説明

マルチセル環境においてアンテナ及び基地局の協調パターンの変化に応じてユーザと協調パターンの組み合わせをスケジュールする方法

【課題】マルチセル環境におけるスケジューリングのための方法及びシステムを提供すること。
【解決手段】一実施形態では、システムは、複数のユーザ端末と、複数のユーザ端末と通信する複数の基地局であって、複数のユーザ端末のサブセットとの送信を協調させるためにどのアンテナがクラスタとして共に動作するかを指定する協調パターンとして、基地局に属する複数のアンテナがグループ化され、さらに、複数のアンテナのうちの異なる組のアンテナが、異なるリソースにおいて共にグループ化されることでユーザの異なるサブセットへの送信を協調させるように、アンテナの組と関連するユーザの組との定義されたペアが、協調パターンの変化に基づいて送信リソースにおいて変化する、複数の基地局と、アンテナのどの組による、どの送信リソース上での、どんな送信レートを用いたサービスに対して、どのユーザ端末をスケジュールすべきかを指定することによって、ユーザ端末との送信をスケジュールする少なくとも1つのスケジューリングアルゴリズムを実行する、少なくとも1つのコントローラとを備える。

【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
[0001]本特許出願は、2008年8月13日に出願された、「A Method of Combined User and Coordination Pattern Scheduling over Varying Antenna and Base−Station Coordination Patterns in a Multi−Cell Environment」と題する、対応する特許仮出願第61/088712号の優先権を主張し、同特許仮出願を参照により組み込む。
【関連出願】
【0002】
[0002]本出願は、本出願と同時に出願された以下の出願に、すなわち、2009年8月10日に出願された、「A Variable Coordination Pattern Approach for Improving Performance in Multi−Cell or Multi−Antenna Environments」と題する、米国特許出願第12/538729号、及び2009年8月10日に出願された、「A Method for Varying Transmit Power Patterns in a Multi−Cell Environment」と題する、米国特許出願第12/538739号に関連する。
【発明の分野】
【0003】
[0003]本発明の実施形態は、マルチセルワイヤレス環境におけるワイヤレス送信の分野に関し、より詳細には、本発明の実施形態は、協調パターン(coordination pattern)を変更する際に、何らかの基準(例えば公平性)に基づいてユーザ端末レートを変更することによって、ワイヤレス通信システムにおいてスケジューリングを行うことに関する。
【発明の背景】
【0004】
セル及びマルチセル及びセルクラスタの動作
[0004]本明細書の目的に即して、「セル」は、1組の(多くの)送信アンテナによってサービスされる地理的エリアを表すために使用される。そのようなアンテナは、1つ又は複数の基地局に存在することができる。それらは、1つの地点に共存することができ、又はセル全域に地理的に分散することができる。それらは、セルの地理的境界には物理的に存在すらしないことがあるが、セル内に物理的に配置される場合がしばしばある。ダウンリンクトラフィックの場合、この1組のアンテナは、信号をセル内のユーザに合同で送信することによって、セル内のユーザ端末にサービスする。送信信号は、単一の共通的な物理層機構によって生成され、制御される。すなわち、与えられた「セル」内では、送信アンテナは協調させられる。そのような共通的な物理層機構は、多くの基地局にわたって分散できるが、共通的な結果を達成するために合同で制御される、多くの処理エンティティによって実施することができる。その機構は、単一の処理エンティティによっても実施することができる。そのような「セル」の古典的な例が、図1に示されている。ここでは、アンテナは、1つの基地局に共存している。図1を参照すると、古典的な六角形セル内のユーザ端末は、「地理的に最も近い」(例えば、コールの中央の)基地局サイトにマッピングされる。この最も近いマッピングは、古典的な六角形パターンをもたらす。例えば、セル1は、単一の基地局BS1における中央の1組の4つのアンテナからなり、ユーザ1、ユーザ2、ユーザ3、及びユーザ4を含むが、それらに限定されない、ユーザのグループをサポートする。この「地理的に最も近い」局というルールは、ユーザが任意の基地局(又はアンテナ)から取得する受信信号エネルギーが、その局からの距離につれて、どの局についても同じ数学的関数によって、単調に減少するモデルにおいては、道理にかなっている。一般に、シャドウイング(shadowing)及び他の影響がある場合、セル境界は、そのような規則的な構造に一致しない。ユーザを基地局に1対1でマッピングする固定的な古典的セル構造を有する、この古典的なマルチセルシナリオでは、単一の基地局が、そのセルに割り当てられたユーザにのみ送信する。
【0005】
[0005]近隣基地局が、同じ送信リソースを使用した場合(例えば、同時に同じ周波数帯域上で信号を送信した場合)、セル内のユーザが、他のセルからの干渉を経験することがよく知られている。そのような「セル間干渉」(ICI:inter−cell interference)は、セルのエッジ付近では、非常に強烈になることがあり、したがって、そのようなエリアにおけるユーザに対する性能を制限する。これは、どのセルラ構造にもともなう古典的な問題である。例えば、図1のユーザ4及びユーザ5は、受信信号レベルに対して高い干渉レベルを経験する。対照的に、ユーザ1及びユーザ2などのユーザは、あまり干渉を経験せず、マルチセル環境からあまり影響を受けずにいることができる。それにも関わらず、すべてのユーザは、ICIを経験する。
【0006】
[0006]ユーザ1及びユーザ2などのユーザが、ユーザ4及びユーザ5などのあまり好ましくないチャネル状態を経験しているユーザと、公平性(又は所望の方式)の面でバランスが取れることを保証するために、比例公平スケジューリングアルゴリズム(proportionally fair scheduling algorithm)などのスケジューリングアルゴリズムを使用することができる。そのようなメカニズムを用いず、システムが、セル毎の最大スループット(maximum per cell throughput)で送信することを単純に望む場合、システムは、ユーザ4及びユーザ5などの他のユーザに深刻な不利益を負わせながら、最良のチャネル状態を有するユーザにのみ単純に送信する。
【0007】
[0007]ICIの悪影響を軽減するために、セルが送信を協調させると仮定することができる。それを行う1つのそのような方法は、近隣基地局が同時に同じ周波数を使用しないように保証することである。これは、セルラシステムの古典的な周波数再使用手法をもたらす。別の方法は、近隣セルが、同時に同じ周波数を使用することを可能にしながらも、低いICIをもたらす信号を送信のために選択することである。それを行う1つ方法は、単一の基礎的な物理層機構に、近隣基地局に属するアンテナを合同で制御させることである。極端な場合、1つの機構が、すべての局にわたるすべての送信アンテナを制御し、システムは、本質的に、共通のMIMO(ダウンリンク)ブロードキャスト(共用)チャネルを有する単一の分散アンテナシステム(distributed antenna system)に帰着する。この場合、セル1内のユーザ4などのユーザは、実際には、すべてのアンテナから来る信号によってサービスされる。そのような手法では、ICIは、著しく低減させることができ、線形ゼロ強制ビーム形成(Linear Zero−Forced Beamforming)などのマルチユーザMIMO技法によって、ゼロにさえ設定することができる。実際には、そのような極端な場合は、「セル」の境界は意味をもたず、セル境界を越えてICIを生じさせる非協調的な信号はもはや存在しない。しかし、そのようなシステムは非実用的である。
【0008】
[0008]図2に示されるような部分的協調が、より実用的なことがある。図2を参照すると、グループをなすセル(このケースでは3つの近隣セル)が、互いに協調することができる。図示されるように、セル1とセル2とセル3が送信を協調させ、セル4とセル5とセル6が送信を協調させ、セル7とセル8が送信を協調させ、セル10は他と協調することなく動作する。3つのセルからなるこれらのグループの各々は、単一の「セル」として、又は「クラスタ」と呼ばれるものとして動作する。基地局間のそのような協調が正しく行われる場合、ユーザ4及びユーザ5などのユーザは、もはや近隣クラスタとの境界にいないので、そのようなユーザには、より僅かな干渉項と、おそらくはより良好な信号項とをともに経験させることができる。そのようなユーザは、今では、3つのリモートロケーションにわたる最大12個のアンテナからの送信を使用する選択肢を有する。したがって、システムはより効率的になる。加えて、セル1とセル2とセル3からなるクラスタ内のユーザのスケジューリングは、一緒に行うことができる。
【0009】
[0009]しかし、協調は部分的であるので、そのようなシステムは、本質的には、ユーザがあまり好ましくない状態を経験する境界を常に有する。これは、2つの協調クラスタの境界にいる、図2のユーザ6及びユーザ7などのユーザの場合である。
【発明の概要】
【0010】
[0010]本明細書では、マルチセル環境におけるスケジューリングのための方法及びシステムが開示される。一実施形態では、システムは、複数のユーザ端末と、複数のユーザ端末と通信する複数の基地局であって、複数のユーザ端末のサブセットとの送信を協調させるためにどのアンテナがクラスタとして共に動作するかを指定する協調パターンとして、基地局に属する複数のアンテナがグループ化され、さらに、複数のアンテナのうちの異なる組のアンテナが、異なるリソースにおいて共にグループ化されることでユーザの異なるサブセットへの送信を協調させるように、アンテナの組と関連するユーザの組との定義されたペアが、協調パターンの変化に基づいて送信リソースにおいて変化する、複数の基地局と、アンテナのどの組による、どの送信リソース上での、どんな送信レートを用いたサービスに対して、どのユーザ端末をスケジュールすべきかを指定することによって、ユーザ端末との送信をスケジュールする少なくとも1つのスケジューリングアルゴリズムを実行する、少なくとも1つのコントローラとを備える。
【0011】
[0011]本発明は、以下で与えられる詳細な説明から、また本発明の様々な実施形態についての添付の図面からより十分に理解されるが、それらは、本発明を特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきではなく、もっぱら説明及び理解のためのものと解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】セルの中央の基地局にマッピングされる古典的な六角形セル内のユーザ端末を示す図である。
【図2】グループをなすセル間での協調を有するマルチセル環境として構成されたワイヤレス通信システムの図である。
【図3】図2に示されるものとは協調パターンが異なる、グループをなすセル間での協調を有するマルチセルケースを示す図である。
【図4】図2の協調パターンで使用できる構成スケジューラ(constituent scheduler)を示す図である。
【図5】図3の協調パターンで使用できる構成スケジューラを示す図である。
【図6】図4及び図5の構成スケジューラ間で情報が共有され、いくつかのスケジューラが(異なる送信リソース上に存在する)異なる協調パターン上で同じ(共通の)ユーザにサービスするところを示す図である。
【図7】各構成スケジューラが独自のスケジューリングを実行するために必要な情報のいくつかが中央に保存される通信システムを示す図である。
【図8】中央リポジトリを使用するスケジューリングプロセスの一実施形態のフロー図である。
【図9】どの協調パターンを使用するかを決定する協調コントローラを含む通信システムの一実施形態の図である。
【図10】スケジューリングプロセスの別の実施形態のフロー図である。
【図11】複数のクラスタを扱う(に対して動作する)スケジューリングエンティティを使用する通信システムのブロック図である。
【図12】本明細書で説明されるコントローラの一実施形態のブロック図である。
【本発明の詳細な説明】
【0013】
[0012]マルチセルシステム内でユーザスケジューリングアルゴリズムを動作させるための方法及び通信システムが説明される。対象とするマルチセルシステムでは、ユーザの異なるサブセットに送信するために、アンテナの異なるサブセットが使用され、各サブセット内のアンテナは、送信中に協調させることができ、サブセットの定義は、異なる送信リソースにおいて変更することができる。アンテナのサブセットと、そのようなアンテナによってサービスされるユーザの関連サブセットは、アンテナ−ユーザペア(antenna−user pair)と呼ばれるものを構成する。与えられた送信リソースに対するそのようなペアの全体が、協調パターンを構成する。そのようなパターンが、送信リソース上に、例えば、与えられた時間において、及び/又は与えられた周波数において、及び/又は与えられたトーンにおいて、及び/又は符号分割多元接続(CDMA)システムにおける異なる符号において存在する。すべての実施形態において、システムは、送信リソースにともない協調パターンを変更し、その結果、少なくとも2つのそのようなパターンが存在する。例えば、協調パターンは、2008年8月13日に出願された、米国特許仮出願第61/088714号の非仮出願である、2009年8月10日に出願された、「A Variable Coordination Pattern Approach for Improving Performance in Multi−Cell or Multi−Antenna Environments」と題する、米国特許出願第12/538729号で説明されているように、時間において(例えば、周期的)、及び/若しくは周波数において(例えば、ある周波数上ではあるパターンのみ)、又は両方の何らかの組み合わせにおいて、或いは送信リソースの任意の単位において、変更することができる。協調パターンのそのような変更は、時間及び/又は周波数において、知られた及び/又は所定の制御された方式で起こることができる。本明細書で説明されるユーザ端末スケジューリングアルゴリズムの動作は、協調パターンのそのような変更を特に利用するようなシステムとともに使用するためのものである。様々な実施形態におけるその新規な実施は、変化する協調パターンを有するシステムの物理的な実施形態にも直接的に結び付けられる。例えば、スケジューリングアルゴリズムは、(すべての情報を知っている)単一のグローバルエンティティが行うのと等価なスケジューリング決定を行うのに十分な情報を交換する、多くの構成スケジューリングエンティティに分割することができる。一実施形態では、スケジューリングアルゴリズムは、適応的な方式で、どのリソース上ではどの協調パターンを使用すべきであるかも指示(決定)する。
【0014】
[0013]本明細書で開示される技法は、マルチセル協調トポロジを変更する通信システムとともに動作するように使用される、合同又は準合同のスケジューリングアルゴリズムを含む。スケジューリングアルゴリズム自体が、マルチセルシステム協調トポロジを変更する方法に影響を与えることもできる。
【0015】
[0014]以下の説明では、本発明のより完全な説明を提供するために、多くの詳細が説明される。しかし、本発明がこれらの特定の詳細なしでも実施できることは、当業者には明らかであろう。他の例では、よく知られた構造及びデバイスは、本発明を曖昧にしないために、詳細にではなく、ブロック図形式で示される。
【0016】
[0015]以下の詳細な説明のいくつかの部分は、コンピュータメモリ内のデータビットに対する操作のアルゴリズム及びシンボル表現によって提示される。これらのアルゴリズムによる説明及び表現は、自分の仕事の内容を他の当業者に最も効果的に伝えるために、データ処理分野の当業者によって使用される手段である。アルゴリズムは、ここでは、また一般に、所望の結果に到達する自己矛盾のないステップの系列であると考えられる。ステップは、物理的量の物理的操作を必要とするステップである。必ずしも必要ではないが、通常は、これらの量は、保存し、転送し、組み合わせ、比較し、及び他の方法で操作することが可能な、電気的又は磁気的な信号の形態をとる。主として一般的な慣習上の理由で、これらの信号をビット、値、要素、シンボル、文字、項、又は数などと呼ぶことが便利であると分かることがある。
【0017】
[0016]しかし、これらの用語及び類似の用語のすべては、適切な物理的量に関連付けられ、これらの量に付された単に便利なラベルであるにすぎないことに留意されたい。別途具体的に述べられない限り、以下の説明から明らかなように、説明の全体において、「処理する」、又は「計算する」、又は「算定する」、又は「決定する」、又は「表示する」などの用語を利用した説明は、コンピュータシステムのレジスタ及びメモリ内の物理的(電子的)量として表現されるデータを操作及び変形して、コンピュータシステムのメモリ若しくはレジスタ内の、又は他のそのような情報記憶デバイス、伝送デバイス、若しくは表示デバイス内の物理的量として同様に表現される他のデータにする、コンピュータシステム又は同様の電子的なコンピューティングデバイスのアクション及びプロセスを指すことが理解される。
【0018】
[0017]本発明は、本明細書の動作を実行するための装置にも関する。この装置は、必要とされる目的のために特別に構成することができ、又はコンピュータに保存されたコンピュータプログラムによって選択的に活動化又は再構成される汎用コンピュータを含むことができる。そのようなコンピュータプログラムは、フロッピディスク、光ディスク、CD−ROM、磁気光ディスクを含む任意のタイプのディスク、リードオンリメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気若しくは光カード、又は電子的命令を保存するのに適した任意のタイプの媒体などの、しかしそれらに限定されない、コンピュータ可読記憶媒体に保存することができ、各々は、コンピュータシステムバスに結合される。
【0019】
[0018]本明細書で提示されるアルゴリズム及び表示は、特定のコンピュータ又は他の装置のいずれにも、本質的に関係しない。本明細書の教示に従ったプログラムとともに、様々な汎用システムを使用することができ、又は必要とされる方法ステップを実行するために、より専門的な装置を構成することが便利であると分かることもある。様々なこれらのシステムに必要とされる構造は、以下の説明から明らかとなる。加えて、本発明は、特定のプログラミング言語のいずれかに関連して説明されない。本明細書で説明される本発明の教示を実施するために、様々なプログラミング言語が使用できることが理解されよう。
【0020】
[0019]機械可読媒体は、機械(例えばコンピュータ)によって可読な形式で、情報を保存又は伝送するための任意の機構を含む。例えば、機械可読媒体は、リードオンリメモリ(「ROM」)、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイスなどを含む。
【0021】
マルチセル環境におけるクラスタ、並びにユーザ及び協調パターンスケジューリング
[0020]本発明の実施形態は、アンテナの協調を指定するパターン、又は等価的に協調する基地局若しくは分散アンテナシステムを有する「セル」構造、又はセルの協調パターンが、送信リソースにおいて、制御された方式で変更される、ワイヤレスマルチセルシステムのためのユーザスケジューリングの方法及び動作を含む。そのようなリソースの例は、時間及び/又は周波数のスロットを含む。そのようなシステムは、2009年8月10日に出願された、「A Variable Coordination Pattern Approach for Improving Performance in Multi−Cell or Multi−Antenna Environments」と題する、米国特許出願第12/538729号でより詳細に説明されている。そのようなシステムは、基地局からなるクラスタから構成され、それぞれのクラスタ内では、ユーザ端末との送信のために、基地局が互いに協調又は協力する。クラスタは、協調パターンで指定される。一実施形態では、通信システムは、ユーザが、時間(又は他の送信リソース)において、異なる干渉レベルを経験できるように、協調パターンを変更し、その結果、あるレベルが他のレベルよりも好ましくなる。より具体的には、複数のセルにわたって送信を協調させ、そのような協調パターンを変更することは、協調パターンが変化しないシステムにおけるエッジユーザに起こるような、高い干渉レベルによる永続的な不利益を、ユーザがこうむらないようにする上で助けとなることができる。
【0022】
[0021]使用できる協調パターンの2つの例は、図2及び図3に示されるパターンである。陰影が同じセルは、送信を協調させる。すなわち、これらのセルに含まれるアンテナは、協調するアンテナからなる1つのサブセットを構成する。図2では、ユーザ「ユーザ4」及び「ユーザ5」は、協調するセル1とセル2とセル3からなるクラスタの中央にいる。対照的に、「ユーザ6」は、このクラスタのエッジにいる。セル1、セル2、及びセル3内のすべてのユーザは、これらのセル内のアンテナによって定義されるアンテナサブセットによってサービスされる、ユーザサブセットを形成する。図2ではまた、「ユーザ7」は、協調するセル4とセル5とセル6からなるクラスタのエッジにいる。このクラスタは、別のアンテナサブセットと、別のユーザサブセットを定義する。図3では、ユーザ「ユーザ6」及び「ユーザ7」は、今では、セル3とセル4とセル5から構成される、セルからなる異なる協調クラスタの中央付近にいる。この場合、今では、ユーザ4及びユーザ5などの他のユーザは、セル1とセル2から構成されるクラスタのエッジにいる。したがって、このシステムでは、ユーザ4及びユーザ5は、図3のパターンの下でよりも、図2のパターンの下でのほうが、一般により好ましい干渉レベルを有することを期待することができる。ユーザ「ユーザ6」及び「ユーザ7」については、それとは反対のことが言える。異なる送信リソース上で、例えば、異なる時間スロット及び/又は周波数スロット上で、複数のそのようなパターンを使用することによって(例えば、図2はある周波数上で使用され、図3は他の周波数上で使用される)、すべてのユーザに対して、性能を大きく高めることができる。これは、図1において最初に「セルエッジ」ユーザであったユーザに特に当てはまる。
【0023】
[0022]今のところ、2009年8月10日に出願された、「A Variable Coordination Pattern Approach for Improving Performance in Multi−Cell or Multi−Antenna Environments」と題する、米国特許出願第12/538729号で開示された発明は、ユーザが、複数のパターンによってサービスされることを可能にする。例えば、図3のクラスタパターンが有効な場合に限って、ユーザ6及びユーザ7がサービスされるように制限することは不可能ではない(又は好ましい)。それらは、(チャネル又は他の基準のランダムな変化により)他のクラスタパターン(例えば、図2のパターン又は他の任意のパターン)の場合にサービスされるほうが有利であることを見出すこともある。しかし、このシステムを機能させるには、ユーザが、多くの協調パターン及び送信リソースにわたる多くの機会、及びサービスを受けるインスタンスを有することに鑑みて、どのユーザが、どのクラスタパターンにおいて、いつ、どのようなレートでスケジュールされるかを決定するシステムを実施する必要がある。
ユーザ及び協調パターンスケジューリング
【0024】
[0023]ワイヤレスシステム内のすべてのユーザにサービスするには、またそのようなユーザに効率的及び/又は公平な方式でサービスするには、利用可能な送信リソースを介していつユーザに送信すべきかを決定することが必要であり、及び/又は有益である場合がしばしばある。例えば、リソースが時間のスロットである場合、各スロットにおいて、どの1つ又は複数のユーザにサービスすべきかの決定が行われる。同様に、リソースが周波数の帯域又はトーンである場合、各トーン上又は各帯域内において、システムは、サービスすべきユーザの異なるサブセットを決定することができる。これには、もちろん、公平で許容可能と見なされる方式で、又はシステムの目標に従って、そのようなリソースをユーザ間に分配することが必要とされる。しかし、スケジューリングからさらなる利益を得ることができる。例えば、「ユーザダイバーシティ(user diversity)」と呼ばれるものを利用することによって、利益を得ることができ、それによって、そうすることが有利である場合に(例えば、チャネル状態の変化が与えられた場合に)、ユーザがスケジュールされる。この動作は、スケジューリングアルゴリズムを実行するスケジューラによって実行され、多くのワイヤレスシステムに適用される。
【0025】
[0024]本発明の実施形態は、ワイヤレスマルチセルシステムの、アンテナの協調、又は等価的に協調する基地局若しくは分散アンテナシステムを有する「セル」構造、又はセルの協調パターンが、送信リソースにおいて、制御された方式で変更される、ワイヤレスシステムのクラスに焦点を合わせる。そのようなリソースは、例えば、時間スロット及び/又は周波数帯域若しくはトーンに関して定義することができる。ここでは、パターンにそのような変更があり、効率的なスケジューラの動作及び設計は、単純な(固定された)単一のセル構造又は単一の協調パターンを有するシステムの明白又は自明な拡張ではない。そのような固定されたシステムでは、与えられたユーザは、1つのセルによってのみサービスされ、又は1組の協調するアンテナによってのみサービスされ、又は1つのクラスタによってのみサービスされる。このユーザにサービスする機会は、その単一のセル、又は協調する1組のアンテナ、又は単一のクラスタから利用可能な送信リソースに限定される。したがって、各セル、協調する1組のアンテナ(CSoAs:coordinated set of antennas)、又はクラスタが、このユーザに関して、他のセル/CSoAs/クラスタとは独立に動作する、独自のスケジューリングアルゴリズムをもてば十分である。そのような各アルゴリズムは、よく知られた方式で動作することができる。しかし、複数のパターンによってユーザにサービスできる場合、各パターン上の各クラスタに関する独立のアルゴリズムの使用は、非常に非効率的になることがある。ユーザは、複数の送信リソースにおいて、複数のセル/CSoAs/クラスタのメンバになる。その場合、システムは、CSoAsとユーザの組からなる複数のペア(又はセルとユーザの組からなる複数のペア、又はクラスタとユーザの組からなる複数のペア)を有し、そのようなユーザの組は交わる(共通のメンバを有する)。簡潔にするため、組のそのようなペアは、本明細書では、単純に「アンテナ−ユーザペア」と呼ばれる。各ペアにおいてユーザがスケジュールされる場合にバランスを取るには、セル/CSoAs/クラスタを越えた、またリソース及び送信機会を越えた、スケジューラ間の何らかの協調を必要とする。
【0026】
[0025]本明細書で説明されるシステムは、可変協調パターンシステムのためのスケジューリングを実行するために、(1つ又は複数の)スケジューリングアルゴリズムを実行する、1つ以上のスケジューラを含む。複数の協調パターンにわたって合同(独立でない)方式で動作するスケジューリングアルゴリズムを実行するための方法及び構造。
【0027】
[0026]いくつかの実施形態では、単一の効果的なグローバルスケジューリングアルゴリズムは、アンテナ−ユーザ関連付けペア(又は関連付けセル−ユーザペア、又は関連付けクラスタ−ユーザペア)の各々に焦点を当てた、より小さな構成スケジューリングアルゴリズムから構成することができる。グローバルアルゴリズムとして効果的に動作するために、これらの構成スケジューラは、合同又は準合同で動作するのに十分な情報を互いの間で渡し、共有する。いくつかの実施形態では、そのような「十分な情報」は、どのユーザがスケジュールされたか、及びそのようなユーザが所定の時間間隔にわたって経験した合計レート又は平均レートからなる。そのような十分な情報は、構成スケジューラの合同動作が、すべての必要な情報を有する単一の処理エンティティによって実施される単一の(グローバル)合同スケジューラと同じスケジューリング決定を行うことを可能にすることができる。
【0028】
[0027]一実施形態では、構成スケジューリングアルゴリズムが実行される方法は、システムがユーザに対するアンテナの協調パターンを変更する方法にリンクされる。すなわち、構成スケジューリングアルゴリズムは、与えられたアンテナ−ユーザ関連付けペア若しくはグループに、又は与えられた送信リソース上に存在するペアに結び付けられる。
【0029】
[0028]別の実施形態では、グローバルスケジューリングアルゴリズムは、与えられた送信リソースにおいて(例えば、与えられた時間及び周波数において)どの協調パターンを使用するかを決定することができ、したがって、(例えば、時間及び周波数に応じて)いつ、どの構成スケジューラを動作させるかを指示する。
【0030】
[0029]また別の実施形態では、グローバル中央スケジューリングアルゴリズムが、送信リソースの与えられた組(又は系列)(例えば、時間インスタンス又は周波数インスタンスの組又は系列)について、すべてのユーザ、すべてのアンテナを検査し、いつ、どのアンテナがどのユーザ端末に伝送できるかについての制約に従って、ユーザ端末をスケジュールする。この場合、中央エンティティが、スケジューリング決定を行う。
【0031】
公平スケジューリングの例
[0030]一実施形態では、(構成又はグローバルに関わらず)スケジューラは、どのユーザ端末に、どの送信リソース上で、どんなレートで送信すべきかを選択するために、スケジューリングアルゴリズムを実行する。与えられたリソースに関して、ユーザは、あるアンテナ−ユーザペアのメンバであり、アンテナ−ユーザペアは、このリソース上で、どのアンテナ/セル/クラスタが、そのユーザにサービスするかを指定する。スケジューリングアルゴリズムは、ユーザが送信リソースに対する公平なアクセスを与えられることを保証する。公平性は、ある基準(例えば、比例公平レート、ユーザ毎の最小レート(minimum per user rate)の最大化など)に関して決定される。当業者は、ユーザにサービスするために使用できるすべての可能なリソースにわたってアンテナ−ユーザペアが固定されるシステムに対して使用される場合の、そのようなアルゴリズムについて精通している。スケジューラがその下で動作する基準は、様々な基準のうちの1つとすることができ、必ずしも「公平基準」である必要がないことも強調されるべきである。基準は、例えば、コスト、収益、アプリケーション要件などの理由から、あるユーザに他のユーザよりも大きなレートを与えようと試みる、意図的に差別化されたサービスに基づいた基準とすることができる。
【0032】
[0031]「公平基準」を満たすため、スケジューラは、意図した方式で動作させるために、どんなレートで、いつユーザがスケジュールされたかについて追跡する。ユーザが単一のアンテナ−ユーザペアにのみ関連付けられる場合、そのような各アンテナ−ユーザペアは、このペア内のユーザのみを扱う、独自の独立したスケジューリングアルゴリズムをもてば十分である。これは、例えば、固定されたセル構造において、又は固定されたクラスタ構造を有するクラスタシステムにおいて起こる。本発明で考察されるシステムでは、ユーザは、異なるセル/CSoAs/クラスタ構成と、異なるスケジューラによってサービスされる。この場合、各スケジューラは、与えられたアンテナ−ユーザペアについてスケジューラがスケジュールするレート及びユーザのみを追跡するだけでは十分でない。
【0033】
[0032]言及したように、本発明の一実施形態は、多くのタイプのスケジューラを使用することができる。一実施形態では、スケジューラは、加重和レート基準(weighted sum rate criterion)
【数1】


を最大化するように、(セル又はセルクラスタ内の)ユーザをスケジュールすることを試み、ここで、R(k)は、ユーザkがサービスを受けるべき(又は受けている)平均レートであり、w(k)は、w(k)≧0であるような重みである。もちろん、システムの動作中にわたって、達成された値R(k)からなるベクトルは、w(k)、物理層、及びスケジューラによって影響を受ける。したがって、これらの値はさらに、時間とともに変化する関数とすることができ、すなわち、R(k)は、R(k)とすることができ、「t」が、時間「t」における値を決定する。
【0034】
[0033]一実施形態では、重みの選択は、オフラインで決定される。別の実施形態では、重みは、レートの比例公平分配と呼ばれるものを、スケジューラが各ユーザに与えるように選択され、レートが達成できるものに比例する。そのようなスケジューラは、比例公平スケジューラ(PFS:Proportionally Fair Scheduler)と呼ばれ、当技術分野でよく知られている。例えば、D.Tse及びP.Viswanath、Fundamentals of Wireless Communications、Cambridge University Press、Cambridge、2005年を参照されたい。そのような一実施形態では、PFSを近似的に達成するように重みを選択するために、第jのスケジューリングイベントにおいて、
【数2】


のように重みを選択することができ、ここで、
【数3】


は、第jのスケジューリングイベントまでにユーザが受け取るレートの推定値である(「j」は「t」に類似しているが、スケジューリングインスタンスを単位とする)。一実施形態では、推定は、過去にスケジュールされたイベントに基づいて行われる。一実施形態では、推定値は、その時点「j」までにユーザが受け取る平均レートである。別の実施形態では、推定値は、加重平均レート(例えば、時間を遡った指数加重)である。所望の方式で動作するシステムの場合、推定値は、ユーザがそのユーザにサービスするすべての可能なリソースにわたって経験する平均レートを反映すべきである。
【0035】
[0034]第jのスケジューリングイベントにおいてアンテナ−ユーザペア当たり1人のユーザにのみサービスするシステムでは、スケジューラは、重みが与えられた場合、加重メトリックに基づいて、スケジューラが各ユーザにサービスできるレートと、どのユーザにサービスすべきかを決定する。例えば、ユーザのチャネル状態情報又は信号対雑音比若しくは信号対干渉及び雑音比に基づいて、第jのスケジューリングイベントにおいて、ユーザkが単独でスケジュールされた場合にユーザkに送信されるレートを、レートZ(k)とすることができると決定されたと仮定する。その後、スケジューラは、第jのインターバルにおいてスケジュールされる加重和レートを最大化するために、以下の式
【数4】


を最大化するユーザ「k」によって決定されるような、ユーザ「k」を選択しようと試みる。この実施形態では、ユーザに対する重みは、この(又は1つの)スケジューラのアンテナ−ユーザペアだけでなく、すべての協調パターンにわたるユーザのスケジュールされたレートについての情報を使用して決定される。
【0036】
[0035]与えられた送信機会において、2以上のユーザにサービスできるシステムでは、サービスすべきユーザのサブセットの決定が行われる。ユーザ端末のサブセットは、Ωで表される。したがって、Zは、今では、k及びΩの関数、すなわち、Z(k,Ω)である。一実施形態では、スケジューラによって実行されるスケジューリングアルゴリズムは、第jのインターバルにおいて、
【数5】


を最大化するために、サブセットΩを形成するユーザを選択しようと試みる。MU−MIMOワイヤレス通信システムでは特に、ユーザレートZ(k,Ω)は、送信のためにスケジュールされるユーザのサブセットにしばしば依存することに留意されたい。例えば、線形ゼロ強制(ビーム/ゼロ強制ベクトル及びそれらのベクトルへの電力割り当て)又はダーティペーパ符号化(Dirty Paper Coding)ソリューションは、ユーザのサブセットΩに依存する。そのような手順は、当業者に知られている。この実施形態では、ユーザに対する重みは、この(又は1つの)スケジューラのアンテナ−ユーザペアだけでなく、すべての協調パターンにわたるユーザのスケジュールされたレートについての情報を使用して決定される。
【0037】
[0036]所望の方式で動作するシステムの場合、レート推定値
【数6】


などの情報は、ユーザがそのユーザにサービスしているすべての可能なリソースにわたって経験する平均レートを反映すべきであることを思い出されたい。送信アンテナとユーザが関連付けられた各ペアに対して、単純で非効率的なシステムは、他のペアに対して実行されるスケジューリングアルゴリズムとは独立したスケジューリングアルゴリズムを動作させることができる。ここで、値「w」(PFSなどのスケジューラの場合、値
【数7】


に等しい)は、ユーザjが多くのアンテナ−ユーザペアに共通していることがあるという事実にも関わらず、各スケジューリングアルゴリズムについてのローカルな値であり、スケジューラ毎に独立である(異なっている)。この意味で、スケジューリングアルゴリズムの各々は、ペア毎に独立に動作し、そのペアにおいて表されるユーザダイバーシティ、送信オプションなどを何でも利用する。アンテナとユーザが関連付けられたペアは固定され、ユーザはそのようなただ1つのペアのメンバであるので、これが最も普及しているシステムにおける標準的な動作である。アンテナ−ユーザペアが、送信リソースにおいて変化し、その結果、ユーザが、少なくとも2つ以上のリソースにおいて、少なくとも2つ以上のペアのメンバになる場合、独立した動作は非効率的である。
【0038】
[0037]ユーザが複数のアンテナ−ユーザペア上でサービスされる、本発明が対象とするシステムのためのスケジューリングアルゴリズムは、独立に動作しない。いくつかの実施形態では、独立のスケジューラは、グローバルスケジューリングアルゴリズムを効果的に実施するために一緒に機能する、「構成」スケジューリングアルゴリズムによって取って代わられる。これを行うため、アンテナとユーザの2つの異なるペアが、いくつかの共通ユーザを共有する場合、そのようなペアについてのスケジューラの動作は、依存的になる。一実施形態では、これは、重み「w」の計算を変更することによって、効果的に達成される。具体的には、2つ以上のアンテナ−ユーザペアに共通する(2つ以上の構成スケジューラに共通する)ユーザjの重み「w」は、このユーザをスケジュールできるすべての対応するスケジューラの動作に依存した値である。一実施形態では、おそらくは中央リポジトリに保存され、必要とされる場合に構成スケジューラによって要求される、グローバルな共通値「w」が存在する。この値を意味あるものにするため、中央リポジトリが、すべてのスケジューラにわたる平均レートを反映させて、グローバルな共通値「w」をしかるべく調整及び更新できるように、スケジューラは、それがユーザjにサービスしている平均レートの更新値も送信する。一実施形態では、ユーザjをスケジュールできる構成スケジューラ間で転送される送信を介して共有される、グローバルな共通値「w」が存在する。
【0039】
[0038]別の実施形態では、各スケジューラは、「w」の独自のコピーを有し、ローカルな値は、同じでないことがある。しかし、その値は、互いに依存し、近似的には同じである。このように値を依存的にするために、ユーザjについての情報をスケジューラ間で交換して、重み「w」の個々の値が同じであるか、又は十分に類似している(すなわち、依存的である)ことを保証する。例えば、一実施形態では、すべてのスケジューラが、「w」の独自のローカルコピーを、ユーザjを扱うすべてのスケジューラに送信する。各スケジューラは、「w」の独自のローカルコピーを、他のスケジューラから受信した個々の「w」値すべての(十分に)加重された平均によって置き換える。そのような平均の加重は、各スケジューラが自由に利用できるリソースをどれたけ有するかを反映することができ、より多くのリソースを有するスケジューラの「w」値には、より大きな加重が与えられる。その後、各スケジューラは、多くの送信機会にわたって、この値を使用して、他のスケジューラとは独立して動作し、独自の独立したスケジューリングイベントに基づいて、「w」のローカル測定値を更新し、その後、「w」のローカルコピーが再び交換されて、プロセスが繰り返される。したがって、個々の加重値は、互いを「トラック(track)」しており、十分に近い。
【0040】
[0039]そのようなシステムの興味深い特徴は、スケジューラは、あらゆるスケジューリングイベントについての情報を交換する必要がなく、又はあらゆるスケジューリングイベントについてスケジューラどうし対話する必要がないことである。(PFSを含む多くのスケジューラの場合)スケジューラは、スケジューラがある時間インターバルにわたってユーザにサービスするレートの合計などの情報を交換しさえすれば十分である。
【0041】
構成スケジューラの配備及び相互接続性
[0040]一実施形態では、スケジューリングシステムは、多くの構成スケジューラから構成される。図6は、共通ユーザにサービスし、それらのユーザについての情報([0038]〜[0039]で言及された情報など)を共有する、構成スケジューラを含む通信システムの図である。
【0042】
[0041]図6を参照すると、図4及び図5に示される、2つの協調パターンを有するシステムが示されている。図4は、図2のクラスタに対応する、多くのそのようなスケジューラS1、S2、S3、S4を示している。スケジューラS1は、それぞれセル1、2、3の基地局(BS)1、2、3のためのスケジューラであり、スケジューラS2は、それぞれセル4、5、6の基地局4、5、6のためのスケジューラであり、スケジューラS3は、それぞれセル7、8の基地局7、8のためのスケジューラであり、スケジューラS4は、セル10の基地局10のためのスケジューラである。図5は、図3のクラスタに対応する、多くのそのようなスケジューラS5、S6、S7、S8を示している。スケジューラS5は、それぞれセル3、4、5の基地局3、4、5のためのスケジューラであり、スケジューラS6は、それぞれセル1、2の基地局1、2のためのスケジューラであり、スケジューラS7は、それぞれセル6、10の基地局6、10のためのスケジューラであり、スケジューラS8は、セル8の基地局8のためのスケジューラである。スケジューラと基地局の間の接続は、スケジューラのそれぞれのクラスタにおいてどの基地局が使用されるかを示している。接続は有線通信又は無線通信を介することができることに留意されたい。
【0043】
[0042]図4及び図5によって一緒に示されるように、ユーザ端末は、時間又は周波数において、異なるクラスタのメンバになることができる。例えば、ユーザ5及びユーザ6は、図4によって使用されるチャネルリソース(例えば、周波数及び/又は時間インターバル)においてはスケジューラS1によってスケジュールされ、図5によって使用されるチャネルリソース(例えば、周波数及び/又は時間インターバル)においてはスケジューラS5によってスケジュールされる。これは、対象とする変化するマルチセルシステムの動作を反映している。
【0044】
[0043]再び図6を参照すると、スケジューラの各々は、クラスタ内のユーザ端末とクラスタ内のアンテナの間に存在するチャネルの状態についての情報を提供するチャネル状態情報を、物理層から受け取る。スケジューラは、どのユーザ端末がアンテナの各々に関連付けられるかも知っている。一実施形態では、スケジューラは、ユーザの推定サービスレート
【数8】


、ユーザのレート要件、ユーザの以前にスケジュールされたイベント、及びユーザの割り当てレートのうちの1つ以上についての情報にもアクセスする。
【0045】
[0044]この実施形態では、スケジューラは、合同方式で振る舞い、異なるスケジューラが、異なる送信リソースにおいて、例えば、異なる時間及び/又は周波数インターバルにおいて、同じユーザを扱う。スケジューラは、スケジューリングのために十分な情報を十分に共有することによって、これを行う。図6では、そのような情報の共有は、スケジューラの間の通信のラインによって示されている。より具体的には、スケジューラS1、S6は、セル1及びセル2内の共通ユーザについての情報を共有し、スケジューラS8、S9は、セル3内の共通ユーザについての情報を共有し、スケジューラS2、S5は、セル4及びセル5内の共通ユーザについての情報を共有し、スケジューラS2、S7は、セル6内の共通ユーザについての情報を共有し、スケジューラS2、S8は、セル8内の共通ユーザについての情報を共有し、スケジューラS4、S7は、セル10内の共通ユーザについての情報を共有する。例えば、比例公平スケジューラ(PFS)の場合、スケジューラは、共通ユーザの「w」値を同じに又は近似的に同じに作成するのに十分な情報を共有する。
【0046】
[0045]一実施形態では、スケジューラは、(中央リポジトリを使用することなく)構成スケジューラ間でレート情報の決定に十分な情報を直接的に転送し、そのような情報だけを共有することによって、レート情報を決定する。一実施形態では、共有される唯一の情報は、スケジューラの各々によって与えられるそのようなユーザの合計レート又は平均レートである。例えば、一実施形態では、S1がS5に、またS5がS1に、それが、いつ、どんなレートで、両方のスケジューラに共通するユーザ5及びユーザ6などのユーザ端末をスケジュールしたかを告げれば十分である。他の実施形態では、これは十分すぎる情報であることがある。例えば、w(k)が、上で説明されたような平均レートとして設定される場合、S1がS5に、またS5がS1に、それが所定の数の送信機会にわたってそのようなユーザにサービスした平均レートを告げるだけでも十分である。したがって、各スケジューラは、各協調パターンについての平均を用いて、スケジューラが有するスケジューリング機会数にわたって各平均を計量することができ、各ユーザ端末がすべての協調パターンにわたってサービスされた平均レートを計算することができる。
【0047】
[0046]S1がS5に、またS5がS1に、それが使用した重みを告げれば十分なこともある。一実施形態では、重みは、各スケジューラ(例えばS1)内で、ユーザ端末のスケジューリングに基づいて更新され、他のスケジューラ(例えばS5)がインターバルのたびに見るそのような重みの変更は、ユーザ端末がどのようにサービスされたかに関する情報を提供する。
【0048】
[0047]一実施形態では、与えられたユーザ端末に対する重みは、ユーザ端末がいつ、どんなレートでスケジュールされたかに関する過去の情報を使用して決定される。一実施形態では、ユーザ端末に対するそのような重みは、すべての協調パターン(そのユーザを考慮するすべてのスケジューラ)にわたるユーザ端末のスケジュールされたレートについての情報を使用して決定される。同時に、構成スケジューラ(例えばスケジューラS1)が決定を下す場合、スケジューラが、そのユーザ端末の重み「w」のみを知れば、又は決定すれば十分である。PFSの場合、これはちょうど平均レートの逆数である。
【0049】
[0048]一実施形態では、スケジューラは、ユーザ端末が最大待ち時間でスケジュールされることも保証する。そのような最大待ち時間の値は、アプリケーション依存とすることができる。例えば、音声通信では、xミリ秒のブロック毎に少なくとも1回パケットを送信することが必要であり、「x」はシステムに依存するが、一般には10〜30ミリ秒のオーダである。スケジューラが、(あるレートが与えられた場合に)ユーザがある最大待ち時間でスケジュールされることを保証するという、ある要件も有する場合、S1がS5に、S5がS1に、それがそのようなユーザ端末にサービスした平均レート(又は重み)と、それがそのようなユーザ端末にサービスした最後の時だけを告げれば十分である。
【0050】
[0049]一実施形態では、重みは、他の何らかの基準(例えば、ユーザがいくら支払うか、ユーザが実行しているアプリケーションなど)によって決定される。重みが、他の何らかの1つ又は複数の基準によって決定される場合、スケジューラは、実際には、重みを更新しないこともあるが、その1つ又は複数の基準に従って重みを使用(又は設定)する。
【0051】
[0050]一実施形態では、チャネル状態情報は、構成スケジューラ間で(必ずしも)交換されない。共有される情報は、スケジューリング情報(すなわち、スケジューリングするのに十分な情報)のみに十分に限定される。一実施形態では、各構成スケジューラは、チャネル状態情報を使用して、そのクラスタ内のユーザだけに適用される、可能なスケジュールされるレートZ(k)を、計算される重みとともに計算する。別の構成スケジューラは、そのようなチャネル状態情報を知る必要がなく、スケジュールされる各ユーザのレート(又は合計レート)を知る必要があるだけである。
【0052】
[0051]上で説明されたのと同様のスケジューリング技法及び情報共有要件を使用できる別の実施形態では、合同又は準合同方式で動作するためにスケジューラによって使用される情報は、1つ以上の中央リポジトリロケーションに保存される。一実施形態では、PFSスケジューラの場合、中央リポジトリ内の情報は、ユーザが有するすべての可能な送信リソースにわたって所定の時間までにユーザが受け取った平均レートの大きさを提供にするのに十分でなければならない。したがって、そのような情報は、あらゆるスケジューリングインスタンスと、各インスタンスのレートを含む必要はなく、ユーザが経験した平均レートを決定するのに十分でありさえすればよい。そのような目的のために十分な情報は、各構成スケジューラがユーザに与えた総レートに対する定期的な(非リアルタイムの)更新とすることができる。そのようなものとして、すべてのスケジューラにわたる総レートを決定し、様々な時間インターバルにわたる平均の大きさに変換することができる。
【0053】
[0052]図7は、スケジューリングエンティティS1〜S8のすべてをサービスする中央エンティティ701に単一の中央ロケーションを有するケースを示している。一実施形態では、この中央エンティティ701は、例えば、バックボーンネットワーク(例えばIPベースネットワーク)上に存在する。そのようなバックボーン上での待ち時間は、スケジューリングイベントのインターバルと比較して大きいことがある。一実施形態では、これが当てはまる場合、システムは、第jのインターバルにおいてスケジューリングを行うには、ある時間までの情報で十分であると見なす。例えば、中央エンティティ701は、第jのインターバルにおいて、第(j−K)のインターバルまでの情報しかもたないことがあり得、ここで、Kはある許容可能な数である。このように、システム全体にわたるスケジューリングの協調は、物理層シグナリングにおける完全協調によって必要とされることがあるような厳しい待ち時間要件に対処する必要がない。
【0054】
[0053]スケジューラS1〜S8は、それらが動作するすべてのスロットの前に、又はある規則的な間隔で、中央エンティティ701に更新を要求する。スケジューラS1〜S8はまた、それらが動作するすべてのスロットの後で、又はある規則的な間隔で、中央エンティティ701に更新を送信する。更新がインターバルにわたる場合、しばしば情報は、例えば、そのインターバル中にスケジューラがそのユーザの各々にサービスした合計レート又は平均レートなど、そのインターバル中のそのような情報の合計又は平均を反映しさえすればよい。
【0055】
[0054]スケジューリングエンティティは、他のエンティティを介して情報を送信することもできる。図7に示されるように、スケジューラS6は、スケジューラS1を介して情報を送信し、スケジューラS5は、スケジューラS3を介して情報を送信し、スケジューラS7は、スケジューラS8を介して情報を送信する。これは、以下のことを可能にする。
1.いくつかのエンティティは、必要な情報が中央エンティティに送信される前に、それが必要とする情報を取得する。したがって、実際に、それらのエンティティは、そのような情報を中央リポジトリに要求する必要がない。
2.おそらく、エンティティのバックボーン相互接続が簡素化される。
3.特にすべての情報がエンティティ間で得られる場合、中央エンティティに要求される情報が削減される。例えば、それらのエンティティは、そのユーザのために必要とするすべての情報を、そのようなスケジューラ間交換と、情報の転送を介して、獲得できることがある。
【0056】
[0055]別の実施形態では、中央エンティティからスケジューラに送信される情報は、重みw(k)だけである。中央エンティティは、そのような重みを計算することができる。この計算は、すべてのスケジューラからの十分な量の過去のスケジューリング情報を調べ、その後、構成スケジューラの各々に必要とされる重みだけを送信することによって、行うことができる。
【0057】
[0056]また別の実施形態では、コントローラのサブセットだけが、スケジューリングのために、任意の与えられたユーザ端末のレートを知り、追跡する必要がある。任意のユーザ端末kについて考える。A(k)が、ユーザkをスケジュールできるコントローラ/スケジューラの集合を表すとする。一実施形態では、エンティティの別の集合Bは、異なるユーザ端末についてのスケジューリング情報を保存することに関連する。この実施形態では、集合A(k)と集合Bの和集合のうちの1つ以上のエンティティが、ユーザ端末kのためのスケジューリング情報リポジトリとして使用される。そのようなものとして、「第k」のユーザ端末のためのリポジトリは、与えられた時間において、「第k」のユーザ端末のためのスケジューリングアルゴリズム重みを、そのユーザ端末をスケジュールするコントローラに提供することに加え、「第k」のユーザ端末のスケジュールされたレートを知り、その更新された重みを計算することにも責任を負う。
【0058】
[0057]一実施形態では、リポジトリは、もっぱら集合A(k)に属するユーザ端末kから選択される。リポジトリは、例えば、以下の方法のうちの1つに従って選択することができ、すなわち、(i)ユーザ端末kに最も近いコントローラが、そのユーザのための単一のリポジトリとして選択され、(ii)集合A(k)内のコントローラの各々が、所定の期間、リポジトリとして選択され(例えば、送信機会のある期間にわたるラウンドロビン方式)、(iii)すべてのコントローラが、リポジトリとして選択され、(iv)コントローラのサブセットが、事前にリポジトリとして指定され、集合A(k)内のすべての指定されたリポジトリが、ユーザkのためのリポジトリとして選択される。
【0059】
[0058]図8は、スケジューリングプロセスの一実施形態のフロー図である。プロセスは、ハードウェア(回路、専用ロジックなど)、(汎用コンピュータシステム若しくは専用マシン上で実行される)ソフトウェア、又は両方の組み合わせを含むことができる、処理ロジックによって実行される。スケジューリングプロセスは、スケジューラによって実行される。
【0060】
[0059]図8を参照すると、プロセスは、処理ロジックが、どの協調パターンを使用すべきかについての情報を受け取ることによって開始する(処理ブロック801)。このパターンは、例えば、保存されたパターン決定の系列によって決定されるなど、事前に決定しておくことができる。どの協調パターンを使用すべきかについての情報を受け取った後、パターン内の各協調クラスタ(アンテナ−ユーザペア)について、このアンテナ−ユーザペアにサービスする構成スケジューラ内の処理ロジックは、中央リポジトリ又は他のスケジューラに情報を(まだそれを有していない場合は)要求して、それを獲得し(処理ブロック802)、ローカルスケジューリング決定を行うのに必要な情報を生成する(処理ブロック803)。一実施形態では、必要な情報は、PFSアルゴリズムにおいて重みを決定するための情報を含む。
【0061】
[0060]次に、パターン内の各協調クラスタについて、処理ロジックは、それが1つ又は複数のユーザ端末に対してサポートできるレートの推定値を獲得する(処理ブロック804)。一実施形態では、推定値は、チャネル状態情報からのユーザ端末SINRの推定値を含む。別の実施形態では、推定値は、ユーザの様々なサブセットのためにサポートされるレートの推定値を含む。また別の実施形態では、推定値は、ユーザ端末SINRと、ユーザの様々なサブセットのためにサポートされるレートの両方を含む。
【0062】
[0061]次に、パターン内の各協調クラスタについて、処理ロジックは、スケジュールされるユーザ端末又はユーザ端末のサブセットを選択し(処理ブロック805)、当該スケジューラ及び他のスケジューラが将来のスケジューリングのために必要とする情報を更新及び保存し(処理ブロック806)、必要であれば、(共通ユーザのための重み又は他の変数を更新するのに必要とされる)情報を中央リポジトリに送信する(処理ブロック807)。そのような更新は、先に説明したように、すべてのスケジューリングイベントの後で、又は多くのスケジューリングイベントの後で行うことができる。その後、プロセスは処理ブロック801に推移し、プロセスが繰り返される。
【0063】
[0062]別の実施形態では、中央リポジトリは使用されない。この場合、処理ブロック802は、中央リポジトリから情報を取得せず、例えば、先に図6を説明するときに説明されたように、おそらく多くのリポジトリ及び/又は多くの他の構成スケジューラから取得する。
【0064】
[0063]別の実施形態では、処理ブロック807は、更新情報を中央リポジトリに送信するが、例えば、先に図6を説明するときに説明されたように、おそらく多くのリポジトリ及び/又は多くの他の構成スケジューラに送信する。
【0065】
協調コントローラの実施形態
[0064]一実施形態では、通信システムは、図6に示されるようなものであり、単一の中央エンティティと、本明細書では協調コントローラと呼ばれる付加的なエンティティとを含む。これが図9に示されている。そのようなシステムで使用されるスケジューリングプロセスの別の実施形態のフロー図が、図10に示されている。
【0066】
[0065]図9を参照すると、システムは、協調コントローラ901を含む。協調コントローラ901は、有線接続又は無線接続を介してアクセス可能なメモリ内に保存された、中央に集められたスケジューリング情報902にアクセスする。協調コントローラ901は、PFSであるスケジューラとともに動作する場合、そのような情報(例えば、重み、過去にスケジュールされたレートなど)に対する更新を求めて、構成エンティティに直接的にポーリングを行うこともできる。
【0067】
[0066]一実施形態では、コントローラ901は、スケジューリング履歴が与えられた場合、協調パターンの動作を変更するのが有利かどうかを決定する。例えば、いくつかユーザ端末は必要以上に高いレートを得ており、これはある協調パターンが動作する場合に発生し、一方で、他のユーザは必要とするものを得ていないが、他の協調パターンによってより良いサービスを受けられることが分かった場合、コントローラは、関係するいくつかの送信機会又は割り当てられた送信リソース(例えば、時間スロット及び/又は周波数スロット)を変更すると決定することができる。例えば、ユーザ6及びユーザ7がユーザ4及びユーザ5よりもはるかに高いレート要件を有し、ユーザ1及びユーザ2などのユーザ端末は、どのパターンが使用されたとしても、必要とするレートを得られる場合、コントローラは、図2のパターンよりも図3のパターンをより多く使用すると決定することができる。これは、パターンの数が限られている場合、又はレート要件がPFSの外で外部的に設定される場合に、等しい又は固定された共有パターンを用いた場合には不可能な利点を有することができる。
【0068】
[0067]一実施形態では、コントローラ901は、必要とされる場合は、いくつかの協調パターンをシステムから削除すること、又はシステムに追加することもできる。
【0069】
[0068]図10は、スケジューリングプロセスの一実施形態のフロー図である。プロセスは、ハードウェア(回路、専用ロジックなど)、(汎用コンピュータシステム若しくは専用マシン上で実行される)ソフトウェア、又は両方の組み合わせを含むことができる、処理ロジックによって実行される。スケジューリングプロセスは、スケジューラによって実行される。
【0070】
[0069]図10を参照すると、プロセスは、処理ロジックが、協調パターンを決定することによって開始する(処理ブロック1001)。どの協調パターンを使用すべきかについての情報を受け取った後、パターン内の各協調クラスタについて、スケジューラ内の処理ロジックは、中央リポジトリ又は他のスケジューラに情報を要求して、それを獲得し(処理ブロック1002)、ローカルスケジューリング決定を行うのに必要な情報を生成する(処理ブロック1003)。一実施形態では、必要な情報は、PFSアルゴリズムにおいて重みを指定することができる任意の情報を含む。
【0071】
[0070]次に、パターン内の各協調クラスタについて、処理ロジックは、それが1つ又は複数のユーザ端末をサポートできるレートの推定値を獲得する(処理ブロック1004)。一実施形態では、推定値は、チャネル状態情報からのユーザ端末SINRの推定値を含む。別の実施形態では、推定値は、ユーザの様々なサブセットのためにサポートされるレートの推定値を含む。また別の実施形態では、推定値は、ユーザ端末SINRと、ユーザの様々なサブセットのためにサポートされるレートの両方を含む。
【0072】
[0071]次に、パターン内の各協調クラスタについて、処理ロジックは、スケジュールされるユーザ端末又はユーザ端末のサブセットを選択し(処理ブロック1005)、当該スケジューラ及び他のスケジューラが将来のスケジューリングのために必要とする情報を更新及び保存し(処理ブロック1006)、必要であれば、情報を中央リポジトリに送信する(処理ブロック1007)。その後、プロセスは処理ブロック1001に推移し、プロセスが繰り返される。
【0073】
複数のクラスタのための構成スケジューラ
[0072]この実施形態は、先の実施形態の原理を共有する。相違は、複数のクラスタにわたってスケジュールを行うのに、単一のエンティティが使用されることである。これの一例が、図11に示されている。
【0074】
[0073]図11を参照すると、単一のエンティティCS1が、与えられた時間(又は周波数)において、図2から取られた2つのクラスタ上でスケジュールを行うのに使用される。一実施形態では、このスケジューラは、異なる時間又は異なる周波数においては、別のパターン上でも、例えば、図3のセル3+セル4+セル5によって表されるクラスタに対しても協調を司る。したがって、このスケジューラは、時間インターバル又は周波数インターバルにおいて共通するユーザ端末に対して同時合同決定を行うことができることがある。
【0075】
[0074]また、一実施形態では、CS1などのスケジューラは、ユーザをスケジュールすること、及びどの協調パターンをユーザにスケジュールするかについて同時合同決定を行う。一実施形態では、1つの周波数帯域において図2が、別の周波数帯域において図3が、同時に動作する場合、ユーザ6とユーザ7のスケジューリングを合同で考えることができる。
【0076】
[0075]一実施形態では、スケジューラCS1は、ユーザ端末が同時に両方の(又は所定数を超える)帯域上でスケジュールされないような方法で、各帯域においてスケジューリングを行うことを決定する。別の実施形態では、スケジューラCS1は、いくつかの帯域にわたって合同でスケジューリングを行うことを決定し、それは、周波数が異なるいくつかの協調パターンにわたって、さらに協力的なシグナリングを可能にする。例えば、OFDMシステムでは、信号は、複数の帯域上に分割することができる。しかし、信号を形成する際に、サポートされるレートと、いくつの帯域が使用されるかを、あらかじめ知っている必要がある。
【0077】
[0076]図11に表される相互接続性は、これらのより広範なエンティティ間で渡される必要がある情報の量に関係する。一実施形態では、ただ1つのエンティティしか存在しないことがある。例えば、図9の協調コントローラが、もっぱらスケジューリングを行い、その場合は、「S1」、...、「S8」は、あまり複雑でないエンティティとすることができる。
【0078】
さらなる設計上の検討事項
一実施形態における物理層及びパターン上の検討事項
[0077]上述の実施形態では、スケジューリングアルゴリズムは、情報(例えばチャネル状態情報)に基づいて、与えられた時点においてユーザをスケジュールできるレートを決定する。すべてのユーザにわたってレートが比較され、全体的な基準(例えば加重された基準)に合致するユーザのサブセットがスケジュールされる。実施形態は、必ずしも物理層に依存しない。マルチセルシステムでは、セルからなる各クラスタ内における物理層送信は、他のクラスタとは独立して動作する。本明細書の目的では、送信信号自体は、それが選択する任意の技法を、例えば、単入力単出力(SISO)送信、多入力多出力(MIMO)送信、及び多数のアンテナが多数のユーザへの合同同時送信を協調させるマルチユーザMIMO(MU−MIMO)送信などを使用することができる。基礎となる送信は、直交周波数分割多重化(OFDM)、符号分割多元接続(CDMA)などに基づくことができる。
【0079】
[0078]これらのマルチセル設計においては、MU−MIMOが、特に興味深く、構成スケジューラは、各クラスタ内の干渉が制御されると実際に仮定することができるので、スケジューリングアルゴリズムにとって良好な特性を有する。基礎的なシグナリングとしてMU−MIMOを使用して、クラスタ内のすべてのセルにわたって送信を合同で協調させることによって、これらは、干渉に起因する問題を軽減する上で著しい利益とすることができる。線形ゼロ強制(LZF)、ダーティペーパ符号化(DPC)、又は最小平均2乗誤差(MMSE:Minimum Mean Square Error)ドリブンのシグナリングの形態をとるMU−MIMO送信は、すべて、各クラスタ内の干渉の影響を制御するという利点を有する。MU−MIMOがPFSとともに使用される場合、ユーザ端末とMU−MIMO物理層シグナリングソリューションを合わせて選択する様々な技法を見ることができる。
【0080】
[0079]線形ゼロ強制(LZF)を用いる場合、貪欲スケジューリングアルゴリズムを考えることができ、このアルゴリズムは、ステップ1)において、クラスタ内のただ1つのユーザ端末を、それが単独でスケジュールされるという仮定に基づいて、選択することによって開始し(この場合、LZF解は自明である)、その後、ステップ1)のユーザがユーザの1つであるように探索を制限しながら、2つのユーザの最良の組み合わせを探索し(2つのユーザを有するように、LZF解が変化する)、最大数のユーザ端末が選択されるまで、同様のことを繰り返す(ユーザ端末が都度追加されて、LZF解が変化する)。
【0081】
[0080]一実施形態では、各ステップにおけるユーザ端末の選択は、決定を下す際に、個別及び合計加重レートw(k)Z(k)と、潜在的なユーザにわたる合計w(k)Z(k)を見る。
【0082】
別の実施形態における物理層及びパターン上の検討事項
[0081]一実施形態では、スケジューリングアルゴリズムは、レート項Z(k)内に、クラスタの外部から到来する干渉分を含む。
【0083】
[0082]一実施形態では、図2において、異なるユーザによって経験される平均干渉レベルの推定値を提供することができる。この情報は、ユーザが経験する、ユーザにサービスしない局からの送信レベルを感知することによって、ユーザ自身によって推定することができる。そのような情報は、ユーザの地理的ロケーションに潜在することができる。一実施形態では、そのような推定値は、地理的考慮と、他の(1つ又は複数の)クラスタに属するアンテナから放射される仮定の電力とに基づいて導出される。例えば、ユーザ6は、おそらく、この協調パターンに関しては、(感知されたとしても、又はロケーションから決定されたとしても)ユーザ1、2、3、及び4とは異なる(より高い)推定干渉を与えられる。
【0084】
[0083]さらに、ユーザは異なる時間には異なるクラスタのメンバであるので、一実施形態では、ユーザは、実際には、推定干渉を与える助けになる有益な部分情報も有する。例えば、図2では、ユーザ6は、基地局BS4又はBS5からの送信によってサービスされていない。しかし、システムが図3におけるように動作している場合、ユーザ6は、それ自体とBS4及びBS5の間のチャネル上に情報を有する。一実施形態では、この情報は、図2の動作の下で干渉を決定する際に使用される。これは、例えば、BS4及びBS5が、図2の下で、図3の下で行ったのとほぼ同じ電力/信号を放射することを仮定している。
【0085】
他の物理層及びパターン上の検討事項
[0084]合同スケジューリング及び協調パターン変更の実施形態は、協調パターン上のクラスタにわたる異なる周波数帯域に適用される電力レベルをスケジューリングに役立つ方法で選択できる概念など、他のパターン変更方式において説明された概念を使用することができる。2009年8月10日に出願された、「A Method for Varying Transmit Power Patterns in a Multi−Cell Environment」と題する、米国特許出願第12/538739号を参照されたい。
【0086】
協調パターン及びそれらがサービスするユーザに関する目標
[0085]図2のユーザ1及びユーザ2などのユーザ端末は、それらにサービスできることがあるレートが、使用される協調パターンに関わりなく、良好であるため、他のユーザ端末を圧倒することがある。結果として、スケジューラがこの不均衡に反応しない場合には、スケジューラが、ユーザ4、ユーザ5、ユーザ6、又はユーザ7などのユーザに十分にサービスしないこともあり得る。これは、PFSなどのアルゴリズムを使用する場合にさえも当てはまる。
【0087】
[0086]実施形態に対する拡張として、特に上で説明された概念のいくつかに対する拡張として、意図的な方式で、各構成スケジューラにおいてスケジュールされる、又は協調クラスタ内のユーザ端末のサブセットをさらに限定するスケジューラを考えることができる。一実施形態では、これは、例えば、ユーザの地理的ロケーション又はユーザの推定レートに依存する周波数帯域の関数として行うことができる。例えば、図2では、スケジューラは、ユーザ4及びユーザ5などのユーザ端末のためにいくつかの帯域を確保しておき、ユーザ1及びユーザ2などのユーザ端末が、そのような帯域においてスケジュールされることを禁止する。
【0088】
[0087]一実施形態では、これを達成するために、スケジューリングアルゴリズムにおいて、重みが意図的に変更される。ユーザ端末の制限は、その重みw(k)をゼロに設定することと等価である。一実施形態では、ユーザ端末のスケジューリングの抑制は、w(k)をさらに低減することによって達成される(例えば、w(k)をスケーリングし、新しい値p(k)w(k)を使用し、ここで、0≦p(k)≦1.0である)。このスケーリングは、与えられた帯域又は与えられた協調パターンにおいてスケジューリングを行う場合に使用することができ、PFSのデフォルト動作のいくつかを無効にする。
【0089】
本発明の実施形態の利点
[0088]本発明の実施形態は、セル間の協調パターンが変化するマルチセル環境内での、合同ユーザ+レート+パターンスケジューリングアルゴリズムを含む。さらに、スケジューリング自体は、協調パターンのスケジューリングを決定することができる。
【0090】
[0089]本発明の実施形態は、以下の利点のうちの1つ以上を有する。合同動作は、合同方式で動作する多くのより小さな「構成」スケジューリングアルゴリズムからなるスケジューリングアルゴリズムが、いつ、どのユーザ端末をスケジュールすべきかについてより良い決定を行うことを可能にする。スケジューリングアルゴリズムが、すべての協調パターン(すべての送信リソースにわたるすべての可能なアンテナ−ユーザペア)にわたって、すべての可能性(すべての可能なスケジューリング機会)を効果的にリンクすることを可能にすることによって、すべてのそのような可能性に関して最良である場合に、ユーザ端末をスケジュールすることができる。これは、ユーザ間の公平性に関する、ユーザ端末が経験する個々のレートに関する、及びユーザ端末にサービスする待ち時間に関する、ユーザ端末にサービスされる総レートに関して、利点を有する。合同動作は、スケジューリングアルゴリズムが、協調パターンの変更の動作にも影響を与えることを可能にする。スケジューリングアルゴリズムは、実際に、この動作を指示して、すべての構成スケジューラにおいてばかりでなく、パターン自体のスケジューリングにおいても完全合同決定を行うことができる。
【0091】
スケジューラの一例
[0090]図12は、クラスタ又は複数のクラスタのためのスケジューリングアルゴリズムの実行を含む、上で説明された機能の1つ以上を実行するスケジューラの一実施形態のブロック図である。一実施形態ではスケジューラは、基地局内に配置される。別の実施形態では、スケジューラは、基地局から離れている。
【0092】
[0091]図12を参照すると、スケジューラ1200は、
【0093】
[0092]制御情報を送受信するコントロールインタフェース1202を含む。スケジューラ1200は、例えば、どの送信リソース上で、どのクラスタにおいて、どのユーザ端末をスケジュールすべきかを指定する情報、及びそのユーザ端末に対する送信レートなど、基地局を制御するための情報を、このインタフェースを使用して送信する。スケジューラ1200は、ユーザの重み「w」、他のスケジューラ及び又は中央リポジトリからのユーザの平均レート又は合計レート、ユーザのチャネル状態情報、ユーザの推定SINRなど、そのスケジューリング決定を行うのに必要とされる情報も、この情報を使用して受信する。コントロールインタフェース1202は、1つの基地局又は複数の基地局とインタフェースをとることができ、有線又は無線通信機能を含むことができる。
【0094】
[0093](1つ又は複数の)プロセッサ1201は、上で説明されたような、基地局の動作(若しくは他の基地局の動作)の多くを制御するために、又はそのような動作の多くが制御されるように、1つ以上のスケジューリングアルゴリズムを実行する。これは、スケジューリング基準と、コントロールインタフェース1202から受け取った情報が与えられた場合に、Ωなどのユーザの組を選択することを含む。ユーザのレートも、このユニットによって決定される。このユニットは、どんな協調パターンを使用すべきかについて決定を下すことができる。メモリ1203は、命令及び他のデータを、上で説明されたような、事前定義された協調パターン及び(1つ又は複数の)スケジューリングアルゴリズムとともに保存する。タイミング/クロックユニット1204は、当技術分野でよく知られた方法で、基地局にタイミング及び/又はクロックを提供する。
【0095】
[0094]上述の説明を読んだ後には、本発明の多くの代替及び変更が、当業者には疑いもなく明らかになるが、例示によって示され、説明された特定の実施形態はいずれも、限定と見なされることはまったく意図していないことを理解されたい。したがって、様々な実施形態の詳細についての言及は、本発明にとって必須と見なされるような特徴のみをそれ自体が列挙する、特許請求の範囲を限定することを意図していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユーザ端末と、
前記複数のユーザ端末と通信する複数のアンテナであって、前記複数のユーザ端末のサブセットとの送信を協調させるためにどのアンテナがクラスタとして共に動作するかを指定する協調パターンとして、前記複数のアンテナがグループ化され、さらに、前記複数のアンテナのうちの異なる組のアンテナが、異なる時間において共にグループ化されることでユーザの異なるサブセットへの送信を協調させるように、アンテナの組と関連するユーザの組との定義されたペアが、協調パターンの変化に基づいて送信リソースにおいて変化する、複数のアンテナと、
アンテナのどの組による、どの送信リソース上での、どんな送信レートを用いたサービスに対して、どのユーザ端末をスケジュールすべきかを指定することによって、ユーザ端末との送信をスケジュールする少なくとも1つのスケジューリングアルゴリズムを実行する、少なくとも1つのコントローラと
を備えるワイヤレス通信システム。
【請求項2】
アンテナからなるクラスタを変更して、複数のユーザ端末のサブセットとの送信を協調させるためにどのアンテナがクラスタとして共に動作するかを指定する新しい協調パターンをなすステップであって、複数のアンテナのうちの異なる組のアンテナが、異なる時間において共にグループ化されることでユーザの異なるサブセットへの送信を協調させるように、クラスタが協調パターンの変化に基づいて送信リソースにおいて変化する、ステップと、
前記ユーザ端末について、どのクラスタにおいて、どの送信リソース及び送信レート上で、どのユーザ端末をスケジュールすべきかを指定することによって、ユーザ端末との送信をスケジュールする少なくとも1つのスケジューリングアルゴリズムを実行するステップと
を含む方法。
【請求項3】
複数のユーザ端末と、前記複数のユーザ端末のサブセットとの送信を協調させるためにどのアンテナがクラスタとして共に動作するかを指定する協調パターンに基づいてグループ化される複数のアンテナとを有する、ワイヤレス通信システムにおいてユーザ端末をスケジュールするための方法であって、
協調パターンで指定される各協調クラスタについて、
スケジューリング基準を実施するために必要とされる情報を受け取るサブステップと、
スケジューリング決定を行うための情報を生成するサブステップと、
アンテナの組を使用するシステムがユーザ端末に対してサポートできるレートの推定値を獲得するサブステップと、
前記レート推定値に基づいたスケジューリングのために前記ユーザ端末を選択するサブステップと、
スケジュールされる場合に、ユーザに与えられるレートを決定するサブステップと
を含む動作を実行するステップ
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−500522(P2012−500522A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523122(P2011−523122)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/053466
【国際公開番号】WO2010/019613
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】