説明

マルチリーフコリメータおよび放射線治療装置

【課題】第1のリーフブロック群および第2のリーフブロック群相互間の隙間形状を目標形状に正確に設定すること。
【解決手段】リーフブロック12は相手側のリーフブロック12から離間する離間方向および相手側のリーフブロック12に接近する接近方向のそれぞれに移動可能にされたものであり、リーフブロック12の円弧面14には着磁部21および着磁部22を交互に有する磁性層20が形成され、磁性層20にはMRセンサ23が非接触状態で対向配置されている。この構成の場合、複数のリーフブロックモータ19のそれぞれをMRセンサ23からの出力信号に基づいて駆動制御することで複数のリーフブロック12のそれぞれを非接触で目標位置に移動操作しているので、第1のリーフブロック群および第2のリーフブロック群相互間の隙間形状を目標形状に正確に設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線発生器から患者に向けて照射される放射線を患者の病変部の形状に応じて絞り込むマルチリーフコリメータおよび放射線治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記マルチリーフコリメータには第1のリーフブロック群および第2のリーフブロック群を相互に対向配置した構成のものがある。これら第1のリーフブロック群および第2のリーフブロック群のそれぞれは2以上のリーフブロックを一方向に配列してなるものであり、第1のリーフブロック群の2以上のリーフブロックのそれぞれは第2のリーフブロック群のリーフブロックにリーフブロックの配列方向とは直交する直交方向から対向配置されている。これら第1のリーフブロック群の2以上のリーフブロックおよび第2のリーフブロック群の2以上のリーフブロックのそれぞれはモータを駆動源とする駆動機構に連結されており、複数のリーフブロックのそれぞれはモータが正転することに基づいて相手側のリーフブロックから離間する離間方向へ移動操作され、モータが逆転することに基づいて相手側のリーフブロックに接近する接近方向へ移動操作される。この構成の場合、複数のリーフブロックのそれぞれの現在位置を電気的に検出し、複数のモータのそれぞれの回転量を現在位置の検出結果に基づいて制御することで第1のリーフブロック群および第2のリーフブロック群相互間の隙間形状を調整している。
【特許文献1】特開2001−129104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記マルチリーフコリメータには抵抗率が相互に異なる複数の抵抗体をリーフブロックにリーフブロックの移動方向に沿って貼付し、リーフブロックが接近方向および離間方向のそれぞれに移動操作されることに応じて複数の抵抗体のそれぞれを一対の電極に対してスライドさせる構成のものがある。この構成の場合、一対の電極相互間に一定電圧を印加し、一方の電極から抵抗体を通して他方の電極に流れる電流の大きさを測定することに基づいてリーフブロックの現在位置を検出している。この従来のマルチリーフコリメータの場合には電極および抵抗体相互間の接触抵抗の大小に応じて抵抗値が変動し、電極および抵抗体相互間にゴミ等の異物が有るか否かに応じて抵抗値が変動し、気温の高低に応じて抵抗値が変動する。このため、複数のリーフブロックのそれぞれの現在位置を正確に検出することができないので、第1のリーフブロック群および第2のリーフブロック群相互間の隙間形状を目標形状に正確に設定することが困難である。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、第1のリーフブロック群および第2のリーフブロック群相互間の隙間形状を目標形状に正確に設定することができるマルチリーフコリメータおよび放射線治療装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のマルチリーフコリメータは、2以上のリーフブロックを一方向に配列してなる第1のリーフブロック群と、2以上のリーフブロックを一方向に配列してなるものであって2以上のリーフブロックのそれぞれが前記第1のリーフブロック群のリーフブロックにリーフブロックの配列方向とは直交する直交方向から対向するように配置された第2のリーフブロック群と、前記第1のリーフブロック群の2以上のリーフブロックおよび前記第2のリーフブロック群の2以上のリーフブロックのそれぞれに連結されたものであって前記リーフブロックを当該リーフブロックに直交方向から対向するリーフブロックに対して接近する接近方向および離間する離間方向のそれぞれに移動操作する複数の駆動機構と、前記複数のリーフブロックのそれぞれに前記リーフブロックの移動方向に沿う一面に位置して設けられたものであって複数の着磁部を有する磁性材製の磁性層と、前記複数のリーフブロックのそれぞれに対して非接触状態で静止配置されたものであって前記リーフブロックが接近方向および離間方向のそれぞれに移動することに基づいて出力信号が変動する複数の磁気センサと、前記複数の磁気センサのそれぞれから出力される出力信号に応じて前記複数の駆動機構のそれぞれを駆動制御することに基づいて前記第1のリーフブロック群および前記第2のリーフブロック群相互間に形成される隙間形状を調節する制御回路を備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0006】
複数のリーフブロックのそれぞれの移動方向に沿う一面に複数の着磁部を有する磁性層を設け、複数の磁性層のそれぞれに対して磁気センサを非接触状態で静止配置し、複数の駆動機構のそれぞれを磁気センサからの出力信号に基づいて駆動制御することで複数のリーフブロックのそれぞれを非接触で目標位置に移動操作しているので、第1のリーフブロック群および第2のリーフブロック群相互間の隙間形状を抵抗値の変動に影響されることなく目標形状に正確に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[実施例1]
スタンド1の上端部には、図1に示すように、X方向へ延びる水平な治療台2が装着されている。この治療台2は患者を載せて治療するためのものであり、患者は頭部および脚部のそれぞれがX方向へ指向するように治療台2に載せられる。この治療台2はX方向モータおよびY方向モータのそれぞれを駆動源とするXY駆動機構3に連結されている。このXY駆動機構3はスタンド1に内蔵されたものであり、治療台2はX方向モータの回転量をコントロールすることに基づいて水平なX方向に位置制御され、Y方向モータの回転量をコントロールすることに基づいて垂直なY方向に位置制御される。
【0008】
架台支持体4には、図1に示すように、架台5がX方向へ延びる軸6を中心に回転可能に装着されている。この架台支持体4は回転駆動機構7を内蔵するものであり、架台5の軸6は回転駆動機構7に連結されている。この回転駆動機構7はR方向モータを駆動源とするものであり、架台5はR方向モータの回転量をコントロールすることに基づいて軸6を中心とするR方向に位置制御される。この架台5には照射ヘッド8が固定されており、照射ヘッド8には、図2に示すように、放射線発生器9が内蔵されている。この放射線発生器9は電子を加速する加速部と加速された電子の方向を治療台2に向ける偏向部と偏向された電子を金属に当てて治療用のX線を発生させるターゲットを有するものであり、照射ヘッド8の内部にはターゲットおよびX線の照射口相互間に位置してマルチリーフコリメータ10が収納されている。このマルチリーフコリメータ10はX線の患者の体表上での照射野を病変部の形状に合わせて絞り込むための絞り装置であり、次のように構成されている。
【0009】
照射ヘッド8の内部には、図3に示すように、複数組(例えば14組)の単位リーフブロック11が収納されている。これら各組の単位リーフブロック11は直交方向に相当するZ方向に相互に対向配置された2枚のリーフブロック12からなるものであり、照射ヘッド8の内部にはX方向に沿って一列に並ぶ複数個(例えば14個)のリーフブロック12からなる第1のリーフブロック群13Aおよび第2のリーフブロック群13BがZ方向に相互に間隔を置いて収納されている。これら複数のリーフブロック12のそれぞれは治療用のX線を遮断することが可能なタングステンまたは鉛を材料に形成されたものであり、図4の(a)に示すように、1つの円弧面14と1つの円弧面15と2つのエッジ面16を有する円弧板状をなしている。これら複数のリーフブロック12のそれぞれの円弧面14および円弧面15は相互に同心な平滑なものであり、円弧面14および円弧面15の共通の中心点CP(図5参照)はX線の照射源であるターゲットに設定されている。このX線は治療用の放射線に相当するものであり、ターゲットは放射線源に相当する。
【0010】
複数のリーフブロック12のそれぞれには、図4の(a)に示すように、駆動機構に相当するリーフ駆動機構17が連結されている。これら複数のリーフ駆動機構17のそれぞれは、図5に示すように、リーフブロック12を中心点CPを中心とする共通の円形軌跡MLに沿って円周方向へ移動操作するものであり、図4の(a)に示すように、減速機構18およびリーフブロックモータ19を有している。これら複数の減速機構18のそれぞれは径寸法が相互に異なる複数の歯車を組合せることから構成されたものであり、複数のリーフブロックモータ19のそれぞれはステッピングモータから構成されたものであり、複数のリーフブロックモータ19のそれぞれの回転軸は減速機構18の入力軸に連結され、複数の減速機構18のそれぞれの出力軸はリーフブロック12に連結されている。これら複数の減速機構18のそれぞれはリーフブロックモータ19の回転を減速してリーフブロック12に伝達するものであり、複数のリーフブロック12のそれぞれは、図5に矢印Aで示すように、リーフブロックモータ19が正方向へ回転操作されることに基づいて相手側のリーフブロック12から離間する離間方向へ移動操作され、図5に矢印Bで示すように、リーフブロックモータ19が逆方向へ回転操作されることに基づいて相手側のリーフブロック12に接近する接近方向へ移動操作される。これら複数のリーフブロックモータ19のそれぞれは駆動源に相当するものである。
【0011】
複数のリーフブロック12のそれぞれには、図4の(a)に示すように、リーフブロック12の移動方向に沿う一面である円弧面14の全域に位置して磁性層20が形成されている。これら複数の磁性層20のそれぞれは円弧面14にパウダー状の磁性材を塗布することから形成されたものであり、図4の(b)に示すように、円周方向に交互に並ぶ着磁部21および着磁部22を有している。複数の着磁部21のそれぞれはN極に着磁された部分を称するものであり、円周方向に沿う長さ寸法が相互に同一に設定されている。複数の着磁部22のそれぞれはS極に着磁された部分を称するものであり、円周方向に沿う長さ寸法が着磁部21と同一に設定されている。
【0012】
照射ヘッド8の内部には、図4の(a)に示すように、複数の磁気抵抗素子23(MRセンサ23と称する)が収納されている。これら複数のMRセンサ23のそれぞれは磁気センサに相当するものであり、リーフブロック12の磁性層20の上方に間隔を置いて対向配置されている。これら複数のMRセンサ23のそれぞれはリーフブロック12に対して非接触状態で静止するように照射ヘッド8の内部に固定されたものであり、複数のリーフブロック12のそれぞれが離間方向または接近方向へ移動するときには着磁部21および着磁部22がMRセンサ23の検出領域内を交互に通過する。これら複数のMRセンサ23のそれぞれは磁性層20の磁化の方向に対して素子ストライプが直角となるように配置されたものであり、リーフブロック12が離間方向および接近方向のそれぞれに移動したときにはMRセンサ23の抵抗値が変動することに基づいてMRセンサ23からリーフブロック12の移動量に応じた個数のパルス信号が出力される。即ち、複数のMRセンサ23のそれぞれはリーフブロック12が離間方向および接近方向のそれぞれに単位量だけ移動する毎に1個のパルス信号を出力するものである。
【0013】
図2の放射線治療用CT装置24は放射線を利用して患者を走査し、患者の走査結果に基づいて患者の画像データを取得する装置であり、画像データの取得結果を治療計画装置25に送信する。この治療計画装置25は画像データの受信結果に基づいて放射線治療用の計画を行うためのものであり、治療制御回路26と表示器27と入力器28を有している。治療制御回路26はマイクロコンピュータを主体に構成されたものであり、放射線治療用CT装置24から送信される画像データの取得結果を受信して表示器27に表示する。この表示器27はCRTから構成されたものであり、オペレータは表示器27の表示内容を視覚的に認識することに基づいて病変部の位置およびX線の照射野のそれぞれを決定する。入力器28は矩形ROIとポリラインとクロスROIとキーボードとトラックボードのそれぞれを有するものである。この入力器28は病変部の位置およびX線の照射野のそれぞれの決定結果をオペレータが入力するための操作子に相当するものであり、治療制御回路26は入力器28の操作内容に基づいて病変部の位置およびX線の照射野のそれぞれの入力結果を認識する。
【0014】
治療制御回路26には、図2に示すように、インターフェース回路29を介して主制御回路30が接続されており、治療制御回路26は病変部の位置およびX線の照射野のそれぞれの入力結果をインターフェース回路29を通して主制御回路30に送信する。この主制御回路30はマイクロコンピュータを主体に構成されたものであり、CPUとRAMとROMを有している。この主制御回路30は病変部の位置の受信結果に基づいて治療台2の目標位置データおよび架台5の目標位置データのそれぞれを設定するものであり、治療台2の目標位置データおよび架台5の目標位置データのそれぞれは照射ヘッド8の照射口からX線が病変部の位置の受信結果に応じた部分に照射されるように設定される。
【0015】
主制御回路30はX線の照射野の受信結果に基づいて複数個(例えば28個)のリーフブロック12のそれぞれの移動量Naを設定するものであり、28個のリーフブロック12のそれぞれの移動量Naは第1のリーフブロック群13Aおよび第2のリーフブロック群13B相互間に照射野の受信結果に応じた形状の隙間が形成されるように設定される。これら28個のリーフブロック12のそれぞれには、図3に示すように、識別番号「1」〜「28」のいずれかが割付けられており、移動量Naは識別番号「1」〜「28」のそれぞれに対して設定される。これら複数の移動量Naのそれぞれはリーフブロック12の離間方向Aへの移動量を両リーフブロック12相互間が接触する原点位置Z0を基準に規定するものであり、MRセンサ23から出力されるパルス信号の個数を単位として設定される。
【0016】
主制御回路30には、図2に示すように、架台制御回路31と照射制御回路32とコリメータ制御回路33と治療台制御回路34が接続されており、主制御回路30は架台5の目標位置データの設定結果を架台制御回路31に送信し、複数個のリーフブロック12のそれぞれの移動量Naの設定結果をコリメータ制御回路33に送信し、治療台2の目標位置データの設定結果を治療台制御回路34に送信する。これら架台制御回路31と照射制御回路32とコリメータ制御回路33と治療台制御回路34のそれぞれはマイクロコンピュータを主体に構成されたものであり、CPUとROMとRAMを有している。
【0017】
照射制御回路32は放射線発生器9を制御するものであり、放射線発生器9は照射制御回路32から運転開始信号が出力されることに基づいて放射線の照射を開始し、照射制御回路32から運転停止信号が出力されることに基づいて放射線の照射を停止する。架台制御回路31はR方向モータの回転量を目標位置データの受信結果に応じて制御し、架台5を目標位置データの受信結果に応じた位置に移動操作するものである。治療台制御回路34はX方向モータおよびY方向モータのそれぞれの回転量を目標位置データの受信結果に応じて制御し、治療台2を目標位置データの受信結果に応じた位置に移動操作するものであり、X線の照射位置は治療台2および架台5のそれぞれが目標位置データの受信結果に応じた位置に移動操作されることに基づいて病変部の位置の入力結果に設定される。
【0018】
コリメータ制御回路33は制御回路に相当するものであり、コリメータ制御回路33には、図2に示すように、複数のリーフ駆動機構17のリーフブロックモータ19のそれぞれがモータ駆動回路35を介して接続されている。これら複数のモータ駆動回路35のそれぞれはリーフブロックモータ19に正転用のパルス信号および逆転用のパルス信号を印加するものであり、コリメータ制御回路33は複数のモータ駆動回路35のそれぞれを移動量Naの設定結果に応じて制御することで複数のリーフブロック12のそれぞれを移動量Naの設定結果に応じた位置に移動操作し、第1のリーフブロック群13Aおよび第2のリーフブロック群13B相互間に照射野の入力結果に応じた隙間を形成する。このコリメータ制御回路33には複数のMRセンサ23のそれぞれが接続されており、コリメータ制御回路33は複数のリーフブロックモータ19のそれぞれをMRセンサ23から出力されるパルス信号に基づいて回転操作する。
【0019】
図6はコリメータ制御回路33のROMに予め記録された制御プログラムであり、コリメータ制御回路33のCPUは複数のリーフブロック12のそれぞれをROMの制御プログラムに基づいて位置制御することで第1のリーフブロック群13Aおよび第2のリーフブロック群13B相互間に照射野の受信結果に応じた形状の隙間を形成する。以下、図6の制御プログラムについて説明する。
【0020】
CPUは図6のステップS1で複数の移動量Naのそれぞれの設定結果を受信すると、ステップS2でリーフブロックカウンタNrを「0」にリセットする。このリーフブロックカウンタNrは位置制御の対象となるリーフブロック12を特定するためのものであり、CPUはステップS2でリーフブロックカウンタNrをリセットしたときにはステップS3へ移行し、パルスカウンタNpを「0」にリセットする。このパルスカウンタNpはMRセンサ23から出力されるパルス信号の個数を計測するためのものであり、CPUはステップS3でパルスカウンタNpをリセットしたときにはステップS4へ移行し、リーフブロックカウンタNrに単位値「1」を加算する。
【0021】
CPUはステップS4でリーフブロックカウンタNrを加算すると、ステップS5でリーフブロックカウンタNrの加算結果に応じたリーフブロックモータ19を正方向へ運転開始することに基づいてリーフブロックカウンタNrの加算結果に応じたリーフブロック12を離間方向Aへ移動開始する。そして、ステップS6へ移行し、リーフブロックカウンタNrの加算結果に応じたMRセンサ23から1個のパルス信号が出力されたか否かを判断する。ここでMRセンサ23から1個のパルス信号が出力されたことを判断したときにはステップS7へ移行し、パルスカウンタNpに「1」を加算する。
【0022】
CPUはステップS7でパルスカウンタNpを加算すると、ステップS8でパルスカウンタNpの加算結果をリーフブロックカウンタNrの加算結果に応じた移動量Naの設定結果と比較する。例えばリーフブロックカウンタNrの加算結果に応じたリーフブロック12が移動量Naの設定結果だけ離間方向Aへ移動したときにはステップS8で「Np=Na」であることを判断し、ステップS9でリーフブロックカウンタNrの加算結果に応じたリーフブロックモータ19を運転停止し、ステップS10でリーフブロックカウンタNrの加算結果を最大値「Max(=28)」と比較する。ここで「Nr<28」であることを判断したときにはステップS3に復帰する。
【0023】
CPUはステップS3に復帰すると、パルスカウンタNpを「0」にリセットする。そして、ステップS4でリーフブロックカウンタNrに「1」を加算し、ステップS5でリーフブロックカウンタNrの加算結果に応じたリーフブロック12を離間方向Aへ移動開始し、ステップS6〜ステップS8を繰返すことに基づいてリーフブロックカウンタNrの加算結果に応じたリーフブロック12を移動量Naの設定結果だけ離間方向Aへ移動操作する。
【0024】
CPUは28個の全てのリーフブロック12のそれぞれを移動量Naの設定結果だけ離間方向Aへ移動操作すると、ステップS10で「Nr=Max」であることを判断する。この場合にはステップS11へ移行し、治療終了信号の有無を判断する。この治療終了信号は主制御回路30がX線の照射処理を終えることに基づいてコリメータ制御回路33に送信するものであり、CPUはステップS11で治療終了信号が有ることを判断したときにはステップS12へ移行し、リーフブロックカウンタNrを「0」にリセットする。そして、ステップS13でパルスカウンタNpを「0」にリセットし、ステップS14でリーフブロックカウンタNrに単位値「1」を加算し、ステップS15でリーフブロックカウンタNrの加算結果に応じたリーフブロックモータ19を逆方向へ運転開始することに基づいてリーフブロックカウンタNrの加算結果に応じたリーフブロック12を接近方向Bへ移動開始する。
【0025】
CPUはステップS15でリーフブロック12を接近方向Bへ移動開始すると、ステップS16でリーフブロックカウンタNrの加算結果に応じたMRセンサ23から1個のパルス信号が出力されたか否かを判断する。ここでMRセンサ23から1個のパルス信号が出力されたことを判断したときにはステップS17へ移行し、パルスカウンタNpに「1」を加算する。
【0026】
CPUはステップS17でパルスカウンタNpを加算すると、ステップS18でパルスカウンタNpの加算結果をリーフブロックカウンタNrの加算結果に応じた移動量Naの設定結果と比較する。例えばリーフブロックカウンタNrの加算結果に応じたリーフブロック12が原点位置Z0に復帰したときにはステップS18で「Np=Na」であることを判断し、ステップS19でリーフブロックカウンタNrの加算結果に応じたリーフブロックモータ19を運転停止する。そして、ステップS20でリーフブロックカウンタNrの加算結果を最大値「Max」と比較し、「Nr<Max」であることを判断したときにはステップS13に復帰する。
【0027】
CPUはステップS13に復帰すると、パルスカウンタNpを「0」にリセットする。そして、ステップS14でリーフブロックカウンタNrに「1」を加算し、ステップS15でリーフブロックカウンタNrの加算結果に応じたリーフブロック12を接近方向Bへ移動開始し、ステップS16〜ステップS18を繰返すことに基づいてリーフブロックカウンタNrの加算結果に応じたリーフブロック12を原点位置Z0に移動操作する。この原点復帰処理を28個の全てのリーフブロック12のそれぞれに対して施したときにはステップS20で「Nr=Max」であることを判断し、ステップS1に復帰する。
【0028】
上記実施例1によれば次の効果を奏する。
複数のリーフブロック12のそれぞれの移動方向に沿う円弧面14に着磁部21および着磁部22を交互に有する磁性層20を設け、複数の磁性層20のそれぞれに対してMRセンサ23を非接触状態で静止配置し、複数のリーフ駆動機構17のそれぞれをMRセンサ23からの出力信号に基づいて駆動制御することで複数のリーフブロック12のそれぞれを非接触で目標位置Naに移動操作したので、第1のリーフブロック群13Aおよび第2のリーフブロック群13B相互間の隙間形状を抵抗値の変動に影響されることなく照射野の入力結果に応じた目標形状に正確に設定することができる。
【0029】
上記実施例1においては、リーフブロック12の一部または全部をまとめて移動させるよう制御しても良い。また、リーフブロック12の円弧面14の一部に着磁部21および着磁部22を交互に有する磁性層20を形成しても良い。
[実施例2]
複数のリーフブロック12のそれぞれには、図7に示すように、円弧面14の全域に位置して凸部41および凹部42が交互に形成されている。複数の凸部41のそれぞれは円周方向に等間隔で配列されたものであり、円周方向に沿う長さ寸法が相互に同一に設定されている。複数の凹部42のそれぞれは円周方向に等間隔で配列されたものであり、円周方向に沿う長さ寸法が凸部41と同一に設定されている。
【0030】
複数のリーフブロック12のそれぞれには円弧面14の全域に位置して磁性層20が形成されている。これら複数の磁性層20のそれぞれは円弧面14に複数の凸部41および複数の凹部42のそれぞれの上からパウダー状の磁性材を塗布してなるものであり、各凸部41の表面に位置してN極に着磁された着磁部21およびS極に着磁された着磁部22を有し、各凹部42の表面に位置してN極に着磁された着磁部21およびS極に着磁された着磁部22を有している。これら複数の磁性層20のそれぞれの上方にはMRセンサ23が非接触状態で静止配置されており、コリメータ制御回路33は複数のリーフブロックモータ19のそれぞれを図6の制御プログラムに基づいて駆動制御することから第1のリーフブロック群13Aおよび第2のリーフブロック群13B相互間に照射野の入力結果に応じた形状の隙間を形成する。
【0031】
上記実施例2によれば次の効果を奏する。
複数のリーフブロック12のそれぞれの円弧面14にリーフブロック12の移動方向に沿って凸部41および凹部42を交互に形成し、複数のリーフブロック12の円弧面14に複数の凸部41および複数の凹部42の上から磁性層20を形成した。このため、複数のリーフブロック12のそれぞれが離間方向または接近方向へ移動することに応じてMRセンサ23の検出領域内を凸部41および凹部42が交互に通過するようになるので、複数のリーフブロック12からMRセンサ23に強磁界および弱磁界を交互に作用させることができる。
【0032】
上記実施例2においては、リーフブロック12の円弧面14の一部に磁性層20を有する凸部41および凹部42を交互に形成し、磁性層20のうち複数の凸部41のそれぞれに対応する部分に着磁部21および着磁部22を交互に形成し、磁性層20のうち複数の凹部42のそれぞれに対応する部分に着磁部21および着磁部22を交互に形成しても良い。
【0033】
上記実施例2においては、リーフブロック12の磁性層20のうち複数の凸部41のそれぞれに位置する部分にN極に着磁された着磁部21を形成し、複数の凹部42のそれぞれに位置する部分にS極に着磁された着磁部22を形成しても良い。
【0034】
上記実施例2においては、リーフブロック12の磁性層20のうち複数の凸部41のそれぞれに位置する部分にS極に着磁された着磁部22を形成し、複数の凹部42のそれぞれに位置する部分にN極に着磁された着磁部21を形成しても良い。
【0035】
上記実施例1〜2のそれぞれにおいては、リーフブロック12にラバー状の磁性材を貼付することから磁性層20を形成しても良い。
上記実施例1〜2のそれぞれにおいては、リーフブロック12の円弧面15に着磁部21および着磁部22のそれぞれを有する磁性層20を設け、磁性層20の下方にMRセンサ23を非接触状態で静止配置しても良い。
【0036】
上記実施例1〜2のそれぞれにおいては、MRセンサ23に換えてホール素子を使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例1を示す図(放射線治療装置の外観を示す斜視図)
【図2】放射線治療装置の電気的構成を示すブロック図
【図3】マルチリーフコリメータをX線の照射軸に沿う方向から示す図
【図4】(a)はリーフブロックの外観を示す斜視図、(b)はリーフブロックの磁性層を示す図
【図5】マルチリーフコリメータをX線の照射方向に直交する方向から示す図
【図6】コリメータ制御回路の制御内容を示すフローチャート
【図7】本発明の実施例2を示す図4の(a)相当図
【符号の説明】
【0038】
10はマルチリーフコリメータ、12はリーフブロック、13Aは第1のリーフブロック群、13Bは第2のリーフブロック群、17はリーフ駆動機構(駆動機構)、19はリーフブロックモータ(駆動源)、20は磁性層、21は着磁部、22は着磁部、23はMRセンサ(磁気センサ)、33はコリメータ制御回路(制御回路)、41は凸部、42は凹部を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上のリーフブロックを一方向に配列してなる第1のリーフブロック群と、
2以上のリーフブロックを一方向に配列してなるものであって、2以上のリーフブロックのそれぞれが前記第1のリーフブロック群のリーフブロックにリーフブロックの配列方向とは直交する直交方向から対向するように配置された第2のリーフブロック群と、
前記第1のリーフブロック群の2以上のリーフブロックおよび前記第2のリーフブロック群の2以上のリーフブロックのそれぞれに連結されたものであって、前記リーフブロックを当該リーフブロックに直交方向から対向するリーフブロックに対して接近する接近方向および離間する離間方向のそれぞれに移動操作する複数の駆動機構と、
前記複数のリーフブロックのそれぞれに前記リーフブロックの移動方向に沿う一面に位置して設けられたものであって、複数の着磁部を有する磁性材製の磁性層と、
前記複数のリーフブロックのそれぞれに対して非接触状態で静止配置されたものであって、前記リーフブロックが接近方向および離間方向のそれぞれに移動することに基づいて出力信号が変動する複数の磁気センサと、
前記複数の磁気センサのそれぞれから出力される出力信号に応じて前記複数の駆動機構のそれぞれを駆動制御することに基づいて前記第1のリーフブロック群および前記第2のリーフブロック群相互間に形成される隙間形状を調節する制御回路を備えたことを特徴とするマルチリーフコリメータ。
【請求項2】
前記複数の磁性層のそれぞれには、極性が相互に異なる2種類の着磁部が前記リーフブロックの移動方向に沿って交互に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のマルチリーフコリメータ。
【請求項3】
前記複数のリーフブロックのそれぞれの一面には、凹部および凸部が前記リーフブロックの移動方向に沿って交互に設けられ、
前記複数の磁性層のそれぞれは、前記リーフブロックの一面に前記凹部および前記凸部の上から設けられていることを特徴とする請求項1に記載のマルチリーフコリメータ。
【請求項4】
患者を載せるための治療台と、
前記治療台上の患者の病変部に向けて治療用の放射線を照射する放射線発生器と、
前記放射線発生器から患者に照射される放射線を患者の病変部の形状に応じて絞る絞り器を備え、
前記絞り器は、請求項1〜3のいずれかに記載のマルチリーフコリメータから構成されていることを特徴とする放射線治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−72443(P2009−72443A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245730(P2007−245730)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】