説明

マルチギャップ型回転電機

【課題】片持ち支持されるロータ3の耐遠心力強度を高めることにより、開放端側の広がりを抑制できるマルチギャップ型モータを提供する。
【解決手段】ロータアームによって片持ち支持されるロータ3は、円環状のコアシートを積層して構成され、且つ、径方向の内周面および外周面に突極構造を持つ積層コア8と、この積層コア8の軸方向の他端側に配置される円環状の端面コア9とを有し、リベット10によりロータアーム2に固定されている。端面コア9は、鉄で形成される軟磁性部9aとステンレス鋼で形成される非磁性部9bとを溶接等により接合して構成され、且つ、板厚がロータアームの板厚以上に設けられている。
上記の構成では、ヤング率が鉄並みの端面コア9をロータ3の開放端側に配置しているので、回転時に発生する遠心力によってロータ3の開放端側が径方向の外側へ広がることを抑制でき、ロータ3の耐遠心力強度を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両用の電動機や発電機に用いて好適なマルチギャップ型回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、特許文献1に記載されたダブルステータ型モータがある。
このダブルステータ型モータは、電磁鋼板を使用したコアシートの積層体である積層コアの内外周にそれぞれ永久磁石を装着して構成される環状のロータと、このロータの径方向内側にギャップを有して配置される内ステータと、ロータの径方向外側にギャップを有して配置される外ステータとを有し、ロータと内外ステータとの間で径方向に二面ギャップを形成することで高出力密度を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−282331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のモータに使用されるロータは、積層コアの両側にそれぞれアルミ製のコア押さえプレートを配置し、一方のコア押さえプレートの外側(反積層コア側)に配置される連結円盤に対し、スタッドボルトによって締結固定される。
すなわち、上記のロータは、一方のコア押さえプレートが配置される軸方向の一端側が連結円盤に締結され、他方のコア押さえプレートが配置される軸方向の他端側が開放端となる片持ち構造になっている。この片持ち構造のロータは、回転時に発生する遠心力によって積層コアの開放端側が径方向の外側へ広がり易くなる。これに対し、特許文献1のロータは、積層コアの開放端側にアルミ製のコア押さえプレートを配置しているが、ヤング率(縦弾性係数)の小さいアルミ材では、開放端側の広がりを十分に抑えることが出来ない。
【0005】
また、積層コアの両側に配置されるコア押さえプレートがアルミ製であるため、スタッドボルトによる軸方向の締結力(押圧力)が積層コアに対して十分に働かず、積層面間の摩擦力による保持力が弱くなる。このため、ロータとしての剛性が低下して、内外の永久磁石に働く遠心力を一手に受ける積層コアが高回転の遠心力には耐えられないという問題がある。なお、特許文献1の実施例には、車両のホイール内に組み込んで直接ホイールを駆動するホイールインモータの一例が記載されているが、このホイールインモータの使用回転速度は1000〜2000rpm程度である。すなわち、特許文献1に開示された従来のロータ構造では、低回転用モータに使用することは可能でも、例えば、7000rpm当たりまで使用されるエンジン直結型モータのような高回転用には採用できない。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、片持ち支持されるロータの耐遠心力強度を高めることにより、開放端側の広がりを抑制できるマルチギャップ型回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1の発明)
本発明のマルチギャップ型回転電機は、回転軸に連結されるロータアームと、軸方向の一端側がロータアームに片持ち支持される円環状のロータと、このロータの径方向外側にギャップを有して配置される外ステータと、ロータの径方向内側にギャップを有して配置される内ステータとを有している。ロータは、軟磁性材から成るコアシートを積層して構成される積層コアと、この積層コアの軸方向の他端側に配置される端面コアとを有し、ロータアームと端面コアとの間に積層コアを挟み込み、結合部材を軸方向に挿通してロータアームに押圧固定される。
【0007】
積層コアは、径方向の内周面および外周面に突極構造を持つ複数のセグメントを有し、この複数のセグメントが径方向の内外に設けられる内側ブリッジと外側ブリッジとによって環状に連結されると共に、周方向に隣合うセグメント同士の間で内側ブリッジと外側ブリッジとの間にセグメント間空間部が形成され、且つ、複数のセグメントには、それぞれ結合部材を軸方向に通すための結合孔が形成され、端面コアは、周方向にセグメントに対応して配置され、且つ、径方向の内周面および外周面に突極構造を有する軟磁性部と、周方向にセグメント間空間部に対応して配置される非磁性部とが設けられ、軟磁性部を形成する鉄と非磁性部を形成するステンレス鋼とが一体に接合されて、外ステータおよび内ステータとの間で積層コアと協働して磁束の授受を行うことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、片持ち支持されるロータの開放端側(軸方向の他端側)に端面コアを配置し、その端面コアが軟磁性部を形成する鉄と非磁性部を形成するステンレス鋼とを接合して構成される。つまり、端面コアが鉄並みのヤング率を有するため、容易に弾性変形することはなく、回転時に発生する遠心力によってロータの開放端側が径方向の外側へ広がることを抑制でき、ロータの耐遠心力強度を向上できる。
また、本発明の端面コアは、特許文献1に記載されたアルミ製のコア押さえプレートと比較してヤング率が大きいため、容易に弾性変形することはなく、端面コアとロータアームとの間で積層コアに働く結合部材の締結力(軸方向の押圧力)が低下することはない。これにより、結合部材の締結力によって積層コアの積層面間に十分な摩擦力が働くため、内側ブリッジと外側ブリッジとで繋がれている剛性の低いコアシートでも外径側へ飛び出すことはない。
【0009】
さらに、本発明の端面コアは、周方向に積層コアのセグメントに対応して配置される軟磁性部と、周方向に積層コアのセグメント間空間部に対応して配置される非磁性部とが設けられ、且つ、軟磁性部の内周面および外周面に突極構造を有している。これにより、端面コアは、遠心力によってロータの開放端側が外側へ広がることを抑制する補強材としての役目を果たすだけでなく、内外ステータとの間で積層コアと協働して磁束の授受を行うことができるので、より高出力化を図ることができる。
【0010】
(請求項2の発明)
本発明のマルチギャップ型回転電機は、回転軸に連結されるロータアームと、軸方向の一端側がロータアームに片持ち支持される円環状のロータと、このロータの径方向外側にギャップを有して配置される外ステータと、ロータの径方向内側にギャップを有して配置される内ステータとを有している。ロータは、軟磁性材から成るコアシートを積層して構成される積層コアと、この積層コアの軸方向の他端側に配置される端面コアとを有し、ロータアームと端面コアとの間に積層コアを挟み込み、結合部材を軸方向に挿通してロータアームに押圧固定される。
【0011】
積層コアは、径方向の内周面および外周面に突極構造を持つ複数のセグメントを有し、この複数のセグメントが径方向の内外に設けられる内側ブリッジと外側ブリッジとによって環状に連結されると共に、周方向に隣合うセグメント同士の間で内側ブリッジと外側ブリッジとの間にセグメント間空間部が形成され、且つ、複数のセグメントには、それぞれ結合部材を軸方向に通すための結合孔が形成される。
端面コアは、周方向にセグメントに対応して配置され、径方向の内周面および外周面に突極構造を有する軟磁性部と、周方向にセグメント間空間部に対応して配置される非磁性部とが設けられて、外ステータおよび内ステータとの間で積層コアと協働して磁束の授受を行う。軟磁性部と非磁性部は、全体が鉄で形成された端面コアに対して非磁性部に対応する部位を非磁性化する改質処理、または、全体がステンレス鋼で形成された端面コアに対して軟磁性部に対応する部位を磁性化する改質処理によって形成される。
【0012】
本発明によれば、片持ち支持されるロータの開放端側(軸方向の他端側)に端面コアを配置し、その端面コアがヤング率の高い鉄またはステンレス鋼で形成されているので、容易に弾性変形することはなく、回転時に発生する遠心力によってロータの開放端側が径方向の外側へ広がることを抑制でき、ロータの耐遠心力強度を向上できる。
また、本発明の端面コアは、特許文献1に記載されたアルミ製のコア押さえプレートと比較してヤング率が大きいため、容易に弾性変形することはなく、端面コアとロータアームとの間で積層コアに働く結合部材の締結力(軸方向の押圧力)が低下することはない。これにより、結合部材の締結力によって積層コアの積層面間に十分な摩擦力が働くため、内側ブリッジと外側ブリッジとで繋がれている剛性の低いコアシートでも外径側へ飛び出すことはない。
【0013】
さらに、本発明の端面コアは、周方向に積層コアのセグメントに対応して配置される軟磁性部と、周方向に積層コアのセグメント間空間部に対応して配置される非磁性部とが設けられ、且つ、軟磁性部の内周面および外周面に突極構造を有している。これにより、端面コアは、遠心力によってロータの開放端側が外側へ広がることを抑制する補強材としての役目を果たすだけでなく、内外ステータとの間で積層コアと協働して磁束の授受を行うことができるので、より高出力化を図ることができる。
【0014】
(請求項3の発明)
請求項1または2に記載したマルチギャップ型回転電機において、ロータアームは、端面コアとの間に積層コアを挟み込んでロータを固定するロータ固定部を有し、端面コアの板厚は、ロータ固定部の板厚以上に設定されることを特徴とする。
端面コアの板厚をロータ固定部の板厚と同等もしくはそれ以上に厚く形成することにより、ロータの耐遠心力強度が向上して、遠心力によるロータの開放端側の広がりを防止できる。
【0015】
(請求項4の発明)
請求項1〜3に記載した何れか一つのマルチギャップ型回転電機において、ロータは、コアシートより耐遠心力強度が大きい円環状の中間円盤を積層コアの軸方向中間部に配置したことを特徴とする。
本発明に係る中間円盤は、遠心力に対する強度がコアシートより高い、言い換えると、遠心力に対して径方向の外側へ広がりにくいので、この中間円盤を積層コアの軸方向中央部に配置することにより、積層コアの軸方向中央部が径方向の外側へ太鼓状に膨らむことを抑制できる。
【0016】
(請求項5の発明)
請求項4に記載したマルチギャップ型回転電機において、中間円盤は、非磁性材によって形成され、且つ、端面コアより板厚が薄く形成されていることを特徴とする。
非磁性材である中間円盤を積層コアの軸方向中間部に配置しても磁気回路として働くことはないが、中間円盤を磁性材で形成した場合の漏れ磁束によるトルク低下に比べて、その影響(トルク低下)を小さくできる。
また、片持ち支持されるロータは、開放端に配置される端面コアが遠心力による広がりの影響を一番受けやすく、端面コアとロータアームとの中間部に位置する中間円盤はその影響が小さい。このため、中間円盤の板厚を端面コアの板厚より薄く設定することが可能であり、積層コアの軸方向中間部に非磁性材の中間円盤を配置してもトルク低下の影響を小さくできる。
【0017】
(請求項6の発明)
請求項1〜5に記載した何れか一つのマルチギャップ型回転電機において、積層コアは、複数のセグメントにそれぞれ結合孔が2箇所以上形成され、その2箇所以上の結合孔にそれぞれ結合部材が挿通されてロータアームに固定されることを特徴とする。
例えば、セグメントの中央部に結合孔を1箇所だけ形成して、その結合孔に挿通される結合部材によってセグメントを固定する構成では、結合孔の位置がセグメントの中央部から周方向にずれて形成された時に、セグメントの周方向両側で結合部材の質量アンバランスが生じ、結合部材を中心にセグメントが回動して径方向の外側へ飛び出す恐れがある。これに対し、各セグメントに結合孔を2箇所以上形成して、各結合孔にそれぞれ結合部材を挿通して固定する、つまり、1セグメントに対し2箇所以上で固定する構成であれば、上記の様に、結合部材を中心にセグメントが回動することはないので、セグメントの飛び出しを防止でき、強固に固定できる。
【0018】
(請求項7の発明)
請求項1〜6に記載した何れか一つのマルチギャップ型回転電機において、端面コアと軸方向に対向して配置される側面ステータを有し、端面コアは、側面ステータと対向する軟磁性部の軸方向端面に突極構造を有することを特徴とする。
上記の構成によれば、ロータと内外ステータとの間に形成される磁気ギャップに加えて、端面コアと側面ステータとの間に軸方向の磁気ギャップを形成できる。つまり、磁気ギャップを3面に形成できるので、請求項1または2に係る発明に対して更なるトルクアップが可能である。
【0019】
(請求項8の発明)
請求項1〜7に記載した何れか一つのマルチギャップ型回転電機において、結合部材は、軟磁性材によって形成されるボルトまたはリベットであることを特徴とする。
上記の構成によれば、セグメントに形成された結合孔に軟磁性材で形成されたボルトまたはリベットを挿通することにより、結合孔が軟磁性材で埋まるため、結合孔によって磁束の流れが阻害されることはない。
【0020】
(請求項9の発明)
請求項1〜8に記載した何れか一つのマルチギャップ型回転電機において、セグメント間空間部に周方向に着磁された永久磁石が挿入され、且つ、周方向に隣合う一方の永久磁石と他方の永久磁石は、周方向に対向する磁極の極性が同一となる向きに配置されることを特徴とする。
セグメント間空間部に永久磁石を挿入することにより、リラクタンストルクに加えてマグネットトルクを利用できるため、トルクアップを図ることができる。
また、永久磁石が挿入されたセグメント間空間部は、軸方向の一端がロータアームによって閉じられ、軸方向の他端が端面コアによって閉じられている。つまり、軸方向の両端が閉じた閉空間となるため、保護カバー等を設けなくても、セグメント間空間部に挿入された永久磁石が軸方向に飛び出すことはない。
【0021】
(請求項10の発明)
請求項9に記載したマルチギャップ型回転電機において、結合孔がセグメント毎に2箇所ずつ形成され、セグメント内で隣合う2箇所の結合孔同士のピッチをP1、周方向に隣合うセグメント同士でセグメント間空間部を跨いで隣合う2箇所の結合孔同士のピッチをP2とすると、
P1<P2…………………(1)
上記(1)式が成立することを特徴とする。
この構成によれば、結合孔に挿通される結合部材により積層コアが軸方向に押圧された状態で固定されても、ピッチP2の方がピッチP1より大きいので、セグメント間空間部に挿入された永久磁石への押圧力は緩和されて、永久磁石へのダメージが低減する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のマルチギャップ型回転電機を適用したモータの断面図である。
【図2】実施例1に係るロータの断面図である。
【図3】実施例1に係る積層コアの平面図である。
【図4】実施例1に係るロータの斜視図である。
【図5】実施例1に係る端面コアの平面図である。
【図6】(a)図5に示す端面コアの一部(A部)を示す拡大図、(b)端面コアのB−B断面図である(実施例1)。
【図7】実施例2に係るロータの断面図である。
【図8】実施例2に係るロータの斜視図である。
【図9】実施例2に係る中間円盤の平面図である。
【図10】実施例3に係るモータの断面図である。
【図11】実施例3に係るロータの平面図である。
【図12】(a)図11に示す端面コアの一部(C部)を示す拡大図、(b)同端面コアのD−D断面図である(実施例3)。
【図13】実施例4に係るロータの平面図である。
【図14】永久磁石を装着したロータの一部を示す斜視図である(実施例4)。
【図15】永久磁石を装着したロータの一部を示す斜視図である(実施例4)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を実施するための形態を以下の実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
実施例1に記載する本発明のマルチギャップ型回転電機は、例えば、ハイブリッド車のエンジンと変速機との間に配設されるエンジン直結型モータである。
このモータ1は、図1に示す様に、軸方向の一端側がロータアーム2に片持ち支持される円環状のロータ3と、このロータ3の径方向外側にギャップを有して配置される外ステータ4と、ロータ3の径方向内側にギャップを有して配置される内ステータ5とを有し、エンジンフレーム6に固定されるモータハウジング7の内部に収容される。
ロータアーム2は、例えば、非磁性SUS材によって形成され、径方向の中央部に円筒ボス部2aを有し、この円筒ボス部2aが図示しないクラッチを介してエンジンのクランク軸に連結される。
【0025】
外ステータ4は、複数の外スロット(図示せず)を有する外側コア4aと、この外側コア4aに巻装される外側コイル4bとで構成される。外スロットは、外側コア4aの内周面に開口して周方向に等間隔に形成されている。外側コイル4bは、例えば、星型結線される三相コイルによって形成され、図示しないインバータに接続される。
内ステータ5は、複数の内スロット(図示せず)を有する内側コア5aと、この内側コア5aに巻装される内側コイル5bとで構成される。内スロットは、内側コア5aの外周面に開口して周方向に等間隔に形成されている。内側コイル5bは、例えば、星型結線される三相コイルによって形成され、図示しないインバータに接続される。なお、外側コイル4bと内側コイル5bは、図示しない内外渡り線を介して互いの相コイル同士を直列に接続する構成でも良い。
【0026】
ロータ3は、図2に示す様に、軟磁性材(例えば電磁鋼板)から成る円環状のコアシートを積層して構成され、且つ、径方向の内周面および外周面に突極構造を持つ積層コア8と、この積層コア8の軸方向の他端側に配置される円環状の端面コア9とを有し、本発明の結合部材であるリベット10によりロータアーム2の外周端部に固定されている。
結合部材は、リベット10の代わりにボルトを使用することもできる。なお、以下の説明では、リベット10によってロータ3が固定されるロータアーム2の外周端部をロータ固定部2bと呼ぶ。
積層コア8は、図3に示す様に、径方向の内外に設けられる内側ブリッジ11と外側ブリッジ12とによって環状に連結される複数のセグメント13を有し、周方向に隣合うセグメント13同士の間で内側ブリッジ11と外側ブリッジ12との間にセグメント間空間部14が形成されている。なお、図3は積層コア8の軸方向端面の平面形状を示しているが、これは、1枚1枚のコアシートの平面形状と同一であることは言うまでもない。
【0027】
積層コア8のセグメント13は、周方向の中央部が両端部より径方向の厚みが小さく形成されている。すなわち、セグメント13の内周面には、周方向の中央部に外径側へ凹む内周凹部13aが形成され、内側ブリッジ11に繋がる両端部が突極13bとして形成される。セグメント13の外周面には、周方向の中央部に内径側へ凹む外周凹部13cが形成され、外側ブリッジ12に繋がる両端部が突極13dとして形成される。
また、各セグメント13には、それぞれリベット10を軸方向に通すための結合孔13eが2箇所形成されている。ここで、図3に示す様に、セグメント13内で隣合う2箇所の結合孔13e同士のピッチをP1、周方向に隣合うセグメント13同士でセグメント間空間部14を跨いで隣合う2箇所の結合孔13e同士のピッチをP2とすると、
P1<P2…………………(1)
上記(1)式が成立している。
【0028】
端面コア9は、図4に示す様に、積層コア8に対し各セグメント13の周方向位置に合わせて配置される軟磁性部9aと、各セグメント間空間部14の周方向位置に合わせて配置される非磁性部9bとを有している。
軟磁性部9aは、図5に示す様に、径方向の内周面および外周面にそれぞれ積層コア8の突極構造に対応した凹凸形状(本発明の突極構造)が形成されている。つまり、軟磁性部9aは、図6(a)に示す様に、径方向の内周面および外周面において、それぞれ周方向の中央部にセグメント13の内周凹部13a、外周凹部13cに対応する凹部9a1、9a2が形成され、周方向の両端部にセグメント13の突極13b、13dに対応する凸部9a3、9a4が形成されている。なお、図6(a)は、図5に示すA部の拡大図である。
【0029】
非磁性部9bは、径方向の幅が軟磁性部9aの両端部と同一寸法であり、周方向に隣合う軟磁性部9aと軟磁性部9aとの間に所定の幅を有して配置される。この軟磁性部9aと非磁性部9bとを有する端面コア9は、軟磁性部9aが鉄、非磁性部9bがステンレス鋼によって形成され、両者がレーザ溶接等により接合されて一体構造に形成されている。 また、端面コア9の軟磁性部9aには、図6(b)に示す様に、リベット10を通すための結合孔9cが板厚方向(図示上下方向)に貫通して形成されている。この結合孔9cは、積層コア8のセグメント13に形成された結合孔13eと軸方向に連通している。
【0030】
さらに、端面コア9の板厚(軸方向の寸法)は、ロータ固定部2bの板厚と同等もしくはそれ以上の厚さに設定されている。すなわち、図2に示す様に、ロータ固定部2bの板厚をt1、端面コア9の板厚をt2とした時に、下記(2)式が成立する。
t1≦t2…………………(2)
上記のロータ3は、端面コア9の結合孔9cおよびセグメント13の結合孔13eにリベット10を通して、ロータ固定部2bに形成された結合孔より突き出るリベット10の先端部を押し潰してかしめることにより、軸方向に押圧力が加わった状態でロータ固定部2bに固定される。
【0031】
(実施例1の作用および効果)
実施例1に記載したモータ1は、ロータアーム2に片持ち支持されるロータ3の開放端側(軸方向の他端側)に端面コア9を配置し、この端面コア9が軟磁性部9aを形成する鉄と非磁性部9bを形成するステンレス鋼とを接合して形成される。つまり、端面コア9は、鉄並みのヤング率を有し、且つ、端面コア9の板厚t2がロータ固定部2bの板厚t1以上に設定されるので、容易に弾性変形することはない。この端面コア9をロータ3の開放端側に配置することで、回転時に発生する遠心力によってロータ3の開放端側が径方向の外側へ広がることを抑制でき、ロータ3の耐遠心力強度を向上できる。
また、本実施例の端面コア9は、特許文献1に記載されたアルミ製のコア押さえプレートと比較してヤング率が大きいため、端面コア9とロータ固定部2bとの間で積層コア8に働くリベット10の締結力(軸方向の押圧力)が低下することはない。これにより、積層コア8の積層面間に十分な摩擦力が働くため、内側ブリッジ11と外側ブリッジ12とで繋がれている剛性の低いコアシートでも外径側へ飛び出すことはない。
【0032】
さらに、端面コア9は、周方向に積層コア8の各セグメント13に対応して配置される軟磁性部9aと、周方向に積層コア8の各セグメント間空間部14に対応して配置される非磁性部9bとが設けられ、且つ、軟磁性部9aには、径方向の内周面および外周面にそれぞれ突極構造を成す凹凸形状(本発明の突極構造)が形成されている。これにより、端面コア9は、遠心力によってロータ3の開放端側が外側へ広がることを抑制する補強材としての役目を果たすだけでなく、外ステータ4および内ステータ5との間で積層コア8と協働して磁束の授受を行うこともできるため、より高出力化を図ることができる。
【0033】
また、積層コア8は、各セグメント13にそれぞれ結合孔13eが2箇所形成されており、1つのセグメント13を2本のリベット10で固定しているので、リベット10を中心にセグメント13が回動することはなく、セグメント13の浮き上がりを防止して強固に固定できる。さらに、リベット10を軟磁性材で形成すれば、セグメント13に形成された結合孔13eが軟磁性材で埋まるため、結合孔13eによって磁束の流れが阻害されることもない。
【0034】
(実施例2)
この実施例2は、図7、図8に示す様に、積層コア8の軸方向中間部に中間円盤15を配置した一例である。図7は積層コア8に中間円盤15を挟み込んだロータ3の断面図であり、図8は同ロータ3の斜視図である。
中間円盤15は、図9に示す様に、内外周に凹凸形状の無いリング体であり、リベット10を通すための結合孔15aだけが複数箇所に形成されている。この中間円盤15は、セグメント間空間部14が形成されていないため、耐遠心力強度は積層コア8のコアシートより高く設定されている。また、中間円盤15は、例えば、ステンレス鋼等の非磁性金属によって形成され、板厚が端面コア9より薄く形成されている(図7参照)。
この実施例2に係る構成では、耐遠心力強度がコアシートより高い中間円盤15を積層コア8の軸方向中間部に挟み込んでいるので、積層コア8の軸方向中央部が径方向の外側へ太鼓状に膨らむことを抑制できる。
【0035】
また、中間円盤15を非磁性材で形成することで磁気回路として働くことはないが、中間円盤15を磁性材で形成した場合の漏れ磁束によるトルク低下に比べて、その影響(トルク低下)は小さくできる。
さらに、ロータアーム2に片持ち支持されるロータ3は、開放端に配置される端面コア9が遠心力による広がりの影響を一番受けやすく、端面コア9とロータ固定部2bとの中間部に位置する中間円盤15はその影響が小さい。このため、中間円盤15の板厚を端面コア9の板厚より薄く設定することが可能であり、積層コア8の軸方向中間部に非磁性材の中間円盤15を配置してもトルク低下の影響を小さくできる。
【0036】
(実施例3)
この実施例3は、ロータ3の軸方向他端側にギャップを有して側面ステータ16を配置した一例である。
側面ステータ16は、例えば、図10に示す様に、外側コア4aと内側コア5aとを連結する側面コア16aと、この側面コア16aに巻装される側面コイル16bとで構成される。側面コア16aは、径方向の外周側が外側コア4aの軸方向他端側に連接され、径方向の内周側が内側コア5aの軸方向他端側に連接されて、端面コア9の軸方向他端面と対向するロータ対向面を有し、このロータ対向面に側面コイル16bを収容する側面スロット(図示せず)が形成されている。側面スロットは、外側コア4aに形成される外スロットと、内側コア5aに形成される内スロットとを連通して形成される。
側面コイル16bは、例えば、図10に示す様に、外側コイル4bと内側コイル5bとを断面コの字状(図10では逆コの字状)に連結して形成される。
【0037】
端面コア9は、図11に示す様に、実施例1で説明した軟磁性部9aと非磁性部9bとを円環状に接合して構成される。軟磁性部9aは、図12(a)に示す様に、径方向の内周面および外周面にそれぞれ積層コア8の突極構造に対応した凹凸形状を有している。なお、図12(a)は、図11に示すC部の拡大図である。
また、側面コア16aと軸方向に対向する端面コア9の軸方向端面には、図12(b)に示す様に、軟磁性部9aの周方向中央部に板厚方向へ凹む凹部9dが形成され、その凹部9dの図示両外側には、セグメント13の突極位置に対応した凸部9eが形成される。 上記の構成によれば、ロータ3と外ステータ4および内ステータ5との間に形成される磁気ギャップに加えて、端面コア9と側面ステータ16との間に軸方向の磁気ギャップが形成される。つまり、磁気ギャップを3面に形成できるので、実施例1に記載した構成と比較してトルクアップが可能である。
【0038】
(実施例4)
この実施例4は、図13に示す様に、積層コア8のセグメント間空間部14に永久磁石17を挿入した一例である。なお、図13は、ロータ3を端面コア9側から見た軸方向の平面図である。
永久磁石17は、図14に示す様に、中間円盤15によって仕切られたセグメント間空間部14の軸方向一端側と他端側とにそれぞれ挿入され、周方向に着磁されている。また、周方向に隣合う一方の永久磁石17と他方の永久磁石17は、周方向に対向する磁極の極性が同一となる向きに配置されている。なお、図14は、永久磁石17の装着状態を明示するために、積層コア8を省略した状態を図示している。
この実施例4に係るモータ1は、積層コア8のセグメント間空間部14に永久磁石17を挿入することにより、リラクタンストルクに加えてマグネットトルクを利用できるため、更なるトルクアップを図ることができる。
【0039】
また、セグメント間空間部14の一端側に挿入される永久磁石17は、軸方向の一端面がロータ固定部2bに支持され、軸方向の他端面が中間円盤15に支持されている。同様に、セグメント間空間部14の他端側に挿入される永久磁石17は、軸方向の一端面が中間円盤15に支持され、軸方向の他端面が端面コア9に支持されている。つまり、永久磁石17は、軸方向の両端が閉じた閉空間に配置されるため、保護カバー等を設けなくても、永久磁石17がセグメント間空間部14から軸方向に飛び出すことはない。
なお、図14は、積層コア8の軸方向中央部に中間円盤15を配置した構成であるが、図15に示す様に、中間円盤15の無い構成に対しても永久磁石17を使用できることは言うまでもない。
【0040】
(変形例)
実施例1に記載した端面コア9は、軟磁性部9aを形成する鉄と非磁性部9bを形成するステンレス鋼とがレーザ溶接によって接合される構成であるが、軟磁性部9aと非磁性部9bは、例えば、全体が鉄で形成された端面コア9に対して非磁性部9bに対応する部位を非磁性化する改質処理、または、全体がステンレス鋼で形成された端面コア9に対して軟磁性部9aに対応する部位を磁性化する改質処理によって形成することもできる。
また、実施例1に記載した非磁性部9bは、径方向の幅が軟磁性部9aの両端部と同一寸法に形成されているが、軟磁性部9aを形成する鉄と非磁性部9bを形成するステンレス鋼とを溶接等で接合する場合は、溶融部が膨らむことで内外周側にはみ出し、外側コア4aおよび内側コア5aと干渉する恐れが出るため後加工が必要となるが、それを省くために、非磁性部9bを軟磁性部9aより径方向に凹んだ構成にしておくこともできる。
【0041】
実施例1に記載した端面コア9は、遠心力によってロータ3の開放端側が外側へ広がることを抑制する補強材としての役目を果たすだけでなく、外ステータ4および内ステータ5との間で積層コア8と協働して磁束の授受を行うことができるように構成されている。つまり、端面コア9は、軟磁性部9aと非磁性部9bとを有し、且つ、軟磁性部9aに突極構造を設けているが、外ステータ4および内ステータ5との間で磁束の授受を行う機能を省略しても良い。すなわち、端面コア9に代えて、突極構造を持たない単純なリング形状の端面押さえ板を使用することもできる。この端面押さえ板は、遠心力によるロータ3の広がりを抑制する働きを持たせるために、鉄並みのヤング率を有する非磁性金属(例えばステンレス鋼)によって形成することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 モータ(マルチギャップ型回転電機)
2 ロータアーム
2b ロータ固定部
3 ロータ
4 外ステータ
5 内ステータ
8 積層コア
9 端面コア
9a 端面コアの軟磁性部
9b 端面コアの非磁性部
9c 端面コアに形成された結合孔
10 リベット(結合部材)
11 内側ブリッジ
12 外側ブリッジ
13 セグメント
13e セグメントに形成された結合孔
14 セグメント間空間部
15 中間円盤
16 側面ステータ
17 永久磁石
P1 セグメント内で隣合う2箇所の結合孔同士のピッチ
P2 セグメント間空間部を跨いで隣合う2箇所の結合孔同士のピッチ
t1 ロータ固定部の板厚
t2 端面コアの板厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に連結されるロータアームと、
軸方向の一端側が前記ロータアームに片持ち支持される円環状のロータと、
このロータの径方向外側にギャップを有して配置される外ステータと、
前記ロータの径方向内側にギャップを有して配置される内ステータとを有し、
前記ロータは、軟磁性材から成るコアシートを積層して構成される積層コアと、この積層コアの軸方向の他端側に配置される端面コアとを有し、前記ロータアームと前記端面コアとの間に前記積層コアを挟み込み、結合部材を軸方向に挿通して前記ロータアームに押圧固定されるマルチギャップ型回転電機であって、
前記積層コアは、径方向の内周面および外周面に突極構造を持つ複数のセグメントを有し、この複数のセグメントが径方向の内外に設けられる内側ブリッジと外側ブリッジとによって環状に連結されると共に、周方向に隣合う前記セグメント同士の間で前記内側ブリッジと前記外側ブリッジとの間にセグメント間空間部が形成され、且つ、前記複数のセグメントには、それぞれ前記結合部材を軸方向に通すための結合孔が形成され、
前記端面コアは、周方向に前記セグメントに対応して配置され、且つ、径方向の内周面および外周面に突極構造を有する軟磁性部と、周方向に前記セグメント間空間部に対応して配置される非磁性部とが設けられ、前記軟磁性部を形成する鉄と前記非磁性部を形成するステンレス鋼とが一体に接合されて、前記外ステータおよび前記内ステータとの間で前記積層コアと協働して磁束の授受を行うことを特徴とするマルチギャップ型回転電機。
【請求項2】
回転軸に連結されるロータアームと、
軸方向の一端側が前記ロータアームに片持ち支持される円環状のロータと、
このロータの径方向外側にギャップを有して配置される外ステータと、
前記ロータの径方向内側にギャップを有して配置される内ステータとを有し、
前記ロータは、軟磁性材から成るコアシートを積層して構成される積層コアと、この積層コアの軸方向の他端側に配置される端面コアとを有し、前記ロータアームと前記端面コアとの間に前記積層コアを挟み込み、結合部材を軸方向に挿通して前記ロータアームに押圧固定されるマルチギャップ型回転電機であって、
前記積層コアは、径方向の内周面および外周面に突極構造を持つ複数のセグメントを有し、この複数のセグメントが径方向の内外に設けられる内側ブリッジと外側ブリッジとによって環状に連結されると共に、周方向に隣合う前記セグメント同士の間で前記内側ブリッジと前記外側ブリッジとの間にセグメント間空間部が形成され、且つ、前記複数のセグメントには、それぞれ前記結合部材を軸方向に通すための結合孔が形成され、
前記端面コアは、周方向に前記セグメントに対応して配置され、径方向の内周面および外周面に突極構造を有する軟磁性部と、周方向に前記セグメント間空間部に対応して配置される非磁性部とが設けられて、前記外ステータおよび前記内ステータとの間で前記積層コアと協働して磁束の授受を行い、
前記軟磁性部と前記非磁性部は、全体が鉄で形成された前記端面コアに対して前記非磁性部に対応する部位を非磁性化する改質処理、または、全体がステンレス鋼で形成された前記端面コアに対して前記軟磁性部に対応する部位を磁性化する改質処理によって形成されることを特徴とするマルチギャップ型回転電機。
【請求項3】
請求項1または2に記載したマルチギャップ型回転電機において、
前記ロータアームは、前記端面コアとの間に前記積層コアを挟み込んで前記ロータを固定するロータ固定部を有し、
前記端面コアの板厚は、前記ロータ固定部の板厚以上に設定されることを特徴とするマルチギャップ型回転電機。
【請求項4】
請求項1〜3に記載した何れか一つのマルチギャップ型回転電機において、
前記ロータは、前記コアシートより耐遠心力強度が高い円環状の中間円盤を前記積層コアの軸方向中間部に配置したことを特徴とするマルチギャップ型回転電機。
【請求項5】
請求項4に記載したマルチギャップ型回転電機において、
前記中間円盤は、非磁性材によって形成され、且つ、前記端面コアより板厚が薄く形成されていることを特徴とするマルチギャップ型回転電機。
【請求項6】
請求項1〜5に記載した何れか一つのマルチギャップ型回転電機において、
前記積層コアは、前記複数のセグメントにそれぞれ前記結合孔が2箇所以上形成され、その2箇所以上の前記結合孔にそれぞれ前記結合部材が挿通されて前記ロータアームに固定されることを特徴とするマルチギャップ型回転電機。
【請求項7】
請求項1〜6に記載した何れか一つのマルチギャップ型回転電機において、
前記端面コアと軸方向に対向して配置される側面ステータを有し、
前記端面コアは、前記側面ステータと対向する前記軟磁性部の軸方向端面に突極構造を有することを特徴とするマルチギャップ型回転電機。
【請求項8】
請求項1〜7に記載した何れか一つのマルチギャップ型回転電機において、
前記結合部材は、軟磁性材によって形成されるボルトまたはリベットであることを特徴とするマルチギャップ型回転電機。
【請求項9】
請求項1〜8に記載した何れか一つのマルチギャップ型回転電機において、
前記セグメント間空間部に周方向に着磁された永久磁石が挿入され、且つ、周方向に隣合う一方の永久磁石と他方の永久磁石は、周方向に対向する磁極の極性が同一となる向きに配置されることを特徴とするマルチギャップ型回転電機。
【請求項10】
請求項9に記載したマルチギャップ型回転電機において、
前記結合孔が前記セグメント毎に2箇所ずつ形成され、
前記セグメント内で隣合う2箇所の前記結合孔同士のピッチをP1、
周方向に隣合う前記セグメント同士で前記セグメント間空間部を跨いで隣合う2箇所の前記結合孔同士のピッチをP2とすると、
P1<P2…………………(1)
上記(1)式が成立することを特徴とするマルチギャップ型回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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