚、「ブロードキャスト」とは、不特定多数の装置へ向けてデータを送信することをいう。無線ネットワーク内でマルチキャスト配信を実現することによって、最低限の帯域保証のみで、多数の特定の宛先端末に対して放送型サービスを提供することができる。
【0003】
従来、マルチキャスト及びユニキャストの経路を選択する技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、マルチキャスト伝送装置とユニキャスト伝送装置とが混在した通信網について、リンクコストが小さくなるように、マルチキャスト経路及びユニキャスト経路を選択する。
【0004】
また、ネットワーク全体に係る動的な変化に応じて、最適なタイミングで、複数のユニキャストトラヒックを1本のマルチキャストトラヒックに集約する技術もある(例えば特許文献2参照)。
【0005】
更に、ユーザが意識することなく、特定のチャネルを、放送用のブロードキャストインフラ(マルチキャスト配信)と、通信用のユニキャストインフラ(ユニキャスト通信)とを使い分けて配信する技術もある(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−006228号公報
【特許文献2】特開2004−080566号公報
【特許文献3】WO2008/120374
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した従来技術はいずれも、ユニキャスト利用帯域とマルチキャスト利用帯域とを、どのように最適化するかについては全く検討されておらず、システムにおける設計事項とされていた。しかしながら、多数のユーザの利用状況に応じて、基地局と無線端末との間のユニキャスト通信利用帯域が増加した場合、マルチキャスト配信利用帯域を制限する必要が生じる。
【0008】
また、前述した従来技術はいずれも、配信サーバがマルチキャスト/ユニキャスト通信を選択制御するものであった。しかしながら、基地局と無線端末との間の無線ネットワークで、マルチキャスト配信及びユニキャスト通信が混在する場合、それらの切り替えを配信サーバが制御するには、システム全体としての管理コストがかかる。特に、配信サーバが、マルチキャスト配信利用帯域やチャネル数を、リアルタイムに適応的に管理且つ制御することは難しい。
【0009】
更に、無線端末は、ユニキャストデータを受信した基地局からそのまま、マルチキャストデータも受信することとなる。即ち、無線端末は、通信可能な他の周辺基地局が存在し、その周辺基地局が大容量の帯域候補データを配信していたとしても、その周辺基地局の存在を知ることもできない。結果的に、無線端末は、ユニキャストデータを受信した基地局が小容量の帯域候補データを配信していたとしても、その基地局からマルチキャストデータを受信することとなる。
【0010】
そこで、本発明は、配信サーバが配信するマルチキャスト/ユニキャストのデータを、基地局が無線端末へ送信する際に、無線端末が、大容量の帯域候補データを配信している周辺基地局へ切り替えることができるデータ配信方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、データを配信する配信サーバと、無線端末と、配信サーバから受信したデータを無線端末へ配信する複数の基地局とを有するシステムにおけるデータ配信方法において、
基地局は、無線端末へ、マルチキャストデータとユニキャストデータとを混在して配信することができ、
配信サーバが、無線端末へ配信すべきデータを異なるエンコーダによって符号化した複数の帯域候補データを生成する第1のステップと、
配信サーバが、基地局毎に応じた複数の帯域候補データ全てを、当該基地局へ配信する第2のステップと、
複数の基地局が、配信サーバから受信した複数の帯域候補データの中から、当該無線端末との間の通信利用帯域に応じて選択したいずれか1つの帯域候補データを、無線端末へ配信すると共に、その帯域候補データの識別子を配信サーバへ通知する第3のステップと、
無線端末が、現在通信中の基地局の基地局識別子と、通信可能な周辺基地局の基地局識別子とを、基地局を介して、配信サーバへ送信する第4のステップと、
配信サーバが、無線端末について通信可能な周辺基地局の中で、最もマルチキャストデータの容量が大きい帯域候補データを配信する基地局における基地局識別子を、無線端末へ送信する第5のステップと、
無線端末が、配信サーバから受信した基地局識別子に基づく基地局へ、現在通信中の基地局から切り替える第6のステップと
を有することを特徴とする。
【0012】
本発明のデータ配信方法における他の実施形態によれば、
無線端末は、基地局から受信する電波の受信信号強度(RSSI(Received Signal Strength Indicator))を計測しており、
第5のステップについて、受信信号強度が所定閾値以上となる基地局を、周辺基地局とすることも好ましい。
【0013】
本発明のデータ配信方法における他の実施形態によれば、配信サーバは、受信信号強度に基づく所定閾値を、無線端末へ予め送信することも好ましい。
【0014】
本発明のデータ配信方法における他の実施形態によれば、
第1のステップの前段について、無線端末が、マルチキャストエントリメッセージを、基地局を介して配信サーバへ送信し、
第2のステップについて、配信サーバは、マルチキャストエントリメッセージを受信した基地局に対してのみ、複数の帯域候補データを配信することも好ましい。
【0015】
本発明のデータ配信方法における他の実施形態によれば、
第3のステップについて、基地局は、
無線端末への下りのユニキャストデータのユニキャスト通信利用帯域を検出し、
無線端末への下りの全通信帯域に対するユニキャスト通信利用帯域の割合が、所定閾値以上となった場合、帯域候補データを送信しないように制御することも好ましい。
【0016】
本発明のデータ配信方法における他の実施形態によれば、
基地局は、複数の無線端末に対する下りのユニキャスト通信利用帯域における単位時間の平均帯域Tの値を、配信サーバへ送信し、
配信サーバは、
当該基地局から無線端末への下りの全通信帯域Pから、ユニキャスト通信利用帯域の平均帯域Tを差引いたマルチキャスト配信可能帯域Aに基づいて、複数の帯域候補データの組合せを選択することも好ましい。
【0017】
本発明によれば、データを配信する配信サーバと、無線端末と、配信サーバから受信したデータを無線端末へ配信する複数の基地局とを有するデータ配信システムにおいて、
配信サーバは、
無線端末へ配信すべきデータを異なるエンコーダによって符号化した複数の帯域候補データを生成する帯域候補生成手段と、
基地局毎に応じた複数の帯域候補データ全てを、当該基地局へ配信する帯域候補配信手段と
無線端末について通信可能な周辺基地局の中で、最もマルチキャストデータの容量が大きい帯域候補データを配信する基地局における基地局識別子を、無線端末へ送信する基地局指示手段と
を有し、
基地局は、
配信サーバから受信した複数の帯域候補データの中から、当該無線端末との間の通信状態に応じていずれか1つの帯域候補データを選択する帯域候補選択手段と、
無線端末へ、選択された1つの帯域候補データをマルチキャストデータとして配信すると共に、その帯域候補データの識別子を配信サーバへ通知するマルチキャスト配信手段と、
無線端末へ、ユニキャストデータを配信するユニキャスト通信手段と
を有し、
無線端末は、
現在通信中の基地局の基地局識別子と、通信可能な周辺基地局の基地局識別子とを、基地局を介して、配信サーバへ送信する周辺基地局通知手段と、
配信サーバから受信した基地局識別子に基づく基地局へ、現在通信中の基地局から切り替える基地局切替手段と
を有することを特徴とする。
【0018】
本発明のデータ配信システムにおける他の実施形態によれば、
無線端末は、無線インタフェースによって、基地局から受信する電波の受信信号強度(RSSI)を計測することができ、
周辺基地局通知手段は、受信信号強度が所定閾値以上となる基地局を、周辺基地局とすることも好ましい。
【0019】
本発明のデータ配信システムにおける他の実施形態によれば、配信サーバは、受信信号強度に基づく所定閾値を、無線端末へ予め送信することも好ましい。
【0020】
本発明のデータ配信システムにおける他の実施形態によれば、
基地局は、
無線端末から、マルチキャストエントリメッセージを受信するマルチキャストエントリ受信手段と、
配信サーバへ、マルチキャストエントリメッセージを送信するマルチキャストエントリ送信手段と
を有し、
配信サーバにおける帯域候補配信手段は、マルチキャストエントリメッセージを受信した基地局に対してのみ、帯域候補データを配信することも好ましい。
【0021】
本発明のデータ配信システムにおける他の実施形態によれば、
基地局は、
ユニキャスト通信手段から、無線端末への下りのユニキャストデータのユニキャスト通信利用帯域を検出するユニキャスト帯域検出手段と、
マルチキャスト配信手段に対して、無線端末への下りの全通信帯域に対するユニキャスト通信利用帯域の割合が、所定閾値以上となった場合、帯域候補データを送信しないように制御する配信制御手段と
を有することも好ましい。
【0022】
本発明のデータ配信システムにおける他の実施形態によれば、
基地局は、複数の無線端末に対する下りのユニキャスト通信利用帯域における単位時間の平均帯域Tの値を、配信サーバへ送信するユニキャスト帯域通知手段を更に有し、
配信サーバは、帯域候補配信手段に対して、当該基地局から無線端末への下りの全通信帯域Pから、ユニキャスト通信利用帯域の平均帯域Tを差引いたマルチキャスト配信可能帯域Aに基づいて、複数の帯域候補データの組合せを選択する帯域候補選択手段を更に有することも好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の配信方法及びシステムによれば、配信サーバが配信するマルチキャスト/ユニキャストのデータを、基地局が無線端末へ送信する際に、無線端末が、大容量の帯域候補データを配信している周辺基地局へ切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明におけるシステム構成図である。
【図2】配信サーバから基地局へ送信される帯域候補データを表す説明図である。
【図3】基地局から無線端末へ送信される帯域候補データを表す説明図である。
【図4】本発明における配信サーバ、基地局及び無線端末の機能構成図である。
【図5】本発明におけるシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明におけるシステム構成図である。
【0027】
図1によれば、配信サーバ1と、複数の基地局2とが、通信事業者網を介して接続されている。配信サーバ1は、通常、通信事業者によって運用される通信設備である。配信サーバ1は、通信事業者網に接続された基地局2を介して、無線端末3へデータを配信する。このデータは、例えば放送型コンテンツと通信型コンテンツとの両方がある。そのために、基地局2と無線端末3との間の無線ネットワークには、マルチキャスト配信とユニキャスト通信とが混在することとなる。尚、基地局2から見ると、他のサーバと無線端末3との間におけるユニキャスト通信を中継している。
【0028】
また、図1によれば、基地局2と無線端末3との間の無線ネットワークは、種々の異なる無線環境に基づくものであってもよい。例えば、携帯電話網、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)網、無線LAN(Local Area Network)等がある。
【0029】
尚、マルチキャストに対応したネットワークは、通信装置がツリー構造に配置されることが好ましく、図1によれば、親−子−孫の順に、配信サーバ−基地局−無線端末の階層型に構成される。即ち、コンテンツ(又はストリーム)は、上位層の配信サーバから下位層の無線端末へ向けて送信される(階層型マルチキャスト)。
【0030】
図2は、配信サーバから基地局へ送信される帯域候補データを表す説明図である。
【0031】
図2によれば、配信サーバ1は、無線端末3へ配信すべきデータを、異なるエンコーダによって符号化した複数の帯域候補データを用意する(図2(a)参照)。この複数の帯域候補データは、基地局毎に及び/又は無線環境種別毎に生成される。例えば以下のように、単純に9通りの帯域候補データが生成される。
無線環境が携帯電話網である場合の通信帯域量 大・中・小
無線環境がWiMAX網である場合の通信帯域量 大・中・小
無線環境が無線LANである場合の通信帯域量 大・中・小
【0032】
配信サーバ1は、このような複数の帯域候補データ全てを、マルチキャストエントリされた基地局2へ送信する(図2(b)参照)。いずれの帯域候補データを用いるかは、基地局2の制御に基づく。
【0033】
無線端末3は、基地局2A及び2Bの両方と通信可能であるとする。無線端末3は、例えば基地局2Aから送信される電波の受信信号強度と、基地局2Bから送信される電波の受信信号強度とが、所定閾値以上であるとする。
【0034】
また、図2によれば、基地局2Aから配信される帯域候補データにおけるマルチキャストデータの帯域幅(図2(c)参照)は、基地局2Bから配信される帯域候補データにおけるマルチキャストデータの帯域幅(図2(d)参照)よりも狭い。無線端末3は、最初に、ユニキャストデータを基地局2Aから受信していた場合であっても、本発明によれば、マルチキャストデータを基地局2Bから受信するように動作する。無線端末3としては、基地局2Aよりも、基地局2Bに切り替えた方が、大容量のマルチキャストデータを受信することができる。
【0035】
図3は、基地局から無線端末へ送信される帯域候補データを表す説明図である。
【0036】
図3(a)によれば、配信サーバ1から送信された、マルチキャスト配信における複数の帯域候補データが表されている。
【0037】
図3(b)によれば、基地局2から無線端末3へ向けた下りのユニキャスト通信利用帯域が表されている。ユニキャスト通信利用帯域は、既存の一般的な通信の利用帯域であって、配信サーバ1との間のユニキャスト通信に限られず、他のサーバや端末との間のユニキャスト通信も全て含むものである。下りのユニキャスト通信利用帯域は、多数のユーザ端末からの要求に応じて、時間経過に応じて変化している。ここで、基地局2から配信可能な全伝送容量から、ユニキャスト通信利用帯域を差し引いた空き帯域部分が、マルチキャスト配信に利用可能な帯域であることが理解できる。
【0038】
図3(c)によれば、図3(b)における空き帯域部分に、配信サーバ1から受信した帯域候補データのいずれかを対応付けて配信することができる。図3(c)によれば、空き帯域部分に、1つの帯域候補データが収容されるように描かれているが、勿論、複数の帯域候補データが収容されるように制御されるものであってもよい。
【0039】
図3(c)によれば、時間範囲毎に、以下の帯域候補データが収容されている。
時間範囲1:帯域候補データ1
時間範囲2:帯域候補データ2
(ここで、チャネル3を受信する無線端末が無くなったとする)
時間範囲3:帯域候補データ1(チャネル1及び2のみ)
時間範囲4:帯域候補データ3(チャネル1及び2のみ)
このように、基地局2は、時間範囲毎のユニキャスト通信利用帯域を検出し、全伝送容量からユニキャスト通信利用帯域を差し引いた空き帯域部分に応じて、マルチキャストの帯域候補データを選択する。また、基地局2は、マルチキャストエントリメッセージに応じて、無線端末3へ配信する必要のなくなったチャネルは配信しない。
【0040】
図4は、本発明における配信サーバ、基地局及び無線端末の機能構成図である。
【0041】
[配信サーバ1]
図4によれば、配信サーバ1は、コンテンツ蓄積部101と、事業者網インタフェース102と、帯域候補生成部111と、帯域候補選択部112と、帯域候補配信部113と、ユニキャスト通信部114と、基地局指示部115とを有する。これら機能構成部は、サーバに搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現できる。
【0042】
コンテンツ蓄積部101は、無線端末3へ配信すべきコンテンツを蓄積している。
【0043】
事業者網インタフェース102は、通信事業者網に接続しており、複数の基地局2へ向けてコンテンツを配信する。事業者網インタフェース102は、事業者網ネットワークに接続する物理レイヤ部と、IP(Internet Protocol)処理部と、トランスポートプロトコル処理部とからなる。
【0044】
帯域候補生成部111は、コンテンツ蓄積部101から、無線端末3へ配信すべきコンテンツを取得する。マルチキャスト配信として送信すべきコンテンツから、これらを異なるエンコーダによって符号化した複数の帯域候補データが生成される。即ち、異なる複数のビットレートで符号化される。ここで、複数の帯域候補データは、基地局毎に及び/又は無線環境種別毎に生成される。即ち、基地局と無線端末との間のセル毎に、複数の帯域候補データが生成される。このとき、マルチキャストのチャネル数が最適化されることも好ましい。生成された複数の帯域候補データは、帯域候補選択部112へ出力される。
【0045】
帯域候補選択部112は、帯域候補生成部111から複数の帯域候補データを入力すると共に、基地局2から受信したユニキャスト通信利用帯域を、事業者網インタフェース102を介して入力する。帯域候補選択部112は、当該基地局から無線端末への下りの全通信帯域Pから、ユニキャスト通信利用帯域の平均帯域Tを差引いたマルチキャスト配信可能帯域Aを算出する。そして、帯域候補選択部112は、帯域候補配信部113に対して、マルチキャスト配信可能帯域Aに基づいて、複数の帯域候補データの組合せを選択する。
【0046】
そして、帯域候補配信部113は、当該基地局及び/又は当該無線環境種別に応じた複数の帯域候補データ全てを、当該基地局へ配信する。
【0047】
また、帯域候補選択部112は、基地局2からマルチキャストエントリメッセージを受信した基地局に対してのみ、帯域候補データを配信することが好ましい。事業者網の通信帯域には余裕があるものとして、本願発明は構成されているが、無駄な帯域候補データの伝送を低減することは好ましい。
【0048】
ユニキャスト通信部114は、コンテンツ蓄積部101からコンテンツを取得し、そのコンテンツを、基地局2を介して、1つの無線端末3へ向けて送信する。サーバ−クライアント間の一般的なユニキャスト通信を実行する。
【0049】
基地局指示部115は、各基地局2から、選択された帯域候補データの識別子を受信する。これによって、基地局指示部115は、基地局2毎に、どの程度の容量のマルチキャストデータを送信しているかを知ることができる。また、基地局指示部115は、マルチキャストデータを受信している無線端末3から、通信可能な周辺基地局毎の受信信号強度RSSIを受信する。これによって、基地局指示部115は、当該無線端末3がいずれの基地局と通信可能であるか否かを知ることができる。
【0050】
その上で、基地局指示部115は、無線端末3について通信可能な周辺基地局の中で、最もマルチキャストデータの容量が大きい帯域候補データを配信する基地局における基地局識別子を、無線端末3へ送信する。これによって、無線端末3は、マルチキャストデータの容量ができる限り大きい帯域候補データを配信する基地局から、そのマルチキャストデータを受信することができる。
【0051】
[基地局2]
基地局2は、無線インタフェース201と、事業者網インタフェース202と、帯域候補選択部211と、マルチキャスト配信部212と、ユニキャスト通信部213と、ユニキャスト帯域検出部214と、ユニキャスト帯域通知部215と、配信制御部216と、マルチキャストエントリ受信部217と、マルチキャストエントリ送信部218とを有する。これら機能構成部も、基地局に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0052】
無線インタフェース201は、無線を介して無線端末3へデータを送信する。事業者網インタフェース202は、通信事業者網を介して、配信サーバ1からデータを受信する。両インタフェース共に、物理レイヤ部と、IP処理部と、トランスポートプロトコル処理部とを有する。
【0053】
帯域候補選択部211は、配信サーバ1から受信した複数の帯域候補データの中から、当該無線端末との間の通信状態に応じていずれかの帯域候補データを選択する。ここでの通信状態とは、ユニキャスト通信利用帯域の状態をいう。帯域候補選択部211は、選択された帯域候補データを、マルチキャスト配信部212へ出力する。
【0054】
マルチキャスト配信部212は、無線端末3へ、選択された帯域候補データをマルチキャストデータとして配信する。マルチキャストデータは、無線インタフェース201から、無線を介して、無線端末3へ送信される。尚、マルチキャスト配信部212は、帯域候補データの中で、マルチキャストエントリメッセージによって必要となったチャネルのみを配信する。
【0055】
ユニキャスト通信部213は、無線端末3へ、配信サーバ1から受信したユニキャストデータを配信する。ユニキャストデータは、無線インタフェース201から、無線を介して、無線端末3へ送信される。ユニキャスト用データは、配信サーバ1からのユニキャスト用データに限られず、他のサーバや端末との間のデータも全て含むものである。
【0056】
ユニキャスト帯域検出部214は、ユニキャスト通信部213から、無線端末への下りのユニキャストデータのユニキャスト通信利用帯域を検出する。検出されたユニキャスト通信利用帯域は、帯域候補選択部211と、ユニキャスト帯域通知部215と、配信制御部216とへ出力される。
【0057】
ユニキャスト帯域通知部215は、複数の無線端末に対する下りのユニキャスト通信利用帯域の単位時間の平均帯域Tの値を、配信サーバ1へ送信する。
【0058】
配信制御部216は、マルチキャスト配信部212に対して、無線端末への下りの全通信帯域に対するユニキャスト通信利用帯域の割合が、所定閾値以上となった場合、帯域候補データを送信しないように制御する。
【0059】
マルチキャストエントリ受信部217は、無線端末3から、マルチキャストエントリメッセージを受信する。マルチキャスト配信が可能である旨を、マルチキャスト配信部212へ出力する。
【0060】
マルチキャストエントリ送信部218は、配信サーバ1へ、マルチキャストエントリメッセージを送信する。
【0061】
[無線端末3]
無線端末3は、無線インタフェース300と、ユニキャストデータを通信するユニキャスト通信部301と、マルチキャストデータを受信するマルチキャスト受信部302と、周辺基地局通知部311と、基地局切替部312とを有する。これら機能構成部は、無線端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0062】
周辺基地局通知部311は、無線インタフェース300を介して、各基地局2から受信する電波の受信信号強度RSSIを計測する。ここで、受信信号強度が所定閾値以上となる基地局を、通信可能な周辺基地局と認識する。そして、周辺基地局通知部311は、現在通信中の基地局の基地局識別子と、通信可能な周辺基地局の基地局識別子とを、基地局2を介して、配信サーバ1へ送信する。周辺基地局通知部311は、通信可能な周辺基地局の基地局識別子を定期的に送信することも好ましい。
【0063】
尚、所定閾値は、基地局2からマルチキャストの制御データとして受信されるものであってもよい。また、無線端末が過去(例えば数日程度)に再生可能な複数のRSSIを記憶しており、当該RSSIの最低値よりも所定値dBだけマージンを持つ値を、所定閾値としてもよい。
【0064】
基地局切替部312は、配信サーバ1から、ハンドオーバ先となる基地局識別子を受信する。そして、基地局切替部312は、その基地局識別子に基づく基地局2へ、現在通信中の基地局から切り替える。
【0065】
図5は、本発明におけるシーケンス図である。
【0066】
(S501)配信サーバ1や他のサーバ又は端末は、ユニキャストデータを、基地局2と通信している(図4のユニキャスト通信部114と同様)。
(S502)基地局2は、複数の無線端末3へ、ユニキャストデータを配信する(図4のユニキャスト通信部213と同様)。このとき、基地局2は、下りのユニキャスト通信利用帯域の平均帯域Tを検出する(図4のユニキャスト帯域検出部214と同様)。
(S503)基地局2は、ユニキャスト通信利用帯域の平均帯域Tを、配信サーバ1へ送信する(図4のユニキャスト帯域通知部215と同様)。
(S504)無線端末3が、ユーザ操作に基づいて、マルチキャストエントリメッセージを基地局2へ送信する(図4のマルチキャストエントリ受信部217と同様)。これに対し、基地局2は、マルチキャストエントリメッセージを配信サーバ1へ送信する(図4のマルチキャストエントリ送信部218と同様)。
(S505)配信サーバ1は、無線端末3へ配信すべきデータを異なるエンコーダによって符号化した複数の帯域候補データを、基地局毎に及び/又は無線環境種別毎に生成する(図4の帯域候補生成部111と同様)。
(S506)配信サーバ1は、当該基地局から無線端末への下りの全通信帯域Pから、ユニキャスト通信利用帯域の平均帯域Tを差引いたマルチキャスト配信可能帯域Aに基づいて、複数の帯域候補データの組合せを選択する(図4の帯域候補選択部112と同様)。
(S507)配信サーバ1は、選択された複数の帯域候補データ全てを、当該基地局2へ配信する(図4の帯域候補配信部113と同様)。
(S508)基地局2は、配信サーバ1から受信した複数の帯域候補データの中から、当該無線端末3との間の通信利用帯域に応じて、いずれか帯域候補データを選択する(図4の帯域候補選択部211と同様)。
(S509)基地局2は、選択された帯域候補データを、無線端末3へ送信する(図4のマルチキャスト配信部212と同様)。また、基地局2は、選択された帯域候補データの識別子を配信サーバ1へ送信する。これによって、配信サーバ1は、基地局2毎に、どの程度の容量のマルチキャストデータを送信しているかを知ることができる。
【0067】
(S510)このとき、無線端末3は、基地局2A以外に存在する周辺基地局(2B)をサーチする。具体的には、各基地局から受信する電波の受信信号強度RSSIを計測する。ここで、受信信号強度が所定閾値以上となる基地局を、通信可能な周辺基地局と認識する。尚、所定閾値は、基地局2からマルチキャストの制御データとして受信されるものであってもよい。
【0068】
(S511)無線端末2は、現在通信中の基地局の基地局識別子と、通信可能な周辺基地局の基地局識別子とを、基地局2を介して、配信サーバ1へ送信する。
【0069】
(S512)配信サーバ1は、無線端末3について通信可能な周辺基地局の中で、最もマルチキャストデータの容量が大きい帯域候補データを配信する基地局2Bにおける基地局識別子を、基地局2Aを介して当該無線端末3へ送信する。
【0070】
(S512)無線端末3は、その基地局識別子に基づく基地局2Bへ、現在通信中の基地局2Aから切り替える。
【0071】
以上、詳細に説明したように、本発明の配信方法及びシステムによれば、配信サーバが配信するマルチキャスト/ユニキャストのデータを、基地局が無線端末へ送信する際に、無線端末が、大容量の帯域候補データを配信している周辺基地局へ切り替えることができる。尚、配信サーバが、マルチキャスト/ユニキャスト通信を制御することなく、基地局が無線端末との間の無線ネットワークの通信状態に応じて制御することができる。これによって、基地局毎に、異なる通信利用帯域を効率良く用いたマルチキャスト配信が可能となる。
【0072】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0073】
1 配信サーバ
101 コンテンツ蓄積部
102 事業者網インタフェース
111 帯域候補生成部
112 帯域候補選択部
113 帯域候補配信部
114 ユニキャスト通信部
115 基地局指示部
2 基地局
201 無線インタフェース
202 事業者網インタフェース
211 帯域候補選択部
212 マルチキャスト配信部
213 ユニキャスト通信部
214 ユニキャスト帯域検出部
215 ユニキャスト帯域通知部
216 配信制御部
217 マルチキャストエントリ受信部
218 マルチキャストエントリ送信部
3 無線端末
300 無線インタフェース
301 ユニキャスト通信部
302 マルチキャスト受信部
311 周辺基地局通知部
312 基地局切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを配信する配信サーバと、無線端末と、前記配信サーバから受信した前記データを前記無線端末へ配信する複数の基地局とを有するシステムにおけるデータ配信方法において、
前記基地局は、前記無線端末へ、マルチキャストデータとユニキャストデータとを混在して配信することができ、
前記配信サーバが、前記無線端末へ配信すべきデータを異なるエンコーダによって符号化した複数の帯域候補データを生成する第1のステップと、
前記配信サーバが、前記基地局毎に応じた複数の前記帯域候補データ全てを、当該基地局へ配信する第2のステップと、
複数の基地局が、前記配信サーバから受信した複数の帯域候補データの中から、当該無線端末との間の通信利用帯域に応じて選択したいずれか1つの帯域候補データを、前記無線端末へ配信すると共に、その帯域候補データの識別子を前記配信サーバへ通知する第3のステップと、
前記無線端末が、現在通信中の基地局の基地局識別子と、通信可能な周辺基地局の基地局識別子とを、前記基地局を介して、前記配信サーバへ送信する第4のステップと、
前記配信サーバが、前記無線端末について通信可能な周辺基地局の中で、最もマルチキャストデータの容量が大きい帯域候補データを配信する基地局における基地局識別子を、前記無線端末へ送信する第5のステップと、
前記無線端末が、前記配信サーバから受信した前記基地局識別子に基づく前記基地局へ、現在通信中の基地局から切り替える第6のステップと
を有することを特徴とするデータ配信方法。
【請求項2】
前記無線端末は、基地局から受信する電波の受信信号強度(RSSI(Received Signal Strength Indicator))を計測しており、
第5のステップについて、前記受信信号強度が所定閾値以上となる基地局を、前記周辺基地局とすることを特徴とする請求項1に記載のデータ配信方法。
【請求項3】
前記配信サーバは、前記受信信号強度に基づく前記所定閾値を、前記無線端末へ予め送信することを特徴とする請求項1又は2に記載のデータ配信方法。
【請求項4】
第1のステップの前段について、前記無線端末が、マルチキャストエントリメッセージを、前記基地局を介して前記配信サーバへ送信し、
第2のステップについて、前記配信サーバは、前記マルチキャストエントリメッセージを受信した前記基地局に対してのみ、複数の前記帯域候補データを配信する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のデータ配信方法。
【請求項5】
第3のステップについて、前記基地局は、
前記無線端末への下りのユニキャストデータのユニキャスト通信利用帯域を検出し、
前記無線端末への下りの全通信帯域に対する前記ユニキャスト通信利用帯域の割合が、所定閾値以上となった場合、前記帯域候補データを送信しないように制御する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のデータ配信方法。
【請求項6】
前記基地局は、複数の無線端末に対する下りのユニキャスト通信利用帯域における単位時間の平均帯域Tの値を、前記配信サーバへ送信し、
前記配信サーバは、
当該基地局から無線端末への下りの全通信帯域Pから、前記ユニキャスト通信利用帯域の平均帯域Tを差引いたマルチキャスト配信可能帯域Aに基づいて、複数の帯域候補データの組合せを選択する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のデータ配信方法。
【請求項7】
データを配信する配信サーバと、無線端末と、前記配信サーバから受信した前記データを前記無線端末へ配信する複数の基地局とを有するデータ配信システムにおいて、
前記配信サーバは、
前記無線端末へ配信すべきデータを異なるエンコーダによって符号化した複数の帯域候補データを生成する帯域候補生成手段と、
前記基地局毎に応じた複数の前記帯域候補データ全てを、当該基地局へ配信する帯域候補配信手段と
前記無線端末について通信可能な周辺基地局の中で、最もマルチキャストデータの容量が大きい帯域候補データを配信する基地局における基地局識別子を、前記無線端末へ送信する基地局指示手段と
を有し、
前記基地局は、
前記配信サーバから受信した複数の帯域候補データの中から、当該無線端末との間の通信状態に応じていずれか1つの帯域候補データを選択する帯域候補選択手段と、
前記無線端末へ、選択された1つの前記帯域候補データをマルチキャストデータとして配信すると共に、その帯域候補データの識別子を前記配信サーバへ通知するマルチキャスト配信手段と、
前記無線端末へ、ユニキャストデータを配信するユニキャスト通信手段と
を有し、
前記無線端末は、
現在通信中の基地局の基地局識別子と、通信可能な周辺基地局の基地局識別子とを、前記基地局を介して、前記配信サーバへ送信する周辺基地局通知手段と、
前記配信サーバから受信した前記基地局識別子に基づく前記基地局へ、現在通信中の基地局から切り替える基地局切替手段と
を有することを特徴とするデータ配信システム。
【請求項8】
前記無線端末は、無線インタフェースによって、基地局から受信する電波の受信信号強度(RSSI)を計測することができ、
前記周辺基地局通知手段は、前記受信信号強度が所定閾値以上となる基地局を、前記周辺基地局とする
ことを特徴とする請求項7に記載のデータ配信システム。
【請求項9】
前記配信サーバは、前記受信信号強度に基づく前記所定閾値を、前記無線端末へ予め送信することを特徴とする請求項7又は8に記載のデータ配信システム。
【請求項10】
前記基地局は、
前記無線端末から、マルチキャストエントリメッセージを受信するマルチキャストエントリ受信手段と、
前記配信サーバへ、マルチキャストエントリメッセージを送信するマルチキャストエントリ送信手段と
を有し、
前記配信サーバにおける前記帯域候補配信手段は、前記マルチキャストエントリメッセージを受信した前記基地局に対してのみ、前記帯域候補データを配信する
ことを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載のデータ配信システム。
【請求項11】
前記基地局は、
前記ユニキャスト通信手段から、前記無線端末への下りのユニキャストデータのユニキャスト通信利用帯域を検出するユニキャスト帯域検出手段と、
前記マルチキャスト配信手段に対して、前記無線端末への下りの全通信帯域に対する前記ユニキャスト通信利用帯域の割合が、所定閾値以上となった場合、前記帯域候補データを送信しないように制御する配信制御手段と
を有することを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載のデータ配信システム。
【請求項12】
前記基地局は、複数の無線端末に対する下りのユニキャスト通信利用帯域における単位時間の平均帯域Tの値を、前記配信サーバへ送信するユニキャスト帯域通知手段を更に有し、
前記配信サーバは、前記帯域候補配信手段に対して、当該基地局から無線端末への下りの全通信帯域Pから、前記ユニキャスト通信利用帯域の平均帯域Tを差引いたマルチキャスト配信可能帯域Aに基づいて、複数の帯域候補データの組合せを選択する帯域候補選択手段を更に有することを特徴とする請求項7から11のいずれか1項に記載のデータ配信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−78025(P2013−78025A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217396(P2011−217396)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】